脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:27

脳の血栓溶解は24時間まで大丈夫?(解説:後藤信哉氏)

 灌流動脈の血栓性閉塞により臓器の虚血性障害が始まる。血液灌流の再開時には再灌流障害も起こるが、酸素化再開により機能を修復できる部分が大きければ血栓溶解療法の適応となる。循環器では心筋梗塞後6時間までが、当初再灌流の有効時間と考えられた。その後、灌流直後に動き始めない冬眠心筋(hibernation myocardium)、気絶心筋(stunned myocardium)など再灌流後長時間経過しても機能回復する心筋がみつからず、再灌流可能時間は発症後12時間、24時間と延びていった。  直感的に、脳の神経機能は心筋より虚血性障害に弱そうにみえる。また、再灌流後の脳出血リスクも心配であった。

日本人片頭痛患者における日常生活への影響~OVERCOME研究

 日本人の片頭痛患者を対象に、日常生活活動や基本的な健康指標(睡眠、メンタルヘルス)など、日常生活に及ぼす影響を詳細に調査した研究は、これまであまりなかった。鳥取県済生会境港総合病院の粟木 悦子氏らは、日本人片頭痛患者における日常生活への影響を明らかにするため、横断的観察研調査を実施した。Neurology and Therapy誌2024年2月号の報告。  日本における片頭痛に関する横断的疫学調査(OVERCOME研究)は、2020年7~9月に実施した。片頭痛による家事、家族/社交/レジャー活動、運転、睡眠への影響は、片頭痛評価尺度(MIDAS)、Migraine-Specific Quality of Life(MSQ)、Impact of Migraine on Partners and Adolescent Children(IMPAC)scales、OVERCOME研究のために作成したアンケートを用いて評価を行った。片頭痛のない日の負担を評価するため、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)を用いた。抑うつ症状および不安症状の評価には、8項目の患者健康質問票うつ病尺度(PHQ-8)、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)をそれぞれ用いた。日常生活への影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリで評価した。

日本人の睡眠時間やその変化が認知症リスクに及ぼす影響

 睡眠時間およびその変化が長期的な認知症リスクに及ぼす影響について、これまでの研究結果は一貫していない。長崎大学の宮田 潤氏らは、日本人の中年期における睡眠時間およびその変化と認知症リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、長時間睡眠および睡眠時間の増加が認知症リスクと関連することが示唆された。Preventive Medicine誌オンライン版2024年2月2日号の報告。  研究チームは、40~71歳の日本人4万1,731人を募集し、ベースライン時(1990~94年)の習慣的な睡眠時間および5年間のフォローアップ調査について記録した。睡眠時間の変化はベースライン時と5年間の測定結果の差として算出し、認知症の発症は介護保険制度の利用(2007~16年)で特定した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の算出には、エリア層別Coxモデルを用いた。

迷走神経刺激療法とリハビリの併用が脳卒中後の上肢の機能回復に有効

 脳卒中の後遺症で腕が不自由になることの影響は計り知れないほど大きいが、脳卒中を経験した人に希望をもたらす臨床試験の結果が明らかになった。迷走神経刺激療法(VNS)と集中的なリハビリテーション(リハビリ)を組み合わせることで、障害が残った腕や手をコントロールする機能の回復を促せる可能性のあることが示された。この試験は米MGHインスティテュート・オブ・ヘルス・プロフェッションズのTeresa Kimberley氏らが実施したもので、国際脳卒中学会(ISC 2024、2月7~9日、米フェニックス)で報告された。

アルツハイマー病バイオマーカー、異常検出は診断の何年前から?/NEJM

 アルツハイマー病患者では、診断のかなり前から脳脊髄液(CSF)中のバイオマーカーに変化を認めることが知られている。中国・首都医科大学宣武医院のJianping Jia氏らは、孤発性アルツハイマー病の臨床診断を受けた集団の、診断に至る前の20年間におけるバイオマーカーの経時的変化を明らかにするとともに、認知機能が正常な集団と比較してどの時点でバイオマーカーに乖離が生じ、異常値となるかを検討した。研究の成果は、NEJM誌2024年2月22日号で報告された。

脳梗塞発症後4.5~24時間のtenecteplase、転帰改善せず/NEJM

 多くの患者が血栓溶解療法後に血栓回収療法を受けていた脳梗塞の集団において、発症から4.5~24時間後のtenecteplaseによる血栓溶解療法はプラセボと比較して、良好な臨床転帰は得られず、症候性頭蓋内出血の発生率は両群で同程度であることが、米国・スタンフォード大学のGregory W. Albers氏が実施した「TIMELESS試験」で示された。tenecteplaseを含む血栓溶解薬は、通常、脳梗塞発症後4.5時間以内に使用される。4.5時間以降のtenecteplaseの投与が有益であるかどうかについての情報は限られていた。研究の詳細は、NEJM誌2024年2月22日号で報告された。

大血管閉塞による急性期脳梗塞、血栓除去術へのメチルプレドニゾロン併用は?/JAMA

 大血管閉塞による急性期脳梗塞患者において、静脈内血栓溶解療法を含む血管内血栓除去術に低用量メチルプレドニゾロン静注を追加しても、90日後の機能的アウトカムに差はなかったが、死亡率および症候性頭蓋内出血の発生率は低かった。中国・人民解放軍第三軍医大学のQingwu Yang氏らが、中国の82施設で実施した医師主導無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Methylprednisolone as Adjunctive to Endovascular Treatment for Acute Large Vessel Occlusion trial:MARVEL試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年2月8日号掲載の報告。

広範囲脳梗塞への血栓除去術併用、1年後も有効/Lancet

 広範囲脳梗塞患者において、内科的治療のみと比較し血管内血栓除去術の併用は90日時の身体機能を有意に改善することが示されていたが、その有効性は1年後の追跡調査においても維持されていた。米国・ケース・ウエスタン・リザーブ大学のAmrou Sarraj氏らが、「SELECT2試験」の1年アウトカムを報告した。広範囲脳梗塞患者に対する血管内血栓除去術の有効性と安全性は複数の無作為化試験で報告されているが、長期の有効性については不明であった。Lancet誌2024年2月9日号掲載の報告。

睡眠が認知症発症に及ぼす影響

 睡眠障害と認知症との関係は、依然としてよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のYing Xiong氏らは、高齢者(65歳以上)における睡眠対策と認知症との関係を調査し、これらの因果関係を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、若年高齢者の短時間睡眠者、高齢者および頻繁にアルコールを摂取する長時間睡眠者において、認知症リスクとの関連が示唆された。Psychiatry Research誌オンライン版2024年1月28日号の報告。  高齢者における睡眠対策と認知症との関係を調査するため、English Longitudinal Study of Ageing(ELSA)のデータを用いた。さらに、Cox回帰モデルおよびメンデルランダム化(MR)分析を用いて、因果関係を調査した。

やはりワルファリンとの比較でないとDOACは対抗できない?(解説:後藤信哉氏)

心房細動の脳卒中予防には、アピキサバンなどのDOACが多く使用されている。根拠となったランダム化比較試験では、PT-INR 2~3のワルファリンが対照薬であった。ワルファリン治療は心房細動の脳卒中予防の実態的な過去の標準治療ではなかった。さらに、PT-INR 2~3を標的とするのは実態医療とも乖離していた。今回は、心房の筋肉にcardiomyopathyを認めるが、心房細動ではない症例を対象として、奇異性塞栓によるアピキサバンの脳梗塞再発予防効果をアスピリンと比較した。心房筋に障害があるので、病態は心房細動に近い。心房細動例の脳卒中再発予防であれば、過去の標準治療(PT-INR 2~3を標的としたワルファリン)にDOACは有効性で劣らず安全性に勝った。しかし、本研究対象のように心房細動ではないとアピキサバンはアスピリンと有効性・安全性に差がなかった。心房細動の有無というリズムが結果に与えた影響が大きかったのだろうか? 筆者は見かけの差異は対象の差異によると考える。