日本語でわかる最新の海外医学論文|page:346

治療抵抗性うつ病に対する併用療法の有効性と忍容性~メタ解析

 うつ病治療を成功に導くことは困難な場合があり、治療抵抗性うつ病に至るケースは少なくない。治療抵抗性うつ病の治療では、抗うつ薬の増量、他の抗うつ薬の併用、抗うつ薬以外の併用薬の追加、非薬理学的治療の併用が行われる。しかし、これらの相対的な有効性および忍容性は、十分に検討されていなかった。とくに、併用薬であるリチウムと比較した、第2世代抗精神病薬(SGA)およびesketamineの有効性および安全性はよくわかっていない。米国・McLean HospitalのGustavo H Vazquez氏らは、治療抵抗性うつ病に対するSGAおよびesketamine併用療法の有効性および忍容性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2021年7月9日号の報告。

第XI因子阻害薬abelacimab、術後VTE予防に有効/NEJM

 術後静脈血栓塞栓症の発生に第XI因子は重要であり、人工膝関節全置換術後の第XI因子阻害モノクローナル抗体abelacimabの単回静脈内投与は、術後静脈血栓塞栓症の予防に有効であることが示された。出血リスクは低かった。ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のPeter Verhamme氏らANT-005 TKA研究グループが、412例を対象とした非盲検並行群間比較試験の結果を報告した。NEJM誌2021年8月12日号掲載の報告。  研究グループは、人工膝関節全置換術を受ける412例を無作為に4群に割り付け、abelacimabレジメン(30mg、75mg、150mgのいずれか)を術後単回静脈内投与、またはエノキサパリン40mgを1日1回皮下投与した。

異種ワクチン接種、AZ/ファイザーとファイザー/AZの有効性と安全性/Lancet

 アデノウイルスベクターワクチン(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製、ChAd)とmRNAワクチン(BNT162b2、Pfizer-BioNTech製、BNT)の異なるワクチンを用いた接種法について、BNT/ChAd接種法はBNT/BNT接種法に対する非劣性基準を満たさなかったが、BNT/ChAdおよびChAd/BNTの2つの異種接種法はいずれもChAd/ChAd接種法と比べて、SARS-CoV-2抗スパイクIgG値が高く、COVID-19疾患および入院に対して有効であることが示された。英国・オックスフォード大学のXinxue Liu氏らが同種vs.異種COVID-19ワクチンプライムブースト接種法の安全性と免疫原性を検討した参加者盲検無作為化非劣性試験「Com-COV試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「ChAd/ChAdと比べてBNT/ChAdの免疫原性は高いことに加えて、今回の試験データは、ChAdおよびBNTを用いた異種プライムブーストワクチン接種を柔軟に行うことを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年8月6日号掲載の報告。

HER2陽性早期乳がんへのトラスツズマブの上乗せ効果~メタ解析/Lancet Oncol

 HER2陽性早期乳がんに対する補助化学療法へのトラスツズマブ上乗せによる再発率と死亡率への長期的ベネフィットについて、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative group(EBCTCG)が7つの無作為化試験のメタ解析により検討した。その結果、トラスツズマブ上乗せにより、患者および腫瘍の特徴にかかわらず、乳がん再発率を34%、乳がん死亡率を33%減少させたことが示唆された。Lancet Oncology誌2021年8月号に掲載。

コロナ禍がもたらすストレスと解消法/アイスタット

 約2年にわたる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、日常生活が失われ、生活のさまざまな面で自粛や我慢をする場面が散見される。また、経済活動の停滞は、収入減少など将来への不安要素となり、精神面に悪影響を及ぼしている。  そうした環境の中、COVID-19が私たちにもたらした精神面への影響はどのくらいあるのだろうか。株式会社アイスタットは、8月4日にアンケートを実施した。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~49歳の東京在住の300人が対象。

アルコール依存症に対するナルメフェンの安全性と治療継続率

 アルコール依存症に対するナルメフェンの安全性と治療継続率を評価するため、英国・Castle Craig HospitalのJonathan Chick氏らは、2つの市販後研究を基に評価を行った。Alcohol and Alcoholism誌オンライン版2021年7月1日号の報告。  START研究(EUPAS5678)およびマルチデータベースレトロスペクティブコホート(MDRC)研究(EUPAS14083)の2つの研究を評価した。START研究は、ナルメフェン治療を開始した外来患者を対象とした18ヵ月の非介入多国間プロスペクティブコホート研究(フォローアップ受診:8回)である。MDRC研究では、ドイツ、スウェーデン、英国の医療データベースより、ベースラインデータおよびフォローアップデータを収集した。両研究ともに、明確な除外基準は設けず、すべての患者を対象とした。高齢者(65歳以上)および重大な精神的および/または身体的併存疾患を有する患者によるサブグループ解析を行った。

AZ製ワクチンによるVITTの臨床的特徴とは?/NEJM

 ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)による死亡率は高く、とくに血小板数が低く頭蓋内出血を起こした患者で最も高いことが、英国のVITT 220例の検証の結果、明らかとなった。英国・Oxford University Hospitals NHS Foundation TrustのSue Pavord氏らが、報告した。VITTは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチン(アストラゼネカ製)に関連した新たな症候群で、この疾患に対する臨床特性や予後に関するデータは不足していた。結果を踏まえて著者は、「治療法は不明なままであるが、予後マーカーの特定が今後の有効な管理に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年8月11日号掲載の報告。

モデルナ製ワクチン、12~17歳に対する安全性と有効性を確認/NEJM

 mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は、12~17歳の若年者において良好な安全性プロファイルと、若年成人(18~25歳)と同等の免疫反応を示し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であることが認められた。米国・DM Clinical ResearchのKashif Ali氏らが、mRNA-1273ワクチンの第II/III相プラセボ対照比較試験「Teen COVE試験(Teen Coronavirus Efficacy trial)」の中間解析結果を報告した。2021年4月1日~6月11日における米国12~17歳のCOVID-19発生率は、約900/10万人とされるが、若年者におけるmRNA-1273ワクチンの安全性、免疫原性および有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年8月11日号掲載の報告。

ネットワークメタ解析・システマティックレビューは語る―スタチンの1次治療は副作用を考慮しても病気予防に利得あり―(解説:島田俊夫氏)

スタチンは高コレステロール血症の2次治療に広く使われ、有害作用として横紋筋融解症が最もよく知られている。利益・損失をトレードオフの視点から見ると利益が勝るエビデンスが多く、2次治療は素直に受け入れられている。逆に、まったく自覚症状のない1次治療は患者の多くが自分が病になる実感もなく、高リスクに晒されているとの懸念もなく、マスメディアの影響を受けやすい。そのうえ、スタチンの1次治療はエビデンスが乏しいこともあり、治療を受ける患者を納得させにくい。高コレステロール血症に対するスタチンによる1次治療のエビデンスは、既存データを巧みに利用するネットワーク・メタアナリシス(NMA)/システマティックレビュー(SYSR)の利用に注目が集まっている。

免疫不全者へのブースター接種、推奨事由と対象者/CDC

 米国・疾病対策センター(CDC)は免疫不全者を対象としたCOVID-19ワクチンの追加接種(ブースター接種)の承認を受け、8月16日付でサイトの情報を更新した。主な内容は以下のとおり。 ・中等度から重度の免疫不全状態にある人はCOVID-19に感染しやすく、重症化、長期化するリスクも高いとされる。これらの人にはワクチンの追加接種が有効であり、接種を推奨する。 ・mRNAワクチン(ファイザー製およびモデルナ製)の2回目の接種から少なくとも28日経ってから追加接種を行うことを推奨する。 ・現時点では、他の集団に対する追加接種は推奨しない。

悪性胸膜中皮腫に対するmiRNA製剤を開発/広島大学

 広島大学大学院医系科学研究科・細胞分子生物学研究室の田原 栄俊氏、 同大学原爆放射線医科学研究所・腫瘍外科の岡田 守人氏らの研究グループは、スリーディマトリックスと共同で、悪性胸膜中皮腫に対して顕著な治療効果の可能性がある核酸医薬の抗がん剤の開発に成功した。  共同開発した抗がん剤「MIRX002」は、天然型マイクロRNAを薬効成分とするもので、 岡田氏による悪性胸膜中皮腫を対象とする医師主導治験(第I相試験)の治験届がPMDAに受理され、治験開始準備が整った。

コロナ感染経路不明者、リスク高い行動の知識が不足/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株による感染拡大の勢いが止まらない。  感染の主役は、COVID-19ワクチン接種を終えた高齢者にとって代わり、50代以下の若年・中年層へと拡大している。  こうした働き盛り、遊び盛りのこれらの年代の陽性者が、どこで、どのように感染しているのか。「感染経路不明」とされる事例の解明は、感染の封じ込め対策で重要な要素となる。  国立国際医療研究センターの匹田 さやか氏(国際感染症センター)らの研究グループは、入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行い、その結果をGlobal Health & Medicine誌に発表した。

肺がん、新PD-1阻害薬cemiplimab+化学療法の第III相試験(EMPOWER-Lung3)が有効中止/Sanofi

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する新規PD-1阻害薬cemiplimabとプラチナダブレット化学療法の併用の有用性を検討した第III相EMPOWER-Lung3試験は、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成し、中間解析で有効中止された。  EMPOWER-Lung3試験は、未治療のStage IVまたはStage IIIB/ CのNSCLCにおいて、PD-L1発現および組織型(扁平上皮および非扁平上皮)に関係なく、cemiplimab+プラチナダブレット化学療法とプラチナダブレット化学療法単独を比較した無作為化多施設第III相試験。

不安、うつ、ストレスと舌痛症との関連

 舌痛症は、臨床的に明らかな原因疾患を認めないにもかかわらず、口腔内における重度の熱傷を特徴とする痛みを伴う疾患である。舌痛症の原因の1つとして、メンタルヘルスの状態が影響を及ぼしている可能性が示唆されている。ブラジル・Federal University of CearaのCassia Emanuella Nobrega Malta氏らは、舌痛症と不安、うつ、ストレスとの関連を調査した。General Dentistry誌2021年7・8月号の報告。  60例の患者を舌痛症群、口腔内良性病変群(不安症状を有する対照群)、健康対照群(不安症状のない対照群)の3群に割り当て、ケースコントロール研究を実施した。ビジュアルアナログスケール(VAS)、ベックうつ病評価尺度、Lipp Stress Symptoms Inventory、Xerostomia Inventory-Dutch Version、舌痛症アンケートを用いて評価を行った。統計分析には、Kruskal-Wallis with Dunn post hoc、Pearsonカイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定、多項ロジスティック回帰テストを用いた。

2型DM、tirzepatide vs.インスリン デグルデク漸増投与/Lancet

 2型糖尿病患者で、メトホルミン単独またはSGLT-2阻害薬との併用投与では血糖コントロールが不十分な18歳以上に対し、デュアルGIP/GLP受容体作動薬tirzepatideの週1回投与は、インスリン デグルデク漸増投与に比べ、52週時点のHbA1c値低下や体重減について、優越性が示された。オーストラリア・Vienna Health AssociationのBernhard Ludvik氏らが、1,444例を対象に行った有効性と安全性を評価する第III相無作為化非盲検並行群比較試験「SURPASS-3試験」の結果を報告した。安全性プロファイルは同等だったという。Lancet誌2021年8月14日号掲載の報告。

非入院COVID-19患者へのブデソニド、回復期間を3日短縮/Lancet

 合併症リスクの高い居宅療養の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、ブデソニド吸入薬は回復までの期間を短縮し、優越性は示されなかったが入院または死亡も減少することが示された。英国・オックスフォード大学のLy-Mee Yu氏らが、2,530例を対象に行った無作為化対照非盲検アダプティブプラットフォーム解析「PRINCIPLE試験」の結果で、ブデソニド吸入薬の14日間投与で、回復までの期間は2.94日短縮したという。これまでの有効性試験で、ブデソニド吸入薬のCOVID-19居宅療養者への効果は示されていたが、高リスク患者への効果については明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2021年8月10日号掲載の報告。

AZワクチンとRNAワクチンによるハイブリッド・ワクチンの効果と意義 (解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

priming(1回目接種)とbooster(2回目接種)に異なるワクチンを使用する方法は“異種ワクチン混在接種(heterologous prime-boost vaccine)”と呼称されるが、本論評では理解を容易にするため“ハイブリッド・ワクチン接種”と命名する。この特殊な接種に使用されるワクチンの原型は、adenovirus(Ad)-vectored vaccineとして開発されたロシアのGam-COVID-Vac(Sputnik V)である(山口. CareNet 論評-1366)。Gam-COVID-Vacでは、priming時にヒトAd5型を、booster時にはヒトAd26型をベクターとして用いS蛋白に関する遺伝子情報を生体に導入する特殊な方法が採用された。ChAdOx1(AstraZeneca)など同種のAdを用いたワクチンでは1回目のワクチン接種後にベクターであるAdに対する中和抗体が生体内で形成され、2回目ワクチン接種後にはAdに対する中和抗体価がさらに上昇する(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.、Stephenson KE, et al. JAMA. 2021;325:1535-1544. )。そのため、同種Adワクチンでは2回目のワクチン接種時にS蛋白に対する遺伝子情報の生体導入効率が低下、液性/細胞性免疫に対するbooster効果の発現が抑制される。一方、1回目と2回目のワクチン接種時に異なるAdをベクターとして用いるハイブリッドAdワクチンでは2回目のワクチン接種時のS蛋白遺伝子情報の生体への導入効率は同種Adワクチンの場合ほど抑制されず、ハイブリッドAdワクチンの予防効果は同種Adワクチンよりも高いものと考えられる。実際、従来株に対する発症予防効果は、ハイブリッドAdワクチンであるGam-COVID-Vacで91.1%(Logunov DY, et al. Lancet. 2021;397:671-681. )、同種AdワクチンであるChAdOx1で51.1%(ワクチンの接種間隔:6週以内)、あるいは、81.3%(ワクチン接種間隔:12週以上)であり(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891. )、同種Adワクチン接種に比べハイブリッドAdワクチン接種のほうがウイルスに対する予防効果が高いことが示されている。

ヘパリン増量では対応できない重症新型コロナウイルス感染症(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染に対して1~2年前よりは医療サイドの対策は進んでいる。肺を守るステロイド、ECMOなどは状況に応じて広く使用されるようになった。しかし、血栓性合併症についての十分な治療が確立されていない。われわれの経験した過去の多くの血栓症ではヘパリンが有効であった。ヘパリンは内因性のアンチトロンビンIIIの構造を変換して効果を発揮するので、人体に凝固系が確立されたころから調節系として作用していたと想定される。心筋梗塞、不安定狭心症、静脈血栓症など多くの血栓症にヘパリンは有効であった。ヘパリンの有効性、安全性については重層的な臨床エビデンスがある。ヘパリンを使えない血栓症は免疫性ヘパリン惹起血小板減少・血栓症くらいであった。重症の新型コロナウイルス感染症では、わらにもすがる思いで治療量のヘパリンを使用した。しかし、治療量と予防量のヘパリンを比較する本研究は1,098例を登録したところで中止された。最初から治療量のヘパリンを使用しても生存退院は増えず、ECMOなどの必要期間も変化しなかった。

AmoyDx 肺癌マルチ遺伝子PCRパネル、METexon14スキッピング肺がんのコンパニオン診断にも承認/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、2021年8月12日、体外診断用医薬品「AmoyDx 肺癌マルチ遺伝子PCR パネル」に関し、MET遺伝子エクソン14 スキッピング変異陽性に適応する薬剤の判定補助の承認を取得したと発表。  これにより、メルクバイオファーマのテポチニブ(製品名:テプミトコ)の適応判定の補助に本品の使用が可能となる。  今回の承認により、同製品はNSCLCの5種のドライバー遺伝子に対応する本邦初のコンパニオン診断薬となった。

ビソプロロール錠0.625mg供給不足に伴う対応/日本心不全学会

 16日、ビソプロロール錠の供給が多くの地域で不足する事態となっていることを受け、日本心不全学会が提言を公表した。本剤は、左室駆出率が低下した心不全の標準治療薬として重要な役割を果たすものであり、供給が安定するまでの間の対応策として以下が提案された。 (1)供給不足に伴いβ遮断薬の投薬を中止することは避ける。 (2)ビソプロロール錠0.625mgを処方する場合、できる限り長期処方を避ける。 (3)ビソプロロール錠2.5mgの供給がある場合は、用量に応じて0.25錠(0.625mg)あるいは0.5錠(1.25mg)として同用量を継続する。 (4)投与継続が困難な場合、以下を参考にカルベジロール錠へ切り替える。