日本語でわかる最新の海外医学論文|page:277

ファイザー製とAZ製、コロナワクチンの有効性を比較 /BMJ

 イングランドでは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)アルファ変異株の流行期の健康な医療従事者において、BNT162b2(mRNAワクチン、ファイザー製)とChAdOx1(ウイルスベクターワクチン、アストラゼネカ製)という2つのワクチンには、接種後20週以内のSARS-CoV-2感染および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生について実質的な差はなく、これらの発生率は初回接種後3~4週間目には急激に低下して、それ以降はCOVID-19関連の受診や入院が少なくなったことから、両ワクチンはいずれもアルファ変異株によるCOVID-19に対する強力な予防効果を有することが、英国・オックスフォード大学のWilliam J. Hulme氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2022年7月20日号で報告された。  研究グループは、イングランドの医療従事者およびソーシャルケアワーカーにおいて、SARS-CoV-2感染とCOVID-19発生に対する2つのワクチン(BNT162b2、ChAdOx1)の有効性を比較する目的で、イングランド国民保健サービス(NHS England)の委託として、効果比較試験に類似のコホート研究を行った(英国研究技術革新機構[UKRI]などの助成を受けた)。  SARS-CoV-2アルファ変異株が優勢な時期におけるOpenSAFELY-TPPの研究プラットフォーム内で利用可能なプライマリケア、病院、COVID-19サーベイランスの記録が関連付けられた。

アルコール依存症リスクに対する喫煙の影響

 喫煙と飲酒には強い相関があるといわれている。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのClaire Garnett氏らは、イングランドにおける飲酒者の喫煙率および喫煙の特性について、アルコール依存症リスクの有無による比較を行った。その結果、アルコール消費量増加と喫煙率上昇との関連が認められたことから、著者らは、アルコール依存症リスクを有する喫煙者では、英国国民保健サービス長期計画(NHS Long Term Plan)の一環として喫煙率を低下させることが重要であると報告した。The Lancet Regional Health. Europe誌2022年6月9日号の報告。  イングランドの成人(weighted n:14万4,583人)を対象に毎月実施された断面調査のデータ(2014~21年)を用いて、分析を行った。喫煙および禁煙チャレンジの特徴は、調査年で調整した後、アルコール依存症(飲酒者のアルコール依存症リスクの有無別)で回帰した。  主な結果は以下のとおり。

1型糖尿病にSGLT2阻害薬を使用する際の注意点/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2014年に策定された「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」を改訂し、2022年7月26日に公開した。改訂は7度目となる。  今回の改訂は、2022年4月よりSGLT2阻害薬服用中の1型糖尿病患者の在宅での血中ケトン体自己測定が可能となったことに鑑み、これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されることを目的としている。  具体的には、【ケトアシドーシス】の項で「SGLT2阻害薬使用中の1型糖尿病患者には、可能な限り血中ケトン体測定紙を処方し、全身倦怠感・悪心嘔吐・腹痛などの症状からケトアシドーシスが疑われる場合は、在宅で血中ケトン体を測定し、専門医の受診など適正な対応を行うよう指導する」という文言が追加された。

エンホルツマブ ベドチン+ぺムブロリズマブの尿路上皮がん1次治療が良好な結果示す(EV-103)/アステラス

 アステラスは、Seagenと共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(ADC)であるエンホルツマブ ベドチン(一般名:パドセブ)について、第Ib/II相EV-103試験(KEYNOTE-869試験)のコホートKで良好なトップライン結果が得られたと発表した。

BA.4/BA.5に対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波ではオミクロン株BA.5が主流となり、感染拡大が急速に進んでいる。また海外では、BA.4やBA.2.12.1への置き換わりが進んでいる地域もある。東京大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターが共同で行った研究において、これらの新系統BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対し、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、国内で承認済みの抗ウイルス薬が有効性を維持していることが示唆された。

有害量のアルコール摂取、若年男性で多い:GBD2020/Lancet

 アルコール摂取に関する勧告は年齢および地域によって異なることを支持する強いエビデンスがあり、とくに若年者に向けた強力な介入が、アルコールに起因する世界的な健康損失を減少させるために必要であることが、米国・ワシントン大学のDana Bryazka氏らGBD 2020 Alcohol Collaboratorsの解析で明らかとなった。適度なアルコール摂取に関連する健康リスクについては議論が続いており、少量のアルコール摂取はいくつかの健康アウトカムのリスクを低下させるが他のリスクを増加させ、全体のリスクは地域・年齢・性別・年によって異なる疾患自然発生率に、部分的に依存することが示唆されていた。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。

コロナワクチン、2回目接種後6ヵ月で陽性率は未接種者と同等?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの有効性の低下は、COVID-19関連入院、COVID-19関連死、SARS-CoV-2検査陽性で一貫しており、年齢および感染リスクで定義したサブグループ間で差はみられないことが、英国・ブリストル大学のElsie M. F. Horne氏らによるOpenSAFELY-TPPデータベースを用いたコホート研究の結果、示された。最近のシステマティック・レビューでは、COVID-19重症化に対するワクチンの有効性が2回目接種後1~6ヵ月間で10%(95%信頼区間[CI]:6.1~15.4)低下すると推定されたが、研究デザインの違いや結果のばらつきにより結論は得られていなかった。著者は、「今回の結果は、オミクロン変異株感染や、ブースターワクチン接種が続くならばブースターワクチン接種のスケジュール決定に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年7月20日号掲載の報告。

奥が深い“NO benefit”(解説:今中和人氏)

本邦では保険収載されるほど、一酸化窒素(NO)療法は広く普及している。NOは水溶性が低く、急速に失活する生理活性物質であるため、基本コンセプトは経気道的投与と気道付近にほぼ限局した血管拡張で、もっぱら肺血圧低下と換気血流比不均衡是正に伴う呼吸・循環状態の改善を目的に使用される。本論文は開心術中、人工肺にNOを送気するトライアルで、前述の基本コンセプトと大幅に異なるが、実は2013年には小児で、2019年には成人で、この方法の有用性を示した先行研究がJTCVS誌に掲載されている。ただ、いずれも前向き無作為化試験といっても単施設で患者数がかなり少なく、共通する便益は半日後や翌日の一過性のバイオマーカー値のみだったが、他に2016年に1本、小児で臨床的な有効性を報告した200例規模の論文も存在する。

高齢乳がん患者への術前化学療法、治療目標を達成できるか

 手術可能な70歳以上の乳がん患者において、術前化学療法(NAC)によるダウンステージ率と忍容性の研究は少ない。今回、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのAustin D. Williams氏らが、NAC完遂率とダウンステージ率を50~69歳と70歳以上で比較したところ、70歳以上ではNAC完遂率が低かったが、乳房および腋窩リンパ節のダウンステージ率は50~69歳の患者と同程度に高かった。Annals of Surgical Oncology誌オンライン版2022年7月24日号に掲載。

維持期統合失調症に対するアリピプラゾール月1回製剤と経口剤との比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人の維持期統合失調症治療においてアリピプラゾールの長時間作用型注射剤(アリピプラゾール月1回製剤、AOM)が経口剤(OARI)より有益であるかを検討するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、維持期統合失調症患者に対するAOMとOARIによる治療は、どちらも有効であったが、AOMのほうがより受容性が高いことが示唆された。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2022年7月5日号の報告。  AOM、OARI、プラセボのうち2つを含む二重盲検ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。

5~11歳へのファイザーワクチン、オミクロン株への有効性/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株(B.1.1.529)流行中における5~11歳へのmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)の2回接種により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクは低下したことが、シンガポール・シンガポール大学のSharon H. X. Tan氏らによる検討で示された。2021年11月初旬に初めて確認されて以来、オミクロン変異株は多くの国で急速に拡大し、デルタ変異株(B.1.617.2)に置き換わり、優勢株となっている。これまで、小児におけるオミクロン変異株に対するワクチンの有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2022年7月20日号掲載の報告。

不眠症治療薬、長期に有効・安全なのは?/Lancet

 不眠症治療薬のエスゾピクロンとレンボレキサントはいずれも有効性のプロファイルは良好であるが、エスゾピクロンは副作用発現例数が多く、レンボレキサントの安全性は結論に至っていないこと、またdoxepin、seltorexantおよびzaleplonは忍容性が良好であるが、有効性に関するデータは乏しく確固たる結論は得られていないことなどが、英国・オックスフォード大学のFranco De Crescenzo氏らが行ったシステマティック・レビューとネットワーク・メタ解析により示された。承認されている多くの薬剤は不眠症の急性期治療に有効であるが、忍容性が低いか長期の有効性に関する情報が得られておらず、メラトニン、ラメルテオンおよび未承認薬は全体的なベネフィットは示されなかった。著者は、「これらの結果は、エビデンスに基づく臨床診療に役立つと考えられる」とまとめている。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。  研究グループは、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、PubMed、Embase、PsycINFO、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ClinicalTrials.govおよび規制当局のウェブサイトにて、2021年11月25日までに報告された不眠症治療薬の無作為化比較試験を検索し、特定の診断基準に基づいて不眠障害と診断された成人(18歳以上)患者を対象とした不眠症治療薬に関するプラセボまたは他の経口実薬単剤との比較試験について解析した。クラスター無作為化試験またはクロスオーバー試験、および二次性不眠症(精神疾患または身体的な併存疾患による不眠症、薬物またはアルコールなどの物質による不眠症)患者が含まれる試験は除外した。

大豆と認知症の関連を日本人を対象に調査~JPHC研究

 国立がん研究センターがん対策研究所の村井 詩子氏らは、日本人における大豆製品、個々の大豆食品(納豆、みそ、豆腐)、イソフラボンの摂取量とその後の認知症リスクとの関連を調査した。その結果、大豆製品の総摂取量と認知症リスク低下との関連は認められなかったが、女性(とくに60歳未満)では、納豆の摂取量と認知症リスク低下との関連が認められたことを報告した。European Journal of Nutrition誌オンライン版2022年7月5日号の報告。  男性1万8,991人、女性2万2,456人を対象に人口ベースのプロスペクティブ研究を実施した。大豆製品およびイソフラボンの摂取量を算出するため、1995年と1998年の調査(対象者の年齢:45~74歳時点)で収集した検証済み食物摂取頻度質問票のデータを参照した。認知症は、2006~16年の要介護認定情報における認知症関連の日常生活障害により定義した。大豆製品、個々の大豆食品、イソフラボンの1日当たりの摂取量を算出して五分位で分類し、対象を5群に分けた。認知症予防に対する多変量ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。

新規抗体薬物複合体DS-7300、小細胞肺がんを対象とした第II相試験開始/第一三共

 第一三共は2022年7月21日、DS-7300(B7-H3を標的とした抗体薬物複合体[ADC])について、前治療歴のある進展型小細胞肺がん患者を対象とした第II相臨床試験の最初の患者への投与を開始したと発表。  同試験は、化学療法による前治療歴のある進展型小細胞肺がん患者を対象に、同剤の有効性と安全性を評価するグローバル第II相臨床試験である。 主要評価項目は客観的奏効率で、副次評価項目には無増悪生存期間、奏効期間、全生存期間、病勢コントロール率、薬物動態、安全性などで、アジア、欧州および北米で約80例の患者を登録する予定だという。

原因不明の小児急性肝炎、英国44例の臨床像/NEJM

 2022年1月~3月に、英国・スコットランドの中部地域で小児の原因不明の急性肝炎が10例報告され、世界保健機関(WHO)は4月15日、Disease Outbreak Newsでこれに言及した。WHOはさらに、4月5日~5月26日までに33ヵ国で診断された同疾患の可能性例が少なくとも650例存在するとし、このうち222例(34.2%)は英国の症例であった。同国・Birmingham Women’s and Children’s NHS Foundation TrustのChayarani Kelgeri氏らは、今回、同施設に紹介された原因不明の急性肝炎44例の臨床像、疾患の経過、初期のアウトカムについて報告した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年7月13日号に掲載された。

コロナ・インフルワクチン同時接種可、オミクロン株対応ワクチン秋以降に導入へ/厚労省

 これまで新型コロナワクチンの接種は他のワクチン接種と13日以上の間隔を空けて実施することとされていたが、知見等の蓄積をふまえ、インフルエンザワクチンに関しては同時接種も可能とすることが、7月22日に開催された第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で了承された。同会ではそのほか、オミクロン株対応ワクチンの接種や4回目接種の対象者拡大等についても議論された。 <同時接種の有効性> ファイザー社・アストラゼネカ社:2回目接種において、ファイザー社またはアストラゼネカ社ワクチン単独接種と比べ、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価は有意差がなかった。さらにファイザー社ワクチンとの同時接種においてインフルエンザの一部の株に対するHI抗体価の上昇がみられた。

ICI耐性の非小細胞肺がんに対するラムシルマブ+ペムブロリズマブの2次治療(Lung-MAP S1800A)/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)耐性となった進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ラムシルマブとペムブロリズマブの併用による2次治療が有望な成績を示した。  進行NSCLCにおけるICI耐性後の2次治療は化学療法だけであり、今もなお大きなアンメットニーズが残っている。一方、ICIとVEGF阻害薬の併用は、複数のがん種で有望な結果が得られている。ドライバー変異のないICI耐性NSCLCの2次治療に、ICIであるペムブロリズマブとVEGF阻害薬であるラムシルマブの併用を化学療法と比較したLung-MAP S1800Aが行われた。結果は米国臨床がん学会年次集会(ASCO2022)で発表され、同時にJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。

うつ病に対するACT介入~メタ解析

 急性期うつ病の治療において、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の有効性が報告されている。しかし、ACTを個別、グループ、インターネットで効果的に提供する方法やこれらを組み合わせた提供方法については、よくわかっていない。中国・北京大学のYue Sun氏らは、ACTの最も効果的な提供方法を検討するため、ネットワークメタ解析を実施した。その結果、抑うつ症状に対するACT介入は、個別、グループ、インターネットのいずれにおいても効果的であることが示唆された。著者らは、ACTをさまざまな方法で提供することにより、多様な患者集団に対してACTを実践、普及することが容易になると報告している。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年6月25日号の報告。

急性期脳梗塞、血栓回収前の血栓溶解療法は必要か/Lancet

 発症から4.5時間以内の脳主幹動脈閉塞に起因する急性期虚血性脳卒中の治療において、直接的な機械的血栓回収術は経静脈的血栓溶解療法を施行後に機械的血栓回収術を行う標準治療(ブリッジング療法)と比較して、有効性(機能的自立)に関して非劣性は達成されず、症候性脳出血や死亡のリスクには差がないことが、オーストラリア・メルボルン大学のPeter J. Mitchell氏らが実施した「DIRECT-SAFE試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2022年7月9日号で報告された。