日本語でわかる最新の海外医学論文|page:233

医療用医薬品の患者向け広告が米国では問題になっている(解説:折笠秀樹氏)

品物を販売する企業には販売促進費(広告宣伝費)があります。いくら良い品物でも宣伝しないと広く使われないためでしょう。販売促進費(販促費と略す)の総売上に対する割合は、分野によってずいぶん異なります。自動車・教育・外食産業などの数パーセント程度に対して、医薬品は5~15%程度と少し高いようです。最も高いとされるのが化粧品のようです。医療用医薬品は医師の処方箋が必要な医薬品で、それが主の企業では5~10%程度のようですが、一般用医薬品が主の企業では10~15%と少し高めです。一般用医薬品はドラッグストアなどで気軽に買えるということで、広告宣伝にかなり力を入れているのでしょう。処方箋なしで買える医薬品はOTC医薬品と呼ばれ、薬剤師の関与が必要なものと必要ないものに分かれています。後者がいわゆる一般用医薬品です。従来は大衆医薬品と呼んでいたものです。

5~11歳へのファイザーBA.4/5対応2価ワクチン承認/厚生労働省

 厚生労働省は2月28日、5~11歳を対象としたファイザーの新型コロナウイルスmRNAワクチン「販売名:コミナティ筋注5~11歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」について、追加接種(追加免疫)として承認したことを発表した。本剤は、5~11歳の初回免疫に使用することはできない。  本剤の追加免疫の用法および用量は、同社製の5~11歳用1価ワクチンと変わらず、添付文書に以下のように記されている。 6. 用法及び用量 本剤を日局生理食塩液1.3mLにて希釈する。 追加免疫として、1回0.2mLを筋肉内に接種する。

平均血糖値とHbA1c値の乖離の理由が明らかに/京都医療センターほか

 平均血糖値が同じ180mg/dLであってもHbA1cが7.0%台の人もいれば、9.0%近くの人もいると、A1c-Derived Average Glucose(ADAG)研究で報告されている。これらの現象はヘモグロビン糖化に個人差があるのではないかと推察されている。2型糖尿病ではヘモグロビン糖化インデックス(HGI)が高い人は、糖尿病合併症、心血管疾患、死亡リスクが増大すると報告されている。しかし、日本人1型糖尿病での報告はなかった。

ダロルタミド、転移を有する前立腺がんに適応追加/バイエル

 バイエル薬品は2023年2月24日、経口アンドロゲン受容体阻害薬(ARi)であるダロルタミド(商品名:ニュベクオ)について、遠隔転移を有する前立腺がんへの適応追加承認を取得した。  今回の承認は、遠隔転移を有する前立腺がん患者を対象とした第III相ARASENS試験の良好な結果に基づくもの。

双極性障害、うつ病、自殺企図へのT. gondiiの影響

 双極性障害、うつ病、自殺企図における寄生性原生生物トキソプラズマ(T. gondii)の潜伏感染の影響については長期間にわたり議論されているが、T. gondiiが脳や行動を操作する方法に関してエビデンスは不足しており、この推測は不明のままである。トルコ・イスタンブール大学のOmer Faruk Demirel氏らは、自殺企図を有する/有さない双極性障害およびうつ病患者へのT. gondii感染の影響を検討するため本研究を実施した。その結果、T. gondii潜伏感染は、双極性障害および自殺企図の原因と関連している可能性が示唆された。Postgraduate Medicine誌オンライン版2023年2月6日号の報告。

介護施設入所のリスク因子は?

 高齢者の要支援・要介護度に応じた老人ホーム入所のリスク因子が信州大学医学部保健学科 佐賀里 昭氏らの研究で明らかとなった。PLoS One誌2023年1月27日号の報告。  高齢者の介護施設入所リスクを基本動作と日常生活動作(ADL)の観点から明らかにすることを目的とし、レトロスペクティブ研究が行われた。  A市における2016~18年の介護保険認定調査の要介護認定者のうちデータにアクセス可能であった1万6,865例の性別、年齢、世帯構成、要介護度などのデータを取得し、グループタイプを従属変数、基本動作得点とADL得点を独立変数として、多変量二項ロジスティック回帰分析を行った。

広範囲脳梗塞、血栓回収療法の併用で身体機能が改善/NEJM

 広範囲脳梗塞患者の治療において、血管内血栓回収療法と標準的な内科的治療の併用は内科的治療単独と比較して、身体機能が有意に改善する一方で、手技に関連した血管合併症の増加を伴うことが、米国・ケース・ウエスタン・リザーブ大学のAmrou Sarraj氏らが実施した「SELECT2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年2月10日号に掲載された。  SELECT2試験は、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、ニュージーランドの31施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年9月~2022年9月の期間に患者のスクリーニングが行われた(Stryker Neurovascularの助成を受けた)。  対象は、年齢18~85歳、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメント、あるいはこれら双方の閉塞による急性期脳梗塞で、発症から24時間以内であり、虚血コア体積が大きい(Alberta Stroke Program Early CTスコア[ASPECTS、0~10点、点数が低いほど梗塞が広範囲]が3~5点)、あるいはCT灌流画像またはMRI拡散強調画像でコア体積が50mL以上、脳梗塞発症前の修正Rankin尺度スコア(0~6点、点数が高いほど機能障害が重度、6点は死亡)が0または1点(機能障害なし)の患者であった。

CAR-T ide-cel、再発・難治性多発性骨髄腫への第III相試験結果(KarMMa-3)/NEJM

 2~4レジメンの前治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるイデカブタゲン ビクルユーセル(idecabtagene vicleucel:ide-cel)は標準治療と比較して、無増悪生存期間を約7ヵ月有意に延長するとともに深い奏効をもたらし、安全性プロファイルは先行研究と一致し新たな安全性シグナルは認められないことが、スペイン・Clinica Universidad de NavarraのPaula Rodriguez-Otero氏らが実施した「KarMMa-3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年2月10日号で報告された。

妊婦の感染、オミクロン株でも重篤化や妊娠合併症増加と関連(解説:前田裕斗氏)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は妊娠中に母体および胎児への有害事象を引き起こすことが示されており、妊娠前および妊娠中にはワクチン接種が強く推奨されている。一方、現在主流となっているオミクロン株について、妊娠経過や胎児への影響およびワクチンの有効性についての大規模かつ多施設からの報告はなかった。今回の研究(INTERCOVID-2022試験)は18ヵ国41病院を通じて行われ、世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦が被験者として登録された。

線溶薬を変えても結果は変わらないかな?(解説:後藤信哉氏)

ストレプトキナーゼによる心筋梗塞症例の生命予後改善効果が示された後、フィブリン選択性のないストレプトキナーゼよりもフィブリン選択性のあるt-PAにすれば出血リスクが減ると想定された。分子生物学に基づく遺伝子改変が容易な時代になったので各種の線溶薬が開発された。しかし、循環器領域ではフィブリン選択性の改善により出血イベントリスク低減効果を臨床的に示すことはできなかった。本研究ではt-PAよりもさらに修飾されたtenecteplaseとの有効性、安全性の差異が検証された。tenecteplaseは野生型のt-PAよりも血液中の寿命が長いとされた。しかし、臨床試験にて差異を見出すことができなかった。

日本人統合失調症患者に対する長時間作用型抗精神病薬注射剤の有効性比較

 明治薬科大学のYusuke Okada氏らは、日本人統合失調症患者に対する各種長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(アリピプラゾール、パリペリドン、リスペリドン、フルフェナジン/ハロペリドール)の有効性の比較を行った。その結果、アリピプラゾールとパリペリドンのLAIは、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、精神科入院およびLAI中止のリスクが低かった。また、アリピプラゾールLAIは、リスペリドンよりもLAI中止リスクが低いことも報告した。Schizophrenia Research誌2023年2月号の報告。

紅皮症性アトピー性皮膚炎にもデュピルマブが有効

 紅皮症性アトピー性皮膚炎(AD)は、広範な皮膚病変によって定義され、合併症を引き起こし、場合によっては入院に至る重症ADである。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らは、デュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの無作為化比較試験の事後解析において、紅皮症性AD患者に対するデュピルマブ治療は、全体集団と同様にADの徴候・症状の迅速かつ持続的な改善をもたらし、安全性は許容できるものであったと報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。  中等症~重症のAD患者を対象にデュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの国際共同、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験について、事後解析が行われた。対象は、AD病変が体表面積(BSA)の90%以上かつ全般症状スコア(Global Individual Sign Score)の紅斑のスコアが1以上を満たした患者とした(紅皮症性AD)。

腎がん術後補助療法、ニボルマブ+イピリムマブはDFS延長せず(CheckMate 914)/Lancet

 術後再発リスクが中等度から高度の限局性腎細胞がん患者において、プラセボと比較してニボルマブ+イピリムマブによる無病生存期間(DFS)の延長は認められなかった。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのRobert J. Motzer氏らが、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアの20ヵ国145施設で実施した無作為化二重盲検試験「CheckMate 914試験」パートAの結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「腎細胞がんの術後補助療法としてニボルマブ+イピリムマブは支持されない」と述べている。限局性腎細胞がんの術後補助療法はアンメットニーズであり、サーベイランスが標準治療となっている。Lancet誌オンライン版2023年2月9日号掲載の報告。

広範囲脳梗塞にも24h以内の血管内治療が有効/NEJM

 中国で行われた試験で、主幹動脈閉塞を伴う梗塞が大きい患者において、発症後24時間以内の血管内治療と薬物治療の併用は薬物治療のみと比較して、頭蓋内出血の発生は多かったものの3ヵ月後の機能予後は良好であった。中国・Beijing Tiantan HospitalのXiaochuan Huo氏らが、無作為化非盲検試験「ANGEL-ASPECT試験」の結果を報告した。日本で行われたRESCUE-Japan LIMITでは、ASPECTS(Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score)が3~5の患者において血管内治療の有効性が示されていた。ANGEL-ASPECT試験も、従来の試験とは異なり大きな梗塞を有する急性期虚血性脳卒中患者における血管内治療の有効性の検証が目的であった。NEJM誌オンライン版2023年2月10日号掲載の報告。

コロナ罹患後症状別、持続しやすい患者/国立国際医療研究センター

 国立国際医療研究センターの森岡 慎一郎氏らの横断研究により、COVID-19回復患者の4分の1 以上で、ほとんどが急性期に軽症にもかかわらず、COVID-19の発症または診断から6、12、18、24ヵ月後に1つ以上の症状を有していることがわかった。本研究では、各症状の持続と関連する因子も検討した。Public Health誌オンライン版2023年2月13日号に掲載。  2020年2月~2021年11月に、COVID-19から回復し国立国際医療研究センターで受診した患者に調査を実施した。人口統計学的データ、臨床データ、COVID-19罹患後症状の存在と期間に関するデータを取得し、多変量線形回帰分析を用いて、症状持続の関連因子を調べた。  主な結果は以下のとおり。

うつ病や高レベルの不安症状を有する患者に対するボルチオキセチンの最新分析

 うつ病患者の多くは、不安症状を合併している。デンマーク・H. Lundbeck A/SのMichael Adair氏らは、うつ病患者の不安症状の治療に有効であるといわれているボルチオキセチンが、承認されている用量の範囲で有効性および忍容性が認められるかを検討した。その結果、ボルチオキセチンは、前治療で効果不十分であった患者を含むうつ病および高レベルの不安症状を有する患者に対し、有効かつ良好な忍容性を示し、最大の効果が20mg/日で認められたことを報告した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年1月25日号の報告。

性的マイノリティーの乳がん患者は再発リスクが3倍

 性的マイノリティ(レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー)の乳がん患者では、シスジェンダー(性自認と生まれ持った性別が一致している人)で異性愛者の乳がん患者と比較して、症状発現から診断までの期間が長く、再発リスクが3倍であることが、米国・スタンフォード大学のErik Eckhert氏らの研究により明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月2日号掲載の報告。

世界初のRSVワクチン誕生へ向けて、下気道疾患の予防効果80%超/NEJM

 多くの人は2歳までにRSウイルス(RSV)に感染する。生涯を通じて再感染することがあり、通常は症状が軽いもしくは無症状とされている。しかし、高齢者や合併症を有する患者では、下気道疾患が引き起こされ、基礎疾患の増悪、入院、死亡につながる可能性がある。先進国の60歳以上の成人においては、2019年にRSV感染が約520万例の急性呼吸器感染症、約47万例の入院、約3万3千例の院内死亡をもたらしたと推定されている。しかし、現在までに承認されているRSVワクチンは存在しない。そこで、宿主細胞との膜融合に関与するfusion(F)タンパク質について、立体構造を安定させた融合前(prefusion)Fタンパク質を含有するワクチンが開発され、60歳以上の成人を対象とした第III相試験において、RSVに関連する下気道疾患および急性呼吸器感染症の予防効果が示された。本研究はAReSVi-006 Study Groupによって実施され、結果はイタリア・フェラーラ大学のAlberto Papi氏らによって、NEJM誌2023年2月16日号で報告された。

65歳以上低リスク早期乳がん、乳房温存術後の放射線療法は省略可/NEJM

 65歳以上の再発リスクが低いホルモン受容体陽性早期乳がん女性患者において、乳房温存術後の放射線療法非施行は、局所再発率の増加と関連していたものの初回イベントとしての遠隔再発や全生存には影響しないことが、英国など4ヵ国76施設で実施された第III相無作為化比較試験「PRIME II試験」の10年時解析で示され、英国・エディンバラ大学のIan H. Kunkler氏らが報告した。著者は、「今回の試験は、乳房温存術を受けたGrade1または2でエストロゲン受容体(ER)高発現の65歳以上の女性では、5年間の術後内分泌療法を受けることを条件に放射線療法を省略できることを示す確かなエビデンスを提供している」とまとめている。NEJM誌2023年2月16日号掲載の報告。

急性脳梗塞の血栓溶解、tenecteplase vs.アルテプラーゼ/Lancet

 標準的な経静脈的血栓溶解療法の適応であるが血管内血栓除去術の対象外あるいは拒否した急性虚血性脳卒中患者において、tenecteplaseはアルテプラーゼに対して非劣性であることが、中国・首都医科大学のYongjun Wang氏らによる第III相無作為化非盲検非劣性試験「Tenecteplase Reperfusion therapy in Acute ischaemic Cerebrovascular Events-2 trial:TRACE-2試験」の結果、示された。アルテプラーゼに代わる急性虚血性脳卒中に対する望ましい血栓溶解療法として、tenecteplaseへの関心が高まっていた。Lancet誌オンライン版2023年2月9日号掲載の報告。  研究グループは、2021年6月12日~2022年5月29日の期間に中国53施設において、標準的な経静脈的血栓溶解療法の適応ではあるが血管内血栓除去術は適さない急性虚血性脳卒中(発症後4.5時間以内、mRSスコア1以下、NIHSSスコア5~25)の成人(18歳以上)患者1,430例を登録し、tenecteplase(0.25mg/kg、最大25mg)静脈投与群(716例)またはアルテプラーゼ(0.9mg/kg、最大90mg)静脈投与群(714例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。患者および治療担当医師は割り付けについて盲検化されなかったが、アウトカム評価医師は盲検化された。  有効性の主要アウトカムは、修正intention-to-treat(ITT)集団(無作為化され割り付けられた治験薬の投与を受けた全患者)における90日後のmRSスコアが0~1の患者の割合で、リスク比(RR)の非劣性マージンを0.937とした。安全性の主要アウトカムは、36時間以内の症候性頭蓋内出血で、治験薬の投与を受け安全性評価が可能であった全患者を解析対象集団とした。