日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1130

膝半月板損傷は一般的な加齢変化で膝症状とは関連しない

膝のMRI画像診断は、原因不明の膝症状がある患者にしばしば行われる。そして半月板損傷が見つかると普通、症状はそれらに起因するものとされるが、半月板損傷の有病率と、膝症状やX線撮影の所見に基づく変形性膝関節症を伴う半月板断裂との関連については十分なデータが示されていない。米国・ボストン医科大学のMartin Englund氏らは、マサチューセッツ州住民を対象にその関連について調査を行った。NEJM誌2008年9月11日号より。

変形性膝関節症の治療に関節鏡視下手術を併用しても利益なし

変形性膝関節症の治療に関節鏡視下手術を併用することは広く行われているが、その有効性を支持するエビデンスは乏しい。カナダ・西オンタリオ大学のAlexandra Kirkley氏らは、中等度から重度の変形性膝関節症患者を対象に、関節鏡視下手術の単一施設無作為化比較試験を行った結果、「理学療法と薬物療法に関節鏡下手術を加えても、それによる利益は生じない」と報告した。JAMA誌2008年9月11日号より。

最近のMD/PhD選択者の特性と職業意識

MD/PhDプログラムの選択者は米国医学生全体からみればごく一部に過ぎないが、彼らは将来、医師の間で主要な役割を演じることが期待されている。米国・ワシントン大学医学部のDorothy A. Andriole氏らは、このMD/PhDプログラム選択者の特性と職業意識について、MDプログラム卒業生との比較調査を行った。JAMA誌2008年9月10日号より。

オンコール時のインターンは29.9時間勤務、睡眠2.8時間

臨床研修中のレジデントの長時間勤務が、患者への有害なミスにつながるとの指摘を受けて、レジデントの勤務時間をさらに規制することが検討されているが、米国・シカゴ大学医学部のVineet M. Arora氏らは、研修初年度のインターンについても「インターンのオンコール(待機当番)勤務は、睡眠不足と長時間勤務および教育活動への不参加に関連する」と警鐘を鳴らしている。JAMA誌2008年9月10日号より。

低用量アスピリンは、認知機能に影響を及ぼさない

中高年の認知機能低下には多発梗塞性など心血管疾患が関与しているが、ならば抗血栓作用のあるアスピリンを投与することで認知機能低下を食い止められるのではないか。もしくはアスピリン投与が脳出血を促し悪化させる作用があるかもしれない。適度に心血管リスクが増した無症候性アテローム性動脈硬化症患者に対するアスピリン投与の効果を評価する試験(AAA試験:aspirin for asymptomatic atherosclerosis trial)研究グループによる無作為化試験の結果が、BMJ誌2008年9月1日号で報告された。

併用HRTは、閉経後女性の健康QOLを改善する:WISDOM

エストロゲンとプロゲストゲンの併用ホルモン補充療法(併用HRT)は、「血管運動症状(ほてり)や性機能、睡眠障害を改善する効果がある」とのWISDOM研究グループによる報告が、BMJ誌2008年8月21日号に掲載された。WISDOM(women’s international study of long duration oestrogen after the menopause)は、HRT療法の長期にわたる効果とリスクを評価する無作為化試験で、心血管疾患、骨折、乳癌を主要臨床転帰とし健康QOLについても評価が行われた研究。1999年に始まったが2002年に、当時発表された「women’s health initiative trial in 2002」の結果(心血管疾患への長期的効果はない)の影響もあり試験は中断され、健康QOLについても疑問符がつけられていた。

GALIANT試験でビルダグリプチンがチアゾリジン誘導体(TZD)と同等の有効性を証明

 ノバルティス ファーマ株式会社は、9月17日、2型糖尿病治療薬 ビルダグリプチンが、体重増加を引き起こさず、心血管系への安全性において良好な成績を示し、広く使用されているチアゾリジン誘導体と比較して優れた忍容性と同等の有効性を確認したと発表した。

イレッサ 進行非小細胞肺がん患者を対象とした大規模臨床試験(IPASS)結果が発表される ―欧州臨床腫瘍学会にて―

英国アストラゼネカ社の9月15日の発表によると、ストックホルムで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で、臨床背景因子により選択されたアジアの進行非小細胞肺がん患者を対象とした臨床試験IPASS(IRESSA Pan-ASia Study)において、イレッサがカルボプラチン/パクリタキセル併用化学療法に対して無増悪生存期間の非劣性を証明するという主要目的を上回り、優越性を証明したことが報告された。

重症肺炎患児は1次医療施設で管理可能か:修正IMCIガイドライン

総合的小児疾患管理(integrated management of childhood illness; IMCI)のガイドラインを適切なトレーニングや監督の下に地域の実情に合わせて適応すれば、1次医療施設で重症肺炎患児の安全で効果的な管理が可能になることが、バングラデシュでの調査で明らかとなった。IMCIガイドラインでは重症肺炎患児は高次病院への紹介が推奨されているが、バングラデシュでは多くの高次病院が適切なケアを十分にできる状態にないため紹介された患児のほとんどが実際には治療を受けていないという。下痢性疾患研究国際センターのEnayet K Chowdhury氏が、Lancet誌2008年9月6日号(オンライン版2008年8月18日号)で報告した。

ivabradineによる心拍低下療法の心予後改善は?:BEAUTIFUL試験

 If電流阻害薬ivabradineは、安定型冠動脈疾患および左室収縮機能障害患者の心臓の予後を改善しないが、心拍数が≧70拍/分の患者では冠動脈疾患の発症を低下させることが、大規模な無作為化試験(BEAUTIFUL試験)で明らかとなった。安定型冠動脈疾患、左室収縮機能障害はいずれもイベント発生率が高く、安静時の高心拍数は冠動脈リスク因子に影響を及ぼす可能性がある。ivabradineは洞房結節のIf電流を阻害することで心拍を低下させるが、他の心機能には影響を及ぼさないという。イギリス・王立Brompton病院のKim Fox氏が、Lancet誌2008年9月6日号(オンライン版2008年8月29日号)で報告した。

肝移植のための緊急性の指標に血清ナトリウム濃度も

現行の肝臓移植ガイドラインでは、移植用臓器は死亡リスクが最も高い患者に提供されることになっている。米国では肝移植のための移植片は医学的な緊急性に基づいて配分されるが、その緊急性は2002年からModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアを基に判定されている。MELDスコアは短期間の予後予測に使われるもので、血清ビリルビン濃度、プロトロンビン時間、血清クレアチニン濃度の3つを指標とし、スコア40以上で3ヵ月後の死亡率80%以上と判定するが、さらに最近、肝硬変患者にとって血清ナトリウム濃度が重要な予後因子であることが認められつつあり、MELDスコアとの関係が議論されている。本論は、メイヨー・クリニック医科大学のW. Ray Kim氏らの研究グループによる、血清ナトリウム濃度の指標としての有用性についての報告。NEJM誌2008年9月4日号より。

植込み型除細動器が作動するとその後の死亡リスクが高い

致命的な初回不整脈イベントを防ぐ一次予防を目的として植込み型除細動器(ICD)を装着した心不全患者は、ICDの作動による電気ショックを受ける可能性がある。ICD治療の長期予後に関する研究を行っていたワシントン大学(米国)のJeanne E. Poole氏らは、適切・不適切を問わず電気ショックを受けた患者の死亡リスクは、電気ショックを受けなかった患者より大幅に高くなることを報告している。NEJM誌2008年9月4日号より。

造影剤腎症予防に対する炭酸水素ナトリウムvs塩化ナトリウム

造影剤腎症(CIN)の有望な予防戦略として、炭酸水素ナトリウムの造影前投与による水分補給が示唆されている。CINは一般に長期入院、保険医療費の増加、高い有病率と死亡率の原因となる。コロンビア大学医療センターのSomjot S. Brar氏らの研究グループは、炭酸水素ナトリウムのほうが塩化ナトリウムより、CINを抑える効果が優れているかどうかを判定するため、中等度から重度の慢性腎臓病(CKD)で、冠動脈造影を受ける患者を対象に臨床試験を行った。JAMA誌2008年9月3日号より。

高まる脳卒中リスク、一般市民の2割は肥満傾向、5割は高血圧

社団法人日本脳卒中協会とファイザー株式会社が脳卒中週間(毎年5月25日~31日)に合わせて行った無料検査イベント(2008年5月8日~28日、東京、広島、大阪、仙台、名古屋の5都市で開催し、合計3,173人が来場)の結果、一般市民の2割は肥満傾向、5割は高血圧であることが分かった。

糖尿病網膜症にかかるカンデサルタンの大規模臨床試験DIRECTの結果が発表される

 武田薬品工業株式会社は、第44回欧州糖尿病学会(EASD:European Association for the Study of Diabetes)において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)カンデサルタン(日本製品名:ブロプレス)の糖尿病網膜症に対する発症予防と進展抑制効果を検討した大規模臨床試験DIRECTの結果が報告されたと発表した。

アリスキレン、肥満の高血圧患者において利尿剤よりも有意な降圧効果を示す

ノバルティス ファーマ株式会社は、新しいクラスの直接的レニン阻害剤(Direct Renin Inhibitor:DRI)アリスキレン(製品名:米国ではTekturna、それ以外ではRasilez)が、肥満の高血圧患者において、利尿剤ヒドロクロロチアジド(HCT)単独よりも有意に血圧を低下させることが確認されたと発表した。