性腺機能低下症のテストステロン補充、骨折リスクを増大/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/01/26

 

 性腺機能低下症の中年以上の男性において、テストステロン補充療法はプラセボと比較し臨床的骨折の発生率を低下させることはなく、むしろ同発生率は数値的には増加していた。米国・ペンシルベニア大学のPeter J. Snyder氏らが、テストステロン補充療法の心血管安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TRAVERSE試験」のサブ試験の結果を報告した。性腺機能低下症の男性におけるテストステロン補充療法は、骨密度や骨質を改善することが報告されているが、骨折リスクを減少させるかどうかの判断には十分な症例数と期間による試験が必要であることから、TRAVERSE試験のサブ試験として検討が行われていた。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。

TRAVERSE試験のサブ試験で臨床的骨折リスクを評価

 TRAVERSE試験の対象は、心血管疾患を有するかそのリスクが高い45~80歳の男性で、性腺機能低下症の症状を1つ以上有し、早朝空腹時に48時間以上の間隔で2回採取した血漿中のテストステロン濃度が300ng/dL(10.4nmol/L)未満の患者を適格とした。

 研究グループは、適格患者を1.62%テストステロンゲル群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回塗布してもらい、受診(対面または電話)のたびに前回の受診以降骨折したかどうかを質問し、骨折があった場合は医療記録を入手した。

 主要アウトカムは、初回の臨床的骨折(画像診断または手術記録で確認された臨床的な脊椎または非脊椎骨折で、胸骨、手足の指骨、顔面骨、頭蓋骨の骨折は除く)で、ITT集団を対象に層別Cox比例ハザードモデルを用いたtime-to-even解析を行い評価した。

臨床的骨折の発生は、テストステロン群3.50% vs.プラセボ群2.46%

 2018年5月23日~2022年2月1日に被験者の登録が行われ、最大解析対象集団に5,204例が組み込まれた(テストステロン群2,601例、プラセボ群2,603例)。

 追跡期間中央値3.19年(四分位範囲:1.96~3.53)において、テストステロン群では91例(3.50%)、プラセボ群では64例(2.46%)に臨床的骨折が認められた(ハザード比:1.43、95%信頼区間:1.04~1.97)。

 他の骨折エンドポイント(骨粗鬆症治療薬非服用者における臨床的骨折、除外した骨折を含むすべての臨床的骨折、主要骨粗鬆症性骨折など)についても、テストステロン群で発生率が高かった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)