日本語でわかる最新の海外医学論文|page:567

経口アリピプラゾール前処置後の統合失調症患者における持効性注射剤の有効性

 実臨床におけるアリピプラゾール月1回投与(アリピプラゾール持効性注射剤:AOM)を使用した統合失調症治療の有効性について、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らが評価を行った。BMC Psychiatry誌2018年11月14日号の報告。  本研究は、多施設プロスペクティブ非介入研究として実施された。対象は、6ヵ月間のAOM治療をモニタリングされた統合失調症患者242例(年齢:43.1±15.1歳、男性の割合:55.0%)。評価項目は、精神病理学的尺度(簡易精神症状評価尺度:BPRS)、疾病重症度尺度(臨床全般印象度-重症度:CGI-S、臨床全般印象度-改善度:CGI-I)とした。また、治療関連有害事象(TRAE)を評価した。

多剤耐性グラム陰性桿菌、ICUでのベストな感染予防は?/JAMA

 多剤耐性グラム陰性桿菌(MDRGNB)感染の発生率が中等度~高度のICUにおいて、人工呼吸器装着患者に対する、クロルヘキシジン(CHX)による口腔洗浄や、選択的中咽頭除菌、選択的消化管除菌の実施は、いずれも標準的ケア(CHXによる毎日の清拭とWHO推奨手指衛生プログラム)と比べて、MDRGNBによるICU血流感染の発生率を低下させないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のBastiaan H. Wittekamp氏らが行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2018年11月27日号で発表した。

無症状成人の頭部・全身MRI、偶発的所見の有病率は?/BMJ

 無症状の成人に対して行った頭部・全身MRI検査で発見される、潜在的に重篤な偶発的所見はどれくらいなのか。英国・エディンバラ大学のLorna M. Gibson氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果、有病率は3.9%であることが明らかにされた。そのうち悪性病変が疑われたのは約半数だが、最終的に重篤と診断される割合は偶発的所見の20.5%と相対的に少ないことが示されたという。ただし分析データが限定的で、それら病変の健康への影響はほとんど不明であった。著者は、「潜在的に重篤な偶発的所見のアウトカムをより理解でき、そうした所見をどうフィードバックするかを考えるうえで、系統的な長期追跡研究が必要だ」と述べている。偶発的所見の有病率の推定値はばらつきが大きく、多くが重篤でない偶発的所見を含んでいると考えられ、偶発的所見検出の臨床的価値は限定的である。BMJ誌2018年11月22日号掲載の報告。

リバースリモデリングした拡張型心筋症の薬物治療は中止できるのか?(解説:絹川弘一郎氏)-969

高血圧の人に薬を出そうとしたら、「先生、一回飲みはじめたら、やめられないんですよね、それなら最初から飲みません」と言われたことがない医者はいないであろう。サプリメントを山盛り飲んでいても医者の処方薬の副作用が怖いとか言って、前記のような態度を取る人が後を絶たない。それくらい、患者の側はなんとか薬をやめようと考えているのかもしれないが、このTRED-HF試験はそんな患者側の意向に沿ったのではないであろうが、DCMでせっかくリバースリモデリングが得られた薬剤を切ってみたらどうなるかという、勇敢なRCTをやってくれた。実際、DCM患者において完全なリバースリモデリングが得られることも珍しくはないし、無症状になってしまう事例はもっとある。その中で勝手に怠薬した後、半年、1年経って心不全症状が悪化して再受診し、「もう二度とこんなことはしないでね」と言って処方を再開し、ある程度心機能がリバースしてホッとする、などという経験はたくさんではないにせよ片手では済まない。ただし、怠薬するようなアドヒアランスに問題のある患者だからこそ、薬剤をやめた後の自己管理がダメで再発するのだという考え方も一応は成り立つ。しかし、われわれ心不全でない人間がどんな毎日を送っているか一度よく考えてみたらどうであろうか。2~3種類の薬を飲んで普通の人と同じ生活ができるなら、めちゃめちゃ自己管理して薬なしで頑張るのはたいていの人は選択しないであろう。

急性期脳梗塞治療で高知県が抜群の成績を上げている理由

 発症4.5時間までのrt-PA投与、主幹動脈閉塞に対する16時間までの血栓回収療法。2017年の脳卒中診療ガイドライン改訂で、6時間以内の血栓回収療法がグレードAの推奨となり、急性期脳梗塞治療の現場は変革を迫られているが、全国各地で診療体制が十分に整っているとはいえないのが現状だ。  そんな中、全国でも際立って多い血栓回収療法治療数を誇る県は四国にある。高知県だ。  日本では2016年の人口 10 万人当たりの血栓回収療法の治療件数は全国平均で6.06件と報告されている。しかし、海外文献では血栓回収療法は20件/10万人/年まで増えるだろう、との試算もあり、確実に治療できる体制を整えることが急務。また、治療件数の地域格差も問題視されている。

新規抗インフルエンザ薬の位置付け

 インフルエンザの流行期に備え、塩野義製薬が「インフルエンザ治療の最前線」と題したメディアセミナーを都内にて開催した。本講演では、廣津 伸夫氏(廣津医院 院長)が、「抗インフルエンザウイルス薬『ゾフルーザ(一般名:バロキサビル)』の臨床経験を通じた知見」について語り、「従来の治療薬と同等の立場で選択されるべき治療薬だ」との見解を示した。  はじめに、最新のインフルエンザ治療に関する自身の研究成果が紹介された。本人・家族における過去のインフルエンザ感染既往は、ワクチン接種後の抗体価上昇に良好に影響し、ウイルスの残存時間を短縮するという。既存の抗インフルエンザウイルス薬であるノイラミニダーゼ(NA)阻害薬は、薬剤によってウイルスの残存時間への影響が異なり、ウイルス残存時間が短いNA阻害薬ほど、家族内感染率を下げたと報告された。

日本の校長と教頭におけるうつ病と職業性ストレス

 教育は、最もストレスの多い職業の1つである。過去10年間で、年間約5,000人の日本人の公立学校教師が、精神疾患を発症している。学校の校長や教頭も職業上のストレスに直面していると考えられるが、これらの職業性ストレスについては、ほとんど検討されていなかった。大阪市立大学の新田 朋子氏らは、日本の校長および教頭における職業性ストレス、役割の問題、抑うつ症状との関係について検討を行った。Occupational Medicine誌オンライン版2018年11月14日号の報告。

リナグリプチン、高リスク2型DMでのCV・腎アウトカムは/JAMA

 心血管および腎リスクが高い2型糖尿病の成人患者では、通常治療と選択的DPP-4阻害薬リナグリプチンの併用療法は、主要な心血管イベントのリスクがプラセボに対し非劣性であることが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行ったCARMELINA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2018年11月9日号に掲載された。2型糖尿病は心血管リスクの増加と関連する。これまでに実施された3つのDPP-4阻害薬の臨床試験では、心血管への安全性が示されているが、これらの試験に含まれる高い心血管リスクおよび慢性腎臓病を有する患者の数は限定的だという。

健常者のアスピリン(解説:後藤信哉氏)-968

日本では薬局で売っている一般薬の価格が著しく高い。米国に旅行するとアスピリン、イブプロフェンなどが著しい安価で購入できる。製薬企業は革新的新薬を開発して短期間に独占的利益を得れば、その後は自社の開発品が価格競争により安価になり市場に普及し、その後さらに安全性が確立されて非処方薬の一般薬になれば著しい社会貢献をしたことになる。日本ではジェネリック、一般薬へのプロセスの壁がまだ高い。本研究では100mgアスピリンとプラセボをバイエルが供給しているほかには企業の関与はないと記載されている。もともと安価な市販薬であっても、「50%の確率で無料で薬をくれる」試験なら私も参加してみたい。服薬遵守率は1年間の錠剤の減りで評価されている。薬が瓶で供給される国ゆえにできる方法である。アスピリンが抗血小板作用を発揮すれば重篤な出血は増える。この事実は心血管病の既往の有無に影響を受けない。アスピリンの心筋梗塞、心血管死亡予防効果は2次予防の症例にて観察され、一部の1次予防の症例でも示唆されている。しかし、本研究のように健常な高齢集団で、必ずしも追跡率が高くはない試験では差異を示すことができなかった。

ダパグリフロジンによる心血管イベントの抑止-RCTとリアルワールド・データとの差異(解説:吉岡成人氏)-967

SGLT2阻害薬の投与によって2型糖尿病における心血管リスクが低下することが、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Programの2つの大規模臨床試験で示されている。それぞれ、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジン、カナグリフロジンが用いられ、心血管イベントの既往者およびハイリスク患者において、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中を総合して「主要心血管イベント」とした際に、SGLT2阻害薬を使用した患者における統計学的に有意なイベント抑制効果が確認された。さらに、副次評価項目として、アルブミン尿の進展やeGFRの低下をも抑制し、腎保護作用を示唆するデータも示された。

症状からの逆引きによるirAEマニュアル/日本肺癌学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、今後肺がん治療の中心になっていくと思われる。それに伴い、ICIによる有害事象(irAE)の対策をさらに整備していく必要がある。滋賀県・市立長浜病院 呼吸器内科 野口 哲男氏は、症状からの逆引きによるirAEマニュアルを作成し、第59回日本肺癌学会学術集会ワークショップ6で紹介した。  とくに夜間・時間外の救急外来では、患者は症状があって受診する。それはirAEにおいても同様である。あらかじめirAEの種類や症状を知っておくことで、早期発見と対処につながる。とはいえ、irAEの症状は多岐にわたり、発現パターンもさまざまである。問診で患者から診断に結びつく症状を申告するとは限らない。さらに、ICIを用いることのない診療科や研修医がirAEの初診を行うことも考えられる。このようなことから、症状から疑わしい病名を想起させ、その後の対応を調べられる、実際に即したirAEマニュアルが必要となる。

PRP療法、顔の若返りに効果なし

 顔の若返りに対する多血小板血漿(PRP)療法の有益性を確認した実験的な証拠はほとんどなく無作為化試験は行われていない。米国・ノースウェスタン大学のMurad Alam氏らは、光によって皮膚障害を受けた顔の皮膚のきめや血色などの外観が、PRP療法によって改善するかどうかを調査した。その結果、盲検下での患者評価ではPRP注入部位は滅菌生理食塩水の注入部位と比較して肌のきめやしわが有意に改善したものの、医師評価によるphotoaging scoresには有意差が認められなかったことが明らかになった。著者は、「参加者も評価者も、PRP療法が優れているというのは名ばかりであることがわかった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年11月7日号掲載の報告。

多剤併用のリスク回避は患者教育が大事

高齢者では6種類以上の薬を常用していることも珍しくなく、近年多剤併用(ポリファーマシー)の問題がクローズアップされている。そんななか、MSD株式会社は、「シニア世代における服薬・不眠症治療に関する実態調査」を行い、今回その結果を公表した。  今回の調査の目的は、多剤併用のリスクにつき、(服薬している)高齢者本人だけではなく、その配偶者も意識しているかどうかのほか、服薬に関する状況やリスク認識、不眠症治療薬に対する意識についても調査した。シニア世代(55歳以上)を配偶者に持つ男女3万20名に調査。

世界で最も高齢化している日本における認知症の推定コスト

 認知症は世界的に重要な問題となっており、そのコストは、2015年で8,180億USドルと推定されている。そして、世界で最も高齢化の進む日本において、この問題は重要である。しかし、日本における認知症の社会的コストは、あまりよくわかっていない。慶應義塾大学の佐渡 充洋氏らは、社会的視点から認知症のコストを算出するため、検討を行った。PLOS ONE誌2018年11月12日号の報告。  有病率に基づくアプローチを用いて社会的視点からコストの推定を行った。コストを推定するためのパラメータの主なデータソースは、全国データベース、医療の利用には全国の代表的な個人レベルのデータベース、介護給付費等実態調査、長期の公的な介護の利用には個人レベルの2次データに基づく全国調査、非公式の介護の費用には同介護時間の調査結果であった。得られたパラメータより認知症コストを推定するために、確率論的モデリングを用いて分析を行った。また、将来のコスト予測も行った。

HPV陽性中咽頭がんへのセツキシマブ、5年生存率と毒性は/Lancet

 HPV陽性中咽頭がんについて、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは放射線療法+シスプラチンに対し、全生存(OS)および無増悪生存(PFS)ともに劣性であることが示された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaura L. Gillison氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験「RTOG 1016試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。放射線療法+高用量(100mg/m2)シスプラチンによるHPV陽性中咽頭がん治療の生存率は高いが(3年生存率はHPV陽性82.4%、HPV陰性57.1%)、若年患者における生存率の高さが、治療関連の後発性毒性への懸念を増している。シスプラチンの代わりにセツキシマブを併用したレジメンが、高い生存率を維持し治療関連の毒性を低下するかは不明であった。

とうとうCONSENSUS試験が古典になる日が来るのか?(解説:絹川弘一郎氏)-966

今年のAHAは豊作であった。Late breakingでDECLARE試験の発表があり、そしてsacubitril/バルサルタン(ARNi:アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)の新たなエビデンスがこのPIONEER-HF試験1)で加わった。2014年にARNiがACE阻害薬とのRCT(PARADIGM-HF試験)2)でHFrEFの予後を改善することが示されたのは衝撃であり、1987年CONSENSUS試験3)以来王座を死守してきたACE阻害薬の牙城が崩れたかに思えた。しかし、FDAの認可基準はあくまでもRAS阻害薬を含むGDMTを4週間以上施行してなお心不全症状の残ったHFrEF患者に対するACE阻害薬またはARBからの切り替え、というものであり、de novoの患者に最初から投与することはできなかった。

双極性障害に併存する不安障害の治療

 不安障害は、双極性障害患者において最もよく認められる併存疾患である。米国・パデュー大学のCarol A. Ott氏は、不安障害の治療に関して、現時点での情報をまとめた。The Mental Health Clinician誌2018年11月1日号の報告。  不安障害の治療に関する主なまとめは以下のとおり。 ・併存する不安障害の診断は、双極性障害の症状重症度に有意な影響を及ぼし、自殺念慮のリスクを上昇させ、心理社会的機能やQOLを低下させる可能性がある。 ・CANMAT(Canadian Network for Mood and Anxiety Treatments)タスクフォースは、2012年に治療法の推奨事項を公表しており、併用治療薬として、特定の抗けいれん気分安定薬と第2世代抗精神病薬を選択肢として挙げている。 ・セロトニン作動性抗うつ薬は、ほとんどの不安障害の治療に対して第1選択薬とされているが、双極性障害患者では問題となることがある。

HPV陽性中咽頭がん、セツキシマブvs.標準レジメン/Lancet

 低リスクHPV陽性中咽頭がんに対して、放射線療法+EGFR阻害薬セツキシマブは、標準レジメンの放射線療法+シスプラチンと比較して毒性低下のベネフィットは示されず、腫瘍コントロールに関しては重大な損失をもたらすことが示された。英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らによる第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「De-ESCALaTE HPV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年11月15日号で発表された。HPV陽性中咽頭がんの発生は急速に増大しており、とくに若年成人を急襲している。セツキシマブは、標準治療のシスプラチンの毒性を低下しde-escalationな放射線併用療法を可能にするものとして提案されたが、この戦略の有効性に関して無作為化試験に基づくエビデンスはなかった。

不健康な生活様式が重なると女性の糖尿病リスク5倍以上に/BMJ

 交替制の夜勤労働と不健康な生活様式はいずれも2型糖尿病のリスクと関連し、これらが併存すると、個々の要因を単独に有する場合に比べリスクが相加的に高くなることが、米国の女性看護師を対象とする調査の解析で示された。中国・華中科技大学のZhilei Shan氏らが、BMJ誌2018年11月21日号で報告した。交替制の夜勤労働者は不健康な生活様式の頻度が高いとする報告は多い。また、交替制夜勤労働と不健康な生活様式は、いずれも2型糖尿病のリスクを増大させることが知られている。

Harmony Outcomes試験はGLP-1受容体作動薬のポジショニングに調和をもたらしたのか?(解説:住谷哲氏)-965

GLP-1受容体作動薬を用いた心血管アウトカム試験(CVOTs)はこれまでにELIXA(リキシセナチド)、LEADER(リラグルチド)、SUSTAIN-6(セマグルチド)、そしてEXSCEL(weeklyエキセナチド)の4試験が報告されているので本試験が5試験目になる。これまでの試験の結果についてはすでにメタ解析が報告されており1)、おそらく週1回製剤albiglutideによる本試験を加えた5試験のメタ解析の結果が近日中に報告されると思われる。来年には同じく週1回製剤であるデュラグルチドのREWINDの結果が報告される予定であり、すべての試験を合わせると参加患者は合計50,000人以上になり1つのデータベースを形成すると言ってよい。