サイト内検索|page:283

検索結果 合計:10329件 表示位置:5641 - 5660

5641.

BVS vs.DES、30日・1年時評価は?/Lancet

 拡大患者集団において、最適化された手技で留置された生体吸収性スキャフォールド(BVS)は金属製薬剤溶出ステント(DES)と比較して、30日時点と1年時点の標的病変不全および狭心症の発生について非劣性であることが示された。米国・コロンビア大学医療センターのGregg W. Stone氏らによる無作為化試験「ABSORB IV試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年9月24日号に掲載された。先行研究で、BVSはDESよりも有害事象の発現頻度が多いことが示されていたが、1件の無作為化試験で狭心症の頻度がBVS群で低下したことが報告されていた。しかしながら、それら初期に行われた試験は、マスキングがされておらず、スキャフォールドにとって至適とされるサイズよりも小さい病変が登録された頻度が高く、留置テクニックは未熟であり、さらにBVSがより適しているのではと目されていた心筋梗塞の患者は除外されていた。安定性CAD/ACS患者を登録し、Absorb vs.Xienceの標的病変不全発生を追跡評価 ABSORB IV試験は、5ヵ国(米国、ドイツ、オーストラリア、シンガポール、カナダ)147病院で、安定性冠動脈疾患(CAD)または急性冠症候群(ACS)の18歳以上の患者を登録して行われた多施設共同の実対照盲検化無作為化試験であった。 登録された患者は、ポリマー・エベロリムス溶出BVS(Absorb)、またはコバルトクロム合金製・エベロリムス溶出ステント(EES;Xience)の留置を受ける群に、無作為に1対1の割合で割り付けられた。無作為化は、糖尿病の状態、先行研究のABSORB III試験における適格性、試験地による層別化も行われた。患者と臨床評価者は無作為化に対してマスキングされた。 主要評価項目は、30日時点の標的病変不全(心臓死、標的血管関連の心筋梗塞、虚血による標的病変の血行再建)の発生で、非劣性マージンはリスク差で2.9%とした(intention-to-treat解析)。主要評価項目の30日時点、また1年時点もAbsorbの非劣性を確認 2014年8月15日~2017年3月31日に1万8,722例が試験適格性についてスクリーニングを受け、2,604例が登録された。 BVS群に1,296例が、EES群に1,308例が割り付けられ、30日時点のフォローアップデータを入手できたのはそれぞれ1,288例、1,303例、1年時点は1,254例、1,272例であった。また、ベースラインでのバイオマーカー陽性ACS患者は622/2,602例(24%)、微小血管(2.25mm未満)の病変例は78/2,893例(3%)であった(中央検査室での血管造影画像解析による)。 30日時点の標的病変不全発生は、BVS群64例(5.0%)、EES群48例(3.7%)であった(群間差:1.3%、97.5%信頼上限:2.89、片側検定による非劣性のp=0.0244)。また、1年時点の標的病変不全発生は、BVS群98例(7.8%)、EES群82例(6.4%)であった(群間差:1.4%、97.5%信頼上限:3.4、片側検定による非劣性のp=0.0006)。 1年時点で中央イベント委員会が判定した狭心症の発生は、BVS群270例(20.3%)、EES群274例(20.5%)であった(群間差:-0.3%、95%信頼区間[CI]:-3.4~2.9、片側検定による非劣性のp=0.0008、両側検定による優越性のp=0.8603)。1年間に発生したデバイス血栓症は、BVS群9例(0.7%)、EES群4例(0.3%)であった(p=0.1586)。

5642.

うつ病に対するアリピプラゾール増強療法の実臨床における有効性と安全性

 増強療法は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の適切な用量で十分な治療反応を有するうつ病患者に対する治療選択肢であるが、日々の実臨床における適用についてはあまり知られていない。昭和大学の上島 国利氏らは、実臨床において、従来の抗うつ薬治療で効果不十分な日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール増強療法の有効性および安全性について、プロスペクティブ多施設観察研究を実施した。Current medical research and opinion誌オンライン版2018年9月12日号の報告。 主要評価項目は、ベースラインから試験終了までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)日本語版の総スコア平均変化量とした。有害事象のモニタリングにより、安全性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・安全性評価対象患者は1,103例、有効性評価対象患者は1,090例であった。・試験終了時のMADRS総スコアの平均変化量は、-14.9±12.3であった(ベースライン比較:p<0.001)。・寛解率は、6ヵ月目の34.5%から12ヵ月目の43.3%に上昇し、継続治療のさらなる有効性が示唆された。・アリピプラゾール増強療法の有効性には、主要な抗うつ薬(パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ミルタザピン、エスシタロプラム)のタイプによる変化が認められなかった。・寛解達成の可能性を高める要因は、ベースライン時のMADRS総スコア33ポイント未満、うつ病エピソードからアリピプラゾール治療開始までの期間176日未満であった。・1つ以上の有害事象を経験した患者の割合は24.8%であったが、新たな安全性の問題は検出されなかった。 著者らは「寛解達成に関連する要因を考慮すると、実臨床での、うつ病または抑うつ症状を有する日本人患者に対するアリピプラゾール増強療法は、有効かつ安全であると考えられる」としている。■関連記事アリピプラゾール増強が有効な治療抵抗性うつ病患者の3つの特徴SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較治療抵抗性うつ病、抗うつ薬併用 vs. 抗精神病薬増強

5643.

第1回 痛みの概説【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第1回 痛みの概説痛みは、古来より病気の兆候の中でも最も多く、医療・医学の原点です。今日でも人類を苦しめている大きな病気因子でもあります。この痛みを意味する英語の“Pain”はラテン語のPoena、ギリシャ語のPoineより由来しております。元来はPenalty あるいはPunishmentを意味しておりました。処罰の1つの方法として、痛みを受けさせられることは、昔からごく自然になされていたことと推察されます。このように、痛みは人類の誕生とともに歩んできたにもかかわらず、現在においても感覚としての「痛み」をなかなか科学的な研究対象として取り上げにくいのが実態です。その原因の1つには、聴覚や視覚など他の感覚と異なって、複数の人が痛みを同時に同程度に共有することが不可能であることが挙げられております。そのために痛みを客観的に把握することがきわめて困難であります。米国では、2001~2010年までを「痛みの10年」として、痛みの研究や治療に膨大な国家予算を費やし、痛み患者への対策を検討しました。これは、ともすれば痛みを口実に「怠惰さの隠れ蓑にしているのではないか」との世間の目を気にしている痛みの患者への救いであるとともに、痛み患者の就労不能や意欲低下、また、その看護などによる年間の経済的損失が米国ではおよそ8兆円にのぼるとの試算に向け、この深刻な問題に対する政策でもありました。国際疼痛学会(IASP)は、痛みとは「実際の組織損傷、あるいは潜在的な組織損傷と関連した、または、このような組織損傷と関連して述べられる不快な感覚的・情動的体験」と定義しています。しかしながら、この定義からしても痛みの実体を認識することは難しいのです。むしろ痛みを機序別による分類から考えるほうが、わかりやすいかもしれません。それでは、痛みの発生する原因機序別に従って分類してみましょう。侵害受容性疼痛針で刺したり、金鎚で叩いたりしたときに感じる痛みです。神経自由終末の侵害受容器に一定以上の痛み刺激が加わることによって、痛みインパルスが発生します。その痛みインパルスが脊髄を経由して上位中枢に伝達され、大脳皮質第2次体性感覚野に到達すると痛みとして認識されます。この痛みインパルスを伝導するのは、Aδ線維とC線維です。Aδ線維は表に示されているように、C線維より太いので伝達速度が速くなります。おそらくは向こう脛を机の角に打ち付けたときに、最初にドンと来る痛みを感じて、その後しばらくしてジーンとするいやな痛みを感じたことを経験されたことがあるでしょう。最初の痛みがAδ線維経由の痛み(1次痛)で、その後がC線維経由の痛み(2次痛)です。がんによる疼痛も侵害受容性疼痛と考えられ、がん細胞が神経末端を刺激することによって痛みが生じます。表 侵害受容性疼痛の種類・伝導速度・主な受容器画像を拡大する神経障害性疼痛帯状疱疹後神経痛(PHN)に代表される痛みです。帯状疱疹ウイルスによって、神経線維そのものが破壊される結果により、神経自由終末ではなく異所性に痛みインパルスが発生するために、痛みとして感じます。触覚などのインパルスを伝達する太い神経線維(Aβ)が減少して、代わりに痛み感覚を伝達する細い神経線維(C線維)に置き換わるために、触覚も痛みとして感じます。本来の痛み刺激ではない、筆などによる柔らかい刺激を痛みとして感じるアロディニアの症状が見られます。心因性疼痛(非器質性疼痛)痛みが長く持続すると、抑うつなどの心因的症状が進展して、それが痛みをさらに増悪することになります。また、いやなことが続くと身体のどこかに痛みを感じる「身体表現性疼痛」と言われる非器質的な疼痛が現れることがあります。このように、最初から心因性(非器質性)に痛みを感じることもあります。現代では、この「心因性疼痛」もかなりの頻度で見られるようです。このように、臨床的な痛みの分類として、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛(図)が存在しますが、痛みの開始時には、これらをある程度明確に分類できるでしょう。しかしながら、痛みが長期間持続してくると、これらが1つになってしまうために痛みの治療が著しく困難となります。この意味からも痛みには早期からの治療が必要でありますし、患者さんも我慢すべきではありません。図 臨床的な痛みの分類の概念*画面をクリックして動画を視聴ください1)Erlanger J,Gasser HS. Electrical signs of nervous activity.Philadelphia;University of Pennsylvania Press:1937.2)Burgess PR, Perl ER, Iggo A(ed). Somatosensory system. New York;Springer:1973.p.29-78.3)花岡一雄、ほか. 現代鍼灸学. 2005:5;59-68.4)河谷正仁 編集. 痛み研究のアプローチ. 新興交易医書出版部;2006.p.15-18.5)花岡一雄. 東京都医師会雑誌.2007:60;6-10.今後の掲載予定侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛、急性痛と慢性痛、痛みの悪循環などを総論的に解説後、各論として全身、頭頸部、胸部、腹部など部位別にさらに詳しくレクチャーしていきますのでご期待ください。次回は、「急性痛と慢性痛」について説明します。

5644.

双極性障害治療における新規非定型抗精神病薬の薬理学的および臨床的プロファイル

 双極性障害の有病率は、65歳以上の高齢成人では変化しており、コミュニティ住民の1%、入院患者の8~10%に及ぶといわれている。リチウムやバルプロ酸を含む古典的な薬剤は、最近のランダム化比較試験(RCT)で示唆されているように、有意な抗操作用を有するが、高齢者の双極性障害治療においては、非定型抗精神病薬の使用が注目されている。新規非定型抗精神病薬は、一般的な成人双極性障害患者に対する忍容性および有効性について関心が高まっている。カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のAkshya Vasudev氏らは、高齢双極性障害患者に対する新規非定型抗精神病薬の有効性および忍容性について、システマティックレビューを行った。Drugs & Aging誌オンライン版2018年9月6日号の報告。 MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、コクランライブラリー電子データベースを用いて、システマティックに検索を行った。65歳超の高齢者における任意の双極性障害エピソード(躁病エピソード、うつ病エピソード、混合エピソードを含む急性期または維持期)の治療に対し、2002年以降に米国FDAで承認された新規非定型抗精神病薬(ブレクスピプラゾール、cariprazine、lurasidone、iloperidone、アセナピン、パリペリドン、アリピプラゾール)をプラセボまたは他剤と比較したRCTを特定しようと試みた。しかし、調査した薬剤のいずれについてもRCTデータを見つけられなかったため、調査基準を変更し、55歳以上の研究および事後解析研究を含めた。 主な結果は以下のとおり。・lurasidoneに関する2つの事後解析研究では、高齢双極性障害患者の急性期および維持期の治療において、合理的な安全性および有効性プロファイルが示唆されたが、薬理学的データは認められなかった。・経口アセナピンおよびアリピプラゾールの追加療法に関するオープンラベル試験のデータでは、両剤ともに高齢双極性障害患者のうつおよび躁症状に対する十分な忍容性および有効性が示唆された。したがって、これら2剤に関するRCTを実施することは急務である。・高齢双極性障害患者にブレクスピプラゾール、cariprazine、iloperidone、パリペリドンを使用した研究は、見つからなかった。■関連記事双極性障害に対するアリピプラゾールの評価~メタ解析双極性障害の補助治療オプションに関する情報のアップデート双極性障害、リチウムは最良の選択か

5645.

急性心筋梗塞、発症後早期のウエアラブル除細動器の効果/NEJM

 心筋梗塞(MI)を発症してから間もない駆出分画率35%以下の患者において、着用型自動除細動器(wearable cardioverter-defibrillator:WCD)の使用は、非使用者と比較して主要評価項目の90日時点の不整脈死リスクは有意に低下しなかった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJeffrey E. Olgin氏らが、2,302例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年9月27日号で発表した。駆出分画率が低下したMI後の患者において突然死は高率に認められるが、植込み型除細動器は、発症後40~90日間は禁忌とされている。研究グループは、このハイリスク期間中の突然死発生をWCDが低減するのか検討した。ガイドライン推奨治療のみ、ガイドライン推奨治療+着用型自動除細動器を比較 研究グループは2008年7月~2017年4月に、米国(76地点)、ポーランド(24)、ドイツ(6)、ハンガリー(2)で、急性MIを発症し、駆出分画率が35%以下の患者2,302例を登録・包含した。退院7日後に無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはWCD+ガイドライン推奨治療を(デバイス群、1,524例)、もう一方にはガイドライン推奨治療のみを行った(対照群、778例)。 主要評価項目は、90日時点の突然死または心室頻脈性不整脈による死亡(不整脈死)とした。副次評価項目は、全死因死亡、非不整脈死などだった。不整脈死発生率、デバイス群1.6%、対照群2.4%で有意差なし 被験者の平均年齢はデバイス群60.9±12.6歳、対照群61.4±12.3歳、男性の割合はそれぞれ72.8%、74.7%、直近の入院前の喫煙者36.9%、35.5%だった。被験者全体において、平均駆出分画率は28%、83.6%が指標入院中に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けていた。 平均フォローアップ期間は84.3±15.6日。デバイス群10例、対照群12例が追跡不能となり、90日時点のバイタル状況が不明だった。 デバイス群のWCD装着時間中央値は、1日当たり18.0時間(四分位範囲:3.8~22.7)だった。 不整脈死の発生率は、デバイス群1.6%、対照群2.4%だった(相対リスク[RR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.37~1.21、p=0.18)。 全死因死亡の発生率は、デバイス群3.1%、対照群4.9%だった(同:0.64、0.43~0.98、補正前p=0.04)。非不整脈死の発生率はそれぞれ1.4%、2.2%だった(同:0.63、0.33~1.19、補正前p=0.15)。 デバイス群で死亡した48例のうち、死亡時にデバイスを装着していたのは12例だった。また、デバイス群で適切な電気ショックを受けたのは20例(1.3%)、不適切な電気ショックを受けたのは9例(0.6%)だった。

5646.

医師による起業の実際を紹介!【医師のためのお金の話】第13回

起業のルールが劇的に変わった!こんにちは、自由気ままな整形外科医です。前2回は、チャンスがあれば医師が起業にチャレンジすることは理に適っていること、および実際にどのようなツールを使用すればよいのかをお話ししました。しかし、理論的なことはわかったけど、実際に展開している新規ビジネスはどんな感じなのかな? そんなことを思っている方が、多いのではないでしょうか。今回は、私の身近にいる起業家医師の事例をご紹介したいと思います。事例1 株式会社encounterhttp://encounter.skr.jp業務内容:スポーツ・運動器に関するセミナー運営【事業内容】肩関節専門の勤務医が起業したサービスです。スポーツ選手を治療していくためには、トレーナーなど医療従事者以外との連携が必要です。そういった人達と交流する機会を増やし、院内のスタッフが学べる環境を整備するためには、自分たちの知りたい内容のセミナーを自ら開催して、誰もが参加できるようにすることが近道だと考えたそうです。そして、自分の立ち位置が変わっても、継続してセミナーを開催していけるように会社を起業しました。【内部の仕組み】スタッフとの連絡手段や、どのように時間を捻出しているのかといった実際の内部の仕組みは、どうなっているのでしょうか? スタッフのほとんどは勤務先の職員で、連絡はFacebookの非公開グループ内で行っているそうです。Facebookの非公開グループは、無料のプラットフォームなので、利用しない手はありません。週末の業務時間外に、月1回のペースでセミナーを開催しています。講師はスタッフが聴講を希望する方に依頼します。病院施設を使用し、聴講したいスタッフが手伝ってくれるため、経費が抑えられているそうです。スタッフの知識も増え、ネットワークも広がってきているため、勤務先への相乗効果も期待できることがポイントですね。事例2 株式会社クオトミーhttps://www.quotomy.co.jp業務内容:医療研究者支援事業【事業内容】脊椎外科専門の勤務医が起業したサ-ビスです。わが国の科学研究の地位は急速に低下していますが、医療分野でも同様のことが起きています。起業した医師が、米国へ留学した際、お金や地位を目的とした外発的モチベーション主導の医療研究を取り巻くエコシステムが、上手く機能していると感じたそうです。米国に比べて人的・金銭的リソ-スが潤沢でないわが国では、個人の内発的モチベーションを高める手法で、医療研究活動を盛り上げることができるのではないか? このような仮説を立て、新しい知見や出会いを医師同士が共有する場として“Quotomy”をオンライン上に構築しました。【内部の仕組み】ほとんどすべての業務を外部委託されているそうです。ミーティングで顔を合わせる必要があるときは、都心にある職場(病院)近くに来てもらうことで移動時間を減らしています。これらは、勤務医であるハンディを軽減する工夫ですね。検討事項を自分のところに留めてしまうと、事業がまったく進まなくなるので、とにかく判断をして前に進めることを心掛けています。また、相談できるチャネルを増やすことに注力しているとのことです。事例3 株式会社ジャパン・バイオメディカルhttps://www.japan-biomedical.jp業務内容:細胞培養用添加剤であるウシ血清のオリジナル製品の製造販売【事業内容】循環器専門医と再生医療認定医のダブルライセンスを持つ内科医が、保有している特許を利用するために起業した会社です。ユーザーが自分自身である点が興味深いです。本社は北海道十勝にあり、現地の銀行からの問い合わせも多いとのことです。自分はもっぱら広告塔となり、医師・研究者であることを最大限アピールして、医療・研究系企業からの出資を受けています。【内部の仕組み】親会社へ業務を完全に委託しているため、専属従業員はいないそうです。親会社の部長を代表取締役にすることで、業務委託がスムーズになっています。メール、LINE、Slackでの業務連絡に加えて、ほぼ毎朝1時間はSkypeで打ち合わせをしているそうです。ビジネスアイデアは日常生活に埋まっている!例示した3つの新規ビジネスは、いずれも日々の臨床で感じたことや、研究での気付きや成果を具現化しています。ビジネスの仕組みや回し方は、ある程度定型化することができますが、ビジネスアイデアをひねりだすことは容易ではありません。ロジカルに収益から逆算してビジネスを構築できれば理想的なのですが、実際の現場でこのような芸当ができることはほとんどありません。今回ご紹介した事例や私自身の経験でも、日常診療や研究の際のちょっとした気付きが、ビジネスアイデアを得るきっかけとなっています。私は、日常生活や研究の中にこそ、ビジネスアイデアが埋まっていると思います。当たり前過ぎて見過ごしてしまっていることに気付くのは容易ではありません。漫然と暮らしているだけでは、これらのビジネスアイデアに気付くことはないでしょう。他人には見えないチャンスを見つけるためには、能動的に周囲を観察し続ける必要があります。「こんなモノがあればいいな」「こんなサービスがあればいいな」といった漠然とした思いを、ビジネスのネタになるのではないのか?と1度はシミュレーションしてみるのがよいと思います。もちろん、ほとんどのアイデアは使い物にならず、お蔵入りとなりますが、このような習慣を継続することで、ひらめきを得ることができます。私の場合、これはイケそうだ!というアイデアに遭遇するのは、半年~1年に1度程度です。常にビジネスのネタを探して周囲を観察しているにもかかわらず、実際にアイデアを得るのは、この程度の頻度しかありません。しかし、何事も始めなければ何も変わりません。あなたも明日からの診療、研究、日常生活でビジネスのタネを探してみませんか?

5647.

受刑者の皮膚病治療に遠隔診療が有用

 一般集団と比較して受刑者の皮膚疾患の有病率は高いという。その受刑者の皮膚病変の診断と治療にあたっては、皮膚に対する専門的なアドバイスが必要である。刑務所内の8つの医療施設と2つの皮膚科専門病院の皮膚科医が受刑者のために遠隔診療を行ったところ、治療計画を完了した患者割合が向上した。このシステムを用いて遠隔診療を行ったフランス・URC Eco Ile-de-FranceのKevin Zarca氏らによると「移動のコストや予約のキャンセルの割合を考慮すると、対面診療と比較し優れた介入であり、医師が受け入れ可能な診療である」ということが示された。PLOS ONE誌オンライン版2018年9月24日号掲載の報告。 研究グループは、受刑者のための皮膚科遠隔診療の有効性と費用を評価する目的で、遠隔診療ネットワークの情報システムにより収集されたデータを用いて、後ろ向きコホート研究を行った。遠隔医療評価(MAST:Model for ASsessment of Telemedicine)モデルを用いて解析し、皮膚病変の治療計画が完了した患者の割合、技術的な問題の割合、画像の質、投資と運営経費、および専門家の満足度などについて多元的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・450例(平均年齢34.2歳、男性90%)に対して511件のリクエストがあった。・遠隔診療ソフトを立ち上げてリクエストを検証するのに要した時間は、リクエスト全体の50%で7分未満、85%では30分未満であった。・遠隔診療を用いた場合、82%の患者が治療計画を完了し、2.9%はのちに対面診療または入院を必要とした。これと比較し、遠隔診療を利用しなかった場合、治療計画を完了した患者割合は35%であった。・最も多くみられた皮膚病変は、ざ瘡(22%)とアトピー性皮膚炎(18%)であった。・1件の治療計画が完了するのにかかった平均費用は、遠隔診療で184ユーロ、遠隔診療なしの場合は315ユーロであった。・遠隔診療は、対応したすべての医師(9人)に良好に受け入れられ、引き続き遠隔診療を行う意志が示された。

5648.

第4回 エイエフ(AF)診断できます?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第4回:エイエフ(AF)診断できます?“キング(King)・オブ・不整脈は何?”と聞かれたら、ボクは「心房細動(AF)」と即答します。臨床的にも心不全や脳梗塞など大事な側面を持ちますが、スタートは必ず心電図から。エイエフと正しく診断するための条件をDr.ヒロがレクチャーしましょう。症例提示55歳。男性。ここ数年、健診で血圧および血糖高値を指摘されるも受診せず。起床時より「胸全体がドンドン押されるような、常に走った後のような感じ」を自覚。改善しないため外来受診。血圧147/92mmHg、脈拍174/分、酸素飽和度98%。来院時の心電図を示す(図1)。(図1)来院時心電図画像を拡大する【問題1】心電図診断として正しいものはどれか。1)洞(性)不整脈2)洞(性)頻脈3)心房期外収縮連発(ショートラン)4)発作性上室性頻拍5)心房細動解答はこちら 5)解説はこちら “不整脈の代表選手AFは絶対性不整脈でf波あり”1)×:「洞調律」も呼吸などの影響でR-R間隔が不整にはなり得ます。しかし、洞調律の“証”たるP波がなければこう呼べません。2)×:頻脈(“検脈法”より168/分)ではありますが、1)と同じく洞性P波が欠如しています。3)×:連発・ショートラン(3連以上)が頻発して5)の心房細動と紛らわしいケースもありますが、期外収縮も基本調律が洞調律であることを前提とするため、今回は該当しません。4)×:いわゆる「narrow QRS tachycardia」を呈する代表格ですが、R-R間隔が整となる例が大半です。5)○:R-R間隔不整(絶対性不整脈)、洞性P波がなく細動波(f波)あり、頻脈の3条件を満たす典型的な心房細動です。発症様式から「発作性」が疑われます。今回の中年男性が訴える胸部症状は、医学的には「動悸」の範疇ですかね。一言で動悸と言っても、患者さんの訴えは本当に様々です。この方も『胸がドンドン』、『走った後の感じ』と、表現がユニークです。そして、選択肢には不整脈らしき病名がたくさん。『トホホ…苦手じゃん(泣)』って言わないで。「初心者、非専門医でも自分で読めた方がいいよ」とボクが伝える不整脈は、なんと2つ!一つは「期外収縮」。そしてもう一つが、今回のテーマ「心房細動(AF)」です。この2つだけで、ふだん目にする不整脈の5-6割はいけるんじゃないかな。特に心房細動は、持続性不整脈の中では最多で、脳梗塞や心不全の合併など、臨床的にも重要性が高いと思います。ちまたでは“AF(Atrial Fibrillation)”なんて呼ばれています。“AFの3つの診断条件をおさえる!”AFの心電図診断はカンタンです。特にボクの語呂合わせの通りに心電図を読んでくれる人にとってはね(第1回参照)。…え?なぜって?それは、はじめの“3つのR”の確認だけで診断できるからです。ですから、慣れたら“いの一番”に指摘可能な不整脈なわけです。最初はR-R間隔。AFには“絶対性不整脈(absolute arrhythmia/arrhythmia absoluta)”という別称があり、“筋金入り”の不整脈なんです。だから、R-R間隔がテンデンバラバラ、どれ一つとっても同じことはありません。どの誘導でもいいですが、たとえば心電図(図1)のI誘導はどうでしょう?真ん中へんはQRS波が密集していて、逆に周辺は割合空いていますよね。肩の力を抜き、用紙から目を離して俯瞰するのがコツ。R-R間隔の絶対不整は、私たちの目に“訴えかける”モノがあるからです。2つ目はRate(心拍数)。自動計測を“カンニング”すると「169/分」です。病歴の脈拍数も「174/分」です! 正常な「50~100/分」から明らかに逸脱しています。100/分オーバーは「頻脈」といいますよ。AFは頻脈性不整脈の代表です。初診(≒未治療)で心臓があまり傷んでない(≒病気がない)人や若めの人では、安静時とは思えない頻脈でやってくるのがテッパンです。『走った後の感じがずっと続いている』という言い方もたしかに、たしかに。ただ、患者さんによっては、“レート・コントロール(心拍数管理)”のために薬が使われていたり、高齢者ならそんな薬を使わなくとも房室伝導能低下のため、頻脈にならないことがしばしばです。だから、AFの診断に「頻脈」はマストではないんです。最後の3つ目のRは…そうRhythm(調律)です。だいぶ定着したかな、“イチニエフ(またはニアル)法”(第2回参照)の出番です。R-R間隔が少し広がった部分で確認するのがミソ。イチニエフ・ブイシゴロで陽性、アールで陰性を満たす洞性P波がないことがわかるでしょう。つまり洞調律じゃないんです。以上3点、R-R間隔、心拍数、調律のいずれもオカシイわけですから、こりゃ決定的な「不整脈」です。“心房細動の決定的証拠-心房の痙攣を表す小波”こんな時、最後の“ダメ押し”で見て欲しいのはV1誘導。これがボクのオススメ。心電図(図1)から抜き出してみました(図2)。(図2)細動波(f波)を見るならV1誘導!画像を拡大する注目すべきはQRS波の間をつなぐ基線。ここは本来フラットで、あってもP波くらいのもんなんです。でも、このV1誘導はグニャグニャンでしょ?英語で“カオス”(chaotic)と表現されますが、まさに“混沌”。とらえどころのないランダムな小波こそ、AFたる何よりのアカシです!この波形を「細動波」ないし「f波」といいます。fは“fibrillation(細動)”ってことで、心房筋が高頻度で痙攣している様子を表しています。AFが慢性化して長時間が経過すると、f波は徐々に縮小して見づらくなっていきますが、AFが心房“細動”たるゆえんは、この小波の存在なのです。余談ですが、心電図がこの世に生まれたのが1903年。それから5年後に若き天才Sir.Thomas Lewis(1881-1945)がこの「f波」の存在を銘記し、翌年(1909年)に臨床概念として「心房細動」を確立したとされます。それを思うと、AFって非常に由緒ある不整脈でしょ。話をf波に戻しましょう。V1以外に「下壁誘導」、すなわちニサンエフ(II、III、aVF)もf波を見やすい誘導ですので、セカンド・チョイス的に知っときましょう。さぁ、最後にまとめます。心房細動(AF)の心電図診断(1)R-R間隔の絶対不整(絶対性不整脈)(2)頻脈なら典型的(必須ではない)(3)洞性P波の欠如と細動波(f波)の存在今回の男性の心電図(図1)は、この3条件をバッチリ満たす「AF」です。これが動悸の正体でした!もう、皆さんは自信を持って診断できますね?Take-home Message1)AFは“3つのR”(レーサー・チェック)だけで診断できる!2)圧倒的なR-R間隔不整とV1誘導で細動波(f波)を見つけたら、「AF」と言ってほぼ間違いなし。【古都のこと~実相院門跡その2~】実相院門跡は庭園もいいです。市民も参加して作庭された『こころのお庭』には、「床みどり」とは別の趣があります。日本国土をイメージした苔島を囲む波型をした3つの杉皮オブジェが石庭に映えていました。遠くに望む山景と澄みきった青空。しばしのタイムスリップ感覚が実に心地よかったです。

5649.

アレクチニブ、ALK陽性肺がんCNS病変への効果(ALEX)/Ann Oncol

 アレクチニブによるALK陽性肺がん1次治療の第III相試験ALEXにおける、CNS病変の有効性の中間解析が、Annals of Oncology誌オンライン版2018年9月12日号で発表された。・対象:1次治療のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)・試験薬:アレクチニブ600mg/日、2週ごと・対照薬:クリゾチニブ250mg/日、2週ごと・評価項目:無増悪生存期間(PFS)、CNS病変の奏効率(CNS ORR)、CNS病変の無増悪期間(CNS TTP) 主な結果は以下のとおり。・330例中122例がベースライン時にCNS病変(独立放射線審査委員会評価)を有しており、そのうち測定可能病変は43例。46例が放射線療法を受けていた。・ベースラインCNS病変あり患者のPFSは、アレクチニブ群で未達、クリゾチニブ群では7.4ヵ月(HR:0.40、p<0.0001)。CNS病変なし患者のPFSは、アレクチニブ群で未達、クリゾチニブ群では14.8ヵ月(HR:0.51、p<0.0024)であり、CNS病変の有無に関わらずアレクチニブ群で有意に改善していた。・CNS TTPは、ベースラインCNS病変なし患者においても(cause specific HR:0.18、p<0.0001)、CNS病変あり患者においても(cause specific HR:0.22、p<0.0001)と、クリゾチニブ群に比べアレクチニブ群で有意に長かった。・放射線療法を受けた患者のCNS ORRは、アレクチニブ群85.7%、クリゾチニブ群71.4%。受けていない患者のCNS ORRは、アレクチニブ群78.6%、クリゾチニブ群40.0%であった。 1次治療のALK陽性肺がんにおいて、クリゾチニブに比べ、アレクチニブはCNS病変に優れた有効性を示すと共に、CNS病変の進行を遅らせることが示された。

5650.

ウニのトゲが刺さったら…【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第124回

ウニのトゲが刺さったら… いらすとやより使用 私は海産物を生で食べることができないので、おすし屋さんにはほとんど行きません。なので、大トロだとかウニだとか、食べたことも食べようとも思わないのです。「人生の半分くらい損してるよ!」とよく言われます。ほっといてくれ。 Haddad Junior V.Observation of initial clinical manifestations and repercussions from the treatment of 314 human injuries caused by black sea urchins (Echinometra lucunter) on the southeastern Brazilian coast.Rev Soc Bras Med Trop. 2012;45:390-392.さて、今日紹介する論文は、ウニ外傷の論文です。Echinometra属ってウニの学名なんですね、初めて知りました。ウニはトゲがありますよね。あれを踏んづけてしまったり、触ったりして、痛くなって病院を受診した314人についてまとめた報告です。それにしても、ウニ外傷を300人以上集めたこの著者って、一体何者…。著者の施設では、わずか2年間で314人のウニ外傷患者さんが来院したとのこと。なかなか漁業が盛んなエリアのようです。ほとんどの患者さんのウニのトゲが用手的に抜けたので、炎症や浮腫を起こした症例はわずか5%だったそうです。もう少しウニを触ったときの状況なんかを表でまとめてくれるとよかったのですが、論文を書く時間がなかったのか、ウニ外傷の臨床的特徴はあまりまとめられていませんでした。さて、ウニを踏んだらどうするか。一番重要なのは、トゲを抜くことです。ピンセットを用いて、皮膚から飛び出している部分を引き抜きます。トゲが途中で折れてしまうと、残ったトゲが肉芽腫をつくることがあるため注意してください。裏技として、脱毛ワックスを使うという方法もあります。トゲが刺さった部分に脱毛ワックスを塗って、乾いたらベリベリと剥がすのです。ワックスと一緒にトゲが抜けます。ちなみに、関節にウニのトゲが入ると関節炎1)を起こすことがあるので、とくに手を突き刺した場合には指や手の関節に及んでいないかチェックする必要があるそうです。1)Mahon N, et al. Hand Surg. 2014;19:261-264.

5651.

デュルバルマブ、切除不能StageIII NSCLCのOS改善(PACIFIC)/NEJM

 切除不能StageIII 非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療はプラチナ併用化学療法と放射線療法の同時治療である(化学放射線同時療法、以下CCRT)。多くの研究が行われてきたものの、生存アウトカムは改善せず、5年生存率はわずか15~30%である。一方、前臨床試験において、化学放射線療法が腫瘍細胞のPD-L1の発現を増加することが示され、化学放射線療法後のPD-L1阻害薬の可能性が期待されていた。 そのようななか、切除不能StageIII NSCLCを対象にした、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)によるCCRT維持療法を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験PACIFICが行われた。すでに1つ目の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)が、昨年(2017年)発表され、デュルバルマブがPFSを有意に改善することが示された。今回2つ目の主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な改善が、NEJM誌2018年9月25日号で発表された。・対象:化学放射線同時併用療法(CRT)後に進行していない切除不能StageIII NSCLC患者・試験薬:デュルバルマブ10mg/kg、2週ごと12ヵ月・対照薬:プラセボ、2週ごと12ヵ月・評価項目:[主要評価項目]盲検独立中央評価委員会判定によるPFS、OS[副次評価項目]死亡または遠隔転移までの時間、2回目の進行までに時間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・713例が登録され、709例が介入試験の対象となった。そのうち、デュルバルマブ群に473例、プラセボ群に236例が割り付けられた。・追跡期間の中央値は25.2ヵ月(0.2~43.1)であった。・OS中央値は、デュルバルマブ群は未達、プラセボ群は28.7ヵ月と、デュルバルマブ群で有意に改善した(HR:0.68、99.73%CI:0.47~0.997、p=0.0025)。・24ヵ月OS率はデュルバルマブ群66.3%、プラセボ群55.6%であった。・PFSはデュルバルマブ群17.2ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月と、初回報告同様デュルバルマブ群で改善(HR:0.51、95%CI:0.41~0.63)していた。(初回報告のPFS:デュルバルマブ群16.8ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月)・副次評価項目である死亡または遠隔転移までの時間(TTDM)はデュルバルマブ群28.3ヵ月、プラセボ群16.2ヵ月とデュルバルマブ群で長かった(HR:0.53、95%CI:0.41~0.68)。・Grade3~4の有害事象はデュルバルマブ群の30.5%、プラセボ群の26.1%で発現した。治療中止に至った有害事象で最も頻度が高かったのは肺臓炎で、デュルバルマブ群では4.8%、プラセボ群では2.6%であった。 デュルバルマブはプラセボと比較し、有意に切除不能StageIII NSCLC 患者のOSを延長した。 なお、この試験結果は、同時に第19回世界肺癌学会(WCLC2018)で発表された。■参考PACIFIC試験(N Engl J Med. 2017)PACIFIC試験(Clinical Trials.gov)■関連記事デュルバルマブ、StageIII 肺がんCCRT患者のOSを改善/WCLC2018durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017

5652.

未治療ALK陽性肺がん、brigatinib vs.クリゾチニブ/NEJM

 ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)阻害薬未治療で、局所進行/転移を有するALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対し、開発中の次世代型ALK阻害薬brigatinibはクリゾチニブと比較し、無増悪生存期間を有意に延長したことが示された。米国・コロラド大学のD. Ross Camidge氏らが、約280例を対象に行った第III相の非盲検無作為化試験「ALTA-1L(ALK in Lung Cancer Trial of Brigatinib in 1st Line)試験」の結果で、NEJM誌オンライン版2018年9月25日号で発表した。brigatinibは、クリゾチニブの効果が認められなかったALK陽性NSCLC患者における有効性が確認されていた。 無増悪生存期間、客観的奏効率、頭蓋内病変奏効率などを比較 ALTA-1L試験は、ALK阻害薬未治療で局所進行/転移を有するALK陽性NSCLCの患者275例を対象に行われた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはbrigatinib 180mgを1日1回(導入期間7日間は90mgを1日1回、137例)、もう一方の群にはクリゾチニブ250mgを1日2回(138例)投与した。 主要エンドポイントは、独立評価委員会が盲検下で評価した無増悪生存期間だった。副次エンドポイントは、客観的奏効率や頭蓋内病変奏効率などだった。予測される増悪または死亡イベント件数198件のうち、約50%が発生した時点で、初回中間解析を実施することが事前に計画された。推定12ヵ月無増悪生存率、brigatinib群67%、クリゾチニブ群43% 初回中間解析は、増悪/死亡イベントが99件発生した時点で行われた。同時点における追跡期間中央値は、brigatinib群11.0ヵ月、クリゾチニブ群9.3ヵ月だった。 推定12ヵ月無増悪生存率は、クリゾチニブ群43%に対し、brigatinib群は67%と有意に高率だった(クリゾチニブ群の95%信頼区間[CI]:32~53、brigatinib群:56~75、log-rank検定のp<0.001)。増悪/死亡イベント発生に関するbrigatinib群のクリゾチニブ群に対するハザード比は、0.49(95%CI:0.33~0.74)だった。 確定客観的奏効率は、brigatinib群71%(95%CI:62~78)、クリゾチニブ群60%(同:51~68)だった。測定可能病変のある患者の頭蓋内病変奏効率は、それぞれ78%(同:52~94)、29%(同:11~52)だった。 新たな安全性に関する懸念は認められなかった。

5653.

脂肪が減ると死亡が増える!?:“imaging biomarker”としての新しいCTCAの使い方(解説:中野 明彦 氏)-924

【冠動脈CT:CTCAの現在地】 質問です。皆さんはどんな目的でCTCAをオーダーされますか? 「その胸痛から虚血を否定したい」「冠動脈狭窄を確かめたい」「冠動脈疾患のリスク;冠動脈カルシウムスコア(CCS)が知りたい」「プラークの不安定化を知りたい」「薬剤の効果;プラーク安定化を知りたい」。あるいはもっと高度に「FFR-CTや心筋灌流CTで冠動脈病変の機能性評価をしたい」でしょうか? さらにもう1つ。CTCAの結果、狭窄度が50%以下だったら、その患者さんには今後どのように対処されますか? CTCAは装置がどんどん多列化し解析プログラムも多様化し、その診断精度は向上、臨床応用の範囲は広がり患者さんにも優しい検査へと日進月歩で進化しています。しかし、評価対象の中心が冠動脈の内腔(狭窄度)あるいはプラークであることに変わりはありません。また「中等度リスクを有する症候性症例、あるいは急性冠症候群(ACS)を疑う胸痛についてはECG/enzyme変動のない低~中等度リスクの症例」を適応とする現行のガイドラインがCTCAに期待しているのは、高度狭窄性病変の有無を判定し“今”を切り取ることでしょう。【CTCAでの予後予測は?】 冠動脈病変を有する患者の予後を左右するのは、言うまでもなくACSの発症です。そして命運を決するのは狭窄度ではなくプラークの性状(質)だということもわかってきています。最近はCTCAから得られたプラークで“将来”を予測できるか、という検証結果が集積されつつあります。メタ解析では微小石灰化・低吸収プラーク・陽性リモデリング・ナプキンリングサインで定義されるhigh risk plaque(=不安定プラーク)とACS発症との強い関連が示されました。【CRISP CT studyの描く新機軸】 一方20年も前から、(冠)動脈硬化は炎症性疾患であり、その炎症がACSの引き金となるプラーク破綻を惹起する、と指摘されています。つまりCTCAで検証されている不安定プラークは現在進行中の炎症の「結果」を見ていることになります。これまで炎症のbiomarkerとして高感度CRPや一部のサイトカインが報告されていますが、冠動脈硬化に特異的ではなく、ましてや炎症の局在などわかるはずもありません。 では、その炎症が可視化・定量化できるとしたらどうでしょう。 本研究ではin vitro・ex vivo・in vivoで実証された「血管の炎症が周囲のpreadipocyteの分化・成熟を抑制し、adipocyteの脂肪含有量を減少させる」という事実から、これまで見向きもされなかった冠動脈の外側に着目したのです。通常のプロトコルで撮像されたCTCAを用いて主要冠動脈近位部でのfat attenuation index(FAI)を算出し、炎症のサロゲートマーカーとしました。 3枝間のFAI相関が良好だったため右冠動脈のFAIを中心に解析、4.5~6年間の予後(総死亡・心臓死)との関連が証明されただけでなく、FAIはさらに、古典的冠危険因子・高感度CRP・冠動脈石灰化・high risk plaqueなどとは独立した予後予測因子でした。【CRISP CT studyの歯応え】 ACSの半数は狭窄度50%以下の「病変」から発症すると言われており、したがって冠動脈造影やCTCAでの狭窄度評価からその発症予測は困難です。50%以上の狭窄性病変の有無にかかわらずFAI陽性(cut off値≧-70.1HU)例で心臓死に高いハザード比を示した本試験は、図らずしもそれを裏付けました。たとえ有意な冠動脈病変がなくてもaggressive preventionが必要な症例があり、imaging biomarkerとしてのFAIはその層別化に有用な可能性があります。 本試験は炎症局所でのイベント発生を予測するものではありません。むしろ、3枝のFAIが良好に相関していた事から考えれば、冠疾患症例は冠動脈全体に炎症(pan-vasculitis)が生じうるvulnerable patientとして捉えるべきなのかもしれません。 もちろん、今後の検証が必要な課題もあります。 たとえば、炎症の強い局所でイベントが起こりやすいのかどうか、それを予測できるのかどうか。 あるいは薬剤の介入がどう反映されるのか。折しもPCSK-9阻害薬や抗IL-1βモノクローナル抗体など強力かつ高価な抗動脈硬化薬が登場し、residual riskをどうコントロールするかに注目が集まっています。imaging biomarkerがこうした薬剤の効果判定、on-offのタイミングの見極めに役立つかもしれません。 さらに日常臨床をそのまま当てはめた本研究の解析対象は、50%狭窄以上が14~15%、観察期間内の心臓死が1~2%と結果的にはリスクの高くない症例群でした。これがガイドラインに下支えされたCTCAの現状かもしれませんが、もっとリスクの高い症例、あるいは無症候性の1次予防群だったらどうなのでしょうか? 今後の研究が待たれます。 これまでimaging biomarkerの代表格はcoronary calcium score(CCS)でしたが、残念ながらこれはirreversibleな指標です。おそらくreversibleと考えられるFAIを使ったプロジェクトが順調に進んでいけば、いつかガイドラインが変更される日が来るかもしれません。

5654.

第7回 勘違いしていませんか?実は糖質の多い食品【実践型!食事指導スライド】

第7回 勘違いしていませんか?実は糖質の多い食品医療者向けワンポイント解説「炭水化物抜きダイエット」や「糖質オフ」といった考え方が広まったことで、糖質を控えようと考える患者さんが増えてきました。しかし、炭水化物や糖質について誤解されている方もまだまだ多くいます。炭水化物は、糖質と食物繊維を合わせたものであり、米飯、パン、麺類などの主食以外にも、芋類、果物類、根菜類をはじめとする野菜、調味料、嗜好品、嗜好飲料など多くのものに含まれる栄養素です。炭水化物や糖質を抜いたり控えたりすることに対していろいろな考え方がありますが、糖質量が過多になっている場合、その量を見直すことは必要です。そこで、今回は糖質の“質”ではなく“量”に注目して説明します。厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2015年版)』によると、炭水化物の摂取目標量は、必要摂取エネルギーの50〜65%とされています。1日のカロリーを1,600kcalと設定した場合、800kcal〜1,040kcalの炭水化物を摂取することが推奨され、単純にこれを糖質(4kcal/g)のみで算出すると糖質量は200〜260gとなります。また、『糖尿病食事療法のための食品交換表(第7版)』に基づき、1,600kcal 20単位、食事に占める炭水化物の割合を55%に設定した場合、炭水化物を多く含む食品を示す表1*では9単位が配分されます。これを1単位80kcalとして算出した場合は720kcalとなり、糖質のみで計算すると180g(720kcal÷4kcal/g)となります。ただし、炭水化物は食物繊維も合わせたものを指しますので、食物繊維を考慮すると、糖質量はこれより減らして考える必要があります。「炭水化物量、糖質量を見直しましょう」というお話をすると、多くの方は、炭水化物=米飯、パン、麺類などと捉え、主食を抜くことを意識するのですが、実際の糖質過多の原因は他の食材であることが多いのです。今回は、ごはん一膳に含まれる糖質量と『大丈夫と思いがちだけれど、実は糖質量の多い食材』を比較してみました。果物は果糖をはじめ、糖を多く含む食材です。そのため、甘みを感じる果物は、より糖質を多く含みます。また、トウモロコシや芋、レンコンも思いの外、糖質が多い食材です。野菜ジュースや100%フルーツジュースは、健康のために飲む方が多いですが、意外にも糖質量は多めです。甘くないから大丈夫と思われるせんべい類やヘルシーと言われる春雨スープ、冬の時期に出回るおでんなどに入る練り物なども糖質を多く含む食材です。日常の食生活の中で「主食を必要量より減らそう」とするよりも、まずは、このように糖質が多く含まれ、何気なく食べてしまっている食材を意識しましょう。糖質量の改善につながるだけでなく、主食を減らす負担なども軽減できるため、食事の満足度にもつながっていきます。*:炭水化物のうち、でんぷんを多く含む食品であり、たんぱく質も少し含む。穀物、いも類やその加工食品、かぼちゃなどの野菜、栗や銀杏などの種実類、大豆以外の豆類を含む。1)日本糖尿病学会編・著.糖尿病食事療法のための食品交換表 改定第7版.日本糖尿病協会・文光堂;2013.p16-31.

5655.

第8回 内科クリニックからのクラリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?マイコプラズマ・・・7名百日咳菌・・・6名コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルス・・・3名結核菌・・・2名肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)・・・6名モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)・・・2名インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)・・・1名遷延性の咳嗽 清水直明さん(病院)3週間続く咳嗽であることから、遷延性の咳嗽だと思います。そうなると感染症から始まったとしても最初の原因菌は分からず、ウイルスもしくは非定型菌※による軽い感冒から始まったことも予想されるでしょう。他に、成人であっても百日咳の可能性も高いと思われます。その場合、抗菌薬はクラリスロマイシン(以下、CAM)でよいでしょう。初発がウイルスや非定型菌であったとしても、二次性に細菌感染を起こして急性気管支炎となっているかもしれません。その場合は、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Moraxella catarrhalisなどが原因菌として想定されます。このようなときにグラム染色を行うことができると、抗菌薬選択の参考になります。※非定型菌は一般の細菌とは異なり、βラクタム系抗菌薬が無効で、培養や染色は困難なことが多い。マイコプラズマ、肺炎クラミジア、レジオネラなどがある。結核の可能性も 児玉暁人さん(病院)長引く咳とのことで、マイコプラズマや百日咳菌を疑います。患者背景が年齢しか分かりませんが、見逃すと怖いので念のため結核も考慮します。細菌感染症ではないのでは? 中西剛明さん(薬局)同居家族で最近かかった感染症があるかどうかを確認します。それで思い当たるところがなければ、まず、ウイルスかマイコプラズマを考えます。肺炎の所見もないので、肺炎球菌、インフルエンザやアデノウイルスなどは除外します。百日咳は成人の発症頻度が低いので、流行が確認されていなければ除外します。RSウイルスやコロナウイルス、エコーウイルスあたりはありうると考えます。ただ、咳の続く疾患が感染症とは限らず、ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物(シムビコート®)が処方されているので、この段階では「細菌感染症ではないのでは?」が有力と考えます。Q2 患者さんに何を確認する?薬物相互作用 ふな3さん(薬局)CAMは、重大な相互作用が多い薬剤なので、併用薬を確認します。禁忌ではありませんが、タダラフィル(シアリス®)などは患者さんにとっても話しにくい薬なので、それとなく確認します。喫煙の有無と、アレルギー歴(特にハウスダストなどの通年性アレルギー)についても確認したいです。自覚していないことも考慮  児玉暁人さん(病院)やはり併用薬の確認ですね。スボレキサント錠(ベルソムラ®)やC型肝炎治療薬のアナスプレビルカプセル(スンベプラ®)は、この年齢でも服用している可能性があります。ピロリ菌の除菌など、パック製剤だと本人がCAM服用を自覚していないことも考えられるので、重複投与があるかどうかを確認します。シムビコート®は咳喘息も疑っての処方だと思います。感染性、非感染性のどちらもカバーし、β2刺激薬を配合したシムビコート®は吸入後に症状緩和を実感しやすく、患者さんのQOLに配慮されているのではないでしょうか。過去に喘息の既往はないか、シムビコート®は使い切りで終了なのか気になります。最近の抗菌薬服用歴 キャンプ人さん(病院)アレルギー歴、最近の抗菌薬服用歴、生活歴(ペットなども含める)を確認します。受診するまでの症状確認とACE阻害薬 柏木紀久さん(薬局)この3週間の間に先行して発熱などの感冒症状があったか、ACE阻害薬(副作用に咳嗽がある)の服用、喫煙、胸焼けなどの確認。Q3 抗菌薬の使用で思い浮かんだことは?咳喘息ならば・・・ 清水直明さん(病院)痰のからまない乾性咳嗽であれば、咳喘息の可能性が出てきます。そのために、シムビコート®が併用されていると思われ、それで改善されれば咳喘息の可能性が高くなります。咳喘息に対しては必ずしも抗菌薬が必要とは思いませんが、今の状態では感染症を完全には否定できないので、まずは今回の治療で反応を見たいと医師は考えていると思います。抗菌薬の低感受性に注意 JITHURYOUさん(病院)CAMは、抗菌作用以外の作用もあります。画像上、肺炎はないということですが、呼吸器細菌感染症としては肺炎球菌、インフルエンザ菌を想定しないといけないので、それらの菌に対する抗菌薬の低感受性に注意しなければなりません。さらに溶連菌、Moraxella catarrhalisなども考慮します。抗菌薬の漫然とした投与に注意 わらび餅さん(病院)痰培養は提出されていないようなので、原因菌を特定できるか分かりません。CAM耐性菌も以前より高頻度になっているので、漫然と投与されないように投与は必要最低限を維持することが大切だと思います。再診時の処方が非常に気になります。CAMの用量 柏木紀久さん(薬局)副鼻腔気管支症候群ならCAMは半量での処方もあると思いますが、1週間後の再診で、かつ感染性咳嗽の可能性を考えると400mg/日で構わないと思います。しっかりとした診断を 荒川隆之さん(病院)長引く咳の原因としては、咳喘息や後鼻漏、胃食道逆流、百日咳、結核、心不全、COPD、ACE阻害薬などの薬剤性の咳など多くありますが、抗菌薬が必要なケースは少ないです。もし百日咳であったとしても、感染性は3週間程度でなくなることが多く、1~2カ月程度続く慢性咳嗽に対してむやみに抗菌薬を使うべきではないと考えます。慢性咳嗽の原因の1つに結核があります。ニューキノロン系抗菌薬は結核にも効果があり、症状が少し改善することがありますが、結核は複数の抗菌薬を組み合わせて、長い期間治療が必要な疾患です。そのため、むやみにニューキノロン系抗菌薬を投与すると、少しだけ症状がよくなる、服用が終わると悪くなる、を繰り返し、結核の発見が遅れる可能性が出てくるのです。結核は空気感染しますので、発見が遅れるということは、それだけ他の人にうつしてしまう機会が増えてしまいます。また、結核診断前にニューキノロン系抗菌薬を投与した場合、患者自身の死亡リスクが高まるといった報告もあります(van der Heijden YF, et al. Int J Tuberc Lung Dis 2012;16(9): 1162-1167.)。慢性咳嗽においてニューキノロン系抗菌薬を使用する場合は、結核を除外してから使用すべきだと考えます。まずはしっかりした診断が大事です。Q4 その他、気付いたことは?QOLのための鎮咳薬 JITHURYOUさん(病院)小児ではないので可能性は低いですが、百日咳だとするとカタル期※1でマクロライドを使用します。ただ、経過として3週間過ぎていることと、シムビコート®が処方されているので、カタル期ではない可能性が高いです。咳自体は自衛反射で、あまり抑えることに意味がないと言われていますが、本症例では咳が持続して夜間も眠れないことや季肋部※2の痛みなどの可能性もあるので、患者QOLを上げるために、対症療法的にデキストロメトルファンが処方されたと考えます。※1 咳や鼻水、咽頭痛などの諸症状が起きている期間※2 上腹部で左右の肋骨弓下の部分鎮咳薬の連用について 中堅薬剤師さん(薬局)原疾患を放置したまま、安易に鎮咳薬で症状を改善させることは推奨されていません1)。また、麦門冬湯は「乾性咳嗽の非特異的治療」のエビデンスが認められている2)ので、医師に提案したいです。なお、遷延性咳嗽の原因は、アレルギー、感染症、逆流性食道炎が主であり、まれに薬剤性(副作用)や心疾患などの要因があると考えています。話は変わりますが、開業医の適当な抗菌薬処方はずっと気になっています。特にキノロン系抗菌薬を安易に使いすぎです。高齢のワルファリン服用患者にモキシフロキサシンをフルドーズしようとした例もありました。医師の意図 中西剛明さん(薬局)自身の体験から、マイコプラズマの残存する咳についてはステロイドの吸入が効果的なことがあると実感しています。アレルギーがなかったとしても、マイコプラズマ学会のガイドラインにあるように、最終手段としてのステロイド投与(ガイドラインでは体重当たり1mg/kgのプレドニゾロンの点滴ですが)は一考の余地があります。また、マイコプラズマ学会のガイドラインにも記載がありますが、このケースがマイコプラズマであれば、マクロライド系抗菌薬の効果判定をするため、3日後に再受診の必要があるので3日分の処方で十分なはずです。ステロイド吸入が適切かどうか議論のあるところですが、シムビコート®を処方するくらいですから医師は気管支喘息ということで治療をしたのだと考えます。Q5 患者さんに何を説明する?抗菌薬の患者さんに対する説明例 清水直明さん(病院)「咳で悪さをしているばい菌を殺す薬です。ただし、必ずしもばい菌が悪さをしているとは限りません。この薬(CAM)には、抗菌作用の他にも気道の状態を調節する作用もあるので、7日分しっかり飲み切ってください。」CAMの副作用 キャンプ人さん(病院)処方された期間はきちんと内服すること、副作用の下痢などの消化器症状、味覚異常が出るかもしれないこと。抗菌薬を飲み切る 中堅薬剤師さん(薬局)治療の中心になるので、CAMだけは飲み切るよう指示します。また、副作用が出た際、継続の可否を主治医に確認するよう話します。別の医療機関にかかるときの注意 ふな3さん(薬局)CAMを飲み忘れた場合は、食後でなくてよいので継続するよう説明します。また、別の医師にかかる場合は、必ずCAMを服用していることを話すよう伝えます。後日談本症例の患者は、1週間後の再診時、血液検査の結果に異常は見られなかったが、ハウスダストのアレルギーがあることが分かり、アレルギー性咳嗽(咳喘息)と診断された。初診後3日ほどで、咳は改善したそうだ。医師からはシムビコート®の吸入を続けるよう指示があり、新たな処方はなされなかった。もし咳が再発したら受診するよう言われているという。1)井端英憲、他.処方Q&A100 呼吸器疾患.東京、南山堂、2013.2)日本呼吸器学会.咳嗽に関するガイドライン第2版.[PharmaTribune 2016年11月号掲載]

5656.

皮膚そう痒症、関連がん種の違いに人種が影響

 皮膚そう痒症とがんの関連は知られているが、皮膚そう痒症と関連があるがん種についてのデータは限られている。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のValerie A. Larson氏らの研究の結果によると、皮膚そう痒症は肝臓、皮膚、造血器系の悪性腫瘍と最も強く関連していることが示された。ただし今回の研究は横断研究のため、皮膚そう痒症と悪性腫瘍における時間的制約があり、また単一施設で行われた研究であることに留意が必要だとしている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年9月11日号掲載の報告。 研究グループは、皮膚そう痒症とさまざまな種類のがんとの関連、ならびに人種による関連の違いについて調べ検討を行った。 2013~17年にジョンズ・ホプキンス・ヘルス・システムで診察を受けた18歳以上の患者を対象に横断研究を実施し、皮膚そう痒症患者と非皮膚そう痒症患者を比較するとともに人種別の層別解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は第3次医療センターの皮膚そう痒症患者1万6,925例だった。・皮膚そう痒症の患者は非皮膚そう痒症患者と比較し、悪性腫瘍を合併していることが多かった(オッズ比[OR]:5.76、95%信頼区間[CI]:5.53~6.00)。・皮膚そう痒症との関連が最も強かったのは、肝がん、胆嚢および胆管がん、造血器腫瘍および皮膚がんであった。・人種別では、白人と比較して黒人の皮膚そう痒症患者は、軟部組織、皮膚および血液の悪性腫瘍を有している頻度が高かった。・一方、白人の皮膚そう痒症患者は、肝臓、呼吸器、消化管および婦人科の悪性腫瘍が多かった。

5657.

brigatinib、ALK陽性肺がん1次治療の新たなオプションに?(ALTA-1L)/WCLC2018

 ALK阻害薬未治療の局所進行または転移のあるALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、brigatinibの有効性をクリゾチニブと比較した第III相ALTA-1L試験の最初の中間解析結果が、カナダ・トロントで開催された第19回世界肺癌会議(WCLC2018)で、コロラド大学がんセンターのRoss Camidge氏により発表された。 ALTA-1L試験は、上記患者を対象としたbrigatinibのオープンラベル多施設共同無作為化第III相試験。患者は、brigatinib 180mg/日(7日間の導入期間においては90mg/日)投与群、もしくはクリゾチニブ250mg×2/日投与群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は独立評価委員会が評価した無増悪生存期間(PFS)で、副次評価項目には、客観的奏効率(ORR)、頭蓋内病変におけるORR、頭蓋内病変におけるPFS、全生存期間、安全性および忍容性が含まれている。PFSイベントの約50%および約75%が発生した時点の2回にわたり、主要評価項目に対する中間解析を行うことが事前に設定されていた。brigatinibが少なくとも6ヵ月クリゾチニブを上回るPFSの改善を示すために、合計約198件のPFSイベントが発生した時点で、主要評価項目の最終解析が行われる予定。 主な結果は以下のとおり。・brigatinib群に137例、クリゾチニブ群に138例の患者が組み入れられた。・年齢中央値はbrigatinib群58歳/クリゾチニブ群60歳。26%/27%に化学療法歴があり、29%/30%がベースライン時に脳転移を有していた。・データカットオフ(2018年2月19日)の追跡期間中央値は11.0ヵ月/9.25ヵ月。・99件のPFSイベント発生時点で独立評価委員会が盲検下で評価したPFS中央値は、brigatinib群NR(95%信頼区間[CI]:NR~NR)、クリゾチニブ群9.8ヵ月(95%CI:9.0~12.9)、ハザード比0.49(95%CI:0.33~0.74、log-rank検定:p=0.0007)で、brigatinib群で統計学的に有意に延長した。・confirmed ORRはそれぞれ71%(95%CI:62~78)、60%(95%CI:51~68)で、ベースライン時に測定可能な頭蓋内病変のあった患者のconfirmed ORRはそれぞれ78% (95%CI:52~94)、29%(95%CI:11~52)であった。・Grade3以上の治療下で発現した有害事象(TEAE)は、多くみられたものからbrigatinib群でCPK上昇(16.2%)、リパーゼ上昇(13.2%)、高血圧(9.6%)。 クリゾチニブ群でALT(9.5%)、AST(5.8%)、リパーゼ(5.1%)の上昇であった・間質性肺疾患(ILD)/肺炎の発現率は、3.7%/2.2%。AEによる治療中止は11.8%/ 8.8%で、brigatinib群の安全性プロファイルは、従来報告されているものと同様であった。 Camidge氏は、「9~11ヵ月という短期間のフォローアップの時点で、クリゾチニブと比較したbrigatinibの明らかな有効性が示されている。この差異は、脳転移に対する影響が大きいと考えられる。脳外の疾患制御に対する両剤の差異が今後現れなければ、PFSがさらに改善される可能性もある」と述べている。 この結果は、同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。■参考NCT 02737501(Clinical Trials.gov)Camidge DR., et al.N Engl J Med. 2018 Sep 25.[Epub ahead of print]■関連記事brigatinib、ALK肺がん1次治療でPFSを有意に改善(ALTA-1L)/武田薬品工業クリゾチニブ抵抗性ALK肺がんにおけるbrigatinibの成績:ALTA/WCLC2017新ALK阻害薬brigatinib、ALK陽性肺がんに承認:FDA

5658.

ノーベル賞受賞、がん治療を劇変させたPD-1とCTLA-4

 2018年のノーベル医学・生理学賞を、京都大学高等研究院特別教授の本庶 佑氏とMDアンダーソンがんセンター教授のJames P. Allison氏が共同受賞することが決まった。両氏はともにがんに対する免疫応答の制御に関連するタンパク質を発見し、がん免疫療法の近年の急速な進歩に寄与したことが受賞理由となっている。本稿では、ノーベル財団のプレスリリースから、2人の研究の足跡を紹介する。ほぼ同時期に、2つの発見 1992年、本庶氏ら京都大学の研究者が、T細胞の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子としてPD-1(Programmed cell death 1)を発見。その機能が明らかになるまでには時間を要したが、1998年、マウスによる実験でPD-1がT細胞のブレーキとして機能し、その働きを制御していることが明らかとなった。その後に続く同氏らおよび他の研究グループによる動物実験の結果、PD-1に結合してT細胞の活性化を抑制する PD-L1やPD-L2との結合をブロックする抗PD-1抗体が、がんとの戦いにおいて有望な戦略であることが示された。 2012年には、非小細胞肺がん(NSCLC)、悪性黒色腫、腎細胞がん(RCC)といった複数のがん腫における抗 PD-1抗体ニボルマブの臨床試験結果が発表され、その結果は全生存期間および奏効率の双方で臨床的に大きく改善するものであった。 一方、カリフォルニア大学バークレー校の研究所では、Allison氏が同じくT細胞のブレーキとして機能する細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を研究していた。彼は、CTLA-4の阻害がT細胞ブレーキを解除し、免疫細胞の抑制を解くことで、がん細胞を攻撃できる可能性があるのではないかと考えていた。 そして1994年の年末、マウスを使った最初の実験を行い、抗CTLA-4抗体による治療で、腫瘍を持つマウスが治癒することが確認された。当初、製薬業界の関心が向けられることはほとんどなかったが、間もなくして、いくつかの研究グループから有望な結果がもたらされるようになった。2010年には重要な臨床試験結果が発表され、悪性黒色腫の患者に対し、抗CTLA-4抗体イピリムマブが顕著な効果を示した。 PD-1とCTLA-4は同様にT細胞のブレーキとして機能するが、その作用機構は異なる。 がん治療を根本的に変えた 現在、多くのがん腫において多数の臨床試験が進行中であり、ニボルマブとイピリムマブ以外の新たな免疫チェックポイント阻害薬による治療法の開発も進んでいる。また、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用療法がさらに効果的である可能性も、悪性黒色腫に対する臨床試験によって示されている。 100年以上もの間、多くの研究者ががんとの闘いに免疫システムを結び付けようとしてきたものの、その臨床的進歩はほとんどみられなかった。しかし、2人の受賞者による発見の後、治療法の開発とその成果は劇的なものだった。免疫チェックポイント阻害薬による治療はがん治療に革命をもたらし、がんの管理方法を根本的に変えるものであった。■参考ノーベル財団プレスリリース■2つの発見に関する主要な論文Ishida Y. et al. EMBO J. 1992 Nov;11:3887~3895.Leach DR et al. Science. 1996 Mar 22;271:1734~1736.Kwon ED et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Jul 22;94:8099~8103.Nishimura H et al. Immunity. 1999 Aug;11:141~151.Freeman GJ et al. J Exp Med. 2000 Oct 2;192:1027~1034.Hodi FS et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Apr 15;100:4712~4717.Iwai Y et al. Int Immunol. 2005 Feb;17:133~144.

5659.

FDA、EGFR変異肺がん1次治療にdacomitinibを承認/ファイザー

 ファイザー社は、2018年9月27日、米国食品医薬品局(FDA)は、EGFR exon19delまたはexon21 L858R変異を有する転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療薬として、dacomitinib(米国商品名:VIZIMPRO)を承認したと発表。 今回の承認は多施設無作為化国際オープンラベル試験ARCHER1050に基づいたもの。 ARCHER1050試験では、452例の患者がdacomitinib群またはゲフィチニブ群に1:1で無作為化され評価された。独立評価委員会(IRC)評価のPFSはゲフィチニブ群の9.2ヵ月に対し、dacomitinib群では14.7ヵ月とゲフィチニブと有意な改善を示していた(HR:0.59、95%CI:0.47〜0.74、p<0.0001)。■参考Pfizer社プレスリリースARCHER1050試験(Clinical Trials.gov)ARCHER1050試験(Wu YL, et .al Lancet Oncol. 2017;18:1454-1466.)■関連記事dacomitinib、EGFR変異肺がん1次治療でOS延長(ARCHER1050)/ASCO2018dacomitinibのEGFR変異肺がん1次治療、FDAとEMAが申請受理dacomitinib、EGFR変異陽性肺がん1次治療の成績発表:ARCHER1050試験/ASCO2017

5660.

治療抵抗性うつ病に対する精神療法の有効性に関するメタ解析

 大うつ病に対する治療および管理は、大幅な進歩を遂げた。しかし、第1選択の抗うつ薬治療または心理社会療法で治療反応が得られる患者は、50%未満である。治療抵抗性うつ病(TRD)に対する精神療法に関する対照研究数が増加し、うつ病患者に対する精神療法が、治療選択肢として好まれている現状を考慮し、オランダ・マーストリヒト大学のSuzanne van Bronswijk氏らは、TRDに対する精神療法の有効性を調査するため、メタ解析およびメタ回帰分析を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2018年8月24日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・合計25の比較を含む21件の研究において、7種類の精神療法に関する検討が行われていた。・精神療法と通常治療を比べた3つの比較では、通常治療(TAU)と精神療法との間に有意なベネフィットは認められなかった。・併用治療(TAU+精神療法)とTAUとを比べた22の比較では、併用治療において、エフェクトサイズ0.42(95%CI:0.29~0.54)の中程度の効果が認められた。・メタ回帰分析では、集団療法vs.個人療法と同様に、ベースライン時の重症度と治療効果に正の関連が認められた。・出版バイアスは、認められなかった。・最も調査が行われていた治療は、認知行動療法、対人関係療法、マインドフルネスに基づく認知療法、精神療法の認知行動分析システムであった。 著者らは「TRDの治療ガイドラインにおいて、通常治療に対して、薬理学的および神経刺激的治療に加えて精神療法を追加することは正当であり、治療困難なうつ病患者により良い影響を及ぼすと考えられる」としている。■関連記事SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較うつ病への薬物療法 vs.精神療法 vs.併用療法日本人治療抵抗性うつ病患者へのCBT併用試験とは:FLATT Project治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

検索結果 合計:10329件 表示位置:5641 - 5660