内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:167

短期間のテストステロン補充療法は心血管イベントを増やさない

 短期間のテストステロン補充療法では、心血管イベントのリスクが有意に上昇することはないとする論文が発表された。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のChanna Jayasena氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、米国内分泌学会(ENDO 2022、6月11~14日、アトランタ)で発表されるとともに、「The Lancet Healthy Longevity」6月号に掲載された。  男性更年期障害とも呼ばれる加齢性腺機能低下症に対して、男性ホルモンのテストステロンを補充する治療法が行われることがある。ただしこの治療は、ヘマトクリット〔血液中の血球成分(大半は赤血球)が占める割合〕の上昇を伴いやすく、血栓ができやすくなる可能性が指摘されている。しかし、それによる心血管イベントや死亡リスクへの影響の有無はよく分かっていない。この疑問解明の手がかりを探るため、Jayasena氏らはこれまでの無作為化比較試験(RCT)の結果を統合して解析する、システマティックレビューとメタ解析という手法による検討を行った。

新型コロナ感染リスクに影響を及ぼす意外な因子とは

 新型コロナウイルスの感染に影響する可能性のある因子について、新たな研究で意外な結果が報告された。この研究では、食物アレルギーは感染リスクの低下と関連するが、喘息と感染リスクは関連しないことが示された。一方、肥満およびBMIの高さは感染リスクを上昇させることも明らかにされた。さらに、13歳未満の小児の感染リスクは13歳以上のティーンや成人と同等だが、小児の感染の4分の3は無症候性であり、小児のいる世帯では家庭内の感染率が高いことも確認された。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の支援を受けて、米National Jewish HealthのMax A. Seibold氏らが実施したこの研究結果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に5月31日掲載された。

ビーガン食は他の食事療法より減量効果が大きい

 肥満や2型糖尿病の管理がうまくいっていないのなら、ビーガン食を試してみるのも、一つの方法かもしれない。それによって管理状態が改善する可能性を示唆するデータが、欧州肥満学会(EASO2022、5月4~7日、オランダ・マーストリヒト)で報告された。ステノ糖尿病センター(デンマーク)のAnne-Ditte Termannsen氏らの研究によるもの。  ビーガン食は植物性食品のみを摂取する最も厳格なベジタリアン食で、「完全菜食主義食」とも呼ばれる食事スタイル。果物や野菜、ナッツ、マメ科植物、種子などが中心の食事で、動物性食品は乳製品も含めていっさい口にしない。Termannsen氏らはこのビーガン食による体重やBMI、血糖値、血清脂質、血圧などへの影響を、システマティックレビューとメタ解析により検討した。

酸素療法を伴う/伴わない中等度のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法 第III相ランダム化比較試験(解説:寺田教彦氏)

本研究は中等症のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法を評価した論文であり、2020年11月11日から2021年5月31日までに登録された本邦でのCOVID-19罹患患者を対象としている。登録患者は121人で、56人が単独療法、61人が併用療法だった。本研究では、経口ファビピラビルにカモスタットとシクレソニドを併用することで安全性の懸念なしに入院期間の短縮ができたことが示されたが、本論文の結果が本邦のCOVID-19治療に与える影響は小さいと考えられる。理由を以下に示す。まず、執筆時点での中等症のCOVID-19肺炎患者に対する治療とそのエビデンスを確認する。本邦ではCOVID-19に対する薬物治療の考え方 第13.1版等にも記載があるように、抗ウイルス薬としてレムデシビルを投与し、臨床病態によっては(酸素投与がある場合に)抗炎症薬としてデキサメタゾンやバリシチニブの投与が行われている。

COVID-19治療の薬物相互作用による有害事象、半数はチェッカーで特定可能

 COVID-19感染流行初期にはドラッグ・リポジショニングと呼ばれる、別の疾患に対して開発・承認された薬剤が投与されてきた。2022年6月末現在、国内ではCOVID-19治療薬として8つの薬剤が承認されているが、世界のCOVID-19患者における薬物相互作用(DDI)に起因する有害事象を特定することを目的としたシステマティック・レビューがJAMA Network Open誌2022年5月号に掲載された。

今冬にインフル流行の懸念、ワクチンを強く推奨/日本ワクチン学会

 近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、季節性インフルエンザは影を潜めることになった。しかし、2022-23シーズンはインフルエンザの流行が懸念されている。その理由として、北半球の流行予測をする指標となる南半球のオーストラリアにおいて、2022年4月中旬以降からインフルエンザの流行が報告されているからである。そこで、日本ワクチン学会(理事長:岡田 賢司)は、6月23日に同学会のホームページで、「2022-23 シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解」を公開した。

2価RSVpreFワクチン、第IIa相チャレンジ試験で有効性を確認/NEJM

 2価の呼吸器多核体ウイルス(RSV)融合前F蛋白ベース(RSVpreF)のワクチンはプラセボと比較して、症候性のRSV感染やウイルス排出の予防効果が高く、安全性に関する明らかな懸念も認めないことが、ドイツ・Pfizer PharmaのBeate Schmoele-Thoma氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年6月23日号で報告された。  本研究は、2価RSVpreFワクチンの有効性と安全性の評価を目的に、単施設で行われた探索的なRSVチャレンジ試験(二重盲検無作為化プラセボ対照第IIa相試験)である(米国Pfizerの助成を受けた)。

オミクロン株BA.4/BA.5、BA.2より免疫逃避しやすい?/NEJM

 現在、米国ではオミクロン株BA.2.12.1、南アフリカではBA.4やBA.5といった、新たな系統への置き換わりが進んでいる。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNicole P. Hachmann氏らが、ワクチン接種者とCOVID-19既感染者において、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価を測定したところ、BA.2.12.1、BA.4、BA.5といった新系統の亜種が、ワクチンと感染による免疫から逃避する可能性があることが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年6月22日号のCORRESPONDENCEに掲載された。  本研究では、ファイザー製ワクチンを2回接種し、その後ブースター接種した27例と、オミクロン株BA.1またはBA.2に感染した27例において、パンデミック初期に米国で初めて分離された従来株(WA1/2020株)、およびオミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価を測定し、その中央値が求められた。なお、BA.4とBA.5はスパイク蛋白の配列が同一である。  主な結果は以下のとおり。

スボレキサントからレンボレキサントへの切り替え治療の睡眠障害に対する有効性

 昭和大学 横浜市北部病院の沖野 和麿氏らは、不眠症治療におけるオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントからレンボレキサントへの切り替えの影響について調査を行った。その結果、スボレキサントからレンボレキサントへの切り替えで、入眠障害の改善が認められたことを報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年6月10日号の報告。  対象は、症状が3ヵ月以上持続し、スボレキサント治療を3ヵ月以上行っている慢性不眠症患者。対象患者をスボレキサント維持群またはレンボレキサント切り替え群の2群に割り付けた。不眠症の4つのサブタイプ(入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害)について調査を行った。両群における12週間後の改善効果を評価するため、ロジスティック回帰分析を用いた。

減量により肥満男性の精子数が上昇

 余分な体重を落とし、その体重を維持することは健康増進につながるが、男性では、減量により精子数も増加する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。コペンハーゲン大学(デンマーク)教授のSigne S. Torekov氏らが実施したこの研究結果は、「Human Reproduction」に5月17日掲載された。  肥満は精子の質の低下と関連することが、過去の研究で報告されている。そこでTorekov氏らは今回、減量によって精子濃度や運動率などの精液のパラメーターの改善が可能であるのか否かを検討した。対象としたBMI32〜43で18〜65歳の男性56人には、まず低カロリー(1日800kcal)の食事療法を8週間続けてもらった。その後、対象者をランダムに4群に割り付けて、維持期間として52週間にわたり以下のいずれかを実施してもらった。第1群は、週150分以上の中等度の有酸素運動、または週75分以上の高強度の有酸素運動を実施、第2群は、リラグルチド(減量目的でも使用される糖尿病薬)を1日当たり3mg服用、第3群はその両方を実施し、第4群はいずれも実施しなかった。運動を伴う介入を行う群には、モチベーションを維持するためのクラスも提供された。