日本語でわかる最新の海外医学論文|page:311

コロナワクチン有効性、4ヵ月超で明らかに低下/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを2回接種後、日数経過によりワクチン有効性は低下し、その低下速度はワクチンの種類によって異なることが示された。スウェーデン・Umea大学のPeter Nordstrom氏らが、84万人超のワクチン接種者と、同数のマッチングコントロールについて後ろ向き全住民コホート試験を行い明らかにした。ChAdOx1 nCoV-19(Oxford-AstraZeneca製)、mRNA-1273(Moderna製)、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の2回接種後、症状の程度を問わない新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染に対するワクチン有効性は、BNT162b2は4~6ヵ月で47%に減少、7ヵ月後には有意な有効性が認められなかったが、mRNA-1273では6ヵ月以降も59%を維持していた。入院や死亡などを伴う重症COVID-19に対する予防効果は、いずれかのワクチンとも2回接種後、比較的長期にわたり維持されてはいたが、4ヵ月以降は64%と明らかな低下が認められ、著者は「今回の結果は、エビデンスに基づく3回目のブースター接種に関する根拠を強化するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年2月4日号掲載の報告。

ニボルマブ+カボザンチニブ、腎細胞がん1次治療の2年間追跡で持続的な生存ベネフィットを示す(CheckMate-9ER)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブとExelixis社は、2022年2月14日、第III相CheckMate -9ER試験の2年間の追跡調査の解析結果を発表した。同解析では、進行腎細胞がん(RCC)のファーストライン治療において、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法が、スニチニブと比較して、持続的な生存および奏効ベネフィット、並びに健康関連の生活の質(HRQOL)の改善を示した。  これらの最新のデータは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)2022年泌尿器がんシンポジウムのポスタープレゼンテーションで発表される。

ペイシェントハラスメントが5年で20%も増!?どんな対策してる?

 身勝手な患者による極悪非道な事件が昨年12月から2件も立て続けに発生したことを受け、CareNet.comでは各施設での患者からの迷惑行為(ペイシェントハラスメント1))対応策についてアンケート調査を実施した。本サイトでは2017年にも同様のアンケートを実施しており、両者の結果を照らし合わせると、なんとこの5年間でペイシェントハラスメントを受けた医師が20%も増加していることがわかった。また、2017年時点でペイシェントハラスメント対応マニュアルやガイドラインを設けている施設は30%超だったが、現在はどうなのだろうか。

中年期女性の血管運動神経症状に関連する不眠症に対するスボレキサントの効果

 神経ペプチドオレキシンは、覚醒促進、温度調節、閉経後に増加、女性に対しエストロゲン療法により正常化することから、血管運動神経症状(VMS)関連の不眠症治療においてオレキシン拮抗作用が重要な役割を果たしていることが示唆されている。米国・ハーバード大学のShadab A. Rahman氏らは、夜間のVMSに関連する慢性不眠症に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの有効性について評価を行った。Sleep誌オンライン版2022年1月11日号の報告。

特発性拡張型心筋症、家族の有病率30%・罹患リスク19%/JAMA

 特発性拡張型心筋症(DCM)は家族内での発症がみられるため、リスクのある家族構成員を早期に発見することで、末期の病態に至る前に治療開始の機会をもたらす可能性があるが、米国ではDCMの家族内の有病率などの詳細なデータは知られていないという。米国・タフツ大学のGordon S. Huggins氏らは、今回、米国のDCMコンソーシアム参加施設で調査(DCM Precision Medicine Study)を行い、DCM患者の家族の約30%がDCMに罹患しており、家族が80歳までにDCMに罹患するリスクは19%と推定した。研究の詳細は、JAMA誌2022年2月1日号で報告された。

進行食道扁平上皮がんの1次治療、ニボルマブを含むレジメンが有望/NEJM

 進行食道扁平上皮がん患者の1次治療では、抗プログラム細胞死1(PD-1)モノクローナル抗体ニボルマブ+化学療法の併用と、ニボルマブ+抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)抗体イピリムマブの併用は、化学療法単独と比較して、いずれのレジメンも全生存期間を有意に延長することが、大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学の土岐祐一郎氏らが実施した「CheckMate 648試験」で示された。新たな安全性のシグナルは確認されなかったという。研究の成果は、NEJM誌2022年2月3日号に掲載された。  本研究は、進行食道扁平上皮がんの1次治療における免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用、および免疫チェックポイント阻害薬2剤併用の有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2017年6月~2019年11月の期間に、日本を含む26ヵ国182施設で参加者の登録が行われた(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。

低体温療法、冬の時代(解説:香坂俊氏)

低体温療法に関してはネガティブな結果の臨床試験の発表が続いている。以前取り上げたTTM2試験(「Question the Status Quo―ACLSの「常識」に挑んだ臨床試験」)において、院外心肺停止症例に関してtargeted hypothermia DID NOT lead to a lower incidence of death by 6 months than targeted normothermiaという結果が得られ、今回のHYPO-ECMO試験において対象とされたVA-ECMOを要した心原性ショック患者においても、early application of moderate hypothermia for 24 hours DID NOT significantly increase survival compared with normothermiaという結論となった。

ctDNA検出のMRDが術後NSCLCの再発予測バイオマーカーに?

 近年、非小細胞肺がん(NSCLC)における周術期治療において、さまざまな薬剤の臨床試験が進行しており、今後治療が変化していくことが予想される。しかし、アジュバントによるメリットを受ける患者層を特定するためには、再発リスクを評価するためのバイオマーカーが必要である。  中国・四川大学のLiang Xia氏らは、周術期の循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)が、分子残存病変(MRD)の早期発見と、術後再発予測のバイオマーカーとなりうるか、検討を行った。Clinical Cancer Research誌オンライン版2021年11月29日号掲載の報告。

パキロビッドパック投与時の注意点、薬物治療の考え方13版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、2月10日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第13版」をまとめ、同会のホームページで公開した。  今回の改訂では、2月10日に製造販売に関し特例承認を取得した経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル錠/リトナビル錠(商品名:パキロビッドパック)などの追加記載が行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。  以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。

片頭痛に対するアルコール、コーヒー、喫煙の影響

 アルコール、コーヒーの摂取および喫煙が片頭痛の発症リスク因子であるかを評価するため、スウェーデン・カロリンスカ研究所のShuai Yuan氏らは、メンデルランダム化研究を実施した。Pain誌2022年2月1日号の報告。  大規模ゲノムワイド関連解析におけるP<5×10-8の潜在的なリスク因子に関連する独立した一塩基多型を操作変数として用いた。選択した一塩基多型と片頭痛との関連についてのサマリーレベルのデータを、FinnGenコンソーシアム(片頭痛患者:6,687例、対照群:14万4,780例)およびUKバイオバンク研究(片頭痛患者:1,072例、対照群:36万122例)のデータより抽出した。FinnGenおよびUKバイオバンクのコホートより得られた推定値は、固定効果メタ解析を用いて組み合わせた。

統合失調症患者に対する薬物誘発性パーキンソニズム、遅発性ジスキネジアの影響

 薬物誘発性パーキンソニズムや遅発性ジスキネジアは、統合失調症の健康関連QOLの低下と関連しているといわれているが、これらの相対的な影響を調べた研究はこれまでほとんどなかった。シンガポール・Institute of Mental HealthのGurpreet Rekhi氏らは、統合失調症における薬物誘発性パーキンソニズムおよび遅発性ジスキネジアと健康関連QOLとの関連を調査し、比較を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2022年1月3日号の報告。

ウパダシチニブ+TCS、日本人アトピー性皮膚炎患者への安全性確認

 日本人のアトピー性皮膚炎(AD)の治療として、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ウパダシチニブ+ステロイド外用薬(TCS)併用の安全性を検討した、京都府立医科大学の加藤 則人氏らによる第III相無作為化二重盲検試験「Rising Up試験」の24週の中間解析結果が発表された。ウパダシチニブに関する既報の知見と、概して一致した結果が示され、安全性について新たなリスクは検出されなかったという。JAAD International誌2022年3月号掲載の報告。  Rising Up試験は、12~75歳の日本人の中等症~重症AD患者を対象とし、被験者を無作為に1対1対1の3群に割り付け、(1)ウパダシチニブ15mg+TCS、(2)ウパダシチニブ30mg+TCS、(3)プラセボ+TCSをそれぞれ投与した。安全性は、有害事象と検査データに基づき評価した。

多疾患罹患、中年期の発症で認知症リスク増加 /BMJ

 多疾患罹患(multimorbidity)は、高年期よりも中年期の発症で認知症との関連が強く、併存する慢性疾患の数が多いほど認知症のリスクが高くなることが、フランス・パリ大学のCeline Ben Hassen氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年2月2日号で報告された。  研究グループは、中年期および高年期の多疾患罹患と、認知症の新規発症との関連を評価する目的で、前向きコホート研究を実施した(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)。

HFpEF/HFmrEFへの心房シャント、運動時肺血管抵抗正常患者で転帰改善/Lancet

 駆出率(EF)が保持または軽度低下した心不全(HFpEF/HFmrEF)患者では、心房シャントデバイス(InterAtrial Shunt Device[IASD]System II、米国Corvia Medical製)の留置により全体的な健康状態は改善されないものの、運動時の肺血管抵抗(PVR)の頂値が正常範囲内の患者では利益が得られる可能性があることが、米国・ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSanjiv J. Shah氏らが実施したREDUCE LAP-HF II試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年2月1日号に掲載された。  本研究は、心房シャントはHFpEF/HFmrEF患者における心不全イベントを低減し、健康状態を改善するかの検証を目的とする第III相無作為化偽手術対照比較試験であり、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、日本の89施設で、2017年5月~2020年7月の期間に参加者の登録が行われた(米国Corvia Medicalの助成による)。

ファイザーの経口コロナ治療薬「パキロビッドパック」を特例承認/厚労省

 厚生労働省は2月10日、ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗ウイルス剤「ニルマトレルビル錠/リトナビル錠」(商品名:パキロビッドパック、以下パキロビッド)について、国内における製造販売を特例承認した。2021年12月24日に承認されたモルヌピラビル(ラゲブリオ)に続き、本剤は国内における2剤目の経口コロナ治療薬となる。2月27日までは、全国約2,000の医療機関における院内処方およびこれらの医療機関と連携可能な地域の薬局でパイロット的な取り組みを実施し、それ以降は全国の医療機関の入院・外来でも処方可能となる。

閉経前ER+早期乳がん患者への卵巣抑制+AI vs.タモキシフェン/Lancet Oncol

 卵巣機能抑制療法を受けているエストロゲン受容体(ER)陽性の閉経前早期乳がん患者における、アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの有効性について、Early Breast Cancer Trialists’Collaborative group(EBCTCG)が4つの無作為化試験のメタ解析により比較した。Lancet Oncology誌オンライン版2022年2月3日号に掲載の報告より。  LH-RHアゴニスト(ゴセレリンまたはトリプトレリン)または卵巣摘出術を受けている閉経前のER陽性乳がん患者を対象に、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、またはレトロゾール)とタモキシフェンを3~5年間比較した無作為化試験の患者データを用いてメタ解析を行った。ベースライン特性、乳がんの再発または二次原発がん発生の日付と部位、および死亡の日付と原因に関するデータが収集された。

治療抵抗性うつ病の負担と課題

 治療抵抗性うつ病は、公衆衛生上の重大な問題である。ギリシャ・Psychiatric Hospital of AtticaのCharalampos Touloumis氏は、治療抵抗性うつ病に関する現状や課題についての報告を行った。Psychiatriki誌2021年12月号の報告。  主な報告は以下のとおり。 ・うつ病エピソード(単極性または双極性)を有する患者の約20~40%は、抗うつ薬治療に臨床的な治療反応(症状スケール50%以上低下)を示さないと考えられる。 ・症状が改善した患者の約半数は、機能の悪影響や再発の可能性が高まる残存症状が認められる。 ・うつ病エピソードの初回治療を受けた患者の20~40%は寛解が認められる(STAR*D研究では36.8%)。

追加接種でオミクロン株での入院が未接種の23分の1/CDC

 米国・カリフォルニア州ロサンゼルス郡での調査によると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株優勢期におけるCOVID-19による入院率は、ワクチン未接種者では2回接種+追加接種者の23.0倍、2回接種者の5.3倍だった。ロサンゼルス郡公衆衛生局のPhoebe Danza氏らが、CDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)2022年2月4日号に報告。  ロサンゼルス郡公衆衛生局は、COVID-19サーベイランスおよびCalifornia Immunization Registry 2のデータを用いて、2021年11月7日~2022年1月8日の年齢調整14日間累積感染率と入院率について、新型コロナワクチン接種状況および各変異株の優勢期ごとに調査した。SARS-CoV-2感染は、核酸増幅検査もしくは抗原検査で確認した。対象は18歳以上の成人で、BNT162b2(ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、Ad.26.COV2.S(Johnson & Johnson製)の最初の連続接種が終了した日から14日後に2回接種完了とみなした。また、2回接種完了者が追加接種を受けた日から14日後に追加接種完了とみなした。

心原性ショックへの体外式膜型人工肺、低体温管理は死亡率を改善せず /JAMA

 難治性心原性ショックに対し静脈-動脈方式の体外式膜型人工肺(VA-ECMO)を導入した患者において、早期に24時間中等度低体温(33~34度)管理を行っても正常体温(36~37度)管理と比較し、生存率は改善しなかった。フランス・CHRU NancyのBruno Levy氏らが、同国の20施設で実施した無作為化臨床試験「Hypothermia During ECMO trial:HYPO-ECMO試験」の結果を報告した。標準治療と標準治療+ECMOを比較した無作為化臨床試験はないにもかかわらず、難治性心原性ショックの管理におけるECMOの使用が世界的に増加しているが、心原性ショック時のVA-ECMOの最適な方法は不明であった。今回の結果について著者は、「95%信頼区間(CI)が広く、臨床的に重要な差が存在する可能性もあり、今回の結果で結論付けるべきではないと考えられる」との見解を示した。JAMA誌2022年2月1日号掲載の報告。

日本食スコアと認知症、腸内細菌との関連

 これまでの研究では、腸内細菌叢や微生物代謝産物と認知機能低下との関連が示唆されている。しかし、この関連に対する食事パターンの影響は十分に調査されていない。国立長寿医療研究センターの佐治 直樹氏らは、日本食の順守や腸内細菌叢と認知機能低下との関連を評価した。さらに、日本食事スコアの3タイプ(JDI9[米、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶、牛肉・豚肉、コーヒー]、JDI12[JDI9+大豆・大豆製品、果物、きのこ]、rJDI12[JDI12改訂版のJDI])について評価し、認知機能や腸内細菌叢と関連性を調査した。Nutrition誌2022年2月号の報告。