日本語でわかる最新の海外医学論文|page:256

統合失調症患者の味覚障害

 精神疾患患者では、味覚障害が認められることが少なくない。これまでの研究では、統合失調症患者において症状とグルタミン酸ナトリウム(MSG)の味覚障害との間に関連がある可能性が示唆されている。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのMichal Wronski氏らは、MSGの味覚レベルが症状の重症度と関連しているかを検討した。Brain Sciences誌2022年11月9日号の報告。  対象は、妄想型統合失調症と診断(ISD-10)された患者200例。MSGまたは水を含む3つの液体サンプルを舌下投与することにより、MSG検出閾値を評価した。MSGのサンプルには、サンプルごとに異なる濃度を用いた。被験者に、どのサンプルがMSGを含有しているかを示してもらい、味の強さや不快感(快適、不快、どちらでもない)を評価させた。

EGFR陽性肺がんオシメルチニブ1次治療の有用性、35ヵ月のリアルワールド追跡(OSI-FACT)/日本肺癌学会

 EGFR変異陽性肺がんの1次治療においてオシメルチニブはスタンダードだが、同レジメンを大規模に観察したリアルワールドデータはない。第63回日本肺癌学会学術集会では、愛知県がんセンターの大矢由子氏により、同治療の有効性と安全性をリアルワールドで評価したOSI-FACT試験の追跡結果が発表された。  対象は、2018年8月〜2019年12月にHanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)を中心に登録された、EGFR変異陽性NSCLC患者538例。これらの患者を後ろ向きに解析した。データカットオフは2022年2月28日で、追跡期間中央値は35.0ヵ月である。

コロナウイルスの生存率が高い食品は…野菜or肉or魚?

 2019年冬、中国・武漢で新型コロナウイルス感染症が初めて発生し、その起源も生きた哺乳類が売られていた「海鮮市場」と研究報告もまとめられている1)。以来、新型コロナウイルス(以下、SARS-CoV-2)と食品との関連性については懸念が続いているが、SARS-CoV-2の食品での生存率と除去に関する研究はほとんど存在していない。そこで、韓国・中央大学校のSoontag Jung氏らがSARS-CoV-2の生存に最適な保管温度や素材を調査するために、レタス、チキン、サーモンにSARS-CoV-2を付着させ、温度や湿度を変化させて検証した。その結果、SARS-CoV-2の生存率は、保管温度と食品に依存しており、室温ではレタスとチキン上での生存率が低いことが明らかになった。Food Microbiology誌オンライン版2022年10月27日号掲載の報告。

餅は胃内で硬くなる!?胃に丸餅10個確認された症例

 毎年、年末になると餅による窒息の注意が喚起されるが、餅の胃内滞留はほとんど知られていない。胃酸が餅を溶かすと誤解されているが、雑煮など温かい汁物の中では柔らかい餅が、胃内の温度では胃液で溶けない程度に硬くなる。そのまま餅が胃内に滞留すると、胃潰瘍や胃穿孔を引き起こす可能性があるので、小児や高齢者以外も注意が必要だ。今回、雑煮の餅を噛まずに飲み込んで胃内に滞留し、腹痛で来院した症例について、名手病院(和歌山県紀の川市)の川西 幸貴氏らがClinical Case Report誌オンライン版2022年12月5日号に報告した。

HR+/HER2+転移乳がん1次治療、ET有無の転帰への影響

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(ERBB2+)転移乳がん(MBC)患者における内分泌療法(ET)の位置付けは明確になっていない。フランス・Institut CurieのMarcela Carausu氏らは、HER2陽性患者におけるホルモン受容体の状態やETの1次治療での投与有無と転帰の関連を評価することを目的としてコホート研究を実施。JAMA Network Open誌2022年12月15日号に報告した。  本研究は、フランスの臨床疫学・医療経済(ESME)コホートの臨床データを解析したもので、2008~17年に治療を開始したMBC患者が含まれた。最終フォローアップ日は2020年6月18日。ETによる維持療法と転帰との関連を評価するために、対象患者にはHER2標的療法の第1選択薬に加え、化学療法(CT)±ETあるいはET単独療法が行われた。

降圧薬使用とアルツハイマー病との関連~メタ解析

 高血圧は認知症のリスク因子として知られているが、高血圧患者のアルツハイマー病リスク軽減に対する降圧薬使用の影響についてのエビデンスは、決定的であるとは言えない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン薬学部のM. Adesuyan氏らは、認知機能が正常な高血圧症の成人患者における降圧薬使用とアルツハイマー病発症率との関連を調査した。その結果、降圧薬の使用とアルツハイマー病発症率低下との関連が認められた。とくに、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の使用は、降圧薬の中でも最大のベネフィットをもたらす可能性が示唆された。このことから著者らは、降圧が認知機能保護の唯一のメカニズムではない可能性があり、認知機能に対するアンジオテンシンIIの影響についてさらなる調査が求められるとしている。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2022年号の報告。

二重抗体薬talquetamab、再発難治多発性骨髄腫に有望/NEJM

 再発/難治性多発性骨髄腫患者において、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)とCD3に対する二重特異性T細胞誘導抗体であるtalquetamabの405μg/kg週1回ならびに800μg/kg隔週の皮下投与は、いずれも同様の安全性プロファイルと有効性を示すことが、米国・マウントサイナイ医科大学のAjai Chari氏らによる第I相の「MonumenTAL-1試験」で明らかとなった。GPRC5Dは、正常なヒトの組織にはほとんど発現しておらず、悪性形質細胞に過剰発現しているオーファン受容体である。talquetamabは、GPRC5DとCD3の両方に結合してT細胞を動員および活性化し、GPRC5D発現骨髄腫細胞の殺傷を誘導する。著者は、「CAR-T細胞療法だけでなく二重特異性抗体によるアプローチでの抗骨髄腫活性は、GPRC5Dが骨髄腫の治療標的であることを立証している」とまとめている。NEJM誌2022年12月15日号掲載の報告。

トリグリセライドの新基準と適切なコントロール法/日本動脈硬化学会

 今年7月に発刊された『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』。今回の改訂点の1つとして「随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値」が設定された。これらの基準をもとに動脈硬化性疾患のリスクとしての高TG血症を確認するが、TG値の低下だけではイベントを減らせないため、高TG血症の原因となる生活習慣を改善させ適切な治療介入により動脈硬化を抑制するという観点から複合的に行う必要がある。今回、日本動脈硬化学会プレスセミナーにおいて、増田 大作氏(りんくう総合医療センター循環器内科部長)が「高トリグリセライド血症とその治療」と題し、日本人疫学に基づいたTGの適切なコントロール法について解説した。

IO+Chemoへのベバシズマブ add onの成績(APPLE)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療はIO+化学療法にパラダイムシフトしている。 ベバシズマブは化学療法の効果を増強することが報告されているだけでなく、VEGF阻害に伴う免疫抑制の解除による免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果増強も期待されている。  そのような中、NSCLCおいて、ICIであるアテゾリズマブ・化学療法併用へのベバシズマブの追加効果を評価するAPPLE試験が行われている。第63回 日本肺癌学会学術集会では、APPLE試験の初回解析結果を九州大学病院の白石祥理氏が発表した。

MCIやアルツハイマー病患者でみられる嗅覚識別能力の低下

 金城大学の吉武 将司氏らは、地域在住高齢者において、軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病(AD)の嗅覚同定能力を調査し、識別困難なにおいの特定を試みた。その結果、MCIやADの高齢者は認知機能が正常な高齢者と比較し、嗅覚同定能力の低下が認められた。このことから著者らは、認知症患者に対し嗅覚刺激に関連する治療介入を行う前に、嗅覚の評価を行うことが重要であるとしている。Journal of Physical Therapy Science誌2022年11月号の報告。  対象は、MCI高齢者(MCI群)12例、AD高齢者(AD群)17例、どちらでもない高齢者(対照群)30例。嗅覚同定能力は、においスティック(OSIT-J)による検査を用いて評価し、スコアの群間比較および群間差を調査した。次に、各においに対する正答率の群間比較を行い、識別困難なにおいの特定を試みた。

短腸症候群患者の声は社会に届いているか/武田

 社会にはなかなか認知されていない希少疾病や難病も多く「短腸症候群」もその1つである。本症は指定難病ではないが、小児から成人まで患者層は幅広く、患者のQOLにも大きな負担をもたらしている。武田薬品工業は「短腸症候群(SBS)を知っていますか?」をテーマにメディアセミナーを開催した。  セミナーでは、前半でSBSの病態や診療と治療について説明するとともに、後半では患者のリアルな声が届けられた。  はじめに「短腸症候群の特徴」をテーマに千葉 正博氏(昭和大学薬学部臨床薬学講座臨床栄養代謝学部門 教授/同病院外科学講座小児外科学部門兼担)が、疾患概要を説明した。  SBSとは「生まれつき、あるいは生活する中で腸が通常より短くなった方々」とされ、 明確な学術的な定義がない。通常、小腸は成人で約6m(小児で約2m)ほどあるが、わが国では(1)小腸の75%以上切除、(2)成人1.5m未満(小児75cm未満)、(3)静脈栄養から離脱困難のうち1つでも該当する患者をSBSと診断している。

CDK4/6阻害薬+ETで増悪したHR+/HER2-転移乳がん、パルボシクリブ継続投与は有効か(PACE)/SABCS2022

 CDK4/6阻害薬+内分泌療法(ET)による治療で増悪した、ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)転移乳がん(MBC)患者において、CDK4/6阻害薬を継続投与すべきかは明らかでない。増悪後、フルベストラントへの変更を伴うパルボシクリブの継続が、フルベストラント単独への変更よりも転帰を改善するかどうかを前向きに評価し、パルボシクリブ・フルベストラント・アベルマブの3剤投与の活性を探る第II相PACE試験の結果を、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のErica L. Mayer氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。 ・対象:CDK4/6阻害薬+ETで増悪したHR+/HER2-MBC患者(MBCに対するETが≦2ライン/化学療法が0~1ライン、フルベストラント治療歴なし) ・試験群 フルベストラント+パルボシクリブ群(F+P群):フルベストラント 500mg+パルボシクリブ 125mg 111例 フルベストラント+パルボシクリブ+アベルマブ群(F+P+A群):フルベストラント 500mg+パルボシクリブ 125mg+アベルマブ 10mg/kg 54例 ・対照群(F群):フルベストラント 500mg 55例 ・評価項目:

BMJ誌編集者は被引用数を予測できるのか?/BMJ

 BMJの編集者10人の論文評価予測について調べたところ、ほとんどが慎重に行っている傾向がみられ、実際の被引用数が少ない論文を引用される可能性が高いと評価することはあまりなく、逆に被引用数が多い論文を少ないだろうと評価することのほうが一般的にみられたという。英国・BMJのSara Schroter氏らが、投稿論文の被引用数をBMJ編集者が予測できるのかを検討したコホート研究の結果を報告した。“インパクトファクターマニア”はよくみられる病気で、深刻な影響を受けた編集者は、引用可能性の高い投稿論文のみを受理しようとする可能性がある。一方で、果たして編集者がそのような原稿を選択できるかは明らかになっていなかった。著者は、「今回の結果は良いことで、BMJの編集者はインパクトファクターマニアに左右されることなく原稿の質や内容の重要性に注視しようとしているのだと考えている。とはいえ、データを公開して、50%以上の確率で引用の可能性を正しく予測できた唯一の編集者(10人のうち1人いた)に助言を求めたいとの誘惑にも勝てないでいる」とまとめている。BMJ誌2022年12月14日号クリスマス特集号の「THE SCIENTIST」より。

急性心不全へのGDMTの早期増量と頻回なフォローアップで再入院リスクは減少する?(解説:原田和昌氏)

診療ガイドライン推奨の心不全治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)は、通常慢性期に推奨用量を目標に漸増するものであり、急性心不全による入院後に、いつごろからどのくらいの時間で、どの用量まで増量するかのエビデンスはほとんどない。心不全入院後の頻回なフォローアップだけでは、これまで有効性は示されなかった。急性心不全(HFrEFが68%、HFpEFが15%)による入院後に、GDMTの早期漸増に加えて頻回なフォローアップ(90日で5回)を行うという強化治療戦略は、通常治療と比較して症状軽減、QOL改善、180日以内の全死因死亡+心不全再入院リスクの減少をもたらすことが、Mebazaa氏らの多施設共同無作為化非盲検並行群間試験であるSTRONG-HF試験により示された。

統合失調症に対する高用量ルラシドンの有効性

 福島県立医科大学の三浦 至氏らは、急性増悪期の統合失調症患者を対象に、ルラシドン80mg/日の有効性および安全性を検討した。その結果、ルラシドン40mg/日で治療した急性期統合失調症患者において、用量を80mg/日に増量した場合でも忍容性は良好であった。また、ルラシドン80mg/日への増量では、40mg/日を継続した場合と比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)サブスケールスコアのより大きな改善が認められた。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月9日号の報告。

超過死亡1,483万人、コロナ死の約3倍/Nature

 2020〜21年における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行による超過死亡数は、全世界で約1,483万人にのぼることが、世界保健機構(WHO)のWilliam Msemburi氏らのグループの推計で明らかになった。この推計値は、同期間中に報告されたCOVID-19を原因とした死亡(COVID-19死)件数の約3倍に相当する。Nature誌オンライン版12月14日掲載の報告。  2021年12月31日現在、WHOに報告されたCOVID-19の確定数は、全世界で2億8,700万人を超え、そのうち約542万人が死亡している。しかし、検査の利用しやすさ、診断能力、COVID-19死の認定方法に一貫性がないといった要因により、COVID-19が世界人口に及ぼす影響の評価には困難が伴う。そこでMsemburi氏らは、人命損失について世界規模で定量化するため、超過死亡者数を推定した。超過死亡数にはCOVID-19死の総数、必要な医療の中断などの間接的な影響による死亡の両方が含まれる。

コロナ感染後の手術、間隔が長いほど術後の心血管疾患リスク減

 SARS-CoV-2感染から手術までの間隔が長くなるほど、術後の主要心血管イベント複合転帰のリスクが低くなることを、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJohn M. Bryant氏らが単一施設の後ろ向きコホート研究によって明らかにした。JAMA Netw Open誌2022年12月14日号掲載の報告。  これまで、複数の研究によってSARS-CoV-2感染と手術後の死亡率増加の関連が報告されているが、手術までの期間と死亡率の関連性についてはまだ不十分であった。そこで研究グループは、SARS-CoV-2感染から手術までの期間が短いほど、術後の心血管イベントの発生率が上がると仮説を立て、手術後30日以内の心血管イベントリスクを評価することにした。

CAR-T liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療に承認/BMS

ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年12月20日、CD19を標的とするCAR-T細胞療法リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel、製品名:ブレヤンジ)について、自家造血幹細胞移植への適応の有無にかかわらず、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の2次治療として、再生医療等製品製造販売承認事項一部変更承認を取得した。  今回の承認は、自家造血幹細胞移植適応患者を対象とした国際共同第III相試験(JCAR017-BCM-003試験)、自家造血幹細胞移植非適応患者を対象とした海外第II相試験(017006試験)および国際共同第II相試験(JCAR017-BCM-001試験)コホート2を含む、1次治療後の再発・難治性のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者を対象とした臨床試験の成績に基づいている。

二重抗体薬glofitamab、再発難治DLBCLの39%が完全寛解/NEJM

 CD20/CD3二重特異性モノクローナル抗体のglofitamabは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に有効性を示したものの、患者の半数以上にGrade3以上の有害事象が発現したことが、オーストラリア・メルボルン大学のMichael J. Dickinson氏らによる第II相試験で示された。DLBCLの標準的な1次治療はR-CHOP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone)であるが、同患者の35~40%は再発/難治性で、その予後は不良であった。NEJM誌2022年12月15日号掲載の報告。  研究グループは、2ライン以上の治療歴のある18歳以上の再発/難治性DLBCL患者を登録し、サイトカイン放出症候群軽減のためオビヌツズマブ(1,000mg)による前治療後、glofitamabを1サイクルの8日目に2.5mg、15日目に10mg、2~12サイクルの1日目に30mgを投与した(1サイクル21日間)。

マインドフルネス・運動は本当に認知機能に有効?/JAMA

 主観的な認知機能低下を自覚する高齢者において、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)、運動またはその併用はいずれも、エピソード記憶ならびに遂行機能を改善しなかった。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、米国の2施設(ワシントン大学セントルイス校、カリフォルニア大学サンディエゴ校)で実施した2×2要因無作為化臨床試験「Mindfulness, Education, and Exercise(MEDEX)試験」の結果を報告した。エピソード記憶と遂行機能は、加齢とともに低下する認知機能の本質的な側面であり、この低下は生活習慣への介入で改善する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の知見は、主観的な認知機能低下を自覚する高齢者の認知機能改善のためにこれらの介入を行うことを支持しない」とまとめている。JAMA誌2022年12月13日号掲載の報告。