日本語でわかる最新の海外医学論文|page:151

メニエール病は臨床症状によってサブタイプに分類可能

 メニエール病は、特有の臨床症状を特徴とするサブタイプが混在する不均一な疾患であるという研究結果が、「The Laryngoscope」に1月6日掲載された。  英ノーフォーク・ノリッジ大学病院NHS財団トラストのJohn Phillips氏らは、メニエール病患者を対象とした観察研究において、類似する特徴やリスク因子を共有する患者をグループとして分類するクラスター分析を実施し、明確な臨床サブタイプを特定した。研究にはメニエール病と診断された患者411人が登録された。  その結果、2つの主要なクラスターが特定された。耳の感染症と診断された患者は、クラスター1に属する可能性が高かった(オッズ比0.30)。一方、両耳の耳鳴り(同11.89)、低音の耳鳴り(同21.09)、ストレスが回転性めまい発作の誘因になるとの報告(同14.94)を有する患者は、クラスター2に属する可能性が有意に高かった。また、良性発作性頭位めまい症(同13.14)、自己免疫疾患(同5.97)、うつ症状(同4.72)、片頭痛(同3.13)、薬剤アレルギー(同3.25)、花粉症(同3.12)と診断された患者も、クラスター2に属する可能性が有意に高かった。

健康問題による生産性低下の要因に男女差

 従業員が何らかの健康問題や症状を抱えて出勤し、出勤時の生産性が低下している状態を「プレゼンティーイズム(presenteeism)」という。今回、プレゼンティーイズムと睡眠、喫煙や飲酒との関係が新たに調査され、男女間で異なる結果が得られた。飲酒ついては、女性では正の関連、男性では負の関連が見られたという。鳥取大学医学部環境予防医学分野の研究グループによる研究であり、「Journal of Occupational Health」に12月14日掲載された。  病気などで欠勤することを「アブセンティーイズム(absenteeism)」といい、健康経営の課題となっている。しかし、それと比べて、健康問題を抱えながら出勤する「プレゼンティーイズム」の方が、従業員の生産性の低下(健康関連コスト)は大きいことが報告されている。その重要性が増していることから著者らは、プレゼンティーイズムと主観的な睡眠の質、喫煙、飲酒との関連について、男女差に着目して横断研究を行った。

病院・施設の除菌対策、MDRO保菌や感染症入院が低下/JAMA

 地域内で協力して行った、病院の患者(接触感染予防で入院した患者に限定)と長期介護施設入居者に対するクロルヘキシジン浴(清拭・シャワーを含む)とヨードホール消毒薬の経鼻投与の除菌対策(universal decolonization)により、多剤耐性菌(MDRO)の保菌者割合、感染症の発生率、感染関連の入院率、入院関連費用および入院死亡率が低下したことが示された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のGabrielle M. Gussin氏らが、地域内35ヵ所の施設で行った医療の質向上研究の結果を報告した。MDROによる感染症は、罹患率、死亡率、入院の長期化および費用の増大と関連している。地域介入によって、MDRO保菌および関連する感染症の軽減が図られる可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年4月1日号掲載の報告。

HER2+早期乳がん、PET pCR例の化学療法は省略可?(PHERGain)/Lancet

 HER2陽性の早期乳がん患者において、18F-FDGを用いたPET検査に基づく病理学的完全奏効(pCR)を評価指標とする、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法でのde-escalation戦略は、3年無浸潤疾患生存(iDFS)率に優れることが示された。スペイン・International Breast Cancer CenterのJose Manuel Perez-Garcia氏らが、第II相の無作為化非盲検試験「PHERGain試験」の結果を報告した。PHERGain試験は、HER2陽性の早期乳がん患者において、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法での治療の実現可能性、安全性、有効性を評価するための試験。結果を踏まえて著者は、「この戦略により、HER2陽性の早期乳がん患者の約3分の1が、化学療法を安全に省略可能であることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年4月3日号掲載の報告。

超加工食品の安全性を十分に吟味することなく、利便性・時短性を優先するのは危険!―(解説:島田俊夫氏)

超加工食品は現代社会において利便性・時短性の面から今や世界中で重宝される食品となっています。しかしながら、利便性が高くても健康被害が増える食品であれば逆に寿命の短縮につながる可能性が高く、食の安全性を吟味することは必要・不可欠です。超加工食品の過剰摂取(食品の10%を超えると危険が増大)は生活習慣病(心血管病/がん/糖尿病/肺疾患)、認知症、うつ病、短命(早死)、肥満らを引き起こす可能性大といわれています。

マルチキナーゼ阻害薬・スニチニブの水平展開-難治性褐色細胞腫への応用 PhaseII試験が、Lancet誌に掲載されました!?(解説:石上友章氏)

 この論文は、進行性の転移性褐色細胞腫とパラガングリオーマの患者を対象にした初の無作為化比較試験の結果を報告している。この分野では以前に無作為化比較試験が行われたことがなく、スニチニブの有用性に関する臨床前および初期臨床データが示され、スニチニブの安全性と有効性を評価することを目的としている。スニチニブは、いわゆるマルチキナーゼ阻害薬であり、本邦ではスーテントの商品名で、イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍、根治切除不能または転移性の腎細胞がん、膵神経内分泌腫瘍の適応を取得している。

「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」13年ぶりの改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会、日本心臓病学会、日本小児循環器学会の合同ガイドライン『心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン』が、2011年以来の13年ぶりの改訂となった。3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会で、本ガイドラインの合同研究班班長である今井 靖氏(自治医科大学 臨床薬理学部門・循環器内科学部門 教授)が、ガイドライン改訂の要点を解説した。  本ガイドラインは2006年に初版が刊行され、2011年に改訂版が公表された。当時、遺伝子解析の大半は研究の範疇に属し、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に沿って実施されていた。その後、2021年の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」により、他の医学系研究指針と統合され、ヒト遺伝子情報が他の医学・生命科学の情報と同列に扱われるようになった。さらに最近では、診療として実施される遺伝学的検査が大幅に増加しており、がんなどの他の診療分野での遺伝学的検査の普及と並行し循環器疾患においても今後さらに適応が増加することは必至と考えられる。今回の改訂はこれらの状況を踏まえて行われた。

認知機能の低下抑制、マルチビタミンvs.カカオ抽出物

 市販のマルチビタミン・ミネラルサプリメント(商品名:Centrum Silver、以下「マルチビタミン」)の連日摂取が高齢者の認知機能に与える影響を詳細に調査したCOSMOS-Clinic試験の結果、マルチビタミンを摂取した群では、プラセボとしてカカオ抽出物(フラバノール500mg/日)を摂取した群よりも2年後のエピソード記憶が有意に良好で、サブスタディのメタ解析でも全体的な認知機能とエピソード記憶が有意に良好であったことを、米国・Massachusetts General HospitalのChirag M. Vyas氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌2024年3月号掲載の報告。

経口と長時間作用型注射剤抗精神病薬の有用性~ネットワークメタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、主に統合失調症の再発予防に期待して使用されるが、状況によっては急性期治療にも役立つ場合がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症成人患者に焦点を当て、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2024年3月14日号の報告。  対象薬剤は、リスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾール、オランザピンおよびプラセボであり、経口剤またはLAIとして用いられた。17のその他の有効性および忍容性アウトカムにより補完し、全体的な症状に関するデータを統合した。エビデンスの信頼性の評価には、Confidence-in-Network-Meta-Analysis-framework(CINeMA)を用いた。

緑豊かな住環境は骨粗鬆症リスクを下げる

 樹木など植物が茂った場所の近くに住んでいると、骨が丈夫になる可能性のあることが、平均12年間の追跡データに基づく新たな研究で示唆された。中南大学(中国)のZhengxiao Ouyang氏らによるこの研究では、衛星画像で緑地が確認された場所の近くに住んでいる人では、それ以外の場所に住んでいる人に比べて骨密度が高い傾向があることが示されたのだ。研究グループは、「住宅地の植生が骨密度の上昇や骨粗鬆症リスクの低下に関連していることを示す初のエビデンスが得られた」と述べている。詳細は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月5日掲載された。  この研究には、UKバイオバンクのデータベースから収集された39万1,298人の英国人(平均年齢56.2歳、女性53.0%)の生活習慣と健康状態に関する追跡データが用いられた。UKバイオバンクには、各参加者の骨密度と骨粗鬆症の遺伝リスクに関するデータのほか、食事や喫煙習慣、収入、運動量などのさまざまなデータが記録されている。

推奨レベル以下の身体活動でも脳卒中リスクは低下する

 少し体を動かすだけでも、カウチポテト族のように怠惰に過ごすよりは脳卒中の予防に役立つようだ。身体活動レベルがガイドラインで推奨されているレベルに達していなくても、運動をしない人に比べると脳卒中リスクは18%低下することが、新たな研究で示された。ラクイラ大学(イタリア)バイオテクノロジー・応用臨床科学分野のRaffaele Ornello氏らによるこの研究の詳細は、BMJ社発行の「Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」に3月5日掲載された。

教育歴の長さが健康と長寿に関連

 教育歴が長い人ほど老化のスピードが遅く、より長生きする傾向があるとする研究結果が報告された。学校教育を受けた年数が2年長いごとに、老化速度は2~3%遅くなり、これは死亡リスクが約10%低下することに相当するという。米コロンビア大学メールマン公衆衛生大学院のDaniel Belsky氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に3月1日掲載された。  論文の上席著者であるBelsky氏によると、「教育レベルが高い人ほど長生きする傾向のあることは、古くから知られていた」という。ただし、「そのような関連がなぜ存在するのかはよく分かっておらず、さらにより重要なこととして、教育レベルを高めるという介入がなぜ健康長寿につながるのかという点が不明であり、これらを明らかにするために多くの課題が残されている」と述べている。

心臓移植候補者、提供受諾の決定に人種や性別が影響か/JAMA

 心臓移植の待機リストに登録している移植候補者に関して、移植施設の医療チームが心臓の提供を受け入れる確率は、移植候補者が白人の場合と比較して黒人で低く、男性に比べ女性で高いことが、米国・インディアナ大学のKhadijah Breathett氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年3月25日号に掲載された。  研究グループは、移植待機リストに登録されている心臓移植候補者の人種および性別が、移植施設の医療チームが心臓提供の申し出を受諾する確率と関連するかを評価する目的で、コホート研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。  全米臓器分配ネットワーク(UNOS)のデータセットを用いて、2018年10月18日~2023年3月31日に心臓移植の候補となった米国の非ヒスパニック系黒人と非ヒスパニック系白人の成人について、心臓提供の申し出を受諾したか否かを特定した。  主要アウトカムは、移植施設の医療チームによる、心臓提供の申し出の受諾とした。

再発高リスクHR+/HER2-乳がんに対する術後ribociclib療法(解説:下村昭彦氏)

NEJM誌2024年3月21日号に、再発高リスクのホルモン受容体陽性HER2-乳がんの術後内分泌療法に対するribociclibの上乗せを検証した「NATALEE試験」の結果が公表された。本試験の結果は2023年のASCOで発表され、さまざまなところで議論になっている。残念ながら日本では第I相試験で標準用量の半分でしか忍容性が確認されなかったため、ribociclibは国内では使用できない。NATALEE試験ではStageII~IIIの再発高リスクと考えられる集団に対して試験が行われ、5年間の内分泌療法にribociclibを3年(!)追加することで、3年無浸潤疾患生存率(IDFS)が90.4% vs.87.1%とribociclib群で3.3%と統計学的有意に良好であった。

アレクチニブ1次治療肺がん患者のリアルワールドデータ(ReAlec)/ELCC2024

 アレクチニブの1次治療を受けたALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の特徴と、後治療のリアルワールドデータが示された。  ALK陽性進行NSCLCに対するアレクチニブの1次治療は優れた有用性を示す。しかし、アレクチニブ後の治療シークエンスについては十分な知見がない。ReAlec試験はアレクチニブ治療患者の特徴をリアルワールドで確認する後ろ向き多施設コホート観察研究である。欧州肺がん学会(ELCC2024)では、イタリア・サクロ クオーレ カトリック大学のEmilio Bria氏が、アレクチニブの1次治療患者を対象としたReAlec試験コホート1(データカットオフ2023年5月10日)の初回中間解析結果を報告した。

次世代コロナワクチン、第III相試験で良好な中間結果を達成/モデルナ

 米国・Moderna社は3月26日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「スパイクバックス」について、次世代の「mRNA-1283」が、第III相試験の結果、同社の既存のオミクロン株対応2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)ワクチン「mRNA-1273.222」と比較して、SARS-CoV-2に対するより高い免疫応答の誘導を示したこと発表した。この次世代コロナワクチン「mRNA-1283」は、より長い保存期間と保存上の利点をもたらす可能性があり、インフルエンザとCOVID-19の混合ワクチン「mRNA-1083」の構成要素となる予定だ。  次世代コロナワクチン「mRNA-1283」と既存の「mRNA-1273.222」とを比較した第III相ピボタル試験「NextCOVE試験(NCT05815498)」は、米国、英国、カナダの12歳以上の約1万1,400人を対象とした無作為化観察者盲検アクティブ対照試験だ。本試験の結果、「mRNA-1283」は、SARS-CoV-2のオミクロンBA.4/BA.5および起源株の両方に対して、より高い免疫応答を引き起こすことが認められた。とくにこの免疫応答は、COVID-19による重篤な転帰リスクが最も高い65歳以上の参加者に顕著にみられたという。主な局所有害事象は注射部位の疼痛で、主な全身性の有害事象は頭痛、疲労、筋肉痛、悪寒だった。

植物ベースの食事、内容で骨折リスクは変わるか?

 これまでの研究で、植物性食品を多く摂取し、動物性食品を少なく、あるいはまったく摂取しないヴィーガン食は、骨密度の低下や骨折リスクの上昇に関連する可能性が示唆されている。しかし、植物性食品の質については区別されていなかった。スペイン・マドリード自治大学のMercedes Sotos-Prieto氏らは、閉経後の女性において、植物性食品の質と股関節骨折リスクとの関連を検討した。JAMA Network Open誌2024年2月29日号掲載の報告。  研究者らは、1984~2014年に米国のNurses' Health Studyに参加した7万285例の閉経後女性を対象に、植物性食品(菜食主義とは限らず雑食主義も含む)の質と股関節骨折リスクとの関連を検討した。データは2023年1月1日~7月31日に解析された。

塩分摂取と認知症リスク~メンデルランダム化研究

 観察研究では、食事による塩分摂取と認知症の発症リスクに潜在的な関連性があることが示唆されている。しかし、これらの研究では、逆因果関係や残留交絡因子の課題が発生しやすいことに注意を払う必要がある。中国・山西医科大学のKe Shi氏らは、塩分摂取と認知症リスクとの因果関係を調査するため、2サンプルメンデルランダム化(MR)研究を実施した。Genes & Nutrition誌2024年3月15日号の報告。  食事による塩分摂取と認知症リスクとの因果関係を調査するため、MR研究にサマリー統計を組み込んだ。塩分摂取と全体的な認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症など、さまざまなタイプの認知症リスクとの因果関係を推定した。主要なMR分析として、逆分散加重法を用いた。感度分析には、MR-PRESSO法、Leave-one-out法を採用した。多面性および異質性の検証には、MR-Egger intercept、コクランQ検定をそれぞれ用いた。

亜鉛欠乏症、日本人の特徴が明らかに

 亜鉛欠乏症は、免疫機能の低下、味覚障害、嗅覚障害、肺炎、成長遅延、視覚障害、皮膚障害などに影響を及ぼすため、肝疾患や慢性腎臓病などをはじめとするさまざまな疾患を管理するうえで、血清亜鉛濃度の評価が重要となる。今回、横川 博英氏(順天堂大学医学部総合診療科学講座 先任准教授)らが日本人患者の特徴と亜鉛欠乏との相関関係を調査する大規模観察研究を行った。その結果、日本人の亜鉛欠乏患者の特徴は、男性、入院患者、高齢者で、関連する病態として呼吸器感染症や慢性腎臓病などが示唆された。Scientific reports誌2024年2月2日号掲載の報告。

肥満症治療薬は手術前の胃残留量増加に関連

 ウゴービやオゼンピックのような肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)の使用者は、全身麻酔を要する手術前でも胃残留量の多いことが、新たな研究から明らかになった。研究グループは、GLP-1受容体作動薬の使用者の場合、現行のガイドラインで推奨されている手術前の絶食時間では不十分な可能性を示唆する結果だとの見方を示している。米テキサス大学健康科学センターヒューストン校のSudipta Sen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に3月6日掲載された。  全身麻酔を要する手術では通常、誤嚥性肺炎や窒息のリスクを防ぐために手術前の絶食が求められる。Sen氏らは、全身麻酔下にあったGLP-1受容体作動薬の使用者が、手術中に自分の吐物を誤嚥したとの報告を受けて、GLP-1受容体作動薬の使用と胃残留量の増加との関連を調べることを決めたと話す。