日本語でわかる最新の海外医学論文|page:223

睡眠の質を高めるため、多くの医師がしていることは?/1,000人アンケート

 2024年4月から医師の働き方改革の新制度がスタートするが、長時間労働に端を発する医師の過労問題は改善されていないのが現状である。そのような中、睡眠は健康管理の重要カテゴリーとして医学界を筆頭にさまざまな業界で注目されているが、長時間労働者の象徴とも言える医師は果たして睡眠時間を確保できているのだろうか―。そこで、ケアネットでは多忙を極める医師の睡眠時間の実態を調査するために「睡眠状況、睡眠への意識について」のアンケートを実施。回答結果を診療科別、年代別、病床数別に抽出した。

若者の摂食障害や境界性パーソナリティ障害の特徴やリスク因子

 境界性パーソナリティ障害(BPD)と摂食障害は、併発リスクが高いが、両疾患に共通する症状の経過と関連するリスクについては、よくわかっていない。英国・ウォーリック大学のKirsty S. Lee氏らは、若者の地域サンプルにおける症状のジョイントトラジェクトリー、時間的優先順位、リスク因子、人口寄与割合(PAF)について、発達精神病理学的および心理社会学的観点より調査を行った。その結果、若者の摂食障害とBPDの一時性、リスク、スクリーニング、治療に関連するいくつかの新規かつ臨床的に関連性のある所見が特定された。Development and Psychopathology誌オンライン版2023年8月17日号の報告。

セマグルチドが肥満HFpEF患者の症状軽減、減量効果も/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF)を呈する肥満の患者において、GLP-1受容体作動薬セマグルチドはプラセボと比較して、症状と身体的制限を軽減するとともに、運動機能を改善し、減量効果をもたらすことが、米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のMikhail N. Kosiborod氏らが実施した「STEP-HFpEF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年8月25日号で発表された。  STEP-HFpEF試験は、日本を含む13ヵ国96施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年3月~2022年3月の期間に患者の登録を行った(Novo Nordiskの助成を受けた)。

高齢COVID-19患者の退院後の死亡および再入院のリスク(解説:小金丸博氏)

今回、65歳以上の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の退院後の長期にわたる転帰を調査した米国の後ろ向きコホート研究の結果が、BMJ誌2023年8月9日号に報告された。高齢者におけるCOVID-19の急性期症状や短期的な転帰についてはよく研究されているが、長期的な転帰については十分判明していなかった。本研究ではインフルエンザの退院患者を対照群として選択し比較した。その結果、COVID-19患者の退院後の全死因死亡リスクは30日時点で10.9%、90日時点で15.5%、180日時点で19.1%であり、インフルエンザ患者と比較して高率だった。再入院のリスクは30日時点で16.0%、90日時点で24.1%でありインフルエンザ患者より高率だったが、180日時点では30.6%で同等だった。再入院は心肺機能の問題で入院することが多く、再入院時の初期診断としては敗血症(セプシス)、心不全、肺炎の順に多く認めた。

健康維持に必要な1日の最小歩数は?~メタ解析

 1日の歩数と全死因死亡および心血管疾患(CVD)の発症との関連を調べた結果、3,000歩弱という少ない歩数であっても有意にそれらのリスクが低減していたことを、オランダ・ラドバウド大学医療センターのNiels A. Stens氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2023年9月6日号の報告。  健康の維持・改善のためにウオーキングなどの有酸素運動が勧められることが多いが、最小および至適な1日の歩数は依然として不明である。そこで、研究グループは一般集団における歩数と健康アウトカムとの関連を評価するためにメタ解析を行った。MEDLINEとEMBASEをデータベース開設から2022年10月まで検索し、歩数計や加速度計などで客観的に測定された1日の歩数と、全死因死亡またはCVDの発症を評価した成人が対象の縦断研究を特定した。解析には一般化最小二乗法とランダム効果モデルが用いられた。

コロナ後遺症2年追跡、入院例は依然死亡リスク高い

 コロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関するエビデンスは、これまでそのほとんどが感染後1年内のものだった。感染流行から時間が経過し、2年間の追跡データが発表された。米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのBenjamin Bowe氏らによる本研究は、Nature Medicine誌オンライン版2023年8月21日号に掲載された。  研究者らは米国退役軍人データベースから13万8,818例の感染群と598万5,227例の非感染の対照群からなるコホートを2年間追跡し、死亡と事前に規定した80の急性期後遺症のリスクを推定した。感染群は、急性期における入院の有無でさらに分析した。

中等症~重症アトピー性皮膚炎、トラロキヌマブは高齢者にも有用

 65歳以上の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者において、トラロキヌマブの忍容性および有効性は良好であることが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoseph F. Merola氏らが、第III相無作為化プラセボ対照試験「ECZTRA試験(1、2、3)」の事後解析により明らかにした。アトピー性皮膚炎を有する高齢者には、併存疾患やポリファーマシー、感染症(帯状疱疹など)のリスクが高いなど、特有の治療課題が存在するが、臨床試験のデータは限られていた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月23日号掲載の報告。

なぜ日本は遅れをとっているのか?小児抗がん剤ドラッグラグの現状

 2023年3月に閣議決定・取り組みが開始された「第4期がん対策推進基本計画」では、新規治療薬などへのアクセス改善に向け既存制度の見直しを含めた対応策の検討を行うことが明記され、厚生労働省は関連の研究班の発足やPMDAへの「小児・希少疾病用医薬品等薬事相談センター」の設置などに動き出している。背景には、ドラッグラグにとどまらずドラッグ“ロス”にも陥りかねない小児がん治療における現状があるという。国立成育医療研究センターの富澤 大輔氏に話を聞いた。

日本人双極性障害患者の再入院に対するアリピプラゾール持続性注射剤の予防効果

 熊本・弓削病院の後藤 純一氏らは、双極性障害の再入院に対するアリピプラゾール月1回製剤(AOM)の効果を調査するため、1年間のレトロスペクティブミラーイメージ研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年8月10日号の報告。  参加者は、西日本の精神科救急病院および急性期病院から募集した。対象者は、観察期間中に医療記録が欠落しておらず、1年以上のAOM治療が実施された双極性障害患者39例。主要アウトカムは、精神科再入院と関連する再入院率、再入院数、総入院日数、再入院までの期間とした。有意水準は、p<0.05で設定した。

多枝病変を有するSTEMIのPCI、即時vs.段階的/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と多枝冠動脈病変を有し、血行動態が安定した患者の治療では、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、予定外の虚血による血行再建術、心不全による入院の複合リスクに関して、即時的な多枝経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行は段階的な(staged)多枝PCIに対して非劣性であるとともに、優越性をも示したことが、スイス・チューリッヒ大学病院のBarbara E. Stahli氏らが実施した「MULTISTARS AMI試験」の結果、報告された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年8月27日号に掲載された。  MULTISTARS AMI試験は、欧州の37施設が参加した医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2016年10月~2022年6月に患者のスクリーニングが行われた(Boston Scientificの助成を受けた)。

2型糖尿病治療薬としてのGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutide(解説:住谷哲氏)

筆者はこれまで、血糖降下薬多剤併用でも血糖管理目標が達成できない患者を少なからず経験したが、その多くは食欲がコントロールできない肥満合併患者であった。しかしGLP-1受容体作動薬の登場で、食欲抑制を介して体重を減少させることが可能となり、2型糖尿病治療は大きく前進した。最新のADA/EASDの血糖降下薬使用アルゴリズムにおいて、GLP-1受容体作動薬はSGLT2阻害薬と同様に臓器保護薬として位置付けられている。しかし、GLP-1受容体作動薬はcardiovascular disease dominoのより上流に位置する肥満を制御することが可能な薬剤であり、この点がSGLT2阻害薬とは異なっている。

モデルナXBB対応コロナワクチン、BA.2.86「ピロラ」にも有効

 米国・Moderna社は9月6日付のプレスリリースにて、同社のXBB対応の新型コロナワクチンが、高度な変異のある新たな変異株のBA.2.86(通称:ピロラ)に対して、中和抗体をヒトで8.7倍増加させることを、同社の臨床試験データで確認したことを発表した。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、BA.2.86は、新型コロナワクチンを以前接種した人でも感染する可能性があり、新たなXBB対応ワクチンは重症化や入院を減らすのに有効な可能性があるという。

がんサバイバーの心不全発症、医療者の知識不足も原因か/日本腫瘍循環器学会

 9月30日(土)~10月1日(日)の2日間、神戸にて第6回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催される(大会長:平田 健一氏[神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野])。それに先立ち、大会長による学会の見どころ紹介のほか、実際にがんサバイバーで心不全を発症した女性がつらい胸の内を語った。  今回のメディアセミナーに患者代表として参加した女性は、10代で悪性リンパ腫の治療のために抗がん剤を使用。それから十数年以上経過した後に健康診断で乳がんを指摘されて乳房温存手術を受けたが、その後にリンパ節転移を認めたため、抗がん剤(計8コース)を行うことになったという。しかし、あと2コースを残し重症心不全を発症した。幸いにも植込み型補助人工心臓(VAD)の臨床試験に参加し、現在に至る。

脳卒中の診断、年齢の左桁バイアスはあるか

 人間には、年齢などの連続変数の左端の桁の数字に基づいて判断する傾向(left-digit bias:左桁バイアス)がある。このバイアスが医師の意思決定にも影響するのだろうか。最近の研究では、80歳の誕生日直前の患者より、直後の患者に冠動脈バイパス術を行う可能性が低かったことが示されている。今回、京都大学の福間 真悟氏らは、脳卒中に対する画像検査のオーダーに年齢の左桁バイアスが影響するかを検討した。その結果、男性患者に対してのみ、40歳前後でオーダーの不連続的な増加がみられ、医師の脳卒中リスクの推定に認知バイアスが存在することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年8月26日号に掲載。

コーヒー・緑茶で貯蔵鉄が減少、閉経後女性は多飲による鉄欠乏に注意?~J-MICC佐賀地区研究

 コーヒーや緑茶の摂取は、腸において鉄の吸収を阻害することにより、体内の貯蔵鉄の量を減少させると考えられている。貯蔵鉄が過剰となると酸化ストレスが増加し、心血管疾患やがんの発症リスクとなるため、コーヒーや緑茶の摂取がこれらのリスクを低下させる可能性が指摘されている。しかし、過剰摂取は鉄欠乏を招く可能性もある。そこで、南里 妃名子氏(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)佐賀地区の調査に参加した1万435人を対象として、コーヒー、緑茶の摂取量と血清フェリチン値との関係を検討した。その結果、男性および閉経後女性では、コーヒー、緑茶はいずれも摂取量が多いほど血清フェリチン値が低かった。閉経前女性では、緑茶の摂取量のみに同様の関連が認められた。また、閉経後女性において、コーヒーを1日3杯以上飲む人は飲まない人と比べて、鉄欠乏が多くみられた。本研究結果は、Frontiers in Nutrition誌2023年8月10日号に掲載された。

モーニングコーヒーでうつ病リスクが低下

 最近の研究では、カフェイン摂取がうつ病リスク低下と関連していることが示唆されている。しかし、どの時間帯でのカフェイン摂取がうつ病リスクと関連しているかは、よくわかっていない。中国・山東中医薬大学のJiahui Yin氏らは、さまざまな時間帯におけるカフェイン摂取とうつ病リスクとの関連を調査した。その結果、早朝にカフェインを摂取した人は、うつ病有病率が低く、早朝以外の時間帯にカフェインを摂取する人は、うつ病有病率が高いことを報告した。Journal of Affective Disorders誌11月号の報告。

コロナワクチン、同じ腕に接種vs.違う腕に接種

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症ワクチン「BNT162b2」の2回接種レジメンでは上腕の三角筋に順次投与されるが、2回目の投与を同側の腕に行うか反対側の腕に行うかによる免疫学的影響については、これまでほとんど注意が払われてこなかった。ドイツ・ザールラント大学のLaura Ziegler氏らは、どちらの腕に投与するかがワクチンによって誘導される液性免疫および細胞性免疫に異なる影響を及ぼすかどうかを検討した観察研究の結果を、eBioMedicine誌2023年7月31日号に報告した。

多枝病変の高齢心筋梗塞、完全血行再建術vs.責任病変のみ/NEJM

 心筋梗塞と多枝病変を有する75歳以上の患者の治療において、生理学的評価ガイド下(physiology-guided)完全血行再建術は、責任病変のみへの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して、1年後の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合アウトカムのリスクが低下し、安全性アウトカムの指標の発生は同程度であったことが、イタリア・フェラーラ大学病院のSimone Biscaglia氏らが実施した「FIRE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年9月7日号で報告された。

血友病A/Bのconcizumab予防投与、年間出血回数が大幅減/NEJM

 concizumabは、組織因子経路インヒビター(TFPI)に対するモノクローナル抗体で、血友病の全病型で皮下投与の予防治療薬として検討が進められている。名古屋大学病院の松下 正氏ら「explorer7試験」の研究グループは、インヒビターを有する血友病AまたはBの患者において、concizumabの予防投与はこれを行わずに出血時補充療法(on-demand treatment)のみを行う場合と比較して、年間出血回数(ABR)が大きく減少し、長期的なアウトカムを改善する可能性があることを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌2023年8月31日号に掲載された。

拡張型心筋症の遺伝子構造はアフリカ系と欧州系患者とで異なっている(解説:原田和昌氏)

次世代シークエンスを用いた網羅的な心筋症遺伝子解析による心筋症の病態解明とそれを用いたプレシジョン・メディシンに期待が集まっている。米国・DCMコンソーシアムのDCM Precision Medicine Studyのこれまでの調査によれば、拡張型心筋症(DCM)患者の約30%が家族性DCMであり、黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも家族性DCMのリスクが高くアウトカムが不良であった。しかし、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものであった。米国・オハイオ州立大学のJordan氏らは、DCMに関係する36の遺伝子について、アフリカ系、欧州系、ネイティブ・アメリカンの患者を対象に、ゲノム祖先ごとに変異遺伝子構造を比較した。アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる、臨床的に治療標的として介入が期待される変異遺伝子(バリアント)を有する割合が低かった。