日本語でわかる最新の海外医学論文|page:278

発熱に対する解熱薬と身体冷却、死亡リスクに影響するか/BMJ

 成人発熱患者に対する治療(解熱薬、身体冷却)は、死亡や重篤な有害事象のリスクに影響しないことが、スウェーデン・ルンド大学のJohan Holgersson氏らが実施したシステマティック・レビューとメタ解析で示された。これまでの試験は特定の患者群あるいは特定の発熱治療に焦点を当てたもので、統計学的な検出力に限界があり、発熱患者における発熱治療のリスクとベネフィットは不明であった。BMJ誌2022年7月12日号掲載の報告。

サル痘感染拡大、4~6月に感染した528例の特徴/NEJM

 2022年4月以降、欧米を中心にサル痘感染が広がっている。7月23日にはWHOが緊急事態を宣言し、日本でも7月25日に感染者が確認された。今回、英国・Queen Mary University of LondonのJohn P. Thornhill氏らの国際共同研究グループ(SHARE-net Clinical Group)が、2022年4月27日~6月24日に16ヵ国43施設でPCR検査によりサル痘と確認・診断された528例について、症状、臨床経過、転帰を調査した結果を報告した。NEJM誌オンライン版2022年7月22日号に掲載。

男女間で異なる不安症状と食物依存症との関連

 不安は、さまざまなケースでみられる症状であり、摂食障害や肥満とも関連しているといわれている。ドイツ・ライプチヒ大学のFelix S. Hussenoeder氏らは、不安症状と食物依存症との関係を分析し、これらの関連性の評価および性差について検討を行った。その結果、食物依存症には、性別やその他の社会人口統計学的因子と関係なく、不安症状に対する長期的な影響が確認された。また、女性における不安症状は、その後の食物依存症に影響を及ぼす可能性が示唆された。このことから著者らは、食物依存症に対する介入は、男女ともに不安症状の軽減につながる可能性があるものの、不安症状に対する介入は、女性の場合のみで、食物依存症の軽減につながることを報告した。Frontiers in Psychiatry誌2022年6月14日号の報告。

新規診断多発性骨髄腫、3剤併用(RVD)+ASCTでPFS延長/NEJM

 新規多発性骨髄腫の成人患者において、レナリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン3剤併用療法(RVD)と自家造血幹細胞移植(ASCT)の組み合わせは、RVD単独と比較して無増悪生存(PFS)期間を延長したが、全生存(OS)期間には差がなかったことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPaul G. Richardson氏らが米国の56施設で実施した無作為化非盲検第III相試験「DETERMINATION試験」の結果、示された。新規診断の多発性骨髄腫患者に対し、RVDにASCTを追加して、その後レナリドミド維持療法を病勢進行まで継続した場合の有効性については不明であった。NEJM誌2022年7月14日号掲載の報告。

急性期脳梗塞の血栓回収、アルテプラーゼ併用で良好な再開通率/Lancet

 ステント型血栓回収デバイスを用いた血栓除去術単独療法は、アルテプラーゼ静注+血栓除去術併用療法に対して非劣性は認められず、再開通率は低いことが、スイス・ベルン大学のUrs Fischer氏らが実施した「SWIFT DIRECT試験」の結果、示された。血栓除去術単独療法が静脈内血栓溶解+血栓除去術併用療法と同等の効果があるかどうかは議論が続いていたが、著者は、今回の結果を受け「適格患者における、血栓除去術前のアルテプラーゼ静注の割愛は支持されない」とまとめている。Lancet誌2022年7月9日号掲載の報告。

循環器内科でも血栓溶解療法に期待が集まった時代がありました!(解説:後藤信哉氏)

心臓でも脳でも、臓器灌流血管が血栓閉塞すると臓器に不可逆的な虚血性障害が起こる。筆者が循環器内科を始めた1980年代には血栓溶解療法に期待が集まった。フィブリン選択性のないストレプトキナーゼによる急性期の生命予後改善効果が大規模ランダム化比較試験(Second International Study of Infarct Survival:ISIS-2試験)にて示され、心筋梗塞急性期の標準治療となると期待された。ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼはフィブリン選択性がない。すなわち、血液中にて線溶が起こりフィブリノーゲンも消費してしまう。血栓を作るフィブリンに選択的に作用する線溶薬を開発できれば標準治療になると期待された。線溶研究は盛り上がった。血管内皮細胞が産生するフィブリン選択的線溶薬tissue type plasminogen activator(t-PA)は期待された。分子生物学の勃興期でもあり、フィブリン選択性の高い製剤、単回静注にて効果の持続する製剤などが多数作られた。

双極II型障害の急性うつ病エピソードに対する第2世代抗うつ薬療法~メタ解析

 双極II型障害(BD-II)に関するエビデンスに基づく治療ガイドラインは、限られている。メイヨークリニック医科大学のJin Hong Park氏らは、急性BD-IIうつ病における第2世代抗うつ薬単剤療法の有効性および安全性を推定するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、急性BD-IIうつ病に対する第2世代抗うつ薬単剤療法は、良好な副作用プロファイルを有し、切り替え率の有意な増加を来すことなく、短期的に有効であることが示唆された。Psychopharmacology Bulletin誌2022年5月31日号の報告。

HER2低発現乳がん、HER2ゼロと異なるサブタイプとみなすべきか/JAMA Oncol

 HER2低発現乳がんは、HER2ゼロ乳がんとは異なる生物学的サブタイプとして考えるべきかどうか。米国・Dana-Farber Cancer InstituteのPaolo Tarantino氏らが、Stage I~III乳がんにおけるHER2低発現と臨床病理学的特徴および予後の関連を調べたところ、ホルモン受容体(HR)陽性およびトリプルネガティブ(TN)乳がんにおいて、HER2低発現乳がんを明確な生物学的サブタイプとは解釈できないという結果が示された。JAMA Oncology誌オンライン版2022年6月23日号に掲載。

若年層での3回目接種、オミクロン株流行下も感染率低下/JAMA

 若年層での新型コロナウイルスワクチンのブースター接種の有効性を検討するため、米国の医療情報コンサルティング企業のIQVIAは、全米プロバスケットボール協会(NBA)の選手およびスタッフにおいて、ブースター接種者と未接種者の感染発生率を調査した結果、オミクロン株流行期でも、ブースター接種が感染率を有意に低下させることが示された。本結果は、JAMA誌2022年6月2日号オンライン版のリサーチレターに掲載された。

mRNAワクチン後の心筋炎、予防に有効な接種間隔は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチン接種後の心筋炎のリスクが最も高いのは、思春期および若年成人の男性であり、これらの集団ではモデルナ製よりファイザー製のワクチンを用い接種間隔は30日以上が望ましいこと、5~11歳の小児での心筋炎発症は非常に稀でエビデンスの確実性は低いことなどを、カナダ・アルバータ大学のJennifer Pillay氏らが、システマティック・レビューの結果、報告した。著者は、「mRNAワクチンに関連した心筋炎は良性と思われるが、長期追跡データは限られており、生検や組織形態学等の適切な検査を用いた前向き研究によりメカニズムの解明が進むだろう」とまとめている。BMJ誌2022年7月13日号掲載の報告。

ノババックス製ワクチン、12歳以上の接種を承認/添付文書改訂

 厚生労働省は7月21日、ノババックス製新型コロナウイルスワクチン「組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン」(商品名:ヌバキソビッド筋注)について添付文書を改訂し、初回免疫(1回目・2回目)の接種対象者の年齢を、18歳以上から12歳以上に引き下げたことを発表した。なお、本ワクチンの3回目の追加接種は、従来どおり18歳以上が対象となっている。また、初回免疫でほかのメーカーのワクチンを接種した者に対しては、ノババックス製ワクチンを3回目に使用した際の有効性と安全性は確立していないとしている。

コロナ疑い熱中症患者への最新対応法/日本救急医学会

 日本救急医学会は『新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(第2版)』発刊に関する記者会見を7月15日に行った。初版が発刊されてから2年、今回はとくに“熱中症とマスク着用の関係性”と“蒸散冷却法の使用有無”に焦点が当てられて改訂が行われ、神田 潤氏(帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター/新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキンググループ タスクフォース長・編集長)がこれらの根拠などについて解説した。

統合失調症患者における治療開始前後の色彩感覚と認知機能

 統合失調症患者は発症の初期段階で、視覚機能や眼組織構造に有意な変化がみられることが、多くの研究で報告されている。統合失調症の病因における新たな科学的進歩の探求を可能にするには、眼組織や眼機能の潜在的な分野を調査する目的で、脳の構造・機能の従来の研究を変革することが求められる。しかし、虹彩構造と統合失調症との相関関係を調査した研究はほとんどなく、エビデンスは不十分であった。中国・Chengde Medical UniversityのLi Duan氏らは、虹彩構造、色彩感覚、認知機能が、初発統合失調症患者において抗精神病薬治療前後で変化するかを分析し、統合失調症の早期臨床スクリーニングと診断を簡便に測定可能なバイオマーカーの特定を試みた。その結果、統合失調症患者の色彩感覚は、認知機能と共に改善することが示唆された。著者らは、陰窩や色素点を伴う虹彩構造の特徴は、統合失調症の薬物治療効果に大きな影響を及ぼす可能性があり、統合失調症を鑑別する潜在的なバイオマーカーである可能性があることを報告した。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2022年6月13日号の報告。

StageIII/IVのホジキンリンパ腫、A+AVD療法vs.ABVD療法/NEJM

 StageIII/IVの未治療ホジキンリンパ腫に対する、初回治療としてのブレンツキシマブ ベドチン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン(A+AVD)療法は、ドキソルビシン+ブレオマイシン+ビンブラスチン+ダカルバジン(ABVD)療法に比べ、無増悪生存(PFS)および全生存(OS)のいずれをも延長し、生存に関する優位性が示されたことが、6年の長期追跡により確認された。米国・メイヨー・クリニックのStephen M. Ansell氏らが、1,300例超の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。ブレンツキシマブ ベドチンは、CD-30作用型抗体-薬物複合体である。本検討については、5年追跡期間の試験でPFSの延長効果がすでに報告されていたが、今回新たにOSと、中央値6年の追跡期間によるPFSの結果が発表された。NEJM誌オンライン版2022年7月13日号掲載の報告。  本試験では、StageIII/IVのホジキンリンパ腫患者を無作為に2群に分け、一方の群にはA+AVD療法を(664例)、もう一方の群にはABVD療法を(670例)、それぞれ最大6サイクル実施した。  主要評価項目は、PFS期間(以前の報告を修正)。主な副次評価項目は、ITT集団におけるOSで、安全性と共に今回新たに報告した。

異種ワクチンでのブースター接種、安全性は?/BMJ

 新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン接種について、「ChAdOx1-S」(アストラゼネカ製)によるプライマリ接種とmRNAワクチン(「BNT162b2」[ファイザー製]または「mRNA-1273」[モデルナ製])によるブースター接種(異種ワクチン接種)は、プライマリ+ブースターをすべてmRNAワクチンで接種した場合(mRNA同種ワクチン3回接種)と比べて、重篤な有害イベントリスクの増大は認められなかったことを、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らが報告した。同国内でワクチン接種をした成人を対象に行ったコホート試験の結果で、これまで異種ワクチンの安全性に関する情報は不十分だった。BMJ誌2022年7月13日号掲載の報告。

オミクロン株流行時期における5~11歳児に対するBNT162b2ワクチンの有効性(解説:寺田教彦氏)

本研究はBNT162b2ワクチンのオミクロン株流行時期における5~11歳を対象にした研究である。オミクロン株の流行中に新規のワクチン接種を受けた小児におけるBNT162b2ワクチンの有効性を推定するため、イスラエル最大の医療組織であるクラリット・ヘルス・サービス(CHS)のデータを用いて2021年11月23日以降にワクチン接種を受けた5~11歳児と未接種の対照をマッチさせてSARS-CoV-2感染の予防、有症状のCOVID-19患者を比較しており、和文要約は「オミクロン株流行中の5~11歳のワクチン接種、実際の有効性は?/NEJM」に記載がある。

ロルラチニブのALK肺がん1次治療、3年追跡PFSのHR0.27、脳転移進行のHR0.02(CROWN)/Cancer Res

 未治療のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)におけるロルラチニブの第III相CROWN試験の3年追跡の結果が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2022)で発表され、良好な生存ベネフィットとともに、脳転移例に対して強力な有効性を示した。  ALK陽性肺がんに適応を有するALK阻害薬は、現在わが国で5種類承認されており、いずれも良好な成績を示す。近年は各薬剤の1次治療の成績が発表されている。その中で最もALK阻害作用が強いロルラチニブの1次治療を評価するCROWN試験の結果が注目される。

認知症患者とその介護者に対する遠隔医療介入効果~メタ解析

 遠隔医療機器を用いた医療介入は、COVID-19パンデミックにより必要性が高まっていることや、テクノロジーを通じ、医療提供者、患者、その家族のインフラおよび快適性が向上したことから、世界中で標準的な医療行為になりつつある。しかし、認知症患者の家族に対する遠隔医療介入の有効性はよくわかっていない。そのため、単なる便利なツールというだけでなく、エビデンスベースの遠隔医療介入を開発していくための調査が求められている。台湾・高雄医学大学のIta Daryanti Saragih氏らは、認知症患者およびその介護者に対する遠隔医療の心理教育的および行動的な介入の影響と有効性を調査する目的で、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、遠隔医療介入は、認知症患者のうつ病を軽減するとともに、介護者の知覚能力を向上させることが示唆された。Journal of Nursing Scholarship誌オンライン版2022年6月29日号の報告。

妊娠中のビタミンD補充、児のアトピー性皮膚炎を予防?

 母体へのビタミンD補充が、出生児の4歳時までのアトピー性湿疹リスクを減少させたことが、英国・サウサンプトン大学のSarah El-Heis氏らによる無作為化試験「UK Maternal Vitamin D Osteoporosis Study(MAVIDOS)」で示された。これまで、母体へのビタミンD補充と出生児のアトピー性湿疹リスクとを関連付けるエビデンスは一貫しておらず、大半が観察試験のデータに基づくものであった。著者は、「今回のデータは、乳児のアトピー性湿疹リスクに対する胎児期のビタミンD(コレカルシフェロール)補充の保護効果に関する無作為化試験初のエビデンスであり、保護効果が母乳中のコレカルシフェロール値上昇による可能性を示唆するものであった」と述べ、「所見は、アトピー性湿疹への発育上の影響と、アトピー性湿疹への周産期の影響は修正可能であることを支持するものである」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2022年6月28日号掲載の報告。  研究グループは、二重盲検無作為化プラセボ対照試験「MAVIDOS」の被験者データを用いて、妊娠中の母体へのコレカルシフェロール補充と、出産児のアトピー性湿疹リスクへの影響を月齢12、24、48ヵ月の時点で調べる検討を行った。

肩関節鏡視、術後90日以内の有害事象は1.2%/BMJ

 肩関節鏡視下手術は、英国で一般的に行われるようになっているが、有害事象のデータはほとんどないという。同国オックスフォード大学のJonathan L. Rees氏らは、待機的な肩関節鏡視下手術に伴う有害事象について調査し、90日以内の重篤な有害事象のリスクは低いものの、再手術(1年以内に26例に1例の割合)などの重篤な合併症のリスクがあることを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年7月6日号に掲載された。  研究グループは、待機的な肩関節鏡視下手術における重篤な有害事象の正確なリスクを推定し、医師および患者に情報を提供する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]の助成による)。