日本語でわかる最新の海外医学論文|page:244

コロナ感染2年後、18%に罹患後症状/BMJ

 感染前にワクチン未接種であった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者の約18%に、感染後2年まで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状が認められ、未感染者と比較して感染者には症状の過剰リスクがあることが、スイス・チューリッヒ大学のTala Ballouz氏らが実施した「Zurich SARS-CoV-2 Cohort研究」のデータ解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月31日号で報告された。

週1回の基礎インスリンにより糖尿病治療は新時代へ(解説:小川大輔氏)

1型糖尿病のみならず、2型糖尿病でも経口血糖降下薬で血糖コントロール不良の場合はインスリン療法を行う必要がある。そして生理的なインスリン分泌を再現するために、基礎インスリンとして持効型インスリンを1日1回、追加インスリンとして超速効型インスリンを1日3回組み合わせる基礎・追加インスリン(Basal-Bolus)療法が用いられる。今回Basal-Bolus療法を行っている2型糖尿病患者を対象に、1日1回の持効型インスリンと週1回の持効型インスリンを比較したONWARDS 4試験の結果がLancet誌に発表された。

眼球運動と認知機能を用いた統合失調症診断の有用性

 統合失調症患者では、眼球運動異常や認知機能低下がみられる。奈良県立医科大学の岡崎 康輔氏らは、統合失調症患者と健康対照者における眼球運動および認知機能に関するデータを用いて、精神科医療における実践的なデジタルヘルスアプリケーションに流用可能な臨床診断マーカーの開発を目指して、本研究を実施した。その結果、眼球運動と認知機能データの7つのペアは、統合失調症患者を鑑別するうえで、臨床診断に支援につながり、統合失調症の診断の一貫性、早期介入、共通意思決定を促進するために、これらを利用したポータブルディバイスでも機能する客観的な補助診断方法の開発に役立つ可能性があることを報告した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年4月8日号の報告。

完全切除EGFR陽性NSCLC、術後補助療法の効果不良因子(IMPACT-TR)/ASCO2023

 完全切除を達成したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による術後補助療法の効果や、再発を予測するバイオマーカーは、十分に検討されていないのが現状である。そこで、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の完全切除後の術後補助療法として、ゲフィチニブとシスプラチン+ビノレルビン(cis/vin)を比較した、国内第III相試験「IMPACT試験」の対象患者においてバイオマーカーが検討された。その結果、ゲフィチニブに対してはNOTCH1遺伝子変異が、cis/vinに対してはCREBBP遺伝子変異が効果不良を予測する因子となることが示唆された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が本結果について発表した。

HR+/HER2-進行乳がん、CDK4/6阻害薬は1次治療か2次治療か(SONIA)/ASCO2023

 HR+/HER2-進行乳がんに対する1次治療でのCDK4/6阻害薬使用は、2次治療での使用と比較して、無増悪生存期間(PFS)の有意な減少や臨床的に意味のある有用性が認められなかったことが、オランダで全国的に実施された医師主導の第III相SONIA試験で示された。また、CDK4/6阻害薬を1次治療で使用すると使用期間が16.5ヵ月長くなり、毒性および治療費用が増加したという。オランダ・The Netherlands Cancer InstituteのGabe S. Sonke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

HR+進行乳がん、capivasertib+フルベストラントが有効/NEJM

 サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬併用の有無にかかわらず、アロマターゼ阻害薬の治療中または治療後に病勢進行したホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者において、AKT阻害薬capivasertibとフルベストラントの併用療法は、フルベストラント単独療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、英国・Royal Marsden HospitalのNicholas C. Turner氏らによる第III相無作為化二重盲検比較試験「CAPItello-291試験」で示された。AKT経路の活性化は内分泌療法の抵抗性に関与することが知られているが、HR+進行乳がんに対するフルベストラントへのcapivasertib上乗せの有効性と安全性に関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月1日号掲載の報告。

コロナ罹患後症状、スコアに基づく定義を提案/JAMA

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染後に生じる持続的であり再発を繰り返す、あるいは新規の症状は、罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)と呼ばれ、long COVIDとしても知られている。米国・マサチューセッツ総合病院のTanayott Thaweethai氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環として、RECOVER成人コホート9,764例のデータを解析し、SARS-CoV-2感染者では非感染者と比較して37症状が感染後6ヵ月以上の時点で多く認められ、このうち12症状の症状スコアに基づき、PASCを定義する予備的ルールを開発した。著者は、「PASCの実用的な定義のためには、他の臨床的特徴をさらに組み込み反復的な改良が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2023年5月25日号掲載の報告。

γ-GTPが高い、アルコール性肝障害の可能性は?

 大塚製薬主催のプレスセミナー(5月22日開催)において、吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授)が「肝機能異常を指摘されたときの対処法」について講演し、アルコール性肝障害を疑うポイントやかかりつけ患者に対する対応法ついて解説を行った。  肝機能障害は“人間ドック受診者の3人に1人が指摘を受ける項目”と言われており、臓器治療としては断酒治療が最も有効だが、ハードルが高い患者さんには「断酒をいきなり強く求めると治療が続かないことが多く、その場合まずは減酒から始める」と吉治氏は話した。医学界では各学会が「熊本宣言 HbA1c7%未満」「stop-CKD eGFR60未満」などのスローガンを掲げて市民に対して疾患啓発を行っている一方で、肝機能については提言が存在しなかった。そこで、日本肝臓学会は6月15、16日に開催される『第59回日本肝臓学会総会』にて“Stop CLD(Chronic liver disease) ALT over 30U/L”(ALTが30を超えたらかかりつけ医を受診しましょう)を『奈良宣言』として掲げることにしたという。この数値の根拠ついて「この値は特定健診基準や日本人間ドック協会のALTの保健指導判定値であり、日本のみならず脂肪肝がとくに問題になっている米国でも医師への相談基準」とコメントした。

糖尿病患者の眼科受診率は半数以下/国立国際医療研究センター研究所

 糖尿病で重大な合併症に「糖尿病性網膜症」がある。治療の進歩もあり、減少しているとはいえ、本症の予防には定期的なスクリーニングが重要であり、糖尿病を主に診療する内科医と眼科医の間の連携はうまく機能しているのだろうか。この疑問に対し、井花 庸子氏(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター)らの研究グループは、ナショナルデータベースを用いたレトロスペクティブ横断コホート研究「わが国の糖尿病患者における糖尿病網膜症スクリーニングのための内科と眼科の受診間の患者紹介フロー」を行い、その結果を報告した。Journal of Diabetes Investigation誌5月2日オンライン掲載。

薬物療法抵抗性ではないStageIV乳がんの原発巣切除、OS改善せず(JCOG1017)/ASCO2023

 薬物療法抵抗性ではないde novo stageIV乳がんに対して、薬物療法単独に比べて、原発巣切除により全生存期間(OS)を改善するかどうかを検討したわが国の第III相試験(JCOG1017)の結果、OSに有意差が認められなかった。一方、原発巣切除群は、局所コントロールが良好であり、また閉経前や単臓器転移ではOSが改善される可能性が示された。岡山大学の枝園 忠彦氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。  原発巣切除がde novo StageIV乳がんの生存期間を改善する可能性については、Tata Memorial Hospital、MF07-01試験、ABCSG28試験、ECOG2108試験といった前向き研究で検討されているが、いまだ議論の余地がある。JCOG1017試験では、de novo StageIV乳がんにおいて臨床的サブタイプに基づき、初期薬物療法後の原発巣切除の有無による予後を比較した。

切除不能肝細胞がんの1次治療、STRIDEレジメンでOS延長/AZ

 2023年4月4日(木)にアストラゼネカ株式会社主催のプレスセミナーが開催され、肝細胞がん治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる可能性について、千葉大学大学院医学研究院消化器内科学 教授の加藤 直也氏が語った。加藤氏は、「肝細胞がんは肝予備能を維持し、悪化させないことが大切。デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と2023年3月に薬価基準収載されたトレメリムマブ(製品名:イジュド)を併用するSTRIDEレジメンは肝臓に負担をかけにくく、理にかなっているのではないか」と述べた。外科的な治療が不可能なケースの多い肝細胞がんだが、薬物治療の新たな局面を迎え、長期生存率の向上が期待できそうだ。

NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するペムブロリズマブの術前・後補助療法の無イベント生存期間(EFS)の成績が明らかにされた。  米国・スタンフォード大学のHeather Waklee氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。KEYNOTE-671試験は、切除可能NSCLC患者を対象とした、無作為化二重盲検第III相試験。免疫ポイント阻害薬の術前・後補助療法において、同試験は、デュルバルマブのAEGEAN試験に続き、triplimabのNEOTORCH試験と共に有意な改善を示したことになる。

向精神薬の頓服使用が統合失調症入院患者の転帰に及ぼす影響

 統合失調症治療では、興奮、急性精神症状、不眠、不安などの症状に対し、一般的に頓服薬が用いられる。しかし、頓服薬使用を裏付ける質の高いエビデンスは不足しており、これら薬剤の使用は、臨床経験や習慣に基づいて行われている。北里大学の姜 善貴氏らは、向精神薬の頓服使用の実態および患者の転帰に対する影響を評価するため、本研究を行った。その結果、向精神薬の頓服使用は、統合失調症入院患者の入院期間の延長、抗精神病薬の多剤併用、再入院率の増加と関連しており、精神症状のコントロールには、大量の向精神薬の頓服使用を避け、ルーチン処方で安定を目指す必要があることを報告した。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2023年5月30日号の報告。

タイプ2炎症を有するCOPDにデュピルマブが有効か/NEJM

 血中好酸球数の上昇で示唆されるタイプ2炎症を有する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、抗インターロイキン(IL)-4/13受容体抗体デュピルマブ(本邦ではCOPDは未適応)を投与された患者はプラセボ投与患者と比べて、増悪が少なく、肺機能と生活の質(QOL)が改善され、呼吸器症状の重症度も低下したことが、米国・アラバマ大学のSurya P. Bhatt氏らが行った、第III相無作為化二重盲検試験「BOREAS試験」の結果において示された。NEJM誌オンライン版2023年5月21日号掲載の報告。

エムポックス、ワクチン2回接種で優れた予防効果/NEJM

 全米の電子健康記録(EHR)データを用いた症例対照試験の結果、エムポックス(日本では2023年5月26日に感染症法上の名称を「サル痘」から「エムポックス」に変更)患者は対照患者よりも、天然痘/エムポックスワクチン(modified vaccinia Ankara[MVA]ワクチン、商品名:JYNNEOS、Bavarian Nordic)の1~2回接種を受けていないことが示唆された。米国疾病予防管理センター(CDC)のNicholas P. Deputy氏らが報告した。米国では2023年3月1日時点でエムポックスが3万例超報告され、とくにトランスジェンダー、ゲイ、バイセクシャル、男性間性交渉者で流行が認められている。JYNNEOSは、2019年にFDAが承認し(1回0.5mL皮下投与)、2022年8月9日には緊急使用(1回0.1mL皮内投与)が認められた。しかし、リアルワールドでの有効性データはいずれの投与についても限定的であった。NEJM誌オンライン版2023年5月18日号掲載の報告。

ホジキンリンパ腫初回治療、ニボルマブ+AVD療法がPFSを改善(SWOG S1826)/ASCO2023

 成人の古典的ホジキンリンパ腫の初回治療は、長らくABVD(ブレオマイシン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)療法が標準治療であったが、2022年にA+AVD(ブレンツキシマブ ベドチン+ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)療法がABVD療法と比較して全生存期間(OS)を延長したことが報告された。しかし、若い患者を中心に、長期間続く治療による毒性の問題が依然として残っている。

HER2+早期乳がん、化学療法なしのde-escalationで3年iDFS良好(PHERGain)/ASCO2023

 HER2+早期乳がん患者を対象とした第II相PHERGain試験において、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(PH)併用療法の3年無浸潤疾患生存(iDFS)率は、ドセタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(TCHP)併用療法と同等で、とくに18F-FDG PET/CT(以下「PET」)を指標とした反応例かつ病理学的完全奏効(pCR)例(一度も化学療法を行わない群)では98.8%と最も高かったことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が発表した。

局所進行直腸がん、術前FOLFOX単独は術前化学放射線療法に非劣性(PROSPECT)/ASCO2023

 局所進行直腸がんの標準治療は、術前の骨盤放射線照射とフッ化ピリミジン系抗がん剤による化学療法(化学放射線療法)である。PROSPECT(Alliance N1048)試験は、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンを用いた術前化学療法(FOLFOX)が術前化学放射線療法の代わりに使用できるかを検討した第III相試験。本試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションとして米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのDeborah Schrag氏が発表し、同日にNEJM誌に掲載された。

母親の認知症歴が子供の認知症リスクに影響

 両親の認知症歴は、子供の認知症リスクを上昇させるともいわれているが、その結果に一貫性は見られていない。韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのDae Jong Oh氏らは、両親の認知症歴と子供の認知症リスクに関して、認知症サブタイプおよび性別の影響を調査するため、本検討を行った。その結果、母親の認知症歴は、男女ともに子供の認知症およびアルツハイマー病(AD)リスクとの関連が認められた。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年5月10日号の報告。  8ヵ国、9件の人口ベースコホート研究より抽出された高齢者1万7,194人のデータを用いて、横断的研究を実施した。対象研究では、認知症の診断のため、対面診断、身体検査、神経学的検査、神経心理学的評価が実施された。父親および母親の認知症歴と子供の認知症、認知症サブタイプのリスクとの関連を評価した。

心房細動を伴う脳梗塞、DOAC投与は早期か後期か/NEJM

 急性脳梗塞を発症した心房細動患者における直接経口抗凝固薬(DOAC)の、至適な投与開始時期は明らかにされていない。スイス・バーゼル大学のUrs Fischer氏らは、「ELAN試験」において、DOACの早期投与と後期投与を比較した。その結果、両群のアウトカムの発生に大きな差はなかったものの、早期に投与を開始しても過度なリスクの増加はないとことが示唆された。NEJM誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。  ELAN試験は、日本を含む15ヵ国103施設が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2017年11月~2022年9月の期間に患者の登録が行われた(スイス国立科学財団などの助成を受けた)。