日本語でわかる最新の海外医学論文|page:218

T-DXd、脳転移や髄膜がん腫症を有するHER2+乳がんに有効(ROSET-BM)/日本乳癌学会

 わが国における実臨床データから、脳転移や髄膜がん腫症(LMC)を有するHER2陽性(HER2+)乳がんにトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が有効であることが示唆された。琉球大学の野村 寛徳氏が第31回日本乳癌学会学術総会で発表した。T-DXdはDESTINY-Breast01/03試験において、安定した脳転移を有するHER2+乳がんに対して有望な効果が報告されているが、活動性脳転移やLMCを有する患者におけるデータはまだ限られている。  本研究(ROSET-BM)はわが国における多機関共同レトロスペクティブチャートレビュー研究である。

周術期非小細胞肺がんに対する化学療法+toripalimabのEFS中間解析(Neotorch)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)に対する周術期治療に、抗PD-1抗体toripalimabを追加投与することで、無イベント生存期間(EFS)が延長することが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相Neotorch試験の中間解析から示された。中国・上海市胸科医院のShun Lu氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

成人のアトピー性皮膚炎は静脈血栓塞栓症のリスクか

 アトピー性皮膚炎(AD)の成人患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクが高いことが、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らが実施した住民ベースの全国コホート研究で示唆された。AD成人と非AD成人のVTE発症の絶対差はわずかであったが、著者は、「VTEを示唆する症状を呈するAD成人患者には、心血管系の検査と指導管理を考慮すべきだろう」と述べ、「ADとVTEの関連の基礎をなす、病態生理を解明するため、さらなる研究が求められる」とまとめている。ADの病態メカニズムとして慢性全身性炎症があり、潜在的な血管への影響が考えられることから、複数の心血管疾患についてADとの関連が研究されているが、成人におけるADとVTEの関連はほとんど解明されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月31日号掲載の報告。

双極性障害ラピッドサイクラーの特徴

 双極性障害(BD)におけるラピッドサイクリング(RC、1年当たりのエピソード回数:4回以上)の存在は、1970年代から認識されており、治療反応の低下と関連する。しかし、1年間のRCと全体的なRC率、長期罹患率、診断サブタイプとの関連は明らかになっていない。イタリア・パドヴァ大学のAlessandro Miola氏らは、RC-BD患者の臨床的特徴を明らかにするため、プロスペクティブに検討を行った。その結果、BD患者におけるRC生涯リスクは9.36%であり、女性、高齢、BD2患者でリスクが高かった。RC患者は再発率が高かったが、とくにうつ病では罹患率の影響が少なく、エピソードが短期である可能性が示唆された。RC歴を有する患者では転帰不良の一方、その後の再発率の減少などがみられており、RCが持続的な特徴ではなく、抗うつ薬の使用と関連している可能性があることが示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月4日号の報告。

スタチンで肝疾患を予防できる可能性の高い人は

 スタチン服用が肝疾患を予防する可能性が示唆されている。今回、ドイツ・University Hospital RWTH AachenのMara Sophie Vell氏らは、肝疾患・肝細胞がん発症の減少、および肝臓関連死亡の減少と関連するかどうかを3つのコホートで検討した。その結果、スタチン服用者は非服用者に比べ、肝疾患発症リスクが15%低く、肝細胞がん発症リスクについては最大74%低かった。また、このスタチンのベネフィットは、とくに男性、糖尿病患者、肝疾患の遺伝的リスクがある人で得られる可能性が高いことが示唆された。JAMA Network Open誌2023年6月26日号に掲載。

fruquintinib、難治転移大腸がんに有効/Lancet

 難治性の転移を有する大腸がんの治療において、VEGFR-1、2、3を標的とする経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)fruquintinibはプラセボと比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、安全性も良好であることが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのArvind Dasari氏らが実施した「FRESCO-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月15日号で報告された。  FRESCO-2試験は、日本を含む14ヵ国124施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年8月~2021年12月の期間に患者の登録が行われた(中国・HUTCHMEDの助成を受けた)。

スコアに基づくコロナ罹患後症状の定義を提案した論文報告(解説:寺田教彦氏)

新型コロナウイルス感染症罹患後、数週間から数ヵ月にわたってさまざまな症状が続くことがあり、海外では「long COVID」や「postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC」、本邦では新型コロナウイルス感染症の罹患後症状と呼称されている。世界各国から報告されているが、この罹患後症状の明確な診断基準はなく、病態も判明しきってはいない。WHOは「post COVID-19 condition」について、新型コロナウイルス感染症に罹患した人で、罹患後3ヵ月以上経過しており、少なくとも2ヵ月以上症状が持続し、他の疾患による症状として説明がつかない状態を定義しており(詳細はWHO HP、Coronavirus disease (COVID-19): Post COVID-19 condition.[2023/06/18最終確認]を参照)、本邦の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版」でも引用されている。

他の睡眠薬からレンボレキサントへの切り替え効果~SLIM研究

 ほりこし心身クリニックの堀越 翔氏らは、他の睡眠薬からデュアルオレキシン受容体拮抗薬レンボレキサント(LEB)への切り替えによる有効性および安全性を評価するため、本研究を行った。その結果、他の睡眠薬からLEBに切り替えることで、ベンゾジアゼピン(BZD)、Z薬に関連するリスクが低下する可能性が示唆された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年5月30日号の報告。  対象は2020年12月~2022年2月に、ほりこし心身クリニックを受診した不眠症患者61例。アテネ不眠症尺度(AIS)、エプワース眠気尺度(ESS)、Perceived Deficits Questionnaire-5 item(PDQ-5)を含む診療記録から得られた臨床データを分析した。切り替え前の睡眠薬には、BZD、Z薬、スボレキサント、ラメルテオン、ミルタザピン、トラゾドン、抗精神病薬を含めた。主要アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のAISスコアの平均変化とした。副次的アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のESSスコアおよびPDQ-5スコアの平均変化とした。また、切り替え前後のジアゼパム換算量の比較も行った。

コロナ入院患者の他疾患発症、インフルと比較

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化した人は、急性期後も心血管疾患、神経疾患、精神疾患、炎症性疾患や自己免疫疾患などを発症するリスクが高まり、Long COVIDとして問題になっている。しかし、それはほかの感染症と比較した場合にも、リスクが高いと言えるのだろうか? カナダ・トロント大学のKieran L Quinn氏らはカナダのオンタリオ州において、臨床データベースと医療行政データベースをリンクさせた集団ベースのコホート研究を実施し、研究結果はJAMA Internal Medicine誌オンライン版2023年6月20日号に掲載された。

急性脳梗塞の血栓除去術、術前ビタミンK拮抗薬は出血リスク?/JAMA

 急性期脳梗塞で血管内血栓除去術(EVT)を受けた患者では、術前のビタミンK拮抗薬(VKA)の使用と術後の症候性頭蓋内出血(sICH)には関連がないが、国際標準比(INR)が1.7を超えるサブグループではVKAの使用はsICH発生のリスクを高めることが、米国・デューク大学医学大学院のBrian Mac Grory氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日号で報告された。  研究グループは、EVTを受ける脳梗塞患者における術前のVKAの使用とアウトカムとの関連を明らかにする目的で、後ろ向きコホート研究を行った(ARAMIS registry[Daiichi Sankyo、Genentech、Janssenの助成で運営]の支援を受けた)。

臨床試験で有意差なし、本当に効果なし?/JAMA

 無作為化臨床試験の多くは統計学的に有意でない結果をもたらすが、このような知見は一般的な統計学的枠組みで解釈することは困難とされる。スイス・ジュネーブ大学のThomas Perneger氏らは、尤度比を適用することで、有意でない主要アウトカムの結果のうち、効果なしとする帰無仮説を支持するエビデンスの強度と、事前に規定された有効であるとする対立仮説を支持するエビデンスの強度を推定した。その結果、対立仮説(尤度比<1)が支持されたのは8.9%に過ぎず、91.1%では帰無仮説(尤度比>1)が支持された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日発行号に掲載された。

心臓死ドナー心を用いた心臓移植成績(解説:許俊鋭氏)

本論文で示されたRCT臨床試験は、TransMedics社のポータブル体外循環臓器保存システム(Organ Care System:OCS)を使用して保存した、心臓死ドナー心を用いた心移植(DCD群)の脳死ドナー心移植(DBD群)に対する非劣性を、多施設非盲検ランダム化比較試験で証明することを目的として実施された。DCD群(80例)とDBD群(86例)のリスク調整後の6ヵ月生存率(94% vs.90%)の比較で、DCD群の非劣性が証明された。また、心移植30日の時点での患者1人当たりの心移植グラフトに関連する重篤な有害事象数は2群間で差はなかった。

日本人反復性片頭痛に対するフレマネズマブの有用性

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、多くの第II相および第III相試験において片頭痛患者に対する有効性および忍容性が確認されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、反復性片頭痛(EM)患者を対象とした国際共同第III相試験(HALO EM試験)および日本と韓国で実施された第IIb/III相試験のサブグループ解析を実施し、日本人EM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価した。その結果、フレマネズマブは、日本人EM患者にとって効果的かつ忍容性の高い予防薬であることが確認された。Journal of Pain Research誌2023年5月18日号の報告。

高齢者糖尿病診療ガイドライン2023、薬物療法のエビデンス増え7年ぶりに改訂

 日本老年医学会・日本糖尿病学会の合同編集である『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が5月に発刊された。2017年時にはなかった高齢者糖尿病における認知症、サルコペニア、併存疾患、糖尿病治療薬などのエビデンスが集積したことで7年ぶりの改訂に至った。今回、日本老年医学会の編集委員を務めた荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科)に改訂点について話を聞いた。  高齢者糖尿病とは、「65歳以上の糖尿病」と定義されるが、医学的な観点や治療、介護上でとくに注意すべき糖尿病高齢者として「75歳以上の高齢者と、身体機能や認知機能の低下がある65~74歳の糖尿病」と、より具体的な定義付けもなされている。

真性多血症に新技術の治療薬が登場/ファーマエッセンシアジャパン

 真性多血症(PV)の治療薬ロペグインターフェロンアルファ-2b(商品名:ベスレミ)の発売に合わせ、ファーマエッセンシアジャパンは「真性多血症の治療における新たな選択肢」と題して、都内でメディアセミナーを開催した。  ロペグインターフェロンアルファ-2bは、PVの治療薬(既存治療が効果不十分または不適当な場合に限る)としては初のインターフェロン製剤であり、2023年年3月27日に製造販売承認を取得、5月24日に薬価収載、6月1日より販売を開始している。  セミナーでは、同社の概要や今後の展開のほか、同社のコアテクノロジーである“部位選択的モノペグ化技術”の概要の説明のほか、専門医によるPVのレクチャーが行われた。

腎不全死亡、オンラインHDFが従来血液透析よりリスク低下/NEJM

 腎不全患者において、大量血液透析濾過(high-dose hemodiafiltration with on-line production:オンラインHDF)は従来のハイフラックス膜を使用した血液透析(HFHD)と比較して、全死因死亡リスクを低下することが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のPeter J. Blankestijn氏らが欧州8ヵ国の61施設で実施した実用的な無作為化比較試験「CONVINCE研究」の結果を報告した。いくつかの研究で、腎不全患者では標準的な血液透析と比較し、オンラインHDFが有用である可能性が示唆されているが、発表されている研究には限界があり追加データが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2023年6月16日号掲載の報告。

発作性上室頻拍、etripamil点鼻スプレーが有用/Lancet

 発作性上室頻拍に対する短時間作用型のL型Caチャネル拮抗薬であるetripamilの点鼻投与は、房室結節依存性の発作性上室頻拍の洞調律への迅速な復帰に関してプラセボより優れており、忍容性および安全性は良好であることが、北米および欧州の160施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験「RAPID試験」の結果、示された。米国・Piedmont Heart InstituteのBruce S. Stambler氏らが報告した。RAPID試験は、NODE-301試験のパート2として実施された試験である。Lancet誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。

認知症リスクが高まるHbA1c値は?

 高血糖状態が続くと、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」が溜まりやすくなり、認知症発症リスクが高まるとされる。糖尿病患者が認知症リスクを減らすために目標とすべき血糖コントロールはどの程度か。オーストラリア・National Centre for Healthy AgeingのChris Moran氏らの研究がJAMA neurology誌2023年6月1日号に掲載された。  1996年1月1日~2015年9月30日の期間中、50歳以上の2型糖尿病を有するKaiser Permanente Northern California統合医療システムの会員を対象とした。期間中のHbA1c測定が2回未満、ベースライン時の認知症有病者、追跡期間3年未満の者は除外した。データは2020年2月~2023年1月に解析された。

境界性パーソナリティ障害の自殺リスクに対する薬物療法の比較

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者では、自殺行動が臨床上の重大な懸念事項となるが、自殺リスクの低下に有効な薬物療法は依然として明らかになっていない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、スウェーデンのBPD患者における自殺企図または自殺既遂の予防に対する、さまざまな薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、BPD患者の自殺行動のリスク低下と関連が認められた唯一の薬物療法は、注意欠如・多動症(ADHD)治療薬であることが示され、逆に、ベンゾジアゼピンの使用は自殺リスク上昇との関連が示唆された。著者らは、BPD患者において、ベンゾジアゼピンは注意して使用する必要があると報告している。JAMA Network Open誌2023年6月1日号の報告。

HIVの2次治療、ドルテグラビルへの切り替えは可能か?/NEJM

 既治療のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で、薬剤耐性変異の有無に関するデータがなく、ウイルス抑制下にある患者において、リトナビルブーストプロテアーゼ阻害薬(PI)ベースのレジメンからドルテグラビルへの切り替えは、リトナビルブーストPIを含むレジメンに対して非劣性であることが、ケニア・ナイロビ大学のLoice A. Ombajo氏らが同国4施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験の結果で示された。遺伝子型の情報がなく、リトナビルブーストPIを含む2次治療でウイルスが抑制されているHIV感染患者において、ドルテグラビルへの切り替えに関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月22日号掲載の報告。