日本語でわかる最新の海外医学論文|page:836

非制限的な輸血でも長期死亡を抑制せず/Lancet

 心血管疾患あるいはリスク因子を有する高齢の高リスク群において、非制限的輸血戦略は制限的輸血戦略と比べて死亡率に影響を及ぼさないことが、米国ロバート・ウッド・ジョンソン大学病院のJeffrey L Carson氏らによる無作為化試験FOCUSの3年生存と死因分析の結果、報告された。死因について群間で差はみられず、著者は、「今回の所見は、輸血は長期的な免疫抑制に結び付き、長期的な死亡率に重篤な影響を与えるという仮説を支持しないものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年12月9日号掲載の報告より。

食後血糖の上昇が低い低glycemic index(GI)の代謝指標への影響(解説:吉岡 成人 氏)-297

 EBMならぬ“Advertising based medicine”の領域では、15年ほど前から「糖尿病患者における食後高血糖は虚血性心疾患のリスクファクターである」というキャッチコピーが飛び交い、多くの医療従事者たちに事実とは異なる情報を提供している。確かに、経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を実施した際の2時間値は心血管イベントや死亡のリスクであることが、DECODE(Diabetes Epidemiology; Collaborative analysis of Diagnostic criteria in Europe)study 、舟形町研究など、欧州のみならず日本においても、多くの疫学研究で確認されている。

アジアの勃起障害患者、うつ発症に注意が必要

 うつ病は勃起障害(ED)のリスクを増加させ、一方でEDはうつ病を悪化させる可能性がある。しかし、両疾患の因果関係については議論の余地が残っている。さらに、うつ病とEDの関係について、年齢依存的および時間依存的影響に関するエビデンスは限られていた。台湾・高雄医学大学病院のPing-Song Chou氏らは、EDとうつ病との関連を明らかにするため、国民健康保険調査記録データベースを用いて長期コホート試験を実施した。その結果、ED患者はうつ病の発症リスクが高く、とくに診断後1年以内のリスクは非ED者の約3倍高いことを報告した。Journal of Sexual Medicine誌オンライン版2014年12月5日号の掲載報告。

低GI食、インスリン感受性や収縮期血圧を改善せず/JAMA

 同量の炭水化物を含む食品でも血糖値の上昇度は異なり、この特性に基づく指標をグリセミック指数(GI)という。この特性を活かし食後血糖値の上昇が低い食品を選択した低GI食による介入を、心血管疾患や糖尿病のリスクが高い人に行ったが、高GI食と比べて、インスリン感受性、脂質値あるいは収縮期血圧値の改善には結び付かなかったことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のFrank M. Sacks氏らが行った無作為化試験の結果、報告された。JAMA誌2014年12月17日号掲載の報告より。

シチシンの禁煙効果、ニコチン代替より良好/NEJM

 シチシン投与に簡便な行動支援を併用すると、ニコチン代替療法(NRT)に比べ禁煙効果が改善することが、ニュージーランド・オークランド大学のNatalie Walker氏らの検討で示された。シチシンは、マメ科植物由来のアルカロイドで、ニコチン性アセチルコリン受容体の部分作動薬であり、東欧では1960年代から広く禁煙対策に使用されている。4つの系統的レビューでは、禁煙効果がプラセボに比べ短期的および長期的に優れ、有害事象の頻度も同等で、主に消化器症状がみられることが報告されている。NEJM誌2014年12月18日号掲載の報告。

統合失調症患者の抗コリン薬中止、錐体外路症状への影響は

 抗コリン薬は、抗精神病薬により誘発される錐体外路症状(EPS)の治療や予防に対し、何十年も使用されている。しかし、抗コリン薬は、遅発性ジスキネジアの悪化や認知機能障害を含む多くの副作用を引き起こすことが知られている。これまでの研究では、抗精神病薬で治療中の統合失調症患者における抗コリン薬の中止は、EPSの再発率に大幅な影響を及ぼすこと、その一方で、認知機能の改善が認められることが報告されている。カナダ・マギル大学医療センターのJulie Eve Desmarais氏らは、抗コリン薬中止による、運動障害、認知機能、精神症状に対する影響を評価した。Therapeutic advances in psychopharmacology誌2014年12月号の報告。

乳がん術後化学療法後の骨髄新生物リスク

 早期乳がんに対する第1世代の術後補助化学療法による試験では、骨髄異形成症候群または急性骨髄性白血病の8年累積発症率は0.27%であった。しかし、フォローアップが十分になされていなかったため、その後の治療関連骨髄新生物のリスクを過小評価している可能性がある。今回、米国ジョンズ・ホプキンス大学シドニー・キメル総合がんセンターのAntonio C. Wolff氏らが、全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)乳がんデータベースを用いた早期乳がんの大規模コホートで、骨髄新生物の発症頻度を調査した結果をJournal of clinical oncology誌オンライン版2014年12月22日号に報告した。

アルコール依存症治療に期待される抗てんかん薬

 先行研究により、トピラマートはアルコール依存症におけるエチルアルコール摂取を減じるが、認知障害を含むいくつかの有害事象の発現をもたらすことが示唆されている。一方で、ゾニサミドは構造的にアルコール依存症治療薬としての見込みがあり、トピラマートよりも忍容性が大きい可能性があるといわれている。米国・ボストン大学医学部大学院のClifford M. Knapp氏らは、ゾニサミドのアルコール消費への有効性と、アルコール依存症患者における神経毒性作用を調べた。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2014年11月25日号の掲載報告。

外傷性脳損傷後の早期プロゲステロン投与は有用か/NEJM

急性外傷性脳損傷のアウトカム改善に、プロゲステロン投与はプラセボと比較して、ベネフィットが認められないことが示された。米国・エモリー大学のDavid W. Wright氏らが、第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。これまでに、外傷性脳損傷へのプロゲステロン投与については、複数の実験モデル検討や2件の単施設臨床試験で、神経学的アウトカムを改善することが示されていた。本検討では、大規模な多施設での検討により、プロゲステロンの早期投与の有効性を、重度、中等度~重度、中等度の急性外傷性脳損傷について調べることが目的であった。NEJM誌オンライン版2014年12月10日号掲載の報告より。

健康関連ニュース、ミスリードはなぜ起きる?/BMJ

 健康関連ニュースは、健康に関連した行動に大きく影響を与える可能性があり、同時に、しばしば誤ったサイエンスを報じることになる。英国・カーディフ大学のPetroc Sumner氏らは、健康関連ニュースのミスリードをもたらす誇張が、報道機関自体にあるのか、それとも研究発表をした施設のプレスリリース作成に問題があるのかを、後ろ向き観察研究にて調べた。その結果、ニュースの誇張部分は研究施設側のプレスリリースと関連していたことが判明したという。結果を踏まえて著者は、「研究施設がプレスリリースの正確性を改善することが、ミスリードにつながる健康関連ニュースを減らす鍵であり、公衆衛生にベネフィットをもたらすことになる」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年12月12日号掲載の報告より。

適切な認知症薬物療法を行うために

 英国・クィーンズ大学ベルファストのCarole Parsons氏らは、進行した認知症患者に対する適切な薬物治療を行うための薬物カテゴリーを作成すること、また、それらの患者で用いられている薬物を調べるための、長期前向きコホート試験の実現可能性を評価し、開発したカテゴリーを使用することで進行した認知症患者が入所するナーシングホームで処方が適切になるかを確認する検討を行った。これまで同様の評価や検討は行われていなかった。Drugs & Aging誌オンライン版2014年12月6日号の掲載報告。

骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折、PVP術後の疼痛要因は?

 骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折は、経皮的椎体形成術(PVP)により首尾よく治療の成功に至る。しかし患者の中には、術後も背部痛を訴える患者がいる。中国・寧波市第二病院のYan Y氏らは、前向き研究により、こうした残存疼痛が胸腰椎筋膜損傷と関連している可能性があることを明らかにした。

再発・難治性ホジキンリンパ腫に対するニボルマブの効果/NEJM

 再発・難治性ホジキンリンパ腫に対し、ヒト型抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ、本疾患には国内未承認)を投与することで、その87%に客観的奏効が認められたことが報告された。完全奏効は17%だった。米国・メイヨークリニックのStephen M. Ansell氏らが、23例の患者を対象に行った第I相臨床試験の結果、報告した。NEJM誌オンライン版2014年12月6日号掲載の報告より。

重度外傷性脳損傷後のプロゲステロン、第III相では無効/NEJM

 重度外傷性脳損傷後のプロゲステロン投与は、アウトカム改善効果は認められないことが示された。米国・ホフストラ大学医学部のBrett E. Skolnick氏らが、約1,200例の患者について行った無作為化第III相試験の結果、報告した。これまで、外傷性脳損傷に対するプロゲステロン投与については、動物実験や2つの無作為化第II相試験で、一貫した良好な結果が得られていた。NEJM誌オンライン版2014年12月10日号掲載の報告より。

SYNAPSE試験:重症の外傷性脳損傷(TBI)に対してプロゲステロンは無効(解説:中川原 譲二 氏)-296

 プロゲステロンについては、これまでに外傷性脳損傷(Traumatic brain injury: TBI)の動物モデルにおける確かな効果と、2件の第II相無作為化比較試験(SYNAPSE TrialとPROTECT III Trial)における臨床的有効性が見いだされていた。SYNAPSE Trial の研究者たちは、大規模で前向きの第III相無作為化比較試験 を実施し、プロゲステロンの有効性と安全性を検討したが、残念ながらプロゲステロンが無効であったことをNEJM誌の12月10日号に報告した。

統合失調症の心血管リスク、その出現時期は

 統合失調症患者は、心血管疾患の罹患率および死亡率が高いことが確認されている。しかしながら、これまでに、疾患早期におけるリスクの状態やその調整・媒介変数などについては明らかではなかった。米国・ジャッカー・ヒルサイド病院のChristoph U. Correll氏らが、Recovery After an Initial Schizophrenia Episode(RAISE)試験参加者のデータを分析し、初回エピソード統合失調症スペクトラム障害(FES)患者では、心代謝のリスク因子および異常が疾患早期に出現しており、基礎疾患、不健康なライフスタイル、および抗精神病薬治療などが相互に関連していると思われることが明らかにされた。結果を踏まえて著者は、「疾患早期の介入による予防と、低リスクの薬物療法とルーチンの副作用モニタリング、および禁煙指導といった介入が疾患早期から必要である」とまとめている。JAMA Psychiatry誌2014年12月1日号の掲載報告。