日本語でわかる最新の海外医学論文|page:253

間質性肺疾患の緩和ケア、日本の呼吸器専門医の現状を調査

 間質性肺疾患(ILD)は症状が重く、予後不良の進行性の経過を示すことがある。そのため、ILD患者のQOLを維持するためには、最適な緩和ケアが必要であるが、ILDの緩和ケアに関する全国調査はほとんど行われていない。そこで、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医を対象とした調査を実施した。その結果、呼吸器専門医はILD患者に対する緩和ケアの提供に困難を感じていることが明らかになった。本研究結果は、浜松医科大学の藤澤 朋幸氏らによってRespirology誌オンライン版2023年3月22日号で報告された。

多枝病変ACSへの完全血行再建術、即時vs.段階的/Lancet

 急性冠症候群および多枝冠動脈疾患を有する患者において、即時完全血行再建術は、責任病変のみに行う段階的完全血行再建術に対して、主要複合アウトカムに関して非劣性であり、心筋梗塞および予定外の虚血による血行再建術の施行を低減したことが示された。オランダ・エラスムス大学医療センターのRoberto Diletti氏らが、前向き非盲検非劣性無作為課試験「BIOVASC試験」の結果を報告した。急性冠症候群および多枝冠動脈疾患を有する患者では、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による完全血行再建術施行が臨床アウトカム改善と関連することが示されている。研究グループは、非責任病変へのPCIをindex手術中に行うべきか、段階を踏んで行うべきかを調べる目的で本検討を行った。Lancet誌2023年4月8日号掲載の報告。

重症化リスクの高いコロナ患者、ニルマトレルビルで入院・死亡減/BMJ

 重症化リスクの高いSARS-CoV-2感染者へのニルマトレルビル投与は非投与と比較して、ワクチン非接種者・接種者、ブースター接種者、再感染者において、30日時点の入院または死亡のリスクが低下していたことが明らかにされた。米国・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らが、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを活用し、電子カルテを用いた無作為化ターゲット模倣試験(emulation of a randomized target trial)で明らかにした。ニルマトレルビルの有効性の検証は、オミクロン変異株が優勢となる前、ワクチン非接種のSARS-CoV-2感染者とSARS-CoV-2感染歴のない人々を対象に行われたものであった。BMJ誌2023年4月11日号掲載の報告。

患者集団を対象とした医療からの脱却法は?(解説:後藤信哉氏)

ランダム化比較試験は、患者集団の標準治療の確立に役立った。しかし、新型コロナウイルス感染症などの病名にて患者集団を規定しても、集団を構成している個別症例の病態、予後には不均一性がある。たとえば、新型コロナウイルス感染症の入院例においてヘパリン治療がECMOなどを避けるために有効であることはランダム化比較試験にて示されたが、標準治療が集団を構成する全例に対して有効・安全なわけではない。本研究はヘパリン治療の不均一性を検証するために3つの方法を利用した。(1)は通常のサブグループ解析である。新薬開発の臨床試験では事前に設定した年齢、性別、腎機能などにより分けたサブグループにて不均一性がないことを示している。本研究ではサブグループ解析にて結果の不均一性に注目した。(2)はrisk based model法である。集団からリスクに寄与する因子を抽出して、その因子により個別症例のリスクを事前に予測してグループ分けした。(3)はEffect-Based Approachである。いわゆるrandom forest plotにて効果を予測してグループ分けする方法である。

統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには

 地域在住の統合失調症患者における身体的、精神的、社会的な併存症は、日常生活を妨げ、再入院リスクを上昇させる可能性がある。しかし、日本において、統合失調症患者の併存症に関する調査は、包括的に行われていない。藤田医科大学の松永 眞章氏らは、日本人統合失調症患者のさまざまな併存症の有病率を調査するため、有病率ケースコントロール研究を実施した。その結果、統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、身体的、精神的、社会的な併存症を管理する効果的な介入が必要であることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年2月28日号の報告。

術前AC抵抗性TN乳がん、アテゾリズマブ+nab-PTXが有望/第II相試験

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では、抗PD-(L)1抗体による術前療法で病理学的完全奏効(pCR)率が改善されるが、免疫関連有害事象(irAE)の長期持続リスクのためリスク・ベネフィット比の最適化が重要である。最初の術前療法で臨床効果が不十分な場合はpCR率が低い(2~5%)ことから、免疫チェックポイント阻害薬が選択可能かもしれない。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのClinton Yam氏らは、術前ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)抵抗性のTNBC患者に対して、第2の術前療法としてアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルを投与する単群第II相試験を実施し、有望な結果が得られた。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年4月15日号に掲載。

不全流産に対する子宮鏡手術vs.真空吸引法/JAMA

 再びの妊娠を希望する不全流産を経験した患者への子宮鏡手術は、真空吸引法と比較し、その後の妊娠や安全性プロファイルの向上とは関連しておらず、かつ子宮鏡手術はすべての症例で実施できるとは限らないことが、フランス・パリ・シテ大学のCyrille Huchon氏らが実施した多施設共同無作為化単盲検試験「Effectiveness of Hysteroscopy in the Treatment of Intrauterine Trophoblastic Retentions:HY-PER試験」の結果で示された。真空吸引法は、不全流産患者の子宮内妊娠組織遺残物(RPOC)を除去するために一般的に用いられるが、子宮腔の瘢痕化が起こり将来の生殖能力を損なう可能性があるため、この処置に代わる方法として子宮鏡手術が普及している。著者は、「本試験は、妊娠初期の不全流産に対しては、真空吸引法が標準治療であるというエビデンスを提供しており、エビデンスレベルが低いにもかかわらず頻繁に用いられる手術手技の評価が急務であることを強調するものである」とまとめている。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。

重症コロナ患者、ACEI/ARBで生存率低下か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症成人患者において、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与は臨床アウトカムを改善せず、むしろ悪化させる可能性が高いことを、カナダ・University Health NetworkのPatrick R. Lawler氏ら「Randomized, Embedded, Multifactorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia trial:REMAP-CAP試験」の研究グループが報告した。レニン-アンジオテンシン系(RAS)の中心的な調節因子であるACE2は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の受容体であることから、RASの過剰活性化がCOVID-19患者の臨床アウトカム不良につながると考えられていた。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。

IgA腎症の病態に根差した治療(解説:浦信行氏)

CLEAR!ジャーナル四天王-1535「高リスクIgA腎症に対する経口ステロイドの効果と有害事象を勘案した治療法」の稿で低用量ステロイド群の優位性を解説したが、用量の多寡にかかわらず治療終了後の追跡期間で効果が減弱することが明らかであり、より一層病態に根差した治療法の開発の必要性を述べた。このたびLancet誌に掲載された新規の非免疫抑制性単分子エンドセリン受容体・アンジオテンシンII受容体デュアル拮抗薬のsparsentanのデータは、病態に根差した有用な治療法であることを期待させるものである。

大気汚染と認知症リスク (解説:岡村毅氏)

黄砂の飛来がニュースになっているが、タイムリーに大気汚染が認知症発症とも関連するかもしれないという報告だ。喫煙等と比べると認知症発症に与える影響は小さいが、何せ逃げることができないリスクなので、人々への影響は大きい。なお本論文では主にPM2.5を扱っているが、これは大気中に浮遊している直径2.5μm以下の小さな粒子を指し、化石燃料をはじめとする工業活動で排出されるものである。黄砂とは中国やモンゴルの乾燥域から偏西風に乗って飛んでくる砂塵であり、その大きさは4μm程度であるからほとんどがPM2.5ではない。

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」発売/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、4月18日付のプレスリリースで、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注2.5mgアテオス」「同皮下注5mgアテオス」(一般名:チルゼパチド、以下「マンジャロ」)の販売を同日より開始したことを発表した。  マンジャロは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬である。天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子の構造だが、GLP-1受容体にも結合するように改変されており、選択的に長時間作用し血糖値を改善させる。本剤は、1回使い切りのオートインジェクター型注入器(「アテオス」)によって、週1回皮下注射する薬剤である。あらかじめ注射針が取り付けられた専用ペン型注入器により、注入ボタンを押すことで自動的に注射針が皮下に刺さり、1回量が充填されている薬液が注入されるため、患者が用量を設定したり、注射針を扱ったりする必要がない。

日本人ALK陽性肺がんにおけるロルラチニブの3年追跡の結果(CROWN)/日本臨床腫瘍学会

 ロルラチニブは脳内移行の良い第3世代ALK-TKIである。第III相CROWN試験の3年間の追跡において、日本人集団は全体集団と同様、良好な結果を示した。第10回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、和歌山県立医科大学の寺岡 俊輔氏氏が発表した。  irPはICIの重篤な有害事象(AE)であり、がん治療の経過にも大きく影響する。irPの標準治療は全身性ステロイドの投与だが、前向き試験は行われておらず、投与量・期間は明らかになっていない。そんな中、柄山氏らは、irPに対するプレドニゾロン6週間漸減療法の有効性と安全性を評価する前向き多施設単群第II相試験を行った。

不眠症患者はどんな治療を望んでいるのか

 認知行動療法(CBT)を求める不眠症患者の睡眠薬使用に対する考えや、使用を減らしたいと願う予測因子について、米国・スタンフォード大学のIsabelle A. Tully氏らが調査を行った。その結果、CBTを望んでいる睡眠薬使用中の不眠症患者において、睡眠薬の必要性を強く示し、服用についての懸念が比較的少ないにもかかわらず、4分の3の患者が睡眠薬を減らしたいと望んでいることが示された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年3月8日号の報告。

重症コロナ患者へのRAS調節薬、酸素投与日数を短縮せず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院し低酸素症を呈した重症の成人患者において、開発中の「TXA-127」(合成アンジオテンシン1-7)または「TRV-027」(アンジオテンシンII受容体タイプ1に対するβアレスチンバイアス作動薬)投与によるレニン-アンジオテンシン系(RAS)の調節は、プラセボ投与と比較して酸素投与日数を短縮しなかった。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのWesley H. Self氏らが、2つの無作為化試験の結果を報告した。前臨床モデルで、SARS-CoV-2感染によってRASの調節不全(アンジオテンシン1-7に比べてIIの活性が増大)が引き起こされることが示唆され、新型コロナ病態生理の重要な要因である可能性が仮説として示されていた。

2型DMの追加処方に有益なのは?~816試験をメタ解析/BMJ

 中国・四川大学のQingyang Shi氏らはネットワークメタ解析を行い、2型糖尿病(DM)成人患者に対し、従来治療薬にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を追加投与する場合の実質的な有益性(心血管系および腎臓系の有害アウトカムと死亡の減少)は、フィネレノンとチルゼパチドに関する情報を追加することで、既知を上回るものとなることを明らかにした。著者は、「今回の結果は、2型DM患者の診療ガイドラインの最新アップデートには、科学的進歩の継続的な評価が必要であることを強調するものである」と述べている。BMJ誌2023年4月6日号掲載の報告。

新世代抗精神病薬の薬理遺伝学はどこまでわかっているのか

 個別化医療のフレームワークを考えるうえで、新世代抗精神病薬の臨床効果と遺伝子変異との関連を明らかにすることは不可欠である。薬理遺伝学的データは、重度の精神疾患患者の治療効果、忍容性、治療アドヒアランス、機能の回復、QOLの向上に役立つことが期待されている。ルーマニア・Dr. Carol Davila Central Military Emergency University HospitalのOctavian Vasiliu氏は、5つの新世代抗精神病薬(cariprazine、ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、lumateperone、pimavanserin)の薬物動態学、薬力学、薬理遺伝学に関する入手可能なエビデンスを調査し、スコーピングレビューを行った。Frontiers in Psychiatry誌2023年2月16日号の報告。

糖類の過剰摂取、心代謝疾患リスクを増大/BMJ

 食事による糖類(単糖類、二糖類、多価アルコール、遊離糖、添加糖)の過剰な摂取は、一般的に健康にとって益よりも害が大きく、とくに体重増加、異所性脂肪蓄積、心血管疾患などの心代謝疾患のリスク増大に寄与していることが、中国・四川大学のYin Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年4月5日号で報告された。   研究グループは、食事による糖類の摂取と健康アウトカムの関連に関する入手可能なすべての研究のエビデンスの質、潜在的なバイアス、妥当性の評価を目的に、既存のメタ解析のアンブレラレビューを行った(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。

急性期広範囲脳梗塞に対する血管内治療の検証(解説:中川原譲二氏)

大きな梗塞を伴う急性期脳梗塞に対する血管内治療の役割は、さまざまな集団で広く研究されていない。そこで、中国人を対象としたANGEL-ASPECT試験によって、本血管内治療の有効性を検証した。前方循環の急性大血管閉塞症で、Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score(ASPECTS)が3~5(範囲:0~10、値が低いほど梗塞が大きい)または梗塞コア体積が70~100mLの患者を対象に、中国で多施設、前向き、オープンラベル、無作為化試験を実施した。患者は、最後に元気であることが確認された時刻から24時間以内に、血管内治療群(血管内治療+内科的管理)と内科的管理単独群に1:1の割合でランダムに割り付けられた。主要評価項目は、90日後のmRSのスコア(スコアは0~6で、スコアが高いほど障害が大きい)で、90日後のmRSのスコアの分布に2群間で変化が生じたかどうかを調べた。副次評価項目は、mRSのスコアが0~2の割合、0~3の割合とした。安全性の主要評価項目は、無作為化後48時間以内の症候性頭蓋内出血とした。

原発性脳腫瘍の手術推奨における人種間格差(解説:中川原譲二氏)

本研究の目的は、米国における原発性脳腫瘍の外科治療における人種的格差あるいは社会経済的格差について検討することにある。検討では、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベース(1975~2016年)と、American College of Surgeons National Cancer Database(NCDB、2004~17年)のデータが用いられた。新たに髄膜腫、膠芽腫、下垂体腺腫、聴神経鞘腫、星細胞腫、乏突起膠腫の診断を受けた20歳以上で、腫瘍サイズと手術に関する推奨についての情報が得られた患者を対象に分析を行った。主要アウトカムは、外科医が原発性脳新生物の診断時に、外科的切除の非実施を推奨するオッズ比(OR)とした。臨床要素や人口統計学的要因、社会経済的要素を盛り込み、多重ロジスティック回帰分析で評価した。

片頭痛予防、日本人患者と医師の好みは?

 現在、日本における片頭痛の予防には、自己注射可能なカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体(mAb)のオートインジェクター(AI)製剤、非CGRPの経口剤などが利用可能である。米国・EvideraのJaein Seo氏らは、CGRP mAbのAI製剤と非CGRPの経口剤に対する日本人患者および医師の好みを調査し、両者にとってのAI製剤の相対的な重要性の違いを測定しようと試みた。その結果、多くの片頭痛患者および医師は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好むことが確認された。本結果から著者らは、日本人医師が片頭痛の予防治療を勧める際には、患者の好みを考慮する必要性が示唆されるとしている。Neurology and Therapy誌2023年4月号の報告。