日本語でわかる最新の海外医学論文|page:453

COVID-19死亡例、肺病理所見の特徴は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行における主な死因は進行性呼吸不全であるが、死亡例の末梢肺の形態学的・分子的変化はほとんど知られていないという。ドイツ・ヴィッテン・ヘアデッケ大学のMaximilian Ackermann氏らは、COVID-19で死亡した患者の肺組織の病理所見を調べ、インフルエンザで死亡した患者の肺と比較した。その結果、COVID-19患者の肺で顕著な特徴として、重度の細胞膜破壊を伴う血管内皮傷害がみられ、肺胞毛細血管内の微小血栓の有病率が高く、新生血管の量が多いことを確認した。NEJM誌2020年7月9日号掲載の報告。  研究グループは、COVID-19で死亡した患者の剖検時に得られた肺の形態学的・分子的特徴を、インフルエンザで死亡した患者の肺および年齢をマッチさせた非感染対照肺と比較した(米国国立衛生研究所[NIH]など助成による)。

進行胃がんに対する薬物療法が大きく変わる―免疫チェックポイント阻害薬と抗体薬物複合体(解説:上村直実氏)-1260

本論文では既治療に対して抵抗性のHER2陽性進行胃がんを対象として、抗HER2抗体であるトラスツズマブに新規トポイソメラーゼI阻害薬のデルクステカンを結合させた抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカンの有効性が示されている。すなわち、抗体薬物複合体により薬物の抗腫瘍効果を大きく引き上げることが証明された研究成果は特筆される。最近、わが国における手術不能の進行胃がんに対する薬物療法が大きく変化している。TS-1を用いる1次治療の効果が少ない患者に対して行う、第2次・第3次治療におけるニボルマブ(商品名:オプジーボ)などの免疫チェックポイント阻害薬と抗体薬物複合体の登場により、従来と大きく異なる成果すなわち生存率の延長や完全寛解を示す患者を認めるようになっている。

ISCHEMIA-CKD試験における血行再建術の有用性検討について(解説:上田恭敬氏)-1259

中等度から高度の心筋虚血所見を認める重症CKD合併安定狭心症患者に対して、薬物療法に加えて血行再建術(PCIまたはCABG)を施行する(invasive strategy)か否か(conservative strategy)で2群に無作為に割り付けたRCTであるISCHEMIA-CKD試験からの報告で、invasive strategyの症状軽減効果について解析した結果である。3ヵ月の時点ではinvasive strategyで症状軽減効果が示されたが、3年後にはその差は消失した。また、試験登録時の症状出現頻度が低いほど、その有効性は小さかった。著者らはconservative strategyに比してinvasive strategyに有用性はないと結論している。

無症状者でも唾液を用いたPCR検査が可能に/厚労省

 新型コロナウイルスへの感染を調べる検査について、厚生労働省は7月17日より、無症状者に対しても、唾液を用いたPCR検査(LAMP法含む)および抗原定量検査を活用可能とすることを発表した。ただし、簡易キットによる抗原検査については今後研究を進める予定で、現状唾液検体の活用は認められていない。これまで、PCR検査、抗原定量検査ともに唾液検体については、発症から9日目以内の有症状者のみ活用が認められていた。  今回の決定は、都内で無症状者を対象に、唾液を用いたPCR検査および抗原定量検査と、鼻咽頭拭い液PCR検査結果を比較し、高い一致率を確認したことを受け、7月15日開催の第44回厚生科学審議会感染症部会の審議を経て、活用可能と判断されたことに基づく。

認知症発症に対する修正可能なリスク因子~メタ解析

 高齢者の認知症発症に対する修正可能なリスク因子について、中国・蘇州大学のJing-Hong Liang氏らが、システマティックレビューおよびベイジアン・ネットワークメタ解析を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2020年6月17日号の報告。  複数の電子データベースより、2019年5月1日までのプロスペクティブコホート研究を網羅的かつ包括的に検索した。認知症でない参加者は、50歳以上とした。ベイジアン・ネットワークメタ解析を行うため、必要なデータを適格研究より抽出した。

75歳以上のCVD1次予防にスタチン導入は有効か/JAMA

 アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のない75歳以上の米国退役軍人(多くが白人男性の集団)では、新規スタチンの導入により、全死因死亡と心血管死のリスクが低下し、ASCVD発生のリスクも改善することが、米国・退役軍人局ボストン保健システムのAriela R. Orkaby氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年7月7日号に掲載された。ASCVDの発生率と有病率は加齢とともに上昇し、死亡、QOL低下、医療費増加の主な原因となっている。世界的なASCVD負担の大部分を高齢者が占めるにもかかわらず、予防や治療のガイドラインのエビデンスとなる臨床試験への高齢者の参加はほとんどない。また、米国では、スタチンはASCVDの1次予防の支柱となっているが、ガイドラインでは75歳以上の患者におけるスタチンの役割は、主にデータが少ないことを理由に、曖昧なままだという。

関節リウマチへの生物学的製剤、有益性/有害性の違いは?/BMJ

 メトトレキサート(MTX)が無効の関節リウマチ患者の治療では、MTXとの併用における各種の生物学的製剤の有益性および有害性の差はわずかであり、長期的な直接比較試験がないことが分析を困難にしていることが、ドイツ・医療品質・効率性研究機構(IQWiG)のKirsten Janke氏らの検討で示された。関節リウマチの疾患活動性のコントロールについては、メタ解析で、MTX単剤に比べほとんどの生物学的製剤とMTXの併用療法が優れることが示されているが、各生物学的製剤の相対的な有益性および有害性については議論が続いている。この主題に関する既報のネットワークメタ解析では、患者集団の異質性や、主要なアウトカム(臨床的寛解、低疾患活動性など)の定義が最新でないなどの問題があり、結論には至っていないという。BMJ誌2020年7月7日号掲載の報告。

大学の昇進人事で出産や病気による休業期間の考慮には驚いた(解説:折笠秀樹氏)-1258

アカデミア、つまり大学における昇進基準に関する調査報告です。生物医学の教師陣が昇進あるいはテニュア(終身雇用)の基準ですが、指針を持つ大学は92/146(63%)でした。ランキングの高い大学ほど持っていました。従来型と非従来型の昇進基準について調査しています。従来型としては、1)論文、2)著者の順序、3)インパクトファクター(IF)、4)研究費獲得、5)名声です。私たちの基準もほぼ同じだと思います。教授の基準で見ると、論文(95%)、研究費(67%)、名声(47%)、著者順(34%)、IF(28%)の順でした。まあ納得できる結果かと思います。

早期乳がんの全乳房5分割照射、10年後の結果(FAST)/JCO

 早期乳がんに対する術後寡分割放射線療法において、従来の50Gy/25回/5週レジメンの晩期有害事象の軽減の観点から、総線量を減らした週1回5分割レジメンを検討した多施設無作為化第III相FAST試験。今回、放射線治療後5年の乳房の外観変化と10年の正常組織への影響(NTE)と腫瘍アウトカムについて、英国・University Hospitals of North Midlands NHS TrustのAdrian Murray Brunt氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月14日号に掲載。  本試験では、50歳以上の低リスク浸潤性乳がん(pT1-2 pN0)の女性を、乳房温存手術後の全乳房照射のレジメンを、50Gy/25回/5週、30Gy/5回/5週(週1回6.0Gy)、28.5Gy/5回/5週(週1回5.7Gy)の3群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、2年後と5年後の写真での乳房外観の変化、副次評価項目は医師によるNTE評価と局所腫瘍制御であった。縦断的分析によるオッズ比(OR)でレジメンを比較した。

単極性と双極性うつ病における自殺念慮の比較

 青年期の単極性うつ病(UD)と双極性うつ病(BD)における自殺念慮や自殺企図のリスクについて、米国・Griffin Memorial HospitalのRikinkumar S. Patel氏らが検討を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2020年6月15日号の報告。  対象は、米国入院患者サンプルより抽出した12~17歳の青年患者13万1,740例(UD:92.6%、BD:7.4%)。自殺行動のオッズ比(OR)を算出するため、人口統計学的交絡因子および併存疾患で調整したロジスティック回帰を用いた。

ビタミンCやカロテノイドが2型DM発症を抑制?/BMJ

 果物と野菜の摂取量の指標である血漿中のビタミンC濃度、カロテノイド濃度およびこれらを組み合わせた複合バイオマーカースコアが高いほど、2型糖尿病の発症リスクが低いことが明らかになった。英国・University of Cambridge School of Clinical MedicineのJu-Sheng Zheng氏らが、欧州8ヵ国で実施した大規模前向きケースコホート研究「EPIC-InterAct」の結果を報告した。これまで果物や野菜の摂取量と2型糖尿病のリスクとの関連に関する調査は、自己申告の食事質問票に依存しており、結果に一貫性がなく、摂取量の客観的指標によるエビデンスが不足していた。BMJ誌2020年7月8日号掲載の報告。

前立腺肥大、ツリウムレーザーvs.経尿道的前立腺切除術/Lancet

 ツリウムレーザー前立腺切除術(ThuVARP)は経尿道的前立腺切除術(TURP)と比較して、術後12ヵ月時の尿路症状改善(国際前立腺症状スコア:IPSS)は同等であったが、最大尿流率(Qmax)はTURPが優れていた。ThuVARPの利点として期待された在院日数や合併症の減少は確認されなかった。英国・Southmead HospitalのHashim Hashim氏らが、TURPとThuVARPを比較した無作為化同等性試験「UNBLOCS試験」の結果を報告した。TURPは良性前立腺閉塞に対する標準治療で、ThuVARPは合併症や在院日数の減少などの利点が示唆されていた。Lancet誌2020年7月4日号掲載の報告。

あまりにも過酷な勤務体制(解説:野間重孝氏)-1257

本研究は医師の長時間労働を改善することにより医療事故の発生率を引き下げることができるという仮説のもとに、研修2年目・3年目のレジデントを対象として、ICUにおける24時間以上の長時間連続勤務を行う群(対照群)と16時間以内の日中・夜間の交代制スケジュールで勤務する群(介入群)との間で、重大な医療ミスの発生頻度を比較したものである。評者は現在の米国のレジデントの研修体制について疎いのだが、本研究に違和感を覚えたのは、このような過酷な勤務体制が米国の研修体制では普通に受け入れられているのだろうかという点に、強い疑問を持ったからである。24時間以上の勤務については言うまでもないが、交代制とはいえ16時間の連続ICU勤務というのは十分に過酷な勤務体制であると思われるからだ。Appendixに目を通しても実際の勤務表は載せられていないので、両群ともにどのような休息の取り方をしながらの勤務であったのか明らかではないが、少なくとも(研修期間中はともかくとして)長く勤務できる体制であるとはとても思えない。

乳腺外科医への控訴審判決で日医・中川会長「身体が震えるほどの怒り」

 15日、日本医師会の記者会見で、今村 聡副会長が乳腺外科医の控訴審判決に関する日医の見解について言及した。  手術直後の女性患者への準強制わいせつ罪に問われた執刀医が、逮捕勾留・起訴された事件では、一審で無罪判決が言い渡されたが、検察は控訴。7月13日に控訴審判決が行われた。東京高等裁判所は、一審の無罪判決を破棄し、懲役2年の実刑判決を言い渡した。  報道によれば、控訴審判決ではせん妄の診断基準について、学術的にコンセンサスが得られているDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)に当てはめずに、独自の基準でせん妄や幻覚の可能性を否定した医師の見解が採用されたというという。

新型コロナ抗体検査「陽性」8例で中和抗体を確認、国内初

 厚生労働省は7月14日、6月に3都府県で実施した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗体検査で陽性となった8例について抗体量を測定したところ、全例で実際にウイルス感染阻害機能を持つ抗体量(中和抗体価)が確認されたと発表した。新型コロナウイルスに対する免疫獲得が確認されたのは、国内では初めてとなる。  厚労省は、6月1~7日に東京都・大阪府・宮城県の一般住民それぞれ約3,000名を無作為化抽出して抗体保有調査を実施。

日本初の試み「患者提案型医師主導治験」がスタート

 患者が要望し、医師が主導するという新たな形態の臨床試験がスタートする。7月9日に行われたWebセミナー「今ある薬を、使えるようにするために―Wanna Be a part of History ?―」では、日本初となるこの「患者提案型医師主導治験」の実現までの道筋や背景が説明された。  今回の治験「WJOG12819L」は、非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブの適応拡大を目指す目的で行われる第II相試験。オシメルチニブの添付文書では「他のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療歴を有し、病勢進行が確認されている患者では、EGFR T790M変異が確認された患者に投与すること」とされている。

扁平上皮肺がん、ペムブロリズマブ+化学療法による1次治療の最終解析(KEYNOTE-407)/JTO

 扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)について、ペムブロリズマブ+化学療法の1次治療は引き続き、予後良好であることが示された。スペイン・Universidad Complutense & CiberoncのLuis Paz-Ares氏らが、化学療法未治療の転移を有する扁平上皮NSCLC患者を対象とした無作為化比較試験「KEYNOTE-407試験」の最終解析のアップデート、および2次治療での進行に関する解析を行った。今回の解析でも、ペムブロリズマブと化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)の併用による全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の改善は維持されていた。また、無作為化から2次治療における病勢進行(PD)または死亡までの期間であるPFS-2も、良好であることが示されたという。KEYNOTE-407試験の今回の解析結果を踏まえて著者は、「PFS-2の解析結果からも、転移を有する扁平上皮NSCLCに対する1次治療の標準治療としてペムブロリズマブ+化学療法併用が支持される」とまとめている。Journal of Thoracic Oncology誌オンライン版2020年6月26日号掲載の報告。

重度統合失調症に対する抗精神病薬とECT増強療法

 統合失調症の治療において、電気けいれん療法(ECT)を支持する肯定的なエビデンスが増加しているが、これが実臨床の状況をどの程度反映しているかはよくわかっていない。トルコ・Erenkoy Training and Research Hospital for Psychiatry and Neurological DiseasesのNazife Gamze Usta Saglam氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬とECT増強療法の有効性を、自然主義的観察環境で調査した。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2020年6月15日号の報告。  対象は、急性増悪のために入院した統合失調症患者81例。抗精神病薬のみで治療された患者(AP群)とECT増強療法を併用した患者(ECT群)の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコアの変化を比較した。

全粒食品摂取量と2型DMリスクは逆相関/BMJ

 全粒穀物およびいくつかの全粒食品(全粒朝食用シリアル、オートミール、ライ麦パン、玄米、ふすま入り、小麦胚芽など)の摂取量が多いほど2型糖尿病のリスクは有意に低下することが示された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のYang Hu氏らが、3つの前向きコホート試験(米国看護師健康調査[NHS]、看護師健康調査II[NHS II]、医療従事者追跡調査)のデータを分析し明らかにしたもので、BMJ誌2020年7月8日号で発表した。これまで、全粒穀物摂取と2型糖尿病のリスク低下との関連は一貫していることが認められていたが、個々の全粒食品摂取との関連はあまり検討されていなかった。

新型コロナ集団免疫は期待薄、感染者25万人のスペインでの調査/Lancet

 スペインで6万人超の国民を対象に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の血清疫学調査を行ったところ、感染蔓延(ホットスポット)地域でさえも大部分の人が血清反応陰性で、PCR検査で確認された大半の症例で検出可能な抗体が認められる一方、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した症状を有するかなりの人がPCR検査を受けておらず、血清反応陽性者のうち3分の1以上の人が無症状であることが明らかにされた。スペイン・National Centre for EpidemiologyのMarina Pollan氏らが、約3万6,000件の家庭を対象に行った調査の結果で、著者は、「スペインでは、COVID-19の影響が大きいにもかかわらず推定有病率は低いままで、集団免疫の獲得には明らかに不十分である。獲得には多くの死亡者や医療システムへの過度な負担なしにはなし得ない状況にある」と述べ、「今回の結果は、新たなエピデミックを回避するためには、公衆衛生上の対策を継続していく必要性を強調するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年7月3日号掲載の報告。