日本語でわかる最新の海外医学論文|page:454

日本人超高齢の心房細動、エドキサバン15mgは有益/NEJM

 標準用量の経口抗凝固薬投与が適切ではない、非弁膜症性心房細動(AF)の日本人超高齢患者において、1日1回15mg量のエドキサバンは、脳卒中または全身性塞栓症の予防効果がプラセボより優れており、大出血の発生頻度はプラセボよりも高率ではあるが有意差はなかったことが示された。済生会熊本病院循環器内科最高技術顧問の奥村 謙氏らが、超高齢AF患者に対する低用量エドキサバンの投与について検討した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年8月30日号で発表された。超高齢AF患者の脳卒中予防のための経口抗凝固薬投与は、出血への懸念から困難と判断されることが少なくない。

高齢入院患者のせん妄予防に対する薬理学的介入~メタ解析

 入院中の高齢患者に対するせん妄予防への薬理学的介入の効果について、スペイン・Canarian Foundation Institute of Health Research of Canary IslandsのBeatriz Leon-Salas氏らがメタ解析を実施し、包括的な評価を行った。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2020年9~10月号の報告。  2019年3月までに公表された、65歳以上の入院患者を対象としたランダム化比較試験を、MEDLINE、EMBASE、WOS、Cochrane Central Register of Controlled Trialsの電子データベースよりシステマティックに検索した。事前に定義した基準を用いて研究を抽出し、それらの方法論的な質を評価した。

早期乳がん/DCISへの寡分割照射による乳房硬結リスク(DBCG HYPO試験)/JCO

 Danish Breast Cancer Group(DBCG)では、1982年以来、早期乳がんに対する放射線療法の標準レジメンは50Gy/25回である。今回、デンマーク・Aarhus University HospitalのBirgitte V. Offersen氏らは、リンパ節転移陰性乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する放射線療法において、40Gy/15回の寡分割照射が標準の50Gy/25回に比べて3年の乳房硬結が増加しないかどうかを検討するDBCG HYPO試験(無作為化第III相試験)を実施した。その結果、乳房硬結は増加せず、9年局所領域再発リスクは低いことが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年9月10日号に掲載。

初期AFへの早期リズムコントロール、心血管リスクを低減/NEJM

 初期の心房細動(AF)で心血管症状を呈する患者において、早期リズムコントロール療法は、通常ケアよりも心血管アウトカムのリスクを低下させることが、ドイツ・University Heart and Vascular CenterのPaulus Kirchhof氏らによる検討で示された。AF治療は改善されてはいるが、心血管合併症のリスクは高いままである。一方で、早期リズムコントロール療法が同リスクを低減するかは不明であり、研究グループは、国際共同治験担当医主導の並行群間比較による非盲検割付のアウトカム盲検化評価試験で同療法の検討を行った。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。

バリシチニブ、レムデシビルと併用でCOVID-19回復期間を有意に短縮/米・リリー

 米国のイーライリリー・アンド・カンパニーは9月14日、同社の成人関節リウマチ治療薬バリシチニブとレムデシビル(ギリアド・サイエンシズ、商品名:ベクルリー点滴静注液)の併用により、COVID-19の入院患者の回復期間が、レムデシビル単独と比べ中央値で約1日短縮されたと発表した。これは、米国・国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の主導で5月8日から始まったCOVID-19に対するアダプティブデザイン試験(ACTT-2試験)から得られた最初のデータとなる。  ACTT-2試験は、COVID-19の入院患者1,000例超を組み入れ、バリシチニブ4mg 1日1回とレムデシビルの併用療法の有効性および安全性をレムデシビル単独療法と比較評価するもので、主要評価項目は回復までの期間短縮。本試験では、投与開始から29日時点で退院するのに十分な健康状態である(入院中でも酸素投与や継続した治療が不要、もしくは29日時点で退院している)ことを回復の定義とした。

精神病性うつ病患者の再発に対するベンゾジアゼピンの影響

 ベンゾジアゼピンの長期投与は、依存、転倒、認知障害、死亡リスクを含む有害事象が懸念され、不安以外の症状に対する有効性のエビデンスが欠如していることから、うつ病治療には推奨されていない。しかし、多くのうつ病患者において、抗うつ薬とベンゾジアゼピンの併用が行われている。東京医科歯科大学の塩飽 裕紀氏らは、ベンゾジアゼピン使用がうつ病患者の再発または再燃リスクを低下させるか調査し、リスク低下の患者の特徴について検討を行った。Journal of Clinical Medicine誌2020年6月21日号の報告。

HFrEFへのエンパグリフロジン、心血管・腎への効果は/NEJM

 2型糖尿病の有無を問わず慢性心不全の推奨治療を受けている患者において、エンパグリフロジンの投与はプラセボと比較して、心血管死または心不全増悪による入院のリスクを低下することが、米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らによる3,730例を対象とした二重盲検無作為化試験の結果、示された。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の有無を問わず、心不全患者の入院リスクを抑制することが示されている。同薬について、駆出率が著しく低下した例を含む幅広い心不全患者への効果に関するエビデンスが希求されていたことから、本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。

躁病エピソードに対するリチウムと抗精神病薬の併用

 韓国・漢陽大学校のHyun Kyung Lee氏らは、双極性障害患者の躁病エピソードに対するリチウムと抗精神病薬の併用について、人口統計学的予測因子の検討および入院期間や総医療費に及ぼす影響の調査を行った。Cureus誌2020年6月11日号の報告。  韓国入院患者サンプルを用いて、リチウム治療を行った躁病エピソードを有する成人双極性障害患者1,435例を調査した。入院期間や総医療費への影響を調査するため、同等性評価を伴う独立標本t検定を用いた。ロジスティック回帰モデルを用いて、併用療法のオッズ比(OR)を算出し、95%信頼区間(CI)を推定した。

コルヒチンで慢性冠疾患の心血管リスクが低下/NEJM

 慢性冠疾患患者においてコルヒチン0.5mg 1日1回投与は、プラセボと比較し、心血管イベントのリスクを有意に低下させることが、オーストラリア・GenesisCare Western AustraliaのStefan M. Nidorf氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「LoDoCo2試験」で明らかとなった。コルヒチンの抗炎症作用が心筋梗塞患者の心血管イベントリスクを低下させることが、最近の研究で示唆されていたが、慢性冠疾患患者におけるエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2020年8月31日号掲載の報告。

大手術時の術中換気、低容量vs.従来換気量/JAMA

 大手術を受ける成人患者において、術中の低容量換気(low-tidal-volume ventilation)は従来の1回換気量と比較し、同一の呼気終末陽圧(PEEP)下では、術後7日以内の肺合併症の有意な減少は認められなかった。オーストラリア・オースティン病院のDharshi Karalapillai氏らが、単施設での評価者盲検無作為化臨床試験の結果を報告した。手術中の人工換気は旧来、超生理学的1回換気量が適用されてきたが、低容量換気に比べ有害で術後合併症を引き起こす懸念が高まっている。しかし、手術中に人工呼吸器を使用する患者における理想的な1回換気量は不明であった。JAMA誌2020年9月1日号掲載の報告。

唾液を用いたCOVID-19の検査の注意点/4学会合同ワーキンググループ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査では、鼻咽頭などからのぬぐい液からのPCR検査、抗原検査が行われているが、検体採取者に感染のリスクを伴うこと、個人防護具やスワブを消費することなど、感染対策においてのデメリットが指摘されてきた。  本年6月に唾液検体を保険適用とする厚生労働省の通知がなされ、また、7月にはPCR検査および抗原定量検査について、唾液検体を用いた検査の対象を無症状者(空港検疫の対象者、濃厚接触者など)にも拡大する方針を示したことにより唾液による検査の増加は今後、増えるものと予想されている。

EGFR変異陽性肺がんアファチニブ→オシメルチニブのシークエンシャル最終解析(GioTag)/ベーリンガー

 ベーリンガーインゲルハイムは、2020年9月2日、GioTagアップデート研究の最終解析結果を発表した。同研究は、T790M変異を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおいて、アファチニブの初回治療後にオシメルチニブを投与する治療法を評価したリアルワールド、レトロスペクティブ観察研究。 結果、解析患者203例におけるアファチニブからオシメルチニブへのシークエンシャル治療の全生存期間(OS)中央値は37.6ヵ月、治療成功期間(TTF)は27.7ヵ月に達した。

日本人双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法~二重盲検プラセボ対照試験

 主に米国と欧州で実施されたこれまでの研究において、双極I型うつ病に対するルラシドン(20~120mg/日)の有効性および安全性が報告されている。理化学研究所 脳神経科学研究センターの加藤 忠史氏らは、日本人を含む多様な民族的背景を有する患者において、双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法の有効性および安全性を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年8月22日号の報告。  対象患者を、ルラシドン20~60mg/日群(182例)、同80~120mg/日群(169例)、プラセボ群(171例)にランダムに割り付け、6週間の二重盲検治療を実施した。主要評価項目は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)のベースラインから6週目までの変化とした。

ALS、フェニル酪酸ナトリウム+taurursodiolが機能低下を遅延/NEJM

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者へのフェニル酪酸ナトリウム+taurursodiol投与は、24週間の機能低下をプラセボよりも遅らせる可能性があることが、米国・ハーバード大学医学大学院のSabrina Paganoni氏らによる、ALS患者137例を対象とした多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。フェニル酪酸ナトリウムおよびtaurursodiol投与は、実験モデルでは神経細胞死を抑制することが示されていたが、ALS患者に対する2剤併用の有効性と安全性は明らかになっていなかった。今回の試験では、副次アウトカムについて2群間で有意差は認められず、結果を踏まえて著者は、「有効性と安全性を評価するには、より長期かつ大規模な試験を行う必要がある」と述べている。NEJM誌2020年9月3日号掲載の報告。

非心臓手術後の新規AF、脳卒中リスクを増大/JAMA

 非心臓手術を受けた患者において、術後30日間に新規の心房細動(AF)を発症した患者は非発症患者と比較して、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)のリスクが有意に増大することが、米国・メイヨー・クリニックのKonstantinos C. Siontis氏らによる550例を対象とした後ろ向きコホート試験で示された。非心臓手術後に発症したAFのアウトカムについて明らかになっていない中で今回の試験は行われたが、得られた所見について著者は「抗凝固療法の必要性など、今回の所見を術後AFの治療に適用するには、無作為化試験による検討が必要である」と述べている。JAMA誌2020年9月1日号掲載の報告。

患者とどこまでわかり合える?「医療マンガ大賞2020」開催

 医療現場では、同じ出来事でも、患者と医療従事者では受け取り方や感じ方が異なることが少なくない。横浜市は、こうした視点の違いによるコミュニケーションギャップの可視化を目的に、「第2回医療マンガ大賞」の開催を発表した。  これは、医療広報の一環として、患者や医療従事者が体験したエピソードを基に、それぞれの視点の違いを描く漫画を公募する取り組み。昨年開催された第1回では、55作品の漫画が応募され、「人生の最終段階」をテーマに患者・家族の視点を描いた油沼氏(ペンネーム)の作品が大賞を受賞した。

FGFR阻害薬pemigatinib、胆管がんに国内申請/インサイト

 インサイト・ジャパンは、2020年9月14日、FGFR阻害薬pemigatinibについて、FGFR2融合遺伝子陽性の局所進行または転移のある胆管がん患者の治療薬として、国内製造販売承認申請を提出したと発表した。pemigatinibは同適応症で、希少疾病用医薬品の指定も受けている。  pemigatinibは米国では、FGFR2融合遺伝子または遺伝子再構成が検出され、治療歴を有する、切除不能な局所進行または転移のある胆管がんの成人患者の治療薬として、FDAの製造販売承認を受け商品名Pemazyreとして販売されている。

日本における若年性認知症の有病率とサブタイプ

 若年性認知症患者の生活には、その年代に合った社会的支援が求められる。最新情報を入手し、適切なサービスを提供するためには、疫学調査が必要である。東京都健康長寿医療センター研究所の粟田 主一氏らは、若年性認知症の有病率、サブタイプの内訳、患者が頻繁に利用するサービスを明らかにするため、調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2020年8月19日号の報告。  本研究は、マルチサイト人口ベース2ステップ研究として実施された。全国12地域(北海道、秋田県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、東京都、新潟県、山梨県、愛知県、大阪府、愛媛県[対象となる人口:1,163万322人])の医療機関、介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所、相談機関などを対象にアンケートを実施した。ステップ1として、過去12ヵ月間で若年性認知症患者がサービス求めたかまたは滞在したかを調査した。ステップ1で「はい」と回答した施設に追加のアンケートの協力を求め、若年性認知症患者へ質問票を配布し、認知症サブタイプなどのより詳細な情報を収集した。

米国Novavax社の新型コロナワクチン、第I相試験で安全性確認/NEJM

 開発中の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のワクチン「NVX-CoV2373」は、接種後35日の時点で安全と考えられ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の回復期血清中のレベルを上回る免疫応答を誘導することが、米国・NovavaxのCheryl Keech氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月2日号に掲載された。NVX-CoV2373は、三量体完全長(すなわち膜貫通ドメインを含む)のスパイク糖蛋白から成る遺伝子組み換えSARS-CoV-2(rSARS-CoV-2)ナノ粒子ワクチンと、Matrix-M1アジュバントを含有する。動物モデルでは、SARS-CoV-2に対する防御効果が確認されている。なお、Novavaxは本ワクチンの日本国内での開発、製造、流通について、武田薬品と提携している。

本邦におけるレムデシビルの投与基準は妥当か?(解説:山口佳寿博氏)-1285

レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)はエボラウイルス病(旧エボラ出血熱)の原因病原体(マイナス1本鎖RNAウイルス)に対する治療薬として開発が進められてきた。レムデシビルは核酸類似体でRNA依存RNA合成酵素を阻害する。この薬物が、プラス1本鎖RNAウイルスである新型コロナにも効果が期待できる可能性があり、世界レベルで治験が施行されてきた。とくに、米国における期待度は高く、米国の新型コロナ感染症の第1例目にレムデシビルが投与され劇的な改善が得られたと報告された。それ以降、米国では科学的根拠が曖昧なまま“人道的(compassionate)”投与が繰り返された(Grein J, et al.N Engl J Med. 2020;382:2327-2336.)。しかしながら、中国・武漢で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(症状発現より12日以内の中等症以上の患者、237例)では、薬物投与群(レムデシビル10日投与)と対照群の間で有意差を認めた臨床指標は存在しなかった(Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.)。本稿で述べる重症度分類は本邦厚労省の『新型コロナウイルス感染症診療の手引き』に準ずる。米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のスポンサーシップの下で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(本邦を含む世界9ヵ国が参加、中等症以上の患者、1,059例)の中途解析(731例)では、臨床症状/所見の回復が薬物投与群(レムデシビル10日投与)で対照群より4日短縮されることが示された(Beigel JH, et al. N Engl J Med. 2020 May 22. [Epub ahead of print])。この結果を受け、米国FDAは5月1日にレムデシビルの重症例に対する緊急使用を承認した。本邦の厚労省も5月7日に呼吸不全を合併する中等症患者、機械呼吸/ECMOを必要とする重症患者(小児を含む)に対してレムデシビルの特例使用を許可した。投与期間に関しては、機械呼吸/ECMO導入例では最大10日間、それ以外の場合には5日間と規定された。