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発症時年齢は1型糖尿病患者の心血管疾患リスクに関連する(解説:住谷哲氏)-917

 1型糖尿病患者の動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクが2型糖尿病と同様に増加することは、本論文の著者らによってスウェーデンの1型糖尿病レジストリを用いて詳細に検討されて報告された1)。今回、著者らは1型糖尿病の発症時年齢とASCVDとの関連を同じレジストリを用いて解析した。その結果、発症時の年齢は糖尿病罹病期間を調整した後も、ASCVDリスクと有意に関連することが明らかにされた。 1型糖尿病の主病態はインスリン分泌不全であり、インスリン抵抗性の寄与は2型糖尿病とは異なりほとんどない。したがって1型糖尿病患者では、高血糖そのものによりASCVDのリスクが増大していると考えられる。本論文では、とくに急性心筋梗塞のリスクが1型糖尿病患者において約30倍に増加しているのが注目される。これは2型糖尿病患者における厳格な血糖管理の影響を検討したメタ分析において、非致死性心筋梗塞が強化治療により有意に減少したことと一致しており、冠動脈疾患の発症には高血糖が強く関連することを示唆している2)。一方、脳卒中の増加は約6倍であり、加齢の影響を差し引いて考えることが当然必要であるが、同じASCVDである冠動脈疾患と脳卒中に対する高血糖の影響は大きく異なっていることが示唆される。 若年1型糖尿病患者のASCVDの発症を主要評価項目として、スタチンおよびRAS系阻害薬の有効性を検討したランダム化比較試験は存在しない。ASCVDの代用エンドポイントである内頚動脈内膜中膜複合体厚を副次評価項目として、若年1型糖尿病患者に対するACE阻害薬およびスタチンの効果を検討したランダム化比較試験としてAdDIT(Adolescent Type 1 Diabetes Cardio-Renal Intervention Trial)が昨年報告されたが3)、両薬剤ともにプラセボ群と差はなかった。しかしASCVDの発症メカニズムは1型糖尿病と2型糖尿病とに共通すると考えられることから、2型糖尿病治療における包括的心血管リスク管理のストラテジーはそのまま1型糖尿病にも適用できると思われる。1型糖尿病患者の治療は2型糖尿病患者以上に血糖管理にのみ注目してしまうことが多い。とくに若年発症の1型糖尿病患者の治療の際にはASCVDの抑制に留意した治療を心掛けることが必要である。

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風疹にいま一度気を付けろっ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。リマインド! 成人風疹の臨床像前回は風疹の流行状況、そしてワクチン接種の重要性についてお話しいたしました。2回目となる今回は「成人風疹の臨床像」についてご紹介したいと思います。「おいおい、おまえ風疹の臨床像って、そんなに語れるほど診たことあるんかい、このダボォ!」と思われるかもしれませんが、こう見えて私、前回2013年の流行の際に風疹の症例けっこう診たんですよ。その証拠にほら、NEJMにclinical picture1)が載ってるでしょ? あ、すいません、そうです、自慢したかっただけです、はい。しかし、実際に当時かなりの患者さんを診たうえで読者の皆さまにご提言したいことは「成人風疹は教科書的な臨床像とは異なる」ということですッ! これ重要ですのでメモしておいてください!!教科書的な記載とは何かと言いますと、表のようなヤツです。風疹よりも麻疹のほうが高熱が出るとか、カタル症状が弱いとか、皮疹の癒合がないとか、色素沈着を残さないとか、そういったヤツです。画像を拡大するしかしッ! 確かに小児の臨床像はこうした違いがあるのかもしれませんが、成人ではこれらは必ずしも風疹の特徴とはいえませんッ! 高熱も出ますし、カタル症状も強く出ることがありますし、皮疹は癒合して色素沈着を残すこともありますッ!臨床経過についてはおおむね教科書的な記載と同様かと思います(ただし関節痛は成人で強く、関節炎を呈することもある)。図1は典型的な風疹の経過です。発熱、皮疹、上気道症状がみられます。画像を拡大する図2は典型的な風疹患者の皮疹で、いわゆる紅斑を呈します。しかし、図3のように癒合したり、紅丘疹となることもあります。図2 風疹の典型的な皮疹画像を拡大する画像を拡大する図3 成人風疹患者の皮疹。盛り上がりのある紅丘疹であり癒合している画像を拡大する画像を拡大するさらには、図4のように圧迫しても消退しない紫斑を呈することまであります。図4 紫斑を呈した成人風疹患者(風疹脳炎)画像を拡大するというわけで、成人風疹については皮疹の性状だけで麻疹と鑑別することは困難です。風疹では、眼球結膜充血と後頸部リンパ節腫脹がみられることが多いため、これが診断のカギとなります(図5)。図5 風疹患者の眼球結膜充血画像を拡大する画像を拡大する風疹が疑われた後の対応こうした臨床像から風疹が疑われたら、(麻疹の可能性も考慮して)できれば陰圧の個室に隔離したうえで空気感染対策を実施し、管轄の保健所に連絡をしましょう。風疹なのか麻疹なのか鑑別が困難な場合もあるかと思いますが、臨床像のみで厳密にこれらを区別する必要はないと考えます。保健所を介して都道府県の衛生研究所で検査してくれるということになれば、咽頭スワブなどの検体を採取してPCR検査を実施してもらいましょう。抗体検査のために血清も採取するのがよいと思います。保健所の検査の基準を満たさなかったものの、それでも風疹が疑われるという場合には、外注検査で風疹IgM抗体を測定することもできます。風疹と診断されれば、治療は対症療法となります。感染性がなくなるまで自宅療養していただきましょう。小児では学校保健法に「皮疹が消失するまで学校を休むこと」と定められていますが、成人についてもこれに準じて皮疹が消失するまでは会社は休んでもらいましょう。というわけで、2回にわたって現在流行中の風疹についてご紹介いたしました。次回ですが、毎回「次こそバベシアについて書きます」って書いていますが、そうなった試しがありませんので、あまり期待しないでください。※風疹の皮膚所見の掲載に当たっては、患者ご本人から許可を得ております1)Kutsuna S, et al. N Engl J Med. 2013;369:558.2)Banatvala JE, et al. Lancet. 2004;363:1127-1137.

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新たな薬剤、デバイスが続々登場する心不全治療(前編)【東大心不全】

急増する心不全。そのような中、新たな薬剤やデバイスが数多く開発されている。これら新しい手段が治療の局面をどう変えていくのか、東京大学循環器内科 金子 英弘氏に聞いた。後編はこちらから現在の心不全での標準的な治療を教えてください。心不全と一言で言っても治療はきわめて多様です。心不全に関しては今年(2018年)3月、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」が第82回日本循環器学会学術集会で公表されました。これに沿ってお話ししますと、現在、心不全の進展ステージは、リスク因子をもつが器質的心疾患がなく、心不全症候のない患者さんを「ステージA」、器質的心疾患を有するが、心不全症候のない患者さんを「ステージB」、器質的心疾患を有し、心不全症候を有する患者さんを既往も含め「ステージC」、有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物治療について治療ないしは治療が考慮されたにもかかわらず、重度の心不全状態が遷延する治療抵抗性心不全患者さんを「ステージD」と定義しています。各ステージに応じてエビデンスのある治療がありますが、ステージA、Bはあくまで心不全ではなく、リスクがあるという状態ですので、一番重要なことは高血圧や糖尿病(耐糖能異常)、脂質異常症(高コレステロール血症)の適切な管理、適正体重の維持、運動習慣、禁煙などによるリスクコントロールです。これに加えアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、左室収縮機能低下が認められるならばβ遮断薬の服用となります。最も進行したステージDの心不全患者さんに対する究極的な治療は心臓移植となりますが、わが国においては、深刻なドナー不足もあり、移植までの長期(平均約3年)の待機期間が大きな問題になっています。また、重症心不全の患者さんにとって補助人工心臓(Ventricular Assist Device; VAD)は大変有用な治療です。しかしながら、退院も可能となる植込型のVADは、わが国においては心臓移植登録が行われた患者さんのみが適応となります。海外で行われているような植込み型のVADのみで心臓移植は行わないというDestination Therapyは本邦では承認がまだ得られていません。そのような状況ですので、ステージDで心臓移植の適応とならないような患者さんには緩和医療も重要になります。また、再生医療もこれからの段階ですが、実現すれば大きなブレーク・スルーになると思います。その意味では、心不全症状が出現したステージCの段階での積極的治療が重要になってきます。この場合、左室駆出率が低下してきた患者さんではACE阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)をベースにβ遮断薬の併用、肺うっ血、浮腫などの体液貯留などがあるケースでは利尿薬、左室駆出率が35%未満の患者さんではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を加えることになります。一方、非薬物療法としてはQRS幅が広い場合は心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy:CRT)、左室駆出率の著しい低下、心室頻拍・細動(VT/VF)の既往がある患者さんでは植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator:ICD)を使用します。そうした心不全の国内における現状を教えてください。現在の日本では高齢化の進展とともに心不全の患者さんが増え続け、年間26万人が入院を余儀なくされています。この背景には、心不全の患者さんは、冠動脈疾患(心筋梗塞)に伴う虚血性心筋症、拡張型心筋症だけでなく、弁膜症、不整脈など非常に多種多様な病因を有しているからだと言えます。また、先天性心疾患を有し成人した、いわゆる「成人先天性心疾患」の方は心不全のハイリスクですが、こうした患者さんもわが国に約40万人いらっしゃると言われています。高齢者や女性、高血圧の既往のある患者さんに多いと報告されているのが、左室収縮機能が保持されながら、拡張機能が低下している心不全、heart failure with preserved ejection fraction(HFpEF)と呼ばれる病態です。これに対しては有効性が証明された治療法はありません。また、病因や併存疾患が複数ある患者さんも多く、治療困難な場合が少なくありません。近年、注目される新たな治療について教えてください。1つはアンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(Angiotensin Receptor/Neprilysin Inhibitor:ARNI)であるLCZ696です。これは心臓に対する防御的な神経ホルモン機構(NP系、ナトリウム利尿ペプチド系)を促進させる一方で、過剰に活性化したレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による有害作用を抑制する薬剤です。2014年に欧州心臓病学会(European Society of Cardiology:ESC)では、β遮断薬で治療中の心不全患者(NYHA[New York Heart Association]心機能分類II~IV、左室駆出率≦40%)8,442例を対象にLCZ696とACE阻害薬エナラプリルのいずれかを併用し、心血管死亡率と心不全入院発生率を比較する「PARADIGM HF」の結果が公表されました。これによると、LCZ696群では、ACE阻害薬群に比べ、心血管死や心不全による入院のリスクを2割低下させることが明らかになりました。この結果、欧米のガイドラインでは、LCZ696の推奨レベルが「有効・有用であるというエビデンスがあるか、あるいは見解が広く一致している」という最も高いクラスIとなっています。現在日本では臨床試験中で、上市まではあと数年はかかるとみられています。もう1つ注目されているのが心拍数のみを低下させる選択的洞結節抑制薬のivabradineです。心拍数高値は従来から心不全での心血管イベントのリスク因子であると考えられてきました。ivabradineに関しては左室駆出率≦35%、心拍数≧70bpmの洞調律が保持された慢性心不全患者6,505例で、心拍数ごとに5群に分け、プラセボを対照とした無作為化試験「SHIFT」が実施されました。試験では心血管死および心不全入院の複合エンドポイントを用いましたが、ivabradineによる治療28日で心拍数が60bpm未満に低下した患者さんでは、70bpm以上の患者さんに比べ、有意に心血管イベントを抑制できました。ivabradineも欧米のガイドラインでは推奨レベルがクラスIとなっています。これらはいずれも左室機能が低下した慢性心不全患者さんが対象となっています。その意味では現在確立された治療法がないHFpEFではいかがでしょう?近年登場した糖尿病に対する経口血糖降下薬であるSGLT2阻害薬が注目を集めています。SGLT2阻害薬は尿細管での糖の再吸収を抑制して糖を尿中に排泄させることで血糖値を低下させる薬剤です。SGLT2阻害薬に関しては市販後に心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者さんを対象に、心血管イベント発症とそれによる死亡を主要評価項目にしたプラセボ対照の大規模臨床試験の「EMPA-REG OUTCOME」「CANVAS」で相次いで心血管イベント発生、とくに心不全やそれによる死亡を有意に減少させたことが報告されました。これまで糖尿病治療薬では心不全リスク低下が報告された薬剤はほとんどありません。これからはSGLT2阻害薬が糖尿病治療薬としてだけではなく、心不全治療薬にもなりえる可能性があります。同時にHFpEFの患者さんでも有効かもしれないという期待もあり、そうした臨床試験も始まっています。後編はこちらから講師紹介

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不眠症におけるデュアルオレキシン受容体拮抗薬とその潜在的な役割に関するアップデート

 現在の不眠症に対する薬物治療は、すべての不眠症患者のニーズを十分に満たしているわけではない。承認されている治療は、入眠および睡眠維持の改善において一貫して効果的とはいえず、安全性プロファイルも複雑である。これらのことからも、追加の薬物療法や治療戦略が求められている。初期研究において、一部の不眠症患者に対して、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)が追加の薬物治療選択肢として有用であると示されている。米国・セント・トーマス大学のKayla Janto氏らは、DORAとその潜在的な役割について、既存の文献を調査しアップデートを行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2018年8月15日号の報告。 DORAに関する既存の文献は、PubMedデータベースより、「オレキシン受容体拮抗薬」「almorexant」「filorexant」「lemborexant」「スボレキサント」の検索キーワードを用いて検索を行った。検索対象は、英語の主要な研究論文、臨床試験、レビューに限定した。 主な結果は以下のとおり。・不眠症治療においてオレキシン受容体系を標的とすることは、より一般的に用いられるGABA作動性催眠鎮静薬治療に対する追加および代替的な薬物治療である。・現在の文献において、その有効性が示唆されているものの、まだ十分に確立されていない。・前臨床報告では、アルツハイマー病と不眠症を合併した患者に対する治療の可能性が示唆されている。 著者らは「DORAは、不眠症に対する追加の治療選択肢として使用可能である。いくつかの不眠症サブタイプにおいて、その安全性および有効性をきちんと評価するために、より多くの臨床試験が必要とされる。不眠症に対する既存治療とのhead-to-head比較研究が求められている」としている。■関連記事日本人高齢不眠症患者に対するスボレキサントの費用対効果分析不眠症へのスボレキサント切り替えと追加併用を比較したレトロスペクティブ研究不眠症患者におけるスボレキサントの覚醒状態軽減効果に関する分析

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院外心停止、ラリンジアルチューブvs.気管内挿管/JAMA

 院外心停止(OHCA)の成人患者において、気管内挿管(ETI)と比較しラリンジアルチューブ(LT)挿入のほうが、72時間生存率が有意に高いことが示された。米国・テキサス大学健康科学センター ヒューストン校のHenry E. Wang氏らが、多施設共同プラグマティック・クラスター無作為化クロスオーバー試験「PART」の結果を報告した。救急医療の現場では、OHCA患者に対し一般的にETIあるいはLTなどの声門上気道器具の挿入が行われるが、OHCA患者の高度気道確保について最適な方法は明らかになっていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「LTはOHCA患者の最初の気道確保戦略として考慮されうるだろう。ただし、試験デザイン、実行状況、ETI遂行の特性などの点で限定的な結果であり、さらなる検証が必要である」とまとめている。JAMA誌2018年8月28日号掲載の報告。LTとETIの有効性を救急医療でのOHCA患者約3,000例で比較 研究グループは、OHCA患者への最初の気道確保戦略として、LTとETIの有効性を比較する目的で、Resuscitation Outcomes Consortiumに参加している救急医療サービス(EMS)27機関を13の集団に無作為化し、各集団内でLT→ETIまたはETI→LTに割り付けた(3~5ヵ月間隔でクロスオーバー)。2015年12月1日~2017年11月4日の期間に、OHCAで高度気道確保を要すると予測された成人患者3,004例が登録され、1,505例がLTを、1,499例がETIを受けた。最終追跡調査は2017年11月10日であった。 主要評価項目は72時間生存率、副次評価項目は自己心肺再開率、生存退院率、神経学的良好退院率(修正Rankin Scaleスコアが≦3)、有害事象などで、intention-to-treat解析を行った。 登録患者3,004例(年齢中央値64歳[四分位範囲:53~76]、男性1,829例[60.9%])のうち、3,000例が主要解析に組み込まれた。LT群の初回挿管成功率90.3%、72時間生存率18.3%で、いずれもETI群より良好 救急医療サービスにおける初回挿管成功率はLT群90.3%、ETI群51.6%であった。また、72時間生存率はLT群18.3%、ETI群15.4%であった(補正後群間差:2.9%、95%信頼区間[CI]:0.2~5.6、p=0.04)。 副次評価項目は、自己心拍再開率がLT群27.9%、ETI群24.3%(補正群間差:3.6%、95%CI:0.3~6.8、p=0.03)、生存退院率がそれぞれ10.8%、8.1%(2.7%、0.6~4.8、p=0.01)、神経学的良好退院率が7.1%、5.0%(2.1%、0.3~3.8、p=0.02)であった。 有害事象については、中咽頭部/下咽頭部外傷(0.2% vs.0.3%)、気道浮腫(1.1% vs.1.0%)、肺炎/肺臓炎(26.1% vs.22.3%)にLT群とETI群で有意差は認められなかった。

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降圧目標<130/80mmHgに厳格化の見通し-新高血圧ガイドライン草案

 2018年9月14~16日、北海道・旭川で開催された第41回日本高血圧学会総会で、2019年に発行が予定されている「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」の草案が示された。作成委員長を務める梅村 敏氏(横浜労災病院 院長)による「日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019の作成経過」と題した発表で、JSH2019が「Minds診療ガイドライン作成の手引き(2014年版)」に準拠したClinical Question(CQ)方式で作成が進められたことなど、作成方法の概要が示され、高血圧診断時の血圧値の分類や降圧目標における具体的な改訂案が説明された。ACC/AHA、ESH/ESC高血圧ガイドラインが降圧目標値を相次いで引き下げ 2017年に発表された米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)高血圧ガイドラインでは、一般成人の高血圧の基準値が従来の140/90mmHg以上から130/80mmHg以上に引き下げられ、降圧目標は130/80mmHg未満とすることが推奨されている。 また、2018年8月発表の欧州高血圧学会(ESH)/欧州心臓病学会(ESC)高血圧ガイドラインでは、一般成人(65歳未満)の基準値は140/90mmHg以上とされたものの、降圧目標は120~130/70~<80mmHgとして、目標値を厳格化する形をとっていた。高血圧診断の基準値は≧140/90mmHgで従来通りとなる方針 「高血圧治療ガイドライン2019」では、まず血圧値の分類について、高血圧の基準値は従来通り140/90mmHg以上とする見通しが示された。そのうえで、正常域血圧の分類について名称と拡張期血圧の値を一部改訂予定であることが明らかになった。以下、JSH2014での分類とJSH2019での改訂案を示す。・至適血圧:120/80mmHg未満→正常血圧:120/80mmHg未満・正常血圧:120~129/80~84mmHg→正常高値血圧:120~129/80mmHg未満・正常高値血圧:130~139/85~89mmHg→高値血圧:130~139/80~89mmHg降圧目標は10mmHgずつ引き下げの見通し 「高血圧治療ガイドライン2019」では、降圧目標については、75歳未満の一般成人では、130/80mmHg未満(診察室血圧)、125/75mmHg未満(家庭血圧)とそれぞれ10mmHgずつ引き下げる方向で進められている。 糖尿病、蛋白尿陽性のCKD、安定型の冠動脈疾患といった合併症のある患者については同じく診察室血圧で130/80mmHg未満、蛋白尿陰性のCKD、脳卒中既往のほか、75歳以上の高齢患者については140/90mmHg未満とすることが草案では示された。 また講演では、久山町研究ならびに日本動脈硬化縦断研究(JALS)に基づきCVDリスク(低~中等度~高リスクの3群に分類)を層別化した表(改訂案)も示され、高値血圧を含むより早期から生活習慣介入を中心に管理していく必要性が指摘された。 最後に梅村氏は、「一般成人に対する日欧米3つのガイドラインの降圧目標値は130/80mmHg未満で共通となる見通しで、旧ガイドライン時と比較して適用対象となる患者数は増加するだろう」と述べた。 今後関連学会との調整やパブリックコメント等を経て、改訂内容について最終決定のうえ、2019年春ごろをめどに「高血圧治療ガイドライン2019」は発行される予定。〔9月21日 記事の一部を修正いたしました〕■「高血圧治療ガイドライン2019」関連記事高血圧治療ガイドライン2019で降圧目標の変更は?

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ストレスやうつ病に対する朝食の質の重要性

 スペインの青少年527例を対象に、ストレスやうつ病の認知に基づき、朝食の摂取および質と、健康関連QOL(HRQOL)との関連について、スペイン・アリカンテ大学のRosario Ferrer-Cascales氏らが調査を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2018年8月19日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・HRQOLでは、気分、感情、両親との関係、家庭生活について、朝食摂取の有無により差が認められた。・朝食摂取者において、HRQOLが低かった。・ストレスも同様に差が認められ、朝食摂取者において、ストレスのレベルが高かった。・朝食摂取者の朝食の質を分析したところ、良質な朝食摂取は、低質または超低質の朝食摂取と比較し、より良いHRQOLが示唆され、ストレスとうつ病のレベルも低かった。・非朝食摂取者では、朝食が低質または超低質の朝食摂取者と比較し、より良いHRQOLおよび、ストレスとうつ病が低いレベルを示した。 著者らは「本知見は、朝食摂取の有無よりも、良質な朝食を摂取することの重要性を示唆している。このことは、臨床医や栄養士にとってとくに重要であり、青少年におけるHRQOL、ストレス、うつ病に対して、朝食の質が有意に影響を及ぼすことを考慮する必要がある」としている。■関連記事魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当かうつ病患者に対する地中海スタイルの食事介入に関するランダム化比較試験食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか

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北海道地震で先遣JMAT初運用

 2018年9月12日、日本医師会は、先日の平成30年北海道胆振東部地震災害対策について記者会見を行った。中川 俊男氏(同会副会長)と石川 広巳氏(同会常任理事)を中心に、災害当日からの活動内容と今後の対策について語られた。初の「先遣JMAT(日本医師会災害医療チーム)」運用から活動開始・9月6日  3時07分 北海道胆振東部地震発生  3時19分 都道府県医師会に対し、災害時情報共有システムを通して情報提供を要請  6時15分 北海道医師会 災害対策本部を設置 11時54分 日本医師会 災害対策本部(本部長:横倉 義武氏/本会会長)を設置・9月7日 15時00分 長瀬 清氏(北海道医師会長)をリーダーとする先遣JMATが苫小牧医師会を訪問・9月8日 20時30分 北海道医師会、DMAT医療救護調整本部よりJMAT2隊の派遣要請を受け、手稲渓仁会病院・勤医協中央病院のチーム派遣を決定・9月9日 10時28分 JMATが随時被災地に到着し、DMATから引き継ぎを受けて活動開始 9月11日現在、JMATはむかわ町に5グループ派遣されており、待機が1グループ。先遣JMATの活動は終了している。派遣されたメンバーの内訳は、医師8名、看護職員6名、薬剤師3名、他医療関係者4名、事務職員5名の計26名。いつ発生するかわからない地震に備え、停電への対策を 石川氏は、「今回の地震で物流が大打撃を受け、ライフラインの重要さを改めて感じた」と語り、一時北海道の全域が停電したことに触れ、「現状の医療は電力に頼らざるをえないが、停電時の選択肢を多く備えておくことが重要だ。自家発電がないような診療所などでは、自前で訓練を行っているところもあるので、見習って取り組んでほしい」と強調した。※JMATの目的と運用について JMATは、被災者の生命及び健康を守り、被災地の公衆衛生を回復し、地域医療の再生を支援することを目的とする災害医療チームである。災害発生時、被災地の都道府県医師会の要請に基づく日本医師会からの依頼により、全国の都道府県医師会が、郡市区医師会や医療機関などを単位として編成する。日本医師会の直接的な災害対応能力とする。 活動内容は、主に災害急性期以降における避難所・救護所等での医療や健康管理、被災地の病院・診療所への支援(災害前からの医療の継続)である。さらに、医療の提供という直接的な活動にとどまらず、避難所の公衆衛生、被災者の栄養状態や派遣先地域の医療ニーズの把握と対処から、被災地の医療機関への円滑な引き継ぎまで、多様かつ広範囲におよぶ。■参考公益社団法人日本医師会 防災業務計画公益社団法人日本医師会 防災業務計画 JMAT要綱■関連番組(CareNeTV)大地震発生!そのとき僕らがすべきこと‐フツウの医師のための災害医療入門‐第2回 災害時の医療体制を知る‐専門チームの役割とは ※期間限定で無料公開

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重症の二次性MRに経皮的僧帽弁修復術の効果は?/NEJM

 重症の二次性僧帽弁閉鎖不全症(MR)患者で、薬物療法+経皮的僧帽弁修復術を受けた患者と薬物療法のみを受けた患者を比較した結果、1年時点の死亡率または予定外の入院率について有意な差はなかった。フランス・Hopital Cardiovasculaire Louis PradelのJean-Francois Obadia氏らが、MitraClip(Abbott Vascular)デバイスを用いた無作為化試験「MITRA-FR(Percutaneous Repair with the MitraClip Device for Severe Functional/Secondary Mitral Regurgitation)」の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2018年8月27日号掲載の報告。左室駆出率が低下した慢性心不全患者では、重症の二次性MRが予後不良に関わるが、これらの患者集団において、経皮的僧帽弁修復術が臨床転帰を改善するかは明らかになっていなかった。MitraClipは2008年にEuropean Certificate of Conformity(CEマーク)を取得、本邦では2018年4月に保険適用となっている。12ヵ月時点の全死因死亡・心不全予定外入院の発生を評価 MITRA-FR試験は、フランスで行われた第III相の多施設共同無作為化非盲検試験。重症の二次性MR(有効逆流弁口面積>20mm2、または逆流量/拍>30mLと定義)で、左室駆出率15~40%、症候性心不全を有する患者を、薬物療法+経皮的僧帽弁修復術を受ける群(介入群)または薬物療法のみを受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けて追跡した。 主要有効性評価項目は、12ヵ月時点の全死因死亡・心不全による予定外入院の複合であった。有意差はなく介入群54.6%、対照群51.3% 被験者は2013年12月~2017年3月に、フランス国内37施設で集められ、307例が無作為化を受け、intention-to-treat解析には各群152例が包含された。年齢は介入群70.1±10.1歳、対照群70.6±9.9歳、75歳超患者がそれぞれ33.6%、38.8%、男性患者が78.9%、70.4%。NYHA心機能分類IIが36.8%、28.9%、IIIが53.9%、63.2%、また有効逆流弁口面積は両群とも31mm2、逆流量は両群とも45mL、左室駆出率は33.3%、32.9%であった。 12ヵ月時点で、主要複合評価項目の発生が認められたのは、介入群54.6%(83/152例)、対照群51.3%(78/152例)であった(オッズ比[OR]:1.16、95%信頼区間[CI]:0.73~1.84、p=0.53)。項目別に見ると、全死因死亡の発生率は、24.3%(37/152例)vs.22.4%(34/152例)であり(HR:1.11、95%CI:0.69~1.77)、心不全による予定外入院の発生率は、48.7%(74/152例)vs.47.4%(72/152例)であった(1.13、0.81~1.56)。

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被災地での診療に役立つコンテンツ

このたびの西日本豪雨、台風、北海道胆振東部地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。CareNet.comでは、被災地での診療に役立つコンテンツをご用意しております。被災地に入られる前の準備に、知識のブラッシュアップにご覧ください。(期間限定:10月31日まで公開いたします)

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第6回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3 患者さんに何を伝える?副作用と再受診 キャンプ人ペニシリン系の副作用である下痢、発疹、クラリスロマイシンの副作用である下痢について説明します。また、原因菌が不明なので、出張中もきちんと薬を飲んで再度病院へ受診して点滴するように説明します。抗菌薬を決まった時間に服用 奥村雪男オーグメンチン®配合錠に含まれるアモキシシリンがペニシリン系で時間依存であることから、飲み忘れなく定時に服用することが大事であることを説明します。他院受診時に服薬状況を伝えることとアセトアミノフェンの服用方法 ふな3出張先などで体調が急変した場合に備えて、必ずおくすり手帳(もしくは薬情)を携帯して、これらの薬剤を服用していることを受診先でも伝えるように説明します。また、アセトアミノフェンの量が多めなので、高熱や寒気がひどくなければ、1回300mg 1錠でも効果は得られることと、1回2錠で服用する場合にはできれば6時間、最低4時間をあけて、1日2回までの服用にとどめるよう伝えます。飲酒や喫煙を控える JITHURYOU薬剤と同時に飲酒することはもちろん、飲酒も控える(特にアセトアミノフェンと飲酒は代謝が促進され、肝毒性のリスクが上昇する)ことを伝えます。仕事が多忙のようですが、安静にして外出は控えたほうが良いです。咳嗽が誘発されるので当然喫煙は控えるよう伝えます。他者にうつさないように わらび餅仕事を続けるとのことなので、他者にうつさぬよう感染対策(マスクや手洗い、消毒など)をお願いします。原因菌がはっきりしていないので、良くなっても途中で服薬を中断せず、3日以内に再受診するよう説明します。治癒傾向 中西剛明治療の経過で、食欲不振、横になるより起きていたほうが楽、という状況が改善されない場合は「無効」「悪化」を疑わなくてはいけません。眠ることができるようになった、食欲が回復してきたら治癒傾向ですよ、とお話しします。Q4 疑義照会をする?しない?疑義照会するオーグメンチン®配合錠の規格 奥村雪男添付文書上のオーグメンチン®配合錠の用法用量は「1回375mg 分3~4 6~8時間」なので、念のためオーグメンチン®配合錠の規格が125RSでなく250RSで良いか確認します。ただし、原因菌としてペニシリン耐性肺炎球菌を想定して、アモキシシリンを高用量で処方した可能性を踏まえておきます。CYP3A4を基質とする併用禁忌の薬剤を服用していて中止できない場合は、マクロライド系でCYP3A4阻害作用の弱いアジスロマイシンへの変更を提案します。消化器系の副作用予防を考慮 清水直明オーグメンチン®配合錠250RS 6錠/日は添付文書の年齢、症状により適宜増減の範囲内、アモキシシリンは1,500mgと高用量で、S. pneumoniaeを念頭においた細菌性肺炎の治療としては妥当と考えます。ただし、オーグメンチン®配合錠250RSでアモキシシリンを1,500mg投与しようとすると、必然的にクラブラン酸の量も多くなり、消化器系の副作用が出やすくなると思います。小児用ではクラブラン酸の比率を下げた製剤がありますが、成人用ではありません。そのため、オーグメンチン®配合錠250RS 3錠/日+アモキシシリン錠250mg 3錠/日を組み合わせて投与する方が、消化器系副作用の可能性は低くできると思うので疑義照会します(大部分のM. catarrhalisや一部のH. influenzae、あるいは一部の口腔内常在菌は、β-ラクタマーゼを産生しアモキシシリンを不活化する可能性があり、β-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤が治療には適しているとされているので、あえてオーグメンチン®配合錠とアモキシシリンの組み合わせを提案します)。クラリスロマイシンについては、非定型肺炎も視野に入れて併用されていますが、M. pneumoniaeについてはマクロライド耐性株が非常に増加しています。しかし、そのような中でもM. pneumoniaeに対しての第1選択はクラリスロマイシンなどのマクロライド系薬であり4)、初期治療としては妥当と考えます。細菌性肺炎であったとしても、マクロライド系薬の新作用※3を期待して併用することで、症状改善を早めることができる可能性があるため併用する意義があると思います。※3 クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬は、抗菌作用の他に、免疫炎症細胞を介する抗炎症作用、気道上皮細胞における粘液分泌調整作用、バイオフィルム破壊作用などをもつことが明らかになっている。保険で査定されないように 中西剛明抗菌薬の2種併用のため、疑義照会をします。医師から見ると「不勉強な薬剤師だ」と勘違いされてしまうかもしれませんが、抗菌薬の併用療法は根拠がない場合、査定の対象になることがあり、過去査定された経験があります。そのため「併用の必要性を理解している」上での問い合わせをします。耐性乳酸菌製剤の追加 中堅薬剤師過去に抗菌薬でおなかが緩くなって飲めなかったことがある場合は、耐性乳酸菌製剤の追加を依頼します。併用禁忌に注意 児玉暁人クラリスロマイシンとの併用禁忌薬を服用していれば、疑義照会をします。クラリスロマイシンの処方日数 ふな3セフトリアキソンを点滴していることから,処方医は細菌性肺炎を想定しつつも「成人市中肺炎診療ガイドライン」から非定型肺炎の疑いも排除できないため、クラリスロマイシンを追加したと考えました。セフトリアキソン単剤では、万一、混合感染であった場合に非定型肺炎の原因菌が増殖しやすい環境になってしまうことが懸念されるため、治療初期からクラリスロマイシンとの併用が望ましいと考えられるので、クラリスロマイシンの処方を4日に増やして、今日からの服用にしなくて良いのか確認します。基礎疾患の有無を確認してから 柏木紀久細菌性肺炎で原因菌が不明の場合を考え、まず「成人市中肺炎診療ガイドライン」に沿って基礎疾患の有無を確認します<表3> 。軽症基礎疾患がある場合のβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンは常用量と考えられるので、軽度基礎疾患が確認できた場合にはオーグメンチン®配合錠が高用量で良いのか確認します。膿や痰などの培養検査の有無の確認。検査をしていなければ検査依頼をします。基礎疾患がない場合では、細菌性肺炎を考えつつも出張などで他者へ感染させる可能性を考慮して、非定型肺炎や混合感染を完全には排除せずクラリスロマイシンも処方したのでは、などと考えますが、念のためクラリスロマイシンの処方意図を確認します。疑義照会をしないガイドラインに記載有り キャンプ人特にしません。非定型肺炎との鑑別がつかない場合は、「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」2)にも同用量の記載があります。協力メンバーの意見をまとめました疑義照会については・・・ 疑義照会をする オーグメンチン®配合錠の消化器系の副作用予防・・・3名抗菌薬の2種併用について・・・2名オーグメンチン®配合錠の規格の確認・・・1名耐性乳酸菌製剤の追加依頼・・・1名併用禁忌薬について・・・1名クラリスロマイシンの処方日数・・・1名基礎疾患に基づいて疑義照会・・・1名 疑義照会をしない 2名1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.

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うつ病、治療抵抗性うつ病、自殺行動に対するブプレノルフィンの有効性に関するシステマティックレビュー

 うつ病治療において、いくつかの薬理学的な選択肢が実施可能であるが、抗うつ薬治療を実施した患者の3分の1では、十分な治療反応が得られず、完全寛解には達していない。そのため、抗うつ薬による薬物治療で治療反応が得られなかった、または治療反応が不十分だった患者に対処するための、新たな戦略が必要とされている。イタリア・ジェノバ大学のGianluca Serafini氏らの研究結果によると、オピオイド系が気分やインセンティブの調整に有意に関与しており、新規治療薬としての適切なターゲットとなりうることが明らかとなった。International Journal of Molecular Sciences誌2018年8月15日号の報告。 本研究では、うつ病、治療抵抗性うつ病、非自殺的な自傷行為、自殺行動に対するブプレノルフィンの使用に関する文献についてシステマティックレビューを行った。ブプレノルフィンとうつ病または治療抵抗性うつ病、自殺、難治性うつ病のキーワードを使用し、PubMedおよびScopusのデータベースより検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・低用量のブプレノルフィンは、抑うつ症状、重度な自殺念慮、非自殺自傷を軽減するために有効かつ忍容性が高く、安全な選択肢であることが、いくつかのエビデンスにより示された。これは、治療抵抗性うつ病患者においても認められた。・しかし、ブプレノルフィンの長期的な効果や、ブプレノルフィンと特定の薬剤(たとえば、samidorphan、ナロキソン、naltrexone)との併用、ブプレノルフィンの単独療法または標準的な抗うつ薬治療への補助療法による相対的な有効性の評価、ならびに最適な投与間隔についての均一なガイダンスを得るためには、より多くの研究が必要である。■関連記事SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較SSRI治療抵抗性うつ病への効果的な増強療法治療抵抗性うつ病に対する心理的サポートとしてのシロシビンの6ヵ月追跡調査

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心アミロイドーシス治療、タファミジスが有望/NEJM

 トランスサイレチン型心アミロイドーシスは、生命を脅かす希少疾患だが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのMathew S. Maurer氏らATTR-ACT試験の研究グループは、トランスサイレチン型心アミロイドーシス治療において、タファミジスが全死因死亡と心血管関連の入院を低減し、6分間歩行テストによる機能やQOLの低下を抑制することを示した。本症は、ミスフォールディングを起こしたトランスサイレチン蛋白から成るアミロイド線維が、心筋に沈着することで引き起こされる。タファミジスは、トランスサイレチンを特異的に安定化させることで、アミロイド形成を抑制する薬剤で、日本ではトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの末梢神経障害の治療薬として承認されている。NEJM誌2018年9月13日号掲載の報告。対象は年齢18~90歳のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者 本研究は、タファミジスの有用性の評価を目的とし、13ヵ国48施設が参加した国際的な多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験。2013年12月~2015年8月の期間に患者登録が行われた(Pfizerの助成による)。 対象は、年齢18~90歳、生検検体の分析でアミロイド沈着が確定されたトランスサイレチン型心アミロイドーシス(トランスサイレチン遺伝子TTR変異陽性[ATTRm]および野生型トランスサイレチン蛋白[ATTRwt])の患者であった。 被験者は、タファミジス80mg、同20mg、プラセボを1日1回投与する群に、2対1対2の割合で無作為に割り付けられ、30ヵ月の治療を受けた。 主要エンドポイントとして、Finkelstein-Schoenfeld法を用いて、全死因死亡の評価を行い、引き続き心血管関連入院の頻度を評価した。副次エンドポイントは、ベースラインから30ヵ月時までの6分間歩行テストの変化およびKansas City Cardiomyopathy Questionnaire-Overall Summary(KCCQ-OS、点数が高いほど健康状態が良好)のスコアの変化とした。トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者の30ヵ月死亡が30%低下、心血管関連入院は32%低下 トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者441例が登録され、タファミジス群(80mg、20mg)に264例、プラセボ群には177例が割り付けられた。全体の年齢中央値は75歳で、約9割が男性であり、106例(24%)がATTRmであった。 タファミジス群の173例、プラセボ群の85例のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者が試験を完遂した。所定の治療アドヒアランス率(計画用量の80%以上を達成した患者の割合)は高く、タファミジス群が97.2%、プラセボ群は97.0%だった。 Finkelstein-Schoenfeld法による30ヵ月時の全死因死亡および心血管関連入院は、タファミジス群がプラセボ群に比べ良好であった(p<0.001)。Cox回帰分析による全死因死亡率は、タファミジス群が29.5%(78/264例)と、プラセボ群の42.9%(76/177例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.51~0.96)。また、心血管関連入院率はそれぞれ0.48件/年、0.70件/年であり、タファミジス群で有意に低かった(相対リスク比:0.68、95%CI:0.56~0.81)。 6分間歩行テストの歩行距離は、両群のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者ともベースラインから30ヵ月時まで経時的に短縮したが、短縮距離はタファミジス群がプラセボ群よりも75.68m(標準誤差:±9.24、p<0.001)少なく、6ヵ月時には両群間に明確な差が認められた。 KCCQ-OSスコアも、両群のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者とも経時的に低下したが、30ヵ月時の低下分のスコアはタファミジス群がプラセボ群よりも13.65点(標準誤差:±2.13、p<0.001)少なく、6ヵ月時には両群間に明確な差がみられた。 安全性プロファイルは、両群のトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者でほぼ同様であり、タファミジス群の2つの用量の安全性にも意味のある差は認めなかった。治療中に発現した有害事象は軽度~中等度であり、有害事象の結果としての恒久的治療中止の頻度はタファミジス群のほうが低かった。 著者は、「タファミジスは、NYHA心機能分類クラスIIIを除くすべてのサブグループで心血管関連入院率を低下させたが、クラスIIIの患者の入院率の高さには、病態の重症度がより高い時期における生存期間の延長が寄与したと推測され、この致死的で進行性の疾患では、早期の診断と治療が重要であると強く示唆される」としている。

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消化管障害と相互作用が少ない二次性副甲状腺機能亢進症治療薬「オルケディア錠1mg/2mg」【下平博士のDIノート】第9回

消化管障害と相互作用が少ない二次性副甲状腺機能亢進症治療薬「オルケディア錠1mg/2mg」今回は、「エボカルセト錠(商品名:オルケディア錠1mg/2mg)」を紹介します。本剤は、既存のシナカルセト錠(商品名:レグパラ錠)と同等の有効性で、上部消化管に関する副作用の軽減が期待されます。<効能・効果>維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症の適応で、2018年3月23日に承認され、2018年5月22日より販売されています。副甲状腺細胞表面のカルシウム(Ca)受容体に作用して、副甲状腺ホルモン(PTH)の合成と分泌を抑制することで、血清PTHや血清Ca濃度を低下させます。<用法・用量>通常、成人には、エボカルセトとして1日1回1~2mgを開始用量として経口投与します。以降は、PTHおよび血清Ca濃度の十分な観察のもと、1日1回1~8mgの間で維持量を適宜設定します。効果不十分な場合には、1日1回12mgまで増量することができます。なお、増量を行う場合は増量幅を1mgとし、2週間以上の間隔をあけて行います。<副作用>国内臨床試験において、安全性評価対象の493例中、臨床検査値異常を含む副作用が208例(42.2%)に認められました。主な副作用は、低Ca血症83例(16.8%)、悪心23例(4.7%)、嘔吐20例(4.1%)、腹部不快感18例(3.7%)、下痢16例(3.2%)でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、PTHの過剰な分泌を抑え、血液中のCaとリン(P)の濃度を下げる作用があります。2.しびれ、痙攣、気分不良、不整脈、血圧低下が起こることがあります。このような症状が現れた場合は、すぐに連絡してください(低カルシウム血症の症状)。3.この薬を使用中に妊娠が判明した場合は、ただちに使用を中止して連絡してください。4.透析療法下の二次性副甲状腺機能亢進症では、薬による治療とともに食事療法も併せて行い、体内のPとCa、PTHのバランスを整えることが大切です。<Shimo's eyes>二次性副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺以外の病気が原因でPTHが過剰に分泌される疾患で、腎機能の低下によっても生じます。PTHは血液中のPとCaを調節するホルモンであり、PTHが過剰に分泌されると、血液中のCa濃度が上がって骨折しやすくなったり(骨吸収)、血管などにCaが沈着・石灰化して動脈硬化や心臓弁膜症などを引き起こしたりします。透析下の二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療としては、従来から活性型ビタミンD製剤やP吸着薬が用いられてきましたが、2008年にCa受容体作動薬であるシナカルセト錠が承認され、血清Ca濃度を上昇させずにPTH分泌を抑制し、有意に血清PTH濃度を低下させることができるようになりました。しかし、上部消化管に対する副作用のため、十分な効果を示す用量まで増量できないこともありました。本剤は、シナカルセトに続く2剤目の経口Ca受容体作動薬であり、シナカルセトと同様に1日1回の服用で同等の有効性を示すことが確認されています。一方で、上部消化管に関する有害事象は本剤投与群317例中41例(12.9%)、シナカルセト群317例中77例(24.3%)と少ない傾向が見られました(第III相実薬対照二重盲検比較試験)。そのため、服薬アドヒアランス向上による治療継続率の向上が期待されます。本剤の代謝経路はタウリン抱合とグリシン抱合であり、CYP関連で併用注意の対象薬がなく、他剤併用のリスクが軽減されています。ただし、妊婦には禁忌なので注意が必要です。

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80歳以上の高齢者、朝の家庭血圧と脳卒中が相関~J-HOP研究

 自治医科大学の苅尾 七臣氏らによるJ-HOP研究において、80歳以上の日本人の家庭血圧と心血管イベントとの関連を検討したところ、早朝家庭血圧が心血管イベント、とくに脳卒中で正の線形関連を示した。この関連は診察室血圧または就寝前家庭血圧では観察されなかった。American Journal of Hypertension誌オンライン版2018年9月5日号に掲載。 本研究は、心血管疾患の既往とリスク因子のどちらか、もしくは両方を有する4,310人を対象とした「日本人における家庭血圧の心血管予後推定能に関する研究」(Japan Morning Surge-Home Blood Pressure Study:J-HOP研究)から、80歳以上の349例の患者を分析したもの。ベースライン時に連続14日間にわたり、1日2回(朝夕)家庭血圧測定を実施した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3年の間に、複合心血管イベントが32件(脳卒中13件、脳卒中以外のイベント19件)発生した。・4年の心血管リスクスコアおよび診察室収縮期血圧(SBP)による調整後、高い早朝収縮期血圧(SBP)は、複合心血管イベント(10mmHg当たりハザード比[HR]:1.23、95%信頼区間[CI]:1.01~1.50)および脳卒中(10mmHg当たりHR:1.47、95%CI:1.08~2.00)の有意なリスク因子であった。・調整後モデルでは、早朝拡張期血圧も脳卒中の有意なリスク因子である傾向がみられた(5mmHg当たりHR:1.43、95%CI:1.00~2.05)。・これらの関連は、就寝前血圧や診察室血圧ではみられなかった。

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地方病院の認知症やせん妄患者に対するボランティア介入が再入院率に及ぼす影響

 地方の急性期病院における、認知症、せん妄、せん妄リスクを有する患者に対するパーソン・センタード(person-centered)のボランティアプログラムが臨床アウトカムに及ぼす影響について、オーストラリア・Southern NSW Local Health DistrictのAnnaliese Blair氏らが検討を行った。International Psychogeriatrics誌オンライン版2018年8月13日号の報告。 本研究は、非無作為化比較試験として実施された。対象は、オーストラリアの農村部にある急性期病院7施設に入院している高齢患者。介入群270例は、65歳超の認知症またはせん妄の診断を受けた、もしくはせん妄のリスク因子を有する患者で、ボランティアサービスを受けていた。対照群188例は、ボランティアプログラム開始12ヵ月前に同じ病院に入院し、時期が違えばボランティアプログラムの適格基準を満たしていただけであろう患者。ボランティアプログラム介入では、訓練を受けたボランティアスタッフによる、栄養・水分補給、聴覚・視覚補助、活動、オリエンテーションに焦点を当てた1:1のパーソン・センタード・ケアを提供した。ボランティアの訪問、診断、入院日数、インシデント行動、再入院、指定率、死亡、介護施設への入所、転倒、褥瘡、薬剤使用について、医療記録より評価した。 主な結果は以下のとおり。・全施設において、介入群では、1:1指定率、28日再入院率に有意な低下が認められた。・入院日数は、対照群において有意に短かった。・介入群と対照群において、その他のアウトカムに差は認められなかった。 著者らは「ボランティア介入は、地方の病院における認知症、せん妄、せん妄のリスク因子を有する急性期の高齢患者をサポートするうえで、安全かつ効果的で、再現可能な介入である。今後は、コストへの影響、家族の介護者、ボランティア、スタッフ経験に関しても報告を行う予定である」としている。■関連記事日本の認知症者、在院期間短縮のために必要なのは認知症患者と介護者のコミュニケーションスキル向上のために米国の長期介護における向精神薬を使用した認知症ケア改善に関する研究

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第3回 カリメート処方が査定/ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定/心筋梗塞でのH-FABP検査の査定/自己免疫疾患の臨床検査での査定【レセプト査定の回避術 】

事例9 カリメート処方が査定高カリウム血症で、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(商品名:カリメート散)15gを処方した。●査定点カリメート散15gが査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」で「急性および慢性腎不全に伴う高カリウム血症」と記載されているにもかかわらず、「急性および慢性腎不全」の病名が漏れていました。※とくに、高カリウム血症で他から紹介された患者の場合などで「急性および慢性腎不全」の病名が漏れやすいので注意が必要です。事例10 ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定ヘリコバクター・ピロリ感染症で、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン(商品名:ランサップ800)を7シート処方した。●査定点ランサップ800の7シートが査定された。解説を見る●解説ランサップ800は、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシンの3種類の経口剤が1つのシートにまとめられています。ランソプラゾールの「効能・効果」では、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍」の病名が求められていますので、ヘリコバクター・ピロリ感染症と胃潰瘍または十二指腸潰瘍の病名が必要になります。事例11 心筋梗塞でのH-FABP検査の査定急性心筋梗塞(3ヵ月前の診療開始日)で、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査を請求した。●査定点心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査が査定された。解説を見る●解説心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査は、「急性心筋梗塞の診断を目的に用いた場合」のみ算定できるとされています。検査結果についても、心筋細胞が障害を受けると、速やかに約1時間から上昇をしはじめ、5~10時間後でピークになります。そのため3ヵ月前の診療開始日では査定の対象になります。事例12 自己免疫疾患の臨床検査での査定全身性エリテマトーデス、急速進行性糸球体腎炎で、抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)、ループスアンチコアグラント定量検査を請求した。●査定点ループスアンチコアグラント定量検査が査定された。解説を見る●解説抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)は「急速進行性糸球体腎炎の診断又は経過観察のために測定した場合」のみ算定でき、ループスアンチコアグラント定量検査は「抗リン脂質抗体症候群の診断を目的として行った場合」に限り算定することになっています。両病名が記載されていないと査定の対象となります。

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強迫症の最適治療に関する研究

 強迫症(OCD)の治療では、認知行動療法(CBT)や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)による薬物療法が行われる。単独療法よりも併用療法が優れている可能性があるものの、これを調査した研究はほとんどなかった。英国・Hertfordshire Partnership University NHS Foundation TrustのNaomi A. Fineberg氏らは、成人OCD患者を対象に、CBT、SSRI治療の単独または併用療法の治療効果について、比較検討を行った。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2018年8月15日号の報告。 成人OCD患者49例を、CBT群、SSRI群、SSRI+CBT群にランダムに割り付けた。SSRI治療では、セルトラリン(50~200mg/日)が52週間投与された。16時間のマニュアル化されたCBTを8週間、4つのフォローアップセッションと共に実施した。治療の割り付けは、評価者には盲検化された。予備的な健康経済評価を実施した。 主な結果は以下のとおり。・症例分析では、16週目において、SSRI+CBT群(13例)で最も大きな改善効果が認められた。次いで、SSRI群(7例)、CBT群(9例)であった。・Yale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)での改善を比較したエフェクトサイズ(Cohen's d)は、CBT群とSSRI+CBT群との比較で-0.39、CBT群とSSRI群との比較で-0.27であった。・16週目と52週目を比較すると、SSRI群で最も臨床的改善効果が認められたが、中止率が高く、信頼できる分析には至らなかった。・平均費用は、SSRI群と比較し、CBT群およびSSRI+CBT群で高かった。・SSRI群の平均質調整生存年(Quality Adjusted Life Years:QALY)スコアは、CBT群よりも0.1823(95%CI:0.0447~0.3199)高く、SSRI+CBT群よりも0.1135(95%CI:-0.0290~0.2560)高かった。 著者らは「成人OCD患者へのSSRI治療とCBTの併用療法は、とくにCBT単独療法に対して、最も臨床的に有効な治療選択肢であったが、SSRI単独療法を超える利点は16週以上持続しなかった。また、SSRI単独療法が、最も費用対効果に優れていた」としている。■関連記事治療抵抗性強迫症に対する増強療法、抗精神病薬の評価は難治性強迫性障害に有用な抗精神病薬は何かSSRIで著効しない強迫性障害、次の一手は

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第3回 高齢者の高血糖で気を付けたいこと【高齢者糖尿病診療のコツ】

第3回 高齢者の高血糖で気を付けたいことQ1 高齢者では基準が緩和されていますが、血糖値高めでも様子をみる方針でいいのでしょうか? 注意すべき病態はありますか?最近のガイドラインでは、高齢者、とくに認知機能やADLが低下している場合血糖コントロールが甘めに設定されていますが、どんなに高くてもよいというものではありません。高血糖で緊急性を要する病態として、高浸透圧高血糖状態(HHS)と糖尿病ケトアシドーシス(DKA)があり、注意が必要です(表)。画像を拡大するHHSはインスリン分泌が保たれている患者に、何らかの血糖上昇をきたす因子(感染症やステロイド投与、経管栄養など)が加わり、著明な高血糖と高度脱水をきたす病態です。血糖値は通常600mg/dLを超え、重症では意識障害をきたし、死亡率は10~20%とされています。HHSはとくに高齢者で起こりやすく、糖尿病治療中でこれらの因子を伴った場合は、十分な水分摂取を促すこと、こまめに血糖値をチェックすることが大切です。水分摂取困難や意識障害の症例はもちろん、血糖300mg/dL以上が持続する場合も専門医を受診させ、入院を考慮するべきでしょう。以前行った調査1)では、HHS患者では認知症有の患者が86%を占め、要介護3以上、独居または高齢夫婦世帯がそれぞれ半数以上を占めていました。これらの患者ではとくに注意が必要です(図1)。画像を拡大するDKAは、インスリンの絶対的欠乏によって脂肪が分解され、血中のケトン体が上昇し、アシドーシスを呈する病態です。高齢者のDKAの多くは1型糖尿病で治療中の患者さんでの、感染症合併やインスリンの不適切な減量・中断による発症です。体調不良時のインスリンの使用法(シックデイルール)を指導しておく必要があります。食事がとれないような場合でも、安易にインスリン(とくに持効型)を中止しないよう指導することが重要になります。HbA1c9%以上では、HbA1c7~7.9%に比べHHSやDKAなどの急性代謝障害をきたすリスクが2倍以上となります。高齢者ではHbA1c8.5%以上だと肺炎、尿路感染症などの感染症のリスクも高くなります。そのため私たちは、認知機能やADLが低下している患者さんでも、HbA1c8.5%未満を目標としています。HbA1c8.5%以上が持続する症例では、入院での血糖コントロールを行い、その後の環境調整を行っています。Q2 HbA1cが正常なのに、 食後血糖が高い患者へはどのように対応すべきでしょうか?HbA1cは平均血糖の指標であり、HbA1cが正常でも、血糖変動が大きい可能性があります。食後高血糖は血糖変動の大きな要因であるため、外来受診の患者さんでも、空腹時のみでなく、定期的に食後血糖(1、2時間値)を測定するようにしています。食後高血糖は、糖尿病予備軍の患者さんの糖尿病への進展リスクを高めるといわれています。また高齢者のみでの研究ではありませんが、心血管疾患の発症率や死亡率も高いことが知られています(図2) 2)。一方で、SU薬やインスリン使用中で食後高血糖、かつHbA1cが低い場合は、低血糖が隠れていることがあるため、注意が必要です。また早朝の血糖が高値を示す場合、実は夜間に低血糖があり、それに引き続いてインスリン拮抗ホルモンが分泌されて血糖が上昇している場合があります(ソモジー効果)。ソモジー効果が疑われる場合は深夜の血糖を測ることが望ましく、低血糖が疑われる場合は、インスリンやSU薬の減量を行います。画像を拡大する食後高血糖に対しては、まず生活指導を行います。ゆっくり時間をかけて食べる、糖質を食物線維が多いものと一緒にとる、清涼飲料水など糖質が速やかに吸収される食品を避ける、食後1時間後を目安にウォーキングや軽い体操を行うこと、などを勧めます。これらの指導を行ったにもかかわらず、食後血糖が常に200mg/dLを超えている場合は、α-グルコシダーゼ阻害薬(非糖尿病でも使用可能)や、グリニド製剤(糖尿病のみ使用可能)などの食後高血糖改善薬の投与も考慮します。前者は糖質の吸収を緩やかにする薬剤ですが、腹部手術後は慎重投与となっています。後者はインスリン分泌を刺激する薬剤ですので、低血糖への配慮が必要になります。いずれも1日3回食直前の内服が必要なので、服薬アドヒアランスの不良な患者さんには適していません。そのような患者さんには、効果は劣るものの服薬回数の少ないDPP-4阻害薬を考慮しますが、認知機能やADLが低下している患者さんでは食後のみの高血糖であれば、無投薬で様子をみることも多いです。Q3 高血糖に対する認識の低さを感じます。患者指導のポイントがあれば教えてください。まず、年齢、認知機能やADL低下の程度、合併症や併発疾患、生命予後によって、コントロールの目標も変わってきます。認知機能やADLが低下している場合は、厳格なコントロールは必ずしも必要ありません(第6回で詳述予定です)。一方、比較的若く、認知機能やADLが保たれている患者さんには、しっかり指導をしなければなりません。ここではこういった患者さんで病識が低い人への対応を考えます。これらの患者さんでは何よりも、通院を中断してしまうことが問題です。通院しているだけである程度の意欲はあるわけですから、その部分は褒めるようにしています。また、看護師や栄養士にも協力してもらい、治療に対するご本人の考えや感情を十分に傾聴することが大切でしょう。チームとしてのサポートが重要となります。「もう歳だからいい」と言う場合や、配偶者の介護の負担などで治療に向き合えないこともあります。医療スタッフが来院時に悩みを聞きながら、少しずつ治療に向き合えるように粘り強く待つことが大切です。長期間来院しない時はスタッフから連絡してもらい、心配していることやあなたの健康を一緒に支えているということをわかっていただきます。教育面では、休日の糖尿病教室への参加をお勧めしたりしますが、強制はしません。また、診療時間は限られているので、教育資材やビデオを貸し出したりして、合併症予防の重要性を学んでいただくようにしています。そして1つでも合併症を理解していただいたら、褒めるようにします。治療に関しては、同時にいくつものことを要求しないことも重要です。禁煙と運動、食事内容を一度に全て改善しろといってもできません。患者さんの取り組みやすいところから1つずつ、しかも達成しやすいところに目標をおきます。例えばまったく運動していない人では、「まず1日3,000歩歩いてみましょう」とします。この際、目標は具体的に、数値化したものが望ましいでしょう。そして患者さんにはかならず記録をつけてもらうようにしています。たとえ目標が達成できなくても、記録をつけはじめたということについてまず褒めます。とにかく、できないことを責めるのではなく、できたことを褒める、という姿勢です。投薬の面でも、できるだけ負担のないようにし、例えば軽症で連日の投薬に抵抗がある患者さんには、週1回の製剤からはじめたりしています。なお、認知機能やADLが低下している場合でも、著明な高血糖は避ける必要があります。Q1で述べた内容を、家族・介護者に指導します。 1)Yamaoka T, et al. Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2017;54:349-355.2)Tominaga M, et al. Diabetes Care. 1999;22:920-924.

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統合失調症患者のADHD有病率

 英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのI. Arican氏らは、統合失調症患者のコホートにおける、小児期および成人の注意欠如多動症(ADHD)症状の頻度について調査を行った。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2018年8月13日号の報告。統合失調症患者ではADHD症状の有病率が高いことが示唆された これまでのエビデンスを評価するため、システマティックレビューを実施した。ICD-10に基づき統合失調症と診断された126例を対象に、成人および小児期のADHD症状を調査するため、2つの自己報告アンケートを用いた。 統合失調症患者のADHD症状の頻度について主な調査結果は以下のとおり。・5件の研究がシステマティックレビューに含まれた。・統合失調症患者における小児期ADHDの有病率は17~57%、成人ADHDの有病率は10~47%であった。・本コホート内において、小児期または成人期どちらかのADHD症状スクリーニングで陽性だった統合失調症患者の割合は、47%であった。・小児期および成人のADHD症状がどちらも報告された統合失調症患者の割合は、23%であった。 著者らは「一般集団と比較し、統合失調症患者ではADHD症状の有病率が高いことが示唆された。統合失調症患者のサブグループにおいて、臨床評価や治療検討の改善を考慮することが重要である」としている。

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