日本語でわかる最新の海外医学論文|page:373

イスラエルの新型コロナワクチンの効果、地域や年齢による差は?

 新型コロナワクチンの接種が各国にて急ピッチで進められているが、社会における実質的な効果の検証が求められている。イスラエル・ワイツマン科学研究所のHagai Rossman氏ら研究チームが、国内におけるワクチン接種の開始前後におけるCOVID-19症例数と入院数の経時的変化について分析したところ、ワクチン接種における年齢および地域の優先順に、COVID-19症例数および入院者数が大幅かつ速やかに減少傾向を示していたことがわかった。イスラエルでは、2020年12月20日から新型コロナワクチン接種が始まり、優先対象の60歳以上では、2月24日時点で85%が2回の接種済みだという。著者らは、本結果がコロナパンデミックに対する全国的なワクチン接種キャンペーンの実効性を示唆するものだと述べている。Nature Medicine誌オンライン版2021年4月19日号に掲載の報告。

新型コロナワクチン、既感染者での効果は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染者にワクチンを接種すべきかどうか、はっきりしていない。これまでに既感染者が未感染者よりワクチンによる抗体応答が有意に高かった報告は少ない。今回、イタリア・シエナ大学のGabriele Anichini氏らが実施したコホート研究では、既感染者でのワクチン単回接種後の中和抗体価が、未感染者における2回接種後より有意に高いことが示された。NEJM誌オンライン版2021年4月14日号のCORRESPONDENCEに報告。

軽度~中等度のうつ病に対する催眠療法の有効性

 うつ病に対する催眠療法の有効性を検討した研究では、適切に設定された方法で行われたランダム化比較試験が不足している。ドイツ・テュービンゲン大学病院のKristina Fuhr氏らは、軽度~中等度のうつ病患者の抑うつ症状軽減に対する催眠療法について、認知行動療法との非劣性を評価するため、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年3月5日号の報告。  本研究は、評価者盲検ランダム化比較試験として実施した。うつ病外来患者152例を対象に、6ヵ月間で16~20回の催眠療法または認知行動療法のいずれかの治療にランダムに割り付けた。主要アウトカムは、治療前後のMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)で評価した抑うつ症状の平均改善度とした。

多発性骨髄腫、CRd療法でダラツムマブ追加の有効性確認/JAMA Oncol

 最近の研究によって、多発性骨髄腫の1次治療として、プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾンの3剤併用(VRd療法)にダラツムマブを追加することの有用性が確認されたが、プロテアソーム阻害薬をカルフィルゾミブに代えたCRd療法においても、ダラツムマブ追加の有効性が示されたという。米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのOla Landgren氏らの非ランダム化MANHATTAN試験の結果によるもので、JAMA Oncology誌4月15日号オンライン版に掲載された。

オキシトシンによる分娩誘発、陣痛活動期に継続すべきか中止すべきか?/BMJ

 胎児の状態と子宮収縮のモニタリングが保証される環境において、オキシトシンによる誘発の中止は、帝王切開率のわずかな上昇につながる可能性があるが、子宮過刺激および胎児心拍異常のリスクを有意に低下したことが示された。デンマーク・Randers Regional HospitalのSidsel Boie氏らが、同国の9病院とオランダの1病院で実施した国際共同無作為化二重盲検比較試験「Continued versus discontinued oxytocin stimulation in the active phase of labour:CONDISOX」の結果を報告した。これまで4件のメタ解析では、いったん陣痛活動期に入れば、オキシトシンの投与を中止しても分娩の経過は継続し、帝王切開のリスクが低くなることが示されていた。しかし、2018年のCochrane reviewで過去の研究の質が疑問視され、多くの試験が、バイアスリスクが高いまたは不明と判断されていた。BMJ誌2021年4月14日号掲載の報告。

中等度~重度うつ病に対するpsilocybin vs.エスシタロプラム/NEJM

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRobin Carhart-Harris氏らは、6週間の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果、中等度~重度大うつ病性障害に対しpsilocybinは選択的セロトニン再取り込み阻害薬のエスシタロプラムと比較して、6週時のQIDS-SR-16うつ症状スコアの変化に基づく抗うつ作用に有意差はないことを明らかにした。psilocybinおよびその代謝物のシロシンは催幻覚物質で、その作用は主に5-HT2A受容体アゴニスト作用による。これまでに、治療抵抗性うつ病患者を対象とした小規模な非盲検試験ではpsilocybinの抗うつ症状改善効果が報告されていた。しかし、確立された既存のうつ病治療薬とpsilocybinの直接比較は行われていなかった。著者は今回の結果に基づき、「psilocybinと既存の抗うつ薬を比較検証する、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2021年4月15日号掲載の報告。

腎性貧血に対するHIF-PH阻害薬モリデュスタットを発売/バイエル薬品

 バイエル薬品は、HIF-PH(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)阻害薬モリデュスタットナトリウム(商品名:マスーレッド)を腎性貧血治療薬として2021年4月22日に発売したと発表した。本剤は、保存期および透析期慢性腎臓病の主要な合併症の1つである腎性貧血に対して、1日1回の経口投与によりヘモグロビン値を管理できる腎性貧血治療薬。  本剤は、高地などで低酸素状態に適応する際の身体の生理的な反応を穏やかに活性化し、エリスロポエチンの産生を誘導して赤血球の産生を促進することにより、腎性貧血を改善する。錠剤の識別性の向上のため、両面に製品名や用量を印字している。

アナモレリン、がん悪液質に新たな治療選択肢/小野薬品

 小野薬品工業は、2021年4月21日、グレリン様作用薬アナモレリン(商品名:エドルミズ)について、「悪性腫瘍(非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌)におけるがん悪液質」の効能又は効果で国内において新発売した。  がん悪液質は、がんに伴う体重減少(特に筋肉量の減少)や食欲不振を特徴とする複合的な代謝異常症候群であり、がん患者の生活の質(QOL)や予後に顕著な影響を及ぼすことが分かってきているが、これまでに国内でがん悪液質の治療薬として承認された薬剤はなかった。

アビガン、発症早期COVID-19患者に対する第III相試験開始/富士フイルム富山化学

 富士フイルム富山化学は、アビガン(一般名:ファビピラビル)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象とした新たな第III相試験を国内で開始したことを、4月21日に発表した。本試験は、重症化リスク因子を有する、発症早期のCOVID-19患者において有効性・安全性を検証する二重盲検プラセボ対照試験。  アビガンについては、非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目で統計学的有意差を確認したことから、アビガンの製造販売承認事項一部変更承認申請を行っている。

CLLに次世代BTK阻害薬アカラブルチニブを販売開始/アストラゼネカ

 アストラゼネカは2021年4月21日、「再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」を効能又は効果とした、アカラブルチニブ(商品名:カルケンス)の販売を開始した。アカラブルチニブは、経口投与可能な次世代の選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬である。

中和抗体カクテル療法で症候性COVID-19発症リスクが81%減/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は4月12日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染者との家庭内での濃厚接触者を対象に、中和抗体カクテル療法によるCOVID-19発症リスクおよび負担軽減を評価した第III相臨床試験(REGN-COV 2069試験)において、良好な結果を確認したと発表した。casirivimabとimdevimabの皮下投与により、試験開始時に感染していなかった人の症候性感染の発症リスクが81%減少したことが示されたという。

日本における認知症専門チームに対する金銭的インセンティブの効果

 これまで、急性期治療環境下における認知症治療の質は批判的にみられていた。2016年に日本において、急性期病院の認知症専門家チームによる認知症ケアに対する金銭的インセンティブが導入された。筑波大学の森田 光治良氏らは、この金銭的インセンティブが、短期的な結果(院内死亡率および30日間の再入院)に対して有用であったかを調査した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年3月17日号の報告。

新型コロナ既往者の再感染リスクは84%減少/Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染既往者は、非既往者に比べ感染リスクは約84%減少し、その効果持続期間の中央値は7ヵ月であることが、英国・Public Health England ColindaleのVictoria Jane Hall氏らによる、英国内の病院に勤務する医療従事者やスタッフなど約2万6,000例を対象とした大規模前向きコホート試験の結果で示された。なお期間については、セロコンバージョンを含んでおらず最短である可能性があるという。COVID-19からの回復者に再感染の保護効果があるのかについて理解を深めることは喫緊の課題とされている。著者らは、SARS-CoV-2への獲得抗体が症候性および無症候性の再感染リスク減少と関連するのかどうかを検討した。結果を踏まえて著者は、「SARS-CoV-2への感染既往は、大半の人にとって将来的な感染に有益な免疫をもたらすことを示すものであった」と述べている。Lancet誌2021年4月17日号掲載の報告。

緊急気管挿管後の有害イベント、45.2%で発生/JAMA

 重症患者への気管挿管後の主要有害イベント発生率は、45.2%と頻繁にみられることが、29ヵ国、197ヵ所の医療機関、約3,000例を対象に行った観察試験で示された。とくに多くみられたのは心血管系の不安定化で、緊急挿管を受けた患者の42.6%で発生がみられたという。イタリア・ミラノ・ビコッカ大学のVincenzo Russotto氏らによる、International Observational Study to Understand the Impact and Best Practices of Airway Management in Critically Ill Patients(INTUBE)試験の結果で、JAMA誌2021年3月23日号で発表された。重症患者への気管挿管は最も頻繁に行われる行為であると同時にリスクの高い手技でもあるが、これまで挿管時の有害イベントに関する情報は限定的であった。

高用量セマグルチドが肥満糖尿病患者の体重減量やQOLに有効である(解説:安孫子亜津子氏)-1378

わが国では2010年からGLP-1受容体作動薬を糖尿病治療薬として使用しており、血糖降下作用以外の、食欲抑制効果、胃内容物排出遅延効果により、体重の減少効果も期待できる薬剤である。2020年からわが国でも使用できるようになった週1回注射製剤のセマグルチド(Sema)(商品名:オゼンピック)は、26位アミノ酸のリジンに脂肪酸を結合させることでアルブミンへの結合が増強されて分解が遅延するため、血中半減期が約1週間のGLP-1アナログである。これまでにSemaの2型糖尿病患者への臨床試験は「SUSTAINプログラム」として、多くの試験が実施され、Sema 0.5mgおよび1.0mgの血糖降下作用、および体重減少作用が報告されてきた。わが国でのSema 1.0mg単独療法での30週における体重減少効果は-3.87kgであった。さらにSUSTAIN-6では心血管イベントの有意な抑制効果が認められている。

難治性乳がん・膵がんに有効なsiRNAの開発に成功/東大医科研

 東京大学医科学研究所は、2021年4月20日、記者会見にて同研究グループが、乳がん、膵がんで発現が亢進している転写因子PRDM14遺伝子を標的とするsiRNA核酸抗がん医薬を開発したと発表。  この核酸医薬候補は新規の薬効成分であるPRDM14遺伝子配列に特異性の高いキメラ型 siRNA(一部をDNAに置換)と核酸の病変部位への送達を可能にしたYshaped block co-polymer(YBC)から構成され、非臨床試験において腫瘍径の増大の抑制を認め、遠隔転移 モデルにおいて、転移巣の減少、生存期間の延長が認められた。

統合失調症患者におけるアセナピンとブレクスピプラゾールの治療継続率

 東京・車庫前こころのクリニックの井上 雄一氏らは、アセナピンとブレクスピプラゾールの治療継続率の比較およびブレクスピプラゾールの臨床効果に影響を及ぼす因子を特定するため、検討を行った。Brain and Behavior誌オンライン版2021年3月13日号の報告。  実臨床下で、アセナピン(73例)またはブレクスピプラゾール(136例)を処方した統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブ研究を行った。  主な結果は以下のとおり。

アプリでのバランス感覚練習、2年で高齢者の転倒率低下/BMJ

 StandingTallは、アプリケーションを用いて自宅で行うe-ヘルスのバランス感覚練習プログラム。オーストラリア・Neuroscience Research AustraliaのKim Delbaere氏らは、高齢者の自己管理による転倒予防におけるStandingTallの有用性を検討し、1年間では転倒率や転倒者の割合は改善されないものの、2年間継続すると、転倒率や処置を要する転倒の割合が低下する可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2021年4月6日号に掲載された。

FDA、ニボルマブ+化学療法による胃がん、胃食道接合部がん、食道腺がんの1次治療を承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年4月16日、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法との併用療法で、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が、PD-L1発現率にかかわらず、進行または転移のある胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの1次治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)に承認されたことを発表した。  この承認は、未治療の進行または転移を有する胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの患者を対象として、ニボルマブとmFOLFOX6またはCapeOXの併用療法を、化学療法(mFOLFOX6またはCapeOX)と比較評価した第III相CheckMate-649試験の結果に基づいたもの。

ファイザー製ワクチン、免疫チェックポイント阻害薬投与がん患者での安全性

 全身薬物療法で治療後もしくは治療中のがん患者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡リスクが高いため、ワクチン接種の優先度が高いグループと見なされる。しかし、がん患者におけるワクチンの安全性および有効性データはない。また、一部の専門家から、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与患者において、ワクチンで免疫関連有害事象を誘発または増強する可能性が指摘されている。今回、イスラエル・Tel Aviv Sourasky Medical CenterのBarliz Waissengrin氏らは、ICIで治療されたがん患者におけるファイザー社製ワクチン(BNT162b2 mRNAワクチン)の安全性について調査した。Lancet Oncology誌オンライン版2021年4月1日号に掲載。