日本語でわかる最新の海外医学論文|page:377

大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ、非薬物療法が有効/BMJ

 大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ症状の治療において、認知活性化療法やマッサージ/接触療法などを用いた非薬物的介入は、臨床的に意義のある症状の改善効果をもたらすことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のJennifer A. Watt氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年3月24日号で報告された。抑うつや孤立感、孤独感などの症状を軽減するアプローチとして、地域で患者に非薬物的介入を行う「社会的処方(social prescribing)」への関心が高まっている。また、非薬物療法(たとえば、運動)が認知症患者の抑うつ症状を低減することが、無作為化試験で示されている。一方、大うつ病性障害の診断の有無を問わず、認知症患者の抑うつ症状に関して、薬物療法と非薬物療法の改善効果を比較した研究は知られていないという。

新型コロナウイルスの血栓対策(解説:後藤信哉氏)-1374

当初肺炎が主病態と考えられた新型コロナウイルス感染症であるが、症例が蓄積されるとともに主な病態は血管系におけるimmunothrombosisであることがわかってきた。結果として静脈血栓症、脳梗塞などの典型的な血栓症の病態を呈することもあるが、血栓形成の開始機序は明確に異なる。成長メカニズムには相同性と特殊性があると想定される。静脈血栓症、心筋梗塞などの動脈血栓症を標的として抗血小板薬、抗凝固薬が開発されてきたが、新型コロナウイルス感染に対する至適抗血栓療法は現時点では未知である。欧米では静脈血栓リスクが一般に高いためICUに入る症例では全例抗凝固療法を受けるのが普通であった。静脈血栓予防と治療では用量が異なる。血栓治療量は血栓症に対して使用される。新型コロナウイルス感染では、一般的な静脈血栓の有無の判定に用いるD-dimerが陽性のことが多い。ならば血栓予防量と治療量のランダム化比較試験を企画しても倫理的問題は起こらない。本研究では新型コロナウイルス感染にてICUに入院した症例における予防量と治療量の抗凝固療法が比較された。

2番目のKRAS G12C阻害薬adagrasib、非小細胞肺がんに有益性示す(KRYSTAL-1)/ELCC2021

 2つ目となるKRAS G12C阻害薬adagrasibの進行非小細胞肺がん(NSCLC)における試結果が、2021年3月25日、欧州肺癌学会(ELCC VIrtual2021)で発表された。  KRYSTAL-1は、KRAS G12C変異陽性の進行または転移のあるNSCLC79例を対象に、adagrasibを評価したマルチコホート第I/II相試験。  結果、患者の92%が化学療法およびPD-(L)1阻害薬の治療歴を有していた。有効性評価対象51例の45%がadagrasib治療により部分奏効(PR)を示し、26例(51%)が安定(SD)となった。

急性・慢性心不全診療―JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版発表 /日本循環器学会

 3月26~28日に開催された第85回日本循環器学会学術集会のガイドライン関連セッションにおいて、筒井 裕之氏(九州大学循環器内科学 教授)が「2021年JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」を発表した。本講ではHFrEF治療に対する新規薬物の位置付けに焦点が当てられた。  今回のアップデート版は2017年改訂版を踏襲している。まず、筒井氏はアルゴリズムの仕様の変更点について説明。前回の治療アルゴリズムでは、薬物治療と非薬物治療を明確に分けず疾患管理や急性増悪時の対応が不十分であった。これを踏まえ、「薬物治療と非薬物治療を明確に分け、薬物治療から非薬物治療へ移行する際に薬物治療が十分に行われていたかどうかを確認する。疾患管理はすべての心不全患者に必要なため、緩和ケアを含め位置付けを一番下部から上部へ変更し、急性増悪した際には急性心不全のアルゴリズムに移行することを追記した」と話した。

がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開

 2021年3月29日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。昨年に公開された新型コロナとがん診療に関するQ&Aに付随した「ワクチン版」となる。  ワクチン開発段階の臨床試験では、がん患者が対象に組み入れられることは少なかったが、世界各国で接種が進み、がん患者に関するエビデンスが集まりつつある現状を紹介。

境界性パーソナリティ障害患者の不眠

 睡眠障害と境界性パーソナリティ障害(BPD)は、それぞれの疾患を併発することが少なくない。チェコ・パラツキー大学のJakub Vanek氏らは、BPD患者における睡眠障害関連の知識、睡眠マネジメント、研究の今後の方向性を明らかにするため、ナラティブレビューを実施した。Nature and Science of Sleep誌2021年2月22日号の報告。  PubMedおよびWeb of Scienceより、1980年1月~2020年10月に公表された論文をキーワード(睡眠障害、不眠症、悪夢、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、BPD)を使用して抽出した。選択基準は、査読付きジャーナルへの掲載、ヒトを対象とした研究、関連トピックのレビュー、英語での報告とした。除外基準は、会議録、解説論文、18歳未満を対象とした試験とした。101件のフルテキストを精査し、選択された42件の論文のリファレンスリストを検索し、合計71件の論文をレビューに含めた。

ワクチン接種の経済価値は10年間で50兆円―英国調査

 COVID-19ワクチン接種による集団免疫獲得は経済にどのような影響をもたらすのか。英国において年齢構造化感染モデルと経済モデルを使った試算が行われた。The Lancet Infectious Diseasesオンライン版3月18日号掲載の報告。  研究者らは、今後10年間に渡る英国のワクチン接種プログラムについて、さまざまなシナリオを検討した。

早期肺がん、アテゾリズマブの補助療法が主要評価項目を達成(IMpower010)/Genentech

 RocheグループのGenentechは、2021年3月21日、アテゾリズマブをベストサポーティブケア(BSC)と比較する第III相IMpower010試験の中間分析において、主要評価項目の無病生存期間(DFS)を達成したと発表。  IMpower010は、Stage IB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、外科的切除とシスプラチンベースの補助療法(最大4サイクル)後のアジュバントにおけるアテゾリズマブの有効性と安全性をBSCと比較した国際第III非盲検試験。無作為割り付けは1,005例が対象となった。

既治療の進行尿路上皮がん、enfortumab vedotinが有望/NEJM

 プラチナ製剤ベースの化学療法と、プログラム細胞死-1(PD-1)/プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)阻害薬による治療歴のある局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の治療において、enfortumab vedotinは標準化学療法と比較して、全生存(OS)期間と無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象の頻度は同程度であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のThomas Powles氏らが実施した「EV-301試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年3月25日号に掲載された。プラチナ製剤ベースの化学療法とPD-1/PD-L1阻害薬による治療後に病勢が進行した進行尿路上皮がん患者の治療法は限られており、ほとんど効果はないとされる。enfortumab vedotinは、ネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であり、ネクチン-4に特異的な完全ヒトモノクローナル抗体と、微小管形成の阻害薬であるモノメチルアウリスタチンEで構成される。ネクチン-4は、尿路上皮がんで高発現している細胞接着分子であり、腫瘍細胞の成長と増殖に寄与すると考えられている。

COVID-19施設内感染対策案を発表/日本感染症学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療では、医療機関の施設内感染対策は重要な課題である。実際、院内感染によるクラスターの発生により通常の診療ができなくなった医療機関も全国に存在する。  こうした状況を鑑み、日本感染症学会(理事長:東邦大学医学部教授 舘田 一博氏)は、3月29日に「COVID-19施設内感染アンケート調査を踏まえた施設内感染対策案」を同学会のホームぺージで発表、公開した。  本対策案では、263施設(追加288施設)にアンケートを行い、実際に施設内伝播のあった42施設の回答をまとめた。この回答結果から反省点や今後の対策が示唆されている。

CAVIは心血管イベントを予測できるか(CAVI-J)/日本循環器学会

 高リスク患者の心血管イベント予測因子として、CAVI(cardio-ankle vascular index:心臓足首血管指数)の付加的有用性を検証したCAVI-J研究の結果を、三好 亨氏(岡山大学循環器内科)が第85回日本循環器学会学術集会(2021年3月26日~28日)のLate Breaking Sessionで発表した。本結果から、CAVIは心血管イベントの予測に役立つことが示唆された。  動脈硬化は心血管イベントの重要な予測因子であり、単一施設または小規模の研究では、CAVIと心血管イベント発症の関連が報告されている。今回、三好氏らは大規模前向きコホートで、心血管リスクのある患者においてCAVIが心血管イベントの予測に優れているかどうか、心血管イベントの予測でCAVIの追加が従来のリスク因子による予測能を改善するかどうかを検討した。

うつ病に対するプロバイオティクスの有効性、安全性

 プロバイオティクス(腸内細菌叢)は、脳腸軸の活性を通じて、気分障害や不安症に関連する症状を改善することが、多くの研究で報告されている。しかし、治療歴のないうつ病患者を対象としてプロバイオティクスの効果を検討した試験は行われていなかった。カナダ・クイーンズ大学のCaroline J. K. Wallace氏らは、治療歴のないうつ病患者10例を対象にプロバイオティクス投与前後の抑うつ症状の変化を調査するため、8週間オープンラベル試験を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年2月15日号の報告。

新型コロナワクチン、予診票で確認すべきポイントは?/厚労省

 4月12日以降に予定されている高齢者への新型コロナワクチン接種開始を前に、厚生労働省は3月26日、新型コロナワクチン「予診票の確認のポイント」を公開した。予診票記載の14項目について接種前に確認すべき点がまとめられている。事務職員が確認可能な項目、最終的に医師の確認が必要な項目についても整理されている。  予診票には、「現在何らかの病気にかかって治療(投薬など)を受けていますか」という問いが設けられ、抗凝固薬(血をサラサラにする薬と表記)の利用状況を問う項目が設けられている。確認ポイントとしては、とくに以下に該当するかに注意して接種の判断をするよう求めている: ・基礎疾患の状態が悪化している場合や全身状態が悪い場合  体調が回復してから接種することが大切なため、体調が悪いときの接種は控える。体調がよくなった頃に、改めて次の接種を相談するよう説明する。接種後の軽度の副反応が重篤な転帰に繋がることのないよう、とくに慎重に予防接種の適否を判断する必要がある。

zoom導入率は?医療機関のオンライン化はこの1年でどのくらい進んだか

 この1年間、新型コロナの影響で院内カンファレンスや学会のオンライン化が一気に進んだとされる。実際のところ、医療機関ではどんなツールが導入され、どんな目的に使われているのか。20床以上の医療機関に勤務する会員医師にオンラインアンケートを行い、1,019人から回答を得た。  「『2020年以降』に、勤務先の医療機関で導入されたオンラインツール」(複数回答可)を聞いた設問では、オンライン会議ツール「zoom」が620人(61%)と最多となり、「LINE」が122人(12%)、「Skype」が66人(6%)と続いた。「2020年以降に導入されたツールはない」との回答は329人(32%)だった。

ナノミセルを使った効率的なゲノム編集法の開発に成功

 公益財団法人川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)の副主幹研究員、内田 智士氏(京都府立医科大学准教授)らの研究グループは、ナノミセルを用いたCRISPR/Cas9の送達手法を開発し、世界で初めてRNAを基盤としたマウス脳内でのゲノム編集に成功したことを3月10日付けのプレスリリースで発表した。本研究の成果は2021年3月4日にJournal of Controlled Release誌に掲載された。  ゲノム編集技術は、遺伝子異常が原因の疾患に対して、ヒトの遺伝子を自由に改変することで異常が起こった遺伝子を修復し、永続的な効果が期待できる治療法である。

タモキシフェン、低用量でも乳腺濃度は減少するか?/JCO

 乳がん術後補助療法としてのタモキシフェン標準用量20mgと比較して、1~10mgの低用量は非劣性であるか、また服用による副作用はどう変化するのか。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMikael Eriksson氏らは、タモキシフェン療法による反応の指標としてマンモグラフィにおける乳腺濃度の変化を用い、用量別の効果と副作用について検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年3月18日号掲載の報告。  研究者らは、スウェーデンのマンモグラフィスクリーニングプログラムに参加している40~74歳の女性を対象に、閉経状態によって層別化された6ヵ月の二重盲検6アーム無作為化プラセボ対照非劣性用量決定第II相試験(KARISMA試験)を実施。

COVID-19の低酸素血症にヘルメット型マスクは有用か?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で中等度~重度の低酸素血症患者において、ヘルメット型非侵襲的換気法は高流量経鼻酸素療法と比較して、28日間のうち呼吸補助が不要だった日数について有意差はないことが、イタリア・Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCSのDomenico Luca Grieco氏らによる無作為化試験「HENIVOT試験」の結果で示された。急性低酸素呼吸不全の初期治療に推奨されている高流量経鼻酸素療法は、COVID-19患者に広く適用されている。ヘルメット型非侵襲的換気法は最近提唱された急性低酸素呼吸不全の代替管理法だが、有効性に関するエビデンスはなく使用は限定的とされていた。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究で、気管挿管の必要性など、その他のアウトカムへの影響も確認する必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年3月25日号掲載の報告。

若年者の肥満・高血圧、心不全発症リスクへの影響は?/BMJ

 若年者のほうが高齢者と比較して、心不全発症率および絶対リスクは低いが、リスクとの関連性が強く、修正可能な絶対リスクのリスクへの寄与が高いことが示された。シンガポール国立心臓センターのJasper Tromp氏らが、フラミンガム心臓研究などの参加者を対象としたプールコホート研究の結果、明らかにした。若年者のほうが高齢者と比べて心不全発症率が低いことは知られているが、年齢差を考慮したリスク因子との関連に関する研究はほとんど行われていなかった。先行研究では、電子健康記録を用いた研究で、心不全を含む12の心血管疾患発症と血圧上昇との相対リスク低下が認められたことや、心不全患者を対象とした研究で、若年患者(55歳以下)は肥満、男性、糖尿病既往者で多くみられることは報告されていた。今回の結果について研究グループは、「成人への生涯にわたる予防介入の重要性を浮き彫りにしている」と述べている。BMJ誌2021年3月23日号掲載の報告。

降圧治療と副作用:システマティックレビューおよびメタ解析(解説:石川讓治氏)-1370

高血圧は心血管イベント発症のリスク増加と関連し、降圧治療が心血管イベント発症を抑制することが報告されている。STRATIFY研究グループのメンバーは、降圧薬の介入試験や大規模観察研究の結果のシステマティックレビューとメタ解析を行い、降圧治療は全死亡、心血管死亡、脳卒中の発症抑制と関連し、降圧治療の副作用としては、転倒のリスク増加とは有意な関連がなく(1次評価項目:リスク比1.05、95%信頼区間0.89~1.24)、2次評価項目である急性腎障害(リスク比1.18、95%信頼区間1.01~1.39)、高カリウム血症(リスク比1.89、95%信頼区間1.56~2.30)、低血圧(リスク比1.97、95%信頼区間1.67~2.32)、失神(リスク比1.28、95%信頼区間1.03~1.59)といった副作用のリスク増加と関連していたことを報告した1)。Bromfieldら2)の以前の研究においても、降圧治療中の転倒のリスクは血圧レベルよりもフレイルの存在やポリファーマシーと関連していたことが報告されており、本研究のメタ解析においても降圧治療は転倒のリスク増加と関連していなかったことが再確認された。

ニボルマブ+イピリムマブの肺がん術前治療、主要評価項目を達成(NEOSTAR)/Nat Med

 手術可能NSCLC患者を対象に、ニボルマブ+イピリムマブによる術前治療の有効性と安全性を評価する第II相NEOSTAR試験の追跡結果がNature Medicine誌に掲載された。 ・対象:切除可能Stage I~IIIA 非小細胞肺がん(Single N2) ・arm A:ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(NI群) ・arm B:ニボルマブ3mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(N群) ・評価項目: [主要評価項目]N群とNI群のMPR(Major Pathologic Response、生存しうる腫瘍細胞10%以下) [副次評価項目]毒性、周術期罹患率/死亡率、奏効率(ORR)、無再発生存期間、全生存期間など