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COVID-19入院時、ビタミンD欠乏で死亡オッズ比3.9

 ビタミンD欠乏症と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連は、これまでもさまざまな報告があるが、依然として情報は不足している。今回、ベルギー・AZ Delta Medical LaboratoriesのDieter De Smet氏らが、入院時の血清ビタミンDレベルとCOVID-19の病期および肺炎の転帰との関連を調査した。その結果、COVID-19で入院した患者の59%がビタミンD欠乏症であり、COVID-19による死亡オッズ比は3.9であることが示された。American Journal of Clinical Pathology誌2020年11月25日号での報告。入院時のビタミンD欠乏症とCOVID-19起因肺炎による死亡率との関連 研究者らは、2020年3月1日~4月7日にAZ Delta General Hospitalに入院したSARS-CoV-2感染(PCR陽性)者186例を対象に、入院時の胸部コンピューター断層撮影(CT)と25(OH)D測定を組み合わせた後ろ向き観察試験を実施した。また、ビタミンD欠乏症(25(OH)D<20ng/mL)が交絡する併存疾患に関係なく生存率と相関するかどうかを調べるために、多変量回帰分析が実施された。 なお、CT結果による病期は、すりガラス状陰影(初期、病期1)、すりガラス状陰影内部に網状影を伴うcrazy-paving pattern(進行期、病期2)、浸潤影を呈するconsolidation(ピーク期、病期3)とした。COVID-19による肺炎の影響を受けた肺組織の割合は、CT重症度スコア(0~25)として表された。 入院時の血清ビタミンDレベルとCOVID-19の病期および肺炎の転帰との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・PCRで確認されたSARS-CoV-2感染者186例が入院し、そのうち男性が109例(58.6%)、女性が77例(41.4%)、年齢中央値はそれぞれ68歳(四分位範囲[IQR]:53~79歳)および71歳(IQR:65〜74歳)だった。・入院時に測定された結果によると、186例中85例(46%)は病期3(ピーク期)、病期2(進行期)は30%、病期1(初期)は25%で、男女比に差は見られなかった。・186例中109例(59%)は、入院時にビタミンD欠乏症(25(OH)D<20ng/mL)であり、男性では67%、女性では47%だった。・男性患者では、CTによる病期が進むにつれて徐々に25(OH)Dの中央値が低くなり、ビタミンD欠乏率は、病期1の55%から病期2では67%、病期3では74%に増加した(p=0.0010)。一方、女性患者ではそのような病期依存の25(OH)D値変動は見られなかった。・入院時の25(OH)D値と死亡率の関連を調べた結果、COVID-19患者186例のうち、27例(15%)が死亡し、そのうち67%が男性だった。・死亡した患者は生存者と比べて、年齢(中央値:81歳vs.67歳、p<0.0001)、慢性肺疾患有病率(33% vs.12%、p=0.01)、冠動脈疾患有病率(82% vs.55%、p=0.02)、CT重症度スコア(15 vs.11、p=0.046)が高く、25(OH)D値(中央値:15.2 vs.18.9ng/mL、p=0.02)は低かった。・二変量ロジスティック回帰分析によると、死亡率は年齢の上昇(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.03~1.14)、CT重症度スコアの上昇(OR:1.12、95%CI:1.01~1.25)、慢性肺疾患の存在(OR:3.61、95%CI:1.18~11.09)、およびビタミンD欠乏症の存在(OR:3.87、95%CI:1.30~11.55)とは独立して関連しており、性別、糖尿病および冠動脈疾患の有病率、CTによる病期とは関連していなかった。 著者らは、「本研究は、慢性肺疾患、冠動脈疾患、糖尿病など、ビタミンDの影響を受ける併存疾患とは無関係に、入院時のビタミンD欠乏症とCOVID-19起因肺炎による死亡率との関連を示した。これは、とくにビタミンD欠乏症の患者を対象とする無作為化比較試験の必要性を強調し、SARS-CoV-2パンデミックの安全かつ安価で実施可能な軽減策として、世間一般にビタミンD欠乏の回避を呼びかけるものだ」と結論している。※本文中に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2021年1月18日10時)。

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免疫チェックポイント阻害薬関連の乾癬、重症度や対処法は?

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に関連した乾癬について、ギリシャ・アテネ大学のVasiliki Nikolaou氏らが欧州9施設から報告された115例について、重症度等のデータを明らかにし、段階的な治療アルゴリズムの提案を検討した。ICIに関連した乾癬は、診断上および治療上の重大な課題をもたらすが、検討によりacitretin、アプレミラスト、メトトレキサートは安全で効果的な治療法であり、ほとんどの場合でICI投与を中断することなく完了できることを示した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年12月3日号掲載の報告。 研究グループは、前例のない最大コホートから報告されたICIに関連した乾癬に関するデータを報告し、段階的な治療アルゴリズムを提案するため、欧州の9施設で組織するEuropean Network for Cutaneous ADverse Event to Oncologic drugs(ENCADO)のデータを用いて検討した。 9施設からの、ICIに関連した乾癬を呈した全患者の医療記録をレトロスペクティブにレビューした。 主な結果は以下のとおり。・コホートに包含した患者は115例であった。・報告された疾患重症度は、グレード1が60/105例(57.1%、10例は欠損データ)、グレード2が34/105例(32.4%)、グレード3が11/105例(10.5%)であった。・乾癬の新規症例と悪化症例の比率は21/90例(23.3%)であった。・最も一般的な全身療法はacitretin(23例、20.1%)であり、続いて全身ステロイド(8例、7%)、アプレミラスト(7例、6.1%)、メトトレキサート(5例、4.3%)、生物学的製剤(4例、3.6%)であった。・全体として、乾癬のためにICIを中断したのは29/112例(25.9%)であり、永久中止となったのは20/111例(18%)であった。・ベースラインで、BSA>10%の場合、ICI治療の変更リスクは3.6倍(オッズ比[OR]:3.64、95%信頼区間[CI]:1.27~10.45、p=0.03)、永久中止のリスクは6.4倍(6.41、2.40~17.11、p<0.001)それぞれ増大することが示された。・滴状乾癬およびグレード2/3が、ICIの抗腫瘍反応の有意な陽性予測因子であった。一方で、そう痒症は陰性予測因子であった。・本検討は、後ろ向きデザインという点で結果は限定的なものである。

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外科医が自分の誕生日に行った手術で、死亡率増/BMJ

 緊急手術を受けたメディケア受給患者の死亡率を分析した結果、外科医が手術を自身の誕生日に行った患者の死亡率が、誕生日以外の日に行った患者の死亡率と比べて高いことが判明した。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の加藤 弘陸氏らが行った全米規模の観察研究の結果で、著者は「本所見は、外科医が手術室で、手術とは直接関係のない出来事で注意散漫になりうることを示すものである」と述べている。手術室では、臨床的出来事や個人的出来事によって、注意をそらされることが日常的に起きているという。研究室での実験では、注意散漫が外科医のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があることは示されているが、患者の転帰にどれほど影響するのか、リアルワールドのデータを使用した経験的エビデンスは限定的であった。BMJ誌2020年12月10日号クリスマス特集号の「THE CITADEL」より。外科医の誕生日の手術例vs.他日の手術例で術後30日死亡率を比較 研究グループは、外科医の誕生日に行われる手術は、外科医の注意散漫と患者の転帰の関係を評価する好機になりうるとして、これまで行われていなかった外科医の誕生日と患者の死亡率との関連を調査した。 米国内の急性期病院とクリティカル・アクセス・ホスピタル(critical access hospital)で行われた手術データを基に、後ろ向き観察研究にて、外科医の誕生日に手術が行われた患者と誕生日以外の日に行われた患者で術後の死亡率が異なるかを評価した。 分析対象とした患者は、2011~14年に17の一般的な緊急手術のうちの1つを受けた、65~99歳のメディケア受給者(手術費用のカバー率100%)であった。 主要評価項目は、術後30日死亡率(術後30日以内の死亡と定義)で、患者の特性および外科医の固定効果を補正して評価した。補正後死亡率6.9% vs.5.6%で群間差1.3%、p=0.03 4万7,489人の外科医によって行われた98万876例の手術が分析に含まれた。外科医の誕生日に行われた手術は2,064例(0.2%)であった。 疾患重症度など、患者の特性は、外科医が誕生日に手術を行った患者(外科医誕生日群)と、誕生日以外の日に手術を行った患者(対照群)で類似していた。 補正前30日死亡率は、外科医誕生日群7.0%(145/2,064例)、対照群5.6%(5万4,824/97万8,812例)であった。 患者の特性と外科医の固定効果(同じ外科医が異なる日に手術を行った患者の転帰を効果的に比較)を補正後、外科医誕生日群の死亡率は、対照群と比較してより高率であることが示された(補正後死亡率6.9% vs.5.6%、補正後の群間差:1.3%、95%信頼区間:0.1~2.5、p=0.03)。 外科医の誕生日と手術日を比較した患者の死亡率のイベント研究分析でも、同様の結果が認められた。

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第41回 去年の大発見~循環する独り立ちミトコンドリア、第四の唾液腺

去年は世界が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に見舞われ、それに関連する薬、ワクチン、診断、研究技術の開発が飛躍的に進歩しました。その一方で他の研究ももちろん進展し、たとえばよく見知ったはずの人体の新たな大発見1)がありました。その一つは、すでに知られている3つの唾液腺に加えて第4の唾液腺一対が新たに見つかったことです2)。耳管隆起(torus tubarius)近くにあることからtubarial glandと名付けられたその新たな唾液腺は手術で顕わになり難いので長く見つからないままだったようです。オランダのがん研究所Netherlands Cancer Instituteの放射線腫瘍医Wouter Vogel氏等は前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合する放射性トレーサー頼りのCTやPET撮影によってその在り処を突き止めました。PSMA PET/CTはそもそも前立腺がんの検出のためのものですが、Vogel氏によると唾液腺検出感度がすこぶる良好で、そのおかげでこれまで見えなかったものを見つけることができました1)。もう一つは健康な人の血液を独り立ちして巡るミトコンドリアの発見です3)。どこかが傷んで細胞から漏れたミトコンドリア由来と思われるその一部(DNA)が体を巡っていることは知られていました。しかし生来の機能を果たしうるミトコンドリアまるごとが健康な人の血液に細胞に入っていない状態で存在することは分かっていませんでした1)。フランスの著名な研究所INSERMのチームが見つけたそれらのむき出しのミトコンドリアが細胞の外で何をしているかはこれから調べる必要がありますが、細胞間の連絡に一役買っているのではないかと研究者は推測しています4)。人体は調べ尽くされたようでまだまだ未開の発見を待つ未知を隠しているに違いありません。今年はどんな発見があるのでしょうか。参考1)The Biggest Science News of 2020 / TheScientist 2)Valstar MH,et al. Radiother Oncol. 2020 Sep 23. [Epub ahead of print]3)Al Amir Dache Z, et al. FASEB J. 2020 Mar;34:3616-3630.4)A new blood component revealed / Eurekalert

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早期TNBC、低用量カペシタビン維持療法で転帰が改善/JAMA

 標準的な術後補助療法を受けた早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)女性において、低用量カペシタビンによる1年間の維持療法は経過観察と比較して、5年無病生存率を有意に改善し、有害事象の多くは軽度~中等度であることが、中国・中山大学がんセンター(SYSUCC)のXi Wang氏らが行った「SYSUCC-001試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年12月10日号で報告された。乳がんのサブタイプの中でも、TNBCは相対的に再発率が高く、標準治療後の転帰は不良であり、再発および死亡のリスクを低減する効果的な維持療法が求められている。低用量カペシタビンによる化学療法は、2つの転移の機序(血管新生、免疫逃避)を標的とすることでTNBC女性の再発を抑制する可能性が示唆されているが、再発抑制に要する長期の治療の有効性と受容性については不確実性が残るという。中国の13施設が参加した非盲検無作為化第III相試験 研究グループは、早期TNBC女性において、標準的な術後補助療法後の低用量カペシタビンによる維持療法の有効性と有害事象を評価する目的で、非盲検無作為化第III相試験を実施した(Sun Yat-sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成による)。中国の13施設が参加し、2010年4月~2016年12月の期間に患者登録が行われ、最終フォローアップ日は2020年4月30日だった。 対象は、病理学的に確定された浸潤性乳管がんで、ホルモン受容体とERBB2が陰性であり、鎖骨上リンパ節・内胸リンパ節に転移がなく、ステージがT1b-3N0-3cM0の早期の腫瘍を有し、標準治療として胸筋温存乳房切除術または乳房温存術が施行され、術前または術後に化学療法と放射線治療を受けた患者であった。 被験者は、標準的な術後補助療法終了後に、カペシタビン(650mg/m2、1日2回、経口)を1年間投与する群または経過観察群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは5年無病生存率とした。無病生存は、無作為化の時点から局所再発、遠隔転移、対側乳がん、全死因死亡の初回発生までの期間と定義された。副次エンドポイントは、遠隔無病生存(無作為化から遠隔再発、対側乳房の浸潤性乳がん、全死因死亡までの期間)、全生存(無作為化から全死因死亡までの期間)、局所領域無再発生存(無作為化から局所領域の浸潤性乳がん再発または死亡までの期間)、有害事象であった。再発・死亡リスクが36%低減、Grade 3手足症候群は7.7% 443例が無作為化の対象となり、434例が最大の解析対象集団(FAS)とされた。年齢中央値は46歳(範囲:24~70)で、閉経前が66.8%であった。86.4%が乳房切除術を受けた。アントラサイクリン系またはタキサン系薬剤ベースのレジメンによる術前化学療法を受けた患者が5.8%、同レジメンによる術後化学療法を受けた患者は78.8%であり、T1/T2が93.1%、リンパ節転移陰性が61.8%、Grade3が72.8%だった。 フォローアップ期間中央値61ヵ月(IQR:44~82)の時点で、無病生存に関するイベントは94件観察された。カペシタビン群は38件(再発37件、死亡32件)、観察群は56件(56件、40件)であった。推定5年無病生存率は、カペシタビン群が82.8%と、観察群の73.0%と比較して有意に優れた(再発または死亡のリスクのハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.42~0.95、p=0.03)。事前に規定されたサブグループのすべてで、無病生存率はカペシタビン群で良好な傾向がみられた。 また、推定5年遠隔無病生存率(カペシタビン群85.8% vs.観察群75.8%、遠隔転移または死亡のリスクのHR:0.60、95%CI:0.38~0.92、p=0.02)はカペシタビン群で有意に良好であったのに対し、推定5年全生存率(85.5% vs.81.3%、死亡リスクのHR:0.75、95%CI:0.47~1.19、p=0.22)および推定5年局所領域無再発生存率(85.0% vs.80.8%、局所領域再発および死亡のリスクのHR:0.72、95%CI:0.46~1.13、p=0.15)には、両群間に有意な差は認められなかった。 カペシタビン群で最も頻度の高い有害事象は手足症候群(45.2%)で、このうちGrade3は7.7%であった。このほか、白血球減少(23.5%)、ビリルビン値上昇(12.7%)、腹痛/下痢(6.8%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値・アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値上昇(5.0%)の頻度が高かったが、いずれもGrade1または2であった。 著者は、「カペシタビンの1年間の投与は、多くの女性にとって忍容可能であり、毒性による投与中止はほとんどなかった。80%以上の参加者が1年間の投与を完了し、何らかの理由で投与の中断を要したのは4分の1未満であった」としている。

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COVID-19ワクチン、2021年に世界人口の何割に接種可能か/BMJ

 主要メーカーの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの世界的な需給について、メーカーが最大生産量を可能としても、世界の人口のほぼ4分の1は少なくとも2022年までワクチン接種を受けることはできないとの研究結果を、米国・ジョンズ・ホプキンズ公衆衛生大学院のAnthony D. So氏らが報告した。COVID-19ワクチンについては、高所得国が市販前に購入契約を結んでいる一方、そのほかの国・地域については入手が不確実であるといわれ、世界保健機関(WHO)が主導するCOVAXファシリティを介して、グローバルアクセスを調整する取り組みが進められている。しかし、高所得国の購入契約に遅れをとっているうえ、資金は不十分で、米国やロシアの協力は得られていない。今回の検討では、高所得国がどのようにCOVID-19ワクチンの将来の供給を確保したかについて概要を示すとともに、残されたそのほかの国・地域は不確実であること、2021年末までに低中所得国が調達できるワクチンはメーカー生産量の40%であり、仮に高所得国が購入予定量を増やした場合、その割合はさらに少なくなるが、高所得国が調達したワクチンが供出されれば増える可能性があることなどが明らかにされた。研究グループは、「政府およびメーカーは、購入契約に関する透明性と説明責任を高めることで、COVID-19ワクチンの公平な配分への確約も果たすことができるだろう」と提言している。BMJ誌2020年12月15日号掲載の報告。主要メーカーから各国へのCOVID-19ワクチンの市販前購入契約を分析 研究グループは、主要メーカーから各国へのCOVID-19ワクチンの市販前購入契約を分析するため、WHOのCOVID-19ワクチン候補のレポート(draft landscape of covid-19 candidate vaccines)、米国証券取引委員会へ提出された企業情報開示、企業および財団のプレスリリース、政府のプレスリリース、メディア報告を調べ、2020年11月15日までに公表されていたCOVID-19ワクチンの市販前購入契約(コース当たりの価格、ワクチンプラットフォーム、研究開発のステージ、調達代理店および購入先の国)を分析した。当面の供給量の半分強は高所得国(世界の人口の14%) 2020年11月15日時点で、13のワクチンメーカーから合計74.8億回(37.6億コース)分を購入する市販前契約が結ばれていた。これらの半分強(51%)は、高所得国(世界の人口の14%)に送達されるものであった。 米国は、世界のCOVID-19の症例数の約5分の1(1,102万例)を占めるが、予約量は8億回分であった。一方で、日本、オーストラリア、カナダは、合計10億回分以上を予約していたが、その症例数は世界の症例数の1%に満たない(45万例)。 もし、これらのワクチン候補が最大生産量を達成できた場合、2021年末までに59.6億コース分のワクチン製造が予測された。これらのワクチンコースの最大40%(あるいは23.4億コース)が低中所得国に供給される可能性があるが、もし高所得国が購入拡大オプションを行使すると、低中所得国の供給量は少なくなることが示唆された。また、高所得国が調達したワクチンを供出する場合は、低中所得国の供給量は増すことが示唆された。 ワクチン価格は、コース当たり6ドル(4.50ポンド、4.90ユーロ)から74ドルまでと10倍以上の幅があった。 米国とロシアを除く多彩な国が参加するCOVAXファシリティは、5億回(2.5億コース)分を少なくとも確保しているが、世界的なCOVID-19ワクチンへのアクセスをサポートする取り組みにおいて、2021年末に目標としている20億回分の投与に必要な資金の確保は半分にとどまっているのが現状であった。

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新型コロナに対するRNA遺伝子ワクチンは人類の救世主になりうるか?【臨床編】(解説:山口佳寿博氏)-1335

 本論評(臨床編)では3種類の遺伝子ワクチン(RNA、DNA)の特徴について考察する。(1) RNAワクチンにあってPfizer/BioNTech社のBNT162b2に関しては初期試験が終了し(Walsh EE, et al. N Engl J Med. 2020;383:2439-2450.)、第III相試験の中間解析の結果が正式論文として発表された(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 10. [Epub ahead of print])。それを受け、12月2日に英国、12月11日に米国においてBNT162b2の緊急使用が承認され、医療従事者、高齢者、施設入居者などを対象としてワクチン接種が開始されている。カナダ、バーレーン、サウジアラビアでは完全使用が認可された。12月18日、Pfizer社は本邦へのワクチン導入を目指し厚労省に製造承認を申請した。 BNT162b2は、S蛋白全長の遺伝子情報(塩基配列)を自己増殖性のAlphavirus遺伝子(1本鎖RNA)に組み込み、脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)に封入し生体細胞に導入するもので、RNAワクチンの中で最も抗体産生効率が良いと考えられている(必要な1回ワクチン量は30μgと最も少ない)。本ワクチンの問題点の1つは、-70℃±10℃という非常な低温で保存しないとワクチンの安定性を維持できないことである。BNT162b2の第III相試験は16歳以上の若年者から高齢者までを対象として、米国、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカ共和国、ドイツ、トルコの6ヵ国で施行され(4万3,548例、対照群:2万1,728例、ワクチン群:2万1,720例)、中間報告では、2回目のワクチン接種(1回目接種後21日目)後7日目以降の中間値で3.5ヵ月間におけるコロナ感染予防有効性を報告している。ワクチンの有効性は95%であり、人種/民族、性、年齢、併存症による影響を認めなかった(高齢者でも若年者と同等の有効性)。重症化した症例が10例存在したが、対照群で9例、ワクチン接種群で1例であり、ワクチンは重症化阻止効果を有することが示唆された。副作用/有害事象の内容・頻度は他のワクチン接種時にも認められる一般的なものであり、とくに問題となるものは存在しなかった。1回目のワクチン接種から2回目のワクチン接種までの間の感染予防有効性は52%であり、1回のワクチン接種のみでも有意な感染予防効果が得られることが判明した。本第III相試験では15歳以下の若年者/小児、妊婦、免疫不全を有する患者は治験から除外されており、これらの対象におけるワクチンの効果、あるいは、有害事象については今後の検討課題である。 ワクチンの有効性が最長でも2回目のワクチン接種後3.5ヵ月で判定されており、ワクチンを年間何回接種する必要があるかを決定するためには、もっと長期間にわたる液性/細胞性免疫の持続性に規定される有効性の観察が必要である。ワクチン接種後時間が経過すれば、ワクチン接種によって惹起された液性/細胞性免疫の賦活化は減弱し、それに伴い感染予防効果も低下するはずである。それ故、現時点で報告された感染予防有効性は、あくまでもBNT162b2ワクチンの最大効果を示す値と考えなければならない。 もう一点注意すべき事項は、ワクチン有効性の判定基準である。新規感染はコロナを疑わせる臨床症状の発現(有症状)に加え、呼吸器検体におけるPCR陽性をもって定義された。すなわち、無症候性症例は有効性の判定から除外されている。PCR陽性者のうち無症候性感染者(不顕性感染者)は約30%と報告されており(Lee S, et al. JAMA Intern Med. 2020 Aug 6. [Epub ahead of print])、社会におけるウイルス播種を考えるとき、無症候性感染に対するワクチンの予防効果に関する検討が必要である。 Pfizer/BioNTech社は、S1-RBDに関する遺伝子情報を組み込んだRNAワクチン(BNT162b1)も同時に開発していた。しかしながら、S蛋白全長の遺伝子情報を組み込んだBNT162b2のほうがウイルスの自然構造により近いこと、今後S蛋白領域で間断なく発生する自然遺伝子変異(2.5塩基/1ヵ月、Meredith LW, et al. Lancet Infect Dis. 2020;20:1263-1272.)によるワクチン能力の低下を考慮すると、BNT162b2のほうがより優れていると結論された(Walsh EE, et al. N Engl J Med. 2020;383:2439-2450.)。(2) Moderna社のmRNA-1273は自己非増殖性のLNP封入RNAワクチンであり、S蛋白全長に対する遺伝子情報が導入されている(1回のワクチン量は100μgでBNT162b2投与量の3.3倍、2回目のワクチンは29日目に接種)。本ワクチンは-4℃(通常の冷凍庫)保存で1ヵ月間は安定だと報告されている。本ワクチンに対する高齢者を含む初期試験が終了し(Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931. , Anderson EJ, et al. N Engl J Med. 2020;383:2427-2438.)、第III相試験(COVE試験)の中間解析の結果が、12月17日、米国FDAの審査書類の一環として発表された(FDA Briefing Document)。これらの書類を審査した結果、12月18日、米国FDAはmRNA-1273の緊急使用を承認した。本論評では米国FDAが発表したデータを基に考えていく。 治験対象者は18歳以上の3万418例で、25.3%は65歳以上の高齢者であった。妊婦は対象から除外された。感染予防有効性は、2回目ワクチン接種後14日目以降中間値で9週(2.3ヵ月)までの間で判定された。非高齢者(18歳以上~65歳未満)の感染予防有効性は95.6%、高齢者(65歳以上)のそれは86.4%であった(全年齢の平均:94.1%)。これらの値はPfizer/BioNTech社のBNT162b2と同等であり、性差、年齢、人種、併存症の有無に関係なく、ほぼ一定であった。また、重症化した症例は30例存在したが、すべてが対照群で発生し、ワクチン接種群では重症化症例を認めなかった。1回目のワクチン接種から14日以内(2回目のワクチン接種前)の感染予防有効性(ワクチン1回接種の効果)は50.8%であり、やはりBNT162b2と同等であった。副作用/有害事象に関しても、ワクチン接種時に認められる一般的なものが中心で特異的なものは認められなかった。ただ、ワクチン接種群にベル麻痺が1例発生し、米国FDAはワクチン接種と無関係だとは結論できないとしている。mRNA-1273の問題点は、BNT162b2で指摘した内容がそのまま当てはまる(治験対象から外れた17歳以下の症例、妊婦に対する有効性、ワクチン接種による液性/細胞性免疫の賦活化の持続時間とそれに規定される感染予防効果の持続時間、無症候性感染に対する予防効果など)。(3) AstraZeneca社のChAdOx1は、S蛋白の全長に対する遺伝子情報を、チンパンジーアデノウイルス(Ad)をベクターとして宿主に導入した自己非増殖性DNAワクチンである。本ワクチンに関する初期試験は高齢者を対象としたものを含め終了し(Folegatti PM, et al. Lancet. 2020;396:467-478. , Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.)、第III相試験の中間解析結果も正式の論文として発表された(Voysey M, et al. Lancet. 2020 Dec 8. [Epub ahead of print])。本ワクチンに関する第III相試験は英国、ブラジル、南アフリカ共和国において施行されたものを総合的に評価したもので、対象は18歳以上の1万1,636例(対照群:ワクチン群=1:1)であった。 本第III相試験はStudy designに種々の問題点が存在し、その結果の解釈には注意を要する。問題点として、(1)試験施行国での2回目のワクチン接種時期が、決められた1回目ワクチン接種後4週ではなく、それからかけ離れている症例が多数存在する。(2)1回目のワクチン量が国によって異なり、標準量(SD、5×1010 viral particles)の半量(LD、2.2×1010 viral particles)を接種した対象とSD量を接種した対象が混在している。(3)対照群に投与された偽ワクチンが、生食の場合とMeningococcal group A, C, W, Y conjugate vaccine(MenACWY)の場合が混在しており、偽ワクチンの差が感染予防有効性の最終結果をどのように修飾しているのかが判断できない。以上のような問題点を有する第III相試験ではあるが、ワクチンによる感染予防有効性を見てみると(2回目ワクチン接種後14日以上経過した時点での判断)、1回目LD量のワクチン接種、2回目SD量のワクチンを接種した群(LD/SD群)での感染予防有効性は最も高く90%であった。一方、SD/SD群の有効性は62%で、LD/SD群に比べ明らかに低い値を示した。 以上の結果は、ChAdOx1の場合、SD量を2回接種したとき(SD/SD群)には、“基礎編”で考察したように、1回目のSD量ワクチン接種後ベクターとして用いたチンパンジーAdに対する抗体が高度に形成され、その結果として2回目のSD量ワクチン接種時にAdの一部が破壊され遺伝子情報の宿主への導入量が減少、S蛋白関連の液性/細胞性免疫の賦活化が低めに維持された可能性を示唆する。一方、LD/SD群では、初回ワクチン量が低いためAdに対する抗体産生量も低く、2回目のSD量ワクチンに対する負の効果が弱められたのではないかと推察される。しかしながら、LD/SD群には65歳以上の高齢者が1例も含まれておらず、LD/SD投与の優越性が高齢者においても維持されているかどうかは不明である。 副作用/有害事象に関しては、ChAdOx1の治験中に横断性脊髄炎の発症が第I~III相試験を通して3例報告されている。うち1例は偽ワクチン接種後に発生していたことなどから、ChAdOx1接種とは無関係だと結論された。しかしながら、RNAワクチンでは横断性脊髄炎は報告されておらず、ChAdOx1接種後のみに2例の横断性脊髄炎が発生した事実は看過できない問題だと考えられる。ChAdOx1に限らず、RNAワクチンの報告も数ヵ月以内の短い経過観察におけるものであること、さらには、第III相試験でも数万人程度の接種人数であり、ワクチン接種が世界的規模で始まり億単位の人に接種された場合に、頻度の低い有害事象が出現する可能性があることを踏まえ、今後の確実な経過観察の継続が必要である。 AstraZeneca社のChAdOx1に関しては、以下の諸点について再考が必要と思われる。“基礎編”で考察したように、Adをベクターとするワクチンでは2回目のワクチン接種によって誘導されるブースター効果が弱く、単回ワクチン接種で2回接種の場合と遜色ない臨床的効果が得られる可能性がある。ワクチン接種に起因する副作用/有害事象の発現を考慮すると、単回接種の可能性を追求すべきかもしれない。第III相試験の結果からは、ChAdOx1に関する至適用量(LD量かSD量か)が決定されたとは言い難い。対照群に用いる偽ワクチンの固定化、2回目のワクチン接種時期を1回目ワクチン接種4週後に確実に固定したうえで、十分な人数の高齢者を治験対象に含め、LD/LD群(ワクチン半量2回接種)、LD/SD群、SD/SD群に関する新たな第III相試験を計画してもらいたい。これらの治験データが提出されない限り、ChAdOx1を臨床的に有効なワクチンとして受け入れることは難しい。ただ、本ワクチンは2~8℃(家庭用の冷蔵庫)の保存で少なくとも6ヵ月間は安定しており、利便性の面でBNT162b2、mRNA-1273より優れている。さらに、ChAdOx1のコストはBNT162b2、mRNA-1273に比べ安価だと報告されており(コーヒー1杯分の値段とのこと)、その意味でもChAdOx1の開発を成功させてもらいたいと念願するものである。 12月11日、AstraZeneca社は、ChAdOx1(チンパンジーAd)とロシア製Sputnik V(ヒトAd26でpriming、Ad5でboost)を組み合わせた臨床治験をロシアにおいて開始すると発表した。2種類のDNAワクチンを組み合わせることによって、新型コロナに対する感染予防効果を高めることができるかどうかの検証を目的とした治験である。

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第40回 新型コロナウイルスへの抗体やメモリーB細胞が感染後少なくとも8ヵ月間持続

無症状か軽症の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)から8ヵ月を過ぎた患者のほとんどからSARS-CoV-2のスパイクタンパク質(S)やヌクレオカプシド(N)への抗体を検出することができました1,2)。検討されたのは韓国の58人で、それらのうち7人は無症状、残り51人は軽症でした。感染から8ヵ月時点で抗N Igは53人(91%)、抗N IgGは15人(26%)、抗S IgGは50人(86%)、抗S1 IgGは40人(69%)から検出できました。中和抗体も半数を超える31人(53%)から検出できました。さらに心強いことに、遭遇したウイルスを覚えておいて次の襲来時に素早く抗体を生み出すメモリーB(Bmem)細胞の少なくとも8ヵ月間の存続もオーストラリアのMenno van Zelm氏等のチームによる別の研究で確認されています3,4)。van Zelm氏等はCOVID-19患者25人の発症後4日~8ヵ月(242日)の血液中の抗体やBmem細胞を調べました。Bmem細胞はフローサイトメトリーを利用した手法で検出されました。まず抗体はどうだったかというと、スパイクタンパク質受容体結合領域(RBD)やヌクレオカプシドタンパク質に対するIgGは減りはしたものの韓国での研究と同様に全員から検出できました。一方、抗体がすぐに減り始めたのとは対照的にそれらSARS-CoV-2タンパク質に対するBmem細胞は100~150日後まで増え続け、8ヵ月後まで安定して存続していました。抗原減少につれて減っていく抗体に比べて長い間安定なSARS-CoV-2特異的Bmem細胞は長期免疫のより確実な指標の役目を果たすようであり、van Zelm氏等が開発したフローサイトメトリーによるSARS-CoV-2特異的Bmem細胞検出法はCOVID-19感染やワクチン接種後の長期免疫記憶の判定に役立つでしょう。重症のCOVID-19患者ほど臓器や免疫系を攻撃しうる自己抗体活性が高いSARS-CoV-2感染への免疫反応はジキル博士とハイド氏のような表裏があるようで、次に備える抗体やメモリーB細胞などの有益な免疫反応を引き出す一方で異常な免疫反応を誘発することも知られつつあります5)。米国・エール大学のCOVID-19研究で名を馳せるAkiko Iwasaki(岩崎明子)氏等がCOVID-19患者194人を調べたところ重症の患者ほど臓器や免疫系を攻撃、いわば誤爆しうる自己抗体活性が高いことが示されました5,6)。感染解消に必要な免疫細胞を攻撃してしまう自己抗体もあれば中枢神経系(CNS)・心臓・肝臓・胃腸・血管・結合組織を攻撃する自己抗体も検出されました。1型インターフェロンに対する自己抗体(抗IFN-I自己抗体)はCOVID-19入院患者の5.2%に認められ、重症の患者により集中していました。抗IFN-I自己抗体を有する患者はウイルス除去に支障を来しており、どうやら抗IFN-I自己抗体があるとウイルス複製がうまく食い止められなくなるようです。また、免疫細胞・B細胞やT細胞表面のタンパク質への自己抗体はそれらの細胞の枯渇と関連することも示され、抗IFN-I自己抗体と同様にSARS-CoV-2への免疫反応を害している恐れがあります。免疫系以外への自己抗体も数多く、たとえば脳の視床下部に豊富なオレキシン受容体・HCRTR2への自己抗体がCOVID-19患者8人に認められ、HCRTR2への自己抗体が多いことは意識低下(グラスゴー昏睡尺度点数低下)と関連しました。SARS-CoV-2感染を脱した後に長く続く後遺症(Post-Covid syndrome)が18~49歳ではおよそ10人に1人、70歳を超えるとその倍の5人に1人に生じると考えられています6)。Long Covidとしても知られるそれらのCOVID-19後遺症は長く体内に居座る自己抗体によって引き起こされている恐れがあると今回の研究を岩崎氏と共に率いたAaron Ring氏は言っています。それに、自己抗体が多岐にわたることはCOVID-19に伴う雑多な病態に寄与しているようです7)。英国や南アフリカで広まるSARS-CoV-2変異株の状況(25日時点)英国で広まるSARS-CoV-2変異株B.1.1.7〔別名variant of concern(VOC)202012/01、かつての名称はvariant under investigation(VUI)202012/01〕は心配なことに他のSARS-CoV-2に比べて15歳未満の小児に感染しやすいかもしれず、流行食い止め(maintain R below 1)のために学校閉鎖が必要かもしれないとインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者によるひとまずの解析で示唆されました8)。更なる調査の上で英国政府諮問委員会NERVTAGは判断を下します。18日のNERVTAG議事録によるとB.1.1.7感染者915人のうち4人は再感染者とみられています9)。南アフリカでも変異株が広まっていますが、21日の世界保健機関(WHO)発表によると英国での変異株とは別物のようです10)。南アフリカでの変異株はB1.351(501Y.V2)と呼ばれ、おそらく8月の終わりから出回り始めました11)。英国の変異株は9月に出現したと示唆されています12)。23日にModerna(モデルナ)社は英国で広まる変異株へのワクチンの検討を数週間のうちに始めると発表しています13)。参考1)COVID-19: Sustained Antibody Response / PHYSICIAN'S FIRST WATCH2)Choe PG, et al. Emerg Infect Dis. 2020 Dec 22;27. 3)COVID immunity lasts up to 8 months, new data reveals / Eurekalert4)Bartley GE, et al. Sci Immunol. 2020 Dec 22; 5: eabf8891.5)Diverse Functional Autoantibodies in Patients with COVID-19. medRxiv. December 19, 20206)'Autoantibodies' may be driving severe Covid cases, study shows / TheGuardian 7)Self-sabotaging antibodies are linked to severe COVID / Nature8)21 December 2020. NERVTAG/SPI-M Extraordinary meetingon SARS-CoV-2 variant of concern 202012/01 (variant B.1.1.7) / NERVTAG9)18December2020. NERVTAG meetingon SARS-CoV-2 variant under investigation VUI-202012/01 / NERVTAG10)SARS-CoV-2 Variant - United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland / WHO11)Confirmed cases of COVID-19 variant from South Africa identified in UK / GOV.UK12)COVID-19 (SARS-CoV-2): information about the new virus variant / GOV.UK13)Statement on Variants of the SARS-CoV-2 Virus / moderna

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五十肩は関節内ステロイド注射が短期的に最も有効な治療

 五十肩(肩関節周囲炎)に対するさまざまな治療の有効性について、英国・グラスゴー大学のDimitris Challoumas氏らが65研究のメタ解析を行った結果、関節内ステロイド注射が他の治療(外科的治療を除く)と比べて短期での有用性が高く、その優位性は6ヵ月継続することがわかった。この結果から著者らは、五十肩には最初に関節内ステロイド注射が行われるべきとしている。JAMA Network Open誌2020年12月16日号に掲載。五十肩には関節内ステロイド注射が短期で他の治療より有用 本研究では、五十肩の治療について他の治療法やプラセボ/無治療と比較した無作為化試験を2020年2月にMedline、EMBASE、Scopus、CINHALで検索し、2名が独立して抽出した。主要評価項目は疼痛と機能、副次評価項目は外旋可動域であった。ペアワイズメタ解析の結果は、疼痛と外旋可動域の平均差および機能の標準化平均差として提示した。追跡期間について、短期(12週以下)、中期(12週超12ヵ月以下)、長期(12ヵ月超)に分けた。 五十肩に対するさまざまな治療の有効性について解析した主な結果は以下のとおり。・系統的レビューに含めた65の研究(4,097例)から、34の研究(2,402例)をペアワイズメタ解析に含め、39の研究(2,736例)をネットワークメタ解析に含めた。・ペアワイズメタ解析で統計学的に有意な結果はいくつかあったが、関節内ステロイド注射のみ、疼痛(無治療/プラセボに対する平均差:-1.0 visual analogue scale[VAS]ポイント、95%CI:-1.5〜-0.5VASポイント、p<0.001、理学療法に対する平均差:-1.1VASポイント、95%CI:-1.7〜-0.5VASポイント、p<0.001)および機能(無治療/プラセボに対する標準化平均差:0.6、95%CI:0.3〜0.9、p<0.001、理学療法に対する標準化平均差:0.5、95%CI:0.2〜0.7、p<0.001)において、短期で他の介入に比べ統計学的および臨床的に優位であった。・サブグループ解析とネットワークメタ解析で、関節内ステロイド注射に、簡単な運動・ストレッチ・理学療法(電気療法、モビライゼーション)を伴う自宅運動プログラムを追加することにより、中期でのベネフィットの上乗せがみられた(例 自宅運動を伴う関節内ステロイド注射の無治療/プラセボに対する痛みの平均差:-1.4VASポイント、95%CI:-1.8〜-1.1VASポイント、p<0.001)。 著者らは、「このメタ解析の結果は、1年未満の五十肩患者における早期の関節内ステロイド注射はアウトカムが良いことを示唆している。また、回復の可能性を最大化するために自宅運動プログラムを一緒に行う必要がある」としている。

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片頭痛の予防治療、rimegepantに発症抑制効果/Lancet

 片頭痛の予防治療において、rimegepantの12週間、隔日投与は、プラセボと比較して片頭痛発症の抑制効果が高く、忍容性は両群で同程度であることが、米国・Biohaven PharmaceuticalsのRobert Croop氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年12月15日号に掲載された。片頭痛の薬物療法は、一般的に、発作の発生時にこれを緩和するための急性期治療と、発作の頻度や重症度を軽減するための予防治療の2つに分類される。経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬rimegepantは、すでに急性期治療における有効性と安全性が確認されている。rimegepantの有効性の評価を目的として米国の92施設が参加 本研究は、片頭痛の予防治療におけるrimegepantの有効性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化第II/III相試験であり、米国の92施設が参加し、2018年11月~2019年8月の期間に患者登録が行われた(Biohaven Pharmaceuticalsの助成による)。この試験は、4週間の観察期、12週間の二重盲検下の治療期、52週間の非盲検下延長期から成り、今回は、観察期と二重盲検下治療期の結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上、前兆の有無にかかわらず1年以上持続する片頭痛、または慢性片頭痛がみられ、初発時の年齢が50歳未満の患者であった。被験者は、rimegepant(75mg、隔日投与)またはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けられ、12週の治療が行われた。 有効性の主要エンドポイントは、4週間の観察期から、治療期の最後の4週間(第9~12週)における、片頭痛発症の平均日数/月の変化とした。有効性の解析は、試験薬の投与を1回以上受け、観察期のデータが14日以上あり、二重盲検下治療期における4週間ごとの3つの期間の少なくとも1つで14日以上のデータがある参加者で行われた。rimegepant群は第9~12週に月当たりの発症日数が4.3日減少 747例が無作為化の対象となり、このうち安全性解析に741例(rimegepant群370例、プラセボ群371例)が、有効性解析には695例(348例、347例)が含まれた。741例の平均年齢は41.2(SD 13.1)歳で、613例(83%)が女性であった。 ベースラインの全体の中等度/重度頭痛発作の既往歴は平均7.8(SD 2.7)日/月であり、446例(60%)が前兆のない1次性の片頭痛型、173例(23%)は慢性片頭痛と判定された。治療しない場合の発作持続期間中央値は24時間(IQR:12~48)であった。観察期間中に有効性の評価が可能であった参加者(rimegepant群348例、プラセボ群347例)の平均片頭痛発症日数/月は、それぞれ10.3(SD 3.2)日および9.9(SD 3.0)日だった。 4週間の観察期から治療期の第9~12週における片頭痛発症の平均日数/月の変化は、rimegepant群が-4.3日(95%信頼区間[CI]:-4.8~-3.9)と、プラセボ群の-3.5日(-4.0~-3.0)に比べ有意に優れた(最小二乗平均[LSM]の差:-0.8日、95%CI:-1.46~-0.20、p=0.0099)。 また、治療期の第9~12週における中等度/重度の片頭痛発症の平均日数/月の50%以上の低下(49% vs.41%、LSMの差:8%、95%CI:0~15、p=0.044)、および治療期の第1~12週における総片頭痛発症の平均日数/月の変化(-3.6日vs.-2.7日、-0.8、-1.3~-0.3、p=0.0017)についても、rimegepant群で有意に良好であった。 有害事象は、rimegepant群が370例中133例(36%)、プラセボ群は371例中133例(36%)で報告された。rimegepant群で頻度の高い有害事象として、鼻咽頭炎(4%)、吐き気(3%)、尿路感染症(2%)、上気道感染症(2%)が認められた。ほとんどの有害事象は軽度~中等度であった。rimegepant群の40例(11%)およびプラセボ群の32例(9%)で、試験薬関連の有害事象と判定された。それぞれ7例(2%)および4例(1%)で、有害事象による試験中止が報告された。死亡例はなかった。 著者は、「rimegepantの半減期は約11時間であり、モノクローナル抗体製剤の約1ヵ月と比較して短いため、より柔軟な治療がもたらされると考えられる。薬剤曝露の迅速な中止が求められる計画的または計画外の妊娠や、有害事象が発現した患者でとくに有用となるだろう」としている。

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有害事象にも目をやり、もう一歩進めたPCI適応に関する考察(解説:野間重孝氏)-1332

 評者自身がそうであったのだが、察するに多くの方々が果たしてこの論文のどこが新しくてJAMA誌に掲載されるに至ったのだろうかと、当初いぶかしく思われたのではないだろうか。FFRによって患者を選別することにより、虚血が証明された虚血例と虚血が証明されない非虚血例では血管インターベンション(PCI)の成績が異なり、虚血例では予後改善効果が期待できるのに対して、非虚血例ではそのような結果が期待できない。だから医学的側面からも、対費用効果の側面からもFFRを用いた患者の選別は有効であるということは、すでに結論の出た問題として扱われるべきだと考えられているからだ。この論文の新しい点は、こういう観点から一歩進んで、非虚血例に対してPCIを行うことは効果がないばかりではなく、有害であることを示唆したことにある。 わが国においても、米国におけるAUC(Appropriate Use Criteria)の導入を受け、2018年4月の診療報酬改定で安定狭心症に対する保険算定要件が変わった。従来は安定狭心症であっても一方向からの造影で75%以上の狭窄が認められれば算定されたものが、新たに機能的虚血診断が義務付けられた。この改定は、わが国において大きな意味を持っていた。海外では圧倒的に緊急PCIが多いのに対し、わが国では緊急PCIは15%程度で、85%が安定狭心症に対するものだったからだ。この改定によってそれまで3割程度にしか施行されていなかった虚血評価が急速に普及した。その結果わかってきたことは、一方向で90%に見える狭窄の場合でも機能的虚血評価では陰性を示す例もあれば、50%程度にしか見えなくとも陽性を示す例があるということで、PCIの適応の判断は“見た目”ではできないということだった。実際、日本心血管インターベンション治療学会が2012年から行ってきたCVIT-DEFER registryにおいて、血管造影上の狭窄の程度とFFR計測結果にはミスマッチがあることが明らかにされている。 この領域におけるランドマーク研究としてはDEFER研究、FAME研究、FAME2研究の3つが挙げられる。この論文評は総論ではないので、各研究の詳細について紹介することは控えるが、いずれの研究においても細目は異なるものの、FFR値が一定値以上を示す非虚血群とそれ以下の虚血群に割り付けがなされ、それぞれの群内でさらにPCIが行われた群と行われなかった群に分けられ、その予後が長期フォローされた。これら一連の研究によって、虚血群では心事故の発生頻度の低下が見られるのに対し、非虚血群では効果が見られないことが証明された。これらの結果から対費用効果についても論じられ、非虚血群に対してPCIを行うことは医学的に意味がないばかりでなく、医療経済的に不利益をもたらすことが示された。 こうした研究の背景には、多くの研究により、冠動脈バイパス術(CABG)が虚血性心疾患患者の予後改善をもたらすのに対し、PCIは急性心筋虚血例に対して施行されたものは予後の改善をもたらすものの、安定した虚血性心疾患の予後改善効果はCABGに劣るとする結果が提出され、これに対して反論を試みたいというアンジオグラファーたちの熱意があった。近年の考え方としては、機能的に虚血の存在がはっきり証明された症例において行われるPCIの予後改善効果はCABGに劣るものではないという考えが大勢を占めるに至っている。ただし、意地の悪い言い方をすれば、これは今まで必要のないPCIが多数行われてきたということも意味する。では、非虚血例に対して本来は必要がないPCIを施行するとどうなるのか。その視点で行われたのが本研究である。 これまでの研究では、非虚血例に対するPCIは予後改善をもたらさないという点にとどまっていた。本研究はそれから一歩進んで、非虚血例にたいするPCIは心事故の発生頻度を上げる、つまり、有害であるという結論を提出した。確かに“治療行為”というのは、見方を変えれば血管に傷を付ける行為でもある。であるとするならば、必要のない傷害は避けられるべきだという考え方には説得力がある。 はじめに述べたように、わが国においては安定狭心症に対するPCI施行例が圧倒的多数を占めている。本研究の提示した問題は、わが国においてこそ大いに研究されるべきテーマではないだろうか。予後改善というプラスの側面にばかり注目するのではなく、有害事象の発生というマイナスの側面に注目した研究が行われる必要があることを示したという点で、意義深い研究であったと評価できる。

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新型コロナに対するRNA遺伝子ワクチンは人類の救世主になりうるか?【基礎編】(解説:山口佳寿博氏)-1334

 2020年12月18日現在、新型コロナPCR確定感染者は世界全体で7,285万人、死者数は164万人(粗死亡率:2.3%)に達する。不顕性感染者を含む総感染者数はPCR陽性者数の約10倍と考えられるので(Bajema KL, et al. JAMA Intern Med. 2020 Nov 24. [Epub ahead of print])、現時点での世界総感染者数は約7.3憶人(世界総人口の約10%)と推察される。このままでは新型コロナによって人類は危機的状況に陥る可能性があり、それを阻止するためにはワクチンによる感染予防/制御が絶対的に必要である。現在、18種類のワクチンに関し第III相試験が進行中、あるいは終了している。しかしながら、12月10日、オーストラリアのQueensland大学で開発中の遺伝子ワクチンの臨床治験が中止されたことが報道された。以上の18種類のワクチンのうち、3種類の遺伝子ワクチンに関する第III相試験の中間結果が報告された(米国/ドイツ・Pfizer/BioNTech社のBNT162b2、米国・Moderna社のmRNA-1273、英国・AstraZeneca社のChAdOx1)。これらの3種類の遺伝子ワクチンは来年度上半期には本邦にも導入される予定であり、それらの基礎的/臨床的特徴を把握しておくことは、2021年の新型コロナ感染症に対する本邦での抜本的対策を構築するうえで最重要課題である。本論評(基礎編)では、遺伝子ワクチンを含めたワクチン全体の本質を理解するうえで必要な基礎的事項を整理する。次の論評(臨床編)では、来年度、本邦に導入されるであろう3種類の遺伝子ワクチンに関する臨床的意義について考察する。 新型コロナウイルスに対するワクチンは、主として下記の3種類に分類される(Abbasi J. JAMA 2020;324:1125-1127.)。1)蛋白ワクチン 全ウイルスを不活化したワクチン(Whole inactivated vaccine)、感染と関連する領域のみを精製したワクチン(Subunit or split vaccine)、遺伝子組み換え技術を駆使してウイルス侵入規定領域であるS蛋白を人工的に作成しワクチンとして用いるものが含まれる。新型コロナに対する不活化ワクチンは、中国を中心に開発が進められている(Sinovac社のCoronaVac、Sinopharm社のBBIBP-CorV)。遺伝子組み換え人工蛋白ワクチンとしては、米国・Novavax社のNVX-CoV2373に関する第I/II相試験が終了し(Keech C, et al. N Engl J Med. 2020;383:2320-2332.)、第III相試験が開始されつつある。NVX-CoV2373も本邦への導入が検討されている。NVX-CoV2373はS蛋白全長に対する遺伝子情報をナノ粒子に封入してBaculovirusに導入、そのBaculovirusを昆虫内で増殖、遺伝子組み換えS蛋白を作成し、免疫原性を増加(ブースター効果)させるアジュバント(Matrix M1)と共に接種するものである。NVX-CoV2373と同様の方法で、インフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)を遺伝子組み換え技術を用いて作成した蛋白ワクチン(フランス・Sanofi社のFluBlok)は、米国などで接種され臨床的評価が高い。蛋白ワクチンの主たる作用は液性免疫の賦活であり、下記に述べる遺伝子ワクチンに比べ細胞性免疫の賦活は弱いと考えられている(Keech C, et al. N Engl J Med. 2020;383:2320-2332.)。 Sanofi社とGSK社は共同でS蛋白を標的とした遺伝子組み換え人工蛋白ワクチンの開発を行ってきたが、開発中の蛋白ワクチンのS蛋白に対する特異的IgG抗体産生が高齢者では有効域に達しなかったことにより、本ワクチンの開発を中止することを12月11日に発表した。今後は、新たなワクチンの開発を進めるとしている。2)DNA遺伝子ワクチン ウイルス侵入規定領域であるS蛋白に関する遺伝子情報をDNAに組み込み宿主に導入、S蛋白を作り出したうえで、それに対する液性免疫(抗体産生)、T細胞由来の細胞性免疫を誘導するものである。このために使用されるのがアデノウイルス(Ad)をベクター(輸送媒体)とする方法である。Adは2本鎖DNAによって形成されるウイルスであり、このDNAにS蛋白を規定する遺伝子情報(塩基配列)を組み込み宿主細胞に導入する。Adとして用いられるのは、ヒトに感染病変を起こさないヒトAd5型、ヒトAd26型、チンパンジー型Adである。ヒトAdをベクターとするワクチンは、米国・Johnson & Johnson社のAd26.COV2.S、中国・CanSino社のAd5-nCoV、ロシア・Gamaleya研究所のSputnik Vなどである。チンパンジー型Adをベクターとするワクチンが、英国・AstraZeneca社のChAdOx1(Voysey M, et al. Lancet. 2020 Dec 8. [Epub ahead of print])である。 Adをベクターとして用いるときの重要な問題点は、生体はAdを異物として認識し、それに対する特異抗体を産生することである。この抗体産生はAdの種類によらず発現する。その結果、ブースター効果を意図して投与される2回目のワクチン接種時には、遺伝子情報を封入したAdが1回目のワクチン投与時に形成された特異抗体の攻撃を受け、その一部は破壊される。その結果、Adをベクターとするワクチンでは、2回目のワクチン接種時、遺伝子情報封入Adの一部しか宿主に導入されず、ブースター効果が不十分で液性/細胞性免疫賦活化が阻害される(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.)。その意味で、Adをベクターとする遺伝子ワクチンは、2回目のワクチン接種の意義が薄く、単回接種を基本とするワクチンと考えるべきである。この原則にのっとって第II相試験が施行されたのが、CanSino社のヒトAd5型をベクターとしたAd5-nCoVワクチンである。Ad5-nCoVの単回接種1ヵ月後には有意な液性/細胞性免疫が惹起されることが示された(Zhu FC, et al. Lancet. 2020;396:479-488.)。一方、ヒトAd5型とAd26型をベクターとしたSputnik V(Logunov DY, et al. Lancet. 2020;396:887-897.)ならびにチンパンジーAdをベクターとしたChAdOx1(Folegatti PM, et al. Lancet. 2020;396:467-478.)においては、1回目ワクチン接種後21日目あるいは28日目に、2回目のワクチンが接種される。両ワクチンとも2回目接種後にブースター効果を認め、S蛋白に対する特異的IgG抗体はさらに上昇するが、回復期血漿中のIgG抗体価を凌駕するものではなかった。この結果は、Adをベクターとするワクチンでは2回目の接種でブースター効果は発現するものの、その程度は弱いことを意味する。RamasamyらはS蛋白に対するIgG抗体産生は、Adに対するIgG抗体価に逆比例することを証明した(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.)。 DNAワクチンのもう1つの欠点は、DNAに組み込まれた遺伝子情報は、まず細胞核内に取り込まれ、その情報がmRNAに転写される必要があることである。その後、細胞質に移行したmRNAを介する翻訳過程を経てS蛋白が産生される。すなわち、DNAワクチンでは転写と翻訳という2段階の過程を経る必要があるため、標的蛋白(S蛋白)の産生効率が悪い。3)RNA遺伝子ワクチン S蛋白の遺伝子情報(塩基配列)をmRNAとして生体に導入し、宿主細胞内でS蛋白の合成とそれに対する液性/細胞性免疫の発現を促す。この方法だとDNAワクチンと異なり、複雑な蛋白合成経路を経ずにS蛋白が宿主細胞質で産生されるので、DNAワクチンに比べ液性/細胞性免疫発現効率が良い(外から導入したmRNAの95%が宿主細胞に取り込まれる)。しかしながら、mRNAは陰性荷電を有する大きな分子であるため、裸のままでは宿主細胞に導入することができない。この問題を解決するため、mRNAをオイル様の性状を有する脂質ナノ粒子(LNP:lipid nanoparticle)に封入して宿主細胞に導入する方法が提唱された。Pfizer/BioNTech社のBNT162b2(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 10. [Epub ahead of print])、Moderna社のmRNA-1273(Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)がこれに該当する。LNPは抗原性を有さず、生体に導入した場合、不要な免疫反応を惹起しない。さらに、LNPは免疫形成に関してアジュバント効果を発揮し、液性/細胞性免疫を上昇させると考えらえている。すなわち、LNP封入RNAワクチンでは、2回目のワクチン接種は確実なブースター効果を発揮するので、BNT162b2、mRNA-1273は2回接種を原則とするワクチンと考えてよい。これら2つのLNP封入mRNAワクチンを用いた場合には、Adをベクターとして用いるChAdOx1ワクチンなどとは異なり、2回目のワクチン接種後のS蛋白特異的IgG抗体価は回復期血漿中のそれを明確に凌駕していた(Walsh EE, et al. N Engl J Med. 2020;383:2439-2450. , Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)。 遺伝子ワクチンの臨床的効果を考えるうえで重要な事項は、(1)ワクチン由来の液性/細胞性免疫が自然感染の場合に比べ質的/量的に同等のものであるか否か、(2)ワクチン接種による液性/細胞性免疫の持続時間がどの程度であるか、これらを把握することである。1)自然感染とワクチンによる模擬感染における液性/細胞性免疫の差異 自然感染初期にウイルスが宿主内に存在するBリンパ球細胞から分化した形質細胞を刺激し、IgGを中心とするウイルス特異的抗体を産生する(液性免疫)。この機序を担当する形質細胞の寿命は短く、感染発症後2~3週で死滅する(短命形質細胞)。しかしながら、ウイルスはCD4+-helper T細胞の一種であるTh2細胞を刺激し、Th2細胞はB細胞から形質細胞への分化を持続的に誘導する。このようにして形成されたB細胞は抗原情報を細胞内に保持し骨髄で長期に生存する(記憶B細胞)。また、このB細胞から誘導された形質細胞も生存期間が長く、IgG抗体の持続的産生を維持する(長寿形質細胞)。さらに、ウイルスはCD4+-T細胞の一種であるTh1細胞を賦活、IL-2存在下で胸腺のナイーブT細胞をCD8+-T細胞(細胞傷害性T細胞)に分化させる。CD8+-T細胞はウイルスに感染した細胞を殺傷/処理する(細胞性免疫)。新型コロナ感染症ではすべてのTh系細胞が幅広く賦活化されるが、Th1細胞の賦活が優位であると報告されている(Dan JM, et al. bioRxiv. 2020 Dec 18.)。感染初期に賦活化されたT細胞は1~2週間でその90%が死滅する。しかしながら、残り10%のT細胞は抗原情報を保持したまま記憶T細胞としてリンパ組織内で長期に生存する。記憶B細胞、記憶T細胞はウイルスの二次感染時に効率よく液性免疫、細胞性免疫を発現する(二次感染の予防)。 RNAワクチンによるウイルス模擬感染における液性免疫(特異的IgG抗体産生)の発現は、自然感染の場合に較べ有意に高いことが確認されている。しかしながら、T細胞系反応の全貌については、現時点で確実な報告はない。暫定的解析では、RNAワクチン接種によってTh1細胞反応は賦活されるが、Th2細胞反応はむしろ抑制されると報告された(Jackson LA, et al. N Engl J Med. 2020;383:1920-1931.)。RNAワクチン接種によってTh2細胞反応が低く維持されたことは、Th2経路の活性化と関連する抗体依存性感染増強(ADE:Antibody-dependent enhancement of infection)が発生し難いことを意味し、RNAワクチンの安全性を担保する重要な知見である。長期にわたる感染予防のためには、液性免疫に加えTh1系を中心とした細胞性免疫の持続的賦活化も重要な因子であり、今後、ワクチン接種後の細胞性免疫の動態・推移について詳細な検討が望まれる。2)自然感染とワクチンによる模擬感染における液性/細胞性免疫の持続時間 新型コロナの初回感染後に液性/細胞性免疫がどの程度の期間持続するかについての確実な報告はない。新型コロナパンデミック発生初期に出版された論文では、不顕性感染者の40%、有症状感染者の13%で、感染より2ヵ月後(回復期)にはIgG抗体価が無効域まで低下すると報告された(Long QX, et al. Nat Med. 2020;26:1200-1204.)。しかしながら、最近の論文では、S蛋白特異的IgG抗体産生、記憶B細胞、記憶T細胞(CD4+-T細胞、CD8+-T細胞)の賦活化は、感染後少なくとも8ヵ月は維持されることが報告された(Dan JM, et al. bioRxiv. 2020 Dec 18.)。Danらの結果を外挿すると、自然感染によって誘導された種々の免疫機序は、最低でも1年間は持続すると考えてよさそうである。 RNAワクチン接種後(ブースター効果を得るための2回目のワクチン接種後)における液性/細胞性免疫の持続時間に関しては、ワクチン接種後の観察期間が短く確実な結論を導き出せない。しかしながら、S蛋白の受容体結合領域(RBD)に対する特異的IgG抗体産生は、2回目のワクチン接種後少なくとも3ヵ月は持続することが確認された(Widge AT, et al. N Engl J Med. 2020 Dec 3. [Epub ahead of print])。一方、ワクチン接種後の記憶B細胞、T細胞に由来する細胞性免疫の持続期間についての報告はない。ワクチン接種による模擬感染の液性/細胞性免疫持続時間が自然感染のそれと同等あるいはそれ以上であるならば、ワクチンによる二次感染予防効果は、ほぼ1年は持続することになり(すなわち、ワクチン接種は年1回で十分)、人類にとって大きな福音である。

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クモに咬まれて本当に死ぬことがある【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第177回

クモに咬まれて本当に死ぬことがあるpixabayより使用クモを見ると、『鬼滅の刃』を思い出すくらいどっぷりハマってしまった私ですが、クモがめちゃくちゃ強力な毒を持っているというのは現実世界でもありうるわけで。Pneumatikos IA, et al.Acute Fatal Toxic Myocarditis After Black Widow Spider Envenomation.Ann Emerg Med. 2003 Jan;41(1):158.今回の論文に出てくるクモは、クロゴケグモという名前で、山口県でチラホラ報告があるくらいで、日本ではまず見かけない毒クモです。セアカゴケグモはよく耳にしたと思いますが、ゴケグモはヒトにとってはやっかいなクモなのです。ブラックウィドウ(黒い未亡人)という名称は、受精後にメスがオスを食べてしまうことに由来しています。ゾゾゾッ。クロゴケクモの毒には、セロトニン、α-ラトロトキシンなどが含まれていますが、健康なヒトが死ぬようなことはなくて、致死率は1%未満とされています。ゴケグモの毒は、全身に分布する自律神経末端に作用するため、アセチルコリンなどの放出を枯渇させる現象が起こります。毒は、リンパ液が体内を流れる速度と同じように広がっていき、疼痛や発汗などがじわじわと進行していきます。指や腕を咬まれた場合、胸痛が起こります。これが心筋傷害を反映しているのかどうかはデータが乏しくわかりません。足を咬まれた場合、虫垂炎に似た腹痛を起こすこともあります。頻呼吸がひどく、「死ぬんじゃないか」とパニックになるケースもありますが、基本的に死ぬことはほとんどありません。しかし、この論文に登場した19歳の女性は、クロゴケグモに咬まれた後から強い腹痛と頭痛、発熱を訴えていました。白血球やLDHは著増し、CPKも上昇していました。アイソザイムは測定されていませんが、CPK-MBだったのではないかと考えられます。あっという間に両肺に浸潤影がおよび、ICU管理となりました。心エコーでは、EFが20%未満と絶望的な状況に陥りました。そして、彼女はクモに噛まれてから36時間後に亡くなりました。胸痛を起こしている被害者の中には、実際に心筋傷害を指摘される人もいるようです1)。多くの患者さんは、結果的に軽快しているようですが、この19歳の女性のような致死的な経過をたどることもあるため、プライマリケア医はセアカゴケグモなどの知識も頭に入れておく必要があります。胡蝶しのぶのように、毒に詳しい人がそばにいればよいのですが。……。あ、『鬼滅の刃』を見ていない人、スイマセン。1)Sarari I, et al. Myocarditis after black widow spider envenomation. Am J Emerg Med . 2008 Jun;26(5):630.e1-3.

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その2【「実践的」臨床研究入門】第3回

関連研究レビューのための情報―まずは2次情報の活用をRQに関連する先行研究論文レビューで使用する情報には1次情報と2次情報があります。1次情報は個々の論文です。医学・生命科学分野で最も使われている1次情報の情報源は皆さんご存じのMEDLINE(PubMed)です。2次情報とは1次情報をまとめたものです。特に質の高い2次情報源として、診療ガイドライン、UpToDate®、コクラン・ライブラリー、などが挙げられます。筆者は、いきなり!PubMedで1次情報を検索する前に、RQに関するテーマの全体像を効率的に掴むために、まずはこれらの2次情報を活用することを勧めています。関連研究検索のポイントと適切な英語検索ワードの選択PE(I)COのカタチに定式化されたRQに関連する先行研究論文の検索を行うときのポイントは、P(対象)とE(曝露)もしくはI(介入)に含まれるキーワードを検索語として用いる、ということです。なぜなら、C(比較対照)やO(アウトカム)は一義的に決まらない場合が多く、網羅的な検索には適さないからです。Cは個別の研究毎に複数のパターンがあります。例えば、新規薬物療法の効果を検証する介入研究で考えてみると、Cはプラセボや標準治療(既存薬物療法など)であったり、無治療の場合など色々ありえます。Oも個々の研究の目的によって多種多様です。死亡や明確な定義と評価に基づいた心血管イベント発症などのハードエンドポイント*1をOに設定している臨床研究は多くあります。何らかの身体所見(血圧やBMI、など)や検査所見(血糖値、血中コレステロール値、心エコー所見、など)のサロゲートエンドポイント*2をOに置いた臨床研究はもっとたくさんあります。また、近年の臨床研究では、患者立脚型アウトカム(Patient-reported outcome: PRO)*3と呼ばれる医療者を介さずに患者さん自らが報告しデータ化されたアウトカム指標もOとして盛んに用いられています。*1:客観的かつ普遍的に評価可能で、重要な患者予後を設定したアウトカム。真のアウトカム、とも言います。*2:真のアウトカムと生物学的に関連していると考えられるアウトカム。代替アウトカム、とも言います。*3:痛みの主観的な評価法として使用される視覚的アナログスケール(Visual analog scale:VAS)や健康関連QOL尺度である36-item Short-Form Health Survey(SF-36)などが、代表的なPROの例として挙げられます。さて、下記は第1回で作成した架空の臨床シナリオに基づいたCQとRQ(PECO)です。CQ:食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:慢性腎臓病患者E:食事療法の遵守C:食事療法の非遵守O:腎予後それでは、こちらのRQを例に用いて、関連する先行研究のレビューを質の高い2次情報源を活用して行うことを考えてみましょう。前述したように、PとE(もしくはI)に含まれるキーワードを検索語として使用することがポイントですので、上記のRQの場合の検索語の候補は「慢性腎臓病」と「食事療法」になります。「慢性腎臓病」に対する「食事療法」には大きく分けて、たんぱく質制限、食塩制限、カリウム(やリン)制限の3つがあります。ここでは、指導医A先生と専攻医B先生(第1回のダイアローグ参照)の所属施設が力を入れている(?) 、たんぱく質制限(低たんぱく食)にしぼってみるとことにしましょう。すると、検索語は「慢性腎臓病」と「低たんぱく食」となります。また、RQの関連研究レビューにおいて有用な情報は、1次情報、2次情報ともに、ほとんどが英語で書かれたものです。したがって、これらの情報を検索するためには、適切な英語の検索ワードを選択して活用することも必要になります。この際に、お勧めしたいオンラインツールとしてライフサイエンス辞書があり、筆者もよく使っています。ライフサイエンス辞書は無料で使える医学・生命科学用語のオンライン電子辞書で、専門用語の英和・和英辞典であるとともに、シソーラス(類義語辞典)やコーパス(文例集)の機能も併せ持っています。ライフサイエンス辞書で調べると、「慢性腎臓病」は”chronic kidney disease(CKD)”、「低たんぱく食」は”low protein diet”と英訳されるようです。次回からは、「慢性腎臓病」/ ”chronic kidney disease(CKD)” と「低たんぱく食」/ ”low protein diet”という2つのキーワードを用いた、質の高い2次情報源レビューの実践について解説していきます。1)福原俊一. 臨床研究の道標 第2版. 健康医療評価研究機構;2017.2)木原雅子ほか訳. 医学的研究のデザイン 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル;2014.3)矢野 栄二ほか訳. ロスマンの疫学 第2版. 篠原出版新社;2013.4)中村 好一. 基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版. 医学書院;2020.5)片岡 裕貴. 日常診療で臨床疑問に出会ったときに何をすべきかがわかる本 第1版.中外医学社;2019.

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統合失調症の心臓突然死リスク、抗精神病薬と年齢との関係

 抗精神病薬を服用している統合失調症患者の心臓突然死リスクに対する年齢の影響について、台湾・台北医科大学のPao-Huan Chen氏らが調査を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌2020年11月号の報告。45~65歳の統合失調症患者ではリスペリドン服用により突然死リスクが増加 対象は、台湾全民健康保険研究データベースおよび死亡診断書システムより抽出した、2000~16年に心臓突然死で死亡した統合失調症患者1,836例。14日間のウインドウ期間を設定したクロスオーバー研究を実施した。サブグループ解析では、患者の年齢で3群(45歳未満、45~65歳、66歳以上)に層別化し、抗精神病薬を服用している統合失調症患者の心臓突然死リスクに対する年齢の影響を評価した。 抗精神病薬を服用している統合失調症患者の心臓突然死リスクに対する年齢の影響を評価した主な結果は以下のとおり。・66歳以上の統合失調症患者では、抗精神病薬と心臓突然死リスクとの間に関連性は認められなかった。・45歳未満の統合失調症患者では、ゾテピン服用により、心臓突然死リスクの有意な増加が認められた(調整済み相対リスク[aRR]:2.68、p=0.046)。・45~65歳の統合失調症患者では、flupentixol(aRR:5.30、p=0.004)およびリスペリドン(aRR:1.68、p=0.01)服用により、心臓突然死リスクの有意な増加が認められた。 著者らは「統合失調症患者の心臓突然死リスクに対する各抗精神病薬の影響が明らかとなった。臨床医は、抗精神病薬治療によるリスクとベネフィットを評価する際、患者の年齢を考慮する必要がある」としている。

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大腸がんの術後補助化学療法、CAPOX療法3ヵ月投与の意義(IDEA)/Lancet Oncol

 StageIII大腸がん患者を対象とした術後補助化学療法について、無作為化第III相試験6件を前向きに統合解析した結果が報告された。フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らInternational Duration Evaluation of Adjuvant Therapy(IDEA)collaborationによる検討で、全生存(OS)期間に関して、3ヵ月投与の6ヵ月投与に対する非劣性は示されなかったが、最終解析の結果、5年OSの絶対差は0.4%であった。結果を踏まえて著者は、「StageIII大腸がんに対する術後補助化学療法では、臨床的にほとんどの患者において3ヵ月間のCAPOX療法が支持される」と述べたうえで、「この結論は、投与期間の短縮による毒性や医療費の軽減によってさらに強固なものとなる」とまとめている。Lancet Oncology誌2020年12月号掲載の報告。CAPOX療法の5年OS率は3ヵ月投与群82.1%、6ヵ月投与群81.2% IDEAは、12ヵ国で実施された「CALGB/SWOG 80702」「IDEA France」「SCOT」「ACHIEVE」「TOSCA」および「HORG」の、6つの無作為化第III相試験を前向きに統合解析したものである。2007年6月20日~2015年12月31日までの間に18歳以上のStageIII大腸がん患者が登録され、FOLFOX療法(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン)2週ごと、もしくはCAPOX療法(カペシタビン、オキサリプラチン)3週ごとの術後補助化学療法を、3ヵ月または6ヵ月投与する群に無作為に割り付けられた。FOLFOX療法かCAPOX療法かは主治医の判断で選択された。 大腸がん術後補助化学療法の主要評価項目はDFS(再発、2次性大腸がんまたは死亡いずれかのイベント発生までの期間)であり、OS(すべての原因による死亡までの期間)は事前に設定された副次評価項目であった。OSの非劣性マージンはハザード比(HR)1.11で、片側false discovery rate調整(FDRadj)p値<0.025の場合に非劣性とした。 大腸がん患者を対象とした術後補助化学療法について、無作為化第III相試験6件を前向きに統合解析した主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値72.3ヵ月において、1万2,835例中2,584例が死亡した。・5,064例(39.5%)がCAPOX療法、7,771例(60.5%)がFOLFOX療法を受けた。・5年OS率は、3ヵ月投与群82.4%、6ヵ月投与群82.8%であった(HR:1.02、95%CI:0 .95~1.11、非劣性FDRadjのp=0.058)。・レジメン別の5年OS率は、CAPOX療法で3ヵ月投与群82.1%、6ヵ月投与群81.2%であり(HR:0.96、95%CI:0.85~1.08、非劣性FDRadjのp=0.033)、FOLFOX療法ではそれぞれ82.6%、83.8%であった(HR:1.07、95%CI:0.97~1.18、p=0.34)。・最新のDFSの解析結果は、以前の結果を裏付けるものであった(HR:1.08、95%CI:1.02~1.15、非劣性FDRadjのp=0.25)。・新たな有害事象は報告されなかった。

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日本人EGFR変異肺がん1次治療、エルロチニブ+ベバシズマブのOS(JO25567)/Lung Cancer

 日本人を対象とした無作為化第II相JO25567試験において、化学療法未治療EGFR遺伝子変異陽性非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、エルロチニブ+ベバシズマブ併用療法はエルロチニブ単剤に比べ全生存(OS)期間の有意差は認められなかった。同試験では無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが示されており、今回のアップデート解析でもPFSについては有意な延長が認められた。Lung Cancer誌2020年11月20日号掲載の報告。 研究グループは、StageIIIB/IVの未治療NSCLC患者を、エルロチニブ(150mg/日)+ベバシズマブ(15mg/kg 3週ごと)併用群(75例)もしくはエルロチニブ単剤群(77例)に無作為に割りつけた。 主な結果は以下のとおり。・主要解析と同様、併用群は単剤群に比べPFSを有意に改善した(PFS中央値:16.4ヵ月 vs.9.8ヵ月、HR:0.52、95%CI:0.35~0.76、log-rank検討両側p=0.0005)。・一方、OSの有意な改善は認められなかった(OS中央値:47.0ヵ月 vs.47.4ヵ月、HR:0.81、95%CI:0.53~1.23、p=0.3267)。・後治療は治療群間で類似しており、EGFR変異タイプはOSの結果に影響しなかった。・5年OS率は、併用群が単剤群より数値的には高かった(41% vs.35%)。・安全性については、以前に報告された管理可能な忍容性プロファイルが確認され、新たな問題はみられなかった。

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レジデント3年目、相互評価システムと後輩の育成・指導で自らも成長【臨床留学通信 from NY】第15回

第15回:レジデント3年目、相互評価システムと後輩の育成・指導で自らも成長米国内科レジデントは、1年目のインターンを終えると、2~3年目はレジデントとして、インターンを監督する役目となります。当院(Mount Sinai Beth Israel)のレジデントの場合、2~3人のインターンおよびその担当患者を把握する必要があり、最大20人の患者をカバーします。日本と違い、かなり患者の出入りが激しい米国の病院なので、ひと口に20といってもなかなかの忙しさです。たとえば、朝の採血結果などを確認し、昼過ぎに退院可能と判断すれば、その日の夕方から夜にも退院させる判断・行動のスピード感は日本とはかけ離れており、在院日数の短さを心掛ける米国らしい一面と言えるでしょう。相互評価で保たれるほど良い緊張感とスタッフの質的レベル米国のレジデントとインターンは互いに評価し合う関係性です。レジデントはアテンディング(指導医)およびインターンからの評価を受け、逆に双方に対する評価も行います。評価は概ね匿名で行われ、アテンディングからのフィードバックには署名があります。ただ、評価はWeb baseなので、逆にインターンからレジデントに対し辛辣なコメントをもらうケースもあります。相互評価なので、業務の上では皆、ある程度niceに接するように心掛けており、無用に怒鳴ったり、人物的に評判がよくなかったりするアテンディングは辞めさせられることもあります。また、働かない研修医は容赦なくプログラムをクビになったり、進級ができなかったりすることもあり、そうしたよい意味での緊張感あるためか、メンバーはおおむね一定以上レベルが担保されています。さらに、アテンディングによる評価をもとにプログラムディレクターがフェローシップへの推薦状を作成するため、こちらも気が抜けません (一連のプロセスが終わった今は、もう気が抜けてしまいましたが)。日本では経験しなかった良いシステムとして、2週間ごとのローテーション後のフィードバックを1:1の対面で行うことが挙げられます(推奨されているのに加え、面談によってweb baseの評価が上がるというメリットあり)。レジデントとしては、インターンや学生がこの先どうすれば成長するのか考えるのは勉強になりますし、英語でうまく助言するのもなかなか難しいです。米国の医学部は4年制ですが、4年目はsub-I (sub-intern)と呼ばれ、実質的にインターンと同レベルの仕事を求められます。つまり、学生といえども一定の権限を与えられ、オーダー、カルテ作成が要求されます。医学部3年目もオーダーする権限こそありませんが、インターンの下に配属され、カルテ作成が要求されます。そんな彼らのオーダーも、レジデントがすべて監督し、サインする必要があるのですが、学生たちのカルテチェックやフィードバックもレジデントとしての大事な役割で、私はそこから米国医学教育の根本を垣間見ることができましたし、日本の医学生とは求められているレベルが違うと実感した点でもあります。Column画像を拡大する夏よりApply中でした循環器フェローのマッチングですが、Montefiore medical center/Albert Einstein affiliated hospitalにマッチすることができました。今年はCOVID-19の影響もあってマッチングは想像以上に厳しいもので、同僚で循環器科志望だったレジデント(4人)はいずもアンマッチでした (例年ならば、当院では循環器科のアンマッチはあり得ません)。米国では、循環器医になりたい人たちの熾烈な競争がベースとしてあります。今回経験した自身のマッチングについては、また改めて本連載でお伝えします。

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ペットが糖尿病なら、飼い主も危ない?/BMJ

 飼い犬が糖尿病の飼い主は、飼い犬が糖尿病ではない飼い主と比べて、2型糖尿病の発症リスクが有意に高い(約1.3倍)ことがデータで明らかにされた。逆に飼い主が2型糖尿病の際の飼い犬の糖尿病発症リスクの増大については、有意な関連性は認められず、また、飼い猫と飼い主には、そのような関連性は認められなかったという。スウェーデン・ウプサラ大学のRachel Ann Delicano氏らが、飼い犬と飼い主のペア約21万組、飼い猫と飼い主のペア約12万組について行った縦断研究の結果を報告した。飼い犬と飼い主は、身体活動量など特定の健康行動を共有する場合がある。以前に行われた横断研究で、飼い犬と飼い主における肥満について関連性があることが示されていたが、飼い犬と飼い主および飼い猫と飼い主で糖尿病リスクを共有するのか調べた研究はこれまでなかった。BMJ誌2020年12月10日号クリスマス特集号の「THE CITADEL」より。ペット保険の情報、患者レジストリなどを基に調査 研究グループは、スウェーデンで暮らす犬の40%、猫の23%をカバーするペット保険の情報と、保健福祉庁などのレジストリを基に、2004~06年の飼い犬と飼い主のペア20万8,980組、飼い猫と飼い主のペア12万3,566組を対象に登録ベースの縦断研究を行った。 飼い主の2型糖尿病の有無については、全国患者レジストリやスウェーデン処方薬レジストリなどを、また、犬・猫についてはペット保険データを基に、2007~12年まで追跡した。 多状態モデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出評価。個人や社会経済的状況など考えられる共有リスク因子で補正を行った。飼い“猫”と飼い主では、関係性はみられず 追跡期間中の2型糖尿病罹患率は、犬の飼い主が7.7/1,000人年だったのに対し、猫の飼い主では7.9/1,000人年だった。ペットの糖尿病罹患率は、犬が1.3/1,000匹年、猫が2.2/1,000匹年だった。 飼い犬が糖尿病ではない飼い主と比較した、飼い犬が糖尿病の飼い主の2型糖尿病発症に関する補正前HRは、1.38(95%CI:1.10~1.74)、多変量補整後HRは、1.32(1.04~1.68)だった。 反対に、飼い主が2型糖尿病ではない飼い犬と比較した、飼い主が2型糖尿病の飼い犬の糖尿病発症に関する補整前HRは、1.28(95%CI:1.01~1.63)だった。しかしながら同HRは、飼い主の年齢で補整後は減弱(CI値はnull値を交叉)した(補整後HR:1.11、95%CI:0.87~1.42)。 なお、猫の飼い主の2型糖尿病と飼い猫の糖尿病については、有意な関連は認められなかった。 結果を踏まえて著者は、「糖尿病の犬は、糖尿病を引き起こす健康行動や環境曝露を共有するための番犬(sentinel)としての務めを果たす可能性がある」とまとめている。

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うつ病に対する非定型抗精神病薬補助療法プロラクチン、性機能への影響

 うつ病に対する非定型抗精神病薬補助療法は、エビデンスで支持されている。うつ病では、性機能障害が一般的に認められるが、これが抗精神病薬の副作用により悪化する可能性がある。米国・バージニア大学のAnita H. Clayton氏らは、うつ病患者のプロラクチンと性機能に対するブレクスピプラゾールの影響について、評価を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2020年11、12月号の報告。 短期試験において、うつ病患者にブレクスピプラゾール1、2、3mgまたはプラセボの投与を行った。長期試験では、オープンラベル延長試験として、フレキシブルドーズにてブレクスピプラゾール0.5~3mg/日を投与した。プロラクチンのベースラインからの変化およびプロラクチン関連の治療による有害事象(TEAE)を評価した。性機能の評価には、Massachusetts General Hospital Sexual Functioning Questionnaireを用いた。 主な結果は以下のとおり。・短期試験におけるプロラクチンレベルのベースラインから6週目までの変化量の中央値は、以下のとおりであった。【女性】●ブレクスピプラゾール:5.99ng/mL●プラセボ:-0.15ng/mL【男性】●ブレクスピプラゾール:1.61ng/mL●プラセボ:-0.08ng/mL・長期試験におけるプロラクチンレベルのベースラインから52週目までの変化量の中央値は、女性で0.27ng/mL、男性で0.27ng/mLであった。・ベースライン時のプロラクチンレベルが正常上限値の1倍超の患者におけるプロラクチンレベルは、時間とともに減少する傾向が認められた。・短期試験におけるブレクスピプラゾール治療によってプロラクチンレベルがベースライン後に正常上限値の3倍超となる患者の割合は、男女ともに低く(0~0.3%)、プラセボ群との差は認められなかった。なお、長期試験においてプロラクチンレベルがベースライン後に正常上限値の3倍超となる患者の割合は、女性で0.5%、男性で0.8%であった。・プロラクチン関連TEAE発生率は、短期試験のブレクスピプラゾール群で3.1%、プラセボ群で0.7%、長期試験で3.1%であった。・短期および長期試験では、男女ともにブレクスピプラゾール治療によるベースラインからの性機能改善が認められた。・ブレクスピプラゾール群の女性では、以下の項目について、プラセボ群と比較し、有意な改善が認められた。 ●性的関心:-0.19、95%信頼区間(CI):-0.33~-0.05、p=0.0074 ●欲情:-0.17、95%CI:-0.30~-0.03、p=0.0154 ●全体的な性的満足度:-0.16、95%CI:-0.30~-0.03、p=0.0184 著者らは「うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法は、プロラクチンレベルの変化が小さく、ベースライン後にプロラクチンレベルが上昇した患者の割合が低く、プロラクチン関連TEAE発生率が低く、性機能の適度な改善が認められた」としている。

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