日本語でわかる最新の海外医学論文|page:201

バルーン拡張型弁によるTAVR再施行は有効か/Lancet

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)が不成功に終わった患者に対するバルーン拡張型弁を用いたTAVRの再施行は、初回TAVRにおける機能不全の治療に有効で、手技に伴う合併症が少なく、死亡や脳卒中の割合は、臨床プロファイルと予測リスクが類似し、nativeな大動脈弁狭窄に対してTAVRを施行した場合と同程度であることが、米国・シーダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年8月31日号で報告された。

非心房細動での心房高頻度エピソード、抗凝固薬は勧められず/NEJM

 植込み型心臓デバイスによって検出された心房高頻度エピソード(atrial high-rate episodes:AHRE)は心房性不整脈を示唆しており、心房細動と類似の病態だが、発現はまれで持続時間が短い。ドイツ・Atrial Fibrillation Network(AFNET)のPaulus Kirchhof氏らは「NOAH-AFNET 6試験」において、心房細動(通常の心電図検査で検出されるもの)のない患者におけるAHREの発現が、抗凝固薬の投与開始を正当化するかを検討した。その結果、直接経口抗凝固薬エドキサバンによる抗凝固療法はプラセボと比較して、心血管死、脳卒中、全身性塞栓症の複合の発生率を減少させず、全死因死亡または大出血の複合の発生率が有意に高いことを明らかにした。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2023年8月25日号に掲載された。

高齢者の多枝冠動脈疾患を伴う急性心筋梗塞の冠動脈完全血行再建の有用性は?(解説:青木二郎氏)

多枝冠動脈疾患を伴う急性心筋梗塞の冠動脈血行再建の責任病変以外の病変に対して、血行再建を行い、完全血行再建を目指すかについては、多くの無作為化比較試験が以前より行われてきた。PRAMI、DANAMI-3-PRIMULTI、COMPARE-ACUTE、COMPLETEといった試験では、非責任病変の有意狭窄病変にも血行再建を行うことにより、完全血行再建を行うほうが責任病変のみを治療するよりも、臨床イベントの発生が少なく望ましいと報告されてきた。しかし、今までの臨床試験では4,041例を登録したCOMPLETE試験でも平均年齢は62歳であり、高齢者でも同様の結果が得られるのかに重きを置いた臨床研究はなかった。今回のFIRE試験では、75歳以上の高齢者でも同様に完全血行再建を行うほうが、予後がいいことが初めて報告された。  FIRE試験では注目すべき点が他にもある。まず初めに、今までの臨床試験はSTEMIを主に対象としておりNSTEMIのエビデンスは乏しかったが、FIRE試験ではNSTEMI患者が約65%と半分以上登録された。サブ解析ではNSTEMI群のほうがSTEMI群より、完全血行再建を行ったほうがより臨床結果が良く、NSTEMI・STEMIに関係なく完全血行再建が望ましいと考えられる。  次に、非責任病変の評価法についても今までいろいろな議論がなされてきた。FLOWER-MI試験では、非責任病変の血管造影の狭窄度の評価(50%以上)と冠血流予備量比(FFR)0.8以下とで比較したが、臨床的な有意差が出なかった。FIRE試験は、非責任病変の評価に血管造影だけではなく、FFRに加えて安時指標(resting index)や血管造影結果から血流予備能を計測するQFRも用いられた初めての無作為化試験であることも注目される。急性期のFFRやresting indexは慢性期と異なるという報告も散見される。今後、非責任病変の評価に何が最適なのかを評価するために、5,100例を登録目標とした大規模無作為化試験であるCOMPLETE-2試験の登録が行われており、結果が待たれている。  最後に、完全血行再建をするほうが望ましいが、いつ非責任病変の血行再建を行ったらいいか、という問題もいまだ解決されていない。同時に治療したほうがいいのか、退院前なのか、退院後なのか? FIRE試験では同時治療が約60%であった。BIOVASC試験では同時が望ましいという結果であったが、今後のさらなる臨床試験の解析が待たれている。

オンコタイプDXの結果を乳がん治療でどう活用するか

 「オンコタイプDX 乳がん再発スコアプログラム」が、9月1日付で保険収載された。これを受けて9月6日、エグザクトサイエンスは「患者さん一人ひとりが納得のいく治療法を~シェアードディシジョンメイキングの時代へ~」と題したプレスセミナーを開催。坂東 裕子氏(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科)らが登壇し、乳がん治療におけるオンコタイプDXの位置付けやシェアードディシジョンメイキングの重要性について解説・議論が行われた。

うつ病や不安症における人生の目的が果たす役割

 人生の目的は、自身の活動に関しての意味と目的の感覚、そして人生には意味があるという全体的な感覚により構成されている。オーストラリア・ニューイングランド大学のIan D. Boreham氏らは、人生の目的とうつ病や不安症との関連を、包括的に評価した。その結果、人生の目的レベルが高いほど、うつ病や不安症レベルが低いことが報告された。Journal of Clinical Psychology誌オンライン版2023年8月12日号の報告。  人生の目的とうつ病や不安症との関連を調査するため、メタ解析を実施した。メタ解析には、99の研究、6万6,468例を含めた。

HER2変異NSCLC承認のT-DXd、第II相試験結果(DESTINY-Lung02)/WCLC2023

 第一三共は2023年8月23日、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が、本邦において「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表している。本承認は国際共同第II相臨床試験(DESTINY-Lung02)の結果に基づくものであるが、その詳細が世界肺癌学会(WCLC2023)において、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らにより発表された。なお、本発表の結果は、2023年9月11日にJournal of Clinical Oncology誌オンライン版へ同時掲載された。

SGLT2阻害薬の使用が痛風リスク低下と関連

 SGLT2阻害薬(SGLT2i)の使用が痛風リスクの低下と関連していることを示すデータが報告された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)のNatalie McCormick氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月25日掲載された。DPP-4阻害薬(DPP-4i)を使用した場合と比較した結果であり、痛風以外に心筋梗塞についてもリスクに有意差が見られたという。  SGLT2iは血糖低下作用とともに尿酸値を低下させる作用のあることが知られている。この作用が痛風患者の発作リスク抑制につながる可能性があるが、そのような視点での研究はまだ十分でない。McCormick氏らはこの点について、2014年1月~2022年6月の医療データを用いて検討した。

脳梗塞の疾病負荷は今後も増大するとの予測

 脳梗塞の疾病負荷は1990~2019年にかけて増加しており、今後も増加が続くと予測されるとの研究結果が、「Neurology」に5月17日掲載された。  上海第四人民医院(中国)のJiahui Fan氏らは、GBD2019データベースに基づく年齢調整死亡率(ASMR)および障害調整生存年(ASDR)を用いて、1990~2019年における脳梗塞の世界的疾病負荷の地理的分布と傾向を示した。また、7つの主要リスク因子で説明可能な脳梗塞の死亡数を解析し、2020~2030年の死亡数を予測した。

ワクチン2回以下、発熱・倦怠感が現れやすい―札幌市での調査

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種回数が多いほど感染時に全身症状が現れにくい一方で、咽頭痛や鼻汁などの上気道症状が現れやすいことなどが明らかになった。北海道大学医学研究院呼吸器内科の中久保祥氏らが、札幌市のCOVID-19療養判定システムなどのデータを解析した結果であり、詳細は「The Lancet Infectious Diseases」に6月30日掲載された。オミクロン株BA.2とBA.5の症状の特徴や、高齢者と非高齢者の違いも示されている。  この研究に用いられた札幌市のCOVID-19療養判定システムは2022年4月にスタートし、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性判定を受けた同市市民が登録して症状などを記録している。記録されている情報は、発症日、食事摂取状況、12種類(発熱、咳、咽頭痛、呼吸困難、鼻汁、頭痛、倦怠感、関節や筋肉の痛み、下痢、味覚・嗅覚異常など)の症状、年齢、性別、基礎疾患など。これらの情報と、感染者等情報把握・管理支援システム、ワクチン接種記録システムのデータを統合して解析が行われた。

脳梗塞、血管内治療可能な施設で血栓溶解療法は必要か/Lancet

 大血管前方循環脳卒中に対する血管内治療での静脈内血栓溶解療法の意義を検討したオランダ・アムステルダム大学のCharles B. Majoie氏らは、血管内治療センターに直接入院した患者において、血管内治療単独が血管内治療+静脈内血栓溶解療法に対し非劣性であることを立証できなかったと報告した。血管内治療前の静脈内血栓溶解療法が推奨されているが、その意義は血管内治療が可能な施設に直接入院した患者では疑問視されていた。既存の6つの無作為化試験では、2試験で血管内治療単独の非劣性が示されているが、4試験では統計学的確証は得られておらず、研究グループは今回、この6試験の参加者データを用いてメタ解析を行った。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。

コルヒチン、心臓以外の胸部手術で心房細動を予防せず/Lancet

 主要な非心臓胸部手術を受けた患者において、コルヒチンは臨床的に重大な周術期心房細動(AF)および非心臓術後の心筋障害(MINS)の発生を有意に低下しないばかりか、ほとんどは良性だが非感染症性下痢のリスクを増大することが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのDavid Conen氏らが、コルヒチンの周術期AF予防について検証した国際無作為化試験「COP-AF試験」の結果を報告した。炎症性バイオマーカー高値は、周術期AFおよびMINSリスク増大と関連することが知られている。これらの合併症の発生を抗炎症薬のコルヒチンが抑制する可能性が示唆されていた。Lancet誌オンライン版2023年8月25日号掲載の報告。

ブレクスピプラゾール治療、統合失調症患者からどう評価されているか

 藤田医科大学の横井 里奈氏らは、ブレクスピプラゾールによる抗精神病薬治療に対する統合失調症患者の主観的評価を調査した。Fujita Medical Journal誌2023年8月号の報告。  本研究は、14週間のプロスペクティブ観察研究として実施した。対象は、2019年2月~2020年1月に本研究に参加した統合失調症患者19例。  主な結果は以下のとおり。 ・ブレクスピプラゾール治療開始時の患者の平均年齢は40.6±14.2歳、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの平均値は4.6±1.2であった。

オンコマイン Dx、非小細胞肺がんHER2遺伝子変異に対するコンパニオン診断として保険適用/サーモフィッシャー

 サーモフィッシャーは2023年8月29日、次世代シーケンシング(NGS)技術を用いたコンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test マルチ CDxシステム」に関し、非小細胞肺がんを対象としたHER2遺伝子変異に対するトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)の治療適応判定の補助に対して、保険適用されたことを発表した。

血尿診断で内科医も知っておきたい4つのこと―血尿診断ガイドライン改訂

 『血尿診断ガイドライン』が10年ぶりに改訂された。改訂第3版となる本ガイドラインは、各専門医はもちろんのこと、一般内科医や研修医にもわかりやすいように原因疾患診断のための手順を詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示した。また、コロナ禍での作成ということもあり、最終章では「新型コロナワクチンと血尿」について触れている。今回、本ガイドライン改訂委員会の事務局を務めた小路 直氏(東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学)に、内科医が血尿時の問診や専門医への紹介を行ううえで注意すべきポイントなどを聞いた。

女性での長寿の鍵は60歳以降の体重の維持?

 女性では、60歳以降に体重を一定に保つことで、90歳、95歳、あるいは100歳という長寿を望める可能性の高まることが、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)Herbert Wertheim School of Public Health and Human Longevity ScienceのAladdin Shadyab氏らによる研究で明らかにされた。体重が安定している年配女性は、体重が5%以上減少した女性よりも1.2倍から2倍の確率で90〜100歳という長寿を得ていることが示されたという。この研究の詳細は、「Journals of Gerontology Series A: Biological Sciences and Medical Sciences」に8月29日掲載された。  この研究では、Women’s Health Initiativeのデータを用いて、女性での60歳以降の体重変動と、90・95・100歳までの生存との関連が検討された。対象者は、1932年2月19日以前に生まれ、試験登録時(ベースライン)とその3年後、および10年後に測定した体重データがそろう61〜81歳の5万4,783人で、2022年2月19日まで追跡された。対象者は体重の増減に基づき、体重減少群(ベースラインから5%以上の減少)、体重増加群(ベースラインから5%以上の増加)、体重維持群(ベースラインからの体重の増減が5%未満)の3群に分類された。体重減少については、それが意図的なものであるかどうかが、ベースラインから3年後の調査時に確認されていた。この3年後の調査から1年以内に死亡した346人を除外した5万4,437人が最終的な解析対象とされた。

椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛にはパルス高周波とステロイド注射の併用が有効

 腰椎椎間板ヘルニアにより坐骨神経痛を来した患者の疼痛緩和と障害改善において、パルス高周波(PRF)と経椎間孔ステロイド注射(TFESI)の併用療法は、TFESI単独よりも優れていることが、「Radiology」に3月28日報告された。  ローマ・ラ・サピエンツァ大学付属ポリクリニコ・ウンベルト・プリモ病院(イタリア)のAlessandro Napoli氏らは、12週間以上続く腰椎椎間板ヘルニアにより坐骨神経痛を来し、保存治療に反応しない患者を、CTガイド下でのPRFとTFESIの併用療法1回を受ける群(174人)と、TFESI単独療法1回を受ける群(177人)にランダムに割り付けた。治療後1週目と52週目に、下肢痛の重症度を数値評価スケール(NRS)で測定した。

日本人NAFLD患者のCVDリスクはBMI23未満/以上で有意差なし

 痩せている非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の心血管疾患(CVD)リスクは、痩せていないNAFLD患者と同程度に高いことが明らかになった。武蔵野赤十字病院の玉城信治氏、黒崎雅之氏、泉並木氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に6月17日掲載された。  NAFLDはメタボリックシンドローム(MetS)の肝臓における表現型と位置付けられており、世界人口の25%が該当するとされる主要な健康問題の一つ。NAFLD患者の多くは肥満だが、一部の患者は痩せているにもかかわらずNAFLDを発症する。欧米ではBMI25未満、アジアでは23未満のNAFLDが「痩せ型NAFLD」と定義されている。肥満併発NAFLDはCVDリスクが高いことは知られているが、痩せ型NAFLDもCVDハイリスクなのか否かは、これまでのところ十分明らかになっていない。黒崎氏らは同院の健診データを用いて、この点に関する後方視的研究を行った。

新型コロナEG.5.1、伝播力と免疫回避能が増強/東大医科研

 現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株は、アジアや欧州、北米を中心に、オミクロン株EG.5系統(エリス)の感染が急増し、主流となっている。XBB系統(XBB.1.9.2)の子孫株であるEG.5系統は、世界保健機関(WHO)により、XBB.1.5、XBB.1.16と共に注目すべき変異株(VOI)に分類されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、EG.5系統のEG.5.1のウイルス学的特徴を解析したところ、XBB.1.5に比べて1.2倍高い伝播力を示し、BBの中和抗体に対して1.4倍高い抵抗性を示したことを、調査により明らかにした。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。

食事の質は片頭痛にも影響

 イラン・Isfahan University of Medical SciencesのArghavan Balali氏らは、食事の質と片頭痛との関連性について、評価を行った。その結果、食事の質の改善は、片頭痛の頻度、重症度、関連する問題などの片頭痛アウトカムの改善と関連している可能性が示唆された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2023年8月5日号の報告。  20~50歳の片頭痛患者262例を対象に、横断的研究を実施した。食事の質の評価には、Healthy Eating Index 2015(HEI-2015)およびAlternative Healthy Eating Index 2010(AHEI-2010)を用いた。食事の摂取量の評価には、168項目の食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いた。

糖分を多く含む食品は腎臓結石をできやすくする可能性

 糖分の多い食品を避けるべき理由は多々あるが、腎臓結石のリスクを避けることも、そうすべき理由の一つかもしれない。3万人近い米国成人を対象とした研究から、添加糖の摂取量の多寡で腎臓結石のリスクに39%の差が生じる可能性が明らかになった。川北医学院付属病院(中国)のShan Yin氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Nutrition」に8月4日掲載された。  食品への砂糖の添加はさまざまな健康リスクと関連しているが、腎臓結石との関連はこれまでのところ明らかにされていない。Yin氏らは、2007~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析してこの点を検討した。