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脂漏性皮膚炎に1日1回のroflumilast外用薬が有望

 脂漏性皮膚炎による紅斑、鱗屑、そう痒の治療において、1日1回塗布のroflumilastフォーム0.3%(泡[フォーム]を形成する製剤)は、良好な有効性、安全性、および局所忍容性を示した。米国・オハイオ大学のMatthew J. Zirwas氏らが第IIa相二重盲検溶媒対照並行群無作為化試験の結果を報告した。脂漏性皮膚炎に対する局所治療の選択肢は、有効性や安全性の観点から限られている。脂漏性皮膚炎はあらゆる年代にみられ、全世界の有病率は5%以上とされる。roflumilastは選択的ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬であり、抗炎症作用を有する。経口薬は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として承認されており(本邦未承認)、外用薬は2022年7月に慢性尋常性乾癬への適応で米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。著者は、「今回の結果は、本剤の非ステロイド系外用薬としてのさらなる研究を支持するものである」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月3日号掲載の報告。 研究グループは、頭皮や顔、体幹に脂漏性皮膚炎症状を有する成人患者において、roflumilastフォーム0.3%の安全性と有効性の評価を目的として本試験を実施した。 本試験は、2019年11月12日~2020年8月21日に、米国とカナダの24施設にて行われた。対象は、脂漏性皮膚炎と診断されて3ヵ月以上、Investigator Global Assessment(IGA)スコア3以上(中等度以上)、症状が頭皮や顔、体幹、間擦部を含む体表面積の20%以下である18歳以上の患者であった。対象患者をroflumilast群(roflumilastフォーム0.3%)または溶媒群(vehicleフォーム)に無作為に割り付け、1日1回8週間塗布した。 主要アウトカムは、8週時のIGAに基づく奏効(IGAスコアが0[消失]または1[ほとんど消失]+ベースラインから2点以上減少で定義)とした。副次アウトカムは、2週・4週時のIGAに基づく奏効、Worst Itch Numeric Rating Scale(WI-NRS)のベースラインからの変化量などであった。安全性と忍容性も評価した。データ解析は、2020年9月~10月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・合計226例(平均年齢±標準偏差[SD]:44.9±16.8歳、男性116例、女性110例)が、roflumilast群(154例)、溶媒群(72例)へ無作為に割り付けられた。・8週時において、roflumilast群は104例(73.8%)がIGAに基づく奏効を達成したが、溶媒群は27例(40.9%)であった(p<0.001)。・初回評価の2週時におけるIGAに基づく奏効率は、roflumilast群(33.8%)が溶媒群(14.7%)と比べて統計学的有意に高率であった(p=0.003)。・8週時において、WI-NRSのベースラインからの平均減少率(SD)は、roflumilast群59.3%(52.5%)、溶媒群36.6%(42.2%)であった(p<0.001)。・roflumilastの忍容性は良好で、有害事象の発現頻度は両群で同程度であった。

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医療者の不足する地域は死亡率が高い/BMJ

 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ―「すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」(厚生労働省)―を2030年までに達成するには、健康を促進または改善するさまざまな職業の保健医療人材(Human Resources for Health:HRH)が重要であるが、HRHの不平等は過去30年間で世界的に減少しているものの依然として残っており、全死亡率およびほとんどの死因別死亡率は、医療従事者が限られている、とくにHIV/AIDS・性感染症、母体・新生児疾患、糖尿病、腎臓病といった、優先疾患におけるいくつかの特定のHRHが限られている国・地域で相対的に高いことが、中国・北京大学のWenxin Yan氏らの調査で示された。著者は、「本結果は、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するために、公平性を重視した医療人材政策の策定、医療財政の拡大、不十分なHRHに関連した死亡を減少するための標的型対策の実施に向けた政治的取り組み強化の重要性を浮き彫りにしている」とまとめている。BMJ誌2023年5月10日号掲載の報告。172の国・地域のHRHの傾向と不平等を評価し、全死亡率と死因別死亡率を解析 研究グループは、2019年版の世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study)のデータベースを用い、172の国・地域を対象として、1990~2019年までの各国・各地域の総HRH、特定のHRH、全死亡率、死因別死亡率に関する年次データを収集するとともに、国連統計(United Nations Statistics)およびOur World in Dataのデータベースから、モデルの共変量として用いる人口統計学的特性、社会経済的状態、医療サービスに関するデータを入手し、解析した。 主要アウトカムは、人口1万人当たりのHRH密度に関連する人口10万人当たりの年齢標準化全死亡率、副次アウトカムは年齢標準化死因別死亡率とした。HRHの傾向と不平等を評価するため、ローレンツ曲線と集中指数(concentration index:CCI)を用いた。HRHの不平等は過去30年間で減少も、総HRHレベルと全死亡率に負の相関 世界的に、人口1万人当たりの総HRH密度は、1990年の56.0から2019年には142.5に増加した。一方で、人口10万人当たりの年齢標準化全死亡率は、1990年の995.5から2019年には743.8に減少した。ローレンツ曲線は均等分布線の下にあり、CCIは0.43(p<0.05)であったことから、人間開発指数で上位にランクされている国・地域に医療従事者がより集中していることが示された。 HRHのCCIは、1990~2001年の間、約0.42~0.43で安定していたが、2001年の0.43から2019年には0.38へと低下(不平等が縮小)していた(p<0.001)。 多変量一般化推定方程式モデルにおいて、総HRHレベル(最低、低、中、高、最高の五分位)と全死亡率との間に負の相関が認められた。最高HRHレベル群を参照群として評価すると、低レベル群の発生リスク比は1.15(95%信頼区間[CI]:1.00~1.32)、中レベル群は同1.14(1.01~1.29)、高レベル群は1.18(1.08~1.28)であった。 総HRH密度と死亡率との負の相関は、顧みられない熱帯病やマラリア、腸管感染症、母体および新生児疾患、糖尿病や腎臓病など、いくつかの死因別死亡率でより顕著であった。医師、歯科スタッフ(歯科医師と歯科助手)、薬剤スタッフ(薬剤師、調剤補助者)、緊急援助および救急医療従事者、オプトメトリスト、心理学者、パーソナルケアワーカー、理学療法士、放射線技師の密度が低い国・地域の人々は、死亡リスクがより高くなる可能性が高かった。

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皮膚型ポルフィリン症、新規経口薬dersimelagonの有効性を確認/NEJM

 赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症(EPP)またはX連鎖優性プロトポルフィリン症(XLDP)の患者において、新規経口薬の選択的メラノコルチン1受容体作動薬であるdersimelagonは、症状を伴わない日光曝露時間を有意に延長したことが示された。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のManisha Balwani氏らが、第II相無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。検討では、100mgと300mgの用量(いずれも1日1回投与)を評価し、両用量とも有意な延長と安全性が確認された。著者は、「潜在的な経口治療薬の選択肢として、さらなる開発を裏付けるものである」とまとめている。NEJM誌2023年4月13日号掲載の報告。EPPとXLDPの患者を対象に、対プラセボで2つの用量の有効性と安全性を評価 EPPとXLDPは、ヘム生合成の先天異常であり、血中の無金属プロトポルフィリン値上昇と光毒性を引き起こす。いずれも日光曝露後の耐え難い光線過敏症状(主に顔や手の甲)を特徴とする。 研究グループは、両疾患患者の日光曝露に関連した症状の発症および重症度について、dersimelagonの有効性と安全性を評価する第II相試験を行った。 18~75歳の患者を1対1対1の割合で、プラセボ群、dersimelagon 100mg群、同300mg群に無作為化し、1日1回16週間投与した。 毎日の日光曝露と症状データを、患者が電子日記に記録。その記録に基づき、日光曝露に関連した最初の前駆症状が発現するまでの時間について、ベースラインから16週目までの変化量を主要エンドポイントとした。QOLと安全性も評価した。日光曝露関連の前駆症状発現までの時間がdersimelagon群で有意に延長 2018年7月5日~2019年4月22日に、計102例が無作為化され(EPP患者93例、XLDP患者9例)、92例(90%)が治療期間を完了した。 日光曝露に関連した最初の前駆症状が発現するまでの1日当たりでみた時間(daily time)の平均は、dersimelagon投与群で有意に延長した。ベースラインから16週目までの変化量のプラセボ群との最小二乗平均差は、dersimelagon 100mg群で53.8分(p=0.008)、同300mg群で62.5分(p=0.003)であった。 同様に、プラセボ群と比べてQOLの改善がdersimelagon群で認められた。 治療中に発症または増悪した、最も多くみられた有害事象は、悪心、雀卵斑(そばかす)、頭痛、皮膚の色素沈着であった。

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採血時間が入院患者の睡眠不足に影響か

 早朝の採血は入院患者の睡眠に有害な影響を与えるが、それは依然として一般的な医療行為として行われている。そこで米国・イェール・ニューヘブン病院のCesar Caraballo氏らは、早朝採血の実施割合を調査したところ、午前4:00~6:59までの時間帯に最も行われ、採血の10分の4近くを占めていたことが明らかになった。ただし、本研究の終盤には採血時間がわずかだが遅くなっていた。JAMA誌オンライン版2023年1月17日号のリサーチレターでの報告。 2016年11月1日~2019年10月31日の期間、イェール・ニューヘブン病院に入院した成人患者すべての採血イベントについて電子健康記録を照会した。なお、救急部門や集中治療室などで実施される採血、入院後24時間以内に実施される最初の採血は除外した。 Kruskal-Wallis検定を使用して患者のサブグループ間での採血タイミングの違いを評価し、χ2検定を使用して午前4:00~6:59に収集されたサンプルの患者特性を比較した。本病院では主な臨床チームが採血に適したタイミングを指定してオーダーするがデフォルトでは午前6:00に設定されていた。 主な結果は以下のとおり。・入院患者7万9,347例から採取された567万6,092件の採血サンプルが含まれた。・そのうち、220万6,410件(38.9%)が午前4:00~6:59に採血されていた(4:00~4:59は8.9%、5:00~5:59は16.5%、6:00~6:59は13.5%)。・早朝の時間帯以外での全採血の20.7%が7:00~11:59に、28.2%が12:00~23:59に、12.2%が0:00~3:59に行われていた。・早朝採血の分布には、年齢層、人種、民族、性別でわずかではあるが統計学的有意差が認められた。 研究者らは、「早朝採血は、朝のラウンド中に患者の健康状態を評価し、場合によっては退院の決定を知らせるために必要になる場合があるが、睡眠時間中での緊急ではない検査の制限を検討する必要があるかもしれない。また、早朝採血による睡眠の中断がとくに高齢患者において、せん妄やポストホスピタル症候群のリスクを高める可能性があるかもしれない」とし、今後、早朝採血を制限して患者の睡眠を改善させるとともにケアの質に悪影響を与えることなく、患者の転帰を改善できるかどうかを評価する研究が必要だとしている。

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SNSの使い過ぎが摂食障害のリスクを高める可能性

 TikTok、Twitter、Instagramなどのソーシャルメディア(SNS)に投稿されている若年女性の画像は、洗練された完璧なボディーであることが多い。若い女性が、それらの非現実的とも言える画像にオンラインで絶え間なく接することが、摂食障害のリスクを高めている可能性のあることが分かった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のAlexandra Dane氏とKomal Bhatia氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Global Public Health」に3月22日掲載された。 摂食障害は、時に命に関わることもある精神疾患の一つ。体重増加に対する強い恐怖、極度の食事制限あるいは過食、食事と嘔吐を繰り返す、食欲不振といった症状や行為が生じる。SNSが一般的に利用されるようになって以降、SNS上にあふれている極端に痩せた人の画像、またはそのように加工された画像が、それらを閲覧した人たち自身のボディーイメージの評価を低下させてしまい、摂食障害のリスクを高める懸念が指摘されている。ただし、公衆衛生上の問題としてはまだ十分に研究されていない。 そこでBhatia氏らは、このトピックに関するスコーピングレビューを行った。スコーピングレビューとは、メタ解析などの詳細な検討をするほど十分な研究報告がない、比較的新しいトピックについて、全体像を把握するために行うレビューのこと。文献検索にはMEDLINE、PyscINFO、Web of Scienceというデータベースを利用。2016年1月~2021年7月に、それらに公開された、SNS利用とボディーイメージの懸念や摂食障害との関連に関する研究論文を検索。計17カ国から報告された50件の研究を抽出した。 それらの研究の多くは経済的に豊かな国で行われており、半数近くは米国とオーストラリアからの報告だった。研究対象者の年齢は10~24歳で、約半数は女性のみを対象としていた。抽出された文献を解析した結果、SNSの利用が、極端な痩せ体型を理想的なものとして捉え、自分のボディーイメージに自信を失い始め、乱れた食行動(disordered eating)や摂食障害(eating disorder)、およびメンタルヘルスの悪化につながる可能性のあることが明らかになった。一方、自分自身の外見に自信を持っている若者や、メディアリテラシーが高くSNSというメディアの特性を把握している若者は、マイナスの影響を受けにくいことも明らかになった。 ただし、このスコーピングレビューからは、SNS利用が自分自身のボディーイメージへの懸念や摂食障害のリスクをどのくらい高めるのか、定量的な把握はできない。またBhatia氏は、「卵が先か鶏が先かという問いの答えも得られていない」と述べている。つまり本研究は、ボディーイメージへの懸念や摂食障害のリスクが高い若者が、そのような画像が投稿されているSNSをより頻繁に閲覧しているという結果を見ている可能性も否定できない。そのため同氏は、「さらなる研究が必要とされる」としている。

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アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬lebrikizumabが有効/NEJM

 インターロイキン13(IL-13)を標的とするIgG4モノクローナル抗体lebrikizumabは、中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の成人・青少年患者を対象とした2つの第III相試験において、16週の導入療法期間での有効性が確認された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らがNEJM誌2023年3月23日号で報告した。 研究グループが実施した「ADvocate1試験」と「ADvocate2試験」は、個別にデザインされた52週の国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、いずれも16週の導入療法期間と36週の維持療法期間で構成された。 中等症~重症ADの成人(18歳以上)および青少年(12歳以上18歳未満、体重40kg以上)を対象とし、lebrikizumab群とプラセボ群に2対1の割合で割り付けた。lebrikizumabの用量は、ベースライン時と2週目に500mgの負荷投与、以降は250mgとし、隔週皮下投与した。 本稿では、16週までに評価された導入療法期間の結果が報告されている。主要アウトカムは、16週時におけるIGA(Investigator's Global Assessment)スコア0または1(皮膚病変の消失またはほとんど消失)かつベースライン時からの2点以上減少とした。副次アウトカムは、16週時におけるEczema Area and Severity Indexスコアの75%改善(EASI-75)、2、4、16週時におけるそう痒NRS(Numerical Rating Scale)、16週時におけるそう痒による睡眠障害などであった。安全性も評価された。 主な結果は以下のとおり。・ADvocate1試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(283例)が43.1%、プラセボ群(141例)が12.7%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ58.8%、16.2%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・ADvocate2試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(281例)が33.2%、プラセボ群(146例)が10.8%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ52.1%、18.1%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・そう痒およびそう痒による睡眠障害の評価結果は、lebrikizumab治療による改善を示唆するものであった。・結膜炎の発生率が、プラセボ群(ADvocate1試験:2.8%、ADvocate2試験:2.1%)よりlebrikizumab群(それぞれ7.4%、7.5%)で高率であった。・導入療法期間中にみられた有害事象のほとんどは軽度または中等度で、試験中止に至ったものはなかった。

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HFpEF診療はどうすれば…?(後編)【心不全診療Up to Date】第7回

第7回 HFpEF診療はどうすれば…?(後編)Key Points簡便なHFpEF診断スコアで、まずはHFpEFの可能性を評価しよう!HFpEF治療、今できることを整理整頓、明日から実践!HFpEF治療の未来は、明るい?はじめに近年、HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)は病態生理の理解、診断アプローチ、効果的な新しい治療法の進歩があるにもかかわらず、日常診療においてまだ十分に認識されていない。そのような現状であることから、前回はまず最新の定義、病態生理についてレビューした。そして、今回は、その後編として、HFpEFの診断、そして治療に関して、最新情報を含めながら皆さまと共有したい。 HFpEFの診断スコアってご存じですか?呼吸苦や倦怠感などの心不全徴候を認め、EF≥50%でうっ血を示唆する客観的証拠を認めた場合、HFpEFと診断される1)。そのため、エコーでの拡張障害の評価はHFpEFを診断する上では必要がなく、またNa利尿ペプチド(NP)値が正常であっても、HFpEFを除外することはできないと前回説明した。では、具体的にどのようにして診断を進めていくとよいか、図1を基に考えていこう。(図1)HFpEFが疑われる患者を評価するためのアプローチ方法画像を拡大するまず、原因不明の労作時息切れを主訴に来院された患者に対して、病歴、身体所見、心エコー検査、臨床検査などからHFpEFである可能性を検討するわけであるが、その際に大変参考になるのが、診断のためのスコアリングシステムである。たとえば、米国で開発されたH2FPEFスコアでは、スコア5点以上であれば、HFpEFが強く疑われ(>80% probability)、1点以下であれば、ほぼ除外できる2)。ただし、NP値上昇や心不全徴候を認めるにも関わらず、H2FPEFスコアが低い場合は、アミロイドーシスやサルコイドーシスのような浸潤性心筋症など非典型的なHFpEFの原因疾患を疑う姿勢が重要である点も強調しておきたい(図2)。(図2)HFpEFを発症し得る治療可能な疾患画像を拡大するこれらのスコア算出の結果、HFpEFの可能性が中程度の患者に対しては、運動負荷検査が推奨される。運動負荷検査には、心エコー検査と右心カテーテル検査があるが、診断のゴールドスタンダードは、右心カテーテル検査による安静時および運動時の血行動態評価であり、安静時PAWP≥15mmHgもしくは労作時PAWP≥25mmHg(spine)、もしくは労作時PAWP/心拍出量slope>2mmHg/L/min(upright)を満たせば、HFpEFと診断できる3)。ただ、侵襲的な運動負荷検査は、どの施設でも気軽にできるものではなく、受動的下肢挙上や容量負荷といった代替的な検査法の有用性に関する報告もある4-6)。とくに心エコー検査にて下肢挙上後の左房リザーバーストレインの低下は、運動耐容能の低下とも関連していたという報告もあり、非侵襲的であることから一度は施行すべき検査手法と考えられる7)。なお、脈拍応答不全の診断については、Heart rate reserve([最大心拍数-安静時心拍数]/[220-年齢-安静時心拍数])を算出し、0.8未満(β遮断薬内服時は0.62未満)であれば、脈拍応答不全あり、と一般的に定義される8)。なお、私自身も現在、HFpEF早期診断のためのウェアラブルデバイス開発に取り組んでいるが、今後はより非侵襲的に診断できるようになることが切望される。そして、HFpEFであると診断した後、まず考えるべきことは『原因は何だろうか?』ということである。なぜなら、その鑑別疾患の中には治療法が存在するものもあるからである(図2)。アミロイドーシスを疑うような手根管症候群や脊柱管狭窄症を示唆する身体所見はないか、頚静脈もしっかり観察してKussmaul徴候はないか、心エコーにて中隔変動(septal bounce)や肝静脈血流速度の呼気時の拡張期逆流波はないか、スペックルトラッキングエコーによる左室長軸方向ストレイン(GLS, global longitudinal strain)のbullseye mapに特徴的なパターンがないか…など、ぜひご確認いただきたい9)。HFpEF治療の今、そして今後は?かかりつけ医の先生方にもご承知いただきたいHFpEF治療の流れを図でまとめたので、これを基にHFpEF治療の今を説明する(図3)。(図3)HFpEF治療 2023画像を拡大するHFpEFの診断が確定し、図2に記載してあるような疾患を除外した上で、まず考慮すべき処方は、SGLT2阻害薬である。なぜなら、EMPEROR-Preserved試験およびDELIVER試験において、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンおよびダパグリフロジンが、EF>40%の心不全患者において、主要エンドポイントである心不全入院または心血管死が20%減少することが示されたからである(ただし、eGFR<20mL/min/1.73m2、1型糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシスの既往がある場合は避ける。そのほかSGLT2阻害薬使用時の注意事項は、「第3回 SGLT2阻害薬」を参照)10, 11)。そして、それと同時に身体所見、臨床検査、画像検査などマルチモダリティを活用して体液貯留の有無を評価し、体液貯留があれば、ループ利尿薬や利水剤(五苓散、牛車腎気丸、木防已湯など)を使用し12)、TOPCAT試験の結果から心不全入院抑制効果が期待され、薬価が安いMR拮抗薬の投与をできれば考慮いただきたい13)。とくにカリウム製剤が投与されている患者では、それをMR拮抗薬へ変更すべきであろう。そして、忘れてはならないのが、併存疾患に対するマネージメントである。高血圧があれば、130/80mmHg未満を達成するように降圧薬(ARB、ARNiなど)を投与し、鉄欠乏性貧血(transferrin saturation<20%など)があれば、骨格筋など末梢の機能障害へのメリットを期待して鉄剤(カルボキシマルトース第二鉄[商品名:フェインジェクト])の静注投与を検討する。そのほか、肥満、心房細動、糖尿病、冠動脈疾患、慢性腎臓病、COPD、睡眠時無呼吸症候群などに対してもガイドライン推奨の治療をしっかり行うことが重要である。(表1)画像を拡大するそれでも心不全症状が残存し、EFが55~60%未満とやや低下しており、収縮期血圧が110~120mmHg以上ある患者に対しては、ARNiの追加投与を検討する(詳細は第4回 「ARNi」を参照)。なお、HFrEFにおいて必要不可欠なβ遮断薬については、虚血性心疾患や心房細動がなければ、HFpEFに対しては原則投与しないほうが良い。なぜなら、HFpEFでは運動時に脈拍を早くできない脈拍応答不全の合併が多く、投与されていたβ遮断薬を中止することで、peak VO2が短期で大幅に改善したという報告もあるからである14)。なお、脈拍応答不全に対して右房ペーシングにより運動時の心拍数を上げることで運動耐容能が改善するかを検証した試験の結果が最近公表されたが、結果はネガティブで、現時点では脈拍応答不全に対して、心拍数を落とす薬剤を中止する以外に明らかな治療法はなく、今後さらに議論されるべき課題である15)。これらの治療以外にも、mRNA医薬、炎症をターゲットとした薬剤、代謝調整薬(ATP産生調整など)といった、さまざまなHFpEF治療薬の開発が現在進められている16)。また、近年HFpEFは、肥満や座りがちな生活と密接に結びついた運動不耐性の原因としても着目されており、心不全患者教育、心臓リハビリテーションもエビデンスのあるきわめて重要な治療介入であることも忘れてはならない17, 18)。最近は大変ありがたいことに心不全手帳(第3版)が心不全学会サイトでも公開されており、ぜひ活用いただきたい(http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/shinhuzentecho.html)。非薬物治療に関しても、今まで欧米を中心に多くの研究が実施されてきた。例えば、症候性心不全患者に対する肺動脈圧モニタリングデバイスガイド下の治療効果を検証したCHAMPION試験のサブ解析において、肺動脈モニタリングデバイス(商品名:CardioMEMS HF System)を使用することで、HFpEF患者において標準治療よりも心不全入院が50%減少し、心不全管理における有用性が報告されている(本邦では未承認)19)。また、HFpEF(EF≥40%)に対する心房シャントデバイス(商品名:Corvia)治療の効果を検証したREDUCE LAP-HF II試験の結果もすでに公表されている20)。心血管死、脳卒中、心不全イベント、QOLを含めた主要評価項目において、心房シャントデバイスの有効性を示すことができなかったが、本試験では全患者に対して運動負荷右心カテーテル検査を実施しており、ポストホック解析において、運動時肺血管抵抗(PVR, pulmonary vascular resistance)が上昇しなかった群(PVR≤1.74 Wood units)では臨床的便益が得られる可能性が見いだされ21)、この群にターゲットを絞ったレスポンダー試験が現在進行中である。また、血液分布異常を改善させるための右大内臓神経アブレーション(GSN ablation)の有効性を検証するREBALANCE-HF試験も現在進行中であるが、非盲検ロールイン段階における予備的解析では、運動時の左室充満圧とQOL改善効果が認められたことが報告されており22)、今後本解析(sham-controlled, blinded trial)の結果が期待される。そのほかにも多くのHFpEF患者を対象とした臨床試験、橋渡し研究が進行中であり(表2)、これらの結果も大変期待される。(表2)HFpEFについて進行中の臨床試験 画像を拡大する以上HFpEF治療についてまとめてきたが、現時点ではHFpEFの予後を改善する治療法はまだ確立しておらず、さらに一歩進んだ治療法の確立が喫緊の課題である。つまり、HFpEFのさらなる病態生理の解明、非侵襲的に診断するための技術開発、個別化治療に結びつくフェノタイピング戦略を活用した新たな次世代の革新的研究が必要であり、その実現に向けて、前回紹介した米国HeartShare研究など、現在世界各国の研究者が本気で取り組んでいるところである。ただ、それまでにわれわれにできることも、図3の通り、しっかりある。ぜひ、目の前の患者さんに今できることを実践していただき、またかかりつけ医の先生方からも循環器専門施設の先生方へフィードバックいただきながら、医療従事者皆が一眼となってより良いHFpEF治療をわが国でも更新し続けていければと強く思う。1)Borlaug BA, et al. Nat Rev Cardiol 2020;17:559-573.2)Reddy YNV, et al. Circulation. 2018;138:861-870.3)Eisman AS, et al. Circ Heart Fail. 2018;11:e004750.4)D'Alto M, et al. Chest. 2021;159:791-797.5)Obokata M, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2013;6:749-758.6)van de Bovenkamp AA, et al. Circ Heart Fail. 2022;15:e008935.7)Patel RB, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;78:245-257.8)Azarbal B, et al. J Am Coll Cardiol 2004;44:423-430.9)Marwick TH, et al. JAMA Cardiol. 2019;4:287-294.10)Anker SD, et al. N Engl J Med. 2021;385:1451-1461.11)Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2022;387:1089-1098.12)Yaku H, et al. J Cardiol. 2022;80:306-312.13)Pitt B, et al. N Engl J Med. 2014;370:1383-1392.14)Palau P, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;78:2042-2056. 15)Reddy YNV, et al. JAMA;2023:329:801-809.16)Pugliese NR, et al. Cardiovasc Res. 2022;118:3536-3555.17)Kamiya K, et al. Circ Heart Fail. 2020;13:e006798.18)Bozkurt B, et al. J Am Coll Cardiol. 2021;77:1454-1469.19)Adamson PB, et al. Circ Heart Fail. 2014;7:935-944.20)Shah SJ, et al. Lancet. 2022;399:1130-1140. 21)Borlaug BA, et al. Circulation. 2022;145:1592-1604.22)Fudim M, et al. Eur J Heart Fail. 2022;24:1410-1414.

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第155回 日本はパワハラ、セクハラ、性犯罪に鈍感、寛容すぎる?WHO葛西氏解任が日本に迫る意識改造とは?(後編)

パンデミック以前の日常が完全に戻ってきたこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末、関東はお花見日和でした。近所の公園では、葉桜となってきた桜の木の下で多くの人がノーマスクで宴会をしていました。パンデミック以前の日常が完全に戻ってきたわけですが、数週間前からこれだけ飲んで騒いでいるのに、新型コロナウイルス感染症の患者数は目立った増加となってはいません。感染症は本当に不思議な病気だなと思いながら、私も桜が舞い散る公園で、タコスにコロナビールを楽しみました。さて今回も、前回に引き続き、WHO(世界保健機関)の西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ)の葛西 健・事務局長が解任されたニュースを取り上げます。「The Lancet」が「グローバルヘルスの専門家たち葛西氏解任を歓迎」と報道WHOは3月8日、職員らへの人種差別的な発言などがあったとして内部告発され、昨年8月から休職中だった葛西・西太平洋地域事務局長を解任したと発表しました。日本国内では「解任理由がきちんと説明されていない」といった批判もあるようですが、国際的にはどうやら今回の解任を歓迎する声の方が大きいようです。医学雑誌の「The Lancet」は3月18日、「Global health experts welcome Kasai dismissal(グローバルヘルスの専門家たちが葛西氏解任を歓迎)」と題する記事を掲載しています1)。「葛西氏はWHO労働者への嫌がらせを行っていた」刺激的なタイトルのこの記事は、世界の複数のグローバルヘルスの専門家が、今回の調査や決定が適正に行われ、処分も妥当と考え、解任決定を歓迎していると報じています。記事によれば、WHOは虐待行為を一切容認しないという方針に沿って今回の内部告発を調査、すべてのWHOスタッフに適用される通常の手順に従って検討が行われたとのことです。その結果、葛西氏が「攻撃的なコミュニケーション、公の場での侮辱と人種的中傷」を含む、WHO労働者へのハラスメントを行っていたことが判明したとしています。これら結果を踏まえ、西太平洋地域委員会の投票が行われ、解任賛成13票、反対11票、棄権1票という結果となり、その後、非公開の理事会で葛西氏の解任が決定したとのことです。WHOの不正行為や虐待行為に対するチェックの目は一層厳しくなる同記事は、米国ジョージタウン大学のグローバルヘルス法の研究者の次のような発言も報じています。「この決定を行ったWHOに拍手を送る。その決定は正しかったが、もっと早く行われるべきだった。WHOは、誰もが尊重される安全で敬意に満ちた職場を作るために、可能な限り最高の基準を設定する必要があると考える」。同記事は、その他の世界のグローバルヘルスの専門家たちの今回の決定に対する賛意も伝えています。それらはある意味、日本が期待を持って送り込んでいた葛西氏の”評判”とも言えるもので、日本政府にはなかなか手厳しい内容となっています。ところで、WHO内部では葛西氏の事例のようなハラスメントだけではなく、エボラ出血熱発生中に起きたWHO労働者や援助労働者に対する性的虐待なども問題視されており、同記事は、葛西氏に行われた内部調査や解任決定を機に、WHOの組織内におけるその他のさまざまな不正行為や虐待行為に対するチェックの目は一層厳しくなるに違いない、と書いています。横浜DeNAに現役バリバリのMLBの投手入団そう言えば、WBC開催中の3月14日、横浜DeNAベイスターズは3年前の2020年、シンシナティ・レッズ時代にサイ・ヤング賞を獲得(同年に同じく候補となったダルビッシュ有投手と争いました)したMLB投手、前ロサンゼルス・ドジャースのトレバー・バウアー投手と契約を結んだことを発表しました。現役バリバリのMLBの投手がNPBに来るということで大きなニュースになりました。実は彼、2021年に知人女性に対するドメスティックバイオレンスの禁止規定違反でメジャーリーグ機構から324試合の長期の出場停止処分を受け(その後、異議申し立てをし、処分は194試合に短縮)、今年1月にドジャースとの契約が解除された選手です。契約解除後、MLBでは新たな契約をする球団は現れず、うまくDeNAが獲得したというわけです。MLBが獲得に動かなかった理由は多々あるようです。ヒューストン・アストロズの投手陣が強力な粘着物質を使っている疑いがあることを”チクリ”、粘着物質使用厳格化のきっかけを作ったことでMLBの選手たちから裏切り者扱いされた、という説も流れていますが、女性に対するドメスティックバイオレンスの一件も少なからず影響していることは確かでしょう。そうした”問題”選手を、トラブルにはとりあえず目をつぶって獲得し、大喜びしているのも日本人のパワハラ、セクハラへに対する鈍感さ、寛容さのなせる業かもしれません。DeNAは3月24日に横浜市内で華々しくバウアー投手の入団会見を行いましたが、その5日後の29日に同選手が「右肩の張りを訴えた」と球団が発表、4月中の一軍デビューは先送り濃厚となってしまいました。「バウアー投手はMLB復帰のために日本にリハビリに来ただけ。もとより真剣に投げる気はない」という声もあるようです。BBC制作ジャニーズのドキュメンタリーをほぼ黙殺の日本マスコミパワハラ、セクハラ関連の話題ということでは、英国のBBCが制作、公開したドキュメンタリー「Predator:The Secret Scandal of J-Pop」(J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル)を日本のマスコミのほとんどが黙殺したことも挙げておきたいと思います。2019年に死去したジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏によるジャニーズJr.の少年への性的虐待を追ったこのドキュメンタリー、日本ではBBCワールドニュースで3月18日、19日に配信放送されました。この件について日本のマスコミで報道したのはかねてからジャニーズ問題を追ってきた週刊文春と、FRIDAYデジタル、日刊ゲンダイDIGITALなどごく一部でした。香港や韓国、台湾のメディアも大きく取り上げたというのに、日本のマスコミの沈黙ぶりは、異常と言えるかもしれません。こうした鈍感さ、時代遅れの寛容さや忖度は、葛西氏のパワハラ同様、国際社会ではもう認められなくなってきています。そうした自覚と意識改造が日本人には早急に求められていると思いますが、皆さんいかがでしょう。「ジャニー喜多川氏の性的虐待の事実と、メディアに与えた強い影響力を調査し、社会が見て見ぬふりをすることの残酷な結果を明らかにする」(BBCワールドニュースのWebサイトより)というこの番組、4月18日までAmazonプライム・ビデオで視聴可能です。興味のある方はご覧下さい。参考1)Zarocostas J, Lancet. 2023 Mar 18. [Epub ahead of print]

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第157回 抗肥満薬の体重減少効果と維持期間は?

ノボ ノルディスク ファーマによると、肥満症を治療する同社のGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)セマグルチド(商品名:ウゴービ皮下注)で体重は有意に減るものの、一般的に肥満症治療薬は使用を止めると多くの場合2~3年後には体重減少は半分ほどとなり、5年ほどもすると残念ながらほぼ元通りの体重に逆戻りしてしまうようです1,2,3)。医療の進歩について話し合うConsumer News and Business Channel(CNBC)主催の会議Healthy Returns Summitで同社の創薬部門リーダーKarin Conde-Knape氏がそう述べました。ノボ ノルディスク ファーマはもともとGLP-1薬による2型糖尿病治療を開発し、その過程で同剤の生理作用がかなり多岐にわたることを見出し、肥満治療としての検討にも着手しました。その甲斐あって誕生したのが先月末に日本で承認された肥満症治療薬ウゴービです。肥満は2型糖尿病の主因の1つであり、ウゴービは2型糖尿病の予防を担う薬剤になりつつあるとノボ ノルディスク ファーマのCEO・Lars Fruergaard Jorgensen氏は同会議で言っています。われわれの体に備わる生来のGLP-1は腸から放出され、空腹感や満腹感をもたらす脳の食欲調節領域に至って信号を伝達します。しかし肥満になりやすい人はどうやらその伝達に支障があり、それゆえ生来のGLP-1の働きを助けるウゴービのような薬剤が有用です。週1回皮下注射するウゴービの成分セマグルチドのアミノ酸配列は生来のGLP-1と94%同一で、生来のGLP-1と同様にGLP-1受容体を活性化し、カロリー摂取を抑えて体重減少をもたらします4)。半減期は投与間隔と同じ約1週間で、最後の投与から5~7週間は血液循環に残存します。Conde-Knape氏によるとウゴービ治療患者の約30%が体重の20%減少を達成しており、他のこれまでの治療にはるかに勝ります。Conde-Knape氏は肥満症治療薬を止めたあとの体重リバウンドの一般的な傾向をCNBCの会議で話しましたが、ウゴービに限った解析結果も同社はすでに把握済みです。昨春2022年4月に論文報告されたその解析結果は後にウゴービとして世に出るセマグルチド2.4mg週1回皮下注射の効果を調べた第III相試験STEP 1の被験者の追跡結果に基づきます。STEP 1試験には糖尿病ではない肥満成人2千人近く(1,961人)が参加し、68週間のセマグルチド2.4mg投与で体重が平均17.3%減少しました。その体重減少の70%ほど(11.6%)がセマグルチド投与を止めてから120週後までに悲しいかな復活し、17.3%だった体重の下げ幅はわずか5.6%に縮小していました。肥満症治療薬を止めたあとに体重が戻ってしまう仕組みについてさらなる研究が必要ですが、ともあれ肥満は頑固であり、体重減少の維持には治療を継続しなければいけないようです。ウゴービ投与で体重減少を維持できるのは今のところ最長で2~3年だとデータで示されていますが、さらに長期の治療の経過が依然として必要だとConde-Knape氏は言っています。肥満対策は生活習慣の改善だけに委ねるだけではもはや不十分との認識がウゴービのような肥満症治療薬の普及を背景にして世界で共有されつつあるようであり、低~中所得国政府の薬剤調達の指針となる必須薬一覧(essential medicines list)への肥満症治療薬の追加の検討を世界保健機関(WHO)が始めています5)。近々特許が失効して安価な後発品が作れるようになるノボ ノルディスク ファーマの肥満症治療薬Saxendaの有効成分liraglutideを必須薬一覧に含めることを米国の研究者と医師3人は要請しており、WHOに助言する専門家一同が今月中に検討に当たります。新たな必須薬一覧は今秋9月には完成する見込みです。参考1)People taking obesity drugs Ozempic and Wegovy gain weight once they stop medication / CNBC2)Novo Nordisk says stopping obesity drug may cause full weight regain in 5 years / Reuters3)CNBC Transcript: Novo Nordisk A/S CEO Lars Fruergaard Jorgensen & Global Drug Discovery SVP Karin Conde-Knape Speak with CNBC’s Meg Tirrell During CNBC’s Healthy Returns Summit Today / CNBC4)Wegovy Prescribing Information5)Exclusive: WHO to consider adding obesity drugs to 'essential' medicines list Reuters

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ピロリ菌感染、がん治療には良い影響か~大幸研究

 Helicobacter pylori(HP)感染は胃がんの原因と考えられているが、逆にHP陽性の進行胃がん患者の生存率がHP陰性患者よりも高いことがさまざまな国の研究で報告されている。また以前の研究から、HP感染により潜在的な抗腫瘍免疫が維持されることにより、生存期間が延長する可能性が示唆されている。今回、岩手医科大学医歯薬総合研究所の西塚 哲氏らが大幸研究コホートの前向き研究で、すべてのがんの発生率および死亡率を検討した結果、HP陽性者の全がん発生率は陰性者より有意に高かったが、全がん死亡率は同等だった。著者らは、HP感染によるがん診断後の死亡リスク低下の可能性を考察している。PLOS Global Public Health誌2023年2月8日号に掲載。 本研究の参加者は、2008年6月~2010年5月に名古屋市在住で名古屋大学医学部保健学科(旧・大幸医療センター)に来院した35~69歳の4,982人。抗HP抗体の有無が、がん(胃がん、子宮がん、肺がん、前立腺がん、結腸がん、乳がんなど)の発生率と関連するかどうかを評価し、さらにHP感染が全がん死亡に及ぼす影響も評価した。 主な結果は以下のとおり。・1次登録の年齢中央値は53歳(範囲:35~69歳)で、8年間の観察期間中、がんが234例(4.7%)、全死亡が88例(1.8%)にみられた。・HP陽性者は1,825人(37%)、HP陰性者3,156人(63%)であった。・出生年が早いほどHP陽性割合が高かった。・生年月日をマッチさせたコホート(3,376人)では、全がん発生率はHP陽性者がHP陰性者より有意に高かった(p=0.00328)が、全がん死亡率は両者に有意差はなかった(p=0.888)。・予後因子に関するCox回帰分析の結果、HP陽性者の全がん発生率のハザード比はHP陰性者の1.59倍(95%信頼区間:1.17~2.26)だった。 著者らは「本研究では、HP陽性者は陰性者よりがん発生率が高かったが、がん死亡率には差がなかったことから、HP陽性者においてがん診断後の死亡リスクが低下したことが示唆される。ほぼすべてのがん患者は最初の診断後に治療を受けることから、HP陽性者のほうが治療による効果が高い可能性がある。この結果は、HP感染ががん診断後の死亡リスクを低下させる可能性を示唆しているかもしれない」としている。

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推定GFR値を、より正確に知る―欧州腎機能コンソーシアムの報告―(解説:石上友章氏)

 慢性腎臓病(CKD)は、21世紀になって医療化された概念である。その起源は、1996年アメリカ腎臓財団(NKF:National Kideny Foundation)による、DOQI(Dialysis Outcome Quality Initiative)の発足にまでさかのぼることができる。2003年には、ISN(International Society of Nephrology:国際腎臓学会)によりKDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)が設立され、翌2004年に第1回KDIGO Consensus Conference(CKDの定義、分類、評価法)が開催され、血中クレアチニン濃度の測定を統一し、estimated GFRを診断に使用することが提唱された。その結果、現代の腎臓内科学は、Virchow以来の細胞病理・臓器病理に由来する、原因疾患や、病態生理に基づく医学的な定義に加えて、血清クレアチニン値による推定糸球体濾過量(eGFR)を診断に用いる『慢性腎臓病(CKD)』診療に、大きく姿を変えた。CKDは、心腎連関によって、致死的な心血管合併症を発症する強い危険因子になり、本邦の成人の健康寿命を著しく脅かしていることが明らかになっている。KDIGOの基本理念として、CKDは糖尿病・高血圧に匹敵する主要な心血管疾患(CVD)のリスクファクターであり、全世界的対策が必要で、誰でも(医師でなくても)理解できる用語の国際的統一を呼び掛けた。したがって、CKD対策とは腎保護と心血管保護の両立にある。腎臓を標的臓器とする糖尿病、高血圧については、特異的な治療手段があり、原疾患に対する治療を提供することで、腎障害の解消が期待される。eGFRの減少は、CKDの中核的な病態であるが、その病態を解消する確実な医学的な手段はなかった。これまで、栄養や、代謝、生活習慣の改善を促すこと以外に、特異的な薬物治療は確立されていない。しかし、近年になって、糖尿病治療薬として創薬されたSGLT2阻害薬が、血糖降下作用・尿糖排泄作用といった薬理作用を超えた臓器保護効果として、心不全ならびに、CKDに有効な薬剤として臨床応用されている。SGLT2阻害薬は、セオリーにすぎなかった心腎連関を、リアル・ワールドで証明することができた薬剤といえるのではないか。推定GFRの評価は、CKD診療の基本中の基本であり、原点にほかならない。人種、性別、年齢による推定式が用いられているが、万能にして唯一の推定式とはいえなかった。Pottel氏らの研究グループは、「調整血清クレアチニン値」に代わって、「調整シスタチンC値」に置き換えた「EKFC eGFRcys式」の性能を評価した研究を報告した(Pottel H, et al. N Engl J Med. 2023;388:333-343.)。 本報告のFigure 1にみるように、全年齢においてBias(ml/min/1.73m2)/P30(%)が、狭い範囲での変化にとどまっていることがわかる。これまでの推定式は、簡便ではあったが、精度で劣る可能性があった。「EKFC eGFRcys式」は、「EKFC eGFRcr式」と同等の精度で、推定GFRを予測することができる。CKD診療の確度が、よりいっそう改善することが期待される。

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第154回 日本はパワハラ、セクハラ、性犯罪に鈍感、寛容すぎる?WHO葛西氏解任が日本に迫る意識改造とは?(前編)

休職中だったWHO西太平洋地域事務局の葛西 健・事務局長とうとう解任こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ワールド・ベースボール・クラシック (WBC)が終わってしまいました。日本代表の優勝に終わった今大会ですが、栗山 英樹監督以下、コーチ陣のほとんどが北海道日本ハムファイターズ(以下、日ハム)の在籍経験者で占められていたことは特筆に値します(代表の投手コーチだった吉井 理人・ロッテ監督も日ハムの投手コーチ時代にダルビッシュ 有選手、大谷 翔平選手を指導)。時折映るブルペンには、かつて日ハムでダルビッシュ選手の球を受けていた鶴岡 慎也氏もいました(ブルペンキャッチャーとして帯同)。首脳陣や裏方の組織編成に、栗山監督が日ハム時代に一緒に働き、自身の考えや戦い方を熟知している人間たちを招集したということでしょう。今回のWBCは、野球というスポーツを超えて、組織づくりという面でもとても参考になりました。ちなみに今回日本代表にスタッフとして参加した大谷選手の通訳の水原 一平氏(元日ハム通訳)は決勝戦直後、自身のインスタグラムに「日ハム組」と題して、コーチ陣に大谷 翔平選手、ダルビッシュ 有選手、近藤 健介選手、伊藤 大海選手らの出場選手も加わった集合写真を掲載しました。総勢なんと13人、全員がにこやかに笑う写真はまるで日ハムが世界で優勝したかのようでした。さて今回は、同じ”世界”ということで、WBCならぬWHO(世界保健機関)の西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ)の葛西 健・事務局長が解任されたニュースを取り上げます。昨年8月から休職となっていた葛西氏、日本政府の強力なロビー活動も虚しく、正式に解任となってしまいました。「調査の結果、不適切な行為があったことが判明した」とWHOWHOは3月8日、職員らへの人種差別的な発言などがあったとして内部告発され、昨年8月から休職中だった葛西・西太平洋地域事務局長を解任したと発表しました。WHOが地域事務局長を解任したのは初めてだそうです。共同通信などの報道によると、葛西氏の処遇を決める地域委員会の投票では解任賛成が13票、反対が11票、棄権が1票とほぼ拮抗。その結果を踏まえ、WHOは「調査の結果、不適切な行為があったことが判明した」とし「(葛西氏の)任命を取消した」と発表しました。不適切な行為の詳細は明らかにしていません。匿名の職員30人以上がWHO執行部に苦情を申し立て内部告発についてはAP通信が昨年1月に最初に報じました。それらの報道によれば、葛西氏は部下の職員に人種差別的な発言をしたり、「攻撃的なコミュニケーションや公然の場で恥をかかせる行為」を繰り返したり、一部の太平洋地域における新型コロナウイルスの感染拡大は「文化や人種のレベルが劣ることによる能力不足」などと述べたりしたとのことです。さらに、機密情報を日本政府に漏らしたという疑いも浮上していました。匿名の職員30人以上がWHO執行部に苦情を申し立て、WHOは告発内容について調査を開始、葛西氏を休職扱いとしました。葛西氏は、調査開始当初、声明で「部下に厳しく接したことは事実だが、特定の国籍の人を攻撃したことはない。機密情報を漏洩したとの非難にも異議がある」と告発内容を否定していました。テドロス事務局長の後任の最有力候補だった葛西氏葛西氏は慶應大学医学部出身の医師で、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院を修了後、岩手県庁で働いた後、厚生省(当時)に入省しました。同省保健医療局結核感染症課の国際感染症専門官などを経て2000年からWHO西太平洋地域事務局に感染症対策医官として勤務、西太平洋地域の結核対策や、SARS対応に取り組みました。その後、厚生労働省の大臣官房国際課課長補佐としていったん日本に戻り、宮崎県福祉保健部次長などを務め、地域の医療や感染症対策などに取り組みました。2006年に再びWHOに戻り、西太平洋地域事務局感染症対策課長、WHOベトナム代表などを務め順調に出世、2019年2月、日本政府の強力な支援を受けて、地域委員会の選挙でWHO西太平洋地域事務局長に選ばれました。WHOの西太平洋地域事務局は、世界に6ヵ所あるWHOの地域事務局の一つで、日本や中国、オーストラリアなどを管轄しています。西太平洋地域事務局長には、新型インフルエンザ等対策有識者会議の会長を務める尾身 茂氏も1999年から2006年まで就いていました。葛西氏は、WHOのトップ、テドロス・アダノム事務局長の後任の最有力候補とも目されていました。2006年の選挙で尾身 茂氏が苦杯を舐めたWHO事務局長のポストの獲得は、日本政府にとっても悲願と言えることでした。今回の解任は、WHOをはじめとする国際機関のポスト獲得に注力してきた日本政府には非常に大きな痛手となりました。この方面に詳しい知人に話を聞くと、「いろいろな国際機関があるが、WHOは将来日本がトップを取れるかもしれない数少ない機関の一つだった。告発が表沙汰になってから、日本は嘆願書を出し、尾身氏をマニラに送り込むなど、強力なロビー活動を展開したがダメだった。葛西氏は否定し続けてきたが、告発が事実だった可能性は高い」と話していました。なお、松野 博一官房長官は解任が決まった翌日、9日の記者会見で、WHOが葛西氏を解任したことについて、「選挙で選ばれた局長に対する処分であり、調査・事実認定は公正公平に行われ、地域委員会、加盟国がコミットした上で行われる必要があると一貫して主張してきた」と述べる一方、「日本政府は人種差別やハラスメントを容認しないWHOの政策を支持する立場だ」とも語りました。歴代の厚労大臣がWHOに「嘆願書」ところでこの件に関し、雑誌「集中」2023年1月号は「WHO葛西 健氏の処分、対応巡り政府与党内に波紋」という記事を掲載、2022年10月に歴代の厚生労働大臣がWHOのテドロス事務局長に「嘆願書」を送っていたと報じています。同記事によれば、嘆願書は田村 憲久・元厚労相、塩崎 恭久・元厚労相、根本 匠・元厚労相、後藤 茂之・前厚労相、武見 敬三・元厚労副大臣、古川 俊治・自民党参院議員、橋本 岳・元厚労副大臣、丸川 珠代・元厚労政務官の8人の連名で、「私達は日本の国会議員として、グローバルヘルスやWHOと密接な関わりを持って来ました。私達は、WHO西太平洋事務局長の葛西 健先生に対する疑念に対するWHOの対応について懸念を共有する為に、この連名で書簡を送ります」として、「私達はこの疑惑について直接知っている訳ではないので、特にコメントしません。しかし、葛西 健先生を長年知っている私達にとって、これらの疑惑は真実から遠く離れたものでしかありません」と葛西氏に対する疑惑に疑問を呈しています。その上で、加藤 勝信厚労相が、22年9月に開催された西太平洋地域の地域委員会において、今回の内部告発や調査などについて十分な情報開示と正式な議論を求める意見を表明したにも関わらず、それに対して具体的な行動が取られていないことに懸念を表明しています。葛西氏は今回のような疑惑を招くような人物ではない、調査結果を公表してほしい、葛西氏の言い分も聞くべきだ…。歴代の厚労大臣らによる異例の嘆願書がWHOに送られたものの、結局は解任に至ってしまいました。一体、何が悪かったのでしょうか。パワハラが表沙汰になった段階でほぼほぼアウトの欧米先進国WHO内でのさまざまな事情やパワーバランスももちろん大きいと思いますが、一つにはパワハラやセクハラなどに鈍感、寛容過ぎる日本人の特性が災いした可能性があります。欧米先進国では、パワハラやセクハラについては表沙汰になった(訴えられた、告発された)段階で、ほぼほぼアウトというのが常識と言われています。そもそも複数(30人!)の人間から告発された段階で、仕事の能力以前にその人の人間性に疑問符が付けられてしまいます。ましてや多様性の象徴とも言える国際機関での差別発言は、たとえそこに悪意がなかったとしてもアウトでしょう。そのアウトさがAP通信で報道されたのは2022年1月。すぐさま火消しに入らなかった日本政府や頑なに告発内容を否定し続けた葛西氏にも非がありそうです。「解任理由が不明確」との批判もありますが、国際的には今回の解任、歓迎の声も大きいようです。医学雑誌の「The Lancet」は3月18日、「Global health experts welcome Kasai dismissal」(グローバルヘルスの専門家たち葛西氏解任を歓迎)と題する記事を掲載しているのです。(この項続く)

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花粉症患者はコロナによる嗅覚・味覚障害が悪化しやすい

 花粉症患者では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染時の嗅覚・味覚障害のリスクが高く、その回復も遅いことが、中国・西安交通大学のJingguo Chen氏らの調査によって明らかになった。Laryngoscope investigative otolaryngology誌2023年2月号掲載の報告。 急な嗅覚障害や味覚障害の発現は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予測因子と考えられている。しかし、慢性副鼻腔炎や喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎などを有する患者では、SARS-CoV-2に感染する前にすでに併存疾患の影響によって嗅覚障害や味覚障害が生じている可能性があり、それらによる評価が効果的ではないことがある。そのため、研究グループは、呼吸器疾患のあるCOVID-19患者の嗅覚・味覚と併存疾患の関連を調査することにした。 研究は、「化学感覚研究のための国際コンソーシアム(Global Consortium for Chemosensory Research:GCCR)」のアンケートデータを用いて行われた。対象者は、SARS-CoV-2感染前と感染後の嗅覚・味覚の程度と、感染前6ヵ月の併存疾患の状態を自己評価した。併存疾患(高血圧、季節性アレルギー/花粉症、肺疾患、副鼻腔炎、糖尿病、神経疾患)によって層別化し、線線形混合モデルを用いて評価した。 最終解析には、呼吸器疾患のある2万6,468例(女性1万8,429例[69.87%]、20~60歳が90%)が組み込まれた。 主な結果は以下のとおり。・最終解析に組み込まれた2万6,468例のうち、併存疾患があるのは1万6,016例、併存疾患がないのは1万452例であった。・年齢、性別、地域を調整した多変量回帰分析の結果、高血圧、肺疾患、副鼻腔疾患、神経疾患の併存疾患があるCOVID-19患者では、嗅覚・味覚障害が悪化した割合が高かった(いずれもp<0.05)が、それらの回復に明らかな差はみられなかった。・季節性アレルギー/花粉症を有するCOVID-19患者では、味覚・嗅覚障害が悪化した割合が高く、回復も遅かった(いずれもp<0.001)。・糖尿病では、味覚・嗅覚障害の悪化にも回復にも明らかな関連はみられなかった。

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デュピルマブ、紅皮症性アトピー性皮膚炎にも有効

 紅皮症性アトピー性皮膚炎(AD)は、広範な皮膚病変によって定義され、合併症を引き起こし、場合によっては入院に至る重症ADである。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らは、デュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの無作為化比較試験の事後解析において、紅皮症性AD患者に対するデュピルマブ治療は、全体集団と同様にADの徴候・症状の迅速かつ持続的な改善をもたらし、安全性は許容できるものであったと報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。 中等症~重症のAD患者を対象にデュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの国際共同、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験について、事後解析が行われた。対象は、AD病変が体表面積(BSA)の90%以上かつ全般症状スコア(Global Individual Sign Score)の紅斑のスコアが1以上を満たした患者とした(紅皮症性AD)。 対象患者は、デュピルマブ(週1回または隔週)またはプラセボを、単剤または局所コルチコステロイド(TCS)との併用で投与された。 16週目における有効性(病変のBSAに対する割合、Eczema Area and Severity Index[EASI]スコア、Peak Pruritus Numerical Rating Scale[そう痒NRS]スコア)、血清中バイオマーカー(TARC[thymus and activation-regulated chemokine]、総IgE、LDH[乳酸脱水素酵素])の変化、安全性(有害事象の発現頻度)などを評価した。 データはレジメンごとにプールされ、デュピルマブ単剤投与とTCS併用投与で層別化された。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された3,075例中、209例がベースライン時に紅皮症性ADの基準を満たした。・紅皮症性AD患者集団の年齢中央値はデュピルマブ単剤群31歳、TCS併用群39歳で、全体集団(それぞれ34歳、36歳)と類似していた。また、紅皮症性AD患者集団の男性の割合は、デュピルマブ単剤群71.3%(97例)、TCS併用群74.0%(54例)であった(全体集団はそれぞれ58.7%、60.6%)。・紅皮症性AD患者集団において、デュピルマブ投与群(週1回投与、隔週投与)はプラセボ群と比べて、有効性の指標がいずれも有意に改善した。・病変のBSAに対する割合(最小二乗平均変化率[標準誤差[SE]]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-42.0% [7.7]、隔週投与-39.9%[6.5]であったのに対し、プラセボ群は-17.2%[11.0]であった(いずれもp=0.03)。TCS併用群は週1回投与-63.2% [6.7]、隔週投与-56.1%[9.1]であったのに対し、プラセボ群は-14.5%[7.3]であった(いずれもp<0.001)。・EASIスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-58.5% [9.0]、隔週投与-58.3%[7.9]であったのに対し、プラセボ群は-22.3%[12.4]であった(それぞれp=0.004、p=0.003)。TCS併用群は週1回投与-78.9%[7.8]、隔週投与-70.6%[10.1]であったのに対し、プラセボ群は-19.3%[8.2]であった(いずれもp<0.001)。・そう痒NRSスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-45.9% [7.8]、隔週投与-33.9%[6.6]であったのに対し、プラセボ群は-0.6% [9.4]であった(いずれもp<0.001)。TCS併用群は週1回投与-53.0% [8.1]、隔週投与-55.7%[10.8]であったのに対し、プラセボ群は-26.0%[8.8]であった(それぞれp=0.006、p=0.01)。・名目上の統計学的に有意な改善は、早ければ1週目からみられた(デュピルマブ単剤群のEASIスコアとそう痒NRSスコア[それぞれp<0.05、p<0.001])。・バイオマーカー値はプラセボと比べて有意に低下した(いずれもp<0.001)。・デュピルマブ治療を受けた患者で最もよくみられた有害事象は、注射部位反応、結膜炎、上咽頭炎であった。

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英国のコロナ水際対策は機能しなかった?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大阻止を目的に英国で実施された入国制限が、あまり機能していなかったことを示唆する研究結果が報告された。英国に到着する飛行機のトイレや到着ターミナルの下水を採取して分析した結果、ほとんどのサンプルから重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が検出されたという。 この研究は、英バンガー大学のDavey Jones氏らによるもので、詳細は「PLOS Global Public Health」に1月19日掲載された。同氏は、「英国政府は、COVID-19罹患者が英国に到着する航空機に搭乗することを防ぐために、さまざまな対策を講じた。それにもかかわらず、分析したほぼ全ての排水や下水からウイルスが検出された」と、大学発のリリースの中で述べている。水際対策がうまくいかなかった理由としては、「搭乗する前の検査結果では陰性だったがその後に発症し、入国制限を回避して入国できたケースや、それ以外の可能性もある」とのことだ。同氏は、「いずれにしてもわれわれの研究結果は、他国から患者が流入するのを抑え込むという対策が失敗だったことを示している」と語っている。 Jones氏らは、2022年3月8~31日に、英国の3カ所の国際空港(ヒースロー空港、エディンバラ空港、ブリストル空港)に到着した航空機のトイレの排水タンクと、到着ターミナルの下水からサンプルを採取して分析。その結果、ヒースロー空港とブリストル空港の到着ターミナルの下水から採取された全てのサンプル、およびエディンバラ空港の下水から採取されたサンプルの85%は、SARS-CoV-2陽性だった。また、航空機のトイレ排水のサンプルも、93%が陽性だった。この事実は、英国に入国する乗客や乗員、空港スタッフのCOVID-19の有病率が低いものではなかったことを物語っている。 なお、排水や下水のサンプル採取期間中の3月18日に、「ワクチン接種を受けていない乗客は、現地出発前と英国到着の2日後に感染の有無を確認するための検査を要する」という措置が解除された。この日の前後で二分して、サンプルからのウイルス検出率を比較したところ、有意な変化は見られなかった。 Jones氏らの研究チームが以前に行った、成人2,000人を対象とする調査では、回答者の23%が「体調が良くない時に英国に向かう航空機に搭乗したことがある」と答え、また短距離フライトでは13%、長距離フライトでは36%が、機内のトイレを「利用する」と回答した。これらのデータから同研究チームは、排水の分析によって、英国に入国するCOVID-19患者の8~14%を捕捉できるのではないかと推測。また、この手法はCOVID-19だけでなく、ノロウイルスやエンテロウイルスなどの他の感染症の拡大状況をモニタリングする手法としても応用できるとしている。 論文の筆頭著者である同大学のKata Farkas氏は、「下水中の微生物のモニタリングを、新たな疾患の流行に対して英国の医療システムが備える、または感染拡大前にその警告を発出し得るレベルに発展させるには、全国的な規模でサンプリングを行う必要がある」としている。ただし、「英国に到着する全航空便を検査対象にすることは現実的ではないが、一部を調べることでも、海外から侵入してくる病原性微生物の国内での感染拡大の予測に役立つのではないか」とも述べている。

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中等症~重症の化膿性汗腺炎、セクキヌマブ2週に1回投与が有効/Lancet

 中等症~重症の化膿性汗腺炎患者において、セクキヌマブの2週ごとの投与は安全性プロファイルが良好で、化膿性汗腺炎を速やかに改善し、投与52週後まで有効性が維持されることが示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAlexa B. Kimball氏らが、日本を含む40ヵ国219施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SUNSHINE試験」および「SUNRISE試験」の結果を報告した。中等症~重症の化膿性汗腺炎に対して利用可能な治療選択肢は、わずかしかないのが現状である。Lancet誌オンライン版2023年2月3日号掲載の報告。セクキヌマブ300mgを2週ごとまたは4週ごと皮下投与vs.プラセボ SUNSHINE試験およびSUNRISE試験の対象は、1年以上、中等症~重症の化膿性汗腺炎(2ヵ所以上の解剖学的部位に、合計5つ以上の炎症性病変)を有する18歳以上で、試験期間中、市販の外用消毒剤を化膿性汗腺炎病変部位に毎日使用することに同意した患者を適格とした。ベースラインで20以上の瘻孔がある患者、併用禁止薬(全身性生物学的免疫調整薬、生ワクチン、または他の治験薬)による治療が必要な活動性皮膚疾患を有する患者などは除外した。 両試験において適格患者を、セクキヌマブ300mgを2週ごと皮下投与する群(2週ごと群)、同4週ごと皮下投与する群(4週ごと群)、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、投与16週後のHiSCR(ベースラインと比較して膿瘍および炎症性結節の数が50%以上減少し、かつ膿瘍数の増加がなく、かつ排膿性瘻孔数も増加がない場合と定義)を達成した患者の割合とした。両試験ともプラセボと比較しセクキヌマブ2週ごと投与で有意に改善 2019年1月31日~2021年6月7日の期間に、SUNSHINE試験では676例がスクリーニングされ、うち541例(80%、女性304例[56%]、男性237例[44%]、平均年齢36.1±11.7歳)が解析対象となった。2週ごと群が181例(33%)、4週ごと群180例(33%)、プラセボ群180例(33%)である。 同期間にSUNRISE試験では687例がスクリーニングされ、543例(79%、女性306例[56%]、男性237例[44%]、平均年齢36.3±11.4歳)が解析対象となった。2週ごと群180例(33%)、4週ごと群180例(33%)、プラセボ群183例(34%)。 HiSCR達成患者の割合は、SUNSHINE試験ではプラセボ群34%(多重代入法でのHiSCR達成患者数平均値は60.7/180例)に対し、2週ごと群で45%(81.5/181例)(オッズ比[OR]:1.8、95%信頼区間[CI]:1.1~2.7、p=0.0070)と有意に高率であったが、4週ごと群は42%(75.2/180例)(1.5、1.0~2.3、p=0.042、有意水準はp=0.025)でありプラセボ群との間に有意差は認められなかった。 一方、SUNRISE試験では、プラセボ群31%(183例中57.1例)に対し、2週ごと群42%(76.2/180例)(OR:1.6、95%CI:1.1~2.6、p=0.015)、4週ごと群46%(83.1/180例)(1.9、1.2~3.0、p=0.0022)で、両群とも有意に高率であった。 HiSCRを達成した患者の割合は、52週時の試験終了まで維持された。 投与16週後までの主な有害事象は両試験とも頭痛であり、発現率はSUNSHINE試験で2週ごと群9%(17例)、4週ごと群11%(20例)、プラセボ群8%(14例)、SUNRISE試験でそれぞれ12%(21例)、9%(17例)、8%(15例)であった。両試験とも、試験に関連した死亡は報告されなかった。両試験におけるセクキヌマブの安全性プロファイルは、これまでの報告と一貫しており、新たな、または予期しない安全性上の所見は認められなかった。

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乾癬の発症にPCSK9が関与か

 脂質異常症の治療薬として用いられているPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬について、乾癬予防に使用できる可能性が指摘された。英国・マンチェスター大学のSizheng Steven Zhao氏らによる1万2,116例の乾癬患者を対象としたメンデルランダム化解析において、乾癬の発症へのPCSK9の関与が示唆された。脂質経路は乾癬の発症に関与しており、スタチンなどの一部の脂質低下薬は疾患修飾の特性を有すると考えられている。しかし大規模集団での研究はほとんど実施されておらず、従来の観察研究の結果に基づく因果関係の解釈は、交絡因子の存在により限界があった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。 研究グループは、脂質低下薬と乾癬発症リスクとの因果関係を調べるため、2022年8月~10月に、2標本のメンデルランダム化解析を行った。検討には、2つのバイオバンク(UKバイオバンク[英国]およびFinnGen[フィンランド])を用いた乾癬に関するゲノムワイド関連研究(GWAS)、およびGlobal Lipids Genetics ConsortiumからのLDL値が含まれた。 LDL値をバイオマーカーとして用い、HMG-CoA還元酵素(スタチンの標的)、Niemann-Pick C1-like 1(NPC1L1、エゼチミブの標的)、PCSK9(アリロクマブなどの標的)の遺伝的阻害(HMG-CoA還元酵素、NPC1L1、PCSK9の阻害を代替する遺伝子変異を抽出)を行い、乾癬発症リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1万2,116例の乾癬患者のデータと、LDL測定値が得られた約130万人のデータを基に解析した。・PCSK9の遺伝的阻害は、乾癬発症リスク低下と関連した(LDL値の1標準偏差減少ごとのオッズ比[OR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88、p=0.003)。・上記の関連は、FinnGenでも同様であった(OR:0.71、95%CI:0.57~0.88、p=0.002)。・感度分析において、遺伝子変異の多面作用(pleiotropy)または遺伝的交絡によるバイアスは認められなかった。・HMG-CoA還元酵素、NPC1L1の遺伝的阻害は、乾癬発症リスクとの関連が認められなかった。

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急性腎障害、造影剤は腎予後に影響せず

 急性腎障害(AKI)の既往を有する患者における、造影剤使用と腎予後の関係に関するエビデンスは不足しているのが現状である。そこで、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のMichael R. Ehmann氏らは、AKI患者に対する造影剤静注とAKI持続の関係を検討し、造影剤は腎予後に影響を及ぼさなかったことを報告した。Intensive Care Medicine誌オンライン版2023年1月30日号掲載の報告。 2017年7月1日~2021年6月30日の間に救急受診し、入院した18歳以上の患者のうち、KDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)基準のクレアチニン値に基づいてAKI(血清クレアチニン値が0.3mg/dL以上上昇もしくは1.5倍以上に上昇)と診断された1万4,449例を対象として、後ろ向きに追跡した。評価項目は、退院時のAKI持続、180日以内の透析開始などであった。傾向スコア重み付け法やエントロピーバランス法を用いて、造影剤静注あり群となし群の背景因子を調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1万4,449例中、12.8%が集中治療室に入室した。造影剤静注を受けた患者の割合は18.4%、退院前にAKIから回復した患者の割合は69.1%であった。・多変量ロジスティック回帰モデル(オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.89~1.11)、傾向スコア重み付け法(OR:0.93、95%CI:0.83~1.05)、エントロピーバランス法(OR:0.94、95%CI:0.83~1.05)のいずれの方法を用いても、造影剤静注と退院時のAKI持続に関連は認められなかった。・集中治療室に入室した患者サブグループにおいても、AKI持続に関する結果は同様であった。・180日以内の透析開始は対象患者の5.4%にみられたが、造影剤静注と180日以内の透析開始リスクとの関連は認められなかった。

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英語で「さっと見てくる」は?【1分★医療英語】第66回

第66回 英語で「さっと見てくる」は?Out new patient just came up to the floor.(入院患者さんが病棟に上がってきたみたいです)Can you please eyeball the patient?(患者さんの様子をさっと見てきてもらっていいですか?)《例文1》The vital monitor is beeping, I will eyeball the patient.(バイタルモニターが鳴っていますね、ちょっと患者さんを見てきます)《例文2》A patient at the ED is waiting for a while, have you eyeballed her?(救急外来の患者さんがしばらく待っているみたいですけど、患者さんの様子は確認しました?)《解説》“eyeball”といえば真っ先に「眼球」という訳語が思い浮かぶかと思いますが、実は動詞としても使用できるのを知っていましたか? 辞書によると、“eyeball”を動詞として使う場合は、“look at someone or something directly and carefully”(人やモノを直接、注意深く見る)という意味になります。実際、私も米国の医療現場で耳にする機会が多いために知った単語ですが、具体的には患者さんの様子を確認する際に使われます。患者さんの全身しっかり診察する際の「診る」というよりは、まさしく目(eyeball)で「患者さんの全体の状態に変化がないかを確認する・見る」ような際に使用される表現です。informalな表現なので、口語表現で使うことが多いです。入院患者さん、救急外来の患者さん、術後の患者さん など、しっかり診察するまではしなくても、直接医師や看護師の目で患者さんの様子を確認する機会は多くあります。「患者さんを見てきたけど変わりなさそう」と言いたい際に、“I just eyeballed him. He looks fine.”のように、さらりと言えるようになるとスマートですね。講師紹介

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コロナ2価ワクチンブースター、入院/死亡抑制効果は従来ワクチンの2倍/NEJM

 2022年8月31日、米食品医薬品局(FDA)は、起源株由来のスパイクタンパク質を含むmRNAとオミクロン変異株BA.4/5株由来のスパイクタンパク質を含むモデルナおよびファイザー製の2価ワクチンを、1次接種またはブースター接種後少なくとも2ヵ月以降のブースター接種用に緊急使用できるように承認した。FDAの承認は、これら2種類の2価ワクチンの非臨床データ、オミクロン変異株BA.1系統のmRNAを含む2価ワクチンの安全性と免疫原性のデータ、および1価ワクチンの安全性と有効性のデータに基づいて行われたものである。9月1日以降、この2種類の2価mRNAワクチンは、米国やその他の国々で、12歳以上の人のブースター接種用として、1価ワクチンに代わって使用されている。今回、オミクロン変異株BA.4.6、BA.5、BQ.1、BQ.1.1による重症感染に対するこれら2価ワクチンの有効性についての大規模コホート研究のデータが、NEJM誌オンライン版2023年1月25日号のCORRESPONDENCEに掲載された。2価ワクチンによるブースター接種の入院/死亡抑制効果は、従来ワクチンによるブースター接種の2倍以上だった。 米国・Gillings School of Global Public HealthのDan-Yu Lin氏らによる本研究は、同グループによる先行研究のデータを使って行われた。2022年9月1日~12月8日に2価ワクチンでブースター接種が行われた99日間と、それ以前の2022年5月25日~8月31日の1価ワクチンでブースター接種が行われた99日間の新たなデータを解析した。入院または死亡に至る感染を重症と定義し、1価・2価ワクチンの1回目のブースター接種における有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・5月25日~8月31日に、対象者624万2,259人中29万2,659人が1価ワクチンのブースター接種を受けた。この期間に発生したCOVID-19関連入院報告の61/1,896例、死亡報告の23/690例が1価ワクチンのブースター接種後に発生した。・9月1日~11月3日に、対象者628万3,483人中107万136人が2価ワクチンのブースター接種を受け、この期間に発生したCOVID-19関連入院報告の57/1,093例、死亡報告の17/514例が2価ワクチンのブースター接種後に発生した。・ブースター効果は約4週間でピークに達し、その後低下した。12歳以上の全参加者において、ブースター接種後の15~99日目の入院を伴う重症感染に対するワクチンの有効性は、1価ワクチン25.2%(95%信頼区間[CI]:-0.2~44.2)、2価ワクチン58.7%(95%CI:43.7~69.8)、その差は33.5ポイント(95%CI:2.9~62.1)であった。・入院または死亡に至る重症感染に対するワクチンの有効性は、1価ワクチン24.9%(95%CI:1.4~42.8)、2価ワクチン61.8%(95%CI:48.2~71.8)、その差は36.9ポイント(95%CI:12.6~64.3)だった。

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