サイト内検索|page:222

検索結果 合計:10324件 表示位置:4421 - 4440

4421.

尿路上皮がんに対するアベルマブのメンテナンスがOS改善(JAVELIN Bladder 100)/ASCO2020

 局所進行または転移のある尿路上皮がん(mUC)に対する1次化学療法後のメンテナンス療法としてのアベルマブの投与が、ベストサポーティブケア(BSC)に比べ全生存期間(OS)を有意に延長することが報告された。これは、JAVELIN Bladder 100試験の第1回中間解析結果で、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)において、英国・Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏より発表された。本試験は、日本も参加した国際共同のオープンラベル第III相比較試験である。・対象:ゲムシタビン+シスプラチン/カルボプラチンによる1次治療に奏効(CR/PR/SD)した切除不能局所進行または転移を有する尿路上皮がん・試験群:アベルマブ10mg/kgを2週間ごと+BSC(Ave群)・対照群:BSC(BSC群)・評価項目[主要評価項目]割り付け全症例(ITT)におけるOSと、PD-L1陽性集団におけるOS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率、安全性など 主な結果は以下のとおり。・Ave群に350例、BSC群に350例が登録された。・データカットオフ(2019年10月)時点の観察期間中央値はAve群19.6ヵ月、BSC群19.2ヵ月であった。・PD-L1(SP263抗体)陽性率はAve群54%、BSC群48%で、1次化学療法の奏効率は、両群ともにCR/PRが72%、SDが28%であった。・ITT集団のOS中央値はAve群が21.4ヵ月、BSC群が14.3ヵ月で、ハザード比(HR)は0.69(95%CI:0.56~0.86)、p<0.001であった。18ヵ月OS率は、Ave群が61%、BSC群が44%であった。・PD-L1陽性集団のOS中央値はAve群が未到達、BSC群が17.1ヵ月で、HR 0.56(95%CI:0.40~0.79)、p<0.001であった。18ヵ月OS率は、Ave群が70%、BSC群が48%であった。・ITT集団のPFS中央値は、Ave群3.7ヵ月、BSC群2.0ヵ月、HR 0.62(95%CI:0.52~0.75)、p<0.001であった。12ヵ月PFS率は、Ave群30%、BSC群13%だった。・PD-L1陽性集団のPFS中央値は、Ave群5.7ヵ月、BSC群2.1ヵ月、HR:0.56(95%CI:0.43~0.73)、p<0.001であった。12ヵ月PFS率は、Ave群36%、BSC群5%だった。・メンテナンス療法中の奏効率は、ITT集団でAve群9.7%(CR 6.0%)、BSC群1.4%(CR 0.9%)で、PD-L1陽性集団ではAve群13.8%、BSC群1.2%であった。・メンテナンス療法後の薬物治療は、Ave群で42.3%、BSC群で61.7%が施行され、他の免疫チェックッポイント阻害薬の投与を受けた症例はそれぞれ、6.3%と43.7%であった。・治療関連有害事象による治療中止は、Ave群の11.9%に認められ、治療関連死は2例あった。免疫関連有害事象はGrade3が7.0%でGrade4以上の報告はなかった。 演者のPowles氏は、「白金製剤による1次治療後のアベルマブのメンテナンス投与は、進行性尿路上皮がんに対する新しい標準治療となり得る」と結んだ。

4422.

第11回 医療従事者には最大20万円の慰労金、二次補正予算が成立

<先週の動き>1.医療従事者には最大20万円の慰労金、二次補正予算が成立2.病院の再編・統合に向け、地域包括ケア病棟の開設条件を緩和3.今年の薬価調査・薬価改定に関係業界から延期論が相次ぐ4.新型コロナによる受診抑制の影響が明らかに(日本医師会)5.新型コロナ接触確認アプリが今週以降にリリース1.医療従事者には最大20万円の慰労金、二次補正予算が成立6月12日、第2次補正予算案が参議院本会議にて賛成多数により可決、成立した。厚生労働省分は追加額4兆9,733億円(うち一般会計3兆8,507億円、労働保険特別会計1兆4,446億円)であり、「感染拡大の抑え込み」と「社会経済活動の回復」の両立を目指すための対策を強化したものとなっている。具体的には、新型コロナ感染者対策として、病床の確保や人工呼吸器の整備、地域の医療提供体制を強化するため「緊急包括支援交付金」2兆2,370億円の増額分が含まれている。新型コロナ患者を受け入れた医療機関のスタッフや感染が発生した介護施設などの職員に対して、慰労金として20万円のほか、患者の受け入れのため病床確保に協力した医療機関のスタッフなどに10万円、その他の医療機関などで働く人には5万円の支給もこの予算成立によって実施される。(参考)新型コロナウイルス感染症対策関係 令和2年度 厚生労働省第二次補正予算案のポイント(厚労省)2.病院の再編・統合に向け、地域包括ケア病棟の開設条件を緩和今年4月から、地域包括ケア病棟は400床以上の病院では開設できないとされていたが、6月10日に開催された中央社会保険医療協議会総会において、病院の再編・統合によって400床以上となった場合においては、規制を緩める方針が打ち出された。今回の規制緩和は、地域の病院再編・統合により地域包括ケア病棟の新規届け出ができなくなることによって、地域医療提供体制の見直しに支障が出てしまうことを防ぐためのもの。医療提供体制について、地域医療構想調整会議で合意が得られている場合、地域包括ケア病棟を1棟に限り開設が可能となる。今月中に改正通知が発出される見込み。(参考)地域包括ケア病棟入院料の取扱いについて(中医協)3.今年の薬価調査・薬価改定に関係業界から延期論が相次ぐ6月10日にオンライン開催された中医協薬価専門部会において、日本医薬品卸売業連合会などから、2年おきから毎年改定となった今年度の薬価調査について、否定的な意見が出された。現在、大半の医薬品卸売業者は、医療機関側からの訪問自粛要請を受けて、通常の納品・配送業務以外、ほとんど営業活動ができていないため、現状では対応が困難であるとしている。また、日本製薬団体連合会からも、平時とは大きく異なる厳しい状況の中、医療提供体制の確保や医薬品流通における安定供給のために全力を傾注しており、今回の薬価調査・薬価改定を実施する状況にはないとの考えを示した。製薬業界としては、COVID-19に対する有効で安全な治療薬やワクチンの研究開発について、あらゆるリソースを最大限に活用し、優先的かつ迅速に取り組まなければならないとしている。日本医師会と日本歯科医師会、日本薬剤師会も、部会後に記者会見を開き、延期が望ましいとする意見を述べている。(参考)中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第166回) 議事次第「関係業界からの意見聴取令和2年度薬価調査の実施の見送りについて(日本医師会)4.新型コロナによる受診抑制の影響が明らかに(日本医師会)日本医師会は、6月10日の記者会見において、新型コロナ感染症拡大期であった2020年3~4月の医療機関経営の状況についての調査結果を明らかにした。4月の入院外総点数は前年に比べて大幅に減少しており、前年同月比で初診料3割以上、再診料は1割以上減。入院外総点数の減少は新型コロナ患者の受入れにかかわらず、総件数が減少していることから、受診控えが理由と考えられる。一方、電話などによる初診は、算定回数としてはわずかであったが、病院の4.2%、診療所の5.6%で実施されており、再診も4月に入って大幅に増加し、再診料または外来診療料に占める電話等再診の算定割合は病院で2.12%、診療所で1.69%であった。同会は、長期処方、電話等再診が拡大していることから、新型コロナ収束後も受診が戻らないことを懸念しており、「このまま国民の医療機関へのアクセスが疎遠になり、健康が脅かされることのないよう、国民への適切な受診勧奨も必要である」とコメントしている。(参考)新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営状況等アンケート調査(2020年3~4月分)(日本医師会)5.新型コロナ接触確認アプリが今週以降にリリース6月中旬に公開予定の「新型コロナウイルス接触確認アプリ」について、厚労省から概要が発表された。新型コロナ感染症拡大防止のために、利用者本人の同意を前提に、スマートフォンのBluetoothを利用して、プライバシーを確保しつつ、新型コロナ陽性者と接触した可能性について通知を受けられる仕組み。同様の試みは韓国やシンガポールなどで導入されているが、効果を発揮させるためには利用者数を増やす必要があり、今後、アプリについての積極的な広報活動が重要となる。(参考)新型コロナウイルス接触確認アプリ COVID-19 Contact-Confirming Application(厚労省)「新型コロナ感染者を追跡するアプリ」が海外で話題。プライバシーの犠牲も止むなしなのか?(GetNavi web)

4423.

血栓溶解療法のドアから針までの時間が短いほど1年後の死亡と再入院は少ない(解説:内山真一郎氏)-1244

 この高齢者向け医療保険制度(Medicare)の受益者を対象とした全米の後方視的コホート研究は、発症後4.5時間以内のtPAの静注療法を行った65歳以上の脳梗塞患者において、病院への到着(ドア)から注射(針)までの時間が短いほど1年後の死亡率と再入院率が低いことを明らかにした。これまでも、ドアから針までの時間が短いほど、院内死亡、出血性梗塞、90日後の転帰不良が少ないことはわかっていたが、1年後という長期の転帰との関係が明らかにされたのは初めてである。 日本脳卒中学会による『脳卒中治療ガイドライン2015[追補2019]』でも、「発症後4.5時間以内であっても、治療開始が早いほど良好な転帰が期待できる。このため、患者が来院した後、少しでも早く(遅くとも1時間以内に)アルテプラーゼ静注療法を始めることが強く勧められる」とされている。ただし、脳主幹動脈閉塞例に関しては、機械的血栓回収療法前の血栓溶解療法はスキップしても転帰は変わらないという成績が中国や日本から発表されている。

4424.

ACE2遺伝子発現の年齢依存的な増加はCOVID-19重症化と関連?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、小児では比較的重症化しにくいとされている。その要因の1つとして、小児の鼻上皮におけるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)発現が成人より少ないことがあるかもしれない。米国・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのSupinda Bunyavanich氏らの調査で、鼻上皮におけるACE2遺伝子発現が年齢とともに増加することが示された。JAMA誌オンライン版2020年5月20日号リサーチレターでの報告。ACE2遺伝子発現は10歳未満で最も低く、年齢とともに増加 本研究は、2015~18年にMount Sinai Health System(ニューヨーク市)を受診した4~60歳の患者の鼻上皮を後ろ向きに調査した。サンプルは、喘息におけるバイオマーカー研究のため、喘息の有無にかかわらず収集されたもの。線形回帰モデルは、統計処理ソフトウェアR version 3.6.0(R Foundation)を使用して、ACE2遺伝子発現を100万当たりのlog2カウントで従属変数として、年齢層を独立変数として作成した。年齢層は、10歳未満(45例)、10〜17歳(185例)、18〜24歳(46例)、25歳以上(29例)の4群に分類した。 4~60歳のCOVID-19患者のACE2遺伝子発現を調査した主な結果は以下のとおり。・305例のコホートが収集され、そのうち48.9%が男性、49.8%が喘息だった。・鼻上皮に年齢依存的なACE2遺伝子発現が見られた。ACE2遺伝子発現は、10歳未満で最も低く2.40(95%信頼区間:2.07~2.72)で、年齢とともに増加し、10〜17歳では2.77(同:2.64~2.90)、18〜24歳では3.02(同:2.78~3.26)、25歳以上では3.09(同:2.83~3.35)だった。・従属変数としてのACE2遺伝子発現および独立変数としての年齢層を使用した線形回帰は、年少児と比較して、ACE2遺伝子発現が年長児(p=0.01)、若年成人(p<0.001)、および成人(p=0.001)で有意に高かったことを示した。・性別と喘息について調整された線形回帰モデルでも、ACE2遺伝子発現と年齢層間に有意な関連(両側検定、有意な閾値:p≦0.05)が示され、この関連が性別と喘息に依存しないことを示した。 著者らは「この研究結果は、SARS-CoV-2と人体の最初の接触点である鼻上皮におけるACE2発現が年齢依存的であることを示している。成人に比べて子供のACE2発現が低いことが、COVID-19が子供に少ない理由を説明するのに役立つかもしれない。なお、本研究の限界として60歳以上の検体が含まれていないということがある」と述べている。

4425.

進行前立腺がんへのレルゴリクス、持続的アンドロゲン除去療法で好成績/NEJM

 進行前立腺がん患者の治療において、レルゴリクス(進行前立腺がん治療薬としての適応は未承認)はリュープロレリンに比べ、テストステロンをより迅速かつ持続的に抑制し、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクをほぼ半減させることが、米国・Carolina Urologic Research CenterのNeal D. Shore氏らの検討「HERO研究」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年6月4日号に掲載された。リュープロレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)作動薬の注射剤は、投与初期においてテストステロン値が上昇し治療効果発現の遅延が認められるが、前立腺がんにおけるアンドロゲン除去療法の標準薬とされる。一方、レルゴリクスは、経口ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体拮抗薬で、下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を迅速に阻害し、テストステロン値を低下させることが、複数の第I相および第II相試験で確認されている。2剤を直接比較する無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む世界の155施設が参加した非盲検無作為化第III相試験で、2017年4月~2018年10月の期間に患者登録が行われた(Myovant Sciencesの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的に前立腺の腺がんと確定され、1年以上の持続的アンドロゲン除去療法が可能と判定された患者であった。 被験者は、レルゴリクス(120mg、1日1回、経口)またはリュープロレリン(3ヵ月ごとに注射)の投与を受ける群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、48週の治療が実施された。 主要エンドポイントは、48週を通じてテストステロン値が去勢レベル(<50ng/dL)で持続することとした。副次エンドポイントは、主要エンドポイントの非劣性、4日目のテストステロン値の去勢レベルおよび15日目の高度去勢レベル(<20ng/dL)の達成などであった。また、テストステロン回復に関してサブグループ解析を行った。主要エンドポイント:96.7% vs.88.8%、MACEリスク54%低下 930例が登録され、レルゴリクス群に622例、リュープロレリン群には308例が割り付けられた。ベースラインの全体の年齢中央値は71歳(範囲:47~97)で、日本人患者が11.5%含まれた。前立腺特異抗原(PSA)の平均値はレルゴリクス群が104.2±416.0ng/mLと、リュープロレリン群の68.6±244.0ng/mLに比べ高かったが、中央値ではそれぞれ11.7ng/mL、9.4ng/mLであり、類似していた。追跡期間中央値は52週だった。 去勢レベル(<50ng/dL)のテストステロン値が48週間持続した患者の割合は、レルゴリクス群が96.7%(95%信頼区間[CI]:94.9~97.9)、リュープロレリン群は88.8%(95%CI:84.6~91.8)であった。群間の差は7.9ポイント(95%CI:4.1~11.8)であり、レルゴリクス群の非劣性と優越性が示された(優越性のp<0.001)。 主な副次エンドポイントである4日目のテストステロン値が去勢レベル(<50ng/dL)の患者の割合(レルゴリクス群 56.0% vs.リュープロレリン群 0%)、15日目のテストステロン値が去勢レベルの患者の割合(98.7% vs.12.0%)、15日目のPSA奏効(PSA値の50%以上の低下)が29日目にも確認された患者の割合(79.4% vs.19.8%)、15日目のテストステロン値が高度去勢レベル(<20ng/dL)の患者の割合(78.4% vs.1.0%)、24週時の平均FSH値(1.72 IU/L vs.5.95 IU/L)はいずれも、レルゴリクス群がリュープロレリン群に比べて良好であった(いずれもp<0.001)。 テストステロン値の回復を追跡した184例のサブグループでは、投与中止後90日目の平均テストステロン値はレルゴリクス群が288.4ng/dL、リュープロレリン群は58.6ng/dLであった。90日目に280ng/dL(正常範囲の下限値)以上に回復した患者の割合は、レルゴリクス群が54%、リュープロレリン群は3%だった(名目上のp=0.002)。 有害事象の発生率は、両群でほぼ同様であった。最も頻度の高い有害事象はホットフラッシュ(レルゴリクス群54.3%、リュープロレリン群51.6%)だった。致死的有害事象が、レルゴリクス群7例(1.1%)およびリュープロレリン群9例(2.9%)で認められた。48週時のMACE(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、全死因死亡)の発生率は、それぞれ2.9%および6.2%であった(ハザード比:0.46、95CI:0.24~0.88)。 著者は、「進行前立腺がん男性の経口薬による治療では、アドヒアランスの低下が懸念されるが、この研究では99%以上であり、注射剤とほぼ同等であった」としている。

4426.

acalabrutinib、新型コロナ重症例のサイトカインストーム改善/アストラゼネカ

 多施設無作為化非盲検国際共同試験のCALAVI試験において、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤acalabrutinib(国内未承認)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の炎症マーカーを低下させ、臨床転帰を改善したと示された。これを受け、アストラゼネカは2020年6月5日に本試験結果を発表。Science Immunology誌2020年6月5日号にも同時掲載された。 現在、ウイルス誘発性の過剰免疫反応(高サイトカイン血症、サイトカインストーム)がCOVID-19患者の呼吸器疾患の主な発症機序であると仮説が立てられている。そこで、本試験ではCOVID-19入院患者を対象とし、既存のベストサポーティブケアにacalabrutinibを追加した併用療法による効果について検証された。主要評価項目は治療後の生存患者数および呼吸不全を回避できた患者数。本試験は世界中で実施されており、米国、欧州、そして日本も参加している。 本試験結果によると、acalabrutinibをCOVID-19重症患者19例(酸素補充:11例、人工呼吸器管理:8例)に投与。10〜14日間の治療コースにおいて、acalabrutinib投与により大部分の患者の酸素化を改善した。また、CRPとIL-6、リンパ球の減少と相関して酸素化が改善した。acalabrutinib投与終了後、酸素補充を要した11例中8例(72.7%)と人工呼吸器管理を要した8例中2例(25%)は室内気で退院。人工呼吸器管理を要した8例中4例(50%)は抜管に成功した。 次世代の選択的BTK阻害薬のacalabrutinibは、B細胞の増殖・輸送・遊走化、および接着に必要な情報伝達系の活性化を引き起こすBTKに結合し、阻害作用を発揮する。現在、日本国内では未承認であるが、成人の慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ性リンパ腫(SLL)、成人マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療薬として米国、オーストラリア、アラブ首長国連邦、インドなどで承認されている。ただし、現時点でSARS-CoV-2関連疾患の治療薬としては承認されていない。

4427.

HER2+転移乳がんへのpyrotinib+カペシタビン、ラパチニブ併用よりPFS延長(PHOEBE)/ASCO2020

 トラスツズマブと化学療法の治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がんに対して、pan-ErbB阻害薬pyrotinibとカペシタビンの併用が、ラパチニブとカペシタビンの併用より無増悪生存期間(PFS)を延長したことが、第III相PHOEBE試験で示された。中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのBinghe Xu氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。 pyrotinibは、EGFR、HER2、HER4を標的とする不可逆的pan-ErbB受容体チロシンキナーゼ阻害薬である。第I/II相試験で、カペシタビンとの併用で転移を有するHER2陽性乳がん患者における臨床的ベネフィットと許容可能な忍容性が確認されている。今回、ラパチニブとカペシタビンとの併用と比較した多施設無作為化非盲検第III相試験であるPHOEBE試験の結果が報告された。・対象:トラスツズマブとタキサンおよび/またはアントラサイクリンの治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がん患者(転移後の化学療法は2ラインまで)・試験群:pyrotinib(400mg、1日1回経口)+カペシタビン(1,000mg/m2、1日2回経口、Day 1~14、21日ごと)134例(pyrotinib併用群)・対照群:ラパチニブ(1,250mg、1日1回経口)+カペシタビン(試験群と同じ)132例(ラパチニブ併用群)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、無増悪期間(TTP)、安全性 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、ラパチニブ併用群の6.8ヵ月に比べて、pyrotinib併用群が12.5ヵ月と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.39、95%CI:0.27~0.56、片側p<0.0001)。・トラスツズマブ抵抗性症例におけるPFS中央値も、ラパチニブ併用群6.9ヵ月に比べてpyrotinib併用群12.5ヵ月と延長する傾向がみられた(HR:0.60、95%CI:0.29~1.21)。・ORRはpyrotinib併用群67.2% vs.ラパチニブ併用群51.5%、CBRは73.1% vs.59.1%、DOR中央値は11.1ヵ月 vs.7.0ヵ月であった。・OS中央値は両群とも未達だが、1年OSはpyrotinib併用群91.3%、ラパチニブ併用群77.4%で、pyrotinib併用群で大きく改善する傾向がみられた。・Grade 3以上の治療関連有害事象は、pyrotinib併用群が57.5%に、ラパチニブ併用群が34.1%に発現し、下痢(30.6% vs.8.3%)および手足症候群(16.4% vs.15.2%)が多かった。

4428.

日本における無理心中の特徴【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第164回

日本における無理心中の特徴pixabayより使用時折テレビで流れる無理心中のニュース。本当に追い詰められての選択肢だと思うのですが、幼い子供が親に殺されるニュースを見ると、いたたまれなくなります。そんな無理心中の症例をまとめた報告がありました。世の中にはスゴイ報告があるもんだ。ブルブル……。Satoh F, et al.Trend of homicide-suicide in Kanagawa Prefecture (Japan): Comparison with western countries. Med Sci Law. 2016 Oct;56(4):258-263. これは、神奈川県における76件の無理心中例、169例の死亡者を調べた珍しい研究です。無理心中の加害者と被害者の関係、犠牲者の数、年齢、性別、原因、亡くなった場所、動機などを調べました。まず、加害者と被害者の関係は、24件(31%)が夫婦、22件(29%)が親と18歳以上の子供、19件(25%)が親と17歳以下の子供、7件(9%)が家族、2件(3%)がカップル、2件(3%)がその他の関係でした。加害者は、39件が男性、40件が女性で、平均年齢は51.6歳でした。被害者は男性39人、女性51人で、平均年齢は35.4歳でした。驚くべきことに、この研究では加害者の約半数が女性でした。欧米では、こういった無理心中例や殺人における加害者のほとんどが男性ですので、日本独特の現象なのかもしれません。また、日本では親子間での無理心中が際立って多く、母親が幼い子供を殺した後に自分も自殺するパターンが多かったそうです。育児疲れでノイローゼになった母親が……というのが典型的でしょうか。もちろん、家庭内暴力が隠れているケースや、精神疾患が影響するケースもあるので1)、そういうサインを見逃さないよう注意が必要です。1)Flynn S, et al. Homicide-suicide and the role of mental disorder: a national consecutive case series. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2016 Jun;51(6):877-84.

4429.

第10回 救える未来があるならば高額薬でもいいじゃない-ゾルゲンスマは少子化対策の切り札だ

新型コロナウイルス感染症パンデミックに伴い、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言が行われたインパクトは絶大で、その間起きていた現象やニュースはやや吹き飛ばされた感がある。その一つが5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)で薬価収載が了承された脊髄性筋萎縮症治療薬・ゾルゲンスマ(一般名:オナセムノゲン アベパルボベク)の件である。1患者当たりの薬価は1億6,707万7,222円と薬価収載品としては初の億超えを記録。従来の最高薬価はCAR-T細胞療法・キムリアの投与1回当たり3,349万3,407円であり、その5倍超の薬剤が登場したことになる。もっともこの件は、既に2019年5月に米・FDAの承認が先行し、そこで日本円にして2億3,300万円の薬価がついていたために、「ああ、やっぱり」という程度の反応だった医療関係者も少なくないだろう。この薬価収載了承時の新聞各紙の見出しを並べると、次のようになる。ゾルゲンスマ、1回1.7億円 難病治療薬、保険対象に 厚労省(朝日新聞)超高額薬「ゾルゲンスマ」保険適用を了承 国内最高の1億6707万円(毎日新聞)難病治療薬「ゾルゲンスマ」薬価1億6700万円で保険適用(読売新聞)乳幼児難病薬1.6億円 最高額、保険適用へ 脊髄性筋萎縮症(産経新聞)医療保険ゆさぶる高額薬 1億6707万円、20日保険適用(日本経済新聞)メディアの側にいる身として、こういう見出しにならざるを得ないことは重々承知している。そして記事の中身については、医療保険財政への影響に関する言及の仕方で3つに分けられる。影響を懸念:産経新聞、日本経済新聞影響はなし:読売新聞言及はせず:朝日新聞、毎日新聞もっともこれらの記事中にもあるように、ゾルゲンスマの投与対象となる患者は年25人程度で、年間売上高は42億円の見込みであるため、前述の分類で厳格に採点するならば、後二者が○になる。脊髄性筋萎縮症、そしてゾルゲンスマとは?そもそも脊髄性筋萎縮症(SMA:spinal muscular atrophy)は、ざっくり言えば、運動神経細胞生存(SMN:survival motor neuron)遺伝子の欠失あるいは変異により筋力低下、筋萎縮、深部腱反射の減弱・消失を起こす遺伝性疾患だ。小児期に発症するI型(重症型、別名:ウェルドニッヒ・ホフマン病)、II型(中間型、別名:デュボビッツ病)、III型(軽症型、別名:クーゲルベルグ・ウェランダー病)、成人期に発症するIV型に分類される。発症時期が早期であればあるほど重症で、生後6ヵ月ごろまでに発症するⅠ型の場合、ミルクを飲むことすら困難で、支えなしに座ることすらできない。人工呼吸器を用いなければ、ほとんどの患者が1歳半までに死亡するという厳しい予後である。ゾルゲンスマは、アデノ随伴ウイルス(AAV:Adeno Associated Virus)にSMAの原因となるSMN遺伝子を組み込んだもの。これを1回注射することで正常な遺伝子を長期的に補い、症状を改善する。I型SMA患者15例を対象に行われた海外の第Ⅰ相試験・CL-101試験では、投与後24ヵ月のフォローアップ完了時点で全員が人工呼吸器なしで生存。支えなしで座るなど、運動機能も大幅に改善されたことがわかっている。まだまだ長期評価は必要だが、ある種の治癒に近い状態が得られる可能性も指摘されている。高額新薬への財政懸念と命を天秤に掛ける?こうした薬剤が世に出るようになった背景には、製薬業界の変化と技術革新がある。従来、製薬企業各社は生活習慣病領域など、メガマーケットを軸に創薬を行ってきたが、これらの領域では近年、創薬ターゲットが枯渇しつつある。その結果、1ヵ国での患者数は少ないものの、世界的に見れば一定の患者数があり、なおかつ高薬価になる難病・希少疾患に対する創薬が活発化してきた。これを「カネ亡者」と評する向きもあることは承知しているが、結果として患者への恩恵が増えていることからすれば、私個人はどうでもいいことと思っている。むしろそれ以上に、こうした高薬価の希少疾病治療薬が登場する度にむしずが走るのが「知ったかぶりの保険財政懸念派」である。世界最速の少子高齢化が進行する日本では、将来的に医療保険財政の逼迫は確実である。しかし、その陰で飲み忘れや自己中断による残薬の額が年間推定約500億円にものぼるとの試算を代表に、数々の無駄が指摘されている。国民皆保険を維持しながら持続的な社会保障制度を維持していくとするならば、少子高齢化のうち、「高齢化」については、医療とは無縁ではいられない高齢者での医療費適正化・低減化に取り組むのは当然と言えば当然で、そのために国や現場の医療従事者が必死に取り組んでいるのは百も承知している。しかし、少子高齢化のうち「少子化」については、どうにも決定打に欠ける政策ばかりだと常に感じている。今年5月29日に閣議決定された第4次の「少子化社会対策大綱」を見ても溜息が出る。要は働き方改革・IT化による「産めよ増やせよ」でしかない。だが妊娠・出産、さらにその後の育児は男女のパートナーシップの中での価値観に左右されるもので、単に労働時間や子育て関連給付の変更で何とかなるものではないことは明らかである。少子化対策の発想転換を一方、視点を変えて厚生労働省が発表する人口動態統計2018年版を見てみよう。年齢・死因別でみると、今回のSMAに代表されるような「先天奇形、変形及び染色体異常」により亡くなる未成年は758人いる。同じく、がんで380人、心疾患で139人の未成年が命を落とす。周産期にかかわる障害などで500人弱の0歳児の命が失われている。これらは統計上、各年齢で死因トップ10に挙げられているものを集計しただけで、そのほかにも医療の進化・充実次第で失われなくて済む若年者がいる。たぶんその数は10代までで数千人はいるだろうし、これを20代まで拡大するなら万単位になるだろう。「そんな数はたかだか知れている」という御仁もいるかもしれない。しかし、考えてみて欲しい。厚生労働省が2019年12月に発表した人口動態統計の年間推計によると、同年の日本人の国内出生数は86万4,000人である。今後この数は確実に減少していく。ならば、新規出生数の1%程度の若年者数千人の命を医療で救うことができるならばそれも十分意味のあることではないだろうか?そしてもし前述のような若年者が医療のおかげで一定レベルの日常生活を取り戻せるならば、彼らが将来働くことで経済を潤すかもしれないし、直接的にお金には換算できなくとも新たな価値を生む可能性だってある。またその介護などに時間を割かれていた家族も働くことができるようになるかもしれない。さらにはこうした若年者が家庭を持って子供を持つかもしれない。その意味で「少子高齢化」対策として、若年者を死なせない医療・創薬という視点があってもいいのではないかと常に思っている。どうにも大人の世界は引き算ばかりの夢のない世界になりがちだ。実は私は過去のテレビCMで今でも時々思い出すものがある。いつの時期だったか忘れたがNTTドコモのCMだ。CMでは手塚治虫原作のSF漫画「鉄腕アトム」の白黒テレビアニメ時代の映像が登場し、その手には携帯のようなものが握られている。鉄腕アトムのテーマソングをバックに流れたキャッチフレーズは次のようなものだった。「僕たちが夢見た未来がやってきた」これまで、難病で失われていった若年者にも生きていた時に夢見た未来があったはず。それを大人の銭感情だけで汚して良いものかと、ゾルゲンスマの薬価収載に際して思うのだ。今回のSMAについては患者家族による「脊髄性筋萎縮症家族の会」がある。このホームページの背景にはSMA患者の子供たちの写真がモザイクのように配され、その多くが人工呼吸器を装着している。ゾルゲンスマは適応が2歳未満となっているため、世界各地で承認を待ちわびながらも間に合わず、やむなく気管切開して人工呼吸器を装着したSMA患者も少なくないと聞く。私はこのホームページの背景が人工呼吸器なしで笑う子供たちで埋め尽くされ、したり顔で経済性を語っていた大人が黙りこくる未来がやってくることを今期待している。

4430.

COVID-19、抗がん剤治療は死亡率に影響せず/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者の死亡率は、主に年齢、性別、基礎疾患により上昇することが示された。また、細胞障害性抗がん剤または他の抗がん剤治療中のがん患者が、こうした積極的治療を受けていない患者と比べて、COVID-19による死亡リスクが高いというエビデンスを確認できなかったという。英国・Institute of Cancer and Genomic SciencesのLennard Y. W. Lee氏らが、UK Coronavirus Cancer Monitoring Project(UKCCMP)による前向きコホート研究の結果を報告した。がん患者、とくに全身薬物療法を受けている患者は、COVID-19による死亡リスクが高いと考えられていたが、この推測を支持する大規模な多施設共同研究のデータは乏しかった。Lancet誌オンライン版2020年5月28日号掲載の報告。UKCCMPに登録された最初の新型コロナ感染症のがん患者800例を解析 UKCCMPは、COVID-19のがん患者における臨床的および人口統計学的特徴とCOVID-19の転帰を検討し、がんの存在およびがん治療がCOVID-19に及ぼす影響を評価する目的で、2020年3月18日に発足した、最初のCOVID-19臨床レジストリである。ほぼリアルタイムでデータの収集、分析およびレポートを可能にし、迅速な臨床的意思決定をサポートしている。 研究グループは、英国がんネットワークのがんセンターを受診しているすべてのがん患者のうち、鼻咽頭拭い液のRT-PCR検査でSARS-CoV-2陽性と判定された患者を登録した(画像診断または臨床的にCOVID-19と診断されてもRT-PCR検査が陰性の患者は除外)。 今回は、2020年3月18日~4月26日の期間に、英国内のがんセンター55施設で登録された症候性COVID-19を有するがん患者800例について解析した。主要評価項目は、患者が入院中にその施設で評価された全死亡または退院である。抗がん剤はがん患者の新型コロナ感染症による死亡に有意な影響を及ぼさない 解析対象800例のうち、412例(52%)は軽症COVID-19で、226例(28%)が死亡した。死亡リスクは、年齢の上昇(オッズ比[OR]:9.42、95%信頼区間[CI]:6.56~10.02、p<0.0001)、男性(OR:1.67、95%CI:1.19~2.34、p=0.003)、高血圧(OR:1.95、95%CI:1.36~2.80、p<0.001)および心血管疾患(OR:2.32、95%CI:1.47~3.64、p=0.0003)などの基礎疾患の存在と有意な関連が認められた。 281例(35%)が、RT-PCR検査で陽性と判定される前4週以内に細胞障害性抗がん剤による治療を受けていた。年齢、性別、基礎疾患で補正すると、新型コロナウイルス感染症による死亡率は、過去4週間に抗がん剤治療を受けた患者と受けていない患者とで有意差はなかった(OR:1.18、95%CI:0.81~1.72、p=0.380)。また、過去4週以内に免疫療法、ホルモン療法、分子標的療法、放射線療法を受けた患者においても、死亡率に有意な影響は認められなかった。

4431.

アジアの肺がんのためのガイドライン、局所進行肺がんPan-Asian ESMOガイドライン【肺がんインタビュー】 第47回

第47回 アジアの肺がんのためのガイドライン、局所進行肺がんPan-Asian ESMOガイドライン出演:九州がんセンター 呼吸器腫瘍科 瀬戸 貴司氏アジアの肺がん治療の特性や現状に適合した初めてのガイドラインである、局所進行肺がんPan-Asian ESMOガイドラインが本年(2020年)1月、Annals of Oncology誌に発表された。このガイドラインはどう作られ、どう読み、どう活用するべきか、作成委員の一人である九州がんセンター瀬戸 貴司氏に聞いた。参考K Park, et al. Pan-Asian Adapted ESMO Clinical Practice Guidelines for the Management of Patients With Locally-Advanced Unresectable Non-Small-Cell Lung Cancer: A KSMO-ESMO Initiative Endorsed by CSCO, ISMPO, JSMO, MOS, SSO and TOS.An Oncol.2020;31:191-201P E Postmus, et al. Early and Locally Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer (NSCLC): ESMO Clinical Practice Guidelines for Diagnosis, Treatment and Follow-Up.Ann Oncol. 2017 Jul 1;28(suppl_4):iv1-iv21.

4432.

veliparib、gBRCA変異のないBRCA-like型TN乳がんでPFS改善(SWOG S1416)/ASCO2020

 転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がんで、生殖細胞系列BRCA遺伝子(gBRCA)変異はないが、相同組み換え修復不全(HRD)スコアや体細胞系列BRCA1/2変異などの分析でBRCA-like型に分類された患者に対し、PARP阻害薬veliparibをシスプラチンに追加することで無増悪生存期間(PFS)が延長したことが、第II相SWOG S1416試験で示された。米国・University of Kansas Medical CenterのPriyanka Sharma氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。 PARP阻害薬は、gBRCA1/2変異のある進行乳がんでPFSを改善することが報告されている。また、TN乳がんの40~60%はHRDを示し、HRDはPARP阻害薬の感受性に関連することが示唆されている。・対象:転移/局所再発のTN乳がんまたはgBRCA1/2変異HER2陰性の進行乳がん患者・試験群:シスプラチン(75mg/m2)+veliparib(300mg経口投与、1日2回、Day 1~14)、3週ごと(veliparib群)・対照群:シスプラチン(75mg/m2)+プラセボ(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]3グループ(gBRCA陽性、BRCA-like、非BRCA-like)におけるPFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性 3グループの分類については、veliparib群とプラセボ群に割り付けた後にgBRCA検査を実施し、変異がない場合は追加のバイオマーカー分析(myChoiceによるHRDスコアが42以上、体細胞系列BRCA1/2変異、BRCA1遺伝子プロモーター領域のメチル化、生殖細胞系列の相同組み換え修復遺伝子変異)を実施し、gBRCA変異あり、BRCA-like(追加のバイオマーカー分析で陽性であった患者)、非BRCA-likeに分類した。 主な結果は以下のとおり。・無作為に割り付けられた335例中、321例(95.8%)が有効性評価の適格基準を満たした(veliparib 群161例[50.2%]、プラセボ群160[49.8%])。・平均年齢は56歳、TNBCが95%、白人が76%、未治療患者が69%であった。・gBRCA変異ありが37例(11.5%)、BRCA-like が99例(30.8%)、非BRCA-like が110例(34.3%)、未分類が75例(23.4%)であった。・gBRCA変異ありにおいて、veliparib群のPFS中央値が6.2ヵ月、プラセボ群6.4ヵ月で有意差が認められなかった(HR:0.66、95%CI:0.30~1.44、p=0.29)・gBRCA-likeにおいて、veliparib群のPFS中央値が5.9ヵ月、プラセボ群4.2ヵ月に比べて有意に延長した(HR:0.53、95%CI:0.34~0.83、p=0.006)。・非BRCA-like、未分類では、PFSの有意な改善は見られなかった。・サブグループ解析では、BRCA-likeにおいて、veliparibを1次治療で投与された患者のPFS中央値が、veliparib群が6.1ヵ月でプラセボ群の4.2ヵ月より有意に延長し(HR:0.49、95%CI:0.29~0.83、p=0.008)、OS中央値もveliparib群が17.8ヵ月とプラセボ群の10.3ヵ月より有意に延長した(HR:0.53、95%CI:0.28~0.99、p=0.048)。さらにHRDスコアが42以上のPFS中央値も、プラセボ群4.2ヵ月に対してveliparib群6.1ヵ月と有意に延長していた(HR:0.53、95%CI:0.31~0.89、p=0.016)。・Grade3/4の有害事象は、好中球減少症(46% vs.19%)、貧血(23% vs.7%)、白血球減少症(27% vs.7%)、血小板減少症(19% vs.3%)において、veliparib群でプラセボ群より有意に発現率が高かった(すべてp<0.001)。 Sharma氏は、gBRCA変異ありのグループで有意差が見られなかった理由として、患者数が37例と少ないことによるパワー不足を挙げ、第III相BROCADE3試験ではveliparibの追加でPFSが改善していることを紹介した。最後に、BRCA-likeのTN乳がんにおける有効性を示した本試験は、PARP阻害薬の役割をgBRCA変異を越えて広げるための大きな前進である、と結んだ。

4433.

距離1m以上で感染リスク8割以上減少、マスクでも/Lancet

 ウイルス伝播の予防に、人との物理的距離(physical distance、フィジカルディスタンス)1m以上の確保、フェイスマスクおよび保護眼鏡の着用が有効であることが、カナダ・マックマスター大学のDerek K. Chu氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果、示された。解析は、6大陸・16ヵ国で行われた172件の観察研究など患者総数2万5,697例を含むデータを包含して行われ、フィジカルディスタンスが1m以上の場合、感染リスクは約82%減少、フェイスマスクの着用は約85%減少することが示されたという。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、人から人への感染が濃厚接触により拡大している。研究グループは医療機関および非医療機関(コミュニティなど)におけるウイルス伝播について、フィジカルディスタンス、フェイスマスク、保護眼鏡の影響を明らかにするため本検討を行った。Lancet誌オンライン版2020年6月1日号掲載の報告。フィジカルディスタンスなどの影響をシステマティック・レビューとメタ解析で検証 システマティック・レビューとメタ解析は、フィジカルディスタンス、フェイスマスク、保護眼鏡の影響を明らかにするために、PubMedやEmbaseなど世界保健機関(WHO)が特定する21の標準的データベースと、COVID-19の特異的データベースを基に、重症急性呼吸器症候群を引き起こすSARS-CoV-2とβコロナウイルス、および中東呼吸器症候群(MERS)に関するデータを集めて行われた。 2020年5月3日時点でシステマティック・レビューを実施。言語は問わなかったが、比較試験であることを適格条件とし、また、試験の容認度や柔軟性、資源活用性、公平性の文脈的要因を確認した。そのうえで試験結果をスクリーニングしデータを抽出、バイアス・リスクについては2度評価した。 頻度論的統計、ベイズ・メタ解析、ランダム効果メタ回帰解析を行った。エビデンスの確実性については、Cochrane法とGRADEアプローチで評価した。フィジカルディスタンス1m以上で0.18倍、マスクで0.15倍、保護眼鏡で0.22倍に 検索により、6大陸にわたる16ヵ国からの観察研究172件を特定した。無作為化試験はなかった。 医療現場・非医療現場で行われた比較試験であるとの適格条件を満たした44件(患者総数2万5,697例)を対象にメタ解析を行った。 感染リスクは、フィジカルディスタンスが1m未満の場合に比べ1m以上の場合は、大幅に低下した(被験者総数1万736例、統合補正後オッズ比[OR]:0.18[95%信頼区間[CI]:0.09~0.38]、群間リスク差[RD]:-10.2%[95%CI:-11.5~-7.5]、中等度の確実性)。物理的間隔が広がるほど、ウイルスの感染防御は増大した(1m増の相対リスク[RR]変化:2.02、交互作用のp=0.041、中等度の確実性)。 フェイスマスクの着用も、感染リスクの大幅な減少につながった(被験者総数2,647例、統合補正後OR:0.15[95%CI:0.07~0.34]、RD:-14.3%[95%CI:-15.9~-10.7]、低度の確実性)。とくに、N95マスクや類似の防毒マスクは、使い捨てサージカルマスクや類似のマスク(再利用できる12~16層の綿マスクなど)と比べ、感染予防効果との関連性が強かった(交互作用p=0.090、事後確率95%超、低度の確実性)。 保護眼鏡の使用も感染リスクの低減につながった(被験者総数3,713例、統合補正後OR:0.22[95%CI:0.12~0.39]、RD:-10.6%[95%CI:-12.5~-7.7]、低度の確実性)。 未補正試験やサブグループ解析、感度解析でも、同様の結果が得られた。 著者は、「システマティック・レビューとメタ解析の結果は、1m以上のフィジカルディスタンスを支持するもので、政府が取り組むべきモデルおよび接触者追跡の定量的推定値が明らかになった。解析結果に基づき、公共の場および医療機関でのフェイスマスク、防毒マスク、保護眼鏡の適切な使用を広報しなければならない」と述べるとともに、「今回の介入のエビデンスをより明らかにするために、頑健な無作為化試験を行う必要があるが、解析結果は現時点で得られる最善のエビデンスであり、中間的なガイダンスとして利用可能と思われる」とまとめている。

4434.

HFrEF患者の死亡率はこの20年で半分になった!(解説:絹川弘一郎氏)-1242

 HFrEFの治療薬は2000年くらいにはACE阻害薬とβ遮断薬が基礎治療薬で、数年のうちにARBとMRAが出そろった。エナラプリルとカルベジロールが第1世代のHFrEF治療薬であろうか。ARBはやや遅れてスタートしたので1.5世代薬くらいの印象である。ただACE阻害薬に優るエビデンスはなく多くは咳が出たときの代替薬なので、大きなインパクトではない。MRAについては古くからスピロノラクトンがあるもののunderuseが続き、2011年により忍容性の高いエプレレノンが登場したが、現在の実臨床でもファーストラインで投与される率はまだ低い。しかし、ARNIが2014年にPARADIGM-HF試験1)でHFrEFに対しACE阻害薬を上回る効果を示し、2019年にはSGLT2阻害薬が非糖尿病HFrEFでも有効と証明してみせた。対象は限定的であるが2010年にイバブラジンも予後改善効果を示した。このように2010年代はHFrEF治療の第2世代薬(ARNI、SGLT2阻害薬、イバブラジン)が登場したまさにパラダイムシフトのdecadeであった。それを総括する論文がこのLancet誌である。 この論文はEMPHASIS-HF2)のプラセボ群をコントロールにおいて、そこからEMPHASIS-HFとPARADIGM-HFとDAPA-HF3)の実薬群におけるイベント抑制の効果を、ある数学モデルを使用して計算推定したというものである。EMPHASIS-HFのプラセボ群は90%近くACE阻害薬とβ遮断薬で基礎治療されており、第1世代治療の代表例としてふさわしい。また3つの試験はそれぞれエプレレノンを追加、エナラプリルをsacubitril-バルサルタンに切り替え、ダパグリフロジンを追加、であるため、3つを統合解析するとβ遮断薬にMRAとSGLT2阻害薬を加え、かつACE阻害薬またはARBをARNIに切り替えた、4剤併用の効果が見られるというものである。その解析の詳細はまったく理解していないが、実は次の表を見てもらいたい。3つの試験の各エンドポイントに対する実薬ハザード比である。心血管死心血管死+心不全入院心不全入院全死亡EMPHASIS-HF0.760.630.580.76PARADIGM-HF0.820.740.700.83DAPA-HF0.800.800.790.843つを掛けたもの0.500.370.320.53 表に示したように、3つの試験のハザード比を掛けた数字はこの解析で出てきたものと寸分違わない。この20年で得られた予後改善効果がこの数値である。だいたい心不全入院が3分の1になって、死亡率が半分になっているのは大変喜ばしいことで、これにイバブラジンとvericiguatも加わるし、CRTやMitraClipもカウントされていない。全部合わせたら死亡率は1990年代の3分の1くらいになっているかもしれない。ただ、非常に難しい計算をした結果が、ただ掛け算したのと一緒とはこれいかに?

4435.

COVID-19による静脈血栓症、入院前に発症か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者では、Dダイマーと凝固系での凝固促進変化、この感染症に関連する静脈および動脈血栓症の上昇率が報告されている。現時点でのさまざまな論文報告によると、ICUに入室したCOVID-19患者の死亡率は50%と高い。とくに動脈・静脈での血栓イベント発症の報告は多く、末梢静脈血栓塞栓症は27~69%、肺塞栓症は最大23%も発生している。 フランス・CCN(centre cardiologique du nord saint denis)のJulien Nahum氏らが観察研究を行った結果、深部静脈血栓症の発症割合は79%と高く、早期発見と抗凝固療法を迅速に開始することで予後を改善する可能性が示唆された。また、抗凝固薬を予防投与したにもかかわらず、ICU入室後わずか2日で患者の15%が深部静脈血栓症を発症したことから、COVID-19のICU患者すべてにおいて系統的に抗凝固療法を評価する必要があるとしている。JAMA Network Open 2020年5月29日号のリサーチレターに報告した。 研究者らは、2020年3月中旬~4月初旬、フランス・パリ郊外にある病院の集中治療室(ICU)に入室したCOVID-19重症患者(急性呼吸窮迫症候群を起こし、人工呼吸を要した)を対象に深部静脈血栓症の系統的な評価を行う目的で観察研究を実施した。 研究者らは、ICU入室時、過去に炎症マーカー値の上昇を示したデータや入院時の静脈血栓症の発症率が高いことを考慮し、COVID-19患者全症例に対して下肢静脈エコーを実施。入院時の検査値が正常でも48時間後に下肢静脈エコーを行い、COVID-19の全入院患者に抗凝固療薬の予防投与を推奨した。統計分析はグラフパッドプリズム(ver.5.0)とExcel 365(Microsoft Corp)を用い、両側検定を有意水準5%として行った。 主な結果は以下のとおり。・計34例が組み込まれ、平均年齢±SDは62.2±8.6歳で、25例(78%)が男性だった。・COVID-19患者のうち26例(76%)がPCR法で診断された。 ・8例(24%)はPCR法で陰性だったが、CT画像でCOVID-19肺炎の典型的なパターンを示した。・主な併存疾患は、糖尿病(15例[44%])、高血圧症(13例[38%])、肥満(平均BMI±SD:31.4±9.0)で、深部静脈血栓症を最も発症していたのは、糖尿病(12例/15例)、次いで高血圧(9例/13例)だった。・ 26例(76%)は入院時にノルアドレナリンを、16例(47%)は腹臥位管理を、4例(12%)は体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とした。・入院前に抗凝固療法を受けていた患者はわずか1例(3%)だった。・深部静脈血栓症は、入院時に22例(65%)、ICU入室48時間後に下肢静脈エコーを行った際5例(15%)で見られ、入院から48時間経過時点で計27例(79%)に認められた。 ・血栓症の発症部位は、両側性が18例(53%)、遠位が23例(68%)で、近位が9例(26%)だった。 ・過去に報告されたデータと比較して、今回の集団ではDダイマー(平均±SD:5.1±5.4μg/mL)、フィブリノーゲン(同:760±170mg/dL)およびCRP(同:22.8±12.9mg/dL)の値が高かった。一方、プロトロンビン活性(同:85±11.4%)と血小板数(同:256×103±107×103/μL)は正常だった。

4436.

非浸潤性乳管がん、浸潤性病変・乳がん死に長期リスク/BMJ

 イングランドでは、乳がん検診で非浸潤性乳管がん(DCIS)が発見された女性は、診断されていない一般人口の女性に比べ、全死因死亡率が低いにもかかわらず、診断後20年以上にわたり浸潤性乳がん(IBC)および乳がん死の長期的なリスクが高いことが、英国・オックスフォード大学のGurdeep S. Mannu氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年5月27日号に掲載された。DCISの発生率は、近年、実質的に上昇しており、とくに乳がん検診プログラムの導入以降の増加が著しいという。その一方で、検診で発見されたDCISにおける手術後のIBCおよび乳がん死の長期的リスクは知られていない。イングランド女性3万5,024人のコホート研究 研究グループは、乳がん検診でDCISと診断された女性におけるIBCの発生および乳がん死の長期的リスクを評価する目的で、人口ベースの観察的コホート研究を行った(Cancer Research UKなどの助成による)。 解析には、英国のNational Health Service(NHS)Breast Screening Programme(NHSBSP)と、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた。対象は、NHSBSP(1988年の開始時から2014年3月まで)でDCISと診断されたイングランドの女性3万5,024人であった。 乳がん検診でDCISと診断された女性におけるIBCおよび乳がん死の発生を、診断されていない一般人口における期待値と比較した。 主要アウトカムは、IBCおよび乳がん死であった。IBCは期待値の約2.5倍、乳がん死は1.7倍に 乳がん検診で初発DCIS診断時の年齢は、55歳未満が32%、55~59歳が22%、60~64歳が23%、65歳以上は24%であった。2014年12月の時点で、追跡期間が5年までの女性は1万3,606人、5~9年は1万998人、10~14年は6,861人、15~19年は2,620人、20年以上は939人だった。 これらの女性のうち、2,076人でIBCが発生した(同側乳房1,029人、対側乳房860人、不明187人)。IBCの年間発生率は1,000人当たり8.82人(95%信頼区間[CI]:8.45~9.21)であり、一般人口における全国的ながん発生率の期待値の2.5倍以上であった(期待値に対する観測値の比:2.52、95%CI:2.41~2.63、p<0.001)。このIBCの増加は、DCIS診断から2年後には始まっており、フォローアップ終了まで持続した。 同じ集団の女性のうち、310人が乳がんで死亡した。乳がん死の年間発生率は1,000人当たり1.26人(95%CI:1.13~1.41)であり、全国的乳がん死亡率の期待値よりも70%高かった(観測値/期待値比:1.70、95%CI:1.52~1.90、p<0.001)。 DCIS診断から最初の5年間では、乳がん死亡率は全国的な死亡率の期待値とほぼ同等であった(観測値/期待値比:0.87、95%CI:0.69~1.10)が、その後は増加に転じ、5~9年の観測値/期待値比は1.98(1.65~2.37)、10~14年は2.99(2.41~3.70)、15年以降は2.77(2.01~3.80)に達した。 手術を受けた片側乳房のDCIS患者2万9,044人のうち、より強度の高い治療(乳房切除術、乳房温存術後の放射線照射、エストロゲン受容体陽性病変への内分泌療法)を受けた女性や、最終的な腫瘍切除断端の幅が広い女性は、IBCの発生率が低かった。 著者は、「悪性度が低~中のDCISでも、長期的には浸潤性病変のリスクがあることを示すエビデンスが得られた」としている。

4437.

COVID-19治療薬、ヒドロキシクロロキンに乾癬発症のリスク?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として期待された抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン(HCQ)について、乾癬の発症・増悪・再発を誘発する可能性があることを、カナダ・トロント大学のMuskaan Sachdeva氏らが示した。乾癬に関連したHCQ治療の重大な影響を調べた試験報告を統合したシステマティックレビューの結果に基づくもので、著者は、「COVID-19患者へのHCQ治療においては、その重大な影響をモニタリングする必要がある。また、安全性プロファイルを明らかにする臨床試験の実施が不可欠だ」と述べている。HCQはCOVID-19患者のウイルス量を低減する可能性が示された一方で、治療の影響と思われる重大な皮膚有害事象の症例報告が複数寄せられていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年5月19日号掲載の報告。 研究グループは、HCQ治療後の乾癬発症、増悪もしくは再発の症例報告をシステマティックレビューした。乾癬へのHCQ治療の重大な影響を検討していたオリジナル研究をEMBASE、MEDLINEで統合的に検索し、被験者の人口統計学的特性、HCQ治療の詳細、乾癬の診断について抽出した。 主な結果は以下のとおり。・15論文から該当する乾癬発症患者18例のデータを抽出した。・乾癬発症例を性別で分析すると、女性が有意に多かった(女性14例[77.8%]vs.男性2例[11.1%]vs.性別不明2例[11.1%])。・発症例の50%(9例)は、HCQ服用前に乾癬の既往はなかった。・18例のうち、50%(9例)がde novo乾癬で、27.8%(5例)は乾癬性症状の増悪例で、22.2%(4例)はHCQ治療後の乾癬再発例であった。

4438.

腎細胞がんに対するペムブロリズマブとレンバチニブの併用は有望な可能性(111/KEYNOTE-146試験)/ASCO2020

 転移を有する淡明細胞型腎細胞がん(RCC)で、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)やチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の前治療歴を有する症例に対し、ICIであるペムブロリズマブとTKIであるレンバチニブの併用療法が有望であることが示された。これは米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)、米国Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのChung-Han Lee氏より発表された。 本試験は多施設共同の単群オープンラベル第Ib/II相試験であり、すでに、ICI未治療のRCC症例30例での中間解析結果では、奏効率(ORR)70%、無増悪生存期間(PFS)中央値20ヵ月との報告がなされている。今回の発表は本試験の第II相試験の部分から、前治療としてのICI投与後に病勢進行がみられたRCC症例を対象としたものである。・対象:転移を有する淡明細胞型RCCで、immune-related RECIST(irRECIST)で測定可能な病変があり、ICI(抗PD-1/PD-L1抗体)による治療後に病勢進行を認めた症例・介入:レンバチニブ 20mg/日 連日、ペムブロリズマブ 200mg/日 3週間ごと・評価項目:[主要評価項目]24週時点でのirRECISTによるORR[副次評価項目」ORR、PFS、全生存期間(OS)、安全性および忍容性。 主な結果は以下のとおり。・104例が今回の第II相試験に登録された。患者の年齢中央値は60歳、75%が腎切除術を受けておりMSKCCリスク分類のIntermediate 42%、Poor 22%であった。PD-L1陽性は42%、陰性は41%だった。・症例の62%は2ライン以上の抗がん剤治療を受けていた。・前治療では全例にICIが投与されていた。ICIとVEGF阻害薬の併用もしくは逐次投与は65%、ニボルマブとイピリムマブの併用は37%の症例が受けていた。・主治医によるirRECISTを用いた判定では、24週時点でのORRは51%、全体的なORRは55%で、CR例はなかった。・奏効期間中央値は12ヵ月であった。・サブグループである、ICI/TKIの前治療あり症例68例では、ORR 59%、奏効期間中央値9ヵ月であった。ニボルマブ+イピリムマブ投与の38例では、ORR 47%、奏効期間中央値は未到達であった。・RECISTv1.1による評価でもORRは52%、奏効期間中央値は12ヵ月であり、irRECISTでの評価とほぼ一致していた。・irRECIST評価によるPFS中央値は11.7ヵ月、RECISTによる評価では11.3ヵ月であった。・OSの中央値は未到達で、12ヵ月時点でのOS率は77%であった。・治療に関連する有害事象(TRAE)による治療中止例は15%であった。減量につながった主なTRAEは、倦怠感14%、下痢10%、蛋白尿9%であった。また、TRAEによる治療中止は12%で、投与中止につながった主なTRAEsは蛋白尿2%だった。ペムブロリズマブでは、TRAEによる治療中止は12%だった。・その他のGrade 3のTRAEの主な項目は、高血圧、下痢、蛋白尿、倦怠感などであった。 Lee氏は「ICIやTKIの前治療歴を有するRCCに対するレンバチニブとペムブロリズマブの併用療法は新たな安全性の懸念はなく、有望な抗腫瘍効果を示した。1次治療としての本併用療法の第III相試験が進行中である」と結んだ。

4439.

Dr.林の笑劇的救急問答15

第5回 腹痛の原因は!病態生理で考える第6回 その腹痛!筋骨格・皮膚・神経も考えよう第7回 腹痛なのに!全身性疾患・慢性疾患って反則?第8回 腹痛は遠方より来る? Season15のテーマは腹痛。腹部救急は難しく、診断に時間がかかります。救急を受診した腹痛患者のうちおよそ1~2割が診断不能で、さらに、そのうち2割が悪化すると言われています。重大な腹痛を見逃さないために、いろいろな原因を想起できるようになりましょう。下巻では内臓痛と体性痛、皮膚・筋骨格由来、全身性や慢性の疾患、腹部以外の疾患などを取り上げ、解説します。そう、痛みがあるところに原因があるとは限らないのが腹痛診断の難しいところです。ピットフォール満載の爆笑症例ドラマと、Dr.林のわかりやすい講義で、これまで「胃腸炎」や「便秘」とゴミ箱診断してきた腹痛に、複数の鑑別疾患を挙げることができるようになるでしょう。第5回 腹痛の原因は!病態生理で考える急性の腹痛は解剖学的に、そして病態生理から考えることが大切です。体性痛の場合は、“膜”が関連しているため、持続痛ですが、内臓痛の場合は、間欠痛や持続痛もあり、局在がはっきりしないことも多く、注意が必要です。痛みはどこを通っているのか、なぜ、その部位が痛むのか、また、その理由は何かをわかりやすく解説します。Dr.林の患者のウソを見抜く診察テクニックもご紹介します。第6回 その腹痛!筋骨格・皮膚・神経も考えよう今回のテーマは神経・筋・皮膚由来の腹痛についてです。腹痛とはいってもすべてが腹部臓器からの痛みばかりではありません。筋骨格由来や神経由来、皮膚由来の痛みもあります。その際は、適切な病歴聴取と身体診察で診断できます。そのノウハウをDr.林が詳しく解説します。第7回 腹痛なのに!全身性疾患・慢性疾患って反則?腹痛は必ずしも、解剖学的なアプローチだけで診断できるわけではありません。全身性疾患の1症状として腹痛が出る場合があります。たとえば、DKAやIgA血管炎、高Ca血症、電解質異常などなど。原因のわからない腹痛を診たら、そのような疾患を鑑別にあげられるようになりましょう。また、慢性の腹痛には、解剖学的なアプローチはもちろんのこと、機能的なアプローチも必要です。いずれの場合も、病歴と身体所見をしっかりと行うことが重要です。第8回 腹痛は遠方より来る?腹痛編の最終回です。腹痛は、必ずしも痛みがあるところに原因があるとは限らないのが非常に難しいところです。たとえば、心筋梗塞や虫垂炎で胃痛を訴えるように、肺炎や膿胸、精巣捻転などでも腹痛を訴えることがあります。なぜそうなるのかわかっていれば、それらの疾患を鑑別に挙げることができるようになります。さあ、これで腹痛の患者が来ても、胃腸炎や便秘というゴミ箱診断をせず、腹痛のさまざまな原因を想起し、診療につなげていきましょう!

4440.

第11回 COVID-19試験を仲良く取り下げた2大誌LancetとNEJMはお咎めなし?

抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンとCOVID-19患者死亡率上昇の関連を示した、注目のLancet報告が発表されてから2週間後の6月4日、米国企業Surgisphere社が解析したとされるその情報源が確認不可能であるとして、1人を除く3人の著者がその報告を取り下げました1)。さらに同日、降圧薬のCOVID-19患者への影響を調べたNew England Journal of Medicine(NEJM)報告も同じ理由により取り下げられました。この2つの一大事のせいで研究者や医学誌のデータ解析の在り方は酷く怪しまれ、目下進行中のCOVID-19に関する臨床試験の取り組みは困難になるかもしれません1)。「論文を撤回したジャーナルも、科学も、薬も、臨床試験やその裏付けの評判もすべて損なわれた」とオーストラリア・シドニー大学の倫理学者Ian Kerridge氏はNatureに話しています。情報源が不明である以上もはやすべて推測になりますが、撤回された2つの報告はSurgisphere社が世界中の数百もの病院から集めたとされる電子カルテデータを解析した結果に基づくとされています。Surgisphere社を設立してCEOとして指揮するSapan Desai氏は、Lancet報告とNEJM報告のどちらの著者でもあり、Lancet報告の撤回には同意していませんがNEJM報告の撤回にはどういうわけか同意しています。すでに報じられている通り、Lancet報告が発表されるやその報告で危険性が示唆されたヒドロキシクロロキンの試験のいくつかは停止に追い込まれました。ヒドロキシクロロキンの検討を一翼とする英国での無作為化試験RECOVERYは続行されましたが、残念ながら同剤のCOVID-19入院患者死亡抑制効果は認められなかったと先週金曜日に発表され2)、COVID-19入院患者にヒドロキシクロロキンは無効とのひとまずの決着を見ました。同試験を率いたオックスフォード大学教授Martin Landray氏は、今回の結果を受けて世界の治療方針は変わるだろうと言っています。Surgisphere社が関与してLancet報告やNEJM報告以上の影響を及ぼしたかもしれないCOVID-19関連の試験報告がもう1つあります。抗寄生虫薬イベルメクチンを使用したCOVID-19患者の大幅な死亡率低下を記したその報告は、プレプリント登録サイトSSRNに4月初めにいったん登録され、暫く公開された後に削除されました。削除の理由をNatureがその著者Mandeep Mehra氏に尋ねたところ、まだ査読には早いと思ったとの回答がありました。米国屈指の病院Brigham and Women’s Hospitalの循環器科医・Mehra氏は取り下げられたLancet報告とNEJM報告の筆頭著者でもあります。束の間の公開でしたが、スペインの研究者Carlos Chaccour氏によるとその結果は南アメリカの国々でのイベルメクチン使用の急増を後押ししました1,3)。ペルー政府はSSRNに掲載されてから数日後に同国の治療ガイドラインにイベルメクチン治療を取り入れました。続いてボリビア政府も1週間後にはペルー政府に倣って同じく同剤を治療方針に加えています。パラグアイではイベルメクチンの販売を制限しなければならないほど需要が増えました。査読後に出版された報告の撤回後に、その報告の影響の波及を防ぐような安全措置は査読前公開の報告にはなく、査読前に一瞬姿を見せて消えたイベルメクチン報告の南アメリカでの影響は断ち切られていません。「ラテンアメリカで続くイベルメクチン報告の亡霊は誰が追い払うのか? それが間違いだったと著名雑誌は言ってくれない」とChaccour氏はNatureに話しています。LancetやNEJMはひとまず論文を取り下げて影響の波及を断ち切ったとはいえ、COVID-19へのヒドロキシクロロキン高用量投与を調べている試験ASCOTのリーダーSteven Tong氏に言わせれば、両誌の編集者も査読者も著者と同じ穴のむじなであり、ことごとく酷い仕打ちを受けたとScienceのニュースに話しています4)。ASCOT試験でのヒドロキシクロロキン投与群はLancet報告を受けて停止されましたが、幸い再開の運びとなっています5)。Natureの調べによると、LancetもNEJMも査読結果がどのようなものだったかを示すつもりはなく秘密としています。そんなことでは、情報源を出さなかったSurgisphere社と変わりないではないかと思われても仕方ないかもしれません。 LancetやNEJMは著者等の撤回声明を掲載するのみで、何ら自省も反省も示していないが、出版までの手続きで何がまずかったのかを自問してみせるべきだったとミネソタ大学の倫理学者Leigh Turner氏はScienceに話しています。英国の医学研究信頼性支持団体Reproducibility Networkを率いるChis Chambers氏も同じ考えで、両誌は自ら主張するように再現性と完全性を大事と思うならば、出版に至るまでのやり取りをいますぐに第三者に調査してもらう必要があると言っています。参考1)Ledford H, Van Noorden R.Nature.2020 Jun 5. [Epub ahead of print]2)No clinical benefit from use of hydroxychloroquine in hospitalised patients with COVID-19 / RECOVERY3)Ivermectin and COVID-19: How a Flawed Database Shaped the Pandemic Response of Several Latin-American Countries / Barcelona Institute for Global Health4)Two elite medical journals retract coronavirus papers over data integrity questions / Science5)AustralaSian COVID-19 Trial to proceed with hydroxychloroquine arm

検索結果 合計:10324件 表示位置:4421 - 4440