感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

小児用ワクチン中のアルミニウム塩は慢性疾患と関連しない

 120万人以上を対象とした新たな研究で、小児用ワクチンに含まれるアルミニウム塩と自閉症、喘息、自己免疫疾患などの長期的な健康問題との間に関連は認められなかったことが示された。アルミニウム塩は、幼児向け不活化ワクチンの効果を高めるためのアジュバントとして使用されている。スタテンス血清研究所(デンマーク)のAnders Hviid氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。  アルミニウム塩はワクチンのアジュバントとして長年使われているものの、アルミニウム塩が慢性自己免疫疾患やアトピー性皮膚炎、アレルギー、神経発達障害のリスクを高めるのではないかとの懸念から、ワクチン懐疑論者の標的にもなっている。

マラリア抑制にイベルメクチンが有効/NEJM

 イベルメクチンは、内部寄生虫と外部寄生虫の双方に有効なエンデクトサイドであり、集団投薬によりオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症の伝播を抑制することが知られている。スペイン・ISGlobalのCarlos Chaccour氏らは「BOHEMIA試験」において、マラリアが高度に蔓延した地域に居住する小児では、アルベンダゾールと比較してイベルメクチンの集団投薬は、マラリア感染率が有意に低く、安全性に関する懸念はみられないこと示した。研究の成果は、NEJM誌2025年7月24日号に掲載された。  BOHEMIA試験は、マラリア伝播の抑止におけるイベルメクチンの安全性と有効性の評価を目的とする非盲検評価者盲検クラスター無作為化対照比較試験であり、ケニア海岸地帯のマラリアが蔓延し、殺虫処理済みの蚊帳の普及率と使用率が高い地方(クワレ郡[人口86万6,820人])で、クラスターとして世帯地域を登録した(Unitaidの助成を受けた)。

U=Uは、母子感染予防にも適応できるか?(解説:岡慎一氏)

HIVの母子感染予防を論じた論文である。その前に、U=Uについて簡単に解説しておく。U=Uとは、「治療で血中のウイルス量(VL)が検出限界以下(<50copies/mL)になれば、HIVはうつらない:Undetectable equals Untransmittable」を略したものである。U=Uは、782組の片方がHIV+で治療を受けていてVLが検出限界以下、片方がHIV-のゲイカップルが、2年間に7万6,088回のコンドーム無しの肛門性交を行っても感染はゼロであったという、臨床試験の結果から導き出された結論である。今回の論文は、「最も感染リスクが高いコンドーム無しの肛門性交でもうつらないのであるから、母子感染も大丈夫ではないか?」という疑問に答えるものである。母子感染には、妊娠中、出産時、授乳時という3つの場面がある。4,675例の妊婦の出産データから、妊娠前からHIVがわかっており、治療により妊娠期間中VLが検出限界以下の場合、母子感染はゼロで、出産に関してはU=Uが示された。出産方法に関しては、経膣分娩でも帝王切開でもウイルス量にかかわらず感染率に差はなかった。また、データが不十分ではあるが、母乳に関しては、ウイルスが検出限界以下でも、感染率は0.1%と非常に低いもののゼロではなかった。

グローバルヘルスの開発援助、今後5年でさらに低下か/Lancet

 米国・保健指標評価研究所(IHME)のAngela E. Apeagyei氏らは、幅広いデータソースを用い、1990~2030年の保健分野の開発援助(Development assistance for health:DAH)について分析し、主要供与国の援助削減により2025年のDAHは2009年の水準まで落ち込み、今後5年間でさらに低下するとの予測を報告した。DAHは新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に最高水準に達したが、その後、世界経済の不確実性や各国での予算の取り合いが増す中で減少し、2025年初頭に米国や英国など主要供与国が援助の大幅な削減を発表したことで、中・低所得国における保健財政の先行きに対する懸念が高まっている。著者は、「DAHの大幅削減は保健格差の拡大を招く恐れがある。過去30年間で達成された世界的な健康問題に関する大きな成果を守るため、被援助国における効率性の向上、戦略的な優先順位付け、財政レジリエンスの強化が急務である」と述べている。Lancet誌2025年7月26日号掲載の報告。

米国の国際援助打ち切り、世界の死亡率に及ぼす影響/Lancet

 米国国際開発庁(USAID)の資金援助は、過去20年間で低所得国および中所得国(LMICs)における成人および小児の死亡率低下に大きく貢献しており、2025年前半に開始された突然の資金削減が撤回されない場合、2030年までに驚くべき数の回避可能な死亡が発生する可能性があることを、ブラジル・Federal University of BahiaのDaniella Medeiros Cavalcanti氏らが明らかにした。USAIDは人道支援および開発援助における世界最大の資金提供機関であるが、その活動が世界の健康に与える影響、ならびに資金削減がもたらす影響を評価した研究はほとんどなかった。Lancet誌2025年7月19日号掲載の報告。

無害と考えられていたウイルスがパーキンソン病に関与か

 かつては人間には無害だと考えられていた一般的なウイルスが、パーキンソン病(PD)に関連している可能性のあることが新たな研究で明らかになった。PD患者の剖検脳の半数から、C型肝炎と同じフラビウイルス科に属する血液媒介性ウイルスであるヒトペギウイルス(HPgV)が見つかったのに対し、PDではない人の脳からは検出されなかったという。米ノースウェスタン・メディシンで神経感染症およびグローバル神経学部門長を務めるIgor Koralnik氏らによるこの研究結果は、「JCI Insight」に7月8日掲載された。  Koralnik氏は、「HPgV感染症は珍しいものではなく、症状も現れないが、脳への感染が頻繁に起こることはこれまで知られていなかった。PD患者の脳でこれほど高頻度にHPgVが認められたのに対し、PDではない人では認められなかったことには驚かされた」と話している。

帯状疱疹、発生率が高まる時期は?/MDV

 帯状疱疹ワクチンの65歳以上への定期接種が2025年4月よりスタートした。同年3月に「帯状疱疹診療ガイドライン2025」の初版が発刊されたほか、海外での新たな研究では、帯状疱疹ワクチン接種による認知症リスクの低下や心血管疾患リスク抑制も示唆されており、今注目されている疾患領域である。  その帯状疱疹の国内患者推移について、メディカル・データ・ビジョンは自社の保有する国内最大規模の診療データベースから抽出した317施設の2019年1月~2025年3月のデータを対象に調査を行い、7月15日にプレスリリースを公表した。

米国での麻疹症例数、過去25年間で最多に

 米ジョンズ・ホプキンス大学により設立されたCenter for Outbreak Response Innovation(CORI)のデータによると、米国では7月時点で1,270例以上の麻疹症例が確認され(注:2025年7月15日時点で1,309例)、過去25年間で最多となっている。この数字は2019年に記録された1,274件を上回っている。  専門家は、報告されていない症例も多いことから、実際の症例数はこの数字よりもはるかに多い可能性があると見ている。現時点で、すでにテキサス州で小児2人、ニューメキシコ州で成人1人の計3人が麻疹により死亡している。CNNは、これらの3人はいずれもワクチンを接種していなかったと報じている。

非HIVニューモシスチス肺炎、全身性ステロイドの有用性は?

 非HIV患者におけるニューモシスチス肺炎は、死亡率が30~50%と高く予後不良である。HIV患者のニューモシスチス肺炎では、全身性ステロイドが有効とされるが、非HIV患者における有用性は明らかになっていない。そこで、フランス・Hopital Saint-LouisのVirginie Lemiale氏らの研究グループは、非HIVニューモシスチス肺炎に対する早期の全身性ステロイド追加の有用性を検討する無作為化比較試験を実施した。その結果、主要評価項目である28日死亡率に有意な改善はみられなかったものの、90日死亡率や侵襲的機械換気の使用率が低下した。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2025年7月10日号に掲載された。

家畜の糞尿は薬剤耐性遺伝子の主要なリザーバー

 基本的な抗菌薬が効かない細菌が増える中、薬剤耐性の問題は世界的に喫緊の公衆衛生上の脅威となっている。こうした中、家畜の糞尿が、人間の健康を脅かす可能性のある薬剤耐性遺伝子の主要なリザーバー(貯蔵庫)となっていることが、新たな研究で明らかになった。米ミシガン州立大学微生物学教授のJames Tiedje氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に6月27日掲載された。  農業での抗菌薬の過剰な使用が薬剤耐性菌の拡大を招く一因となっている可能性に対する懸念が広がりつつある。研究の背景情報によると、毎年9万3,000トン以上の抗菌薬が家畜に使用されている。また、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌への感染例は毎年280万件以上発生しており、3万5,000人以上が死亡している。しかし、薬剤耐性菌の農場から人間への感染経路については不明点が多い。