日本語でわかる最新の海外医学論文|page:246

統合失調症に対する高用量ルラシドンの有効性

 福島県立医科大学の三浦 至氏らは、急性増悪期の統合失調症患者を対象に、ルラシドン80mg/日の有効性および安全性を検討した。その結果、ルラシドン40mg/日で治療した急性期統合失調症患者において、用量を80mg/日に増量した場合でも忍容性は良好であった。また、ルラシドン80mg/日への増量では、40mg/日を継続した場合と比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)サブスケールスコアのより大きな改善が認められた。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月9日号の報告。

超過死亡1,483万人、コロナ死の約3倍/Nature

 2020〜21年における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行による超過死亡数は、全世界で約1,483万人にのぼることが、世界保健機構(WHO)のWilliam Msemburi氏らのグループの推計で明らかになった。この推計値は、同期間中に報告されたCOVID-19を原因とした死亡(COVID-19死)件数の約3倍に相当する。Nature誌オンライン版12月14日掲載の報告。  2021年12月31日現在、WHOに報告されたCOVID-19の確定数は、全世界で2億8,700万人を超え、そのうち約542万人が死亡している。しかし、検査の利用しやすさ、診断能力、COVID-19死の認定方法に一貫性がないといった要因により、COVID-19が世界人口に及ぼす影響の評価には困難が伴う。そこでMsemburi氏らは、人命損失について世界規模で定量化するため、超過死亡者数を推定した。超過死亡数にはCOVID-19死の総数、必要な医療の中断などの間接的な影響による死亡の両方が含まれる。

コロナ感染後の手術、間隔が長いほど術後の心血管疾患リスク減

 SARS-CoV-2感染から手術までの間隔が長くなるほど、術後の主要心血管イベント複合転帰のリスクが低くなることを、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJohn M. Bryant氏らが単一施設の後ろ向きコホート研究によって明らかにした。JAMA Netw Open誌2022年12月14日号掲載の報告。  これまで、複数の研究によってSARS-CoV-2感染と手術後の死亡率増加の関連が報告されているが、手術までの期間と死亡率の関連性についてはまだ不十分であった。そこで研究グループは、SARS-CoV-2感染から手術までの期間が短いほど、術後の心血管イベントの発生率が上がると仮説を立て、手術後30日以内の心血管イベントリスクを評価することにした。

CAR-T liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療に承認/BMS

ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2022年12月20日、CD19を標的とするCAR-T細胞療法リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel、製品名:ブレヤンジ)について、自家造血幹細胞移植への適応の有無にかかわらず、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の2次治療として、再生医療等製品製造販売承認事項一部変更承認を取得した。  今回の承認は、自家造血幹細胞移植適応患者を対象とした国際共同第III相試験(JCAR017-BCM-003試験)、自家造血幹細胞移植非適応患者を対象とした海外第II相試験(017006試験)および国際共同第II相試験(JCAR017-BCM-001試験)コホート2を含む、1次治療後の再発・難治性のアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者を対象とした臨床試験の成績に基づいている。

二重抗体薬glofitamab、再発難治DLBCLの39%が完全寛解/NEJM

 CD20/CD3二重特異性モノクローナル抗体のglofitamabは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に有効性を示したものの、患者の半数以上にGrade3以上の有害事象が発現したことが、オーストラリア・メルボルン大学のMichael J. Dickinson氏らによる第II相試験で示された。DLBCLの標準的な1次治療はR-CHOP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone)であるが、同患者の35~40%は再発/難治性で、その予後は不良であった。NEJM誌2022年12月15日号掲載の報告。  研究グループは、2ライン以上の治療歴のある18歳以上の再発/難治性DLBCL患者を登録し、サイトカイン放出症候群軽減のためオビヌツズマブ(1,000mg)による前治療後、glofitamabを1サイクルの8日目に2.5mg、15日目に10mg、2~12サイクルの1日目に30mgを投与した(1サイクル21日間)。

マインドフルネス・運動は本当に認知機能に有効?/JAMA

 主観的な認知機能低下を自覚する高齢者において、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)、運動またはその併用はいずれも、エピソード記憶ならびに遂行機能を改善しなかった。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、米国の2施設(ワシントン大学セントルイス校、カリフォルニア大学サンディエゴ校)で実施した2×2要因無作為化臨床試験「Mindfulness, Education, and Exercise(MEDEX)試験」の結果を報告した。エピソード記憶と遂行機能は、加齢とともに低下する認知機能の本質的な側面であり、この低下は生活習慣への介入で改善する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の知見は、主観的な認知機能低下を自覚する高齢者の認知機能改善のためにこれらの介入を行うことを支持しない」とまとめている。JAMA誌2022年12月13日号掲載の報告。

不眠症に対する認知行動療法アプリの有効性

 サスメド株式会社の渡邉 陽介氏らは、同社が開発した不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)のスマートフォン用アプリについて、有効性および安全性を検証するため国内第III相シャム対照多施設共同動的割り付けランダム化二重盲検比較試験を実施した。その結果、不眠症治療に対するスマートフォンベースのCBT-Iシステムの有効性が確認された。Sleep誌オンライン版2022年11月10日号の報告。  不眠症患者175例を、スマートフォンベースのCBT-Iアプリ使用群(アクティブ群、87例)と、本アプリから治療アルゴリズムなどの治療の機能を除いたアプリを使用する群(シャム群、88例)にランダムに割り付け、CBT-Iアプリの有効性および安全性を評価した。主要評価項目は、ベースラインから治療8週間後のアテネ不眠尺度(AIS)の変化量とした。

新型コロナは季節性インフルと同等となるか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第110回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月14日に開催された。その中で「新型コロナウイルス感染症の特徴と中・長期的リスクの考え方」が、押谷 仁氏(東北大学大学院微生物学講座 教授)らのグループより報告された。  本レポートは、「I.リスク評価の基本的考え方」「II. COVID-19 のリスク評価」「III.COVID-19 パンデミックは季節性インフルエンザのような感染症になるのか」の3つに分かれて報告されている。

12~20歳のmRNAコロナワクチン接種後の心筋炎をメタ解析、男性が9割

 12~20歳の若年者へのCOVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎に関連する臨床的特徴および早期転帰を評価するため、米国The Abigail Wexner Research and Heart Center、 Nationwide Children’s Hospitalの安原 潤氏ら日米研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種後の心筋炎発生率は男性のほうが女性よりも高く、15.6%の患者に左室収縮障害があったが、重度の左室収縮障害(LVEF<35%)は1.3%にとどまり、若年者のワクチン関連心筋炎の早期転帰がおおむね良好であることが明らかとなった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年12月5日号に掲載の報告。

ニボルマブのNSCLCネオアジュバント、日本人でも有効(CheckMate 816)/日本肺癌学会

 ニボルマブの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前補助療法(ネオアジュバント)は、日本人でもグローバルと同様の良好な結果を示した。  この結果はニボルマブのNSCLCネオアジュバントの第III相試験CheckMate 816の日本人サブセットの解析によるもので、第63回日本肺癌学会学術集会で近畿大学の光冨 徹哉氏が発表した。

脳腫瘍の治療に人種格差が存在か/Lancet

 米国で原発性脳腫瘍患者の人種と、外科医による手術推奨の傾向について調べたところ、黒人患者に対しては、対白人患者に比べ、外科医が手術をしない選択肢を推奨する割合が高いことが示された。米国・ミネソタ大学のJohn T. Butterfield氏らが、レジストリベースのコホート試験で明らかにし、Lancet誌2022年12月10日号で発表した。著者は、「米国では原発性脳腫瘍患者への手術推奨において人種格差が存在する。その格差は、臨床的、人口統計学的、特定の社会経済的要因とは無関係なものであり、さらなる研究で、こうした偏見の原因を明らかにし、手術における平等性を強化する必要がある」とまとめている。

2種利尿薬、大規模試験で心血管転帰を直接比較/NEJM

 実臨床での一般的用量でサイアザイド系利尿薬のクロルタリドン(国内販売中止)とヒドロクロロチアジドを比較した大規模プラグマティック試験において、クロルタリドン投与を受けた患者はヒドロクロロチアジド投与を受けた患者と比べて、主要心血管アウトカムのイベントまたは非がん関連死の発生は低減しなかった。米国・ミネソタ大学のAreef Ishani氏らが、1万3,523例を対象に行った無作為化試験の結果を報告した。ガイドラインではクロルタリドンが1次治療の降圧薬として推奨されているが、実際の処方率はヒドロクロロチアジドが圧倒的に高い(米国メディケアの報告では150万例vs.1,150万例)。研究グループは、こうした乖離は、初期の試験ではクロルタリドンがヒドロクロロチアジドよりも優れることが示されていたが、最近の試験で、両者の効果は同程度であること、クロルタリドンの有害事象リスク増大との関連が示唆されたことと関係しているのではとして、リアルワールドにおける有効性の評価を行った。NEJM誌オンライン版2022年12月14日号掲載の報告。

認知症の根本治療薬により認知症の人は減るか?(解説:岡村毅氏)

人類史に残る論文ではないか。人類はとうとう認知症の進行を遅らせるエビデンスを得たようだ。この領域は日本のエーザイがとてつもない情熱をもって切り開いてきた。またこのレカネバブ論文のラストオーサー(日本人)は、さまざまな不条理にも負けることなく一流の研究を進めてきた。最大限の敬意を表したい。その上で、認知症を専門とする精神科医として、この偉大な一歩を解説しよう。神経学ではなくあくまで精神医学の視点であることを先に言っておく。

コロナ重症化率と致死率、どの程度低下したのか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けについて議論が進んでいる。その判断には、病原性(重篤性)と感染力、それらによる国民への影響を考慮する必要があるが、病原性(重篤性)の参考となる重症化率と致死率について、12月21日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告された。重症化率・致死率ともに昨年夏から大きく低下しており、病原性が低いとされるオミクロン株が流行株の主体となっていること、多くの人が自然感染あるいはワクチンによる免疫を獲得したことが要因と考えられている。

再発・難治ATLLにバレメトスタット発売/第一三共

 第一三共株は、バレメトスタット(製品名:エザルミア)について、2022年12月20日、国内で新発売したと発表。  同剤は、再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)患者を対象とした国内第II相臨床試験の結果に基づき、2021年11月に希少疾病用医薬品の指定を受け、2022年9月に「再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫」を適応として国内製造販売承認を取得した。

膿疱性乾癬の現状と、新しい治療薬スぺビゴへの期待

 2022年12月8日、日本ベーリンガーインゲルハイムは「膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)のアンメットメディカルニーズと新しい治療への期待」をテーマにメディアセミナーを開催した。同セミナーで帝京大学医学部皮膚科学講座の多田 弥生氏は、GPPの現状と同年9月に承認された抗IL-36Rモノクローナル抗体「スペビゴ点滴静注450mg」(一般名:スペソリマブ[遺伝子組換え])の国際共同第II相二重盲検比較試験(Effisayil 1試験)について講演を行った。

PDQ-D-5による認知機能評価、日本人うつ病患者での有用性を検証

 国立精神・神経医療研究センターの住吉 太幹氏らは、「日本での大うつ病性障害関連の機能的アウトカムに関する前向き観察研究(PERFORM-J)」のデータを用いて、日本人うつ病患者における主観的認知機能を評価するための簡便な指標であるPDQ-D-5(5項目の評価尺度)の有用性を検証した。その結果、日本人うつ病患者に対するPDQ-D-5による評価は、PDQ-D-20(20項目の評価尺度)による評価を適切に反映していることが確認され、簡易版のPDQ-D-5にも、機能的アウトカム、うつ病重症度、QOLのいくつかの尺度との関連が認められた。このことから著者らは、PDQ-D-5は、認知機能に関する主観的な経験を評価するための実行可能かつ臨床的に信頼性のある尺度であり、時間的制限のある診療・相談に適用可能であるとしている。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月2日号の報告。

中等症~重症アトピー性皮膚炎、抗OX40抗体rocatinlimabの効果/Lancet

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)の成人患者に対し、開発中のヒト型抗OX40モノクローナル抗体rocatinlimabは、プラセボと比較して症状スコアの有意な改善を示し、投与終了後もほとんどの患者で改善が維持された。忍容性は良好であった。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のEmma Guttman-Yassky氏らが国際多施設第IIb相二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2022年12月9日号掲載の報告。

周産期アウトカムに人種・民族性は影響するか/Lancet

 世界の20の高所得国と上位中所得国の、周産期アウトカムに関する人種および民族性の影響について解析した結果、母体特性を調整後、白人女性の産児との比較において、十分なサービスを受けていないグループで黒人女性の産児の周産期アウトカムが、評価した項目すべてで不良であることが示された。他のグループ(南アジア系、ヒスパニック系、その他)では、アウトカム項目によりリスクに差異があった。また、周産期有害アウトカムへの人種・民族性の影響について、地域差は認められなかった。英国・バーミンガム大学のJameela Sheikh氏らInternational Prediction of Pregnancy Complications(IPPIC)Collaborative Networkが、妊娠219万8,655例のメタ解析を行い、Lancet誌2022年12月10日号で報告した。これまで、妊娠アウトカムへの人種・民族性の影響に関するエビデンスは、特定の国および医療制度内で行われた個々の研究に限定されていた。

第Xa因子阻害剤による出血時の迅速な薬剤特定システムを構築/AZ

 アストラゼネカとSmart119は、12月14日付のプレスリリースで、医療機関と救急隊における第Xa因子阻害剤服用中の出血患者を対象とした情報共有システムを構築し、病院到着時に患者の服用薬剤を特定することで、迅速かつ適切な処置を目指すと発表した。  直接作用型第Xa因子阻害剤を含む抗凝固薬は、非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞予防や静脈血栓塞栓症の治療・再発予防を目的として広く使用されている。その一方で、服用中は通常より出血が起こりやすい状態となるため、事故や転倒などのきっかけで、大出血につながるリスクが高くなる。抗凝固薬服用中の患者において大出血が発現した際、抗凝固薬の中和剤を止血処置の一環として投与することで、出血の増大を抑えられる可能性がある。中和剤を適切に使用するためには、患者の服薬情報の把握が必要となるが、現状、救急隊の病院到着時に約30%の患者で、服用薬剤が特定できないと報告されている。