消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:15

アスピリンはPI3K経路に変異のある大腸がんの再発リスクを低下させる/ASCO-GI

 低用量アスピリンの毎日の服用は、大腸がん患者のがん再発を抑制する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。この研究では、PI3K(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ)シグナル伝達経路(以下、PI3K経路)の遺伝子に変異のある大腸がん患者に1日160mgのアスピリンを毎日、3年間投与したところ、がんの再発リスクが半減することが示された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のAnna Martling氏らによるこの研究は、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025、1月23~25日、米サンフランシスコ)で発表された。  PI3K/AKT(プロテインキナーゼB)/mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)シグナル伝達経路は、細胞の成長や増殖など細胞の生存に関わるさまざまな機能に関与する重要な経路である。この経路の異常は、がんや糖尿病、自己免疫疾患などの発症に関連することが知られている。過去の後ろ向き研究では、PI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路において重要な役割を果たす遺伝子であるPIK3CAの変異の有無により、アスピリンによる治療に対する反応を予測できる可能性のあることが報告されている。しかし、これらの研究はランダム化比較試験ではなく、因果関係を証明するには不十分だった。

肥満者の鎮静下内視鏡検査、高流量鼻カニューレ酸素投与で低酸素症が減少/BMJ

 肥満患者への鎮静下消化管内視鏡検査中に、高流量鼻カニューレ(HFNC)を介し酸素投与を行うことで、他の有害事象が増加することなく、低酸素症、無症候性呼吸抑制、および重度低酸素症の発生率が有意に減少した。中国・上海交通大学のLeilei Wang氏らが、上海の大学病院3施設で実施した無作為化並行群間比較試験の結果を報告した。HFNCによる酸素投与は、正常体重患者における鎮静下消化管内視鏡検査中の低酸素症の発生率を減少させるが、肥満患者におけるHFNCを介した酸素投与に関する見解には議論の余地があった。BMJ誌2025年2月11日号掲載の報告。

第22回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2025

 日本臨床腫瘍学会は2025年2月13日にプレスセミナーを開催し、3月6日~8日に神戸で開催される第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)の注目演題などを紹介した。今回の学会長は徳島大学の⾼⼭ 哲治氏が務め、「Precision Oncology Toward Practical Value for Patients」というテーマが設定された。  2019年にがん遺伝⼦パネル検査が保険収載となり今年で5年を迎える。検査数は毎年順調に増加しているものの、「検査を受けられるのは標準治療終了後、または終了見込み時に限られる」「保険適応となる薬剤が限られ、かつ承認外薬を使うのは煩雑」などの要因から、検査後に推奨された治療に到達する患者は10%程度に限られる現状がある。日本臨床腫瘍学会をはじめとしたがん関連学会は長くこの状況を問題とし、改善を図る活動を行ってきた。今回のテーマにもそうしたメッセージが込められている。

抗菌薬による虫垂炎治療、虫垂切除の回避率は?~メタ解析

 個々の患者データを用いたメタ解析の結果、急性虫垂炎に対する抗菌薬治療によって、最初の1年間で約3分の2の患者が虫垂切除を回避できたものの、虫垂結石を伴う場合は合併症のリスクが高まったことを、オランダ・アムステルダム大学のJochem C. G. Scheijmans氏らが明らかにした。Lancet Gastroenterology & Hepatology誌2025年3月号掲載の報告。  これまでのランダム化比較試験によって、合併症のない急性虫垂炎に対する抗菌薬は、虫垂切除術に代わる効果的で安全な治療とされている。しかし、これらの試験はそれぞれの包含基準が異なり、アウトカムや合併症の定義も異なっている。そこで研究グループは、個々の患者データのメタ解析を実施し、虫垂切除術と比較した抗菌薬治療の安全性と有効性を評価した。

便秘が心不全再入院リスクと関連―DPCデータを用いた大規模研究

 心不全による再入院のリスクに便秘が関与している可能性が報告された。東京都立多摩総合医療センター循環器内科/東京大学ヘルスサービスリサーチ講座の磯貝俊明氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation Reports」11月号に掲載された。  便秘は血圧変動などを介して心不全リスクを高める可能性が想定されているが、心不全の予後との関連を調べた研究は限られている。磯貝氏らは、便秘が心不全による再入院リスクに関連しているとの仮説の下、診断群分類(DPC)医療費請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。

ICI関連心筋炎の診断・治療、医師の経験値や連携不足が影響

 2023年にがんと心血管疾患のそれぞれに対する疾病対策計画が公表され、その基本計画の一環として、循環器内科医とがん治療医の連携が推奨された。しかし、当時の連携状態については明らかにされていなかったため、新潟県内の状況を把握するため、新潟県立がんセンター新潟病院の大倉 裕二氏らは「免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎(ICIAM)についての全県アンケート調査」を実施。その結果、ICIAMではアントラサイクリン関連心筋症(ARCM)と比較し、循環器内科医とがん治療医の双方の経験や組織的な対策が少なく、部門間連携の脆弱性が高いことが明らかとなった。Circulation Report誌オンライン版2025年2月4日号掲載の報告。

化学療法誘発性末梢神経障害患者の10人に4人が慢性的な痛みを経験

 化学療法誘発性の末梢神経障害(chemotherapy induced peripheral neuropathy;CIPN)の診断を受けたがん患者の10人に4人が慢性的な痛みを抱えていることが、新たなシステマティックレビューとメタアナリシスにより明らかになった。米メイヨー・クリニックの麻酔科医であるRyan D’Souza氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に1月29日掲載された。D’Souza氏は、「われわれの研究結果は、慢性的な痛みを伴うCIPNは、末梢神経障害と診断された人の40%以上に影響を及ぼす、世界的に見ても重大な健康問題であることを明示している」と述べている。

食物繊維の摂取は有害な細菌の減少につながる?

 腸の健康を維持する効果的な方法の一つは、食物繊維をたくさん摂取することかもしれない。世界45カ国、1万2,000人以上の人の腸内微生物叢を分析した研究で、腸内微生物叢の構成が肺炎桿菌や大腸菌などの命を脅かす可能性のある感染症に罹患する可能性を予測するのに役立ち、食物繊維を通して有益な腸内細菌を養うことで、感染症に対する体の抵抗力が強化される可能性のあることが明らかになった。英ケンブリッジ大学のAlexandre Almeida氏らによるこの研究結果は、「Nature Microbiology」に1月10日掲載された。  肺炎桿菌や大腸菌などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌は、世界的に主要な日和見感染症の原因菌である。これらの細菌は健康な人の腸内微生物叢にも広く存在しているため、腸内細菌間の相互作用が感染抵抗性の調節に関与している可能性がある。この点を明らかにするために、Almeida氏らは、45カ国、1万2,238人の腸内微生物叢に関するメタゲノムデータの解析を行った。

胃がんの術後補助化学療法、75歳超の高齢者にも有効/国立国際医療研究センターなど

 StageII/IIIの切除可能胃がん患者では、手術単独では再発リスクが高いため術後補助化学療法が標準治療となっている。しかし、臨床試験では75歳超高齢患者の参加が限られ、75歳超高齢者に対する術後化学療法に関しては、これまで明確なエビデンスが得られていなかった。  国立国際医療研究センター・山田 康秀氏らの研究グループは、日本胃癌学会が管理する全国胃癌登録のデータを用いて75歳超の高齢患者を含めた胃がん患者の特徴を解析、生存期間に影響を与える因子を特定し、術後補助化学療法の効果を検証した。本試験の結果はGlobal Health and Medicine誌オンライン版2025年1月25日号に掲載された。

糞便移植で糖尿病に伴う消化器症状が改善する可能性

 1型糖尿病に伴う合併症で、吐き気、腹部膨満感、下痢などの消化器症状を来している人が、健康な人の糞便カプセルを服用すると、それらの症状が緩和するという研究結果が「eClinicalMedicine」1月号に掲載された。論文の筆頭著者である、オーフス大学(デンマーク)のKatrine Lundby Hoyer氏は、「本研究は1型糖尿病患者を対象に、糞便移植の有用性を対プラセボで検討した初の試みである。結果は非常に有望であり、糞便カプセル群に割り付けられた患者では、プラセボ群の患者で観察された変化を大きく超える、症状と生活の質(QOL)の改善が認められた」と語っている。  1型糖尿病患者の約4分の1が、合併症の糖尿病性胃腸障害を患っているとするデータがある。糖尿病性胃腸障害は、消化管の働きをコントロールしている神経が、慢性高血糖によってダメージを受けることで発症する病気であり、治療法はごく限られている。Hoyer氏らは、糖尿病性胃腸障害を来している患者の腸の状態を、糞便移植によって改善できないかを検討した。なお、糞便移植は健康な人の腸内細菌を患者に対して移植するという治療法で、重度の下痢を引き起こすことのある有害な細菌(クロストリディオイデス・ディフィシル)による感染症の治療などに応用されている。