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抗うつ薬ミルタザピンの速効性と費用対効果との関連

 これまでの研究で、ミルタザピンは他の抗うつ薬と比較し、効果発現が速い特徴を有するといわれている。いくつかの研究において、費用対効果が評価されているが、その際、早期寛解については考慮されていなかった。慶應義塾大学の佐渡 充洋氏らは、この研究ギャップに対処するため、正確な臨床データを用いることで、日本におけるミルタザピンの費用対効果について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年4月11日号の報告。 週ごとの推移確率を反映するためのマルコフモデルを開発した。マルコフ周期は、1週間に設定した。臨床パラメータは、主にメタ解析から抽出し、費用関連データは、行政報告から抽出した。費用対効果は、確率感度分析に基づいて推定された質調整生存年の増分費用対効果比(incremental cost effectiveness ratios:ICER)により評価した。ICERは、2、8、26、52週で推定した。 主な結果は以下のとおり。・重症うつ病のICERは、87万2,153円~177万2,723円であった。ICERの閾値を500万円とした場合、費用対効果でミルタザピンが効果的な割合は、0.75~0.99の範囲であった。・中等度うつ病のICERは、235万6,499円~477万145円であった。ICERの閾値を500万円とした場合、費用対効果でミルタザピンが効果的な割合は、0.55~0.83の範囲であった。 著者らは「ミルタザピンの効果発現の速さを考慮すると、日本国内においてとくに重度のうつ病や早期治療では、SSRIと比較し費用対効果が高いと考えられる。しかし、本研究の限界として、ミルタザピンと各SSRIを比較していない点、併用療法を考慮していない点が挙げられる」としている。■「抗うつ薬比較」関連記事抗うつ薬21種の有効性と忍容性を検討~522試験のメタ解析/Lancet

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米国成人の座位時間、1日1時間増加/JAMA

 長時間の座位は、多くの疾患や死亡のリスクを増大させる。カナダ・Alberta Health ServicesのLin Yang氏らが、米国における2001~16年の座位行動の傾向を調査した結果、1日に2時間以上のテレビ/ビデオ視聴の割合は高いまま安定しており、余暇におけるコンピュータ使用は全年齢層で増加し、1日の総座位時間は青少年および成人で有意に延長したことが明らかとなった。2018年に発表された「米国人のための身体活動ガイドライン(Physical Activity Guidelines for Americans)第2版」により、座位に伴う健康上のリスクが知られただけでなく、中~高強度の身体活動の増加と座位時間の短縮の双方によって、多くの人々が健康上の利益を得ていることが初めて示されたが、座位時間の定量的な主要ガイドラインは記載されていないという。JAMA誌2019年4月23日号掲載の報告。経時的な傾向を調査する連続的な横断研究 研究グループは、米国における座位行動のパターンおよびその経時的な傾向を調査し、社会人口統計学的特性や生活様式上の特性との関連を検討する目的で、連続的な横断研究を行った(米国国立がん研究所などの助成による)。 米国の全国健康栄養調査(NHANES)のデータを用い、小児(5~11歳、2001~16年)、青少年(12~19歳、2003~16年)、成人(20歳以上、2003~16年)に分けて解析を行った。 主要アウトカムは、1日2時間以上の座位でのテレビ/ビデオ視聴、1日1時間以上の学校または職場以外でのコンピュータの使用、および総座位時間(12歳以上における1日の座位時間)であった。 2001~16年のNHANESから得た5万1,896人(平均年齢37.2[SE 0.19]歳、2万5,968人[50%]が女性)のデータを解析した。小児が1万359人、青少年が9,639人、成人は3万1,898人だった。2007~16年に、1日の総座位時間が青少年と成人で約1時間延長 2015~16年度における1日2時間以上の座位テレビ/ビデオ視聴の割合は全年齢層で高く、小児が62%(95%信頼区間[CI]:57~67)、青少年が59%(54~65)、成人が65%(61~69)であり、成人のうち20~64歳が62%(58~66)、65歳以上では84%(81~88)に達した。 2001年から2016年までに、1日2時間以上の座位テレビ/ビデオ視聴の割合は、小児(差:-3.4%、95%CI:-11~4.5、傾向性のp=0.004)では非ヒスパニック系白人を中心に経時的に有意に低下し、青少年(-4.8%、-12~2.3、p=0.60)および20~64歳の成人(-0.7%、-5.6~4.1、p=0.82)では安定していたが、65歳以上の成人(3.5%、-1.2~8.1、p=0.03)では有意に増加した。 1日1時間以上の学校/職場以外でのコンピュータ使用の割合は、全年齢層で経時的に増加した。小児では2001年の43%(95%CI:40~46)から2016年には56%(49~63)へ(差:13%、95%CI:5.6~21、傾向性のp<0.001)、青少年では2003年の53%(47~58)から2016年には57%(53~62)へ(4.8%、-1.8~11、p=0.002)、成人では2003年の29%(27~32)から2016年には50%(48~53)へ(21%、18~25、p<0.001)と、それぞれ有意に増加した。 1日当たりの総座位時間は、青少年では2007年の7.0時間(95%CI:6.7~7.4)から2016年には8.2時間(7.9~8.4)へ(差:1.1、95%CI:0.7~1.5、傾向性のp<0.001)、成人でも5.5時間(5.2~5.7)から6.4時間(6.2~6.6)へ(1.0、0.7~1.3、p<0.001)と、いずれも有意に増加した。 著者は、「注目すべきは、青少年と成人の総座位時間の増加は、テレビ/ビデオ視聴以外の座位行動に起因すると考えられ、これはコンピュータ使用時間の増加によってある程度促進された可能性があることだ」としている。

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ABATE Infection trial:非ICUにおけるクロルヘキシジン清拭は耐性菌発生を抑制できるか?(解説:小金丸博氏)-1043

 医療関連感染(Health-care-associated infections)は頻度が高く、重大な合併症を引き起こすことがあるため、世界中で予防策が検討されている。予防策の1つが患者の皮膚や鼻腔に定着した病原体の除菌であり、医療関連感染の発生や伝播を減らすことが期待されている。これまでに発表された、いくつかのクラスター無作為化比較試験において、ICU入室患者に対するクロルヘキシジン清拭やMRSAの鼻腔除菌が血流感染症やMRSA感染症を抑制することを示してきたが、非ICU入院患者に対する効果ははっきりしていなかった。 今回発表された研究(ABATE Infection trial)は、非ICU入院患者に対するICU同様の感染対策(全例に対するクロルヘキシジン清拭とMRSA保菌者に対するムピロシン鼻腔内塗布の併用)の感染予防効果を検討したクラスター無作為化比較試験である。米国の53病院(ICUを除いた194病棟)を対象とし、介入群と通常ケア群(非消毒薬による清拭、石鹸を用いたシャワー浴)との間でMRSAやバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の培養検出率や、全病原体による血流感染症発生率などを比較検討した。その結果、ベースライン期と比べた介入期のMRSA培養陽性またはVRE培養陽性のハザード比は、クロルヘキシジン清拭+ムピロシン鼻腔除菌群0.79(95%信頼区間:0.73~0.87)、通常ケア群0.87(同:0.79~0.95)であり、有意差は認めなかった(p=0.17)。全病原体による血流感染症の発生率にも有意差はなかった。有害事象の発生率は、クロルヘキシジン清拭群で1%未満と低率だった。 本研究では、非ICU入院患者に対するクロルヘキシジン清拭とMRSA保菌者に対するムピロシン鼻腔内塗布の併用は、通常ケア群と比較して、MRSAやVREの発生率や全病原体による血流感染症発生率を有意に低下させなかった。本研究の結果は、大きなサンプルサイズの無作為化試験の中で、かつ高いプロトコル遵守率の中で得られた結果であり、非重症患者全例に対する介入はそれほど有用ではない可能性が高い。その一方で事後のサブグループ解析では、中心静脈カテーテルなどのデバイスが留置されていた患者において、介入群で全病原体による菌血症が32%、MRSAまたはVRE発生率が37%減少していた。デバイスが留置されている患者に対しては有用な介入である可能性があるが、あくまで事後解析の結果であり、追加の確認試験が必要であろう。 クロルヘキシジンは日常的によく用いられる消毒薬であり、忍容性は良好だが、局所の皮膚毒性やアナフィラキシーと関連する。クロルヘキシジンに繰り返し曝露されると細菌の感受性低下を誘導するため、クロルヘキシジンの使用は患者の利益が明確な状況に限定されるべきと考える。

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第19回 心電図界のギョーカイ用語、知りたくない?~QRS波の命名法~(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第19回:心電図界のギョーカイ用語、知りたくない?~QRS波の命名法~(後編)第17回に続き、今回もQRS波(群)の命名法を扱いましょう。各要素は、上向きのR波を起点に前後の下向き波(Q波・S波)を命名するのが基本でした。今回の後編では、心疾患があるような人に見られる、より複雑な波形の呼び方についてDr.ヒロが解説します。【問題】次のQRS波はどう呼んだらいいか? 波形に注目して「~型」と答えよ。(図1)各QRS波形を表現できますか?画像を拡大する解答はこちら(1)rSR'型、(2)Rsr'S'型、(3)Qrsr's'型、(4)RR'型、(5)rSS'型、(6)rsR'R''s'型解説はこちらゴールデンウイーク中に“おさらい”の回を挟みましたが、今回もQRS波のカタチから「~型」と名前を与える問題を考えましょう。前々回に学んだ基本を覚えていますか?QRS波は、上向きが「R波」、下向きが「Q波」または「S波」と表現するのでした。各要素が1つずつなら、話はカンタンですが、複数あったらどうでしょう? Q波はあっても1つですが、ほかのR波やS波は2個、3個となる可能性があります。その時の対応方法がわかったら、より複雑な波形の命名も可能になりますよ。“2号や3号をどう呼ぶか?”今回は、より複雑なカタチをしたQRS波に名前を付けていきます。早速(1)からいきましょう。ちなみに最後のほうにある、なだらかな下向き波は「陰性T波」です。これは無視して、あくまでもQRS波にフォーカスして命名するのでご注意あれ! まず、見つけるべきは上向きの波形要素「R波」でしたね。…あれっ? よーく見ると、深掘れの“谷”を挟んで最初に小さな「r波」、そして最後に立派な「R波」と、2つの上向き波がありませんか?こういう時の呼び方はちゃんと決められており、“心電図業界”では、R波がいくつかある場合、左(手前)から順に「R波」、「R’波」、「R’’波」…とダッシュ「’」を付けて表現するんです。“~1号、~2号、~3号”みたいなノリで、2つ目の「R波」なら「アールダッシュ(R’)」、3つ目もあったら「アールダブルダッシュ(R”)」のように呼ぶんです。この(1)には「Q波」はなく、間の“谷”が「S波」になるので、「rSR'型」が正解になります。QRS幅も3.5mm(0.14秒[140ms])と幅広で、これは「完全右脚ブロック」の時にV1やV2誘導で見られる典型波形です。続いて(2)です。これも水平なST部分を介してなだらかな陰性T波に接続していますので、左端から9mmちょっとまでがQRS波です。これも「Q波」はなく、「R波」、「S波」ともに2つあるでしょう? ST部分につながる下向き波は幅広ですが(スラー)、これが2つ目の「S波」です。“2号”にダッシュがつくのは「R波」も「S波」も同じなので、「Rsr'S'型」が正解です。ここで『2つの「R波」に挟まれた“谷”は、深いのでは?』という人がきっといるはず(若かりし時のボクにもそう見えた)。こういう場合、“海抜0m地帯”、すなわち基線からの“振れ”を下向き波のサイズとして判定するんですって。基線とは…そう、T-Pライン(ないしT-QRSライン)です(第14回)。今回の波形は2心拍なく、T-PあるいはT-QRSラインが適用できないため、通常は同一線上にある「PR部分」(P波のおわり~QRS波のはじまり)で代用すると良いでしょう。すると、“谷”の部分は最初の「R波」の頂点からはガクンと落ち込みますが、下向き波としては1.5mm程度の深さとなるため、小文字アルファベットで表記するのです。では、より複雑な(3)はどうでしょう? なんかこの波形、見た目にもギザギザでヤバいですよね? 最初は「Q波」。これは幅が広く(1mm以上)なので「異常Q波」として扱います(第17回)。ここからは複雑なので、拡大して解説します(図2)。“地平線”的に基線を意識し、網掛け部分のQRS波に狙いを定めます。(図2)QRS波形(3)を拡大画像を拡大するすると、基線より上の“地上”にわずかに頭を出した小さい「r波」が2つ。その間に小さな「s波」(1つ目)、そして5番目、最後の下向き波も“地下”3mmに届かないので「s'波」(2つ目)です。よって、正解は「Qrsr's'型」。このように、ギザギザ・チックなQRS波は、高率で病的なことが多く、「fragmented QRS(complexes)」と呼ばれています。“幻の小さい波に惑わされるな”どんどんいきましょう。次の(4)は、これもQRS幅がワイドで「完全左脚ブロック」と診断する時に、V5やV6誘導、そして“ご近所”のIやaVL誘導で認められる波形です。恥ずかしながら、若かりし日のDr.ヒロは、ある程度QRS波の命名ができるようになってからも、これが“RsR'型”だと思っていました。ただし、教科書では「RR'型」となっていて、これが正解です。『あれ?2つのR波にある、ちーさな下向きの波は…「s波」とは違うの?』そう思う人いませんか?でも、これは違うんです。だって、“地下”に掘れてないもの。実は、基線より下向きの振れではないと「S波」と言わないのです。今思うと“常識”ですが、あまり教科書にも書かれてないこともあり、当時のボクがそれに気づくまでしばらく時間がかかりました。だからこそ、Dr.ヒロは取り上げます!次の(5)もまったく同じ考え方で大丈夫。1mmにも満たないはじめの「r波」を見逃さず、かつ“rS型”でも、ましてや“rSr'S'型”でもありません(これではボクと“同じ穴のむじな”状態になってしまいますよ~)。正しい答えは「rSS'型」。(4)も(5)も「R波」ないし「S波」が連続する時には、反対向きの小波はカウントせず、間にノッチ(notch)があると表現します。では、最後に“卒業問題”の(6)を扱って終わります。P波や(陰性)T波に惑わされず、基線を意識しながら波の上下を見定め、ノッチの“罠”にひっかからないように…。正解は「rsR'R''s'型」です。うーん、これが正しく言えたのなら、アナタはもうどんなQRS波形を見ても正しく命名できるでしょう。Dr.ヒロが太鼓判を押しますよ。“QRS fragmentationの臨床的意義”今回扱ったギザギザ波形の場合、「QRS fragmentation」または「fragmented QRS」があるという表現をします。これは心室内における電気伝導の遅延を反映しており、心臓病が起こって“キズ”がついていると理解するのがスムーズです。もっともシンプルなのは、心筋梗塞などの話です。次の図は、虚血性心疾患において「fragmented QRS」の有無で生存曲線を比較したものですが、有意差がありますね(図3)。(図3)Fragmented QRSの意義画像を拡大するそして、心筋症や弁膜症などの非虚血性心疾患でも心電図上の独立した予後不良因子*1となります。また、そのほか多くの疾患で死亡・心臓突然死などの予測因子の一つであることも示されています。ただ単に名前が言えるだけではなく、実臨床での話に還元すると非常に興味深いですよね。最後に、前編・後編で扱ったQRS波の命名ルールをまとめました(図4)。(図4)QRS波の命名法まとめ画像を拡大する2回に分けてお送りした「QRS波の命名法」、いかがだったでしょうか。個々の波を正しく認識し、ルールに沿って全体の波をどう呼ぶかを考える。複雑な波形の名前がビシッとうまく言えたとき、何だかオレ(ワタシ)成長しなたなぁ…そんな風に思うのではないでしょうか?QRS波に命名する…それは“我が子”に名を与える親の様子にも似ているなぁ。QRS波一つ一つの“名付け親”になることで波形が愛おしくなり、世界中の皆さんが心電図を好きになってくれたらなぁ…と考えてしまうDr.ヒロなのでした。Take-home MessageQ波はあっても1つだが、R波やS波は複数あったら「ダッシュ(’)」を用いて表現する上向きか下向きかは、基線(T-P [QRS] ライン)からの上下で見極めよう脚ブロックに典型的なQRS波の名称(型)と形をイメージできるようになろう!*1:Jain R, et al. Curr Cardiol Rev. 2014;10:277-286.杉山 裕章. 心電図のみかた、考え方[基礎編]. 中外医学社;2013.p.68-74.【古都のこと~日本循環器学会学術集会2019】今回は、京都を飛び出して「特別編」をお送りします。2019年3月末、パシフィコ横浜で行われた第83回日本循環器学会学術集会に参加してきました。新幹線を降りた時、やや肌寒さを感じましたが、会場はアツかった! セッションやセミナー各種、展示企画まで盛りだくさんの内容でした。自己研鑽以外、もう一つの“お目当て”が。それは、学会に合わせて刊行した2冊の書籍の様子伺いをすることでした。うち1冊の『心電図の読み“型”教えます!Season 1』は、本連載(初回~第11回)の内容をベースに、加筆・修正したものです。陳列された実際の書籍を目にすると、学会直前ギリギリまで作業を続けてくれた中外医学社の関係諸氏への感謝の念が湧き上がります。普段、編集を担当してくれている土井女史とも喜びを分かち合い、書籍コーナーで記念写真をパシャ(笑)これもいい記念になりました。爽やかな刺激を受けたことで、ボクももっとやらなきゃと謙虚な気持ちになり、適度な疲れとともに家路につきました。なお、食いしん坊は、中華街にもちゃっかり足を伸ばし、点心コースを堪能しましたとさ…。

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第14回 医療の質・安全学会学術集会【ご案内】

 2019年11月29日(金)、30日(土)の2日間、第14回医療の質・安全学会学術集会が国立京都国際会館で開催される。今回のテーマは、「レジリエンスの探求~つながり、共創、イノベーション~」。レジリエンスとは、システムの特性を表す用語で、柔軟性、弾力性、しなやかさを意味する。 本学術集会は、さまざまな専門性や多様性を有する医療者が「医療の質・安全」を共通言語としてつながり、創発的なひらめきを共創し、機能・価値の創造と技術革新などのイノベーションを引き起こし、ヘルスケアシステムにレジリエンスを実装することを目的としている。レジリエンス・エンジニアリングの世界的権威であるエリック・ホルナゲル教授をはじめ、国内外からさまざまな学際領域の専門家が招聘され、学術的かつ実践的な議論が行われる予定だ。4月24日(水)より演題登録を行っているので、ご興味のある方は、ぜひ登録をお願いしたい。 開催概要は以下のとおり。【日時】2019年11月29日(金)~30日(土)【場所】国立京都国際会館【大会長】大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 教授 中島 和江氏【テーマ】レジリエンスの探求~つながり、共創、イノベーション~Enabling Resilient Health Care through Connections, Co-creation and Innovation【お問い合わせ先】大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-15株式会社コンベンションリンケージ内〒531-0072 大阪府大阪市北区豊崎3-19-3 PIAS TOWER 11FTEL 06-6377-2188FAX 06-6377-2075E-mail:14jsqsh@c-linkage.co.jp第14回医療の質・安全学会学術集会詳細はこちら

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がん患者のVTE、抗凝固薬投与は3ヵ月以上?

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、がん患者における上位の疾患・死亡要因である。がん患者のVTE治療は、現在のところ3~6ヵ月以上の抗凝固療法が推奨されているが、至適期間は不明であった。米国・クリーブランドクリニックのAlok A. Khorana氏らは、新たに診断されたVTEを有するがん患者について、後ろ向きコホート研究を行い、抗凝固療法は3ヵ月以上でVTE再発リスクを約50%低下させることを明らかにした。Supportive Care in Cancer誌オンライン版2019年2月8日号掲載の報告。 研究グループは、がん患者における抗凝固療法の実施期間とVTE再発との関連を調査する目的で、The Humana claimsデータベースを用い、2013年1月1日~2015年5月31日に初回VTEの診断を受け、注射または経口の抗凝固療法を開始した新規がん患者を特定し、治療開始から追跡(2015年6月まで)。Cox比例ハザードモデルを用いて治療を中止した患者における治療期間別のVTE再発リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は1,158例であった。・VTE治療期間が0~3ヵ月の患者と比較し、3~6ヵ月の患者および6ヵ月以上の患者は、VTE再発率が有意に低かった。・患者背景を補正後もVTE治療期間が0~3ヵ月の患者と比較し、3~6ヵ月の患者(HR:0.53、95%CI:0.37~0.76)、および6ヵ月以上の患者(HR:0.48、95%CI:0.34~0.68)は、VTE再発リスクが有意に低かった(いずれもp<0.01)。・VTEイベントの定義に外来患者を含んだ場合も、類似の結果が得られた。

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親密なパートナーからの暴力への介入、妊婦の産後QOLを改善するか/JAMA

 親密なパートナーからの暴力(intimate partner violence:IPV)は公衆衛生上の課題であり、女性や子供に重大で有害な結果をもたらす。カナダ・マックマスター大学のSusan M. Jack氏らは、初めての子供を持つ社会的および経済的な不利益を経験している妊婦への看護師による自宅訪問プログラム(nurse home visitation program)に、IPVへの包括的な介入を加えても、出産後の母親の生活の質(QOL)の改善は得られないことを示した。研究の詳細はJAMA誌2019年4月23日号に掲載された。米国の3つの無作為化試験では、看護師による自宅訪問プログラムは妊娠アウトカム、子供の健康、母親のライフコース(life-course)における成長を改善すると報告されているが、IPVが中等度~重度の母親ではこの効果は得られていない。また、他の米国とオランダの試験では、IPVへの同プログラムの効果に関して相反する知見が得られているという。IPV介入による強化の有用性を評価するクラスター無作為化試験 研究グループは、看護師による自宅訪問プログラムをIPV介入で強化することによる、母親のQOLへの影響を評価する目的で、単盲検クラスター無作為化試験を行った(米国国立傷害予防管理センター[NCIPC]などの助成による)。 2011年5月~2015年5月の期間に、米国8州の15施設で、社会的不利益を受け、2.5年間の看護師による自宅訪問プログラムに参加している16歳以上の妊娠女性492例を登録した。参加施設は、看護師による自宅訪問プログラム+IPV介入を行う強化プログラム群(7施設、229例)または看護師による自宅訪問プログラムのみを行う標準プログラム群(8施設、263例)に無作為に割り付けられた。 強化プログラム群の施設では、看護師が集中的なIPV教育を受け、IPV介入を行った。介入には、安全性計画(safety planning)、暴力の認識(violence awareness)、自己効力感(self-efficacy)、社会的支援への紹介に焦点を当てた評価や個別的ケアを支援するクリニカルパスが含まれた。標準プログラムには、暴力曝露に関する限定的な質問と、虐待を受けた女性に関する情報が含まれたが、看護師への標準化されたIPV研修は行われなかった。 主要アウトカムは、ベースラインおよび出産後から24ヵ月までの6ヵ月ごとの面談で得られたQOLとした。QOL評価にはWHOQOL-BREF(0~400点、点数が高いほどQOLが良好)を用いた。7つの副次アウトカムにも有意差なし 全体の平均年齢は20.3(SD 3.7)歳で、白人が62.8%、黒人/アフリカ系米国人が23.3%であり、高卒/職業訓練校修了が53.3%、独身/未婚が80%、被扶養/無収入が35.7%だった。421例(86%)が試験を完遂した。 WHOQOL-BREFスコアは、強化プログラム群ではベースラインの299.5(SD 54.4)点から24ヵ月後には308.2(52.6)点へ、標準プログラム群では293.6(56.4)点から316.4(57.5)点へといずれも改善し、QOLはむしろ標準プログラム群のほうで良好な傾向がみられた。マルチレベル成長曲線分析では有意な差はなかった(モデル化スコア差:-4.9、95%信頼区間[CI]:-16.5~6.7)。 7つの副次アウトカム(Composite Abuse Scale[CAS]によるIPV、SPANによる心的外傷後ストレス障害[PTSD]、Patient Health Questionnaire 9[PHQ-9]によるうつ状態、TWEAKによる飲酒問題、Drug Abuse Severity Test[DAST]による薬物問題、12-Item Short-Form Health Survey[SF-12]による心の健康および身体的健康)はいずれも、両群に有意差はみられなかった。また、有害事象の記録は両群ともになかった。 著者は、「これらの知見は、この複雑で多面的なIPVへの介入によって、看護師による自宅訪問プログラムを強化した支援を支持しない」としている。

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小児双極性障害の最新疫学研究~メタ解析

 小児双極性障害に関連する研究は、過去7年間で増加している。米国・ザッカーヒルサイド病院のAnna Van. Meter氏らは、2011年の小児双極性障害の有病率についてのメタ解析をアップデートし、有病率に影響を及ぼす因子について検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2019年4月2日号の報告。 2018年、PubMedおよびPsycINFOより、英語で出版された論文を用いて文献レビューを行った。選定基準は、青少年の疫学サンプル、双極性スペクトラム障害を有する青少年の数、21歳以上と分類された青少年の有病率(両方を含む場合)とした。検索された2,400件中44件を評価し、8件を解析対象とした。各双極性障害サブタイプの有病率は、報告に沿って記録し、仮説モデレーター(研究の特徴や環境要因など)もコーディングした。 主な結果は以下のとおり。・8件の追加試験より、合計サンプル数19件が得られ、サンプルサイズは、5万6,103例(双極性障害患者1,383例)で3倍となった。・米国での研究が7件、南アメリカ、中央アメリカ、ヨーロッパでの研究が12件であった。・双極性スペクトラム障害の加重有病率は、3.9%(95%CI:2.6~5.8%)であった。・研究間での有意な不均一性が認められた(Q=759.82、df=32、p<0.0005)。・双極I型障害のプール率は0.6%(95%CI:0.3~1.2%)であり、これらにおいても不均一性が認められた(Q=154.27、df=13、p<0.0001)。・双極性スペクトラム障害有病率の高さの予測因子は、広義の双極性障害基準の使用(p<0.0001)、最少年齢(p=0.005)、生涯有病率(p=0.002)であった。・より新しい研究において、有病率の低さとの関連が認められた(p<0.0001)。 著者らは「最新のメタ解析では、米国の双極性スペクトラム障害有病率は、他の西欧諸国と比較し高くはなく、経時的な増加も認められないことが確認された。標準的でない診断基準は、全スペクトラムを除外した小児双極性障害の狭義の定義に焦点を当てた場合と同様に、さまざまな有病率を示すことにつながる。小児双極性障害の有病率に関する問題を解決するためには、検証済みの基準を一貫して適用することが求められる。非西欧諸国での研究は、国際的な有病率と危険因子を理解するうえで必要である」としている。■関連記事若年双極性障害への治療効果を高めるには小児・思春期の双極性障害に対する非定型抗精神病薬vs気分安定薬小児および青年期の重度な精神疾患発症率と薬理学的治療

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高齢者NSCLCにおけるペムブロリズマブの成績/ELCC2019

 ペムブロリズマブの3つ無作為化比較試験KEYNOTE-010、024、042のプール解析の結果、高齢の非小細胞肺がん(NSCLC)患者では、ペムブロリズマブでの全生存期間が化学療法を有意に上回った。この研究は3件の臨床試験の高齢(75歳以上)患者264例と75歳未満の患者2,292例の結果を比較したもので、九州がんセンターの野崎 要氏らが欧州肺癌学会(European Lung Cancer Congress 2019)で発表した。対象患者はPD-L1(TPS)1%以上であり、高齢患者の半数はPD-L1(TPS)50%以上であった。 主な結果は以下のとおり。・PD-L1(TPS)1%以上の高齢患者における化学療法群と比較したペムブロリズマブ群の全生存期間(OS)のHRは0.76(95%CI:0.56~1.02)であった。 ・PD-L1(TPS)50%以上の高齢者のOSにおいてもペムブロリズマブ群が化学療法群に比べ改善した(HR:0.41、95%CI:0.23~0.73)。・高齢患者と若年者を比較した1年OS率は、PD-L1 (TPS)1%で53.7%対54.9%、PD-L1 (TPS)50%以上で61.7%対61.7%と、共に同程度であった。・ペムブロリズマブ群高齢患者の治療関連有害事象(TRAE)の頻度は、化学療法群に比べ少なかった(68%対94%)。Grade3~5のTRAEも、ペムブロリズマブ群で少なかった(24%対61%)。・高齢患者における免疫関連有害事象およびインフュージョンリアクションはペムブロリズマブ群で多くみられた(25%対7%)ものの、その頻度は若年者と同様であった(25%)。

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乳がんのリンパ浮腫が一過性から持続性になるリスク因子

 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast-cancer-related lymphedema、以下BCRL)には一過性と持続性があるが、持続性への移行のリスク因子が明らかにされた。台湾・Koo-Foundation Sun Yat-Sen Cancer CenterのI-Wen Penn氏らによる5年間のコホート研究の結果、対象患者342例のうち3分の2が持続性で、「リンパ節転移が多い」「体重増加がある」「上腕周囲径の差(circumferential difference、以下CD)が大きい」患者ほど、持続性の尤度が高いことが示されたという。Supportive Care in Cancer誌2019年3月号掲載の報告。 研究グループは、(1)BCRLを有する全患者において、持続性リンパ浮腫(persistent lymphedema、以下PLE)のリスク因子を特定すること、(2)PLE発症の予測モデルを確立することを目的とし、BCRLを有する患者342例を、腫脹発症から中央値5年間追跡し解析を行った。 PLEの定義は、皮下組織の硬化、上腕CDまたは追跡期間中の腫脹再燃とした。 多重ロジスティック回帰法にて、PLEリスク因子(腫脹、治療、患者関連因子など)を特定した。モデルの予測精度は、ROC曲線下面積(AUC)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・BCRL342例のうち、229例(67%)がPLEであった。・多重ロジスティック回帰分析により、リンパ節転移の数(p=0.012)、初回腫脹時の最大上腕CD(p<0.001)、追跡期間中の同差の最大値(p<0.001)が、PLEの有意な予測因子であることが明らかにされた。AUCは0.908であった。・体重増加(p=0.008)と、追跡期間最終時の最大CD(p=0.002)を含めると、分析精度はさらに上昇することが示された(AUC=0.920)。

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リファンピシン耐性結核の治療期間短縮トライアル(解説:吉田敦氏)-1038

 多剤耐性結核(キードラッグであるイソニアジド[INH]とリファンピシン[RIF]の両者に耐性)の治療は非常に難しい。薬剤数が多く、期間も長くなり、副作用も多く経験する。WHOは2011年のガイドラインにおいて、遺伝子検査を含む早期の耐性検査の実施、フルオロキノロン薬の使い分け、初期に行われるintensive phaseの治療期間の延長と合計18ヵ月以上の治療を推奨しているが、一方でそれよりも短期間の治療レジメンで良好な成績を収めた報告(例:バングラデシュ研究1))も存在する。今回は、RIF耐性結核例(ただし、フルオロキノロンとアミノグリコシドは感性)を対象とし、バングラデシュ研究で多剤耐性結核に対して用いられたレジメンと同様の9~11ヵ月の短期療法と、WHOのガイドラインに従った20ヵ月の長期療法の2法について、第III相ランダム化比較試験が実施された(実施国はエチオピア、モンゴル、南アフリカ共和国、ベトナム)。 有効性の判定で「良好」という基準は、132週の時点で経過が良く、培養陰性である(または陰性のままである)ことと定めた。患者の33%はHIV陽性であり、77%は肺に空洞を有していたが、治療レジメンについて十分なアドヒアランスが確保できたのは、短期療法群で75%、長期療法群で43%であった。そして上記の基準を満足した割合は、両群で差はなかった。Grade3以上の副作用出現率にも差はなかったが、「良好」の基準を満たさない患者での結核菌再検出率、心電図上のQT延長、ALT上昇、120週までの死亡、フルオロキノロン・アミノグリコシドの耐性出現は短期療法群でやや多かった。 使用された抗結核薬の内訳をみると、短期療法では最初の16週はintensive phaseとしてカナマイシン、イソニアジド、プロチオナミド、モキシフロキサシン(高用量)、クロファジミン、エサンブトール、ピラジナミドを投与、その後のcontinuation phaseではカナマイシン、イソニアジド、プロチオナミドを除いた4剤を、開始から40週以上投与していた。一方で長期療法は国によって用いる薬剤が異なっており、intensive phaseは5剤以上で6ヵ月以上、continuation phaseも4剤となっていた。つまり短期療法は、モキシフロキサシンを重視し、薬剤数を多くした(しかし短めの)intensive phaseを採用することで、長期療法との違いを打ち出していることになる。 総じて、短期療法は治療期間の短縮と、アドヒアランスの維持には貢献するが、不整脈を含む心臓への副作用の増加と突然死・死因不明死、肝障害に関連しているようで、実際に主に短期療法群でQT延長を確認後、モキシフロキサシンを減量したり、レボフロキサシンに変更した例が存在した。短期療法でみられたこのような副作用・デメリットが、モキシフロキサシンによるのか、その用量によるのか、あるいは他剤との相互作用によるのか、具体的な情報はない。HIV重複感染率が高かったため、その影響が事象を複雑にもしている。なおバングラデシュ研究ではモキシフロキサシンでなくガチフロキサシンが用いられていたが、ガチフロキサシンは低血糖などの理由で、本邦・米国等では発売が中止となっている。また本邦ではシタフロキサシンが抗酸菌感染症に用いられることがあるが、本検討にはシタフロキサシンは含まれていない。 WHOは2018年末に多剤耐性結核およびRIF耐性結核のガイドラインを改訂した2)。この中で短期療法の章が新たに設けられ、本試験を含む臨床試験の結果を考慮した短期療法と適応についてのスタンスが述べられている。2011年に比べ大きな進歩があったが、必須な薬剤の絞り込み、耐性に関する遺伝子検査のさらなる導入、副作用の早期発見と対処・代替薬剤の変更など、課題はまだまだ多い。条件を設定した短期治療は、標準化、個別化それぞれへの一歩といえるだろうが、最終的に個々の治療をさらに向上させるには、今後も多大な努力が求められるであろう。■参考1)Van Deun A, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2010;182:684-692.2)WHO updates its treatment guidelines for multidrug- and rifampicin-resistant tuberculosis.

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SGLT2阻害薬カナグリフロジンの腎保護作用がRAS抑制薬以来初めて示される:実臨床にどう生かす?(解説:栗山哲氏)-1039

オリジナルニュースSGLT2阻害薬カナグリフロジンの腎保護作用が示される:CREDENCE試験/国際腎臓学会(2019/04/17掲載)本研究の概要 SGLT2阻害薬の腎保護作用を明らかにしたCREDENCE研究結果がNEJM誌に掲載された。この内容は、本年4月15日(メルボルン時間)にオーストラリアでの国際腎臓学会(ISN-WCN 2019)において発表された。これまでにSGLT2阻害薬の心血管イベントに対する有効性や副次的解析による腎保護作用は、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 58の3つの大規模研究で示されてきた。本試験は、顕性腎症を有する糖尿病性腎臓病(Diabetic Kidney Disease:DKD)の症例に対して腎アウトカムを主要評価項目とし、その有効性を明らかにした大規模研究である。 対象としたDKD患者背景は67%が白人で、平均年齢は63.0歳、平均HbA1c 8.3%、平均BMI 31%、平均eGFR 56.2mL/min/1.73m2、また尿アルブミン・クレアチニン比(UACR)の中央値は927mg/gCrの顕性腎症を呈するDKD例であった。併用薬は、99.9%にRAS抑制薬、69%にスタチンが投与されていた。対象の4,401例はカナグリフロジン100mg/日群(2,202例)とプラセボ群(2,199例)にランダム化され、二重盲検法で追跡された。主要評価項目は「末期腎不全・血清クレアチニン(Cr)倍増・腎/心血管系死亡」の腎・心イベントである。2018年7月、中間解析の結果、主要評価項目発生数が事前に設定された基準に達したため、試験は早期中止となった。その結果、追跡期間中央値は2.62年(0.02~4.53年)である。主要評価項目発生率は、カナグリフロジン群:43.2/1,000例・年、プラセボ群:61.2/1,000例・年となり、カナグリフロジン群におけるハザード比(HR)は、0.70(95%信頼区間[CI]:0.59~0.82)の有意低値となった。カナグリフロジン群における主要評価項目抑制作用は、「年齢」、「性別」、「人種」に有意な影響を受けず、また試験開始時の「BMI」、「HbA1c」、「収縮期血圧」の高低にも影響は受けていなかった。「糖尿病罹患期間の長短」、「CV疾患」や「心不全既往」の有無も同様だった。副次評価項目の1つである腎イベントのみに限った「末期腎不全・血清Cr倍増・腎死」も、カナグリフロジン群における発生率は27.0/1,000例・年であり、40.4/1,000例・年のプラセボ群に比べ、HRは0.66の有意低値だった(95%CI:0.53~0.81)。また、サブグループ別解析では、HRはeGFRの低い群(30 to <60mL/min/1.73m2、全体の59%)、尿ACRの多い群(>1,000、全体の46%)であり、進展したDKDでリスクが低値であった(Forest plotで有意差はなし)。同様に副次評価項目の1つである「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」(CVイベント)も、カナグリフロジン群におけるHRは0.80(95%CI:0.67~0.95)となり、プラセボ群よりも有意に低かった。なお、総死亡、あるいはCV死亡のリスクは、両群間に有意差を認めなかった。 有害事象のリスクに関しても、プラセボ群と比較した「全有害事象」のHRは0.87(95%CI:0.82~0.93)であり、「重篤な有害事象」に限っても、0.87(95%CI:0.79~0.97)とカナグリフロジン群で有意に低かった。また、「下肢切断」のリスクに関しては、発生率はカナグリフロジン群:12.3/1,000例・年で、プラセボ群:11.2/1,000例・年との間に有意なリスク差は認めなかった(HR:1.11、95%CI:0.79~1.56)。また、「骨折」の発生リスクにも、両群間に有意差はなかった。CREDENCE:何が新しいか? SGLT2阻害薬が心血管イベントを減少させるだけではなく、腎保護作用があることは、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 58においても、すでに明らかにされている。本試験の新規性は、「中等度に腎機能低下した顕性腎症を呈するDKD患者においてもSGLT2阻害薬の腎保護が確認された」との点に集約される。たとえば、EMPA-REG OUTCOME試験においてはeGFRが60mL/min/1.73m2以下の症例は26%でRAS抑制薬は81%に使用されていたが、CREDENCEにおいては59%の症例がeGFR 60mL/min/1.73m2と腎機能低下例が多い背景であった。従来、SGLT2阻害薬は、eGFRを急激に低下させるため腎機能悪化に注意する、eGFR低下例では尿糖排泄も減少するため使用の意義は低い、とされてきた。CREDENCEの結果は、DKDで腎機能が中等度に低下し慢性腎不全と診断される症例において早めにSGLT2阻害薬を開始すると長期予後改善が期待される、と解釈される。CREDENCEの結果を実臨床にどう生かす SGLT2阻害薬が登場する前には、腎保護作用のエビデンスが知られる唯一の薬剤は、RAS抑制薬であるACE阻害薬(Lewis研究)とARB(RENAAL研究とIDNT研究)であった。CREDENCEの結果から、糖尿病治療薬では初めてSGLT2阻害薬が腎機能低下例においても腎機能保護作用が期待されることが示唆された。 SGLT2阻害薬の薬理学的作用機序は、腎尿細管のSGLT2輸送系の抑制によるNa利尿と尿糖排泄である。本剤は、DKDに対してのTubulo-glomerular Feedback改善作用や腎間質うっ血の改善効果は、他の糖尿病薬や利尿薬とはまったく異質のものであり、Glomerulopathy(糸球体障害)のみならずTubulopathy(尿細管障害)やVasculopathy(血管障害)の改善などで複合的に腎保護に寄与すると考えられる。 さて、CREDENCEの結果を受け、実臨床において、腎機能が低下したDKDにおいてSGLT2阻害薬を使用する医家が増えるものと予想される。しかし、現状では腎機能低下例での安全性が完全に払拭されているわけではない。本研究の患者背景は、大多数が60代、白人優位、高度肥満者、腎機能は約半数でeGFRが60mL/min/1.73m2以上に保たれている患者での成績であり、中等度以上の腎機能低下例や高齢者ではやはり十分な配慮が必要となる。一般に、SGLT2阻害薬有効例は、食塩感受性やインスリン感受性の高い患者群と想定される。わが国に多い2型糖尿病患者群は、中高年、肥満傾向、比較的良好な腎機能、食塩摂取過剰、などの傾向があることから、本剤に対する効果は大いに期待される。一方、現時点ではCREDENCEの結果をDKD患者に普遍的に適応するのは、いまだ議論が必要である。日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」(2016年)においては、同剤の適正使用に対して慎重になるべきとの警鐘を鳴らしている。とくに75歳以上の高齢者においては、脱水、腎機能悪化、血圧低下、低血糖、尿路感染、また、利尿薬併用例、ケトアシドーシス、シックデイ、などに注意して慎重に薬剤選択することが肝要であるとしている。結局、本邦においてSGLT2阻害薬の腎機能低下例における今後の評価は、各医家の実臨床における経験に裏付けされることが必要と思われる。

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うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の長期非盲検試験

 うつ病に対する長期治療は、再発予防および機能回復のために推奨されている。デンマーク・H. Lundbeck A/SのMary Hobart氏らは、成人うつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法の長期非盲検試験において、安全性、忍容性、有効性を評価した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2019年5/6月号の報告。 対象は、3つのランダム化二重盲検プラセボ対照試験から52週間(26週間へ修正)の試験へロールオーバーしたうつ病患者。対象患者には、最新の抗うつ薬治療にブレクスピプラゾール0.5~3mg/日(フレキシブルドーズ)を追加した。主要アウトカムは、治療による有害事象(TEAE)の頻度および重症度とした。副次的アウトカムとして、臨床評価尺度を用いて有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・登録患者数2,944例(52週間:1,547例、26週間:1,397例)のうち、1,895例(64.4%)が試験を完了した。・発現率5%以上のTEAEは以下のとおりであった。 ●体重増加(17.7%) ●眠気(8.0%) ●頭痛(7.2%) ●アカシジア(6.7%) ●食欲増進(6.3%) ●不眠(6.3%) ●疲労(6.1%) ●ウイルス性上気道感染症(5.4%) ●不安(5.2%)・ほとんどのTEAEの重症度は、軽度または中等度であった。・体重増加の平均値は、26週時で2.7kg、52週時で3.2kgであった。ベースライン時より7%以上の体重増加が認められた患者は、25.8%であった。・錐体外路症状、プロラクチン、脂質、グルコースに関連する臨床所見は認められなかった。・患者の症状および機能は、継続的な改善が認められた。 著者らは「うつ病患者に対するブレクスピプラゾール(0.5~3mg/日)補助療法は、最大52週にわたり良好な忍容性を示し、有効性および機能的アウトカムの継続的な改善が認められた」としている。■関連記事ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの体重変化への影響日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学うつ病に対するアリピプラゾールとセルトラリン併用療法の二重盲検ランダム化比較試験

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植込み型心臓用医療機器感染予防のための抗菌包装の有効性の検討(解説:許俊鋭 氏)-1037

背景 植込み型心臓用電子医療機器(Cardiac Implantable Electronic Devices:CIED)留置後のポケット感染は、術後の合併症率および死亡率と関連している。しかし、術前抗菌薬の使用以外のポケット感染を予防するための治療方法に関しては、限られたエビデンスしかない。方法 CIED植込み手術に関連するポケット感染の発生率を減らすための吸収性の抗菌薬溶出性包装(Antibacterial Envelope)の安全性と有効性を評価するために、無作為化比較臨床試験(WRAP-IT)を実施した。Antibacterial Envelopeは吸収性マルチフィラメントメッシュエンベロープ(Absorbable Antibacterial Envelope、Medtronic)を使用していて、皮下ポケット内のCIED安定性を改善するとともに、抗菌薬のミノサイクリンとリファンピンを溶出することができる。 両心室ペーシング機能付植込み型除細動器 (CRTD)の初回植込み手術症例、挿入ポケットの修復、ジェネレータの交換、およびシステムのアップグレード等の手術を受けた患者を、抗菌包装を行う群(エンベロープ群)と行わない群(対照群)に1:1の割合で無作為に割り付けた。感染防止のための標準治療は全症例に実施した。主要評価項目は、CIED植込み手術後12ヵ月以内の感染に起因したCRTDの摘出またはポケットの修復、感染の再発を伴う長期の抗菌薬療法、または死亡とした。安全性に関する副次的評価項目は、12ヵ月以内の植込み手術やデバイス関連の合併症とした。結果 6,983例の患者を無作為に割り付けた。エンベロープ群3,495例、対照群に3,488例であった。主要評価項目は、エンベロープ群の25例、対照群の42例の患者で発生した(12ヵ月のカプランマイヤー推定事象率、それぞれ0.7%および1.2%;p=0.04)。安全性の評価項目は、エンベロープ群の201例、対照群の236例の患者で発生した(12ヵ月カプランマイヤー推定事象率、それぞれ6.0%および6.9%;非劣性検定、p<0.001)。平均追跡調査期間は20.7±8.5ヵ月であった。追跡調査期間全体を通しての主要なCIED関連感染症は、エンベロープ群32例、対照群51例の患者で発生した。結論 抗菌包装の併用により合併症発生率が上昇することなく、単独の標準的感染予防戦略よりもCIED感染症の発生率が大幅に(約40%)低下した。

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女性へのゾルピデム使用リスク

 2013年、女性に対するゾルピデム就寝前投与は、昼間の鎮静リスクを上昇させ、運転技能の低下を来すことを示す新たなデータの存在をFDAが報告した。これには、女性では男性と比較し、ゾルピデムの代謝クリアランスの減少および朝の血中濃度の上昇が影響していると推定される。このことから、FDAは、女性へのゾルピデム推奨投与量を、男性の50%まで減量するよう指示した。しかし、世界的にどの規制当局においても同様な指示は出ていない。米国・睡眠障害研究センターのDavid J. Greenblatt氏らは、女性へのゾルピデム使用リスクについて、レビューおよび評価を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2019年5月号の報告。ゾルピデムの男女差は臨床試験では実証されていない ゾルピデムの薬物動態、薬力学、有害事象、臨床的有効性、運転能力に対する男女差の影響を評価するため、文献レビューとともにこれまでの研究データをさらに分析した。 ゾルピデムの薬物動態などに対する男女差の影響を評価した主な結果は以下のとおり。・女性では、男性と比較し、ゾルピデムの見かけのクリアランスが平均35%低いことが示唆された(236 vs.364mL/分、p<0.001)。・この違いは、体重による影響を受けていなかった。・いくつかの臨床試験において、同用量を服用している場合、男性よりも女性において機能障害が大きかったが、すべての研究において、経口投与8時間後における活性薬物は、プラセボ群と区分できなかった。・路上走行試験でも同様に、経口即時放出型ゾルピデム10mg投与8時間後において、男性および女性に運転障害があることは示されなかった。・ゾルピデムの臨床的有効性および有害事象における男女差は、臨床試験では実証されておらず、女性において特別なリスクがあることは示されなかった。 著者らは「女性に対するゾルピデム投与量減量は、入手可能な科学的根拠では裏付けられていない。過少投与が不適切な不眠症治療につながり、その結果として起こるリスクを上昇させる可能性がある」としている。■関連記事ゾルピデム処方と自動車事故リスク睡眠薬使用は自動車事故を増加させているのか日本人高齢者の不眠、男女間で異なる特徴:岡山大

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認知症への運動不足の影響、発症前10年から?/BMJ

 運動不足(physical inactivity)と認知症の関連についての観察研究は、逆の因果関係バイアスの影響が働く可能性があるという。フィンランド・ヘルシンキ大学のMika Kivimaki氏らIPD-Work consortiumは、このバイアスを考慮したメタ解析を行い、運動不足はあらゆる原因による認知症およびアルツハイマー病との関連はないのに対し、心血管代謝疾患を発症した集団では、運動不足により認知症リスクがある程度高い状態(1.3倍)にあることを示した。研究の詳細はBMJ誌2019年4月17日号に掲載された。無作為化対照比較試験では、運動による認知症の予防および遅延のエビデンスは得られていない。一方、観察コホート研究の多くはフォローアップ期間が短いため、認知症の発症前(前駆期)段階における身体活動性の低下に起因するバイアスの影響があり、運動不足関連の認知症リスクが過大評価されている可能性があるという。19件の前向き研究を逆の因果関係バイアスを考慮して解析 研究グループは、運動不足は認知症のリスク因子かを検討するために、この関連における心血管代謝疾患の役割および認知症発症前(前駆期)段階の身体活動性の変化に起因する逆の因果関係バイアスを考慮して、19件の前向き観察コホート研究のメタ解析を行った(NordForskなどの助成による)。 19件の研究は、Individual-Participant-Data Meta-analysis in Working Populations(IPD-Work) Consortium、Inter-University Consortium for Political and Social Research、UK Data Serviceを検索して選出した。 曝露は運動不足であり、主要アウトカムは全原因による認知症およびアルツハイマー病とし、副次アウトカムは心血管代謝疾患(糖尿病、冠動脈性心疾患、脳卒中)であった。変量効果によるメタ解析で要約推定量を算出した。運動不足は、発症前10年では関連あり、10年以上前では関連なし 認知症がなく、登録時に運動の評価が行われた40万4,840例(平均年齢45.5歳、女性57.7%、運動不足16万4,026例、活発な身体活動24万814例)について、電子カルテの記録で心血管代謝疾患および認知症の発症状況を調査した。認知症の平均フォローアップ期間は14.9年(範囲:9.2~21.6)だった。 600万人年当たり、2,044例が全認知症を発症した。認知症のサブタイプのデータを用いた研究では、アルツハイマー病は520万人年当たり1,602例に認められた。 認知症診断前の10年間(認知症の発症前段階)の運動不足は、全認知症(ハザード比[HR]:1.40、95%信頼区間[CI]:1.23~1.71)およびアルツハイマー病(1.36、1.12~1.65)の発症と有意な関連が認められた。一方、認知症発症の10年以上前の身体活動を評価することで、逆の因果関係を最小化したところ、活動的な集団と運動不足の集団に、認知症リスクの差はみられなかった(全認知症:1.01、0.89~1.14、アルツハイマー病:0.96、0.85~1.08)。これらの傾向は、ベースラインの年齢別(60歳未満、60歳以上)および性別(男性、女性)の解析でも同様に認められた。 また、認知症発症の10年以上前の運動不足は、糖尿病(HR:1.42、95%CI:1.25~1.61)、冠動脈性心疾患(1.24、1.13~1.36)および脳卒中(1.16、1.05~1.27)の新規発症リスクの上昇と関連し、診断前10年間では、これらのリスクはさらに高くなった。 認知症に先立って心血管代謝疾患がみられた集団では、運動不足の集団は認知症のリスクが過度な傾向がみられたものの、有意ではなかった(HR:1.30、95%CI:0.79~2.14)。心血管代謝疾患がみられない認知症では、運動不足と認知症に関連はなかった(0.91、0.69~1.19)。 著者は、「これらの知見は、運動不足を対象とする介入戦略だけでは、認知症の予防効果には限界があることを示唆する」としている。

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局所進行胃がん周術期療法、FLOT vs.ECF/ECX/Lancet

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部腺がんの治療において、ドセタキセルベースの3剤併用レジメンによる術前後の化学療法は標準レジメンと比較して、全生存期間(OS)を1年以上延長することが、ドイツ・UCT-University Cancer Center FrankfurtのSalah-Eddin Al-Batran氏らが行ったFLOT4-AIO試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月11日号に掲載された。術前後のエピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル(ECF)の有用性を示した大規模臨床試験(MAGIC試験)以降、いくつかのレジメンが検討されたが、いずれも不成功に終わっている。ドセタキセルベースの化学療法では、転移を有する胃・胃食道接合部腺がんにおける有効性が報告されている。FLOT4-AIOはFLOT群とECF/ECX群のレジメンに無作為割り付け FLOT4-AIOは、ドイツの38施設で実施された第II/III相非盲検無作為化試験であり、今回は第III相の結果が報告された(German Cancer Aid[Deutsche Krebshilfe]などの助成による)。 対象は、組織学的に確定された臨床病期cT2以上またはリンパ節転移陽性(cN+)、あるいはこれら双方で、遠隔転移がなく、切除可能な腫瘍を有する患者であった。 被験者は、次の2つのレジメンに無作為に割り付けられた。FLOT群:術前と術後に、2週を1サイクルとして4サイクルずつ、ドセタキセル(50mg/m2)+オキサリプラチン(85mg/m2)+ロイコボリン(200mg/m2)/フルオロウラシル(2,600mg/m2、24時間静注)を1日目に投与。ECF/ECX群(対照群):術前と術後に、3週を1サイクルとして3サイクルずつ、エピルビシン(50mg/m2、1日目)+シスプラチン(60mg/m2、1日目)+フルオロウラシル(200mg/m2、持続静注、1~21日)またはカペシタビン(1,250mg/m2、経口投与、1~21日)を投与。ECF/ECX群のフルオロウラシルかカペシタビンかの選択は担当医が行った。 主要アウトカムはOS(優越性)とし、intention-to-treat解析を実施した。FLOT群はECF/ECX群よりOSが15ヵ月延長 2010年8月~2015年2月の期間に716例が登録され、FLOT群に356例(年齢中央値62歳、男性75%)、ECF/ECX群には360例(62歳、74%)が割り付けられた。フォローアップは2017年3月に終了した。 実際に術前化学療法を開始したのは、FLOT群352例(99%)、ECF/ECX群353例(98%)で、全サイクルを完了したのはそれぞれ320例(90%)、326例(91%)であった。また、術後化学療法を開始したのはFLOT群213例(60%)、ECF/ECX群186例(52%)で、全サイクル完了はそれぞれ162例(46%)、132例(37%)だった。 投与中止の理由は、病勢進行/無効/早期死亡がFLOT群46例(13%)、ECF/ECX群74例(21%)、患者の要望がそれぞれ59例(17%)、62例(17%)、毒性が35例(10%)、47例(13%)であった。 手術開始は、FLOT群345例(97%)、ECF/ECX群341例(95%)、腫瘍手術が行えたのは、それぞれ336例(94%)、314例(87%)であった。断端陰性(R0)切除の達成は、FLOT群が301例(85%)と、ECF/ECX群の279例(78%)に比べ有意に高かった(p=0.0162)。 OS中央値は、FLOT群がECF/ECX群よりも有意に延長した(50ヵ月[95%信頼区間[CI]:38.33~未到達]vs.35ヵ月[27.35~46.26]、ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.63~0.94、p=0.012)。2、3、5年全生存率は、FLOT群がそれぞれ68%、57%、45%、ECF/ECX群は59%、48%、36%であった。このFLOTの治療効果は、すべてのサブグループで一致して認められた。また、無病生存期間中央値もFLOT群で有意に優れた(30ヵ月 vs.18ヵ月、0.75、0.62~0.91、p=0.0036)。 治療に関連する可能性のあるGrade3/4の有害事象のうち、FLOT群で多かったのは、感染症(18 vs.9%)、好中球減少(51 vs.39%)、下痢(10 vs.4%)、末梢神経障害(7 vs.2%)であり、ECF/ECX群で多かったのは、悪心(7 vs.16%)、嘔吐(2 vs.8%)、血栓塞栓イベント(3 vs.6%)、貧血(3 vs.6%)であった。また、治療関連の重篤な有害事象(手術のための入院期間中のものも含む)の発現状況は、両群で同等であった(FLOT群97例[27%]vs.ECF/ECX群96例[27%])。毒性による入院は、それぞれ89例(25%)、94例(26%)に認められた。 著者は、「本試験の結果は、有効な治療選択肢の幅を広げるものである」としている。

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左手(とリズムコントロール)は添えるだけ(解説:香坂俊氏)-1036

心房細動(AF)治療はカテーテルによる肺静脈焼灼術(いわゆるアブレーション)の登場により、多くのブレークスルーが起きているかのように見えるが、実をいうと「リズムコントロールで無理をしない」という軸はブレていない。このことはつい最近結果が発表され巷で話題となっているCABANA試験からも裏打ちされている(10ヵ国126施設が参加した非盲検無作為化試験:「症候性AFへのアブレーションの効果、CABANA試験で明らかに/JAMA」)。今回発表されたRACE-7試験の結果もこの「リズムコントロールで無理をしない」というコンセプトを急性期に拡張したものである(新規発症AFに対して除細動によるリズムコントロールを行うべきかランダム化によって検討:4週間後の洞調律維持率や心血管イベント発症率に有意な差を認めなかった)。(※)ちなみに、RACE-1試験[NEJM 2002]はAFに対してrate v. rhythm controlを比較し、RACE-2試験[NEJM 2010]はrate controlの中で 心拍数80/min以下(strict)v. 110/min以下(lenient)を比較した試験である(今回なぜ一気に「7」に飛んだかは不明)。このRACE試験の系譜でもそうなのであるが、今までAFでリズムコントロールがレートコントロールに予後改善という側面で勝ったことはない。現段階でリズムコントロール戦略は症状に応じて「添えるだけ」という捉え方でよいのではないかと自分は考えている。 現状のおおまかなAF治療方針: 1.血行動態が不安定なときは電気的除細動を考慮 2.それ以外はレートコントロール(lenientでよい) 3.長期的にはCHADS2-VAScに従って抗凝固薬を導入 4.AFの症状が日常生活に影響を及ぼすようであればリズムコントロール 5.その際は抗不整脈薬がダメなときに初めてアブレーション考慮

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英国で食品中の砂糖20%削減へ、関連疾患は抑制されるか/BMJ

 2017年3月、英国政府は、食品製造および小売業界との協働で、シリアルや菓子類など特定の食品群の砂糖含有量を2020年までに20%削減する計画を発表した。イングランド公衆衛生庁(Public Health England)は、砂糖摂取目標を1日摂取カロリーの5%までとすることで摂取カロリーを11%削減し、これによって年間砂糖関連死を4,700件減らし、医療費を年間5億7,600万ポンド抑制するとのモデルを打ち出した。今回、同国オックスフォード大学のBen Amies-Cull氏らは、砂糖減量計画の潜在的な健康上の有益性について予測評価を行い、BMJ誌2019年4月17日号で報告した。砂糖減量計画の肥満、疾病負担、医療費への影響を検討 研究グループは、英国政府による砂糖減量計画が子供および成人の肥満、成人の疾病負担、医療費に及ぼす影響の予測を目的にモデル化研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 全国食事栄養調査(National Diet and Nutrition Survey:NDNS)の2012~13年度と2013~14年度におけるイングランドの食品消費と栄養素含有量データを用いてシミュレーションを行い、砂糖減量計画によって達成される体重およびBMIの潜在的な変化を予測するシナリオをモデル化した。 シナリオ分析は、個々の製品に含まれる砂糖の量の20%削減(低砂糖含有量製品へ組成を変更または販売の重点の転換[砂糖含有量の多い製品から少ない製品へ])または製品の1人前分量の20%削減について行った。イングランドに居住する4~80歳のNDNS調査対象者1,508例のデータを用いた。 主要アウトカムは、子供と成人の摂取カロリー、体重、BMIの変化とした。成人では、質調整生存年(QALY)および医療費への影響などの評価を行った。10年で、糖尿病が15万4,550例減少、総医療費は2億8,580万ポンド削減 砂糖減量計画が完全に達成され、予定された砂糖の減量がもたらされた場合、1日摂取カロリー(1kcal=4.18kJ=0.00418MJ)は、4~10歳で25kcal(95%信頼区間[CI]:23~26)低下し、11~18歳も同じく25kcal(24~28)、19~80歳では19kcal(17~20)低下すると推定された。 介入の前後で、体重は4~10歳で女児が0.26kg、男児は0.28kg減少し、これによってBMIはそれぞれ0.17、0.18低下すると予測された。同様に、11~18歳の体重は女児が0.25kg、男児は0.31kg減少し、BMIはそれぞれ0.10、0.11低下した。また、19~80歳の体重は女性が1.77kg、男性は1.51kg減少し、BMIは0.67、0.51低下した。 全体の肥満者の割合は、ベースラインと比較して、4~10歳で5.5%減少し、11~18歳で2.2%、19~80歳では5.5%減少すると予測された。 QALYについては、10年間に、女性で2万7,855 QALY(95%不確定区間[UI]:2万4,573~3万873)、男性では2万3,874 QALY(2万1,194~2万6,369)延長し、合わせて5万1,729 QALY(4万5,768~5万7,242)の改善が得られると推算された。 疾患別のQALY改善への影響は、糖尿病が圧倒的に大きく、10年間に女性で8万9,571例(95%UI:7万6,925~10万1,081)、男性で6万4,979例(5万5,698~7万3,523)、合計15万4,550例(13万2,623~17万4,604)が減少すると予測された。また、10年で大腸がんが5,793例、肝硬変が5,602例、心血管疾患は3,511例減少するが、肺がんと胃がんの患者はわずかに増加した。総医療費は、10年間に2億8,580万ポンド(3億3,250万ユーロ、3億7,350万米ドル、95%UI:2億4,970万~3億1,980万ポンド)削減されると推定された。 3つの砂糖減量アプローチ(製品組成の変更、1人前分量の削減、販売の重点の転換)のうち、1つで摂取カロリー削減に成功しなかった場合、疾病予防への影響が減衰し、健康上の有益性が容易に失われる可能性が示唆された。 著者は、「英国政府による砂糖減量計画では、砂糖の量および1人前の分量の削減が、摂食パターンや製品組成に予期せぬ変化をもたらさない限り、肥満および肥満関連疾患の負担の軽減が可能と考えられる」としている。

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CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

 CAR-T療法が、白血病や悪性リンパ腫に対する治療として実臨床で使用される日が近づいてきた。2019年3月、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法として国内で初めて、チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)が製造販売承認を取得した。これを受けて4月18日、都内でメディアセミナー(主催:ノバルティス ファーマ)が開催された。 セミナーでは、豊嶋 崇徳氏(北海道大学大学院医学研究院血液内科 教授)、平松 英文氏(京都大学医学部附属病院小児科 講師)が登壇。CAR-T療法(キムリア)の適応症である再発・難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)について、それぞれ実臨床での展望を示した。CAR-T細胞の製造と、実際のCAR-T療法の流れとは CAR-T療法の実施には、まずはじめに患者の末梢血から白血球が採取される。これは成分献血装置を用いた白血球アフェレーシスによって1~2時間かけて、T細胞を含む白血球成分が採取される。凍結保存処理後、米国の製造施設に輸送される。 製造過程では、T細胞の遺伝子改変→細胞増殖→品質チェックというプロセスを経て、病院に製造されたCAR-T細胞(キムリア)が届けられる(最短で5~6週間程度)。患者には、体内のリンパ球を減らしてCAR-T細胞を増殖しやすくするために、リンパ球除去化学療法と呼ばれる前治療が施され(3~4日間)、その後、キムリアが点滴により輸注される(単回投与)。輸注後は通常1~2ヵ月の入院を経て、その後は外来で経過観察が行われる。CAR-T療法(キムリア)のDLBCLへの有効性を確認、ただし慎重な適応判断が必要 DLBCLは悪性リンパ腫の中で最も頻度が高く、約30~40%を占める。本邦における総患者数は約2万1,000人。あらゆる年齢で発症するが、とくに高齢になるにつれ増加する。ただし、小児では他のがんの発症が少ないため高い割合を示す。 標準治療としてR-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)療法が確立されている。しかし、約50%の患者では無効か、再発する。これらの患者の次なる治療法は自家造血幹細胞移植だが、適応があるのはその半数以下で、さらに奏効した患者でも再発がありうる。 こうした再発・難治性DLBCL患者に対するこれまでの救援化学療法の生存期間中央値は、6.3ヵ月1)。対するCAR-T療法であるキムリアの生存期間中央値は、日本人を含む第II相JULIET試験の結果12ヵ月で、奏効率は52%(うち完全奏効:40%)であった2)。 豊嶋氏はこの結果について、「12ヵ月時点の生存率という観点でみると、25%→50%に改善したという結果。すべての患者さんにとって“夢の治療法”とはいえないだろう。奏効する場合は1回の治療で効果が得られ、QOLも高い可能性がある。しかし、状態や進行速度によって、そもそもこの治療に進める患者さんは限られる。さらに製造の待ち時間、製造不良のリスクもある」として、患者やその家族に過度の期待を持たせることに対しては強い懸念を示した。 臨床試験で多く発現したCAR-T療法(キムリア)の有害事象は、サイトカイン放出症候群(58%で発現、中等症以上は22%)、脳症(21%で発現、中等症以上は12%)など。低ガンマグロブリン血症に伴う免疫グロブリン補充療法は30%で実施された。有害事象による死亡事例はなかったが、「身体に対する治療負担の重さという観点でいえば、自家ではなく、同種造血幹細胞移植と近い。実臨床ではかなり慎重な有害事象のコントロールが必要になるだろう」と述べた。CAR-T療法(キムリア)はB-ALLでも奏効例では高い効果、しかし輸注に至らない例も 本邦におけるALLの総患者数は約5,000人。診断時の年齢中央値は15歳で、好発年齢は2~3歳。そして小児ALLの8割以上がB細胞性(B-ALL)と報告されている。1次治療は寛解導入療法・地固め療法・維持療法からなる多剤併用療法である。80~90%が2~3年にわたるこの強力な1次治療によって完全寛解に到達するが、小児患者の約20%で再発する。再発・難治患者の生存可能性は、小児で16~30%に留まる。 平松氏は、承認の根拠となった第II相ELIANA試験3)の日本人成績について詳細を紹介した。日本人患者は、8例(5~24歳、前治療歴3~7回)が登録された。うち、製品不適格(製造されたが、うまく増殖しなかった)1例、製造を待機するうちに原病が悪化した1例を除く6例に、実際にCAR-T療法のキムリアが投与された。 結果は、3例で完全寛解、1例で血球数回復が不十分な完全寛解が得られた。他2例では効果なしであった。同氏は、「寛解が得られた4例ではすべて微小残存病変も陰性。これは非常に高い効果」と話した。 一方で、6例中5例が重症サイトカイン放出症候群を発症。集中治療室での濃厚な治療が必要となった。「全例が治療に反応しコントロールできたが、院内連携を強化し、新たな有害事象の発現を関連部門の医師が迅速に共有する必要がある」とした。CAR-T療法(キムリア)はまず国内2~3施設で開始、ピーク時で年間250人の患者を想定 最後に登壇したノバルティスファーマ オンコロジージャパン プレジデントのブライアン グラッツデン氏は、発売後の見通しについて説明。CAR-T療法のキムリアによる治療を行う医療機関は、細胞採取の品質確保や副作用管理について同社がトレーニングを実施し、認定した施設に限定するとした。発売初期、国内では2~3施設を予定しており、ピーク時の患者数はCAR-T細胞の製造におけるキャパシティもあり年間250人を想定しているという。また、薬価はまだ決定されていないが、米国で導入された「成功報酬型」の支払い方式は日本では採用されない見通しであることも示された。

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