日本語でわかる最新の海外医学論文|page:215

中等症~重症の乾癬、女性の出生率低い

 英国で行われた住民ベースのコホート研究で、中等症~重症の乾癬女性患者は背景因子をマッチングさせた非乾癬女性と比べて、出生率が低く、流産のリスクが高いことが示された。英国・マンチェスター大学のTeng-Chou Chen氏らが報告した。乾癬女性患者の出生率および出生アウトカムに関する研究は、サンプルサイズが小規模、比較対象が設定されていない、正確な妊娠記録が欠如しているなどの限界が存在していた。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる研究により、流産リスクの上昇との因果関係を明らかにする必要がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年6月7日号掲載の報告。

話題のマイナ保険証、機器の設置率やトラブル報告は?/1,000人アンケート

 皆さんの施設ではマイナ保険証の利用で困った事例はないだろうか? ある報道によると、オンライン資格確認の導入施設の65%以上で何らかのトラブルが発生しているという。そこで今回、ケアネット会員のうち、20床未満の施設を経営/勤務する医師1,000人の実情を伺うべく「マイナ保険証で困っていること」についてアンケートを実施した。  昨年10月、マイナ保険証が本格導入した際にもケアネットでは『マイナ保険証への対応』についてアンケートを実施しており、前回に続き今回も「マイナンバーカードの取得と保険証への連携手続き」「カードリーダーの設置状況」に関する調査を行った。昨年10月と今回の調査を比較した各変化率は以下のとおり。

日本の双極性障害外来患者に対する向精神薬コスト~MUSUBI研究

 双極性障害の治療コストは、地域的要因および普遍的要因と関連しているが、西欧諸国以外からのデータは、限られている。また、臨床的特徴と外来薬物療法のコストとの関連性は、十分にわかっていない。札幌・足立医院の足立 直人氏らは、日本人の統合失調症外来患者における治療コストとその後の臨床症状との関連性の推定を試みた。とくに、医療費の大部分を占め、近年増加傾向にある医薬品コストに焦点を当てて調査を行った。その結果、日本における双極性障害患者の1日当たりの平均治療コストは約350円であり、患者特性および精神病理学的状態と関連していることを報告した。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。

『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』改訂のポイント/日本腎臓学会

 6月9日~11日に開催された第66回日本腎臓学会学術総会で、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』が発表された。ガイドラインの改訂に伴い、「ここが変わった!CKD診療ガイドライン2023」と題して6名の演者より各章の改訂ポイントが語られた。 第1章 CKD診断とその臨床的意義/小杉 智規氏(名古屋大学大学院医学系研究科 腎臓内科学) ・実臨床ではeGFR 5mL/分/1.73m2程度で透析が導入されていることから、CKD(慢性腎臓病)ステージG5※の定義が「末期腎不全(ESKD)」から「高度低下~末期腎不全」へ変更された。 ・国際的に用いられているeGFRの推算式(MDRD式、CKD-EPI式)と区別するため、日本人におけるeGFRの推算式は「JSN eGFR」と表記する。 ・一定の腎機能低下(1~3年間で血清Cr値の倍化、eGFR 40%もしくは30%の低下)や、5.0mL/分/1.73m2/年を超えるeGFRの低下はCKDの進行、予後予測因子となる。

コロナ罹患後症状における精神症状の国内レジストリ構築、主なリスク因子は?/日本精神神経学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行はすでに3年以上経過しているが、流行が長期化するほど既感染者が増加し、コロナ後遺症(コロナ罹患後症状、Long COVID)のリスクも上がる。コロナ後遺症は、倦怠感や認知機能障害といった精神神経障害が年単位で持続する場合もある。  国立精神・神経医療研究センターの高松 直岐氏らの研究チームは、こうしたコロナ後遺症の病態解明と新規治療法開発につなげるため、COVID-19感染後の精神症状を有する患者レジストリの構築を実施している。中間解析の結果、コロナ後遺症による有意な心理社会的機能障害の予測因子は、退職経験、主婦層、COVID-19罹患への心配や抑うつが中等度以上、ワクチン接種2回以下であることが示された。6月22~24日に横浜にて開催された第119回日本精神神経学会学術総会にて、高松氏が発表した。

GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの有効性・安全性/Lancet

 2型糖尿病患者の治療において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴンの3つの受容体の作動活性を有する新規単一ペプチドretatrutideは、プラセボと比較して、血糖コントロールについて有意かつ臨床的に意義のある改善を示すとともに、頑健な体重減少をもたらし、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬とほぼ同様であることが、米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月26日号で報告された。

肝線維化やNASH消失にpegozaferminが有効か/NEJM

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療において、線維芽細胞増殖因子(FGF21)アナログpegozaferminはプラセボと比較して、NASHの悪化を伴わない肝線維化の改善効果が優れ、肝線維化の悪化を伴わないNASH消失の達成割合も良好であることが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRohit Loomba氏らが実施した「ENLIVEN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年6月24日号に掲載された。  ENLIVEN試験は、米国の61施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb相試験であり、2021年9月~2022年8月の期間に患者の登録が行われた(米国・89bioの助成を受けた)。

コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連

 これまで、コーヒー摂取と身体状態や死亡リスクとの関連性に関するエビデンスは蓄積されているが、精神疾患との関連性を評価した報告は限られていた。中国・杭州師範大学のJiahao Min氏らは、コーヒー摂取とうつ病や不安症リスクとの関連を調査し、さらにコーヒーの種類や添加物による影響を検討した。その結果、コーヒーを1日当たり2~3杯摂取することは、メンタルヘルス改善のための健康的なライフスタイルの一環として、重要である可能性が示唆された。Psychiatry Research誌8月号の報告。  英国バイオバンクのデータを用いて、2006~10年のベースラインタッチスクリーンアンケートに回答した参加者14万6,566人のデータを分析した。フォローアップ期間中、2016年にこころとからだの質問票(PHQ-9)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)を用いて、うつ病および不安症の発症を確認した。コーヒーのサブタイプは、インスタントコーヒー、ひいたコーヒー、カフェインレスコーヒーとし、添加物にはミルク、砂糖、人工甘味料を含めた。関連性の評価には、多変数調整ロジスティック回帰モデルおよび制限付き3次スプラインを用いた。

イノツズマブ+ブリナツモマブ併用mini-Hyper-CVD療法で再発ALLの生存率改善

 mini-Hyper-CVD療法とイノツズマブの併用は、再発難治性急性リンパ性白血病(ALL)患者において有効性を示し、ブリナツモマブ追加後はさらに生存率が向上したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHagop Kantarjian氏らによる研究で明らかになった。Journal of Hematology & Oncology誌2023年5月2日号の報告。  成人ALL治療は近年、大きくその様相が変化している。CD19表現抗体を標的としたブリナツモマブやCD22を標的とした抗体薬物複合体のイノツズマブ オゾガマイシンや各種CAR-T細胞療法など、新しい治療法選択肢が登場したためである。  再発難治性ALLに対するブリナツモマブとイノツズマブ単剤の有効性は、すでに確認されているとおりである。今回は、イノツズマブを用いた低用量のmini-Hyper-CVD療法に、ブリナツモマブを追加することで、化学療法による負担を減らすことができないかを検討した。

男性機能の維持にも、テストステロン増加に最適な運動/日本抗加齢医学会

 いくつになっても男性機能を維持させたい、死亡リスクを減らしたい、というのは多くの男性の願いではないだろうか―。「老若男女の抗加齢 from womb to tomb」をテーマに掲げ、第23回日本抗加齢医学会総会が6月9~11日に開催された。そのシンポジウムにて前田 清司氏(早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授)が『有酸素運動とテストステロン』と題し、肥満者のテストステロン増加につながる方法、男性機能を維持するのに適した運動について紹介した。  近年、国内の死因別死亡数では心血管疾患や脳血管疾患が上位に上っているが、肥満者(BMI≧25)が増加することでこの死因が押し上げられることが示唆されている1)。そのため、肥満者を減らせば心・脳血管疾患も減少傾向に転じる可能性がある。

統合失調症治療の専門家、早期の長時間作用型注射剤使用を支持

 統合失調症は、精神症状、陰性症状、認知機能低下などを来す慢性疾患である。統合失調症患者は、一般的にアドヒアランスが不良であり、これに伴う再発によりアウトカム不良に至る可能性がある。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、治療アドヒアランスを改善し、再発・再入院リスクを低下させることが期待される。初発や発症初期の統合失調症患者にLAIを使用することで、その後のベネフィットが得られる可能性があるものの、歴史的にLAIの使用は慢性期患者を中心に行われてきた。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のCelso Arango氏らは、初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスを報告した。その結果、疾患の重症度、再発回数、社会的支援の有無にかかわらず、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療が支持された。しかし、この結果は臨床医の認識とギャップがあるため、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療に関するエビデンスを作成していくことが求められる。BMC Psychiatry誌2023年6月21日号の報告。

医療裁判にも影響か?肝機能の指標がALT>30に

 肝機能検査として血液検査で汎用されるALT値。今後、これが30を超えていたら、プライマリ・ケア医やかかりつけ医による肝疾患リスクの確認が必要となる―。6月に開催された第59回日本肝臓学会総会にて、ALT>30を指標とする『奈良宣言』が公表された。これは、かかりつけ医と消化器内科医が適切なタイミングで診療連携することで患者の肝疾患の早期発見・早期治療につなげることを目的に、さまざまなエビデンスに基づいて設定された。記者会見では吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授/日本肝臓学会理事)らが本宣言の背景や目的を説明しており、今回ケアネットでは日本肝臓学会理事で本宣言での特別広報委員を務める江口 有一郎氏(江口病院 ロコメディカル総合研究所 所長)に独自取材を行った。

2型DMでのorforglipron、HbA1c低下に最適な用量-第II相/Lancet

 新規の経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronは、12mg以上の用量でプラセボまたはデュラグルチドと比較しHbA1cおよび体重の有意な減少を示し、有害事象のプロファイルは同様の開発段階にある他のGLP-1受容体作動薬と類似していた。米国・Velocity Clinical ResearchのJuan P. Frias氏らが、米国、ハンガリー、ポーランド、スロバキアの45施設で実施された26週間の第II相多施設共同無作為化二重盲検用量反応試験の結果を報告した。orforglipronは2型糖尿病および肥満症の治療薬として開発中で、今回の結果を踏まえて著者は、「orforglipronは、2型糖尿病患者にとって少ない負担で治療目標を達成することが期待でき、GLP-1受容体作動薬の注射剤や経口セマグルチドに代わる治療薬となる可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。

肥満2型DMでのチルゼパチド、体重減少にも有効/Lancet

 過体重または肥満の2型糖尿病患者において、チルゼパチド10mgおよび15mgの週1回72週間皮下投与は、体重管理を目的とした他のインクレチン関連薬と同様の安全性プロファイルを示し、臨床的に意義のある大幅な体重減少をもたらしたことが示された。米国・アラバマ大学バーミンガム校のW Timothy Garvey氏らが、7ヵ国の77施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURMOUNT-2試験」の結果を報告した。肥満2型糖尿病患者の健康状態を改善するためには、体重減少が不可欠である。チルゼパチドは持続性のGIP/GLP-1受容体作動薬で、非2型糖尿病の肥満患者を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週間のチルゼパチドによる治療で体重が最大20.9%減少することが認められていた。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。

lecanemab、アルツハイマー病治療薬として米国FDAよりフル承認を取得/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとBiogen(米国)は2023年7月7日、米国商品名「LEQEMBI」注射100mg/mL溶液(一般名:lecanemab)について、アルツハイマー病治療薬としてフル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請を米国食品医薬品局(FDA)が承認したことを発表した。今回の「LEQEMBI」のフル承認は、エーザイの大規模グローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づいている。  「LEQEMBI」は、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、継続的に蓄積される最も神経毒性の高いAβ(Aβプロトフィブリル)をターゲットとして除去し、既存のプラークを除去するとされる。2023年1月6日にFDAより迅速承認を取得しており、さらに6月には臨床第III相Clarity AD検証試験の結果が本剤の臨床上のベネフィットを示すエビデンスであることを、FDAの末梢・中枢神経系薬物諮問委員会(PCNS)が全会一致で支持していた。今回の承認により、「LEQEMBI」は、アルツハイマー病の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを示し、フル承認を取得した世界初かつ唯一の治療薬となる。

高齢者の片頭痛患者に対する抗CGRP抗体の安全性・有効性

 抗CGRPモノクローナル抗体は、片頭痛治療において顕著な有効性および忍容性が認められているが、高齢者に対する使用データについては、臨床試験では暗黙の年齢制限があり、リアルワールドのエビデンスも限られていることから、十分であるとは言えない。スペイン・バルセロナ大学のAlbert Munoz-Vendrell氏らは、65歳以上の片頭痛患者を対象に抗CGRPモノクローナル抗体であるエレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブの安全性および有効を評価するため、検討を行った。その結果、リアルワールドにおける65歳以上の片頭痛患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、安全かつ効果的な治療法であることを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2023年6月2日号の報告。

ワインは心血管に良い影響?22試験のメタ解析

 アルコール摂取と心血管イベントにはJ字型、U字型の関連があるという報告もあり、多量のアルコール摂取は心血管に悪影響を及ぼす一方、少量であれば心血管に良い影響を及ぼす可能性が指摘されているが、結果は一貫していない。また、ワインの摂取が心血管の健康に及ぼす効果についても、意見が分かれている。そこで、スペイン・Universidad de Castilla-La ManchaのMaribel Luceron-Lucas-Torres氏らは、ワインの摂取量と心血管イベントとの関連について、システマティックレビューおよび22試験のメタ解析を実施した。その結果、ワインの摂取は、心血管イベントのリスク低下と関連していた。また、年齢や性別、追跡期間、喫煙の有無はこの関連に影響を及ぼさなかった。Nutrients誌2023年6月17日号の報告。

セマグルチド+cagrilintide配合皮下注、HbA1c低下に有効/Lancet

 2型糖尿病患者に対するセマグルチドとcagrilintideの皮下投与配合剤CagriSemaは、臨床的に意義のある血糖コントロール(持続血糖モニタリング[CGM]パラメータなど)の改善に結び付いたことが、米国・Velocity Clinical ResearchのJuan P. Frias氏らが行った、第II相多施設共同二重盲検無作為化試験で示された。CagriSemaによるHbA1c値の平均変化値は、cagrilintide単独よりも大きかったが、セマグルチド単独とは同等だった。体重は、CagriSema治療がcagrilintideやセマグルチドと比較して有意に大きく減少した。結果を踏まえて著者は、「今回のデータは、同様の集団を対象とした、より長期かつ大規模な第III相試験で、CagriSemaに関するさらなる試験を行うことを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年6月23日号掲載の報告。

慢性D型肝炎へのbulevirtide、第III相試験でも有効/NEJM

 慢性D型肝炎患者に対するbulevirtideの投与は、48週時点でD型肝炎ウイルス(HDV) RNA量の減少およびALT値の低下に結びついたことが示された。ドイツ・Hannover Medical SchoolのHeiner Wedemeyer氏らが、第III相無作為化比較試験の結果を報告した。HDVは、肝細胞への侵入と増殖にB型肝炎ウイルス(HBV)の表面抗原(HBsAg)を要するサテライトRNAウイルスで、HDVとHBVの同時感染は慢性B型肝炎の関連肝疾患の進行を加速させることが知られている。bulevirtideは、HDVの肝細胞への侵入を阻害する効果が確認され、第II相試験でHDV RNA量とALT値を顕著に低下することが示されていた。NEJM誌2023年7月6日号掲載の報告。

遺伝子パネル検査、4割強の医師がいまだ経験なし/会員医師アンケート

 2019年6月に遺伝子パネル検査が保険収載されてから丸4年が経過した。ケアネットでは、7月19日に配信するセミナー「米国における がんゲノム検査の実態」収録に先立って、がん診療に携わる専門医600人を対象に「遺伝子パネル検査の施設での実施状況や自身の経験」について聞くアンケートを実施した。全体集計のほか、専門であることが見込まれる「肺がん」「乳がん」「消化器がん」「泌尿器がん」別でも集計、比較した。