コロナ罹患後症状、スコアに基づく定義を提案/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/09

 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染後に生じる持続的であり再発を繰り返す、あるいは新規の症状は、罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)と呼ばれ、long COVIDとしても知られている。米国・マサチューセッツ総合病院のTanayott Thaweethai氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環として、RECOVER成人コホート9,764例のデータを解析し、SARS-CoV-2感染者では非感染者と比較して37症状が感染後6ヵ月以上の時点で多く認められ、このうち12症状の症状スコアに基づき、PASCを定義する予備的ルールを開発した。著者は、「PASCの実用的な定義のためには、他の臨床的特徴をさらに組み込み反復的な改良が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2023年5月25日号掲載の報告。

NHIによるRECOVER成人コホートのデータを解析

 研究グループは、米国の33州とワシントンDC、ならびにプエルトリコの85施設(病院、保健所、地域団体)において、18歳以上のSARS-CoV-2感染者および非感染者を登録し(RECOVER成人コホート)、前向き観察コホート研究を行った。登録は現在も行われており、今回の解析は2023年4月10日以前に登録された参加者を解析コホートとした。

 感染者は、COVID-19の疑い、可能性および確定のWHO基準を満たしていることとし、COVID-19発症日またはSARS-CoV-2検査陽性日を指標日とした。また、非感染者は、SARS-CoV-2感染歴がなく、過去のSARS-CoV-2検査が陰性であった日を指標日とした。参加者は受診および遠隔により症状調査を受け、指標日から6ヵ月以上後の調査を完了している参加者を解析対象とした。

 主要アウトカムは、参加者が報告した44の症状の有無で、これらの症状を用いてPASCを特定する予備的定義を作成し、PASCの頻度について解析した。

PASCスコアに寄与する12症状を特定

 解析対象は、適格基準を満たした9,764例(感染者8,646例、非感染者1,118例)。対象集団の背景は、女性71%、ヒスパニック/ラテン系16%、非ヒスパニック系黒人15%、年齢中央値47歳(四分位範囲[IQR]:35~60)であった。

 全体において、44症状のうち、37症状が頻度2.5%以上かつ補正後オッズ比1.5以上(感染者vs.非感染者)であった。頻度(重症度閾値を使用)の絶対差が15%以上の症状は、労作後倦怠感(PEM)、疲労、浮動性めまい、ブレインフォグおよび消化管症状であった。

 37の各症状に推定係数に基づいてスコアを割り付け、PASCを特定するためのスコア閾値を求めた結果、12の症状(労作後倦怠感、疲労、ブレインフォグ、浮動性めまい、消化管症状、動悸、性的欲求・性機能の変化、嗅覚・味覚の喪失または変化、口渇、慢性咳嗽、胸痛、異常行動)が特定され、各症状のスコアは1~8で、PASCスコアの閾値は合計12点以上であった。

 2021年12月1日以降(オミクロン株流行期)に初感染し、感染後30日以内に登録された参加者2,231例のうち、6ヵ月時点でのPASC陽性者は224例(10%、95%信頼区間:8.8~11)であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 寺田 教彦( てらだ のりひこ ) 氏

筑波大学 医学医療系 臨床医学域 感染症内科学 講師

筑波メディカルセンター病院臨床検査医学科/感染症内科