日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1147

HIV-1の母乳感染減少に抗レトロウイルス薬の長期予防的投与が効果的

授乳によるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の母子感染を減らす効果的な対策が、貧困国で緊急に求められている。米国・ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のNewton I. Kumwenda氏らは、乳児に対する抗レトロウイルス薬の予防的投与の効果を検証した結果、ネビラピン(商品名:ビラミューン)またはネビラピン+ジドブジン(商品名:コンビビル、レトロビルカプセル)の長期投与によって、乳児のHIV-1感染症を有意に減らすことができると報告した。NEJM誌2008年7月10日号(オンライン版2008年6月4日号)より。

ABIは心血管イベントリスク予測にFraminghamリスクスコアより有効

健常者の心血管疾患のハイリスクを識別する予測モデルの精度は限られている。英国のABI共同研究チーム(Ankle Brachial Index Collaboration)は、アテローム性動脈硬化症の指標とされる足関節上腕血圧比(ABI)をFraminghamリスクスコア(FRS)と組み合わせることで、心血管疾患のリスク予測を改善できる可能性があると報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。

アンドロゲン枯渇療法は局所前立腺癌の生存率を改善しない

データが不十分にもかかわらず、手術や放射線、従来治療に替わる局所前立腺癌の治療として、一次的アンドロゲン枯渇療法(PADT)を受ける患者が増えている。ロバート・ウッド・ジョンソン医科大学(米国ニュージャージー州)のGrace L. Lu-Yao氏らには、局所前立腺癌の高齢男性におけるPADTと生存率との関連を評価。「従来治療と比べ生存率を改善しない」と報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。

抗悪性腫瘍剤「アービタックス」、製造販売を承認

ブリストル・マイヤーズ株式会社は、メルクセローノ株式会社およびイムクロン社(NASDAQ:IMCL)と共同開発を行ってきたアービタックス注射液100mg(セツキシマブ製剤)が、7月16日(水)、厚生労働省より「EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の治療薬として、製造販売承認されたと発表した。

「子どもとママの紫外線対策」意識調査-「日焼け止め」は8割の子どもが使用、でも塗る基準は日ざしの強弱?

ロート製薬株式会社が関東圏、関西圏の1歳~9歳の子どもを持つママ300人に対して行った調査によると、9割以上のママが子どもに紫外線対策を行い、内容としては「帽子をかぶる」(約9割)と同じように「日焼け止めを塗る」が8割となり、紫外線対策のスタンダードになっていることが明らかになった。

複数ワクチン接種と健康不良は無関係

1991年の湾岸戦争時も話題になった、複数ワクチン接種と健康不良との関連。本報告は、2003年以降イラク戦争に従軍したイギリス軍兵士を対象にしたもので、ロンドン大学Dominic Murphy氏らによるもの。複数のワクチン接種と健康不良との関係を、ワクチン接種の事実に関する自己申告群と、診療録で確認できた群とで、それぞれ検証した。結果、複数ワクチン接種は健康不良とは無関係と報告している。BMJ誌2008年6月30日号掲載より。

ネガティブ感情は心疾患イベントに関連:Whitehall IIスタディ

心疾患イベントのリスク増加に心理的因子(不安、敵意/怒り、うつ)が関わっていることを示す研究がいくつかあるが、ポジティブな感情、ネガティブな感情それぞれを独立因子とし、二次的な冠動脈性心疾患イベントとの関連(影響およびリスク)を検討する研究が報告された。イギリスでのWhitehall IIスタディからの報告。同スタディは1985年にセットされ追跡調査されている、健康と疾患の社会経済的傾向を探るための経時的研究である。BMJ誌2008年6月30日号掲載より。

癌患者の大うつ病管理に有効な介入法が開発された

“Depression Care for People with Cancer”と呼ばれる複合的な介入法は、専門的な医療サービスを受けている癌患者における大うつ病管理のモデルとなることが、スコットランドで実施された無作為化試験(SMaRT oncology 1)で示された。大うつ病は癌などの疾患に罹患した患者のQOLを著しく損なうが、その管理の指針となるエビデンスは少ないという。イギリスEdinburgh大学癌研究センターのVanessa Strong氏がLancet誌2008年7月5日号で報告した。

rivaroxaban長期投与が有効、人工股関節全置換術後の静脈血栓塞栓症予防

新たな経口第Xa因子阻害薬rivaroxabanの長期投与は、人工股関節全置換術(THA)を施行後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防において低分子ヘパリンであるエノキサパリン(商品名:クレキサン)の短期投与よりも有効なことが、21ヵ国が参加した大規模臨床試験(RECORD 2)で確認された。周術期のヘパリンベースの血栓予防療法は致死的肺塞栓症を減少させるが、THA後のVTEのリスクは退院後も持続するため、簡便な長期的抗血栓療法の探索が進められてきた。イギリスBarts and the London医科歯科大学のAjay K Kakkar氏が、Lancet誌2008年7月5日号(オンライン版2008年6月24日号)で報告した。

心停止時のアドレナリン+vasopressin併用の効果は認められず

心停止への二次心肺蘇生(ACLS)で近年、アドレナリン(エピネフリン)とvasopressinの併用投与が行われている。それぞれを単独投与するより効果的だとされているからだが、臨床推奨にはエビデンスが乏しい。日本の119番に相当する、フランスの救急医療システムSAMUが多施設共同研究を行った結果は、「併用投与の転帰とアドレナリン単独投与の転帰とに差はない」と報告された。NEJM誌2008年7月3日号より。

急性腎障害に対して治療集中度では効果に差はない

重症の急性腎障害に対して、腎代替療法をどの程度行うべきかについては論議が続いている。米国退役軍人ヘルスケアシステムと国立衛生研究所(VA/NIH)の急性腎不全調査チームは比較検討を行い、「集中的な腎機能補助療法を行っても、効果に有意差は見られない」と報告した。NEJM誌2008年7月3日号(オンライン版2008年5月20日号)より。

HIV抗体陽転から5年間の死亡リスクは一般と同等

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の死亡率は、良好な治療を受ける機会に恵まれた先進国では劇的に減少し、現在では非感染者集団の死亡率に近づいている可能性がある。HIVに関するEUの大規模国際共同研究(CASCADE)グループは、HIV抗体陽転後の感染者と非感染者(一般)の死亡率の比較について、多剤併用抗レトロウイルス療法(HAART)導入前後の変化を評価。HAART導入後は5年死亡率が一般死亡率とほぼ変わらないほど改善されていると報告した。JAMA誌2008年7月2日号より。

DNAメチル化は年齢とともに変化し家系的に類似

DNA配列がメチル化など非遺伝的要因で修飾されたことを記す、いわゆる「エピジェネティック・マーク」は、がんなどの後発性疾患を説明できるのではないかと注目されている。米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部のHans T. Bjornsson氏らは、個々人のDNAメチル化の経時変化について調べた。JAMA誌2008年6月25日号より。

過去50年間の戦死者数は公表データの3倍以上?

戦争による死者数は、公式に発表されている数よりも実際にははるかに多いといわれている。ワシントン大学のZiad Obermeyer氏らの研究グループは、公衆衛生の統計手法を用いて、1960年代のベトナム戦争から2000年代のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に至る、過去50年間の戦死者の正確な推計値を導き出した。BMJ誌2008年6月28日号(オンライン版2008年6月19日号)掲載より。

QRISK2は心血管系イベントのハイリスクの予測に優れている

心血管系イベントの予測ツールとして、英国人データを基に開発されたQRISK(10年間心血管系イベント率予測スコア)(2007年8月10日配信号参照)。その進化バージョンQRISK2(心血管疾患リスクアルゴリズム)の開発・検証報告が、英国ノッチンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らにより発表された。QRISK2は、英国立医療技術評価機構(NICE)が推奨するFraminghamスコア補正バージョンよりもパフォーマンスが優れたもの、イングランドとウェールズ特異の人種コホートを鑑み心血管リスクの正確な推定値を提供できることを目的とし開発された。BMJ誌2008年6月28日号(オンライン版2008年6月23日号)掲載より。

ヘロイン依存症の治療にブプレノルフィン維持療法が有効

 ヘロイン依存症の治療では、ナルトレキソンよりもブプレノルフィン(商品名:レペタン)の維持療法が有効なことが、イエール大学医学部精神科のRichard S Schottenfeld氏らがマレーシアで行った無作為化試験によって明らかとなった。ヘロイン依存症の効果的な治療法へのアクセス拡大は、HIV感染の低減の面からも医療上の世界的な優先課題とされる。Lancet誌2008年6月28日号掲載の報告。