神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:61

長期的な体重変化とその後の認知症リスク

 中高年期の体重減少は、その後の認知症リスクの上昇と関連しているといわれている。しかし、多くの研究では、身体的フレイル(PF)の潜在的な影響について検討が不十分であり、フォローアップ期間が限られているか、対照が最適化されていないなどの問題がある。中国・浙江大学のJie Shen氏らは、米国の中年期成人および高齢者の体重変化と認知症リスクとの長期的および時間的な関係を調査するため、検討を行った。その結果、中年期成人および高齢者の認知症リスクと体重減少との関連が認められた。この関連は、PFの状態とは無関係であり、最近の体重減少だけでなく、10年以上前の体重減少との関連が確認された。The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2022年4月14日号の報告。

日本人高齢者における野菜・果物の摂取と認知症リスク~久山町研究

 これまで、欧米で行われていたプロスペクティブ研究では、野菜や果物の摂取が認知症リスクを低下させることが示唆されている。しかし、アジア人を対象とした疫学的なエビデンスは限られていた。九州大学の木村 安美氏らは、日本人コミュニティにおける野菜や果物およびそれらの栄養素の摂取と認知症発症リスクと認知症サブタイプとの関連について調査を行った。その結果、野菜とその構成栄養素の摂取量が多いほど、日本人高齢者の認知症リスクが低下することを報告した。BMC Geriatrics誌2022年3月28日号の報告。

神経機能障害を伴う治療抵抗性片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療

 既存する片頭痛予防の2~4の薬剤クラスが奏効しなかった反復性および慢性片頭痛成人患者を対象とした、ランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験の第IIIb相試験「FOCUS試験」において、カルシトニン遺伝子関連ペプチドを標的とするヒト化モノクローナル抗体フレマネズマブの安全性および有効性は明らかとなっている。今回、オーストリア・ Konventhospital Barmherzige Bruder LinzのChristian Lampl氏らは、FOCUS試験の事後分析として、前兆または同様の神経症状の有無により、フレマネズマブの有効性やQOLに対する影響に違いがあるかを検討した。その結果、フレマネズマブは、関連する神経機能症状を伴う片頭痛患者や既存の片頭痛治療薬2~4の薬剤クラスで効果不十分であった患者に対し、神経症状を呈する日数を減少させ、片頭痛を効果的に予防し、QOLを改善することが示唆された。European Journal of Neurology誌オンライン版2022年3月18日号の報告。

高齢者の認知症発症率、人種や民族で異なる/JAMA

 55歳以上の約187万人を平均約10年間追跡したところ、認知症発症率は人種/民族によって有意に異なることが認められた。米国・カリフォルニア大学のErica Kornblith氏らが、米国退役軍人保健局(VHA)医療センターで治療を受けた患者を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。米国では、VHAで治療を受ける患者を含めて人種/民族の多様化が進んでおり、公衆衛生上の重要な課題である認知症は人種/民族的マイノリティの高齢者で発症率が高くなる可能性が示唆されていた。著者は、「人種/民族による差異の原因機序を理解するためには、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2022年4月19日号掲載の報告。

人種差別と認知症(解説:岡村毅氏)

 米国の退役軍人の膨大なデータから、人種(白人、黒人、ヒスパニック、アジア系、先住民)や、住まい(米国を10地方に分けている)で認知症の発症率に差があるかを調べた研究である。  現代の日本で医療をしていると、幸か不幸か人種について思いを巡らせることはほとんどないだろう。しかし20年後はどうだろうか? たまにはこのような論文を読んで頭に衝撃を与えると、それこそ認知刺激になって良い効果があるかもしれない。  まず、言うまでもなく人種を扱う研究は、知らないうちに誰かを傷つけたり、大きな損害を与えたりする可能性があり大変危険である。さらに、地理情報を扱う研究も大変危険になりえる。たとえ研究者にそのような意図は一切なかったとしても偏見を助長してしまうのみならず、ある地域では保険料が上がったりする可能性もあるからである。

アルツハイマー病治療に対する薬物療法の組み合わせ

 認知症の中で最も頻度が高いアルツハイマー病の治療薬として現在本邦で承認されている薬剤は、3種類のコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)とメマンチンの4剤である。実臨床においては、神経変性疾患の多因子性病因に対応するため、単剤療法後の次のステップとして併用療法が用いられる。また、2021年6月に米国で迅速承認されたaducanumabは、脳内のアミロイドβ(Aβ)カスケードを標的とする初の疾患修飾療法(DMT)として注目されている。東京慈恵会医科大学の永田 智行氏らは、アルツハイマー病治療に対する薬物療法の組み合わせについて報告した。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌2022年4月号の掲載。

日本人の身体活動と認知症リスク

 一日の身体活動(PA)や中等度以上の活発な身体活動(MVPA)と認知症との関連を明らかにするため、国立がん研究センターの井平 光氏らは、大規模長期フォローアップ・プロスペクティブ研究を実施した。その結果、とくに男性において休日のMVPAレベルの高さは、認知症リスクの低下に寄与する可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2022年3月1日号の報告。  本プロスペクティブコホート研究は、2000~03年に国内8地域で行われた多目的コホート研究(JPHC Study)の認知障害プロスペクティブ研究(Prospective Disabling Dementia Study)で収集されたデータを用いて実施された。参加対象者は、認知障害に関する利用可能なフォローアップデータを有する成人50~79歳。毎日の総PA、総MVPA、休日のMVPAのデータを収集し、データ分析は2019年2月~2021年7月に行われた。主要アウトカムは、全国介護保険制度に基づく2006~16年(確認期間)の認知障害発生率とした。毎日の総PA、総MVPA、休日のMVPAに関連する認知症リスクは、多変量調整ハザード比(aHR)を用いて算出した。

アルツハイマー病およびMCI患者におけるCOVID-19の臨床アウトカム

 アルツハイマー病や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、高血圧などの共通のリスク因子を有しているといわれる。高血圧の治療においては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が頻繁に使用される。米国・ベントリー大学のYing Wang氏らは、アルツハイマー病または軽度認知障害(MCI)の患者おけるCOVID-19に対する、ACEI/ARB使用の影響について調査した。その結果、ARB使用はアルツハイマー病およびMCIの患者におけるCOVID-19発症リスクの低下に有意な影響を及ぼしていることが報告された。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2022年4月4日号の報告。

長生きをしたい人、とりわけ認知症がない状態で長生きをしたい人へ(解説:岡村毅氏)

老若男女が知りたいことにはっきりと答えてくれる優等生的な論文である。遺伝子は変えようがないが生活習慣は変えられる。どう変えると、認知症がない状態で長生きができるかを調べ、驚きの結果を報告している。変えうる生活習慣とは、(1)食べ物、(2)知的活動、(3)身体活動、(4)喫煙、(5)飲酒である。単純化して見てみよう。食べ物は当然マインド食である。MIND(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)食とは、この論文のラストオーサーのラッシュ大学の博士らがシカゴで開発した有名な食事法であるからここでも使われている。野菜や果実や豆腐が推奨される。上位40%が○(丸)となる。知的活動は読書、美術館、カードゲーム、ボードゲーム、クロスワード、パズル等のことである。こちらも上位40%が○となる。身体活動はウォーキング、ガーデニング、体操、自転車、水泳である。週150分以上で○となる。1日30分弱でよいのである。喫煙については、今吸っていなければ○だ。飲酒は、1日当たり男性は30g以下、女性は15g以下が○だ。缶ビールなら2本あるいは1本である。

健康的な生活習慣で平均余命延長、認知症期間も増えず/BMJ

 健康的な生活習慣は男女とも平均余命の延長と関連しており、65歳以降の人生でアルツハイマー型認知症のない期間の割合が高いことが、米国・ラッシュ大学医療センターのKlodian Dhana氏らによる住民を対象としたコホート研究の結果、示された。健康的な生活習慣がアルツハイマー型認知症のリスク低下ならびに平均余命の延長に関連していることはこれまでも知られていたが、平均余命が延びればそれだけ高齢者が増加し、加齢とともに認知症のリスクは高まるため、むしろ全体の認知症は増加する可能性がある。そのため、生活習慣の改善による平均余命の延長が、アルツハイマー型認知症を有する期間に与える影響について理解する必要があった。著者は、「今回の解析による平均余命の推定は、医療専門家、政策立案者、その他ステークホルダーが将来の医療サービス等を計画するのに役立つだろう」とまとめている。BMJ誌2022年4月13日号掲載の報告。