日本語でわかる最新の海外医学論文|page:445

急性期統合失調症における抗精神病薬の投与量~メタ解析

 急性期統合失調症における抗精神病薬の最適な投与量については、あまり知られていない。慶應義塾大学の竹内 啓善氏らは、急性期統合失調症における抗精神病薬の最小有効量(MED)について調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年5月16日号の報告。  これまでのシステマティックレビューより、各抗精神病薬のMEDを特定した。次に、急性期統合失調症における固定用量の抗精神病薬単剤療法を含む二重盲検プラセボ対照ランダム化試験を特定し、同一薬剤でMEDと高用量の比較を行った。研究の選定は、第2世代抗精神病薬とハロペリドールの用量反応性を調査した最近のメタ解析より行った。研究中止、精神病理、錐体外路症状、治療に伴う有害事象に関するデータを抽出した。各抗精神病薬のMED、MEDの2倍量、MEDの3倍量を比較するメタ解析を実施した。

「コロナ疲れ」が単なる疲労で済まされない理由

 コロナ禍において、日本でも「コロナ不安」「コロナ疲れ」という言葉がメディアやSNS上で散見される。現在、米国では国民の約半数がこの状況下でメンタルヘルスに支障をきたし、ワシントンポスト紙の調査によれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行拡大によるストレスレベルは2009年のリーマン・ショック時よりも高くなっているー。2020年6月18日、2020年度第1回メディアセミナーがWeb開催され、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学系研究科泌尿器外科学教授/日本抗加齢医学会 理事長)が「Stay Homeのアンチエイジング」と題し、コロナ疲れがDNAレベルにもたらす影響やその対策法を語った(主催:日本抗加齢医学会)。  「コロナ疲れ」とは、COVID-19というストレッサー(脅威)に対して心理的な闘争・逃走反応が続くことで、次第にネガティブ感情が増幅して生じる状態である。堀江氏はコロナ疲れの原因の1つに在宅勤務(テレワーク)を挙げ、「『3密』(密閉、密集、密接)を回避した新しい生活様式を遂行するうえで推奨されているが、テレワークの増加に伴い、プライベートと仕事の空間が混在し、長時間労働になることでワーク・ライフ・バランスに悪影響を及ぼすことが研究報告されている1)」と問題点を指摘した。この研究結果によると、ワーク・ライフ・バランスが崩壊することで、燃え尽き症候群になりやすく、仕事や人生への満足感が減ることが明らかになっていることから、コロナ疲れの回避策として「心のアンチエイジングが重要」と同氏は述べた。

デキサメタゾンは小児心臓手術時の重度合併症を抑制せず/JAMA

 人工心肺装置(CPB)を使用する心臓手術を受けた生後12ヵ月以下の乳児において、術中のデキサメタゾン投与はプラセボと比較して、30日以内の重度合併症や死亡のリスクを低減しないことが、ロシア・E. N. Meshalkin国立医療研究センターのVladimir Lomivorotov氏らが実施した「DECISION試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年6月23日号に掲載された。米国のデータでは、1998年以降、CPBを伴う心臓手術を受けた先天性心疾患小児の死亡率は約3%まで低下しているが、重度合併症の発生率は30~40%と、高率のままとされる。CPBによって引き起こされる全身性の炎症反応が臓器機能を低下させ、長期の集中治療室(ICU)入室や、入院の長期化をもたらすことが知られている。この全身性炎症反応や合併症の低減を目的に、コルチコステロイドが広く用いられているが、その臨床的有効性は確実ではないという。

トラネキサム酸、消化管出血による死亡を抑制せず/Lancet

 急性期消化管出血の治療において、トラネキサム酸はプラセボに比べ死亡を抑制せず、静脈血栓塞栓症イベント(深部静脈血栓症または肺塞栓症)の発生率が有意に高いことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のIan Roberts氏らが実施した「HALT-IT試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2020年6月20日号に掲載された。トラネキサム酸は、外科手術による出血を低減し、外傷患者の出血による死亡を抑制することが知られている。また、本試験開始前のCochraneの系統的レビューとメタ解析(7試験、1,654例)では、消化管出血による死亡を低下させる可能性が示唆されていた(統合リスク比[RR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.42~0.89、p=0.01)。一方、メタ解析に含まれた試験はいずれも小規模でバイアスのリスクがあるため、大規模臨床試験による確証が求められていた。

『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』~気鋭の医師が提唱する未病の新たな概念

 医学書の範疇に収まらないユニークな著書を数多く持つ國松 淳和氏(医療法人社団永生会南多摩病院 総合内科・膠原病内科)の最新作は『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』。6月下旬に行われた出版記念セミナーにおいて、國松氏がコロナ禍の中で本書の執筆に至った経緯や読者に伝えたいポイントについて語った。  本の主題となる「シャムズ(CIAMS)」は國松氏の造語。新型コロナウイルス感染症の流行下にあって、コロナに感染していないのに、不安から実際に体調を崩したり、他者に攻撃的になったりといったマイナスの変化が生じている人が増えたことに気づいた氏が、そうした状況と人を総称するために名付けたという。

NSCLC術後補助療法、ペメトレキセド+シスプラチンの有効性は?/JCO

 完全切除のStageII~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後補助療法としてのペメトレキセド+シスプラチンの有効性について、ビノレルビン+シスプラチンと比較した第III相無作為化非盲検試験の結果が示された。静岡がんセンター呼吸器内科の釼持広知氏らによる報告で、ペメトレキセド+シスプラチンの優越性は示されなかったが、補助化学療法として忍容性は良好であることが示されたという。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年5月14日号の掲載報告。

開発中の遅発型ポンペ病治療薬の有効性/サノフィ

 サノフィ株式会社は、6月16日、酵素補充療法剤として現在開発中のavalglucosidase alfaが、遅発型ポンペ病の患者の臨床症状(呼吸障害と運動性の低下)に対し臨床上意義ある改善をもたらしたと報告した。  ポンペ病は、ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グリコシダーゼ(GAA)の遺伝子欠損または活性低下が原因で生じる疾患。グリコーゲンが近位筋肉や横隔膜をはじめとする筋肉内に蓄積し、進行性の不可逆的な筋疾患が生じる。世界の患者数は約5万人と推定され、乳児期から成人後期のいずれの時期にも発症する可能性がある。

混合性の双極性うつ病の小児・青年に対するルラシドンの有用性

 混合性(亜症候性躁病)の双極性うつ病の小児および青年の治療に対するルラシドンの有効性と安全性について、米国・スタンフォード大学のManpreet K. Singh氏らが、事後分析により評価を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2020年5月8日号の報告。  DSM-Vで双極I型うつ病と診断された10~17歳の患者を対象に、6週間のランダム化二重盲検試験を実施した。対象患者は、ルラシドン20~80mg(フレキシブルドーズ)またはプラセボを1日1回投与する群にランダムに割り付けられた。混合性(亜症候性躁病)は、ベースライン時のヤング躁病評価尺度(YMRS)5以上と定義した。評価項目は、ベースラインから6週目までのChildren's Depression Rating Scale-Revised(CDRS-R)スコア(主要評価項目)および臨床全般印象度-双極性障害 重症度(CGI-BP-S)スコアとし、反復測定分析による混合モデルを用いて評価した。

COVID-19と熱中症予防の両立にむけて/厚生労働省

 厚生労働省は、「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめ、ホームページで公開した。今回発表された熱中症予防行動のポイントでは、「マスクの着用・温度調節・暑さ対策・健康管理」の4つの点について詳しく言及し、新しい生活様式下の今夏の過ごし方を提言している。 (1)マスクの着用について  マスクは飛沫の拡散予防に有効で、基本的な感染対策として着用をお願いしている。しかし、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずすようにする。 マスクを着用する場合、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくても、こまめに水分補給を心がける。また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要。

メニューへのカロリー表示が健康や経済にメリット、AHAニュース

 飲食店のメニューにカロリー表示を求める現行の連邦法は、健康的な食事の選択を促し、心血管疾患や糖尿病の患者数の減少に寄与する可能性があるとする研究結果が報告された。このモデリング研究では、人々が飲食店の栄養表示を考慮して注文することによって、2018年から2023年までに心血管疾患を1万4,698件(このうち心血管疾患による死亡は1,575件)、2型糖尿病を2万1,522件回避できると推定された。結果の詳細は米国心臓協会(AHA)が発行する「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」6月4日オンライン版に発表された。

アロプリノールはCKDの進行を抑制するか?/NEJM

 進行リスクが高い慢性腎臓病(CKD)患者において、アロプリノールによる尿酸低下療法はプラセボと比較し、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を遅らせることはなかった。オーストラリア・St. George HospitalのSunil V. Badve氏らが、アロプリノールによる尿酸低下療法の有効性を検証した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Controlled Trial of Slowing of Kidney Disease Progression from the Inhibition of Xanthine Oxidase:CKD-FIX」の結果を報告した。血清尿酸値の上昇はCKDの進行と関連している。しかし、アロプリノールを用いた尿酸低下療法が進行リスクの高いCKD患者のeGFR低下を抑制できるかどうかは不明であった。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。

COPDへの3剤配合吸入薬、ICS半量でも有効/NEJM

 中等症~最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、ブデソニド標準用量または半量によるブデソニド/グリコピロニウム/ホルモテロール3剤配合吸入薬(ブデソニド半量の3剤配合吸入薬は本邦未承認)はいずれも、グリコピロニウム/ホルモテロールまたはブデソニド/ホルモテロールの2剤配合吸入薬と比較し、中等度~重度のCOPD増悪頻度を抑制したことが示された。ドイツ・LungenClinic GrosshansdorfのKlaus F. Rabe氏らが、26ヵ国で実施した52週間の第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of Triple Therapy in Obstructive Lung Disease trial:ETHOS試験」の結果を報告した。COPDに対する固定用量の吸入ステロイド(ICS)+長時間作用型抗コリン薬(LAMA)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)3剤併用療法は、これまで1つの用量のICSでのみ検討されており、低用量ICSでの検討が不足していた。NEJM誌オンライン版2020年6月24日号掲載の報告。

次亜塩素酸水は物品消毒に有効、空間噴霧は勧められない

 6月26日、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が実施した新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価を踏まえ、経済産業省、厚生労働省、消費者庁が合同で、消毒・除菌方法に関する情報を取りまとめた。次亜塩素酸水は、物品における新型コロナウイルスの消毒に対して、一定条件下での有効性を報告した一方、手指消毒や空間噴霧の有効性・安全性は評価されておらず、まわりに人がいる中での空間噴霧はお勧めできないと注意喚起している。

緑茶・コーヒー・アルコールと乳がんリスク~日本人女性

 日本の全国多施設前向きコホート研究であるJapan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk(JACC)Studyにおいて、緑茶・コーヒー・アルコールと乳がんリスクの関連を調べた結果、アルコール摂取と乳がんリスク増加との関連がみられた一方、乳がんリスクとの関連の結論が出ていない緑茶やコーヒーについては関連がみられなかった。Asian Pacific Journal of Cancer Prevention誌2020年6月1日号に掲載。  本研究の対象は、JACC Studyにおける国内24地域の40〜79歳の日本人女性3万3,396人。20年以上の追跡期間中に乳がんが255例に発症した。乳がんリスクと緑茶、コーヒー、アルコールの摂取の間の独立した関連性を評価するために、多変量ロジスティック回帰分析を行った。

カプマチニブ、METエクソン14スキッピング陽性肺がんに国内承認/ノバルティス

 ノバルティス ファーマは、2020年 6月29日、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として、カプマチニブ(商品名:タブレクタ)に対する製造販売承認を取得したと発表。  MET遺伝子エクソン14スキッピング(METex14)変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLCの予後は不良で、生命を脅かす重篤な疾患である一方、治療選択肢が非常に限られており、MET遺伝子を標的とした治療法の開発が望まれていた。MET遺伝子変異を有する患者はNSCLC患者数の約3~4%と報告されており、METex14変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者数は日本国内では約3,000名程度と推定される。

日本の実臨床におけるアリピプラゾール長時間作用型注射剤による統合失調症治療

 統合失調症患者のマネジメントでは、抗精神病薬治療の継続が重要である。藤田医科大学の岩田 仲生氏らは、日本の実臨床においてアリピプラゾール長時間作用型注射剤(アリピプラゾール月1回製剤、AOM)がアリピプラゾール経口剤(OA)と比較し、より長期間の治療継続に寄与できるかを評価するため、JMDCのレセプトデータベースを用いて検討を行った。Advances in Therapy誌オンライン版2020年6月4日号の報告。  2015年5月~2017年11月にAOMまたはOAで治療を開始した統合失調症患者を対象に、データ分析を行った。年齢、性別、抗精神病薬のクロルプロマジン換算量、精神科への入院回数で調整した後、AOMとOAの治療中止のハザード比(HR)を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。

多発性骨髄腫、3剤併用療法の長期アウトカムは?/JCO

 多発性骨髄腫に対する3剤併用(レナリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン:RVD)療法の有効性について、最大規模のコホートで長期追跡したアウトカムの結果が報告された。米国・エモリー大学のNisha S. Joseph氏らによる検討で、移植後患者の奏効率は90%近くに上り、リスクに留意した維持療法により、先例のない長期アウトカムがもたらされる可能性があることが示されたという。RVD療法は、移植治療の適格・不適格を問わず、導入療法としての有効性は高く、重宝するレジメンであることが示されていた。Journal of Clinical Oncology誌2020年6月10日号掲載の報告。

医療ミス多いのは?24h以上の長時間勤務 vs.16h以内の2交代制/NEJM

 米国小児科研修医のICUローテーション中のスケジュールについて、24時間以上の長時間勤務のほうが、16時間以内の日中・夜間勤務を繰り返すスケジュールに比べ、研修医による重大な医療ミス発生率が低かったことが示されたという。ただし、実施した施設によるばらつきは大きかった。米国・ボストン小児病院のChristopher P. Landrigan氏らが行った、2パターンの勤務シフトを比較した多施設共同クラスター無作為化クロスオーバー試験の結果で、著者は「仮説に反する試験結果となった」と述べながら、要因として「各研修医が治療するICUの患者数は、長時間勤務でないスケジュール群のほうが多かった」ことに触れている。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。

COVID-19、がん患者の全死亡率への影響/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者のデータが不足している中、米国・Advanced Cancer Research GroupのNicole M. Kuderer氏らによる検討で、COVID-19に罹患したがん患者の30日全死因死亡率は高く、一般的なリスク因子(年齢、男性、喫煙歴など)、およびがん患者に特異な因子(ECOG PS、活動性など)との関連性が明らかにされた。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる長期追跡を行い、がん患者の転帰へのCOVID-19の影響を、特異的がん治療の継続可能性も含めて、明らかにする必要がある」とまとめている。Lancet誌2020年6月20日号掲載の報告。  研究グループは、COVID-19罹患のがん患者コホートの転帰を特徴付け、死亡および疾患重症化の潜在的予測因子を特定するコホート研究を行った。

進行性前立腺がんに対する経口レルゴリクスによるアンドロゲン除去療法(解説:宮嶋哲氏)-1250

GnRHアゴニストの皮下注射薬リュープロリドは、視床下部-下垂体系に作用して男性ホルモンを去勢域まで低下させ、現在のところ前立腺がんに対するアンドロゲン除去療法(ADT)の標準治療薬である。GnRHアゴニストの作用機序は初期段階で男性ホルモンを上昇させ、そのネガティブフィードバックによって男性ホルモンを去勢域に低下させる。わが国における前立腺がん治療薬としては、皮下注射薬リュープロリドは1ヵ月から6ヵ月製剤まで普及している一方で、皮下注射薬GnRHアンタゴニストも普及しつつある。作用機序もシンプルでありGnRHアゴニストのような一過性の男性ホルモンの上昇はない。