日本語でわかる最新の海外医学論文|page:205

既治療のHR+/HER2-転移乳がんへのSG、OSを改善(TROPiCS-02)/Lancet

 sacituzumab govitecan(SG)は、ヒト化抗Trop-2モノクローナル抗体と、トポイソメラーゼ阻害薬イリノテカンの活性代謝産物SN-38を結合した抗体薬物複合体。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏らは、「TROPiCS-02試験」において、既治療のホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の切除不能な局所再発または転移のある乳がんの治療では、本薬は標準的な化学療法と比較して、全生存期間(OS)を有意に延長し、管理可能な安全性プロファイルを有することを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年8月23日号で報告された。

ファイザーのXBB.1.5対応コロナワクチン承認/厚労省

 厚生労働省は9月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株対応ワクチンの一部変更について承認したことを発表した。今回の承認で、ファイザーのオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む1価ワクチンが追加された。一変承認されたのは対象年齢別に、「コミナティRTU筋注」、「コミナティ筋注5~11歳用」、「コミナティ筋注6ヵ月~4歳用」の3タイプとなる。いずれも2023年7月7日に製造販売承認事項一部変更申請されていたもので、9月20日以降の秋開始接種に使用される。

日本人のBMIと認知症リスク、男女間で異なる

 BMIと認知症リスクとの関連は、年齢によりばらつきがあり、性別の影響を受ける可能性がある。新潟大学のAlena Zakharova氏らは、地域在住の日本人を対象に、BMIと認知症リスクとの関連に対する性別の影響を明らかにするため、コホート研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年8月1日号の報告。  ベースライン時(2011~13年)に40~74歳であった地域在住の日本人1万3,802人を対象に8年間のフォローアップ期間を伴うコホート研究を実施した。直接測定により収集された身長、体重、腹囲を含む社会人口統計学的およびライフスタイル、病歴に関する情報を自己記入式アンケートで収集した。BMIに基づき参加者を次の6群に分類した。

DOAC内服AF患者の出血リスク、DOACスコアで回避可能か/ESC2023

 心房細動患者における出血リスクの評価には、HAS-BLEDスコアが多く用いられているが、このスコアはワルファリンを用いる患者を対象として開発されたものであり、その性能には限界がある。そこで、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らは直接経口抗凝固薬(DOAC)による出血リスクを予測する「DOACスコア」を開発・検証した。その結果、大出血リスクの判別能はDOACスコアがHAS-BLEDスコアよりも優れていた。本研究結果は、オランダ・アムステルダムで2023年8月25日~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology 2023(ESC2023、欧州心臓病学会)で発表され、Circulation誌オンライン版2023年8月25日号に同時掲載された。

ブタからヒトへ、腎臓異種移植後の免疫反応/Lancet

 ブタからヒトへの腎臓異種移植は、短期アウトカムは良好で超急性拒絶反応はみられなかったが、再灌流から54時間後の腎臓異種移植片では主に糸球体に抗体関連型拒絶反応が生じていることを、フランス・パリ・シテ大学のAlexandre Loupy氏らがマルチモーダルフェノタイプ解析の結果で明らかにした。異種間の免疫学的不適合がブタ-ヒト間の異種移植の妨げとなっていたが、ブタのゲノム工学によって、最近、初のブタ-ヒト間の腎臓異種移植が成功した。しかし、ブタの腎臓をヒトレシピエントに移植した後の免疫反応についてはほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、次世代のブタ遺伝子編集を改良し、異種移植臨床試験における拒絶反応の液性機序を最適に制御するための研究の道筋や方向性を開くものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月17日号掲載の報告。

骨盤臓器脱、マンチェスター手術vs.仙棘靭帯固定術/JAMA

 骨盤臓器脱に対する初回手術において、仙棘靭帯固定術はマンチェスター手術に比べ、術後2年間の手術成功の複合アウトカムが劣ることが、オランダ・ラドバウド大学医療センターのRosa A. Enklaar氏らが実施した多施設共同無作為化非劣性試験の結果、報告された。多くの国において、仙棘靭帯固定術は骨盤臓器脱の初回手術で最も一般的に行われる子宮温存術である。しかし、仙棘靭帯固定術と、より古い術式であるマンチェスター手術の結果を直接比較したものはなかった。JAMA誌2023年8月15日号掲載の報告。

RNA干渉が切り開く、画期的な高血圧治療薬―zilebesiranの挑戦―(解説:石上友章氏)

核酸・DNAを鋳型にして、メッセンジャーRNAが転写される。4種類の塩基の組み合わせを暗号にして、20種類のアミノ酸に翻訳されることで、タンパク質の合成が行われる。人体は、さまざまなタンパク質から構成されており、染色体DNAは、人体の設計図である。RNA干渉(RNA interference)とは、2本鎖RNAが、いくつかのタンパク質と複合体を作り、相同な塩基配列を持つメッセンジャーRNAと特異的に対合し、切断することによって、遺伝子の発現を抑制する現象である。RNA干渉は、遺伝子の機能を人為的に抑制することに応用できるので、遺伝子機能解析のツールとして、実験室ではおなじみの技術であった。

ファイザーXBB.1.5対応ワクチン、EMAで生後6ヵ月以上に推奨

 米国・Pfizer社とドイツ・BioNTech社は8月30日付のプレスリリースにて、両社のオミクロン株XBB.1.5対応1価の新型コロナワクチン「COMIRNATY Omicron XBB.1.5」について、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、5歳以上に対して、過去の新型コロナワクチンの接種歴の有無にかかわらず単回投与すること、および生後6ヵ月~4歳の小児に対して、過去の接種回数に応じて投与することを推奨したことを発表した。欧州委員会(EC)は本推奨を検討のうえ、承認について近く最終決定を下す予定。

がん患者の血栓症再発、エドキサバン12ヵ月投与が有効(ONCO DVT)/ESC2023

 京都大学の山下 侑吾氏らは、下腿限局型静脈血栓症(DVT)を有するがん患者に対してエドキサバンによる治療を行った場合、症候性の静脈血栓塞栓症(VTE)の再発またはVTE関連死の複合エンドポイントに関して、12ヵ月投与のほうが3ヵ月投与よりも優れていたことを明らかにした。本結果はオランダ・アムステルダムで8月25~28日に開催されたEuropean Society of Cardiology(ESC、欧州心臓学会)のHot Line Sessionで報告され、Circulation誌オンライン版2023年8月28日号に同時掲載された。

コロナ後遺症、1年後は約半数、急性期から持続は16%/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関する多施設共同研究において、COVID-19に罹患した人の約16%が、感染から12ヵ月後も何らかの症状が持続していると報告した。また、感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人を含めると、感染から12ヵ月時点での有病率は約半数にも上った。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年8月11日号に掲載された。

退院後の統合失調症患者における経口剤と持効性注射剤の治療継続率

 退院後の統合失調症患者におけるその後の治療継続は、患者および医療関係者、医療システムにとって問題である。これまでの報告では、第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)は、経口非定型抗精神病薬(OAA)と比較し、治療アドヒアランスの改善や再入院リスクの軽減に有効である可能性が示唆されている。米国・Janssen Scientific AffairsのCharmi Patel氏らは、米国におけるSGA-LAIとOAAで治療を開始した統合失調症患者における、アドヒアランスと再入院リスクの比較検討を行った。

50歳未満のがん、この10年で急速に増加したがんは?

 1990年代以降、世界の多くの地域において50歳未満で発症する早期発症がんが増加して世界的な問題となっているが、特定のがん種に限定されない早期発症がんの新たなデータは限られている。そこで、シンガポール・シンガポール国立大学のBenjamin Koh氏らによる米国の住民ベースのコホート研究の結果、2010年から2019年にかけて早期発症がんの罹患率は有意に増加し、とくに消化器がんは最も急速に増加していたことが明らかになった。JAMA Oncology誌2023年8月16日号掲載の報告。  研究グループは、米国における早期発症がんの変化を明らかにし、罹患率が急増しているがん種を調査するために住民ベースのコホート研究を行った。解析には、2010年1月1日~2019年12月31日の米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の17レジストリのデータを用い、人口10万人当たりの年齢標準化罹患率を算出した。年齢標準化罹患率の年間変化率(APC)はjoinpoint回帰法を用いて推定した。データ解析は2022年10月16日~2023年5月23日に行われた。

骨盤臓器脱修復術、周術期の膣エストロゲン併用の効果は?/JAMA

 症候性骨盤臓器脱患者において、周術期の腟エストロゲン投与は、自家組織による経腟的修復術後の骨盤臓器脱再発を改善しない。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのDavid D. Rahn氏らが、米国の3施設で実施した無作為化優越性臨床試験の結果を報告した。膣尖部/前壁脱の外科的修復では、一般的に子宮摘出後の膣断端固定として自家組織の骨盤靭帯が用いられる。骨盤臓器脱の再発抑制を目的に臨床医は膣エストロゲンを推奨することがあるが、膣エストロゲンが骨盤臓器脱の外科的管理に及ぼす影響は不明であった。JAMA誌2023年8月15日号掲載の報告。

divarasib、既治療のKRAS G12C変異固形がんに有望/NEJM

 KRAS G12C変異陽性固形がんに対し、divarasibの単剤療法は持続的な臨床効果をもたらし、有害事象はほとんどがGrade2以下であった。カナダ・トロント大学のAdrian Sacher氏らが、12ヵ国35施設で実施された第I相試験「GO42144試験」の結果を報告した。divarasib(GDC-6036)は共有結合型KRAS G12C阻害薬で、in vitroにおいてソトラシブやadagrasibより高い効力と選択性を示すことが報告されていた。NEJM誌2023年8月24日号掲載の報告。

経口セマグルチド(リベルサス)の最大投与量は50mgで決着か?(解説:住谷哲氏)

 現在(2023年8月)、わが国ではGLP-1受容体作動薬の注射製剤の供給に問題が生じており、使いやすい週1回製剤であるトルリシティ、オゼンピック、マンジャロ(厳密にはGIP/GLP-1受容体作動薬)の新規処方はできず、使用できるのは毎日注射製剤のビクトーザ、リキスミアとバイエッタのみとなっている。経口セマグルチドであるリベルサスに関しては処方制限の噂は聞かないので、当面は新規処方に問題は生じないと信じたい。

新型コロナウイルスに伴う肺炎で入院した患者を対象に、標準治療に免疫調整薬を併用した効果(解説:寺田教彦氏)

本研究は、2020年10月から2021年12月までに新型コロナウイルス肺炎で入院した患者に対して、標準治療に加えて、アバタセプト、cenicriviroc、あるいはインフリキシマブを追加した治療群とプラセボ群を比較した試験であり、和文要約は「コロナ肺炎からの回復、アバタセプトやインフリキシマブ追加で短縮せず/JAMA」にまとめられている。本研究は、マスタープロトコルを使用したランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験で、プライマリーエンドポイント(1次アウトカム)は新型コロナウイルス肺炎からの28日目までの回復期間(8段階の順序尺度を使用して評価)と設定されたが、標準治療にアバタセプト、cenicriviroc、あるいはインフリキシマブを追加してもプラセボ群に比較して短縮しなかった。

セファゾリンやダビガトラン、重大な副作用追加などで添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は8月29日、セファゾリンやダビガトランなど6つの医薬品の添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  セファゾリンNa水和物(商品名:セファメジンα筋注用0.25g ほか)とセファゾリンNa(同:セファゾリンNa点滴静注用1gバッグ「オーツカ」 ほか)において、アレルギー反応に伴う急性冠症候群の国内症例(7例[死亡0例])を評価した結果、本剤とアレルギー反応に伴う急性冠症候群との因果関係の否定できない国内症例が集積したことから、副作用の項に『重大な副作用』を新設した。

高齢がん患者、米国における診療の工夫

 マサチューセッツ総合病院緩和老年医療科の樋口 雅也氏がナビゲーターとなり、医師、薬剤師、看護師などさまざまな職種と意見交換をしながら臨床に直結する高齢者診療の知識を学べる「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」。がんと老年医学をテーマにした回では、ゲストとしてダートマス大学腫瘍内科の白井 敬祐氏が参加し、米国における高齢者のがん診療の実際について紹介した。

統合失調症患者の認知機能を含む症状に対するメトホルミンの影響~メタ解析

 統合失調症または統合失調感情障害患者の抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム(MetS)のマネジメントに対し、メトホルミンは優れた有効性を示す薬剤である。メトホルミンによる抗うつ効果や認知機能改善への影響も検討されているものの、これらの情報はシステマティックに評価されていなかった。イタリア・ミラノ大学のVera Battini氏らは、抗精神病薬治療中の統合失調症患者における認知機能およびその他の症状に対するメトホルミンの影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症の認知機能やその他の症状に対し、メトホルミンのある程度の効果が確認された。メトホルミンの潜在的な薬理学的効果を明らかにするためには、適切な尺度を用いた長期にわたる研究が必要であるとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年7月12日号の報告。

妊娠30~34週の硫酸Mg、児の死亡・脳性麻痺を抑制するか/JAMA

 妊娠30週未満の出産前の妊婦に、硫酸マグネシウムを静脈内投与すると、児の死亡と脳性麻痺のリスクが低下することが知られているが、30週以降の効果は不明とされていた。ニュージーランド・オークランド大学のCaroline A. Crowther氏らは、「MAGENTA試験」において、妊娠30~34週に硫酸マグネシウムを投与しても、プラセボと比較して、2年後における児の脳性麻痺のない生存の割合は改善しないことを示した。研究の詳細は、JAMA誌2023年8月15日号に掲載された。