日本語でわかる最新の海外医学論文|page:277

虚血性脳卒中の2次予防、asundexian追加の有効性示せず/Lancet

 急性期非心原塞栓性虚血性脳卒中の2次予防治療において、抗血小板薬療法への血液凝固第XIa因子(FXIa)阻害薬asundexianの追加はプラセボと比較して、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合の発生を増加させないものの、潜在性脳梗塞または虚血性脳卒中再発の複合の発生を抑制しないことが、カナダ・マックマスター大学のAshkan Shoamanesh氏らが実施した「PACIFIC-Stroke試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2022年9月2日号で報告された。

中・高リスクの進行腎細胞がんに対するカボザンチニブ+ニボルマブ+イピリムマブの3剤併用が有意にPFSを延長(COSMIC-313)/ESMO2022

 中・高リスクの進行腎細胞がん(RCC)に対する1次治療として、カボザンチニブ+ニボルマブ+イピリムマブの3剤併用療法とニボルマブ+イピリムマブの2剤併用療法の比較結果が、米国Dana-Farber Cancer InstituteのToni K. Choueiri氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。  これは国際共同の二重盲検第III相のCOSMIC-313試験の第1回目の報告である。 ・対象:前治療のない淡明細胞型RCCで、IMDCリスク分類の中間リスクまたは高リスクの症例 ・試験群:カボザンチニブ連日投与にニボルマブ+イピリムマブを3週間隔で4コース併用投与。その後、カボザンチニブ+ニボルマブ(4週間隔)をメンテナンス投与(Cabo群:428例)

NSCLC術後補助療法 ペメトレキセド+シスプラチンはビノレルビン+シスプラチンと同様のOS(JIPANG)/ESMO2022

 完全切除を受けた非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後化学療法として、ペメトレキセド+シスプラチン療法とビノレルビン+シスプラチン療法の無再発生存期間(RFS)と全生存期間(OS)に関する最終結果を、国立がん研究センター東病院の葉清隆氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。  これは日本で実施された第III相試験であるJIPANG試験の最終解析報告であり、すでにRFSと忍容性については報告がなされている。

双極性障害患者の精神症状有病率~メタ解析

 幻覚や妄想は、双極性障害(BD)で一般的に認められる精神症状である。ノルウェー・オスロ大学のS. R. Aminoff氏らは、双極I型障害(BDI)および双極II型障害(BDII)における、精神症状の生涯および点有病率を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、BDIにおける精神症状のプールされた有病率は、これまで報告されていた値よりも高い可能性が示唆された。Psychological Medicine誌オンライン版2022年8月26日号の報告。  Medline、PsycINFO、Embase、Cochrane Libraryより、2021年8月5日までに公表された研究をシステマティックに検索した。成人BD患者における精神症状の生涯有病率を評価した研究54件(2万3,461例)および点有病率を評価した研究24件(6,480例)が選択基準を満たした。質および出版バイアスの評価を行い、有病率(95%信頼区間[CI])をランダム効果メタ解析で算出した。

日本でのコロナ死亡例の分析結果/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第98回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、9月7日に開催された。その中で大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター/COVIREGI解析チーム)らのチームが、「COVID-19レジストリに基づく死亡症例の分析」を報告した。  レジストリ研究は、わが国におけるCOVID-19患者の臨床像および疫学的動向を明らかにすることを目的に、2020年1月から行われている。COVID-19と診断され、医療機関において入院管理されている症例を対象に(8月22日時点で登録症例数は7万920症例)、COVID-19の臨床像・経過・予後、重症化危険因子の探索、薬剤投与症例の経過と安全性について解析、検討が行われている。

HER2低発現進行乳がんへのT-DXd、患者報告アウトカム(DESTINY-Breast04)/ESMO2022

 HER2低発現で既治療の進行乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験における、患者報告アウトカムの解析結果が報告された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの上野 直人氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。  DESTINY-Breast04試験では、T-Dxd群でHR+コホートにおけるPFS中央値(10.1ヵ月vs.5.4ヵ月、HR:0.51、p<0.0001)およびOS中央値(23.9ヵ月vs.17.5ヵ月、HR:0.64、p=0.0028)を有意に改善した。安全性については、Grade3以上のTEAEはT-Dxd群53% vs.TPC群67%で発生し、T-Dxd群で多くみられた治療関連TEAEは、吐き気(73% vs.24%)、倦怠感(48% vs.42%)、TPC群では好中球減少症(33% vs.51%)だった。

心血管疾患2次予防、ポリピルvs.通常ケア/NEJM

 心筋梗塞後6ヵ月以内の、アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療は通常ケアと比べて、主要有害心血管イベント(MACE)リスクの有意な低下に結び付いたことが、スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares(CNIC)のJose M. Castellano氏らによる第III相無作為化試験「SECURE試験」で示された。転帰を改善する主要な薬剤(アスピリン、ACE阻害薬およびスタチン)を含むポリピルは、心筋梗塞後の2次予防(心血管死や合併症の予防)のための、簡易な手法として提案されている。結果を踏まえて著者は、「ポリピルは、治療を簡素化し入手可能性を改善するもので、治療のアクセシビリティとアドヒアランスを改善するために広く適用可能な戦略であり、結果として心血管疾患の再発および死亡リスクを低下するものである」とまとめている。NEJM誌2022年9月15日号掲載の報告。

収縮機能の良しあしにかかわらず心不全へのSGLT2阻害薬の有効性を確認、しかし副作用に対する注意は不可欠(解説:桑島巌氏)

糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬がいまや心不全治療薬として大ブレークしている。心不全でも収縮機能が低下しているHFrEF(heart failure with reduced EF)に対する有効性は多くの大規模臨床試験で証明されていたが、収縮機能が良好な心不全(HFpEF)に対する有用性は明らかではなかった。しかしDELIVER試験(2021年)とEMPEROR-Preserved試験(2022年)という2つの大規模臨床試験によってHFpEFに対する有効性も確認され、心不全治療薬としての適応範囲は大きく広がる可能性が示された。

オミクロン流行も学術集会の現地参加は問題ない?

 国内の学術集会が軒並みオンライン中心で実施されるなか、海外ではマスクなしで大勢の参加者が現地に赴いているというが、大丈夫なのだろうか。米国・Surgical Outcomes and Quality Improvement CenterのCasey M Silver氏らが、新型コロナウイルスのオミクロン株が急増中に開催された大規模な学会において、現地出席者とオンライン出席者の新型コロナウイルス感染症の陽性率を比較した。それによると、ほとんどの登録者は会議に直接出席するも、陽性率は低く、現地出席者とオンライン出席者の間で陽性率が同等であったことが示唆された。JAMA Network Open 2022年9月1日号掲載の報告。  本横断的調査研究には、米国最大の外科学会の1つであるAcademic Surgical Congress (ASC) の参加者が含まれた。ASCは2022年2月1~3日にフロリダ州オーランドで開催(現地またはオンライン参加)。その際の新型コロナ感染予防対策として、自己検査の奨励、ワクチン接種とマスク着用の義務化、屋外での飲食物の提供などが行われた。学会後7日間の新型コロナ検査と症状を評価する調査のために登録者を募集した。また、現地出席者とオンライン出席者の陽性率の違いはχ2検定を使用して評価された。  主な結果は以下のとおり。

自閉スペクトラム症から総合失調症への進展

 これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の小児は、その後の人生において統合失調症の発症リスクが高いことが示唆されている。台湾・高雄栄民総医院のTien-Wei Hsu氏らは、ASDにおける診断の安定性および統合失調症への進展に対する潜在的な予測因子について調査を行った。その結果、統合失調症と診断されたASD患者の3分の2以上が、ASD診断から最初の3年間で進展しており、人口統計学的特徴、身体的および精神的な併存疾患、精神疾患の家族歴が、進展の重要な予測因子であることが示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年9月3日号の報告。  対象は、2001~10年にASDと診断された青年(10~19歳)および若年成人(20~29歳)の患者1万1,170例。統合失調症の新規診断患者を特定するため、2011年末までフォローアップ調査を実施した。統合失調症への進展およびその予測因子を推定するため、時間のスケールとして年齢を用いたカプランマイヤー法およびCox回帰を用いた。

RAS/BRAF野生型大腸がん、FOLFIRI+セツキシマブ後のセツキシマブ単剤維持療法は継続投与に非劣性を示せず(ERMES)/ESMO2022

 RAS/BRAF野生型大腸がんの1次治療において、FOLFIRIと抗EGFR抗体薬セツキシマブを投与し、その後に毒性軽減のためにセツキシマブを単剤投与する維持療法は、継続投与に対して非劣性を示すことができなかったという。この第III相ERMES試験の結果を、イタリア・Fondazione Policlinico UniversitarioのArmando Orlandi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で報告した。

TILsを有するTN乳がんへの術前ニボルマブ±イピリムマブ、高い免疫活性示す(BELLINI)/ESMO2022

 術前化学療法への免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の追加による、早期トリプルネガティブ(TN)乳がん患者の転帰改善が報告されているが、どのような患者にICIが有効なのか、そしてどのような患者で術前化学療法のde-escalationが可能なのかは分かっていない。また早期TN乳がんでは、抗PD-1抗体への抗CTLA-4抗体の追加は検討されていない。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMarleen Kok氏らは、ニボルマブ±低用量イピリムマブの投与が、TILsを有するTN乳がんにおいて免疫応答を誘発するという仮説の検証を目的として、第II相非無作為化バスケット試験(BELLINI試験)を実施。その最初の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。

ハイリスク患者のPCI後のフォローアップ、定期心機能検査vs.標準ケア/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた高リスク患者において、PCI後1年時点で定期心機能検査を行うフォローアップ戦略は、標準ケアのみの場合と比較して、2年時点の臨床アウトカム改善に結び付かなかったことが、韓国・ソウルアサン病院のDuk-Woo Park氏らが1,706例を対象に行った無作為化試験の結果、示された。冠血行再建後のフォローアップ方法を特定するための無作為化試験のデータは限定的であり、今回検討したフォローアップ戦略については、明らかになっていなかった。NEJM誌2022年9月8日号掲載の報告。

ROSCした患者の血圧管理目標値はどのくらいがよいか?(解説:江口和男氏)

本研究は、院外心停止で蘇生され生存した昏睡状態の患者さんについて、平均血圧目標を63mmHgで保つ群と、77mmHgで保つ群にランダム化し予後を比較するという研究であった。主要アウトカムはあらゆる原因による死亡または神経学的予後不良状態での90日以内の退院の複合、2次アウトカムは血清神経特異エノラーゼ(NSE)レベル(高いと予後不良)、あらゆる原因による死亡、Montreal Cognitive Assessmentの点数(0~30の範囲で高いと認知機能良好)、そして、3ヵ月におけるmodified Rankin scaleおよびCerebral Performance Category(CPC)であった。

睡眠の質と片頭痛との関係

 睡眠状態と片頭痛は密接に関連しているといわれている。しかし、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連をシステマティックに評価した研究はほとんどなく、性差や年齢差についてもよくわかっていない。中国・北京中医薬大学のShaojie Duan氏らは、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連およびその性差や年齢差について調査を行った。また、睡眠の質と片頭痛患者の苦痛、重症度、身体障害、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状との関連も併せて調査した。その結果、睡眠の質の低下は、片頭痛発症リスクや片頭痛関連の苦痛と有意かつ独立して関連していることが明らかとなった。著者らは、睡眠の質の評価をより充実させることで、片頭痛患者の早期予防や治療に役立つであろうとまとめている。Frontiers in Neurology誌2022年8月26日号の報告。  対象は、片頭痛患者134例および年齢・性別がマッチした健康対照者70例。睡眠の質の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。睡眠の質と片頭痛発症リスク、頭痛関連の苦痛との関連を評価するため、ロジスティック回帰分析および線形回帰分析を行った。  主な結果は以下のとおり。

院外心停止蘇生昏睡患者の目標血圧値は?/NEJM

 院外心停止から蘇生した昏睡患者において、平均動脈圧目標値77mmHg(高値)群vs.63mmHg(低値)群で、全死因死亡、重篤な障害、または昏睡の割合に関して有意差は確認されなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学のJesper Kjaergaard氏らが、2×2要因デザインの無作為化二重盲検比較試験「Blood Pressure and Oxygenation Targets in Post Resuscitation Care trial:BOX試験」の結果を報告した。集中治療を受けている院外心停止昏睡生存者において、血圧目標値の選択に関するエビデンスは限定的だった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。

観察研究でRCT模倣可能な“target trial emulation”/BMJ

 観察研究は研究デザインにかかわらず交絡の影響を受けやすいが、目標となる無作為化比較試験(RCT)の模倣が成功すれば、観察研究でRCTと同じ効果推定値が得られる。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnthony A. Matthews氏らは、観察研究にRCTの研究デザイン原則を適用した“target trial emulation”のプロセスを概説した。BMJ誌2022年8月30日号掲載の報告。  観察研究は、費用、倫理的観点あるいは迅速性などの理由でRCTを実施できない場合に、介入の有効性に関するエビデンスを提供することができる。しかし、観察研究は、無作為化されていないため交絡バイアスが存在するだけでなく、誤った研究デザインの選択(追跡調査開始時期の指定など)が自らバイアスを引き起こす可能性もあり、因果推論には課題がある。

20歳未満のコロナ死亡例、基礎疾患やワクチン接種状況は?/国立感染症研究所

 国立感染症研究所は9月14日、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報)の結果を発表した。オミクロン株の感染拡大に伴い、小児の感染者数が増加し、重症例や死亡例発生も報告されている。厚生労働省および同研究所は、日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会とともに、急性期以降の死亡例も含めて、積極的疫学調査を実施した。その結果、基礎疾患の有無がほぼ同数であり、ワクチン接種対象年齢でも87%が未接種で、発症から死亡まで1週間未満が73%(中央値4日)を占めていることなどが明らかになった。  本結果は、2022年1月1日~8月31日に報告された小児等の死亡例に関する暫定的な報告となる。調査対象となったのは、急性期の死亡例、加えて、死因を新型コロナとは別原因とした症例で、発症からの日数は問わないとする急性期以降に死亡した症例の計41例。そのうち32例について8月31日までに実地調査を行うことができ、明らかな内因性死亡と考えられたのは29例であった。調査項目は、年齢、性別、基礎疾患、新型コロナワクチン接種歴、発症日、死亡日、症状/所見、死亡に至る経緯等となっている。小児の死亡例は、2022年1月から継続的に発生し、疫学週28週目(7月11~17日)から増加していた。

オシメルチニブのEGFR陽性NSCLCアジュバント、3.6年で5.5年の無再発生存(ADAURA)/ESMO2022

 完全切除EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、第3世代EGFR-TKIオシメルチニブの術後補助療法の有効性と安全性を評価する第III相無作為化二重盲検比較試験ADAURAの第2回解析が発表され、オシメルチニブの有効性が持続していることが明らかになった。  ADAURAの初回解析における、術後オシメルチニブ±補助化学療法はプラセボと比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のある無病生存期間(DFS)の利益を示した。

5~11歳への3回目接種を追加、新型コロナ予防接種の手引き9版/厚労省

 厚生労働省は、9月6日に全国の市町村に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(9版)」を発出するとともに、同省のホームページでも公開した。本手引きは2020年12月17日の初版以来、十数回の更新を行い、その時どきの臨床知見、行政施策を反映した内容に改訂されている。 【第2章 5(新型コロナワクチンの概要)、第7章(ワクチン各論)】 ワクチンの有効期限について事務連絡の日付・名称を更新 【第4章 3(13)(接種を受ける努力義務等の取扱い)】 接種を受ける努力義務などの取扱いについて更新