感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

バロキサビル、家庭内のインフルエンザ感染予防効果は?/NEJM

 インフルエンザ発症者へのバロキサビルの単回経口投与は、プラセボと比較し家庭内接触者へのインフルエンザウイルスの伝播を有意に抑制したことが示された。米国・University of Michigan School of Public HealthのArnold S. Monto氏らが、世界15ヵ国で実施された国際共同第IIIb相試験「CENTERSTONE試験」の結果を報告した。バロキサビルはインフルエンザウイルスの排出を速やかに減少させることから、ウイルス伝播を抑制する可能性が示唆されていた。ノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビルなど)による治療では、接触者への伝播を予防するという十分なエビデンスは示されていなかった。NEJM誌2025年4月24日号掲載の報告。

C. difficileはICUの環境表面からも伝播する

 院内感染は、想像されているよりもはるかに容易に病院内で広がるようだ。新たな研究で、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile、現名:Clostridioides difficile〔クロストリジオイデス・ディフィシル〕)の伝播について、集中治療室(ICU)の環境表面や医療従事者(HCP)の手指から採取したサンプルも含めて調べた結果、患者から採取したサンプルのみを用いた場合と比べて3倍以上多くの伝播事例が確認されたという。C. difficileは、大腸炎や下痢などを引き起こす院内感染症の原因菌として知られている。米ユタ大学の疫学者で感染症専門医であるMichael Rubin氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に4月4日掲載された。

新型コロナ後遺症としての勃起不全が調査で明らかに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者では、回復後も長期にわたりその後遺症に悩まされるケースがある。その後遺症の中には男性における勃起不全(ED)も含まれるが、後遺症としてのEDの有病率とそれに関連する根本的要因が示唆されたという。横浜市立大学附属病院感染制御部の加藤英明氏らが行った研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月21日掲載された。  COVID-19感染後のEDは、急性期における炎症性サイトカインや低酸素症による血管内皮障害が原因で進行する。また、身体的・精神的なストレスもEDに影響する。ワクチン接種や早期治療は、この感染症の後遺症の発症率を低下させる可能性はあるが、EDの発症を防ぐための予防策については不明である。加藤氏らは、COVID-19感染後のEDの有病率とその根本的な要因を明らかにするために感染患者を対象とした症例対照研究を実施した。

帯状疱疹生ワクチン、認知症を予防か/JAMA

 米国・スタンフォード大学のMichael Pomirchy氏らは、オーストラリアにおける準実験的研究の結果、帯状疱疹(HZ)ワクチンの接種が認知症のリスクを低下させる可能性があることを示した。オーストラリアでは、全国的なワクチン接種プログラムにおいて2016年11月1日から70~79歳を対象に弱毒HZ生ワクチンの無料接種を開始。同時点で1936年11月2日以降に生まれた人(2016年11月1日時点で80歳未満)が対象で、それ以前に生まれた人(80歳になっていた人)は対象外であったことから、著者らは、年齢がわずかに異なるだけで健康状態や行動は類似していると想定される集団を比較する準実験的研究の利点を活用し、HZワクチン接種の適格基準日である1936年11月2日の前後に生まれた人について解析した。結果を踏まえて著者は、「先行研究であるウェールズでの知見を裏付ける結果であり、認知症に対するHZワクチン接種の潜在的利益には因果関係がある可能性が高いエビデンスを提供するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年4月23日号掲載の報告。

帯状疱疹ワクチンで認知症リスク20%低下/Nature

 帯状疱疹ワクチンは、痛みを伴う発疹の予防だけでなく、認知症の発症から高齢者を守る効果もあるようだ。新たな研究で、英国のウェールズで帯状疱疹ワクチンが利用可能になった際にワクチンを接種した高齢者は、接種しなかった高齢者に比べて認知症の発症リスクが20%低いことが示された。米スタンフォード大学医学部のPascal Geldsetzer氏らによるこの研究の詳細は、「Nature」に4月2日掲載された。  帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の原因ウイルスでもある水痘・帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる。このウイルスは、子どもの頃に水痘に罹患した人の神経細胞内に潜伏し、加齢や病気により免疫力が弱まると再び活性化する。帯状疱疹ワクチンは、高齢者の水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫反応を高め、潜伏中のウイルスが体表に現れて帯状疱疹を引き起こすのを防ぐ働きがある。しかし、最近の研究では、特定のウイルス感染が認知症リスクを高める可能性が示唆されていることから、Geldsetzer氏らは、帯状疱疹ワクチンにも脳を保護する効果があるのではないかと考えた。

PPI投与量とC. difficile感染症リスクの関係~用量反応メタ解析

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用者は非使用者と比べClostridioides difficile感染症(CDI)リスクが上昇することが報告されているが、これまでのメタ解析では、用量反応的な関係についての検討は行われていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMatilda Finke氏らによる用量反応メタ解析の結果、PPI投与量とCDIリスクとの関連は、正の相関を示すことが明らかになった。Journal of Infection誌オンライン版4月14日号掲載の報告。  本研究では、PubMed、Embase、Web of Science、およびCochrane Libraryを用いて、PPIとCDIに関する縦断研究を検索した。収集されたデータは、1日当たりのPPI投与量(DDD:defined daily doses)およびPPI治療期間に基づく2つの2段階ランダム効果用量反応メタ解析にそれぞれ組み入れられた。PPI非使用者と比較した補正相対リスク(RR)と95%信頼区間が推定された。

敗血症性ショックにおけるバソプレシンの最適な開始時期(OVISS強化学習研究)(解説:寺田教彦氏)

敗血症性ショックは「急性循環不全により細胞障害・代謝異常が重度となり、ショックを伴わない敗血症と比べて死亡の危険性が高まる状態」と定義される(『日本版敗血症診療ガイドライン2024https://doi.org/10.3918/jsicm.2400001』)。早期診断のためのスコアリングやバンドルの整備、知識の広報などのキャンペーンにより、徐々に死亡率は改善しているものの、今でも重篤な病態である。敗血症性ショックの初期蘇生では、蘇生輸液のみで目標血圧を維持できない場合、並行して血管収縮薬の投与も行われる。世界的な診療ガイドラインを参考にすると(Executive Summary: Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for the Management of Sepsis and Septic Shock 2021 PMID: 34643578)、第一選択薬としてノルアドレナリンが使用されているが、ノルアドレナリンのみで血圧が保てない場合に、第二選択薬としてバソプレシンが使用されている。本邦のガイドライン『日本版敗血症診療ガイドライン2024https://doi.org/10.3918/jsicm.2400001』においても、「CQ3-7:敗血症性ショックに対して、血管収縮薬をどのように使用するか?」に対して、「ノルアドレナリン+バソプレシン」と第二選択薬としてバソプレシンの使用が弱く推奨されている。バソプレシンは、高価な薬剤ではなく国内でも広く使用されているが、使用開始のタイミングについては明確な基準がなく、現場では医師や医療機関ごとに判断されているのが実情である。

セフトリアキソンで腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症を治療できるか

 セフトリアキソン(CTRX)は尿路感染症における選択薬の1つであるが、他のβ-ラクタム系抗菌薬と比較して尿中排泄率が低いという欠点がある。わが国では2023年にセフォチアム(CTM)が不足したことから、尿路感染症に対するCTRXの需要が高まっている。今回、愛知医科大学の柴田 祐一氏らが、腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症に対するCTRXと他のβ-ラクタム系抗菌薬の有効性を比較したところ、30日全死亡率は同様であった。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2025年4月9日号に掲載。

65歳未満の市中肺炎、GL推奨の短期治療の実施率~日本人約2万5千例の解析

 肺炎診療ガイドライン2024では、市中肺炎治療において、初期治療が有効な場合には1週間以内の短期抗菌薬治療を実施することが弱く推奨されている。しかし、その実施率は高くないことが示された。酒井 幹康氏(名城大学/豊田厚生病院)らの研究グループが、65歳未満の成人市中肺炎における短期治療の実施状況について、大規模レセプトデータベースを用いて検討した結果をJournal of Infection and Chemotherapy誌2025年5月号で報告した。

睡眠不足の看護師は感染症に罹患しやすい

 夜間勤務(以下、夜勤)の影響で睡眠不足を感じている看護師は、風邪やその他の感染症への罹患リスクの高いことが新たな研究で明らかになった。研究グループは、「シフト勤務が睡眠の質に与える影響が看護師の免疫系に打撃を与え、感染症にかかりやすくさせている可能性がある」と述べている。Haukeland大学病院(ノルウェー)睡眠障害コンピテンスセンターのSiri Waage氏らによるこの研究結果は、「Chronobiology International」に3月9日掲載された。  この研究は、ノルウェーの看護師1,335人(女性90.4%、平均年齢41.9歳)を対象に、睡眠時間、睡眠負債、およびシフト勤務の特徴と自己報告による感染症の罹患頻度との関連を検討したもの。これらの看護師は、過去3カ月間における睡眠時間、睡眠負債、シフト勤務、および感染症(風邪、肺炎/気管支炎、副鼻腔炎、消化器感染症、泌尿器感染症)の罹患頻度について報告していた。