日本語でわかる最新の海外医学論文|page:304

子供への新型コロナワクチンの説明用リーフ配布/新潟県医師会

 2022年1月より5~11歳への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの接種が承認され、接種が開始された。とくに第6波のオミクロン株は、ワクチン未接種の学童期の子供などを中心に感染拡大していることもあり、接種が急がれるところであるが、COVID-19は子供では重症化することは少なく、無症状で過ごすことも多いとされ、接種は成人ほど進んでいない。また、さまざまなワクチンの情報や考え方の流布で、接種について戸惑っている保護者や子供たちも多いという。

重症血友病A、アデノ随伴ウイルス用いた遺伝子治療が有効/NEJM

 重症血友病A患者において、valoctocogene roxaparvovec治療により内因性第VIII因子の産生が増加し、第VIII因子製剤の予防投与時と比較して出血および第VIII因子製剤の使用が有意に減少した。ブラジル・カンピーナス大学のMargareth C. Ozelo氏らが、多施設共同単群非盲検第III相試験「GENEr8-1試験」の結果を報告した。Valoctocogene roxaparvovec(AAV5-hFVIII-SQ)は、肝特異的プロモーターにBドメインを除いた第VIII因子遺伝子を配したアデノ随伴ウイルス5(AAV5)ベクターを用いる遺伝子治療薬で、重症血友病A男性患者を対象とした第I/II相用量漸増試験において有効性と安全性が示されていた。NEJM誌2022年3月17日号掲載の報告。

コロナワクチンの有効性、AZ製vs.ロシア製vs.中国製/Lancet

 アルゼンチンにおいて使用された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する3種類のワクチンは、いずれもSARS-CoV-2感染とCOVID-19による死亡を減少させ有効であることが認められた。アルゼンチン保健省のAnalia Rearte氏らが、60歳以上を対象とした診断陰性デザイン(test-negative design)による症例対照研究の結果を報告した。アルゼンチンでは、2021年1月よりrAd26-rAd5(Sputnik製)、ChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)およびBBIBP-CorV(Sinopharm製)を用いたCOVID-19ワクチン接種キャンペーンが開始されていた。Lancet誌オンライン版2022年3月15日号掲載の報告。

HER2+乳がんへの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブ追加、N-でベネフィットのある患者は?(APHINITY)

 APHINITY試験はHER2陽性乳がんの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブの上乗せを検証した第III相試験で、HER2陽性乳がん患者全体とリンパ節転移のある患者で無浸潤疾患生存(iDFS)が大幅に改善することが報告されている。今回、米国・ダナファーバーがん研究所のRichard D. Gelber氏らは、リンパ節転移陰性(N-)でペルツズマブ追加によるベネフィットが得られるサブグループ、リンパ節転移陽性(N+)でde-escalationを考慮すべきサブグループについて検討した。European Journal of Cancer誌オンライン版2022年3月18日号に掲載。  著者らは、STEPP(subpopulation treatment effect pattern plot:サブグループ別治療効果パターンプロット)を用いて、臨床的複合リスクスコア、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合、HER2コピー数(FISH)によるサブグループについて、全体およびリンパ節転移の有無別に、6年iDFS率のカプラン-マイヤー差(ペルツズマブ群-プラセボ群:Δ±SE)を推定した。

NVAF患者における経皮的左心耳閉鎖術の有効性~初の全国規模データ(Terminator Registry)/日本循環器学会

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において、長期的な抗凝固療法に代わる治療法として経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)が世界的に行われている。ビタミンK拮抗薬と比較して、死亡率と出血イベントは有意に少なく、QOLは大きく改善されているが、欧米からのデータが中心で、日本におけるデータは十分ではない。第86回日本循環器学会学術集会(2022年3月11日~13日)で原 英彦氏(東邦大学医療センター大橋病院)が国内23施設による初の大規模観察研究TERMINATOR Registryから最初の集計結果を報告した。

FDA、悪性黒色腫に初の抗LAG-3抗体relatlimabとニボルマブの併用を承認/BMS

 ブリストルマイヤーズスクイブは、2022年3月18日、米国食品医薬品局(FDA)が、切除不能または転移のある悪性黒色腫に対する、ニボルマブと抗LAG抗体relatlimab-rmbwの固定用量の合剤(海外製品名:Opdualag)の単回投与を承認したと発表。  この承認はOpdualagとニボルマブ単独を比較した第II/III相RELATIVITY-047試験に基づいている。  RELATIVITY-047 試験における、PFS中央値はニボルマブの4.6ヵ月に対し、Opdualagでは10.1ヵ月であった(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.62〜0.92、p=0.0055)

BA.2への中和抗体価、追加接種やBA.1感染でどのくらい上がるか/NEJM

 オミクロン株亜種BA.1とBA.2は複数の共通した変異を持つが、それぞれ固有の変異も持つ。BA.1は免疫回避性を有することが報告されているが、BA.2がワクチン接種や感染による中和抗体の誘導を回避する能力を有するかどうかはわかってない。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのJingyou Yu氏らは、ワクチン接種者および既感染者におけるBA.2に対する中和抗体価を調査。NEJM誌オンライン版2022年3月16日号のCORRESPONDENCEに掲載された。  BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech社)の初回(1~2回目)および追加接種済で新型コロナウイルス感染歴のない24人と、ワクチン接種歴によらず感染歴のある8人を対象に、中国・武漢で分離されたWA1/2020株、およびオミクロン株亜種BA.1およびBA.2に対する中和抗体反応を評価した。

統合失調症患者の機能に対するブレクスピプラゾールの短期的および長期的効果

 米国・Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らは、統合失調症患者の機能に対するブレクスピプラゾールの短期的および長期的効果について評価を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年3月1日号の報告。  次の(1)~(3)の試験データ(2011年7月~2016年2月に実施)を用いて、検討を行った。(1)入院患者を対象とした6週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験:3件、(2)52週間のランダム化二重盲検プラセボ対照長期試験(中間分析結果に基づき早期試験終了):1件、(3)すべての統合失調症患者(DSM-IV-TR基準)を対象とした52週間の非盲検延長試験:2件。経口ブレクスピプラゾール治療に割り当てられた患者に対するブレクスピプラゾールの投与量は、短期試験で2~4mg/日、長期試験で1~4mg/日であった。機能評価には、個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)および機能の全体的評定尺度(GAF)を用いた。治療反応は両尺度の10ポイント以上増加、寛解はPSPスコア71点以上またはGAFスコア61点以上と定義した。

90日超のVTE経口抗凝固療法、最適薬は?/JAMA

 静脈血栓塞栓症(VTE)で入院後に長期経口抗凝固療法を受けた患者の探索的解析において、90日超の処方・投与についてアピキサバン(商品名:エリキュース)はワルファリンと比較して、再発VTEによる入院の発生割合をわずかだが有意に低下した。一方で、大出血による入院の発生割合に有意差はなかった。また、アピキサバンvs.リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)またはリバーロキサバンvs.ワルファリンのいずれの比較においても有意差はなかったという。米国・ブリガム&ウィメンズ病院/ハーバード大学医学大学院のAjinkya Pawar氏らが検討結果を報告した。VTE治療ガイドラインでは、経口抗凝固薬を用いた治療は90日以上と推奨されているが、90日超の継続投与での最適な薬剤に関するエビデンスは限定的であった。JAMA誌2022年3月15日号掲載の報告。

オミクロンvs.デルタ、ワクチン接種・感染歴・年齢別の入院・死亡リスク/Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の重症アウトカムのリスクについて、デルタ変異株(B.1.617.2)よりもオミクロン変異株(B.1.1.529)で大幅に低く、オミクロン変異株ではより重症度の高いエンドポイント発生が大きく低下しており、年齢間のばらつきは顕著であることなどが、英国・ケンブリッジ大学のTommy Nyberg氏らによる検討で示された。オミクロン変異株は部分的なワクチンエスケープと、高い感染性が示されているが、早期の試験でデルタ変異株よりも重症化リスクは低いことが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2022年3月16日号掲載の報告。

転移性ホルモン感受性前立腺がんでダロルタミドはOSを延長(解説:宮嶋哲氏)

ダロルタミドはアンドロゲン受容体阻害薬の1つであり、現在、国内では転移のない去勢抵抗性前立腺がんに対して適応となる薬剤である。本論文は、転移性ホルモン感受性前立腺がん患者を対象に、アンドロゲン除去療法とドセタキセルをベースとした治療においてダロルタミドの有効性を検討した国際第III相試験(ARASENS試験)に関する報告である。ダロルタミドとプラセボを1:1に割り付け、主要評価項目はOSである。1,306例の患者が対象でダロルタミド群651例、プラセボ群655例であり、初期診断の段階で86.1%の患者が転移を有しており、その約80%が骨転移症例であった。死亡リスクにおいて、ダロルタミド群はプラセボに比べ32.5%低下し(ハザード比:0.68、p<0.001)、去勢抵抗性獲得までの期間もダロルタミド群はプラセボに比べ有意に延長していた(ハザード比:0.36、p<0.001)。コホートの80%以上がGleason score 8以上と悪性度が高い中、去勢抵抗性獲得までの期間をこれほどまでに延長した点は評価に値する。なお、有害事象に関しては両群で63~66%と比較的高い数値で有意差を認めなかったが、両群ともにドセタキセルを投与していることに起因していると思われる。

薬物性味覚障害マニュアルが11年ぶりに改定、注意すべき薬剤と対策は?/厚労省

 『重篤副作用疾患別対応マニュアル』は77項目に細分化され、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに掲載されているが、今回、「薬物性味覚障害」の項が11年ぶりに改定された。薬剤性味覚障害は味覚障害の原因の約20%を占めていること、多くの薬剤の添付文書の副作用に記載されていることから、以下に示すような薬剤を服用中の患者の訴えには十分注意が必要である。

乳がんサバイバーの倦怠感、長期的な経過の特徴/JCO

 早期乳がん1次治療後の倦怠感の長期的な経過は個人差が大きい。フランス・Gustave RoussyのInes Vaz-Luis氏らが乳がんサバイバーにおける倦怠感の長期的な経過の特徴を調査した結果から、がん関連の倦怠感の多次元的な性質とその危険因子の複雑さが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年3月15日号に掲載。  本研究は、2012~15年に治療を受けたStage I~IIIの乳がん患者を対象とした全国的な大規模前向き研究(CANcer TOxicity)を使用して、倦怠感に関する詳細な縦断的解析を実施した。倦怠感は、診断時、診断後1、2、4年に調査し、ベースラインでの臨床的、社会人口統計学的、行動的、腫瘍関連、治療関連の特徴を入手した。  調査の結果、総合的倦怠感が重度だった4,173例において、その経過について3つの群が特定され、各群の重度の総合的倦怠感のリスク推定値は以下のとおりであった。 1)持続的にリスクが高い群:患者の21% 診断時94.8%(95%CI:86.6〜100.0)、4年後64.6%(95%CI:59.2〜70.1) 2)リスクが悪化する群:患者の19% 診断時13.8%(95%CI:6.7~20.9)、4年後64.5%(95%CI:57.3~71.8) 3)リスクが低いままの群:患者の60% 診断時3.6%(95%CI:2.5~4.7)、4年後9.6%(95%CI:7.5~11.7)

周産期における境界性パーソナリティ障害の有病率~メタ解析

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、重度の情緒不安定や対人機能低下を特徴とする精神疾患である。これまでの文献では、周産期におけるBPDは非BPDと比較し、さまざまな生理学的および心理社会学的アウトカムの有害リスクが高いことが示唆されている。しかし、これまで妊娠中および産後のBPDおよびBPDの特徴(BPF)を有する割合を調査したシステマティックレビューは行われていなかった。カナダ・マックマスター大学のDivya Prasad氏らは、周産期のBPDおよびBPFの有病率を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Archives of Women's Mental Health誌オンライン版2022年2月26日号の報告。

閉経後進行乳がんの1次治療、ribociclib追加でOS延長(MONALEESA-2)/NEJM

 ホルモン受容体陽性HER2陰性の閉経後進行乳がん女性の1次治療において、CDK4/6阻害薬ribociclibとアロマターゼ阻害薬レトロゾールの併用療法はプラセボ+レトロゾールと比較して、全生存期間が約1年延長し、新たな安全性シグナルの発現は認められないことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのGabriel N. Hortobagyi氏らが実施した「MONALEESA-2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年3月10日号に掲載された。  本研究は、2014年1月~2015年3月の期間に参加者の登録が行われた国際的な無作為化第III相試験であり、今回は、主な副次エンドポイントである全生存期間の、プロトコールで規定された最終解析の結果が公表された(Novartisの助成を受けた)。

非心臓手術の血栓予防、DOAC vs.低分子量ヘパリン/BMJ

 非心臓手術を受ける患者の血栓予防において、直接経口抗凝固薬(DOAC)と低分子量ヘパリン(LMWH)はいずれも、これらの投与を行わない場合に比べ症候性静脈血栓塞栓症の発現を抑制するが、これらの薬剤は同程度に大出血を増加させる可能性があり、DOACによる症候性静脈血栓塞栓症の予防効果はLMWHよりも大きいと考えられることが、カナダ・マックマスター大学のMaura Marcucci氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月9日号で報告された。  研究グループは、非心臓手術を受ける患者の血栓予防において、DOACとLMWHが、有益性と有害性に及ぼす影響を評価する目的で、文献の系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。

一般的な指標だけから急性腎障害を予測できるか?(解説:今中和人氏)

急性腎障害(AKI)発生の影響は大きい。複数の新規バイオマーカーと開心術後AKIとの関連が報告されているが、実用面のハードル(結果判明の迅速さ、検体の取り扱い、コストはスクリーニング検査として容認可能か、など)があるのか、あまり普及していない。確かに、たとえば無尿になった後に結果が出るのでは実臨床では使い物にならないが、術前血清クレアチニン(Cr)などの一般的な指標のAKI予測力は不十分である。本論文は2000~19年のクリーブランド・クリニック本院における成人開心術5万8,526例からAKI予測モデルを作成し、その有用性を3つの関連市中病院の4,734例で確認した。

医師の命狙う凶悪事件に何を思う【在宅医インタビュー】

 医師の命を狙った、卑劣な事件が相次いでいる。記憶に新しいところでは、今年1月27日、埼玉県ふじみ野市で、男(66)が死亡した母親の訪問診療を担当していた在宅クリニック関係者を自宅に呼び出し、散弾銃を発砲。担当医(44)を殺害したほか、同行していた理学療法士(41)に大けがを負わせた。男は自宅内に立てこもった末、殺人および殺人未遂容疑などで逮捕、送検された。さいたま地検は3月3日より鑑定留置を行い、男の刑事責任能力の有無などを調べている。

安定冠動脈疾患の診断と治療~JCSガイドラインフォーカスアップデート版発表/日本循環器学会

 2022年3月11~13日に開催された第86回日本循環器学会学術集会で、中埜 信太郎氏(埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科)が3月11日に発行された『2022年JCSガイドラインフォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療』について概要を説明した。本フォーカスアップデート(FU)は、2019年に発表された「慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版)」と「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)」の2つから新たな知見をまとめて作成。最近の大規模研究のエビデンスに基づき、安定冠動脈疾患(CAD)の管理全般に求められる指針の提供を主たる目的としている。英語版も同時に発行された。

がん悪液質におけるアナモレリンのレスポンダー(ONO-7643-04)/日本臨床腫瘍学会

 がん悪液質の国内第II相プラセボ対照比較ONO-7643-04試験における、アナモレリン奏効患者のサブ解析が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022 )で静岡県立静岡がんセンターの内藤立暁氏により発表された。  結果、ほとんどのサブグループでアナモレリンの優越性が示された。ただし、PS不良例など一部のサブグループでの優越性の低さが示されている。 ・対象:非小細胞肺がんに関連するがん悪液質患者(n=174) ・試験薬群:アナモレリン(n=84) ・対照群:プラセボ(n=90) ・評価項目:除脂肪体重(LBM)、体重、食欲に対する奏効率、OOLなど  主な結果は以下のとおり。 ・除脂肪体重に関する全体の奏効率はアナモレリン群64.4%に対しプラセボは28.9%、オッズ比(OR)は4.41で、アナモレリン群で有意に良好であった(p<0.001)。 ・ただし、PS不良群(ECOG PS2、OR:5.00、p=0.140)と、同時併用薬なし群(OS:1.20、p=0.820)では他のサブグループと比べ低かった。 ・全体重に関する全体の奏効率はアナモレリン群65.4%、プラセボ16.7%、ORは9.46で、アナモレリン群で有意に良好であった(p