早期乳がんの全乳房5分割照射、10年後の結果(FAST)/JCO

提供元:ケアネット

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公開日:2020/07/20

 

 早期乳がんに対する術後寡分割放射線療法において、従来の50Gy/25回/5週レジメンの晩期有害事象の軽減の観点から、総線量を減らした週1回5分割レジメンを検討した多施設無作為化第III相FAST試験。今回、放射線治療後5年の乳房の外観変化と10年の正常組織への影響(NTE)と腫瘍アウトカムについて、英国・University Hospitals of North Midlands NHS TrustのAdrian Murray Brunt氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月14日号に掲載。

 本試験では、50歳以上の低リスク浸潤性乳がん(pT1-2 pN0)の女性を、乳房温存手術後の全乳房照射のレジメンを、50Gy/25回/5週、30Gy/5回/5週(週1回6.0Gy)、28.5Gy/5回/5週(週1回5.7Gy)の3群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、2年後と5年後の写真での乳房外観の変化、副次評価項目は医師によるNTE評価と局所腫瘍制御であった。縦断的分析によるオッズ比(OR)でレジメンを比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・2004~07年に英国の放射線治療センター18施設から915例が組み入れられた。
・適格患者862例中615例(71%)で5年後の写真を入手できた。
・写真での外観変化について、50Gyに対するORは、30Gyで1.64(95%CI:1.08~2.49、p=0.019)、28.5Gyで1.10(95%CI:0.70~1.71、p=0.686)であった。
・写真の評価項目におけるα/β推定値は2.7Gy(95%CI:1.5〜3.9 Gy)で、28Gy(95%CI:26〜30Gy)/5回は50Gy/25回と同一効果をもたらすと推定された。
・医師評価による中程度または著しい乳房NTE(萎縮、硬結、毛細血管拡張、浮腫)について、50Gyに対するORは、30Gyで2.12(95%CI:1.55~2.89、p<0.001)、28.5Gyで1.22(95%CI:0.87~1.72、p=0.248)であった。
・追跡期間中央値9.9年までに、同側乳がんが11例に発生し(50Gy:3例、30Gy:4例、28.5Gy:4例)、96例が死亡した(50Gy:30例、30Gy:33例、28.5Gy:33例)。

 今回の報告において、10年時のNTE率は従来の50Gy/25回と比べて、28.5Gy/5回で有意な差はなかったが30Gy/5回では高かった。著者らは、「今回の結果により、治療後3年時に発表した、全乳房放射線療法の週1回5分割照射がNTEに関して従来のレジメンと放射線生物学的に同等であることを示した結果が確認された」と述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)