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乾癬治療薬の安全性は生物学的製剤でも変わらない?

 ドイツで実施された中等度~重症乾癬患者の登録試験において、従来の全身治療薬と生物学的製剤では、感染症、心血管系イベント、悪性腫瘍の発生などの安全性に差はみられなかったことが、ドイツ・ハンブルク大学のKristian Reich氏らにより報告された。Archives of Dermatological Research誌オンライン版2015年9月10日号掲載の報告。 本登録試験「PspBest」は、中等症~重症乾癬患者を対象とし、従来の全身治療薬と生物学的製剤について長期の有効性と安全性を調査することを目的として、2008年から251ヵ所の皮膚センターで実施された。 各治療薬の安全性評価にあたっては、重大な感染症、悪性腫瘍、主要有害心血管イベントに焦点が当てられた。2012年6月までに2,444例(女性40%、平均年齢47.3歳[SD 14.1]、平均罹患18.2年[SD 14.7])が登録された。平均PASIスコアは14.7、皮膚科領域に特化したQOL指標 であるDLQIは11.1、平均BMIは28.2であった。 主な結果は以下のとおり。・すべての有害事象の100人年あたりの発現率は、従来の全身治療薬投与群で1.3(SD 0.9)、生物学的製剤群で1.5(SD 1.2)で有意差はみられなかった(p>0.5)。・重大な感染症の発現は、従来の全身治療薬群0.33(95%CI:0.13-0.54)、生物学的製剤群0.65(95%CI:0.35~0.98)であった。・主要な心血管イベントの発現は、従来の全身治療薬群0.56(95%CI:0.29~0.97)、生物学的製剤群0.77(95%CI:0.41~1.31)であった。・非黒色腫皮膚がんを除く悪性腫瘍の発現は、従来の全身治療薬群0.46(95%CI:0.22~0.84)、生物学的製剤群0.49(95%CI:0.21~0.97)であった。・単一の薬剤間で安全性パラメーターに差はみられなかった。

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仮説検定としては意味があるが独創的とは言い難い(解説:野間 重孝 氏)-415

 本研究は、急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対して、プライマリ経皮的冠動脈インターベンション施行前にシクロスポリンを静脈内投与することにより、1年時点で評価した有害事象(全死因死亡、初回入院中の心不全の悪化、心不全による再入院、左室拡張末期容積15%以上増加のリモデリング)の発生を軽減することができるという仮説を検定したものである。 本研究に先立ち、著者らは2008年に58例を対象としたパイロットスタディを発表しており、シクロスポリンの前投与により、CK遊出量・トロポニン遊出量の減少、第5病日においてMRI hyperenhancementで計量した心筋梗塞量の減少を報告した1)。 今回の研究は、上記のphase3に当たるものであり、42施設、970例を対象として二重盲検プラセボ対照無作為化試験として実施された。結果は、複合アウトカム発生オッズ比が1.04であり、サブ解析でも優位を示した項目がみられず、仮説は否定された形となった。 この今回の研究における仮説の基礎には、心筋梗塞巣のサイズの決定に、再潅流に伴ういわゆる再潅流障害が重要な役割を果たしており、シクロスポリンはミトコンドリア壊死を防止することにより再潅流障害を軽減することができるのではないかとの予想があった。この点については、若干の解説が必要であろう。 真核生物の細胞内小器官であるミトコンドリアは、ADPの酸化的リン酸化によりATPを産生することを重要な役割としており、構造としては二重の生体膜(内膜と外膜)によって囲まれている。内膜と外膜の接触部位(contact sites)にはPTP(permeability transition pore)と呼ばれる穴構造が存在する。PTPはCaイオンの存在下に開口することが知られており、開口により膜電位が低下すると、まずアポトーシスが発生し、さらに開口して全エネルギーが失われると(complete deenerzation)ミトコンドリアが壊死に陥ることが知られている。心筋再潅流時にはミトコンドリアがCaイオン過負荷状態にあると考えられ、これがミトコンドリアの壊死から細胞全体の壊死へと発展するのではないかと考えられている。 シクロスポリンはPTPの構成物質中のcyclophilin Dとadenine nucleotide translocaseの結合を阻害することにより、PTPの開口を防止することがin vitroで確かめられており、このことからシクロスポリンは心筋再潅流時のCa過負荷から、ミトコンドリアを保護する働きがあるのではないかと考えられたのである。 予想が成立しなかった原因はいくつか考えられるだろう。シクロスポリンの一連の保護仮説の真偽は置いておくとして、まず第1に考えられるのは静脈内投与によっては十分量の薬剤が心筋に到達しなかった可能性である。これは、かなり初歩的な考え方のように思われるかもしれないが、薬剤前投与で現在まではっきり有効であると証明された薬剤がないことからも、静脈内投与の限界が考えられなくてはならないのではないだろうか。 第2に、そもそも大梗塞域の形成に果たす再潅流障害の意味付けを過大評価しているのではないかという疑問である。著者らが対象とした症例はいずれも重症例であったが、その病状形成に再潅流障害が大きく関与していたとどうして証明できるだろうか。単純に虚血域が大きいことだけで十分な危険因子なのである。 第3には、再潅流障害が起こったとして、in vitroの実験とは異なり、PCIにより再潅流している以上、微小血栓を末梢に飛ばすなど化学的以外の物理的な要因も考慮されなければならないことである。また、心筋壊死巣の大きさにはtotal ischemic timeこそが大きな意味を持つと考えられ、12時間以内という縛りでは、十分に速やかに再潅流が得られたとは言い難い点も指摘しておきたい。 急性心筋梗塞に対する治療は、この20年に著しい進歩を遂げたと言ってよい。しかしながら、それはPCI施行可能施設の増多、救急隊員・救命救急医の練度の向上、door to balloon timeの短縮といった社会的、人的な努力によるところが大きい。ステントの進歩や血栓吸引療法の登場など種々の進歩はあったものの、いわゆるパラダイムシフトが起こるには至っていない。本研究も、シクロスポリンというこの分野ではあまり注目されることのない薬剤を使用したこと、ミトコンドリア保護に注目した点は新しいと言えるが、根本的にはほかの薬剤の術前投与研究を踏襲したもので、目新しいとまでは言えない研究と考えられる。

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H. pylori 除菌治療のリスク・ベネフィット:システマティックレビューとメタ解析(解説:上村 直実 氏)-414

 ピロリ除菌に対する世界的な標準レジメンである3剤併用治療法(プロトンポンプ阻害薬:PPI+アモキシシリンAMPC+クラリスロマイシンCAM)の除菌成功率が低下する一方、近年、高い除菌率を示すレジメンが数多く報告されている。今回、最も有効性が高く安全な治療レジメンを探索する目的で、世界中から報告されている除菌治療法について、システマティックレビューとネットワークメタ解析により検討した研究論文が、中国から報告された。 Cochrane Library、PubMed、Embaseから入手した、14種類の除菌治療レジメンに関するデータを解析した結果、標準レジメンである3剤併用治療法7日間の除菌率が最も低かった。最も有効であったのは、4剤併用療法(PPI+抗菌薬3剤)で、次いで抗菌薬3剤+プロバイオティクス、レボフロキサシン(LVFX)を用いる3剤併用治療、ハイブリッド療法(PPI+AMPCに続いてPPI+AMPC+CAM+メトロニダゾールMNZを服用する方法)、順次療法(PPI+AMPCを5~7日間、引き続きPPI+CAM+MNZまたはMNZを5~7日間服用)などが除菌成功率が高いレジメンであった。一方、安全性に関しては、LVFXを用いるものと、抗菌薬3剤+プロバイオティクスを用いたレジメンにおいて、ほかのレジメンと比較して有害事象の発生が高率であった。 ピロリ感染に対する除菌治療の有効性・除菌率は、地域の耐性菌率により大きな影響を受けるとともに、除菌判定法の精度によっても大きく左右される。したがって、今回の報告による有効性の高い除菌治療レジメンが万国共通に優れた治療法とは言い難い。わが国の保険診療では、ピロリ感染症に対して保険適用とされているのは、PPI+AMPC+CAMの3剤併用レジメンが1次除菌治療として、CAMをMNZに変更したレジメンが2次治療レジメンとして保険承認されているが、その他のレジメンは未承認で自費診療となっている。なお、最近使用可能となった新たなPPIを用いたレジメンの1次除菌率が、90%以上であると報告されている。

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タバコの「低タール」表示は意味がない

「低タール」タバコのからくり 低タールとされるタバコは、フィルタの横に穴を開けて空気で希釈することで、測定値を下げています。 希釈されても、量は減りません。ウイスキーを水割りにすると薄くなりますが、体内に入るアルコールの量は変わらないのと同じことです。 パッケージに書かれているタール値(1mgなど)は、タバコ煙を機械で測定した値です。人体に入る量ではありません。タール値が低くても体内に入る量は変わらない!【タールの違いの仕組み】高タールタバコ低タールタバコ機械で吸引・測定した値がパッケージに表示されているタール値穴から空気が入り希釈される社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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膵神経内分泌腫瘍〔P-NET : pancreatic neuroendocrine tumor〕

1 疾患概要■ 概念・定義神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)は、神経内分泌細胞に由来する腫瘍の総称で、膵臓、下垂体、消化管、肺、子宮頸部など全身のさまざまな臓器に発生する。NETは比較的まれで進行も緩徐と考えられているが、基本的に悪性のポテンシャルを有する腫瘍である。ホルモンやアミンの過剰分泌を伴う機能性と非機能性に大別される。■ 疫学1)pNETの発症数欧米では膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor: pNET)は膵腫瘍全体の1~2%、年間有病数は人口10万人あたり1人以下と報告されている。日本における2005年の1年間のpNETの受療者数は約2,845人、人口10万人あたりの有病患者数は約2.23人、新規発症率は人口10万人あたり約1.01人と推定された。発症平均年齢は57.6歳で、60代にピークがあり、全体の15.8%を占めている。一方、2010年1年間のpNETの受療者数は約3,379人、人口10万人あたりの有病患者数は約2.69人、新規発症率は人口10万人あたり約1.27人と推定され、増加傾向がみられた。2)疾患別頻度2005年のわが国の疫学調査では、非機能性pNETが全体の47.4%を占め、機能性は49.4%を占めていた。2010年では、非機能性・機能性pNETの割合はそれぞれ34.5%と65.5%であり、非機能性腫瘍の割合が増えた。インスリノーマ20.9%、ガストリノーマ8.2%、グルカゴノーマ3.2%、ソマトスタチノーマ0.3%であった。機能性・非機能性腫瘍の割合は、欧米の報告に近づいたが、わが国では機能性腫瘍においてインスリノーマが多い傾向にある。■ 病因NETの発生にPI3K (phosphoinositide 3-kinase)-Akt経路が関わっていると考えられている。NETでは家族性発症するものが知られており、多発性内分泌腫瘍症I型(MEN-1)では原因遺伝子が同定され、下垂体腫瘍、副甲状腺腫瘍やpNETを来す。また、結節性硬化症、神経線維症、Von Hippel-Lindau(VHL)病を含む遺伝性腫瘍性疾患ではpNETの発生にmTOR経路が関連していると考えられているが、病因の詳細はいまだ不明である。■ 症状2005年のわが国における全国疫学調査によると、「症状あり」で来院した症例が全体の60%で、最も頻度が高いのは低血糖由来の症状であった。一方、無症状で検診にて偶然発見された症例は全体の24%であった。また、有症状例において何らかの症状が出現してからpNETと診断されるまで、平均約22ヵ月を要している。1)機能性腫瘍の症状機能性pNETは腫瘍が放出するホルモンによる内分泌症状をもたらすが、転移性のものは悪性腫瘍として生命予後に関わるという別の側面も持つ。また、ホルモン分泌も単一ではなく、複数のホルモンを分泌する腫瘍も認められる。主な内分泌症状を表1に示した。画像を拡大する2)非機能性腫瘍の症状非機能性腫瘍では特異的症状を呈さず、腫瘍増大による症状(周囲への圧迫・浸潤)や遠隔転移によって発見されることが多い。初発症状は腹痛、体重減少、食欲低下、嘔気などであるが、いずれも非特異的である。有肝転移例の進行例では、肝機能障害・黄疸が認められる。■ 分類上述したとおり、機能性腫瘍と非機能性腫瘍に大別される。遺伝性疾患(MEN-1、VHL)を合併するものもある。わが国においてはMEN-1合併の頻度は、2010年の調査ではpNET全体で4.3%であった。その中で、ガストリノーマは16.3%と最も高率にMEN-1を合併しており、非機能性pNETでは 4.0%であった。欧米の報告では非機能性pNETのMEN-1合併頻度は約30%であり、日本と大きな差を認めた。pNETの病理組織学的診断は、とくに切除不能腫瘍の治療方針決定に重要な情報となる。WHO 2010年分類を表2に示す。画像を拡大する■ 予後予後に与える因子は複数認められ、遠隔転移(肝転移)の有無、遺伝性疾患の有無、組織学的分類が影響を与える。欧米の報告によると5年生存率は、腫瘍が局所に留まっている症例で71%、局所浸潤が認められる症例で55%、遠隔転移を有する症例で23%とされる。インスリノーマ以外は遠隔転移を有する率が高く、予後不良である。単発例で転移がなく、治癒切除が施行できた症例の予後は良好である。WHO 2010分類でNECと診断された症例は、進行が早く、予後はさらに不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 存在診断症状や画像所見よりpNETが疑われた場合、各種膵ホルモンの基礎値を測定する。MEN-1を合併する頻度が高いことから、初診時に副甲状腺機能亢進症のスクリーニングで血清Ca、P値、intact-PTHを測定する。腫瘍マーカーとして神経内分泌細胞から合成・分泌されるクロモグラニンA(CgA)の有用性が知られているが、わが国ではいまだに保険適用がない。ほかに腫瘍マーカーとしてはNSEも用いられるが感度は低い。症状、検査などからインスリノーマやガストリノーマが疑われた場合、負荷試験(絶食試験、カルチコール負荷試験)を加えることで存在診断を進める。■ 局在診断pNETの多くは、多血性で内部均一な腫瘍であり、典型例では診断は容易であるが、乏血性を示すものや嚢胞変性を伴うような非典型例では、膵がんや嚢胞性膵腫瘍など他の膵腫瘍との鑑別が問題となる。インスリノーマやガストリノーマでは腫瘍径が小さいものも多く、正確な局在診断が重要である。症例に応じて各種modalityを組み合わせて診断する。1)腹部超音波検査内部均一な低エコー腫瘤として描出される。最も低侵襲であり、スクリーニングとして重要である。2)腹部CTダイナミックCTにて動脈相で非常に強く造影される。肝転移やリンパ節転移の検出にも優れており、ステージングの診断の際に必須である。3)腹部MRIT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を呈する。CT同様、造影MRIでは腫瘍濃染を呈する。4)超音波内視鏡(EUS)辺縁整、内部均一な低エコー腫瘤として描出される。膵全体を観察でき、1cm以下の小病変も同定できる。診断率は80~95%程度とCTやMRIより優れており、原発巣の局在診断において非常に有用である。さらにEUS-FNAを併用することで組織診断が可能である。 5)選択的動脈内刺激薬注入法(SASI TEST)〔図1〕機能性腫瘍の局在診断に有用なmodalityである。腹部動脈造影の際に肝静脈内にカテーテルを留置し、膵の各領域を支配する動脈から刺激薬(カルシウム)を注入後、肝静脈血中のインスリン(ガストリン)値を測定し、その上昇から腫瘍の局在を判定する方法である。腫瘍の栄養動脈を同定することで他のmodalityでは描出困難な腫瘍の存在領域診断が可能であり、インスリノーマやガストリノーマの術前検査としてとくに有用である。画像を拡大する6)ソマトスタチンレセプターシンチグラフィー(SRS)pNETではソマトスタチンレセプター(SSTR)、とくにSSTR2が高率に発現している。SSTR2に強い結合能を持つオクトレオチドを用いたソマトスタチンレセプターシンチグラフィー(SRS)が、海外では広く行われており、転移巣を含めた全身検索に有用である。わが国では保険適用がないため、臨床試験として限られた施設でしか施行されていない。早期の国内承認が期待される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 外科的治療pNETの治療法の第1選択は外科治療であり、小さな単発の腫瘍に対しては、腫瘍核出術が標準術式である。多発性腫瘍、膵実質内の腫瘍など核出困難例は膵頭十二指腸切除術、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術、または膵体尾部切除術、膵分節切除術が行われる。肝転移を有する症例でも切除可能なものは積極的に切除する。1)分子標的薬近年、pNETに対するさまざまな分子標的薬を用いた臨床試験が行われてきた。その結果、mTOR阻害薬であるエベロリムス(商品名:アフィニトール)とマルチキナーゼ阻害薬であるスニチニブ(同:スーテント)が進行性pNET (NET G1/G2)に有効であることが示された。米国NCCNガイドラインでも推奨され(図2)、最近わが国でもpNETに対して保険適用が追加承認された(表3)。2015年の膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドラインでは、pNETに対するエベロリムスやスニチニブ療法はグレードBで推奨されているが、さまざまな有害事象に対する注意や対策が必要である(表3)。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する2)全身化学療法(殺細胞性抗腫瘍療法)進行性pNETに対する全身化学療法は、わが国においてはいまだコンセンサスがなく、保険適用外のレジメンが多い。(1)NET G1/G2に対する全身化学療法進行性の高分化型pNET(NET G1/G2相当)に対し、欧米で使用されてきた化学療法剤の中ではストレプトゾシン(STZ[同: ザノサー点滴静注])が代表的であるが、わが国ではこれまで製造販売されていなかった。国内でpNETおよび消化管NETに対するSTZの第I/II相試験が多施設共同で行われ、2014年にわが国でも保険適用され、2015年2月より国内販売された。膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドラインでは、pNET に対するSTZ療法はグレードC1と位置づけられている。他ではアルキル化剤であるダカルバジン(同: ダカルバジン)の報告もあるが保険承認されていない。(2)NECに対する全身化学療法pNETのうち低分化型腫瘍(WHO分類2010でNEC)は病理学的に小細胞肺がんに類似しており、進行も非常に速いことから、小細胞肺がんに準じた治療が行われている。肝胆道・膵由来のNECに対するエトポシド/CDDP併用療法の結果をretrospectiveに解析した報告では、奏効率14%、PFS中央値 1.8ヵ月、OS中央値が5.8ヵ月であった。わが国で実施された小細胞肺がんに対する第III相試験においてイリノテカン/CDDP併用療法がエトポシド/CDDP併用療法より効果を示したことを受けて、肺外のNECに対しても期待されている。現在、膵・消化管NECに対し、エトポシド/CDDP併用療法 vs. イリノテカン/CDDP併用療法の国内比較第III相試験が行われている。3)ソマトスタチンアナログ(SA)SAは広範な神経内分泌細胞でのペプチドホルモンの合成・分泌を阻害する作用を有している。オクトレオチド(同:サンドスタチン)を含むSAが持つ機能性NETに対する効果について、症候に対するresponseが平均73%(50~100%)といわれている。2009年に中腸由来の転移性高分化型NET(NET G1/G2相当)に対するオクトレオチドLARの抗腫瘍効果が示された(PROMID study)。pNETに対するSAの抗腫瘍効果に関しては、これまで十分なエビデンスは得られてこなかったが、2014年にランレオチド・オートゲル(同:ソマチュリン)のpNET・消化管NETに対する無増悪生存期間延長効果が報告された(CLARINET study)。それを受けてNCCNガイドラインでは、pNETに対するSAの位置づけが変わったが(図2)、わが国のガイドラインでは抗腫瘍効果を目的とした、NETに対するSAの明確な推奨はない。現在、わが国での承認を目的に、ランレオチド・オートゲルの国内第II相試験が進行中である。■ 肝転移に対する治療pNETの肝転移は疼痛や腫瘍浸潤による症状、もしくは内分泌症状が認められるまで気が付かれないことも多く、肝転移を伴った症例の80~90%は診断時すでに治癒切除が困難である。pNETの肝転移は血流が豊富であり、腫瘍への血流は90%以上肝動脈から供給されていることから、肝細胞がんと同様に動脈塞栓療法(transarterial embolization: TAE)や動脈塞栓化学療法(transarterial chemoembolization: TACE)がpNETの肝転移(とくに高腫瘍量)の局所治療として有用である。TAE後の生存率に関する報告はさまざまで5年生存率が0~71%(中央値50%)、生存期間中央値も20~80ヵ月と幅がある。腫瘍数が限られている症例では、ラジオ波焼灼術(RFA)が有用とする報告もある。わが国の診療ガイドラインでは、肝転移巣に対する局所療法はグレードC1と位置付けされている。4 今後の展望今までpNETに関しての診断・治療に関する明確な指針が、わが国にはなかったが、2013年にweb上でガイドラインが公開され、2015年には「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン」として発刊された。今後、わが国におけるpNET診療の向上が期待される。pNETに対する薬物療法の臨床試験としては、進行性のG1/G2 pNETを対象に新規SAであるSOM230(パシレオチド)/RAD001(エベロリムス)併用療法とRAD001単独療法を比較したランダム化第II相試験がGlobal治験として行われ、現在解析中である。テモゾロミド(同: テモダール)は、副作用が軽減されたダカルバジンの経口抗がん剤であり、国内では悪性神経膠腫に保険適用を得ている薬剤であるが、進行性NET患者に対する他薬剤との併用療法の臨床試験が行われており、サリドマイド(同: サレド)やカペシタビン(同: ゼローダ)やベバシズマブ(同: アバスチン)などの薬剤との併用療法が期待されている。最近の話題の1つとして、WHO分類でNECに分類される腫瘍の中に、高分化なものと低分化なものが含まれている可能性が指摘されている。高分化NECに対する分子標的薬治療の可能性も提案されているが、今後の検討が待たれる。診断ツールとして有用な、血中クロモグラニンAの測定や、SRSが1日も早くわが国でも保険承認されることを希望するとともに、海外で臨床試験として施行されているPRRT(peptide receptor radionuclide therapy)の国内導入も今後の希望である。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科、内分泌内科、内分泌外科、腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究情報日本神経内分泌腫瘍研究会(Japan NeuroEndocrine Tumor Society: JNETS)(医療従事者(専門医)向けのまとまった情報)独立行政法人 国立がん研究センター「がん情報サービス」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)NET Links(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)がん情報サイト(Cancer Information Japan)(患者向けの情報)がんを学ぶ(患者向け情報)(患者向けの情報)患者会情報NPOパンキャンジャパン(pNET患者と家族の会)1)日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS) 膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン作成委員会編.膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン; 2015.2)Ito T, et al. J Gastroenterol. 2010; 45:234-243.3)Yao JC, et al. N Eng J Med. 2012; 364:514-523.4)Raymond E, et al. N Eng J Med. 2011; 364:501-513.公開履歴初回2013年02月28日更新2015年09月18日

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血圧管理は脳出血の再発を抑制するか/JAMA

 脳出血(ICH)発症後の生存例では、適切な血圧管理により再発リスクが改善することが、米国・マサチューセッツ総合病院のAlessandro Biffi氏らの検討で明らかとなった。ICHは、主に細動脈硬化と脳アミロイド血管障害(CAA)によるものに分けられ、細動脈硬化関連ICHのほとんどが脳の深部構造で発症するのに対し、CAA関連ICHは皮質~皮質下領域(脳葉)にほぼ限定される。ICH生存例は再発リスクが高く、一般に再発ICHは初発ICHよりも重症であるため、2次予防戦略の改善が重要とされる。一方、非脳葉型ICHの再発の予防では血圧管理が重要とされるが至適な降圧に関するデータはほとんどなく、脳葉型ICHにおける降圧の役割はほとんど知られていないという。JAMA誌2015年9月1日号掲載の報告。1,145例で2次予防における血圧管理の意義を評価 研究グループは、ICH生存例において、適切な血圧管理による脳葉型および非脳葉型ICHの再発リスクの抑制効果を検討する縦断的コホート試験を実施した(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、1994年7月~2011年12月までにマサチューセッツ総合病院に入院し、CTで診断が確定された発症後24時間以内のICHで、90日以上生存した患者であった。外傷や血管奇形/動脈瘤破裂などによる出血は除外した。 血圧は、医療従事者または患者自身が3、6、9、12ヵ月、その後は6ヵ月ごとに測定し、収縮期(SBP)および拡張期血圧(DBP)を記録した。 各測定時点で、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)によるICHの2次予防の推奨血圧(非糖尿病者:SBP<140mmHg、DBP<90mmHg、糖尿病者:SBP<130mmHg、DBP<80mmHg)が達成されている場合は血圧管理が「適切」、達成されていない場合は「不十分」とした。また、米国合同委員会第7次報告(JNC7)の判定基準で高血圧のステージを判定した。 主要評価項目はICHの再発および脳内の再発部位(脳葉、非脳葉)とした。 1,145例が解析の対象となり、そのうち脳葉型ICHが505例(平均年齢73.4±11.4歳、男性51.6%)、非脳葉型ICHは640例(68.7±13.3歳、56%)であった。フォローアップは2013年12月まで行われ、期間中央値は36.8ヵ月(四分位範囲:16.2~55.4)であり、最短は9.8ヵ月だった。不十分な血圧管理でリスクが約4倍に、高血圧が重症化するほどリスク上昇 脳葉型ICH患者のうち102例がICHを再発し、非脳葉型ICH患者では44例が再発した。フォローアップ期間中の血圧測定で、血圧管理が1回以上「適切」と判定された患者は625例(54.6%)であり、すべての測定時点で「適切」であった患者は495例(43.2%)だった。 脳葉型ICH患者の再発率は、血圧管理適切例が1,000人年当たり49件であったのに対し、不十分例では84/1,000人年であった。また、非脳葉型ICH患者の再発率は、適切例が27/1,000人年、不十分例は52/1,000人年だった。 血圧管理を時間依存変数とするモデル解析では、不十分な血圧管理は、脳葉型ICH(ハザード比[HR]:3.53、95%信頼区間[CI]:1.65~7.54)および非脳葉型ICH(4.23、1.02~17.52)の双方で再発リスクを有意に増大させた。 正常血圧(SBP:90~119mmHg、DBP:60~79mmHg)と比較して、高血圧前症(HR:2.76、95%CI:1.32~5.82)、ステージ1高血圧(3.90、1.36~11.17)、ステージ2高血圧(5.21、2.74~9.91)のいずれにおいても、脳葉型ICHの再発リスクが有意に高く、重症度が上がるほどリスクが増加した。また、非脳葉型ICHの再発リスクは、高血圧前症(3.06:1.07~8.78)とステージ1高血圧(3.88、1.31~11.61)では有意に増加したが、ステージ2高血圧(6.23、0.90~42.97)では有意ではなかった。 SBPの上昇により、脳葉型ICH(10mmHg上昇ごとのHR:1.33、95%CI:1.02~1.76)および非脳葉型ICH(HR:1.54、95%CI:1.03~2.30)の双方の再発リスクが有意に増加した。 DBPの上昇では、脳葉型ICH(10mmHg上昇ごとのHR:1.36、95%CI:0.90~2.10)の再発リスクは増大しなかったが、非脳葉型ICH(HR:1.21、95%CI:1.01~1.47)の再発リスクは有意に増加した。 年間再発リスクは、脳葉型、非脳葉型ICHの双方とも、SBPが高くなるほど増大し、とくに140mmHgを超えると急激に増加する傾向が認められた。また、DBPについても同様の関連がみられ、90mmHgを超えると急激にリスクが上昇した。 著者は、「ICH生存例では、フォローアップ期間中の血圧管理が不十分であると、脳葉型および非脳葉型ICHの双方で再発リスクが有意に上昇した」とまとめ、「より厳格な血圧管理のリスクとベネフィットを検討する無作為化臨床試験を行う必要があることが示唆される」としている。

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多枝冠動脈疾患へのFFRガイド下PCI、5年後も転帰良好/Lancet

 多枝冠動脈疾患患者に対する血流予備量比(FFR)ガイド下の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の長期安全性が確認された。オランダ・Catharina Hospital EindhovenのLokien X van Nunen氏らが、無作為化試験FAMEの5年間の追跡調査の結果、報告した。著者は今回の結果を踏まえて「この手技を大半の患者の標準ケアとすべきであることが示唆された」と述べている。これまでに同試験のフォローアップ2年間の報告でアウトカムの改善が示されていた。Lancet誌オンライン版2015年8月28日号掲載の報告より。FAME試験の5年フォローアップデータをITT解析 FAME試験はベルギー、デンマーク、ドイツ、オランダ、スウェーデン、英国、米国の20施設で、18歳以上の多枝冠動脈疾患患者を、血管造影ガイド下PCIまたはFFRガイド下PCIを受ける群に無作為に割り付けて行われた。2006年1月2日~2007年9月26日に1,005例が無作為化を受けた。 無作為化の前に血管造影でPCIを要する狭窄部位の特定が行われ、血管造影ガイド下PCI群の患者にはすべての狭窄部位に血行再建術が行われ、FFRガイド下PCI群の患者はすべての狭窄部位のFFR測定が行われ、同値が0.80未満の場合にのみPCIが行われた。 割り付け治療についてマスキングされた人はいなかった。 主要エンドポイントは1年間の重大有害心イベントで、本報告では5年間のフォローアップデータが報告された。解析はintention to treatにて行われた。2~5年間のリスクは同等、施術血管およびステントは少数でアウトカム達成 5年後の重大有害心イベントの発生率は、血管造影ガイド群31%(154/496例)、FFRガイド群28%(143/509例)で有意な差はみられなかった(相対リスク:0.91、95%信頼区間[CI]:0.75~1.10、p=0.31)。 一方、患者当たり留置ステント数は、血管造影ガイド下群のほうが、FFRガイド群よりも有意に多かった(平均2.7[SD1.2] vs.1.9[1.3]、p<0.0001)。 著者は、「結果は、多枝疾患患者におけるFFRガイド下PCIの長期安全性を確認するものであった。FFRガイド下PCI戦略は、術後2年間の重大有害心イベントを有意に抑制し、2~5年間のリスクは両群で同等であることが示された。こうしたFFRガイド群の臨床的アウトカムは、施術対象血管数およびステント数も少なく達成されていた」とまとめ、「今回の結果は、FFRガイド下多枝PCIを大半の患者で標準ケアとすべきことを示すものである」と述べている。

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ステージII結腸がんへの補助化学療法、再発・生存・QOLへの影響は?

 米国インディアナ大学のCari Lewis氏らは、ステージII結腸がん患者において、診断から24ヵ月にわたり補助化学療法とQOL・再発・生存との関連を検討するコホート研究を行った。その結果、ステージII結腸がんで化学療法を受けた患者は、受けなかった患者に比べ、24ヵ月後のQOL・再発・全死因死亡が不良という傾向がみられた。著者らは「今後、追跡期間の延長とともに、化学療法の種類に焦点を当てた研究が必要である」としている。Supportive care in cancer誌オンライン版2015年9月9日号に掲載。 著者らは、2009~2011年にノースカロライナ州における453例の患者をリクルートし、診断時および診断後12ヵ月と24ヵ月の時点で、QOL、健康維持行動、治療に関して選択式の調査でインタビューした。死亡率のデータはNational Death Indexシステムより取得した。 主な結果は以下のとおり。・計265例が化学療法を受けた。・化学療法の実施は、Functional Assessment of Cancer Treatment(FACT)-Generalの総スコア(p<0.01)、およびFACT-大腸がん用(p<0.01)、身体面(p<0.01)、心理面(p=0.02)、機能面(p<0.01)のスコアと逆相関を示した。・化学療法の実施と精神的健康との逆相関の関係は、白人では維持された(交互作用のp=0.049)がアフリカ系アメリカ人では認められなかった。・化学療法を受けた患者は、再発(OR 2.74、95%CI:1.18~6.35)と全死因死亡(OR 1.95、95%CI:1.05~3.62)のオッズが有意に高いことが示された。

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肥満症治療におけるGLP-1受容体作動薬(リラグルチド)の可能性(解説:小川 大輔 氏)-412

 肥満症は糖尿病のみならず、高血圧症、脂質異常症や睡眠時無呼吸症候群、さらに心血管イベントを引き起こすことが知られている。これらの合併症はQOLの低下や死亡率の増加に繋がるため、肥満症の治療が臨床上重要であることはよく認識されているが、その一方で、肥満の治療が実際には困難であることも経験するところである。最近、欧米では数種類の抗肥満薬(Belviq、Qsymiaなど)が上市されているが、これらの薬剤はわが国では承認されていない。 今回、JAMA誌に掲載された論文は、肥満(BMI 27以上)の2型糖尿病患者を対象とし、GLP-1受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)3.0mgあるいは1.8mgを1日1回皮下注射し、プラセボと比較して有効性および安全性を検討した研究である。56週間の対プラセボ群の体重減少量は、リラグルチド3.0mg群が約4.3kg、リラグルチド1.8mg群が約3.0kgであり、優位な体重減少効果が認められた。また、5%または10%超の減量達成者の割合もリラグルチド3.0mg群およびリラグルチド1.8mg群とも優位に多かったことが示された。 ただ、この論文を解釈するうえで注意しなければならないのは、この試験ではリラグルチド3.0mgと1.8mgの2用量が投与されているが、わが国で承認されている投与量の0.9mgよりどちらも多いという点である。現時点において、日本人の肥満症患者を対象としたリラグルチドの治験が行われるかについては不明であるが、肥満症に対して効果的な治療薬がない現状を考えると、個人的にはぜひ治験を行ってほしいと考える。【参考文献】Bakris GL, et al. JAMA. 2015;314:884-894.Sweetwyne MT, et al. Diabetes. 2015 Aug 20. [Epub ahead of print]You YH, et al. J Am Soc Nephrol. 2015 Jul 22.[Epub ahead of print]Rhee EP. J Am Soc Nephrol. 2015 Jul 22.[Epub ahead of print] Michel MC, et al. Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 2015;388:801-816.Matthaei S, et al. Diabetes Care. 2015 Aug 31.[Epub ahead of print]

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社会生活の「生きにくさ」につながる大人のADHD

 「仕事や作業を順序立てて行うことが苦手」、「落ち着かない。タバコやコピーなどで頻回に離席する」、「思ったらすぐに口に出したり行動に移したりしてしまう」―。程度の差こそあれ、思い当たる人は案外多いのではないだろうか。 近年、認識が広まりつつある大人のADHD(注意欠如・多動性障害)をテーマにしたメディアセミナー(ヤンセンファーマ株式会社主催)が8月26日、都内で開かれた。本稿では、同セミナーにおける東京慈恵会医科大学 精神医学講座准教授の小野 和哉氏による「大人のADHD」についての講演を紹介する。 ADHDは、脳内の情報処理ネットワークおいて何らかの課題がある障害と考えられており、具体的には(1)物事を実行する際の調整を行う系の障害(実行機能障害)、(2)後のことを考えて今のことを処理する系の障害(遅延報酬障害)、(3)時間的順序立てを考えて処理することに関する系の障害(時間処理障害)の3つが推定されてきた。しかし最近の研究では、症状が似ていても、これらのいずれにも当てはめられないケースがあり、症状の原因となる脳機能の障害は、完全には解明されていない。 ADHDは長らく小児期の発達障害の1つと考えられてきたが、その一部が持続した障害として残り、成人期のADHDに至ることが、最近になってわかってきた。冒頭の内容に思い当たる人であっても、自分自身で制御できるならば、ある程度問題なく社会生活を送ることができる。ところが、自分ではどうしようもなく、社会生活にうまく適応できない「生きにくさ」を感じるという人もいるという。 また、小児期には気付かず、学校や職場に出て初めてADHDであると気付くケースも少なくない。これは、小児期よりも成人期のほうが、社会生活の中で関わる人や情報が広範に及ぶため、処理すべきタスクが他人と異なったり、さまざまな考えの人たちと協調したりしていかなければならない場面も多く、障害に特有の不注意や多動性、衝動性が現れる機会が多くなることが理由として挙げられる。 もう1つの特徴は、成人期の場合、障害そのものより障害に起因する特有の行動の結果、不安や抑うつ、不眠などの症状が伴う点だ。具体的には、頻回のケアレスミスによる雇用機会の喪失や、対人コミュニケーションの難しさによる離婚などを経験し、前述のような主訴で受診するケースが多いという。 ADHDをめぐっては、現在のところ適切な診断の指標となるバイオマーカーはなく、12歳以前に遡ってADHDの症状がなかったかどうかについて問診を行うほか、他の疾患との鑑別にはスクリーニングツール「成人期のADHDの自己記入式症状チェックリスト(ASRS-v1.1)」を用いる。また、診断補助ツールとしてはCAADID(Conners’ Adult ADHD Diagnostic Interview For DSM-IV)などを用いる。 最後に、小野氏は、「こうした異なる主訴による受診がADHDの診断につながる大事な機会となる。大人のADHDの診断と治療は、自分の本当の力を発揮できず、自信をなくしている多くの人に、希望と新しい生き方をもたらす可能性がある」と指摘し、適切な対処が重要であると強調した。

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狭心症「安定期」でのトロポニンの役割(解説:香坂 俊 氏)-411

【トロポニンのAMIでの役割】トロポニンは急性心筋梗塞(AMI)の考え方を根底から変えた。AMIの診断にあたって、以前は 症状 と 心電図 と バイオマーカー がきっちりと三権分立しており 三つのうち二つが当てはまればAMIと診断する とされていた(WHO基準)。ただ、トロポニンが出てきてからは、その高い感度と特異度のため、陽性ならAMI、陰性なら違う という、誠に味気のない基準に変わってしまった(別に悪いことではないのだが)。さて、虚血性心疾患の領域で、AMIと双璧を成すのが安定狭心症であるが、この2つの疾患には以下のような決定的な違いがある:【急性心筋梗塞】 薄いプラークが破裂して血栓を形成する(青丸部)。         その血栓が100%かそれに近い血流の阻害をもたらすため、         その先の心筋が壊死し、トロポニンが血流に漏れる。【安定狭心症】  分厚い動脈硬化による物理的な冠動脈の狭窄を来す(緑丸部)。         ただ、狭窄の度合いは50~75%程度のことが多く、         安静時の血流は保たれる。         つまり、基本的に負荷をかけないと症状や心電図変化は出現せず、         トロポニンが漏れることも「ない」。この違いを踏まえて、安定狭心症は、最近では安定型虚血性心疾患(stable ischemic heart disease;SIHD)と呼ばれることが多くなっている。このSIHDでは心筋の壊死や障害が平時(安静時)に起こることはないとされていたので、そのマネジメントにトロポニンを役立てようという発想はこれまであまりなかった。【トロポニンのSIHDでの役割】ここにトロポニン計測技術の進歩が一石を投じた。今回の研究で対象となったのはBARI-2Dという有名な臨床試験に登録された2,285例のSIHD症例の血液サンプルである。ちなみに、BARI-2Dは糖尿病合併SIHD患者(二枝・三枝病変のみ)に対して、PCIやCABG等の再灌流療法を用いるか、あるいはそのまま薬物療法を続けるかでランダム化を行った試験である(結果はPrimary Endpointで差はなかった)。論文によるとそのサンプルが試験終了後も−80°Cで保存されており、今回 Roche社の協力により高感度トロポニンの測定を行うことが可能となったとのことである。この高感度トロポニンは従来のアッセイと異なり、3ng/L までの計測が可能であり、健常人の99パーセンタイル値は14ng/Lとされている(健常人の99%がこの数値以下)。さて、この試験の結果であるが、実に39.3%のSIHD症例で上昇(14ng/L値以上)を呈したとのことである。これは驚くべき結果で、SIHDの安定期でも微量のトロポニンの漏れがかなりの頻度でみられた ということになる。その機序はいまのところ明確ではないが(この論文でもほとんど論じられていない)、SIHDへの考え方を少々修正する必要があるのかもしれない。たとえば、この39%の症例では微小血管レベルでは高度な狭窄が起きているのかもしれないし、その結果として微小な心筋障害が持続的に起こっていることも考えられる。【トロポニン陽性例でカテかバイパス?】結果の説明に話を戻す。この後でBARI-2DのInvestigatorたちは、予後との関連をみており、トロポニン上昇例は(そうでない例と比較し)イベントの発生が2倍以上多かった(5年間で27.1%[上昇していない例は12.9%])。これが糖尿病や冠動脈病変の重症度と独立した現象であることも統計的に検証されている。そして最後に、この研究で最も注目を集めた点であるが、トロポニン上昇例でPCIやCABGを行えば予後を改善できるのか?という疑問に対する解析もなされている(BARI-2DがPCI/CABG 対 薬物療法のランダム化試験であったことを思い出してほしい)。残念ながらトロポニン上昇例に限ったとしてもPCIやCABGの明確な予後改善効果は認められず(ハザード比:0.96、95%CI:0.74~1.25)、こうしたハイリスク群であったとしても「狭いところを広げれば解決する」ということでは なさそう である。【まとめ】この研究は 従来からのSIHDの概念を広げる ものである。SIHDの中で少なくない割合で微量のトロポニンの上昇がみられ、それはこれまで危険因子とされていた糖尿病や冠動脈疾患の重症度そのものと関係ないところで起こっている。そして、このトロポニン上昇例の長期予後は悪く、何か良くないことが起こっているのは間違いないのだが、残念ながらPCIやCABGといった従来からの循環器内科領域の最大の武器がこれを改善するわけではない。今後その病態生理を解明して治療につなげていく必要があるだろう。なお、このBARI-2D試験でのトロポニンの上昇の話は、従来からの測定法では検出できないレベルの話であり、高感度のアッセイだから定量が可能であったということは再度強調させていただきたい。

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CA11-19、大腸がんマーカーに使用可能か

 大腸がんの診断補助に、CA11‐19が腫瘍マーカーとして有用である可能性を、米国テネシー州にあるGastrointestinal AssociatesのBergein F. Overholt氏らが明らかにした。Gastrointestinal endoscopy誌オンライン版2015年8月26日号の掲載報告。 大腸がんは、依然として米国におけるがん死亡原因の2位である。大腸がんを診断する際の補助として腫瘍関連抗原を使用した血液検査があるが、臨床的に有用であるためには、より高い感度と特異性が求められる。本研究は、大腸がん検出における血清学的腫瘍抗原としてのCA11-19の診断精度を、ELISAにより評価した。 血液検体は、治験審査委員会の承認を得た試験において、大腸内視鏡検査を受けた被験者522例から得られた。検体は盲検化され、ELISAを用いてCA11-19レベルが測定された。結果は、被験者の最終診断に基づいて、正常、過形成性ポリープ、良性消化器疾患、腺腫性ポリープ、大腸がんのカテゴリーごとに集計された。 主な結果は以下のとおり。・カットオフ値を通常用いられる6.4units/mLに設定した場合、CA11-19レベルは大腸がん患者131例中128例で上昇がみられ、感度は98%(95%信頼区間[CI]:93.1~99.5%)であった。・CA11-19レベルは、診断結果が正常であった被験者の87%(90/103)、良性消化器疾患の83%(185/223例)において正常であり、両者を合わせると、特異度は84%(95%CI:80.0~87.9%)であった。 CA11-19は、大腸がん診断において感度98%、特異度84%の血清学的腫瘍マーカーである。この高い感度は、大腸がん44例中43例(98%)を検出することを意味している。50歳以上の場合、陽性的中率3.6%、陰性的中率99.98%であった。著者らは、大腸がんの診断補助にCA11-19が有用かどうかをより明確にするために、さらなる前向き研究が必要であるとしている。

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NSCLCにおけるAZD9291の新たなエビデンス―世界肺がん学会

 アストラゼネカ(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、9月8日、2015年世界肺がん学会議において、上皮成長因子受容体変異陽性(EGFRm)進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療ならびに過去に治療歴を有する患者を対象とした、AZD9291の最新データを発表した。本データは、AURA第I相1次治療群と2本のAURA第II相試験によって得られたもの。  1次治療薬としてAZD9291を1日1回投与された60例の患者のうち、72% (95%CI : 58%~82%)は12ヵ月の時点においても増悪が認められなかった。全奏効率(ORR)は75%(95%CI:62%~85%)であった。また、現時点での最長奏効期間(DoR)は18ヵ月だが、さらに延長していることが示された。 さらに、治療歴を有するEGFRm T790M変異陽性患者を対象とした2つのAURA第II相試験(AURA延長試験とAURA2試験)のデータも発表された。これらの試験データは途中経過であるものの、過去に報告されたAZD9291の有効性および忍容性と一致するプロファイルが示されている。AURA延長試験(201例)においてORRは61%(95% CI: 54%~68%)、DoR中央値およびPFS中央値は算出不能(NC)。210例を対象としたAURA2試験においても一致した結果が得られ、ORRは71%(95% CI: 64%~77%)、DoR中央値は7.8ヵ月(95% CI: 7.1カ月~NC)、PFS中央値は8.6ヵ月(95% CI: 8.3カ月~9.7カ月) であった。  これら試験におけるAZD9291の安全性プロファイルは、既に報告されたプロファイルと合致していた。AURA1次治療を受けたすべての用量群における、主な有害事象 (AE) は発疹 (全グレード:77%、グレード3以上:2%) および下痢(全グレード:73%、グレード3以上:3%)であった。これらのAEは2つのAURA第II相試験においても同様に報告された (AURA延長試験:発疹[全グレード:40%、グレード3以上:1%]、下痢[全グレード:45%、グレード3以上:1%] AURA2試験:発疹[全グレード:42%、グレード3以上:1%]、下痢[全グレード:39%、グレード3以上:1%]) 。 AZD9291は、選択性の高い不可逆的阻害剤で、野生型EGFRには作用せず、EGFR活性化変異 と耐性遺伝子変異であるT790Mの双方を阻害する。アストラゼネカのプレスリリースはこちら。

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セロトニン症候群を起こしやすい薬剤は

 フランス・トゥールーズ大学のDelphine Abadie氏らは、同国の市販後調査報告データベースに報告登録された症例よりセロトニン症候群の特徴を解析した。その結果、抗うつ薬とトラマドールによる発現頻度が高いだけでなく、薬物相互作用(DDI、薬力学的および薬物動態学的の両方)の重要性、さらに標準用量でのセロトニン作動薬単剤でさえもセロトニン症候群リスクが有意であることが示された。本検討は、セロトニン症候群に関する大規模な市販後調査データベースを基にした、英語で発表された初の検討となる。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2015年8月号の掲載報告。 研究グループは、1985年1月1日~2013年5月27日のフランス市販後調査データベースで登録されたセロトニン症候群を後ろ向きに分析した。分析には、Sternbach、RadomskiまたはHunter SSの診断基準を満たした臨床的症状を呈した症例のみを組み込んだ。 主な結果は以下のとおり。・分析症例の大半(125例、84%)で、セロトニン作動薬の最近の変化(導入、用量増大または過剰摂取)が関与していた。・最も発現頻度が高いセロトニン作動薬は、抗うつ薬であった。その大半がセロトニン再取り込み薬阻害薬(SRI、42.1%)で、そのほかのセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(9.1%、主にvenlafaxine)、三環系抗うつ薬(8.6%、主にクロミプラミン)、いくつかのモノアミン酸化酵素阻害薬(6.2%、主にmoclobemide)の関与はわずかであった。・非向精神薬の投与、概してオピオイド(14.8%、主にトラマドール)の関与も認められた。・大部分の症例(59.2%)は、薬力学的DDIから生じており、多くの場合SRI+オピオイド(大部分がパロキセチン+トラマドール)によるものであった。・一方で、セロトニン作動薬単剤でのセロトニン症候群の発現も顕著であった(40.8%)。その大半が標準用量のSRI(主にfluoxetine)またはvenlafaxineでの発現であった。・症例の5分の1(20.8%)で、重大な薬物動態学的DDIの関与が確認された。関連医療ニュース セロトニン症候群の発現メカニズムが判明 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学 SSRI依存による悪影響を検証  担当者へのご意見箱はこちら

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ニコチンガムの使い方

ニコチンガムの使い方ニコチンガムなんて効果がないと思い込んでいませんか?正しく使えば、禁煙成功率はニコチンパッチと比べても遜色がありません。 ニコチンガムは、普通のガムのようにかんではいけません。口の中に貼る「ニコチンパッチ」と考えてください。 口の中で何回かつぶして、柔らかくなったら頬の内側に貼り付けるイメージで口の中に残し、口の粘膜からニコチンを吸収させます。 添付文書に詳しい説明が書かれています。よく読んでから使い始めましょう。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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てんかんの妊婦、流産や帝王切開のリスク増大/Lancet

 てんかんを持つ妊婦は、てんかんのない妊婦に比べ、自然流産リスクは約1.5倍、分娩誘発は約1.7倍、帝王切開は約1.4倍に増大するなど、妊娠合併症や新生児合併症リスクが増加することが明らかにされた。アルゼンチン・Centro Rosarino de Estudios PerinatalesのLuz Viale氏らが、てんかんを持つ妊婦を対象に行った38件の観察試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年8月25日号掲載の報告。1990年1月~2015年1月発表の観察試験についてレビュー 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane、AMED、CINAHLのデータベースを基に、1990年1月~2015年1月に発表された、てんかんを持つ妊婦を対象に行った観察試験で、妊娠合併症や新生児合併症リスクについて評価を行ったものについて、システマティックレビューとメタ解析を行った。論文言語、試験地域は問わず、また時期(出産前、分娩時、出産後)を問わず出産に伴う合併症リスクを評価。Newcastle-Ottawaスケールを用いて、試験の方法論的な質、コホートの選択・比較でのリスクバイアス、アウトカムなどを評価した。 先天性奇形を除き、妊娠合併症や致死的合併症のリスクについて、てんかんのない妊婦と比較した。また抗てんかん薬を服用するてんかん女性についてサブグループ解析も行った。ランダム効果メタ解析法を用いてオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。分娩前出血は約1.5倍、出産後出血は1.3倍、妊娠高血圧症は1.4倍に 7,050件の試験のうち、38試験(被験者妊婦合計283万7,325例)について分析を行った。 結果、てんかんを持つ妊婦は、てんかんのない妊婦に比べ、自然流産リスクは1.54倍だった(OR:1.54、95%CI:1.02~2.32、I2=67%)。同様に、分娩前出血(同:1.49、1.01~2.20、I2=37%)、出産後出血(同:1.29、1.13~1.49、I2=41%)、妊娠高血圧症(同:1.37、1.21~1.55、I2=23%)、分娩誘発(同:1.67、1.31~2.11、I2=64%)、帝王切開(同:1.40、1.23~1.58、I2=66%)、37週未満の早産(同:1.16、1.01~1.34、I2=64%)、胎児成長遅滞(同:1.26、1.20~1.33、I2=1%)のいずれも、てんかんを持つ妊婦は、てんかんのない妊婦に比べ、リスクが高かった。 なお、34週未満の早産や妊娠糖尿病、胎児死亡・死産などのリスクは、てんかんを持つ妊婦で増加しなかった。 また、てんかんを持つ妊婦における抗てんかん薬曝露と母体・胎児のアウトカムの関連については11試験(93万4,443例)で検討されていた。曝露群のほうが分娩後出血、分娩誘発のオッズ比は有意に高かったが、帝王切開、分娩前出血、自然流産、37週未満の早産、またあらゆる高血圧症との関連は認められなかった。また、曝露の有無での胎児死亡・死産との有意な関連は認められなかった。 著者は、「妊婦において、てんかん、抗てんかん薬曝露と有害転帰との間には、わずかだが重大な関連がある。てんかんを持つ女性へのカウンセリング時には、このリスクの増大を、頭の隅に置いて向き合わなくてはならない」と述べている。

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小児の院内心停止、アドレナリン投与早いほど転帰良好/JAMA

 小児院内心停止に対するエピネフリン(アドレナリン)の早期投与は、生存退院率や自己心拍再開率など、アウトカムを有意に改善することが示された。米国のベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのLars W. Andersen氏らが、約1,600例の小児患者について行った試験の結果、明らかにした。これまでの検討では、成人患者について、院内心停止患者に対するエピネフリン投与の遅延が生存率低下に関与していることは知られていたが、小児患者については不明であった。JAMA誌2015年8月25日号掲載の報告より。パルス消失からエピネフリン初回投与までの時間とアウトカムを分析 研究グループは、米国の「Get With the Guidelines–Resuscitation」レジストリを基に、院内心停止の18歳未満小児患者で、初期ショック非適応で、1用量以上のエピネフリン投与を受けた患者について、パルス消失が認められてからエピネフリン初回投与までの時間とアウトカムについて分析を行った。 主要アウトカムは、生存退院率で、副次アウトカムは、自己心拍再開、24時間時点の生存、神経学的アウトカムなどだった。神経学的アウトカムはPediatric Cerebral Performance Category尺度で評価し、スコア1~2を転帰良好と定義した。 最終解析に組み込んだ被験者数は1,558例で、年齢(月齢)の中央値は9ヵ月(四分位範囲[IQR]:生後13日~5歳)だった。24時間生存率や神経症状アウトカムも改善 全被験者のうち、生存退院したのは487例(31.3%)だった。エピネフリン初回投与までの経過時間中央値は1分(IQR:0~4分)で、平均値は2.6分(標準偏差:3.4)だった。 多変量解析の結果、エピネフリン初回投与までの経過時間が長いほど、生存退院率は低かった(同経過時間が毎1分遅れることによる生存退院に関する補正後リスク比:0.95、95%信頼区間:0.93~0.98)。 また、エピネフリン初回投与までの経過時間が長くなるにつれて、自己心拍再開率(同補正後リスク比:0.97、95%CI:0.96~0.99)、24時間生存率(同:0.97、0.95~0.99)、神経症状の良好なアウトカム達成率(同:0.95、0.91~0.99)のいずれも減少した。 エピネフリン初回投与までの経過時間が5分超のグループの生存退院率は21.0%(233例中49例)に対し、5分以下のグループでは33.1%(1,325例中438例)と、有意に低率だった(補正後リスク比:0.75、95%CI:0.60~0.93、p=0.01)。

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高齢者の認知機能に運動は影響しない?/JAMA

 ほとんど体を動かさない高齢者(sedentary older adults)を対象に、24ヵ月にわたる適度な運動プログラム介入 vs.健康教育プログラム介入を比較した結果、総合/特定領域認知機能の改善について有意な差はみられなかったことが示された。Kaycee M. Sink氏らが1,635例を対象に行った無作為化試験LIFEの結果、報告した。JAMA誌2015年8月25日号掲載の報告より。70~89歳高齢者1,635例を対象に24ヵ月間の介入効果を比較 LIFE(Lifestyle Interventions and Independence for Elders)試験は、2010年2月~2011年12月に米国内8施設で、1,635例を登録して行われた。被験者は、70~89歳の椅子に座っていることの多い生活を送る高齢者で、運動機能障害のリスクを有している(Short Physical Performance Batteryスコア[12ポイント]が9ポイント以下)が、400m歩行(15分以内)は可能であった。 被験者は、体系化した適度な身体活動(ウオーキング、筋肉トレーニング、柔軟体操など)プログラムの介入、もしくは健康教育(研修会と上肢ストレッチ)プログラムの介入を受けた。 LIFE試験では、認知機能のアウトカムは副次アウトカムとして規定され、Wechsler Adult Intelligence Scale(スコア範囲:0~133、高スコアほど機能良好を示す)のDigit Symbol Coding(DSC)タスクサブセット、および修正Hopkins Verbal Learning Test(HVLT-R、12単語リストの想起タスク)による評価が、被験者1,476例(90.3%)で行われた。また、3次アウトカムとして、24ヵ月時点の総合認知機能および実行認知機能、軽度認知障害(MCI)または認知症の発生などが含まれた。認知機能の改善、両群で差はみられず 24ヵ月時点で、DSCタスク/HVLT-Rスコア(施設、性別、ベースライン値で補正)について、群間差はみられなかった。 平均DSCタスクスコアは、運動介入群46.26ポイント vs.健康教育介入群46.28ポイント(平均差:-0.01ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.80~0.77ポイント、p=0.97)であった。 平均HVLT-R遅延想起スコア(単語数)は、運動介入群7.22単語 vs.健康教育介入群7.25単語(同:-0.03単語、-0.29~0.24単語、p=0.84)であった。 その他のあらゆる認知機能評価および複合評価についても、差はみられなかった。 運動介入群で80歳以上の被験者(307例)、ベースラインの活動体力がより脆弱であった被験者(328例)は、健康教育介入群と比較した実行認知機能複合スコアの変化が有意に良好であった(両群間比較の相互作用p=0.01)。 MCIまたは認知症が認められたのは、運動介入群98例(13.2%)、健康教育介入群91例(12.1%)であった(オッズ比:1.08、95%CI:0.80~1.46)。

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世界の疾病負担は改善しているか:GBD 2013の最新知見/Lancet

 2012年、「世界の疾病負担(Global Burden of Disease:GBD)」の最初の調査(1993年)以降、初めての全面改訂の結果が公表された。この取り組みはGBD 2010研究と呼ばれ、世界187ヵ国の死亡および疾病の原因の情報に基づき、1990年と2010年の国別の障害調整生命年(disability-adjusted life-years:DALY)および健康調整平均余命(health-adjusted life expectancy:HALE)を報告している。その後、GBDは必要に応じて毎年更新することとなり、GBD 2013研究については、すでに国別の損失生存年数(years of life lost; YLL)や障害生存年数(years lived with disability; YLD)などのデータが公表されており、今回は最新の解析結果が報告された。Lancet誌オンライン版2015年8月27日号掲載の報告。1990~2013年の188ヵ国、306の疾病原因のDALY、HALEを評価 研究グループは、世界188ヵ国における1990~2013年の306種の傷病に関するDALYおよびHALEの評価を行った(Bill & Melinda Gates Foundationの助成による)。 既報のGBD 2013研究の年齢特異的死亡率、YLL、YLDのデータを用いて、1990、1995、2000、2005、2013年のDALYおよびHALEを算出した。 HALEの計算にはSullivan法を用い、国別、年齢別、性別、年度別の年齢特異的死亡率および1人当たりのYLDの不確定性を示す95%不確定性区間(uncertainty interval:UI)を算出した。 306の疾病原因に関する国別のDALYは、YLLとYLDの総和として推算し、YLL率とYLD率の不確定性を表す95%IUを算出した。 「疫学転換(epidemiological transition)」のパターンは、個人収入、15歳以降の学校教育の平均年数、総出生率、平均人口年齢から成る「社会的人口統計状況(sociodemographic status)」の複合指標で定量化した。 すべての国で疾病原因別のDALY率の階層的回帰分析を行い、社会的人口統計状況因子、国、年度に関する分散分析を行った。健康が増進しても保健システムへの需要は低下しない 世界的な出生時平均余命は、1990年の65.3年(95%UI:65.0~65.6)から2013年には71.5年(71.0~71.9)へと6.2年(5.6~6.6)延長した。 この間に、出生時HALEは56.9年(54.5~59.1)から62.3年(59.7~64.8)へと5.4年(4.9~5.8)上昇しており、総DALYは3.6%(0.3~7.4)減少し、10万人当たりの年齢標準化DALY率は26.7%(24.6~29.1)低下した。 1990年から2013年までに、感染性疾患、母体疾患、新生児疾患、栄養疾患の世界的なDALY、粗DALY率、年齢標準化DALY率はいずれも低下したのに対し、非感染性疾患の世界的なDALYは上昇しており、粗DALY率はほぼ一定で、年齢標準化DALY率は減少していた。 2005年から2013年の間に、心血管疾患や新生物などの特定の非感染性疾患のほか、デング熱、食物媒介吸虫類、リーシュマニア症のDALYが上昇したが、他のほぼすべての疾病原因のDALYは低下していた。2013年までのDALY上昇の5大原因は、虚血性心疾患、下気道感染症、脳血管疾患、腰頸部痛、道路交通傷害であった。 下痢/下気道感染症/他の一般的な感染性疾患、母体疾患、新生児疾患、栄養疾患、その他の感染性疾患/母体疾患/新生児疾患/栄養疾患、筋骨格系障害、その他の非感染性疾患の各国間の差や経時的な変動の50%以上は、社会的人口統計状況によって説明が可能であった。 一方、社会的人口統計状況は、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、肝硬変、糖尿病/泌尿生殖器疾患/血液疾患/内分泌疾患、不慮の外傷のDALY率の変動については10%も説明できなかった。 また、予測されたとおり、社会的人口統計状況の上昇により、負担がYLLからYLDへと転換しており、筋骨格系障害、神経障害、精神/物質使用障害によるYLLの減少およびYLDの上昇が、これを促進したと考えられる。 平均余命の上昇はHALEの上昇よりも大きく、DALYの主原因には各国間に大きなばらつきが認められた。 著者は、「世界の疾病負担は改善している」と結論し、「人口増加と高齢化がDALYを押し上げているが、粗DALY率には相対的に変化はなく、これは健康の増進は保健システムへの需要の低下を意味しないことを示している。社会的人口統計状況が疾病負担の変動をもたらすとする疫学転換の概念は有用だが、疾病負担には、社会的人口統計状況とは関係のない大きな変動が存在する」とまとめている。 また、「これは、保健政策の立案や関係者の行動に向けて適切な情報を提供するには、国別のDALYおよびHALEの詳細な評価が必要であることをいっそう強調するもの」と指摘している。

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習慣飲酒が血糖状態を改善-日本の中年女性

 日本の中年女性において、アルコール摂取量と血糖状態は肥満症とは無関係に逆相関を示すことが、兵庫医科大学の下村 智子氏らによる研究で明らかになった。日本の中年女性は、飲酒することで心血管疾患の既知のリスク低下につながる可能性がある。Canadian journal of diabetes care誌オンライン版2015年8月12日号の報告。 最近の研究で、習慣飲酒は糖尿病のリスクを軽減することが示されている。しかし、アルコールと糖尿病の関係が肥満症の影響を受けるかどうかについては、いまだ明らかにされていない。本研究では、女性のアルコール摂取が血糖状態に影響を及ぼすのかについて検討した。 対象は、健康診断を受けた35~60歳の日本人女性1万8,352人。対象を、飲酒しない群、ときどき飲む群、毎日軽く飲む群(エタノール 22g以下/日)、毎日大量に飲む群(エタノール22g以上/日)の4群に分けて検討した。アルコール消費量とHbA1c値の関連は、年齢、喫煙歴、運動習慣で調整後、共分散およびロジスティック回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・HbA1c値は、飲酒しない群と比べて、ときどき飲む群、毎日軽く飲む群、毎日大量に飲む群で有意に低かった。・これらの逆相関は、肥満状態(BMI、ウエスト身長比)によって変化しなかった。・飲酒しない群に対する高血糖のオッズ比は、ときどき飲む群で0.82 [95%CI:0.73~0.92]と1.00の基準値よりも有意に低かった(p<0.01)。毎日軽く飲む群のオッズ比は0.61 [95%CI:0.44~0.85]、毎日大量に飲む群は0.66 [95%CI:0.50~0.88]であった。・以上のことから、35~60歳の日本人女性において、アルコール摂取は肥満状態と独立しており、アルコール摂取量と血糖状態は逆相関を示すことが示唆された。

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