感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

市中肺炎へのセフトリアキソン、1g1日2回vs.2g1日1回~日本の前向きコホート

 セフトリアキソンは、日本感染症学会/日本化学療法学会の感染症治療ガイドラインにおいて市中肺炎入院患者におけるエンピリック治療の第1選択薬の1つに挙げられている。投与方法は1g1日2回点滴静注または2g1日1回点滴静注が推奨されているが、これらを比較した前向き研究は限られている。今回、倉敷中央病院の中西 陽祐氏らが、これらの投与方法の有効性と安全性を前向きコホート研究で比較し、報告した。Journal of Infection and Chemotherapy誌2025年1月号に掲載。

5価髄膜炎菌ワクチン、単回接種で良好な免疫応答/Lancet

 生後9~15ヵ月の乳幼児における通常小児ワクチンに併用接種する髄膜炎菌ワクチンについて、血清型A、C、Y、W、Xを標的とする5価髄膜炎菌結合ワクチン(NmCV-5)の併用接種は、承認済みの4価髄膜炎菌結合ワクチン(MenACWY-TT)の併用接種と比較して安全性に問題はなく、非劣性の免疫応答が惹起されたことが、マリ・Centre pour le Developpement des Vaccins-MaliのFatoumata Diallo氏らNmCV-5 EPI study teamによる第III相単施設二重盲検無作為化対照非劣性試験の結果で示された。侵襲性髄膜炎菌感染症は、アフリカのセネガルからエチオピアにかけて広がるmeningitis belt(髄膜炎ベルト)と呼ばれる国々において、壊滅的な被害をもたらす公衆衛生上の問題となっている。

マラリア対策のための高解像度地図の最新版、COVID-19の影響は?/Lancet

 オーストラリア・カーティン大学のDaniel J. Weiss氏らは、マラリアの空間的に不均一な進展を追跡し、戦略的なマラリア対策に役立てる目的で、マラリアの感染有病率、発生率、死亡率に関する世界的な高解像度地図を作成した。この地図により、2000年代初頭からのマラリア対策への前例のない投資によって、マラリアがもたらす莫大な負担が回避されたが、アフリカの症例発生率は横ばいで推移しており、リスク人口の急速な増加によりアフリカの症例発生数は増加し、その結果として世界の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)を病原体とする症例発生数は、大規模投資以前の水準に戻っていることが示された。研究の成果は、Lancet誌2025年3月22日号に掲載された。

敗血症性ショック、強化学習モデルのバソプレシン投与で死亡率低下/JAMA

 すでにノルエピネフリンを投与されている敗血症性ショック患者において、臨床医による実際の平均的な治療パターンと比較して強化学習(reinforcement learning)モデルは、より多くの患者で、より早期に、ノルエピネフリンの用量がより少ない時点でのバソプレシンの投与開始を推奨し、これに準拠すると死亡率が低下することが、フランス・パリ・シテ大学のAlexandre Kalimouttou氏らが実施した「OVISS試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月18日号で報告された。  研究グループは、複数の電子健康記録のデータセットに強化学習を適用し、ノルエピネフリンの投与を受けている敗血症性ショックの成人の重症患者において、短期的アウトカムと入院中のアウトカムの両方を改善するよう最適化されたバソプレシンの投与開始規則の治療結果を導き出し、これを検証し、評価を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。

新型コロナ入院患者、退院後も2年以上にわたり死亡リスクは高い

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院歴がある人は、回復して自宅に戻れたとしても、決して安心できる状態とは言えないことが新たな研究で示唆された。COVID-19で入院した患者は、初回の感染から最長で2年半の間、全死亡リスクの高いことが明らかになったという。パリ・ビシャ病院(フランス)のSarah Tubiana氏らによるこの研究の詳細は、「Infectious Diseases」に2月27日掲載された。  Tubiana氏は、「これまで人々の関心の多くは新型コロナウイルスの短期的な危険性に向けられてきたが、われわれの研究では、COVID-19による入院歴のある人では、数カ月後、さらには数年後まで、重度の合併症リスクが高い状態が続くことが示された。この公衆衛生に対する長期的な影響は重大だ」と指摘する。

デジタルアドヒアランス技術は、結核の治療アウトカムを改善するか/Lancet

 結核治療では、治療のアドヒアランスが不良であると治療アウトカムの悪化のリスクも高まることが知られており、近年、服薬アドヒアランスを改善するためのデジタル技術の評価が進められ、WHOは条件付きでこれを推奨している。オランダ・KNCV Tuberculosis FoundationのDegu Jerene氏らは、ウェブベースのアドヒアランスプラットフォームと連携したスマートピルボックスまたは薬剤ラベルを用いたデジタルアドヒアランス技術(digital adherence technologies:DAT)は、薬剤感受性結核患者における不良な治療アウトカムを低減しないことを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2025年3月11日号で報告された。

レナカパビル筋注、年1回でHIV予防の可能性/Lancet

 年1回筋肉内投与の2種類のレナカパビル製剤は血漿中濃度の中央値に関して、年2回皮下投与の第III相試験において有効性と関連した血漿中濃度を、少なくとも56週間にわたり上回った。2種類の製剤はどちらも安全で忍容性も良好であった。米国・Gilead SciencesのVamshi Jogiraju氏らが、年1回筋肉内投与の2種類のレナカパビル製剤の、第I相非盲検試験の結果を報告した。著者は、「今回示されたデータは、年1回の投与間隔で生物医学的にHIVの予防が可能であることを示唆するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年3月11日号掲載の報告。  研究グループは、18~55歳のHIV非感染者を対象に、2種類のレナカパビル遊離酸製剤(製剤1:エタノール5%w/w、製剤2:エタノール10%w/w)を、腹側臀部筋肉内注射として単回5,000mg投与し、薬物動態、安全性および忍容性を評価した。

細菌性膣症、男性パートナーの治療で再発予防/NEJM

 細菌性膣症は生殖可能年齢の女性の約3分の1に認められ、再発は一般的である。細菌性膣症の原因菌のパートナー間での感染エビデンスは、半面で男性パートナーへの治療が治癒を高めることも示唆することから、オーストラリア・モナシュ大学のLenka A. Vodstrcil氏らStepUp Teamは、一夫一婦関係にあるカップルを対象とした非盲検無作為化比較試験を行い、細菌性膣症の女性への治療に加えて、男性パートナーに対して経口および局所抗菌薬治療を行うことにより、12週間以内の細菌性膣症の再発率が標準治療と比べて低下したことを報告した。NEJM誌2025年3月6日号掲載の報告。

高齢の市中肺炎、セフトリアキソンvs.スルバクタム・アンピシリン

 高齢者の市中肺炎の初期対応として、嫌気性菌をカバーするスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)などが用いられることがある。しかし、カナダの市中誤嚥性肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きコホート研究では、嫌気性菌カバーは院内死亡リスクを低下させず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させたことが報告されている1)。そこで、山本 舜悟氏(大阪大学)らの研究グループは、市中肺炎により入院した65歳以上の患者を対象としたデータベース研究を実施し、セフトリアキソン(CTRX)とSBT/ABPCを比較した。その結果、SBT/ABPCのほうがCTRXよりも院内死亡率が高かった。本研究結果は、Open Forum Infectious Diseases誌2025年3月5日号に掲載された。

リファンピシン耐性キノロン感性結核に対する経口抗菌薬(解説:寺田教彦氏)

結核は、依然として世界的な公衆衛生の問題であり、2023年WHO世界結核対策報告書によると、2022年には約1,060万人が結核を発症し、130万人が死亡したとされる。結核治療を困難にする要因の1つに薬剤耐性結核(MDR/RR-TB)があり、今回の対象であるリファンピシン耐性結核は、毎年約41万人が罹患すると推定されている。このうち治療を受けたのは40%にすぎず、その治療成功率は65%にとどまっている(WHO. Global tuberculosis report 2023.)。これは、従来のレジメンが18~24ヵ月と治療期間が長く、アミノグリコシド系やポリペプチド系の注射製剤が含まれ、副作用の問題もあったためと考えられる。