感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

医薬品供給不足の現在とその原因は複雑/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、「医薬品供給等の最近の状況」をテーマに、メディア懇談会を2月19日に開催した。懇談会では、一般のマスメディアを対象に現在問題となっている医薬品の安定供給の滞りの原因と経過、そして、今後の政府への要望などを説明した。  はじめに松本氏が挨拶し、「2020年夏頃より医薬品供給などに問題が生じてきたが、4年経過しても解決していない。後発医薬品だけではない、全体的な問題であり、その解消に向けて医師会も政府などに要望してきた。複合的な問題であるが、早く解消され、安心・安全な医薬品がきちんと医師、患者さんに届くことを望む」と語った。

コロナ関連の小児急性脳症、他のウイルス関連脳症よりも重篤に/東京女子医大

 インフルエンザなどウイルス感染症に伴う小児の急性脳症は、欧米と比べて日本で多いことが知られている。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症においても、小児に重篤な急性脳症を引き起こすことがわかってきた。東京女子医科大学附属八千代医療センターの高梨 潤一氏、東京都医学総合研究所の葛西 真梨子氏らの研究チームは、BA.1/BA.2系統流行期およびBA.5系統流行期において、新型コロナ関連脳症とそれ以外のウイルス関連脳症の臨床的違いを明らかにするために全国調査を行った。

日本の大学生の血圧、コロナ禍後に上昇

 日本の大学生における血圧の5年ごとの調査で、コロナ禍後の2023年に血圧が上昇していたことが、慶應義塾大学の安達 京華氏らの研究でわかった。一方、喫煙・飲酒習慣や睡眠不足、精神的ストレス、ファストフードやスナック菓子の摂取は減少、運動習慣は増加しており、血圧上昇の原因は特定されなかった。Hypertension Research誌2025年2月号に掲載。  高血圧は中高年だけでなく、若年者においても心血管疾患のリスクを高める。コロナ禍では世界中で血圧の上昇傾向が観察されたが、若年成人については十分な評価がなされていない。本研究では、コロナ禍の前後を含む2003~23年の20年間、5年ごとに大学生(10万6,691人)の血圧を調査した。

重度の感染症による入院歴は心不全リスクを高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどの感染症による入院は、心臓病リスクを高める可能性があるようだ。重度の感染症で入院した経験のある人が後年に心不全(HF)を発症するリスクは、入院歴がない人と比べて2倍以上高いことが新たな研究で示された。米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて米メイヨー・クリニックのRyan Demmer氏らが実施したこの研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association」に1月30日掲載された。  この研究では、1987年から2018年まで最大31年間にわたる追跡調査を受けたARIC研究参加者のデータを分析して、感染症関連の入院(infection-related hospitalization;IRH)とHFとの関係を評価した。ARIC研究は、アテローム性動脈硬化リスクに関する集団ベースの前向き研究で、1987〜1989年に45〜64歳の成人を登録して開始された。本研究では、研究開始時にHFを有していた人などを除外した1万4,468人(試験開始時の平均年齢54歳、女性55%)が対象とされた。対象者は、2012年までは毎年、それ以降は2年に1回のペースで追跡調査を受けていた。左室駆出率(LVEF)が得られた患者については、LVEFが正常範囲(50%以上)に保たれたHF(HFpEF)患者と、LVEFが低下(50%未満)したHF(HFrEF)患者に2分して検討した。

米国ではCOVID-19が依然として健康上の大きな脅威

 新型コロナウイルスは依然として米国人の健康に対する脅威であり、インフルエンザウイルスやRSウイルスよりも多くの感染と死亡を引き起こしていることが、新たな研究で示唆された。米国退役軍人省(VA)ポートランド医療システムのKristina Bajema氏らが「JAMA Internal Medicine」に1月27日報告したこの研究によると、2023/2024年の風邪・インフルエンザシーズン中に米国退役軍人保健局(VHA)で治療を受けた呼吸器感染症患者の5人中3人(60.3%)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していたという。

RSV感染症vs.インフル、重症度と転帰を比較~日本の成人5万7千例

 RSウイルス(RSV)は小児だけでなく成人にも重大な影響を及ぼすが、成人のRSV感染症の入院患者の重症度や転帰に関する報告は少ない。今回、東京科学大学の井上 紀彦氏らがRSV感染症とインフルエンザの成人入院患者を比較した後ろ向き観察研究の結果、RSV感染症は入院中だけではなく長期アウトカムにおいてもインフルエンザと同等以上の健康上の脅威が示された。Infectious Diseases誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。  本研究では、日本のDPCシステムに基づく358病院の請求データを基に、2010年4月~2022年3月にRSV感染症またはインフルエンザで入院した18歳以上の5万6,980例を対象とした。短期アウトカムは入院中の重症度指標として医療資源(ICU入室、酸素補充、機械的人口換気、体外膜酸素療法)利用率および院内死亡率とし、長期アウトカムは生存者の退院後1年以内の再入院および入院後1年以内の全死亡とした。逆確率重み付けによる調整後、ポアソン回帰を用いてリスクを推定した。

市中肺炎、ステロイドを検討すべき患者は?

 市中肺炎(CAP)は、過剰な炎症反応が死亡と関連することから、ステロイドの併用が有効である可能性が指摘されている。そこで、複数の無作為化比較試験(RCT)やシステマティックレビュー・メタ解析が実施されているが、ステロイドの併用による死亡率への影響については議論が続いている。そのような背景から、オランダ・エラスムス大学医療センターのJim M. Smit氏らの研究グループは、CAPによる入院患者を対象としたRCTの個別患者データ(IPD)を用いたメタ解析を実施し、ステロイドの併用の30日死亡率への影響を評価した。その結果、ステロイドの併用により30日死亡率が低下し、とくにCRP高値の患者集団で有用である可能性が示された。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2025年1月29日号に掲載された。

高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)のヒト感染(解説:寺田教彦氏)

本報告では、2024年3月から10月に米国で確認された高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)のヒト感染例46症例の特徴が記されている。概要は「鳥インフルエンザA(H5N1)、ヒト感染例の特徴/NEJM」に記載のとおりである。高病原性鳥インフルエンザ(Highly pathogenic avian influenza:HPAI)ウイルスA(H5N1)は、香港における生鳥市場を介したヒト感染例が1997年に報告されて以降、渡り鳥により世界中に広がり、世界24ヵ国で900例以上の報告がある。かつては、HPAIV(H5N1)はヒトや哺乳類には感染しにくく、ヒトヒト感染はまれだが、ヒトの感染例では重症化することがあり、死亡率も高い(約50%)と考えられていた。しかし、2003年ごろから哺乳類の感染事例が報告され、2024年3月下旬に米国の酪農場でヤギや乳牛で感染事例が報告されて以降は、米国内の複数州から乳牛の感染事例の報告が相次いでいた。

適切な感染症管理が認知症のリスクを下げる

 認知症は本人だけでなく介護者にも深刻な苦痛をもたらす疾患であり、世界での認知症による経済的損失は推定1兆ドル(1ドル155円換算で約155兆円)を超えるという。しかし、現在のところ、認知症に対する治療は対症療法のみであり、根本療法の開発が待たれる。そんな中、英ケンブリッジ大学医学部精神科のBenjamin Underwood氏らの最新の研究で、感染症の予防や治療が認知症を予防する重要な手段となり得ることが示唆された。  Underwood氏によると、「過去の認知症患者に関する報告を解析した結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬の使用は、いずれも認知症リスクの低下と関連していることが判明した」という。この研究結果は、同氏を筆頭著者として、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に1月21日掲載された。

COVID-19は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群リスクを高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の発症リスクを高めるようだ。新型コロナウイルス感染者は、ME/CFSを発症するリスクが5倍近く高くなることが、新たな研究で示された。研究グループは、このことからME/CFSの新規症例がパンデミック前の15倍に増加している理由を説明できる可能性があるとの見方を示している。米ベイトマンホーンセンターのSuzanne Vernon氏らによるこの研究結果は、「Journal of General Internal Medicine」に1月13日掲載された。Vernon氏らは、「われわれの研究結果は、新型コロナウイルス感染後にME/CFSの発症率と発症リスクが大幅に増加することのエビデンスとなるものだ」と結論付けている。