日本語でわかる最新の海外医学論文|page:454

ER+/HER2-乳がんのアジュバントへのS-1上乗せ効果、リスク別解析(POTENT)/ASCO2020

 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんの術後ホルモン療法へのS-1の上乗せ効果は、再発リスクが中〜高リスクの患者で大きく、5年無浸潤疾患生存率(iDFS)で約7〜8%の上乗せ効果が得られたことが、第III相POTENT試験の探索的解析で報告された。京都大学の高田 正泰氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)のポスターセッションで発表した。  POTENT試験は医師主導による国内多施設共同非盲検無作為化比較第III相試験である。2019年のサンアントニオ乳がんシンポジウムにおいて、ER陽性HER2陰性乳がんのアジュバントで標準的ホルモン療法にS-1を追加することにより5年iDFSを改善したことを報告している。今回は、S-1の追加投与に適した患者を特定するために、被験者を再発リスク(複合リスク)スコアで分類しS-1上乗せによるiDFSの改善効果を評価した。

COVID-19感染のがん患者、重症化しやすく複数のリスク因子/Lancet Oncol

 がん患者がCOVID-19に感染した場合に非がん患者よりも重症化する可能性が高く、複数のリスク因子があることが、中国・華中科技大学(武漢)のJianbo Tian氏らによる多施設共同の後ろ向きコホート研究で示された。Lancet Oncology誌オンライン版2020年5月29日号掲載の報告。  2020年1月13日~3月18日に武漢の9病院に入院した、がん患者232例と非がん患者519例を比較した。いずれも18歳以上、PCR検査でCOVID-19陽性と判定されていた。がん患者のがん種は固形がんおよび血液がんだった。年齢、性別、併存症、がん種、病歴、がん治療期間を調整した単変量および多変量ロジスティック回帰分析を行い、COVID-19重症度に関連するリスク因子を調査した。COVID-19の重症度はWHOガイドラインに基づいて入院時に定義された。

COVID-19診療に医学書出版社が支援/日本医書出版協会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により学術集会で新刊書の購入もままならない昨今、わが国の医学書出版社で構成される「日本医書出版協会」は、同協会の会員各社がサイトで無償公開しているCOVID-19関連の書籍、雑誌の論文や記事、Web情報などを一元的に閲覧できるページを開設した。  具体的に公開されているコンテンツは、書籍、論文など約60コンテンツにのぼり、初出年月の新しい順に掲載されている(一部、会員登録が必要なコンテンツもある)。  ホームページでは、COVID-19の診療に携わる医療者に感謝を述べるとともに、診療への支援に役立てほしいと述べている。

アテゾリズマブによる筋層浸潤性尿路上皮がん術後療法の結果(IMvigor010試験)/ASCO2020

 筋層浸潤性尿路上皮がんに対する術後療法としての免疫チェックポイント阻害薬(ICI)・アテゾリズマブの有用性を検討したIMvigor010試験の結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)で米国・Robert H. Lurie Comprehensive Cancer CenterのMaha H. A. Hussain氏より発表された。本試験は、筋層浸潤性尿路上皮がん(MIUC)に対する術後療法として初めてICIの有用性を検討した、日本も参加したオープンラベルの国際第III相試験である。

新型コロナは日常診療にどう影響?勤務医1,000人に聞いたストレス・悩みの理由

 2020年初頭から続いたCOVID-19の感染拡大は、ようやく鈍化傾向を見せ始めた。各地で出されていた緊急事態宣言が先月までに相次いで解除となり、社会が“これまでの日常”に戻るべく動き出しているが、医療現場では依然、緊張した対応を迫られる状況が続いている。ケアネットでは、医師会員を対象に、コロナ対応を巡る経営・組織・心理面での影響についてアンケート調査を実施し、1,000人から回答を得た。  調査は、2020年5月16~22日、ケアネット会員のうち勤務医を対象にインターネット上で実施した。回答者の内訳は、年代別では30代が最も多く(32%)、40代(31%)、50代(23%)、60代以上(14%)だった。勤務先における立場は、「一般スタッフ」が最も多く(578人、58%)、次いで「部下6人以上のマネジメント層」(241人、24%)、「部下5人以下のマネジメント層」(181人、18%)だった。病床数別では、200床以上が77%で最も多く、100~199床(15%)、20~99床(8%)という順だった。なお今回のアンケート結果は、COVID-19感染者数が多かった地域のうち、9都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡)で勤務する医師にご協力いただいたものである。

不眠症とQOL~EPISONO研究

 睡眠は健康やウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)にとって不可欠であり、睡眠不足は深刻な生理学的問題を引き起こす可能性がある。ブラジル・サンパウロ連邦大学のLeandro Lucena氏らは、睡眠パターンを評価し、QOLに対する不眠症の影響について調査を行った。Sleep Health誌オンライン版2020年4月22日号の報告。  EPISONO研究(Sao Paulo epidemiologic sleep study)は、睡眠と睡眠障害のリスク因子に関する人口ベースの疫学調査として実施された。性別、年齢、社会経済的地位に応じたサンパウロの人口を代表する18歳以上の男性574例、女性468例を対象とし、横断的研究を行った。客観的な睡眠の評価に睡眠ポリグラフのデータを用い、QOLを評価するためにアンケートを実施した。DSM-IVに基づき検証したアンケートを用いて自覚された不眠症を評価し、対象者を「不眠症状なし」「不眠症状あり」「不眠症候群」に分類した。身体測定データ、客観的な睡眠パラメータ、QOLを評価し、対象者を性別ごとに年齢に応じて分類した。

腎移植者への細胞治療、免疫抑制による感染症を抑制/Lancet

 生体腎移植患者の免疫抑制療法において、制御性細胞療法は施行可能かつ安全であり、標準的な免疫抑制薬による治療と比較して感染性合併症が少なく、1年目の拒絶反応の発生率はほぼ同等であることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBirgit Sawitzki氏らの検討「The ONE Study」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年5月23日号に掲載された。免疫抑制薬は臓器移植の適応を拡大したが、副作用や慢性拒絶反応のため、この10年、生着期間は横ばいだという。長期の免疫抑制薬の使用は合併症や医療費の増加をもたらすため、拒絶反応の予防においては、免疫抑制薬への依存度を低減する新たな戦略が求められている。細胞由来医薬品(cell-based medicinal product:CBMP)は、臓器移植における免疫抑制薬の削減に寄与する最先端のアプローチとして期待を集めている。

COVID-19へのヒドロキシクロロキン、死亡・心室性不整脈が増加か/Lancet

※本論文は6月4日に撤回されました。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者へのヒドロキシクロロキンまたはクロロキン±第2世代マクロライド系抗菌薬による治療は、院内アウトカムに関して有益性をもたらさず、むしろ院内死亡や心室性不整脈のリスクを高める可能性があることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らの調査で示された。研究の成果は2020年5月22日、Lancet誌オンライン版に掲載された。抗マラリア薬クロロキンと、そのアナログで主に自己免疫疾患の治療薬として使用されるヒドロキシクロロキンは、多くの場合、第2世代マクロライド系抗菌薬との併用でCOVID-19治療に広く用いられているが、その有益性を示す確固たるエビデンスはない。また、これまでの研究で、このレジメンは心血管有害作用としてQT間隔延長をもたらし、QT間隔延長は心室性不整脈のリスクを高める可能性が指摘されている。

漫然とした多剤併用に一石!(解説:桑島巖氏)-1239

高齢者におけるpolypharmacy(多剤併用)が社会問題化している。確かに高齢者では複数の疾患が多くなり薬剤数が増えることはある程度やむを得ないかもしれない。しかし効果のない薬を漫然と処方することはぜひ避けなければならない。英国から発表されたOPTIMISE研究は臨床に即した重要な論文である。収縮期血圧が150mmHg未満で2種類以上の降圧薬を服用している80歳以上の症例(平均84.8歳)を、1種類降圧薬を減らす群(介入群)282例と従来どおりの治療群(対照群)に非盲検化にランダム化して12週後の血圧に差がないことを確認する非劣性試験である。  その結果、12週後の収縮期血圧が150mmHg未満を維持していた症例は、介入群86.4%、対照群87.7%で両群に有意差はなかった。

唾液によるPCR検査開始、対応可能な医療機関の要件は?/日本医師会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査検体として、6月2日、新たに唾液が保険適用された。これを受け、6月3日の日本医師会定例記者会見において、釜萢 敏常任理事が同時に発出・改訂された通知や検体採取マニュアルなどについて紹介し、今後幅広い医療機関で活用されるようになることに期待感を示した。  COVID-19と診断され自衛隊中央病院に入院した患者の凍結唾液検体(発症後14日以内に採取された88症例)の分析を行い、鼻咽頭ぬぐい液を用いたPCR検査結果との一致率を検証した厚生労働科学研究(研究代表:国際医療福祉大学成田病院・加藤 康幸氏)において、発症から9日以内の症例では、鼻咽頭ぬぐい液と唾液との結果に高い一致率が認められた1)。この結果を受け、厚生労働省では6月2日に、「症状発症から9日以内の者について、唾液を用いたPCR検査を可能とする」として、検査実施にかかるマニュアルの改定やPCR検査キットの一部変更承認・保険適用を実施した2)。  検査キットについては、鼻咽頭ぬぐい液によるPCR検査キットとして薬事承認されているものに加え、国立感染症研究所により同等の精度があると予備的に確認され現在使われている商品も対象(島津製作所やタカラバイオなど)。「これまで認められているすべてのキットについて、唾液検体を用いたPCR検査が可能になるという整理」と釜萢氏は説明した。

HR+/HER2-乳がんへのパルボシクリブ併用、フルベストラント vs.レトロゾール(PARSIFAL)/ASCO2020

 内分泌療法感受性のホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、CDK4/6阻害薬パルボシクリブ+アロマターゼ阻害薬レトロゾールの併用療法が標準治療として使われている(PALOMA-1、PALOMA-2試験)。一方、抗エストロゲン薬フルベストラントは、同患者に対しアナストロゾールに優れることが確認されている(FALCON試験)。また、内分泌療法後に進行した患者に対して、パルボシクリブ+フルベストラント併用が生存にベネフィットをもたらしている(PALOMA-3試験)。これらを受け、同患者に対するパルボシクリブ併用療法において、フルベストラントとレトロゾールを比較する第II相PARSIFAL試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)でスペイン・University Hospital Arnau de VilanovaのAntonio Llombart-Cussac氏が発表した。

EGFR陽性肺がん、ベバシズマブとエルロチニブの併用療法はOSを改善したか(NEJ026試験)/ASCO2020

 EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのベバシズマブ(商品名:アバスチン)とエルロチニブ(同:タルセバ)の併用療法と、エルロチニブ単独療法との比較試験(NEJ026試験)の全生存期間(OS)に関する最終解析の結果報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で岩手医科大学の前門戸 任氏より発表された。  本試験は、日本の臨床試験グループにより実施されたオープンラベルの多施設共同の第III相比較試験である。無増悪生存期間(PFS)に関してはASCO2018で良好な結果が報告されており、今回はそのOSに関する最終解析結果である。

13価肺炎球菌ワクチン、接種対象者を拡大/ファイザー

 ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)は2020年5月29日、プレベナー13(R)水性懸濁注(一般名:沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)の新たな適応として、肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者に対する「肺炎球菌(血清型:1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F および23F)による感染症の予防」の製造販売承認事項一部変更承認を取得した。今回の適応追加により、小児並びに高齢者に限らず、肺炎球菌(血清型:同)による疾患に罹患するリスクが高い方にも接種が可能となる。  肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者は、以下のような状態の者を指す。

新型コロナ抗体検査が日本でも始動、米国での調査結果は?/JAMA

 第2波が懸念される新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。日本では厚生労働省主導のもと、6月より3都府県(人口10万人あたりのCOVID-19累積感染者数の多い東京都・大阪府、少ない宮城県)において、性別、年齢を母集団分布と等しくなるよう層別化し、無作為抽出により選ばれた一般住民約3,000人(全体で約1万人)を対象とした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体検査が開始した。 抗体保有者の割合を調べ、今後の感染拡大に役立てる予定だ。

双極性障害患者の精神疾患合併症の調査

 双極性障害(BD)患者では、ほかの精神疾患を合併することが少なくない。いくつかの研究では、BD発症前後でみられる精神疾患の発症について、システマティックに調査が行われている。モナコ・Hospital Princesse GraceのJ. Loftus氏らは、成人BD患者における精神疾患の合併率と発症年齢について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年4月15日号の報告。  寛解期のフランス人BD患者739例を対象に、アルコールや大麻乱用、自殺企図、不安症、摂食障害の既往例および発症年齢について、構造化された臨床面接により収集した。性別またはサブタイプ別に層別化されたBD群における精神疾患の合併率と発症年齢の統計学的に有意な関連は、回帰分析を用いて評価した。

COVID-19重症患者、レムデシビル投与5日vs.10日/NEJM

 人工呼吸器を必要としていない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者において、レムデシビル投与期間は5日間と10日間とで有意差は認められなかった。米国・ワシントン大学のJason D. Goldman氏らが、COVID-19重症患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験の結果を報告した。レムデシビルは、in vitroで強力な抗ウイルス活性を示し、COVID-19の動物モデルで有効性が示されたRNAポリメラーゼ阻害薬であるが、レムデシビルを用いた治療の効果のある最短投与期間を明らかにすることが、喫緊の医療ニーズであった。NEJM誌オンライン版2020年5月27日号掲載の報告。

ARNI・β遮断薬・MRA・SGLT2阻害薬併用で、HFrEF患者の生存延長/Lancet

 左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、疾患修飾薬による早期からの包括的な薬物療法で得られるであろう総合的な治療効果は非常に大きく、新たな標準治療として、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)および選択的ナトリウム・グルコース共役輸送体2(SGLT2)阻害薬の併用が支持されることが示された。米国・ハーバード大学のMuthiah Vaduganathan氏らが、慢性HFrEF患者を対象とした各クラスの薬剤の無作為化比較試験3件を比較した解析結果を報告した。3クラス(MRA、ARNI、SGLT2阻害薬)の薬剤は、ACE阻害薬またはARBとβ遮断薬を併用する従来療法よりも、HFrEF患者の死亡リスクを低下させることが知られている。これまでの研究では、それぞれのクラスは異なる基礎療法と併用して検証されており、組み合わせにより予測される治療効果は不明であった。Lancet誌オンライン版2020年5月21日号掲載の報告。

COVID-19に対するレムデシビルによる治療速報―米中のCOVID-19に対する治療薬・ワクチンの開発競争(解説:浦島充佳氏)-1238

COVID-19に対して各国で治療薬・ワクチンの開発が進められている。エイズの治療薬であるカレトラは期待が持たれたが、ランダム化臨床試験でその効果を否定された。4月29日、レムデシビルは武漢のランダム化臨床試験で、明らかに治療薬群で有害事象による薬剤中止例が多く、途中で中止された。したがって十分な症例数ではないが、レムデシビル群の死亡率は14%、プラセボ群のそれは13%であり治療効果を確認することはできなかった。

EGFR陽性肺がん1次治療のオシメルチニブ・ゲフィチニブ併用は有望な可能性/ASCO2020

 EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブとゲフィチニブの併用療法は忍容性があり、奏効率も高く1次治療として有望な可能性があるという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で米国・Dana-Farber Cancer InstituteのJulia K. Rotow氏から発表された。本試験は、用量漸増相と拡大相からなる第I/II相試験である。

COVID-19中等症、レムデシビル5日間投与で有意に改善/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズ (本社:米国・カリフォルニア州)は、2020 年 6 月 1 日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の中等症入院患者を対象としたレムデシビル(商品名:ベクルリー)の第III相試験(SIMPLE試験)の主要結果を発表。レムデシビル5日間投与群の臨床症状は標準治療単独群より有意に改善し、入院患者に対するレムデシビルの有用性が示されたことを明らかにした。  本試験は、COVID-19の診断が確定し、肺炎がみられるものの酸素飽和度の低下を認めない患者を標準治療に加えレムデシビル5日間もしくは10日間投与する群、標準治療群に1:1:1で割り付けた無作為非盲検試験。主要評価項目は、投与から11日目の臨床状態とし、退院から酸素補給の程度の増加、人工呼吸器の使用、死亡までを指標とする7段階スケールにて評価した。副次評価項目として、レムデシビルの各投与群と標準治療群の有害事象発現率を比較した。