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健康問題を有する患者のメンタルヘルス改善のためのオンライン心理的介入~メタ解析

 Webベースの心理的介入は、ここ15年間で大幅に増加している。健康状態に慢性的な問題を有する患者における抑うつ、不安、苦痛症状に対するWebベースの心理的介入の有効性について、オーストラリア・ディーキン大学のV. White氏らが、検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2020年7月17日号の報告。 1990年~2019年5月1日に公表された研究をMedline、PsycINFO、CINAHL、EMBASE、Cochrane Databaseより検索した。健康状態に慢性的な問題を有する成人における不安、抑うつ、苦痛を軽減することを主要および副次的な目的として実施されたWebベースの心理的介入のランダム化比較試験の英語論文を分析対象とした。結果の評価には、ナラティブ分析および変量効果メタ分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・以下の主な疾患を含む17種類の健康状態における70件の適格研究が確認された。 ●がん:20件 ●慢性痛:9件 ●関節炎:6件 ●多発性硬化症:5件 ●糖尿病:4件 ●線維筋痛症:4件・CBT原理に基づいた研究は46件(66%)、ファシリテーターを含む研究は42件(60%)であった。・すべての健康状態に慢性的な問題を有する患者において、Webベースの介入は、メンタルヘルスの症状軽減により有効であった。 ●うつ症状:g=0.30(95%CI:0.22~0.39) ●不安症状:g=0.19(95%CI:0.12~0.27) ●苦痛:g=0.36(95%CI:0.23~0.49) 著者らは「患者自身によるオンライン心理的介入は、健康状態に慢性的な問題を有する患者にとって不安、抑うつ、苦痛の症状軽減に役立つと考えられるが、特定の健康状態に有効かどうかは不明であり、有効性に関するエビデンスは一貫していなかった。明確な結論を導き出すためには、より質の高いエビデンスが求められる」としている。

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前立腺がん、診断後の肥満は死亡リスクと関連/JCO

 前立腺がん診断後の肥満は、死亡リスクと関連するのか。これまで明らかにされていなかったが、米国・エモリー大学のAlyssa N. Troeschel氏らは大規模コホート研究の結果、限局性前立腺がんなど転移の伴わない前立腺がんの生存者では、診断後の肥満(BMI値30以上)は心血管疾患関連死(CVDM)および全死因死亡の発生頻度が高く、前立腺がん特異的死亡(PCSM)も高まる可能性があることを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「診断後の体重増加は、すべての原因および前立腺がんの結果として、より高い死亡率と関連している可能性がある」と述べている。Journal of Clinical Oncology誌2020年6月20日号掲載の報告。 研究グループは、米国の「がん予防研究II栄養コホート(Cancer Prevention Study II Nutrition Cohort)」の参加者のうち、1992~2013年の間に転移を伴わない前立腺がんと診断された男性を対象に、2016年12月までの死亡について調査。同がん生存者の診断後のBMIおよび体重変化と、PCSM、CVDMおよび全死因死亡との関連を解析した。 体重は約2年ごとの追跡調査で自己申告してもらい、診断後のBMIは診断後1~6年以内に完了した1回目の調査で得たデータを用いた。また、診断後の体重の変化は、診断後1回目と2回目の調査時の体重の差とした。  主な結果は以下のとおり。・診断後BMI値の変化に関する解析対象は8,330例で、このうち全死因死亡は3,855例であった(PCSM:500例、CVDM:1,155例)。・Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、健康体重(BMI値18.5以上25.0未満)群と比べて診断後の肥満群(BMI値30以上)のPCSMに関するハザード比(HR)は1.28(95%信頼区間[CI]:0.96~1.67)、CVDMのHRは1.24(95%CI:1.03~1.49)、全死因死亡のHRは1.23(95%CI:1.11~1.35)であった。・診断後体重増に関する解析対象は6,942例で、このうち全死因死亡は2,973例であった(PCSM:375例、CVDM:881例)。・診断後体重安定(増減3%未満)群と比べて同体重増加(5%超増加)群は、PCSM(HR:1.65、95%CI:1.21~2.25)および全死因死亡(HR:1.27、95%CI:1.12~1.45)のリスクが高かった。CVDMとの関連は認められなかった。

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第20回 薬剤承認は金次第!?薬事審議会委員への「製薬マネー」詳細明らかに

「製薬マネー」について研究している医師たちのチームがこのほど、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の委員に対する製薬企業からの支払いを調べた研究論文を発表した1)。医薬品承認の議決権に制限が生じる「1企業から50万円以上の受け取り」が過小に申告されているケースもあり、同委員が定められたルールに反しながらも医薬品承認の議決権を得ていた可能性があることが明らかになった。本研究を進めているのは、公益財団法人仙台市医療センター仙台オープン病院の澤野 豊明医師らのチームである。澤野医師らは各製薬企業が公表するデータに基づき、薬事・食品衛生審議会のうち、医薬品の承認に関わる医薬品第一部会、医薬品第二部会、再生医療等製品・生物由来技術部会、薬事分科会、薬事・食品衛生審議会総会の2017・18年度の委員に対し、製薬企業各社から16年度に提供された謝礼等の金額(C項目支払い)について、個人単位で解析した。主な研究結果は以下の通り。薬事・食品衛生審議会委員108人のうち、51人(47%)が謝金などを受け取り、総額は1億1,576万円だった。1委員あたりの受取金額の平均値は107万円だったが、32人(30%)が合計50万円以上を受け取っていた。500万円以上受け取っていた委員は8人(7%)で、いずれも大学教授だった。8,530件におよぶ寄附金・契約金などの自己申告を解析したところ、少なくとも409件(4.8%)が過小に申告されていたことがわかった。そのうち112件(27.4%)では、医薬品承認の議決権に制限が生じる「1企業から50万円以上の受け取り」を過小に申告しており、定められたルールに反して委員が医薬品承認の議決権を得ていた可能性がある。1人の委員に対する支払額が最も高かったのは1,086万3,404円だった。また、全委員への支払い総額の67.3%(7,794万3,585円)が講演料だった。また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、製薬企業に莫大な利益をもたらす医薬品の命運を握る医薬品第二部会の委員への支払いが全体の57%を占めていた。澤野医師は「利益相反についてのガバナンスが厳格に監視・運用されていない場合、現状のルールでは不十分。医薬品の承認メカニズムと関係者の現状を徹底的に調査し、プロセス全体の包括的な見直しが急務だ。増え続ける医療費も減らせるかもしれない」と述べる。2016年度のデータを基にした調査だが、現在も同様の状況だろう。コロナ禍のあおりを受けてボーナス無支給や給与カットの憂き目に遭う医療者が少なからずいるこのご時世、一部とはいえオイシイ思いをしている医師や製薬企業がいるようでは、医療全体に対する国民の不信を招きかねない。参考1)Toyoaki T, et al. Clinical pharmacology and therapeutics. 2020 May 18

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日本人女性の食事パターンとうつ病との関連

 健康的な食事や地中海式の食事のような質の高い食事パターンは、うつ病の予防と関連しているといわれている。昭和女子大学の小西 香苗氏は、西洋的な食事パターンとは異なる健康的な日本の食事パターンが、日本人女性の抑うつ症状と関連しているかについて、調査を行った。Public Health Nutrition誌オンライン版2020年7月17日号の報告。 長野県の20~72歳の日本人女性1,337例を対象に横断的研究を行った。うつ症状は、米国国立精神衛生研究所でうつ病の疫学研究用に開発された自己評価尺度(CES-D Scale)を用いて評価を行った。食事パターンは、検証された簡便な食事歴アンケートを用いて評価し、56食品の摂取量から成分分析を行った。主な結果は以下のとおり。・「健康的な日本食」「スイーツ-脂質」「シーフード-アルコール」の3つの食事パターンが特定された。・最も良い食事パターンは、「健康的な日本食」であった。・「健康的な日本食」の特徴は、野菜、きのこ、海藻、大豆製品、じゃがいも、魚介類、果物の摂取量が多いことであった。・「健康的な日本食」スコアの最高四分位における、うつ症状の年齢調整オッズ比(OR)は0.58(95%CI:0.41~0.82)、多変量調整ORは0.69(95%CI:0.45~1.06)であった。・「スイーツ-脂質」「シーフード-アルコール」の食事パターンでは、関連性は認められなかった。 著者らは「健康的な日本の食事パターンは、抑うつ症状を予防する可能性がある。健康的な日本食に含まれる食材は抗炎症作用を示すと考えられ、この要因がより良いメンタルヘルスと関連している可能性がある」としている。

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マスク・手袋などのPPEによる皮膚疾患をどう防ぐか

 COVID-19感染流行の長期化に伴い、フェイスマスク・手袋をはじめとした個人用防護服(PPE)の長期着用を要因とした医療者の皮膚疾患が報告されている。こうした皮膚疾患への対応と予防策について、Seemal R. Desai氏らがJournal of the American Academy of Dermatology誌のリサーチレターで提言している。 サージカルマスク・N95マスク・ゴーグル・フェイスシールドなどのPPEは、マスク表面やストラップの摩擦によって耳の後ろや鼻梁、あるいは顔全体に接触皮膚炎を引き起こす、という報告がある。 さらに、マスクに使用されている接着剤、ストラップのゴム、不織布のポリプロピレン、クリップの金属などが接触皮膚炎や蕁麻疹を引き起こす、密着性の高いN95マスクが皮膚を痛める、さらにマスク装着時にこもる湿気が皮膚炎や感染症を引き起こす、といった可能性もある。 提唱されている予防策は、・サージカルマスクは、ストラップの触れる耳の後ろにアルコールフリーのドレッシング材を貼る。・N95マスクは、アルコールフリーのバリアフィルム(スプレータイプではないもの)をマスクが直接接触する部分に貼り、着用前に90秒間乾燥させる。顔のサイズに合ったマスクを使い、顔に過度の圧力をかけないようにする。 いずれの場合でも、朝と就業後に無香料で毛穴が詰まりにくい洗顔料で顔を洗う、2時間に1回、15分間はマスクを外す時間を設ける、装着1時間前には保湿剤で顔を保湿する、といったことが推奨されている。ワセリンベースの製品はマスクの密着性を妨げる可能性があるため推奨されていない。 米国疾病予防管理センター(CDC)によると、全医療者における職業病の10~15%を接触皮膚炎が占めており、中でも手袋に関連するアレルギー性皮膚炎が多い。保湿を行い、PPE使用前に手を清潔にしてよく乾かすことが、皮膚疾患に対しての共通した予防策になるという。

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若年性乳がん、高出生体重と親の子癇前症が関連

 若年性乳がんと母親の周産期および出生後における曝露因子との関連について、米国・国立環境衛生科学研究所のMary V Diaz-Santana氏らが調査したところ、母親が妊娠時に子癇前症であった場合と高出生体重の場合に若年性乳がんリスクが高い可能性があることが示唆された。Breast Cancer Research誌2020年8月13日号に掲載。 本研究(Two Sister Study)は姉妹をマッチさせたケースコントロール研究で、ケースは50歳になる前に非浸潤性乳管がんまたは浸潤性乳がんと診断された女性、コントロールは乳がんを発症した同じ年齢まで乳がんではなかった姉妹とした。リスク因子として、母親の妊娠時における子癇前症・喫煙・妊娠高血圧・ジエチルスチルベストロールの使用・妊娠糖尿病、低出生体重(5.5ポンド未満)、高出生体重(8.8ポンド超)、短い妊娠期間(38週未満)、母乳育児、乳幼児期の大豆粉乳摂取を検討した。 主な結果は以下のとおり。・条件付きロジスティック回帰分析では、高出生体重(オッズ比[OR]:1.59、95%信頼区間[CI]:1.07~2.36)と母親の妊娠時における子癇前症(調整後OR:1.92、95%CI:0.824~4.5162)が若年性乳がんリスクと関連していた。浸潤性乳がんに限定した場合、子癇前症との関連はより大きかった(OR:2.87、95%CI:1.08~7.59)。・ケースのみの分析から、母親が妊娠時に子癇前症で若年性乳がんを発症した女性は、エストロゲン受容体陰性のオッズが高かった(OR:2.27、95%CI:1.05~4.92)。

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チカグレロルのDAPTからSAPTへの移行時期:3ヵ月vs.12ヵ月の比較試験(解説:上田恭敬氏)-1276

 急性冠症候群症例を対象として、PCI後にチカグレロルとアスピリンによるDAPTを3ヵ月で終了してチカグレロルの単剤療法へ移行する群と12ヵ月間DAPTを継続する群に無作為に割り付け、12ヵ月間のnet adverse clinical event(出血と脳心血管イベント)を主要評価項目として比較したRCTの結果である。出血はTIMI major bleeding、脳心血管イベントは死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、標的血管再血行再建としている。登録症例数は、DAPT 3ヵ月群が1,527症例、12ヵ月群が1,529症例であった。 結果は、主要評価項目の発生頻度が3.9%対5.9%(p=0.01)と、3ヵ月DAPT群で有意に低値であった。出血イベントが3ヵ月DAPT群で有意に低値であったためであり、脳心血管イベントのそれぞれ、および組み合わせに群間差はなかった。 DAPT期間が短いほうが、出血イベントが少なくなるのは予想通りである。問題は、DAPT短縮によって本当に脳心血管イベントが増えないのかということである。 DAPT試験では、DAPTを継続することによって、心筋梗塞の発症を半減することができている。DAPT試験と本試験を比べると、DAPT試験では、はるかに多い約5,000症例が各群に割り付けられていること、全体の脳心血管イベント発生頻度が高いこと、単剤療法はアスピリンであること、12ヵ月間DAPTでイベントを発生しなかった人だけが対象であること、などが違いとして挙げられる。本試験では、ステントや薬物療法の進歩によって、全体的に脳心血管イベントが減少したために、DAPT期間を短縮しても問題がなかった、あるいは単剤療法がアスピリンではなくチカグレロルであったから問題がなかったと解釈することもできるだろうが、出血リスクが低くて脳心血管イベント発生リスクが高い人を選べばDAPT継続にもメリットがある可能性を否定するものではないだろう。しかし、チカグレロルなどP2Y12阻害薬の単剤療法であれば、脳心血管イベント抑制効果においてDAPTと同等である可能性も否定できず、アスピリンが必要な期間がさらに短縮されたり、元々不要との考えに至る可能性もあるのかもしれない。さらにエビデンスの蓄積が待たれる。

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二ボルマブ+化学療法、胃がん食道がん1次治療法でOS、PFSを改善(CheckMate-649)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2020年8月11日、ファーストラインの転移性胃がん、胃食道接合部(GEJ)がんまたは食道腺がんを対象に二ボルマブと化学療法の併用療法を化学療法と比較評価したピボタルな第III相CheckMate-649試験において、二ボルマブと化学療法の併用療法が、PD-L1発現combined positive score(CPS)が5以上の患者において、主要評価項目である中間解析での全生存期間(OS)および最終解析での無増悪生存期間(PFS)の両方を達成したことを発表した。二ボルマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、ファーストラインの胃がんおよび食道がんの治療において二ボルマブと化学療法の併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 CheckMate-649試験は、未治療のHER2陽性以外の進行または転移のある胃がん、GEJがんまたは食道腺がんの患者を対象に、二ボルマブと化学療法の併用療法または二ボルマブとイピリムマブの併用療法を、化学療法と比較評価した多施設無作為化非盲検第III相臨床試験。二ボルマブと化学療法の併用療法群の患者は、二ボルマブ360mgとカペシタビンおよびオキサリプラチン(CapeOX)を3週間間隔で、または二ボルマブ240mgとFOLFOXを2週間間隔で投与を受けた。二ボルマブとイピリムマブの併用療法群の患者は、二ボルマブ1mg/kgおよびイピリムマブ3mg/kgを3週間間隔で計4回投与を受け、その後、二ボルマブ240mgを2週間間隔で投与を受けた。化学療法群の患者は、FOLFOXを2週間間隔で、またはCapeOXを3週間間隔で投与を受けた。試験の主要評価項目は、二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが5以上のPD-L1陽性患者におけるOS、および二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが5以上の患者における盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価によるPFS。主な副次評価項目は、二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが1以上および割り付けられた全ての患者におけるOS、および二ボルマブとヤーボイの併用療法を受けた患者におけるOSと症状悪化までの期間である。

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TN乳がんの術後補助療法、パクリタキセル+カルボプラチンでDFS改善/JAMA Oncol

 手術可能なトリプルネガティブ(TN)乳がんへの術後補助療法において、パクリタキセルとカルボプラチンの併用が標準レジメンより5年無病生存率が有意に高かったことが、無作為化第III相試験(PATTERN試験)で示された。中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのKe-Da Yu氏らが報告した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年8月13日号に掲載。 本試験は中国の9施設のがんセンターと病院で実施された。対象患者は2011年7月1日~2016年4月30日に登録し、データはITT集団で2019年12月1日~2020年1月31日に解析した。・対象: 18~70歳の手術可能なTN乳がんの女性(病理学的に確認された局所リンパ節転移のある患者もしくは原発腫瘍径10mm超のリンパ節転移のない患者)で、除外基準は、転移ありもしくは局所進行の患者、TNではない乳がん患者、術前治療(化学療法、放射線療法)を受けた患者・試験群: 1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2+カルボプラチン(AUC 2)、28日ごと6サイクル投与(PCb群)・対照群:シクロホスファミド500mg/m2+エピルビシン100mg/m2+フルオロウラシル500mg/m2を3週ごと3サイクル投与後、ドセタキセル100mg/m2を3週ごと3サイクル投与(CEF-T群)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間、遠隔DFS、無再発生存期間、BRCA1/2もしくは相同組換え修復(HRR)関連遺伝子の変異がある患者のDFS 、毒性  主な結果は以下のとおり。・手術可能なTN乳がん患者647例(平均年齢[SD]:51[44~57]歳)をCEF-T群(322例)またはPCb群(325例)に無作為に割り付けた。・中央値62ヵ月の追跡期間で、PCb群はCEF-T群よりDFSが長かった(5年DFS:86.5% vs.80.3%、ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.44~0.96、p=0.03)。遠隔DFSと無再発生存期間でも同様の結果が認められた。・全生存期間は統計学的な有意差がみられなかった(HR:0.71、95%CI:0.42~1.22、p=0.22)。・サブグループ解析では、BRCA1/2変異のある患者のDFSのHRは0.44(95%CI:0.15~1.31、p=0.14)、HRR関連遺伝子変異のある患者では0.39(95%CI:0.15~0.99、p=0.04)であった。・安全性データは既知の安全性プロファイルと一致していた。 著者らは、「これらの結果から、手術可能なTN乳がん患者においてパクリタキセルとカルボプラチンの併用が術後補助化学療法の代替の選択肢となりうることが示唆される。分子分類の時代においては、PCbが有効なTN乳がんのサブセットをさらに調べる必要がある」としている。

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抗血小板薬単剤療法はアスピリン単独かP2Y12阻害薬単独か?(解説:上田恭敬氏)-1275

 脳心血管疾患患者の2次予防としての抗血小板薬単剤療法は、アスピリン単剤とP2Y12阻害薬単剤のいずれが優れているかを、メタ解析によって検討した研究が報告された。1989年から2019年までに報告された9個のRCTが解析に含まれており、P2Y12阻害薬としてはチクロピジン、クロピドグレル、チカグレロルが含まれている。観察期間は3〜36ヵ月のものが含まれている。 心筋梗塞の発生率については、P2Y12阻害薬単剤群で低くなったが、全死亡、心血管死亡、脳卒中、出血イベントについては、群間差がなかった。結果は、P2Y12阻害薬の種類によらず同じであった。よって、2次予防としては、アスピリン単剤よりもP2Y12阻害薬単剤のほうがやや優れているという結果となった。ただし、sensitivity analysisとして、解析に含まれた9個のRCTの1つであるCAPRIE試験を除外すると、心筋梗塞発生率についての差はなくなるとしている。 この結果の解釈においては、多くの点について注意を払う必要がある。著者らはメタ解析の限界について触れているが、ほかにも、P2Y12阻害薬の効果が人種や体重、遺伝子多型などによって異なる可能性や、出血イベントの人種による特性の違いや、年代による他の薬物療法の違いなど、多くの疑問点が残っている。P2Y12阻害薬単剤群で、出血イベントが多くないのに心筋梗塞予防効果が強いという結論についても、定義や統計上の問題ではないのかと疑いたくなる。 P2Y12阻害薬は、種類と投与量が決まって初めて効果が決まるため、このように「P2Y12阻害薬単剤群」として一律に扱うべきものではない。同じ薬でも投与量を2倍にすれば、結果はまったく異なるだろう。本試験にプラスグレルは含まれていないが、含まれていたとしても、その結果から日本人用に設定された欧米とは異なった投与量のプラスグレル単剤療法の効果について推定することはできない。 すなわち、対象集団を決めて、薬剤の種類・投与量を決めて、RCTを実施することで初めて、その効果を正しく比較できるだろう。

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抗糸球体基底膜抗体病〔anti-glomerular basement membrane(GBM) disease〕

1 疾患概要■ 定義抗糸球体基底膜抗体病(anti-glomerular basement membrane disease:抗GBM病)とは、抗GBM抗体によって引き起こされる予後不良の腎・肺病変を指す。このうち腎病変を「抗GBM抗体型(糸球体)腎炎」または「抗糸球体基底膜腎症」と呼ぶ。本疾患の最初の記載は古く1919年Goodpastureによるが、のちに肺と腎に病変を生ずる症候群として後に「Goodpasture症候群」と呼ばれるようになった1,2)。■ 疫学頻度は比較的まれであり、発症率は人口100万人当り0.5~1.0人/年とされる。厚生労働省の調査によると、平成18年度までに集積された1,772例の急速進行性糸球体腎炎(RPGN)症例のうち抗GBM抗体型腎炎は81例(4.6%)、肺出血を伴うGoodpasture症候群は27例(1.5%)、抗GBM病は合計6.1%であった。抗GBM抗体型腎炎の平均年齢は61.59歳(11~77歳)、Goodpasture症候群の平均年齢は70.88歳(57~93歳)と高齢化が進んでいる3)。■ 病因自己抗体である抗GBM抗体が原因と考えられており、腎糸球体と肺胞の基底膜に結合し、基底膜を破綻させて発症する。抗GBM抗体の対応抗原は、糸球体基底膜や肺毛細血管基底膜に分布するIV型コラーゲンα3鎖のC末端noncollagenous domain1(NC1ドメイン)の、N末端側17-31位のアミノ酸残基(エピトープA:EA)ないしC末端側127-141位のアミノ酸残基(エピトープB:EB)である4,5)。このうち、EBエピトープを認識する抗体が腎障害の重症化とより関連すると推定されている。IgGサブクラスでは、IgG1とIgG3が重症例に多いとの報告もある。α5鎖のNC1ドメインEA領域も抗原となりうる。通常の状態においては、これらの抗原エピトープはIV型コラーゲンα345鎖で構成された6量体中に存在し、基底膜内に埋没している(hidden antigen)。抗GBM抗体型腎炎では、感染症(インフルエンザなど)、吸入毒性物質(有機溶媒、四塩化炭素など)、喫煙などにより肺・腎の基底膜の障害が生じ、α345鎖の6量体が解離することで、α3鎖、α5鎖の抗原エピトープが露出し、これに反応する抗GBM抗体が産生される。この抗GBM抗体の基底膜への結合を足掛かりに、好中球、リンパ球、単球・マクロファージなどの炎症細胞が組織局所に浸潤し、さらにそれらが産生するサイトカイン、活性酸素、蛋白融解酵素、補体、凝固系などが活性化され、基底膜の断裂が起こる。腎糸球体においては、断裂した毛細管係蹄壁から毛細血管内に存在するフィブリンや炎症性細胞などがボウマン囊腔へ漏出するとともに、炎症細胞から放出されるサイトカインなどのメディエーターによってボウマン囊上皮細胞の増殖、すなわち細胞性半月体形成が起こる。後述のように、以前より抗GBM抗体と抗好中球細胞質抗体(ANCA)の両者陽性の症例の存在が知られており、抗GBM抗体型腎炎症例の多くで、発症の1年以上前から低レベルのANCAが陽性となっているとの報告がある。ANCAによりGBM障害が生じ、抗原エピトープが露出する可能性が推測されている。最近、MPOと類似構造をもつperoxidasinに対する抗体が抗GBM病の患者から発見されたと報告され、病態における意義が注目される6)。また、以前より感染が契機になることが推測されているが、最近、Actinomycesに存在するα3鎖エピトープと類似のペプチド断片がB細胞、T細胞に認識され抗GBM病の発症に関与することを示唆する報告がなされている7)。■ 症状・所見症状は、肺出血による症状のほか、倦怠感や発熱、体重減少、関節痛などの全身症状が高頻度で見られる8)。初発の症状としては、全身倦怠感、発熱などの非特異的症状が最も多い。肉眼的血尿も比較的高頻度で見られる。タバコの喫煙歴、直近の感染の罹患歴を調べることも重要である。■ 分類2012年改訂Chapel Hill Consensus Conference(CHCC)分類では、抗GBM病は、基底膜局所でin situ免疫複合体が形成されて生ずる病変であるため、免疫複合体型小型血管炎に分類されている9)。抗GBM病は、(1)腎限局型の抗GBM抗体型腎炎、(2)肺限局型抗GBM抗体型肺胞出血、(3)腎と肺の双方を障害する病型(Goodpasture症候群)の3つに分けられる。肺胞出血を伴う場合と伴わない場合があり、遅れて肺出血が見られることもある。2012年に改訂されたChapel Hill Consensus Conference(CHCC)分類では、抗GBM抗体陽性の血管炎を抗GBM病(anti-GBM disease)とし、肺と腎のどちらかあるいは両者が見られる病態を含むとしている。腎と肺の双方を障害する病型はGoodpasture症候群と呼ばれる。■ 予後予後規定因子としては、治療開始時の腎機能、糸球体の半月体形成率が挙げられる。Levyらは85例の抗GBM抗体型腎炎患者の腎予後を後ろ向きに検討し、治療開始の時点で、血清Cr値が5.7mg/dL以上または透析導入となった重症例、半月体が全糸球体に及ぶ場合は腎予後不良としている10)。抗GBM抗体価と腎予後・生命予後については、一般に、高力価の抗GBM抗体陽性所見は予後不良因子と考えられている。Herodyらは、診断時の腎機能、無尿、腎生検所見とともに抗GBM抗体価が有意な腎予後不良因子であったと報告している11)。2001年のCuiらの報告でも、抗GBM抗体価が患者死亡の独立した予知因子であることが示されている12)。抗GBM抗体が陰性となり、臨床的に寛解に至ればその後の再燃はまれである。ただし、初発時より長年経過して再発した例も報告されているため、経過観察は必要である。ANCA同時陽性例では抗GBM抗体単独陽性例よりも再燃が多い傾向にある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見全例で、血尿と腎炎性尿所見、血清クレアチニン値の急上昇、強い炎症所見(CRP値高値)を認める。肉眼的血尿のこともある。尿蛋白もさまざまな程度で見られ、時にネフローゼレベルに達することもある。貧血も高度のことが多い。抗GBM抗体が陽性となり、確定診断に必須である。抗GBM抗体値は病勢とほぼ一致し、治療とともに陰性化することが多い。抗GBM抗体とANCA(とくにMPO-ANCA)の両者が陽性になる症例が存在し、抗GBM抗体型腎炎のANCA陽性率は約30%、逆に、ANCA陽性患者の約5%で抗GBM抗体が陽性と報告されている13)。腎生検、高度の半月体形成性壊死性糸球体腎炎の病理所見が見られる。蛍光抗体法では、係蹄壁に沿ったIgGの線状沈着を示す。■ 診断と鑑別診断診断基準は以下の通りである。1)血尿(多くは顕微鏡的血尿、まれに肉眼的血尿)、蛋白尿、円柱尿などの腎炎性尿所見を認める。2)血清抗糸球体基底膜抗体が陽性である。3)腎生検で糸球体係蹄壁に沿った線状の免疫グロブリンの沈着と壊死性半月体形成性糸球体腎炎を認める。上記の1)および2)または1)および3)を認める場合に「抗糸球体基底膜腎炎」と確定診断する。鑑別としては、臨床的に急速進行性糸球体腎炎を示す各疾患(ANCA関連腎炎、ループス腎炎など)や急性糸球体腎炎を示す疾患が挙げられるが、検出される抗体により鑑別は通常容易である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の目標は、可及的速やかに腎・肺病変を改善すると同時に、病因である抗GBM抗体を取り除くことである。腎予後が期待できず、肺出血が見られない場合を除き、ステロイドパルス療法を含む高用量の副腎皮質ステロイドと血漿交換療法による治療を早急に開始する12,14)。シクロホスファミドの併用が推奨されている。血漿交換は、血中から抗GBM抗体が検出されなくなるまで頻回に行う。重要なのは、治療が遅れると腎予後は著しく不良となる、腎機能低下が軽度の初期の段階で、全身症状・炎症所見・腎炎性尿所見などから本疾患を疑うことである。初期治療時は通常6~12ヵ月間免疫抑制療法を継続する。通常、抗GBM抗体が陰性であればそれ以上の長期維持治療は必要ない。末期腎不全患者に対する腎移植は、抗GBM抗体が陰性化してから6ヵ月後以降に行う15)。4 今後の展望B細胞をターゲットとした抗CD20抗体(リツキシマブ)が有効であったとの症例報告があるが、有用性は不明である。黄色ブドウ球菌由来のIgG分解活性を持つエンドペプチダーゼ(imlifidase:IdeS)の臨床試験が現在進行中である(NCT03157037)。5 主たる診療科腎臓内科、呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 抗糸球体基底膜腎炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Goodpasture EW. Am J Med Sci. 1919;158:863-870.2)Benoit, LFL,et al. Am J Med. 1964;37:424-444.3)Koyama A, et al. Clin Exp Nephrol. 2009;13:633-650.4)Pedchenko V, et al. N Engl J Med. 2010;363:343-354.5)Chen JL, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2013;8:51-58.6)McCall AS, et al. J Am Soc Nephrol. 2018;29:2619-2627)Gu Q, et al. J Am Soc Nephrol. 2020;31:1282-1295. 8)Levy JB, et al. Kidney Int. 2004;66:1535-1540.9)Jennette J, et al. Arthritis Rheum. 2012;65:1-11.10)Levy JB, et al. Ann Intern Med. 2001;134:1033-1042.11)Herody M, et al. Clin Nephrol. 1993;40:249-255.12)Cui Z, et al. Medicine(Baltimore). 2011;90:303-311.13)Levy JB, et al. Kidney Int. 2004;66:1535-1540.14)KIDIGO Clinical Practice Guideline. Anti-glomerular basement membrane antibody glomerulonephritis. Kidney Int. 2012(Suppl2):233-242.15)Choy BY, et al. Am J Transplant. 2006;6:2535-2542.公開履歴初回2020年08月18日

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第21回 アフリカはCOVID-19流行をうまく切り盛りしている~集団免疫が可能か?

アフリカ大陸での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者数は8月6日に100万人を超えましたが勢いは衰えており、以降13日までの一週間の増加率はその前の週の11%より低い8%でした1)。アフリカの国々は最初のSARS-CoV-2感染が同大陸で確認されてから8月14日までの6ヵ月間に多くの手を打ちました2)。速やかにロックダウンを実行し、診断や治療体制を整え、いまやすべての国で人口1万人あたり100の検査を提供しています。重篤な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に必要となる酸素もより供給できるようになっており、最初は69棟だった酸素プラントは倍近い119棟に増えています。酸素濃縮器も2倍を超える6,000台超を備えます。世界保健機関(WHO)がアフリカのデータを解析したところ2)、最初の感染発見からおよそ2~3週間後の感染急増は生じておらず、ほとんどの国での増加はゆっくりであり、増加の山場ははっきりしていません。どうやらアフリカはCOVID-19流行をいまのところうまく切り盛りしているようです3)。先月7月末のmedRxiv報告4)によると、ケニアの15~64歳の実に20人に1人、数にして160万人がSARS-CoV-2感染指標の抗体を有していると約3,000人の献血検査結果から推定されました。しかしケニアの病院でCOVID-19発症患者は溢れかえってはいません。モザンビークの2都市・ナンプラやペンバでおよそ1万人を調べた調査では、職業によって3~10%がSARS-CoV-2への抗体を有していましたが、診断数はずっと少なく、およそ75万人が住むナンプラでその時点で感染が確定していたのはわずか数百人ほどでした3)。マラウィでの試験でも同様に驚く結果が得られています5)。同国の大都市ブランタイアの無症状の医療従事者500人を調べたところ10人に1人を超える12.3%がSARS-CoV-2への抗体を有していると判断され、その結果や他のデータに基づくと、その時点でのブランタイアでのCOVID-19による死亡数17人は予想の1/8程でしかありませんでした。そのように、アフリカの多くの国の医療は不自由であるにもかかわらずCOVID-19死亡率は他の地域を下回ります。最近の世界のCOVID-19感染者の死亡率は3.7%ですが6)、アフリカでは2.3%(8月16日時点で死亡数は2万5,356人、感染例数は111万53人)7)です。より高齢の人ほどCOVID-19による死亡リスクは高まりますが、アフリカの人々の6割以上は25歳未満と若く、そのことがCOVID-19による死亡が少ないことに寄与しているかもしれないとWHOは言っています1)。それに、COVID-19の重症化と関連する肥満や2型糖尿病等の富裕国に多い持病がアフリカではより稀です。また、風邪を引き起こす他のコロナウイルスにより接していることや、マラリアやその他の感染症に繰り返し曝されていることでSARS-CoV-2を含む新たな病原体と戦える免疫が備わっているのかもしれません3)。ケニア人が重病化し難いことに生来の遺伝的特徴が寄与していると想定している研究者もいます。これからアフリカではギニア、セネガル、ベニン、カメルーン、コンゴ共和国の数千人のSARS-CoV-2抗体を調べる試験が始まります。WHOの指揮の下での国際的な抗体検査にはアフリカの11ヵ国の13の検査拠点が参加しています。抗体は感染しても備わらない場合もありますし、備わっても徐々に失われるとの報告もあるので抗体保有率は真の感染率を恐らく下回るでしょうが、得られたデータはアフリカでの感染の実態の把握を助けるでしょう。もしアフリカで数千万人がすでにSARS-CoV-2に感染しているとするなら、ワクチンに頼らず感染に身を任せて集団免疫を獲得して流行を終わらせることに取り組んでみたらどうかという考えが浮かぶと国境なき医師団の研究/指導部門Epicentre Africaで働く微生物/疫学者Yap Boum氏は言っています3)。経済を停滞させ、長い目で見るとむしろ人々の健康をより害しかねない制約方針よりも集団免疫を目指すほうが良い場合もあるかもしれません。感染数に比して死亡数が明らかに少ないアフリカなら集団免疫の取り組みが許されるかもしれず、真剣に検討してみる必要があるとBoum氏は話しています。参考1)Coronavirus: How fast is it spreading in Africa? /BBC2)Africa marks six months of COVID-19/WHO3)The pandemic appears to have spared Africa so far. Scientists are struggling to explain why/Science 4)Seroprevalence of anti-SARS-CoV-2 IgG antibodies in Kenyan blood donors. medRxiv. July 29, 20205)High SARS-CoV-2 seroprevalence in Health Care Workers but relatively low numbers of deaths in urban Malawi. medRxiv. August 05, 20206)Situation reports, WHO African Region/12 August 20207)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) / Africa Centres for Disease Control and Prevention

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バレット食道検出の非内視鏡検査、がん診断に有用か/Lancet

 逆流性食道炎患者におけるバレット食道の検出手技として開発された非内視鏡検査手技「Cytosponge-TFF3」は、検出を改善し治療可能な異形成および早期がんの診断につながる可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のRebecca C. Fitzgerald氏らによる、多施設共同による実用的な無作為化試験の結果、示された。Cytosponge-TFF3は、スポンジを内包したひも付きカプセル(Cytosponge)を患者に飲んでもらい、胃に達してカプセルが溶解してスポンジが膨張したところで引き出し、食道全体を拭うようにしてスポンジで採取した細胞を使って、バレット食道マーカーTFF3の検出有無を調べるという検査法。採取は患者が座位のまま10分程度で済むことから、研究グループは、プライマリケアで逆流性食道炎治療を受けている患者にこの検査を行うことで、通常ケアと比較してバレット食道の検出が増加するかを調べる試験を行った。異形成を伴うバレット食道の治療は、腺がん進行を防ぐが、バレット食道の最適な診断戦略は明らかになっていない。Lancet誌2020年8月1日号掲載の報告。英国109のGP診療所で通常ケアvs.通常ケア+Cytosponge-TFF3の無作為化試験 試験は英国内109の社会人口統計的に多様な総合医(GP)の診療所で行われた。GP診療所単位(クラスター)および患者個人レベルで無作為化を行い、結果は統合する前に無作為化のタイプ別に解析した。 適格患者は、50歳以上で、逆流性食道炎の症状のために胃酸抑制薬を6ヵ月以上服用しており、過去5年間内視鏡検査を受けていない場合とした。GP診療所は、地域のクリニカル研究ネットワークから選択して試験参加を呼び掛けた。 クラスター無作為化試験では、試験統計学者がコンピュータ無作為化シークエンスを用いてGPを1対1の割合で割り付けた。患者の無作為化は、試験センターで用意したコンピュータ無作為化シークエンスを用いてGP診療所が行い、1対1の割合で割り付けた。 無作為化後、被験者は、逆流性食道炎の標準的な治療(通常ケア群)または通常ケア+Cytosponge-TFF3の提案を受けた(介入群)。通常ケア群は、GPが必要と判断した場合にのみ内視鏡検査を受けた。一方、介入群はCytosponge-TFF3で陽性が確認された場合は内視鏡を受けることとした。 主要アウトカムは、試験登録後12ヵ月時のバレット食道の診断で、1,000人年当たりの割合で算出し、全介入群(Cytosponge-TFF3の要請を受け入れたか否かにかかわらず)と全通常ケア群を比較し評価した。解析はintention-to-treat法にて行った。介入群でのバレット食道の検出が有意に増大 2017年3月20日~2019年3月21日に、113のGP診療所が登録したが、4診療所が無作為化直後に参加を取り下げた。残った109診療所の電子処方記録を自動検索し1万3,657例の適格患者を特定した。患者には、オプトアウトを14日間と設定した試験参加のレターが送られた。 患者のうち1万3,514例が無作為化を受けた(通常ケア群6,531例、介入群6,983例)。無作為化後のさらなる精査で、介入群の149/6,983例(2%)および通常ケア群の143/6,531例(2%)がすべての試験適格性を満たしておらず、あるいは試験から脱落した。 残った介入群6,834例のうち、Cytosponge-TFF3を受ける意思を示したのは2,679例(39%)。そのうち1,750例(65%)が、電話スクリーニングですべての適格性を満たし、かつCytosponge-TFF3を受けた。これら患者の大半(1,654例[95%]、年齢中央値69歳)が、Cytospongeの飲み込みに成功し、検体を採取した。 231/6,834例(3%)が、Cytosponge-TFF3の結果が陽性で、内視鏡検査の紹介受診となった。介入群でCytosponge-TFF3を拒否した患者と通常ケア群は、GPが必要とした場合にのみ内視鏡検査を受けたが、結果として平均12ヵ月のフォローアップ期間中にバレット食道と診断されたのは、介入群140/6,834例(2%)、通常ケア群13/6,388例(<1%)であった(絶対群間差:18.3例/1,000人年[95%信頼区間[CI]:14.8~21.8]、クラスター無作為化について補正後の率比:10.6[95%CI:6.0~18.8]、p<0.0001)。 介入群6,834例のうち9例(<1%)が、バレット食道(4例)もしくはStageIの食道-胃接合部がんと診断された。一方で、通常ケア群ではバレット食道もしくはStageIの食道-胃接合部がんと診断された例はなかった。 Cytospongeによる検体採取に成功した介入群1,654例において、Cytosponge-TFF3の結果が陽性で内視鏡検査となったのは221例(13%)で、131例(8%、内視鏡検査を受けた被験者の59%)がバレット食道またはがんと診断された。 なお、Cytospongeが糸から外れ内視鏡的除去を要した患者が1例報告されている。また、最も多く認められた有害事象は、63/1,654例(4%)で報告された喉の痛みであった。 これらの結果を踏まえて著者は、「追加の内視鏡検査を要する偽陽性の結果はわずかで、通常ケア+Cytosponge-TFF3戦略の有効性は経済的評価によって確立しうるだろう」と述べている。

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ぺムブロリズマブ+化学療法による小細胞肺がん1次治療、PFSを延長(KEYNOTE-604)/JCO

 未治療の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対する、初回治療としての抗PD-1抗体ペムブロリズマブと化学療法(エトポシド+プラチナ:EP)の併用療法について検討した第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験KEYNOTE-604において、ペムブロリズマブ+EPはプラセボ+EPと比較して、無増悪生存(PFS)を有意に延長したことが報告された。ペムブロリズマブ併用群で、想定外の毒性はみられなかったという。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのCharles M. Rudin氏らによる検討で、著者は「示されたデータは、ES-SCLCにおけるペムブロリズマブの有益性を支持するものである」と述べている。先行研究で、SCLC患者においてペムブロリズマブ単独療法が抗腫瘍活性を示したことが報告されていた。Journal of Clinical Oncology誌2020年7月20日号掲載の報告。 試験では、適格患者を無作為に1対1で割り付け、ペムブロリズマブ200mgを3週ごと(最大35サイクル)+EP(最大4サイクル)またはプラセボ+EP(最大4サイクル)が投与された。 主要評価項目は、PFS(中央レビュー委員会評価)および全生存(OS)で、ITT解析にて評価した。副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)であった。事前に規定した有効性のp値(片側検定による)は、PFSがp=0.0048、OSがp=0.0128であった。 主な結果は以下のとおり。・被験者は453例で、228例がペムブロリズマブ+EP群に、225例がプラセボ+EP群に割り付けられた。・ペムブロリズマブ+EP群は、PFSを有意に改善した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.61~0.91、p=0.0023)。12ヵ月時点の推定PFS率は、ペムブロリズマブ+EP群が13.6%、プラセボ+EP群は3.1%であった。・ペムブロリズマブ+EP群はOSを延長したが、有意差は示されなかった(HR:0.80、95%CI:0.64~0.98、p=0.0164)。24ヵ月時点の推定OS率は、ペムブロリズマブ+EP群22.5%、プラセボ+EP群11.2%であった。・ORRは、ペムブロリズマブ+EP群70.6%、プラセボ+EP群は61.8%であった。12ヵ月時点で奏効が持続していたレスポンダーの推定割合は、それぞれ19.3%、3.3%であった。・全要因の有害事象の発現頻度は、Grade3/4がペムブロリズマブ+EP群76.7%、プラセボ+EP群74.9%、Grade5はそれぞれ6.3%、5.4%、あらゆる薬物の中断率は14.8%、6.3%であった。

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乳がん関連リンパ浮腫、リンパ節照射より腋窩手術の種類が影響/JCO

 乳がん関連リンパ浮腫について、腋窩手術の種類と領域リンパ節照射(RLNR)による影響を検討したところ、センチネルリンパ節生検(SLNB)、腋窩リンパ節郭清(ALND)ともRLNR追加でリンパ浮腫発現率は増加しなかった。また、ALND単独のほうが、SLNBにRLNRを追加するよりリンパ浮腫リスクが高かったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のGeorge E. Naoum氏らによる前向きスクリーニング研究の長期結果で示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月30日号に掲載。 本試験では、2005~18年にマサチューセッツ総合病院で治療を受けた浸潤性乳がん患者1,815例を、SLNB単独群、SLNB+RLNR群、ALND単独群、ALND+RLNR群の4群に分け、術前および治療後観察期間にperometerで上肢容積を測定した。術後3ヵ月以降に患側上肢容積が術前に比べて10%以上増加した場合をリンパ浮腫とした。 主な結果は以下のとおり。・各治療群の対象例数は、SLNB単独群1,340例、SLNB+RLNR群121例、ALND単独群91例、ALND+RLNR群263例であった。・全体における診断後の観察期間中央値は52.7ヵ月であった。・リンパ浮腫の5年累積発現率は、SLNB単独群8.0%、SLNB+RLNR群10.7%、ALND単独群24.9%、ALND+RLNR群30.1%であった。・年齢、BMI、手術、再建タイプを調整した多変量Coxモデルによる解析において、ALND単独群はSLNB+RLNR群に比べてリンパ浮腫リスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:2.66、p=0.02)。SLNB単独群とSLNB+RLNR群の間(HR:1.33、p=0.44)、ALND+RLNR群とALND単独群の間(HR:1.20、p=0.49)に有意差はみられなかった。・5年局所再発率は、SLNB単独群2.3%、SLNB+RLNR群0%、ALND単独群3.8%、ALND+RLNR群2.8%でほぼ同じだった。 著者らは、「RLNRはリンパ浮腫リスクを高めるが、リンパ浮腫の主要なリスク因子は腋窩手術の種類である」と結論している。

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卵巣腫瘍の悪性度診断に最適な予測モデルは?/BMJ

 卵巣腫瘍で手術または保存療法を受けた患者における診断予測モデルを検証した結果、ADNEXモデルとSRRiskが、腫瘍が良性か悪性かを識別する最適なモデルであることが、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のBen Van Calster氏らによる検討で明らかにされた。卵巣腫瘍では最適な治療を選択するため、悪性度を予測するモデルが必要になる。既存の予測モデルは手術を受けた患者のデータのみに基づいており、モデルの検証も大半が手術を受けた患者のデータを使用したもので、キャリブレーションや臨床的有用性の評価はほとんど行われていないという。BMJ誌2020年7月30日号掲載の報告。手術または保存療法を受けた患者を対象に6つのモデルについて検証 研究グループは、卵巣腫瘍で手術または保存療法を受けた全患者において、悪性度に関する診断予測モデルのパフォーマンス評価を目的とする多施設コホート試験を行った。 検証したモデルは、1990年に開発され最もよく使用されている「RMI(risk of malignancy index)」と、その後に開発された「IOTA(International Ovarian Tumour Analysis)モデル」のLR2(logistic regression model 2)、simple rules、SRRisk(simple rules risk model)、ADNEX(assessment of different neoplasias in the adnexa)モデルで、ADNEXモデルについては腫瘍マーカーのCA125の測定有無を加味して評価した。ADNEXモデルでは、悪性腫瘍のリスクの細分化(StageIの原発性、StageII~IVの原発性、2次性の転移がん)が可能であった。 Calster氏らの検討は、IOTAモデルについて検証した試験「IOTAフェーズ5試験(IOTA5)」の中間解析データを用いて行われた。試験は、14ヵ国36ヵ所のがん紹介治療センター(特定の婦人科腫瘍ユニットがある3次医療センター)またはその他のタイプの医療センターにおいて、2012年1月~2015年3月に卵巣腫瘍で受診し、手術またはフォローアップを受けた連続成人患者を対象とした。 主要アウトカムは、上記6つのモデルについて、全体および施設別の識別度、キャリブレーションおよび臨床的有用性。アウトカムは、患者が手術を受けた場合は組織学的評価に基づくものとし、保存療法の場合は12ヵ月時点での臨床的および超音波評価のフォローアップの結果に基づくものとした。フォローアップに基づくアウトカムが不確かな場合は複数の評価が用いられた。ADNEXモデル、SRRiskが最も優れる 主要解析には、手術およびフォローアップデータについて厳格な質的基準を満たした17ヵ所の被験者データ(全患者8,519例のうち5,717例)が包含された。そのうち812例(14%)が、試験登録時にすでにフォローアップを受けており、解析には4,905例が包含された。 アウトカムが良性であった患者は3,441例(70%)、悪性は978例(20%)。残りはアウトカムが不確かで(486例、10%)、大半はフォローアップの情報が限定的だったことによる。 全体でROC曲線下面積が最も高値だったのはADNEX(CA125あり)モデル(0.94、95%信頼区間[CI]:0.92~0.96)、ADNEX(CA125なし)モデル(0.94、0.91~0.95)、SRRisk(0.94、0.91~0.95)で、最も低値だったのはRMIだった(0.89、0.85~0.92)。 キャリブレーションはすべてのモデルについて施設間のばらつきが大きかったが、その中でADNEXモデルとSRRiskのキャリブレーションは最も優れていた。腫瘍サブタイプの推定リスクのキャリブレーションは、CA125が予測因子として含まれていたか否かにかかわらずADNEXは優れていた。また、臨床的有用性(ネットベネフィット)もADNEXモデルとSRRiskが最も高く、RMIが最も低かった。 1回以上フォローアップの超音波評価を受けた患者(1,958例)において、全体のROC曲線下面積は、RMIの0.76(95%CI:0.66~0.84)からADNEX(CA125あり)の0.89(0.81~0.94)に、ばらつきの範囲がわたっていた。

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千葉大総診の神髄本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第33回

【第33回】千葉大総診の神髄本臨床推論の本はいくつかありますが、誰でも診断できるよう一般化してしまうと各論がボヤけてしまって、逆に細かい鑑別まで突き詰めようとすると誰にも体得できないという”トレードオフ”の現象が存在します。全を取れば個が取れず、個を取れば全が取れず。『外来診療の型』鈴木 慎吾/著. メディカル・サイエンス・インターナショナル. 2020年このたび千葉大総診の真骨頂とも言える新たな臨床推論の本が出ました。表紙やタイトルを見ると「もしかして難しい書籍かな……」と身構えてしまいそうになりますが、とんでもござーせん。緻密ながらフランクな内容。著者の鈴木先生のギャグセンスもなかなかのもの(なぜか上から目線)。浮腫や咳嗽など、一般的な症候から診断を絞り込んでいく点は、ほかの臨床推論の本と似ていますが、驚くべきは用意されている問診や、診察の”型”の圧倒的な質の高さ。指導医が10年20年と臨床をやってきて体得してきた“型”を惜しみなく吐き出したバケモノ本です。そして、誰もが研修医時代に学んだOPQRST、その有用性を改めて認識させてくれました(表)。OPQRST revisit!いろいろな症候に汎用できるゴロ合わせですよね。O:Onset(発症様式)P:Provocation/Palliative factor(増悪/寛解因子)Q:Quality(性状)R:Related symptoms(関連症状)S:Severity/Site (強さ・重症度/部位)T:Time course(経過・日内変動)この本は、実際に患者さんを診察している風景をイメージするというよりも、千葉大総診のカンファレンスで診断当てゲームをしているような(そこまで難解な診断ではない「ドクターG」のような)感じで取り組むとよいと思います。たとえば、胸痛の章では、ガチ臨床推論の医学書だとTietze症候群やMondor病のような聞いたこともない診断名が解答になっていることが多いのですが、この本ではベリーコモンな疾患が答えになっていました。こういうの好きです。めちゃくちゃ考えさせられて、実はコモンディジーズみたいな。「1+1=2を証明せよ」、「一般角θに対してsinθ、cosθの定義を述べよ」、「円周率が3.05よりも大きいことを証明せよ」みたいな、東大の数学入試問題を彷彿とさせる、良問的良書に仕上がっています。『外来診療の型』鈴木 慎吾 /著出版社名メディカル・サイエンス・インターナショナル定価本体4,500円+税サイズA5判刊行年2020年

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コロナ禍、がん診断の遅れで5年後がん死増加の恐れ/Lancet Oncol

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、がん死に影響するとの報告が英国から寄せられた。同国ではCOVID-19のパンデミックにより2020年3月に全国的なロックダウンが導入されて以降、がん検診は中断、定期的な診断・診療も延期され、緊急性の高い症候性患者のみに対して診断・治療が行われているという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCamille Maringe氏らは、診断の遅れが主ながん患者の生存率にどのような影響を及ぼすのかモデリング研究にて検討し、回避可能ながん死が相当数増加すると予想されることを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「緊急の政策介入が必要である。とくに、COVID-19パンデミックのがん患者への影響を軽減するため、定期的な診断サービスの確保を管理する必要がある」とまとめている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。コロナ禍の診断遅延によるがんの5年間の追加死亡は3,291~3,621例 研究グループは、英国の国民保健サービス(NHS)のがん登録および病院管理データを用い、2010年1月1日~12月31日の間に乳がん、大腸がんまたは食道がんと診断され2014年12月31日までの追跡データがある、または、2012年1月1日~12月31日の間に肺がんと診断され2015年12月31日までの追跡データがある15~84歳の患者を特定し、物理的距離を確保する対策が開始された2020年3月16日から1年間の診断遅延が及ぼす影響について解析した。 診断遅延の生存に対する2次的影響をモデル化するため、通常のスクリーニングと紹介の経路での患者を、診断時の病期がより進行していることと関連する緊急経路に割り当て、最良から最悪まで3つのシナリオについて、診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡および全損失生存年数(YLL)を算出し、パンデミック前のデータと比較した。 コロナ禍の診断遅延による診断後1、3、5年時点でのがんに起因する追加死亡を算出した主な結果は以下のとおり。・乳がん患者3万2,583例、大腸がん患者2万4,975例、食道がん患者6,744例、肺がん患者2万9,305例が解析に組み込まれた。・乳がんでは、診断後5年時までの乳がん死が7.9~9.6%(追加死亡相当で281例[95%信頼区間[CI]:266~295]~344例[329~358])増加すると推定された。・同様に、診断後5年時までの大腸がん死は15.3~16.6%(追加死亡1,445例[95%CI:1,392~1,591]~1,563例[1,534~1,592])、肺がん死は4.8~5.3%(追加死亡1,235例[1,220~1,254]~1,372例[1,343~1,401])、食道がん死は5.8~6.0%(追加死亡330例[324~335]~342例[336~348])、それぞれ増加すると推定された。・これら4種のがんについての5年間の追加死亡は、3つのシナリオ全体で3,291~3,621例であり、追加YLLは5万9,204~6万3,229年と推定された。

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肺がん1次治療における抗PD-1抗体sintilimab+化学療法の成績(ORIENT-11)/WCLC2020

 新たな抗PD-1抗体sintilimabの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)における有効性は、第Ib相試験で示された。この結果を基に、無作為化二重盲検第III相ORIENT-11試験が行われ、その初回解析の結果を中国・Sun Yat-Sen University Cancer Centreの Zhang Li氏が、世界肺癌学会WCLC2020Virtual Presidential Symposiumで発表した。sintilimabがPFSを有意に延長・対象:未治療の局所進行または転移のあるNSCLC患者・試験群:sintilimab(200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5) 3週ごと4サイクル投与→sintilimab+ペメトレキセド維持療法(sintilimab群)・対照群:プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ 3週ごと4サイクル投与→ペメトレキセド維持療法(化学療法群) 化学療法群のsintilimab群へのクロスオーバーは許容された。・評価項目: [主要評価項目]独立放射線審査委員会評価の無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、客観的奏効期間(ORR)、効果発現までの時間、安全性 sintilimabのNSCLCにおける有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・対照患者397例はsintilimab群266例、プラセボ群131例に2対1で無作為に割り付けられた。プラセボ群のsintilimabへのクロスオーバーは35例(31.3%)であった。・追跡期間中央値8.9ヵ月でのPFS中央値は、sintilimab群8.9ヵ月、化学療法群5.0ヵ月と、sintilimab群で有意に長かった(HR:0.482、95%CI:0.362〜0.643、p<0.00001)。・OS中央値は、両群とも未達であった(HR:0.609、95CI:0.400〜0.926、p=0.01921)。・ORRは、sintilimab群51.9%、化学療法群で29.8%であった。・Grade3以上の有害事象発現率は、sintilimab併用群61.7%、プラセボ併用群58.8%であった。 Discussantである米国・Karmanos Cancer Canterの長阪 美沙子氏は、当試験が東アジアのデータであることを重要であるとした。また、PFS、OSは他の免疫チェックポイント阻害薬のNSCLC1次治療のデータと匹敵するものだとしながら、PFSの改善がOSの改善に結びつかないこともあることから、長期のフォローアップの必要性を強調した。 この試験の結果は、Journal of Thoracic Oncology誌2020年8月8日オンライン版にも同時掲載された。

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第38回 緑内障治療薬はどのくらい眼圧を下げ、視野を保つか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 眼圧上昇は緑内障を進行させる代表的な要因です。眼球内の房水が充満して圧力が上がれば視神経を圧迫し、視神経が弱れば視野狭窄や視力の低下を招きます。眼圧を下げる点眼薬が緑内障治療の中心となりますが、しばしばノンアドヒアランスが問題になります。ノンアドヒアランスの原因については横断研究でいくつか指摘されています。緑内障が視力低下を引き起こすことを十分認識できていなかったり、点眼薬で視力低下を緩和できることに懐疑的であったりするなどさまざまです。ほかにも緑内障についての知識不足、点眼やスケジュール理解の難しさ、コスト、副作用、生活上のストレスなど患者さんによって事情は異なりますが1)、根治療法がないため、視力や視野を維持するためにはどうしても長期間にわたる治療が必要です。緑内障・高眼圧症治療の点眼薬を続ければ、視野狭窄の進行が緩和されることはオープンラベルの研究で示されています。今回は緑内障治療の第1選択薬の1つであるプロスタグランジン関連薬のラタノプロスト点眼液のプラセボ対照比較試験を紹介します2)。これは緑内障の視野欠損に対する点眼薬の効果を調査した初のプラセボ対照のランダム化比較試験です。対象は開放隅角緑内障の患者516例(平均65.5歳、男性53%、糖尿病10.5%)で、介入群(ベースライン眼圧19.6mmHg、258例)はラタノプロスト0.005%点眼液を1日1回両目に投与、対照群(ベースライン眼圧20.1mmHg、258例)はプラセボ点眼薬を1日1回両目に投与し、24ヵ月以内の視野悪化までの時間を主要アウトカムとして調査しています。患者、介入者、評価者のトリプルマスキングで、介入者は患者に眼圧の測定結果を伝えないようにして、プラセボ点眼薬はラタノプロストの容器に入れて用いられています。割り付けられた516例のうち461例が解析に含まれました。両群のベースラインの特徴は似通っており、コルチコステロイド(吸入含む)の使用はプラセボ群17例(7%)、ラタノプロスト28例(11%)とやや後者が多くなっていますが、おおむね対等な比較となっています。94例に24ヵ月以内の緑内障の進行を伴う視野の悪化が認められ、その内訳は次のとおりでした。・ラタノプロスト:35/231例(15.2%)、眼圧変化-3.8mmHg・プラセボ:59/230例(25.6%)、眼圧変化-0.9mmHg・視野悪化の調整ハザード比:0.44(95%信頼区間[CI]:0.28~0.69、p=0.0003)ラタノプロスト群で視野の保持期間が有意に長いという結果でした。ラタノプロストを継続すると、眼圧がこのくらい下がるというのを目安として知っておくと効果判定に有用そうです。有害事象については目立ったものは報告されず、結膜炎がややラタノプロストで多い程度でした。結膜炎、充血に加え、プロスタグランジン系点眼薬ではまつげが異常に伸びたり、まぶたや虹彩に色素沈着が生じたりするといった美容に関わる副作用があります。対策として、点眼後の拭き取りをお伝えしましょう。逆手にとって美容目的でまつげに綿棒で付ける方もいますが。正常眼圧緑内障でも眼圧を下げることで進行を抑制日本人には正常眼圧緑内障が多いですが、その場合でも点眼薬が有用です。眼圧が正常範囲でも、無治療時の眼圧から30%以上の眼圧低下を目標として治療した群と無治療群では、視野障害の進行に有意な差があることが米国における多施設共同研究で示されています3)。合計140眼のうち、治療群の7眼(12%)と対照群の28眼(35%)が緑内障性視神経乳頭の進行または視野欠損のエンドポイントに達し、治療群の平均生存期間が2,688±123日であったのに対して、対照群では1,695±143日と長期的に大きな差が出ることがわかっています。なお、ランダム化割り付け時点の眼圧のベースラインは、対照群16.1±2.3mmHg、治療群16.9±2.1mmHgなので、眼圧が15mmHg以下だった場合の有効性は不明です。根拠をもって治療の効果を説明することで、ノンアドヒアランスの原因となる認識不足を解消できることもあると思いますので、服薬指導の参考にしていただければ幸いです。1)Newman-Casey PA, et al. Ophthalmology. 2015;122:1308-1316.2)Garway-Heath DF, et al. Lancet. 2015;385:1295-1304.3)Collaborative Normal-Tension Glaucoma Study Group. Am J Ophthalmol. 1998;126:487-497.

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