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ペットは家族や友人と同程度に生活満足度を高める

 ペットの猫や犬が皿洗いやWi-Fiの修理をしてくれることはないが、家族や友人がもたらすのと同程度の幸福感を飼い主にもたらすようだ。新たな研究で、ペットを飼うことで得られる生活満足度は、友人や家族と定期的に会うことで得られる満足度と同程度であることが明らかにされた。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのMichael Gmeiner氏と英ケント大学経済学分野のAdelina Gschwandtner氏によるこの研究結果は、「Social Indicators Research」に3月31日掲載された。 ペットを飼うことで生活満足度が向上することは過去の研究で示唆されているが、ペットを飼うと幸せになるという因果関係があるのか、あるいは単に生活満足度の高い人がペットを飼う傾向にあるのかは明確になっていない。 Gschwandtner氏らは今回、操作変数法と呼ばれる統計手法を用いて、両者の因果関係を検討した。操作変数法は、因果関係に影響を与える交絡因子を調整するために、原因には関係しているが結果には直接影響しない第三の変数(操作変数)を用いて因果関係を推定する手法である。Gschwandtner氏は、「この手法では、ペットとの相関はあるが、生活満足度とは相関しない第3の変数を見つける必要がある」と説明する。本研究では、「旅行中の近隣住民の家を見守る頻度はどの程度か」という操作変数が用いられた。解析には、英国の大規模な家庭調査であるUK Household Longitudinal Study(UKHLS)の一部として実施されているパネル調査のデータが用いられた。このデータには、769人を対象とした2,617件の調査データが含まれていた。 操作変数法により、孤独感や抑うつ症状への対処手段としてペットを飼っている可能性や、精神的特性などの交絡因子の影響を調整した結果、ペットを飼うことが生活満足度の向上につながる可能性のあることが示唆された。さらに、さまざまな要因が生活満足度に与える影響の大きさを金銭的な価値で評価する手法を用いて、ペットを飼うことの効果を金額に換算したところ、年間7万ポンド(1ポンド188円換算で1316万円)に上ると推定された。研究グループによると、この効果は、友人や家族と定期的に会うことで得られる効果と同程度であるという。 Gschwandtner氏は、「この金額が算出されたときには、とても驚いた。ペットが大好きな私にとっても、これは大金だと感じた」とCNNに対して語っている。同氏は、「とはいえ、ほとんどの人がペットを自分の友達や家族のような存在と見なしていることを考えると、この金額は妥当だろう。もしペットが本当にそうした存在であるなら、毎日ペットと一緒に過ごすことに、週に一度、友人や家族と話すことと同じくらいの価値があっても不思議ではない」と述べている。 Gschwandtner氏は、「本研究結果は、ペットを飼うことが、人間関係から得られるのと同様の感情的ベネフィットをもたらす可能性があることを示唆している」との見方を示している。その上で、政策立案者は、例えば、ペット飼育を制限する住宅規制を改正するなどして、人々がペットを飼いやすくするべきだと主張している。 ただし、ペットが人間関係に完全に取って代わり得るということに全ての専門家が同意しているわけではない。米タフツ大学で人と動物との関係について研究を進めているMegan Mueller氏は、「社会的支援と感情的支援は、人間とペットの関係において非常に重要な要素であり、人間同士の社会的つながりから得られるのと同じ種類の支援であることは分かっている。確かに動物は人間と強力な形でつながっている。それでも、人間と同じではない」と述べている。

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新型コロナ後遺症としての勃起不全が調査で明らかに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者では、回復後も長期にわたりその後遺症に悩まされるケースがある。その後遺症の中には男性における勃起不全(ED)も含まれるが、後遺症としてのEDの有病率とそれに関連する根本的要因が示唆されたという。横浜市立大学附属病院感染制御部の加藤英明氏らが行った研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月21日掲載された。 COVID-19感染後のEDは、急性期における炎症性サイトカインや低酸素症による血管内皮障害が原因で進行する。また、身体的・精神的なストレスもEDに影響する。ワクチン接種や早期治療は、この感染症の後遺症の発症率を低下させる可能性はあるが、EDの発症を防ぐための予防策については不明である。加藤氏らは、COVID-19感染後のEDの有病率とその根本的な要因を明らかにするために感染患者を対象とした症例対照研究を実施した。 本研究は、2021年4月から9月の間に国内でCOVID-19と診断後入院した成人患者を対象とした包括的な長期観察研究(CORES II)の二次解析として実施された。対象は、1年目および2年目の調査を完了した日本人男性609人(年齢中央値56歳)とした。EDの有無については、被験者の自覚に基づき「COVID-19感染後に現れた症状で、感染前にはなかった症状を選んでください」という質問により決定された。被験者のQOLと精神状態は、それぞれEQ-5D-5L質問票とHospital Anxiety Depression Scale(HADS)質問票に被験者自身で回答してもらい評価を行った。連続変数、カテゴリ変数の比較にはそれぞれ、両側U検定、フィッシャーの正確確率検定を用いた。 対象609人のうち、116人(19.0%)がEDであった。EDのあった被験者(ED群)ではEDのなかった被験者(非ED群)と比べて、1年目2年目ともに、「回復の主観的認識」が低く(P<0.001)、「息切れ」、「疲労」のスコアが有意に高かった(各P<0.001)。HADSスコアをみると、ED群では抑うつ症状を示すHADS-Dスコアが、1年目2年目ともに有意に高くなっていた(P<0.001)。 次にCOVID-19感染前と1年目、2年目のEQ-5D-5Lスコアの変化を調べた。その結果、ED群は非ED群と比較し、痛み/不快感が2年目(P=0.003)で、不安/抑うつが1年目(P=0.033)、2年目(P=0.002)で有意に高くなっていた。 また、後遺症を分類する探索的なクラスター分析を行った結果、1年目の調査ではEDは睡眠障害と同じサブグループに分類された。 研究グループは本研究について、「EDと睡眠障害の関連は報告されており、我々の研究でも、1年目の調査結果からEDと睡眠障害の関連が示唆された。また、EDを有する被験者では抑うつ症状を示すスコアが高かったことから、COVID-19の後遺症としてEDを示す男性には睡眠障害やうつ病に対する支援療法が必要なのではないか」と述べた。 本研究の限界については、患者の自己申告に基づく後ろ向き解析であるため、想起バイアスの影響を受けている可能性があること、EDの重症度スコアやEDの性質や性交渉への影響については評価していないことなどを挙げている。

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早期肺がん患者の術後の内臓脂肪量は手術方法に影響される

 肺がん患者では、呼吸機能の低下だけでなく、体重、筋肉量、内臓脂肪量など、いわゆる体組成の減少により予後が悪化することが複数の研究で報告されている。この度、肺がん患者に対する肺葉切除術よりも切除範囲がより小さい区域切除術後で、体組成の一つである内臓脂肪が良好に維持されるという研究結果が報告された。神奈川県立がんセンター呼吸器外科の伊坂哲哉氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に3月4日掲載された。 近年行われた2cm以下の末梢型早期肺がんに対する区域切除術と肺葉切除術を比較した大規模な臨床試験JCOG0802/ WJOG4607Lでは、区域切除術が肺葉切除術よりも全生存率(OS)を改善した。この試験では、肺がより温存された区域切除群において肺葉切除群よりも、肺がん以外の病気による死亡が少ない結果であったが、その機序については未だ解明されていない。肺がん患者の良好な予後のためには、内臓脂肪を含む体組成を維持することが重要と考えられるが、肺葉切除と区域切除後の体組成変化の違いについても未だ明らかになっていない。このような背景から、伊坂氏らは肺がん患者における肺葉切除と区域切除後の内臓脂肪の変化量を比較し、予後との関連を明らかにするために、単施設の後ろ向き研究を実施した。 本研究には、2016年1月から2018年12月までに神奈川県立がんセンターで、肺葉切除または区域切除術を受けた、ステージ0~1の再発のない原発性肺がん患者346名(肺葉切除240名、区域切除106名)が含まれた。本研究の主要目的は肺葉切除と区域切除後のCTによる内臓脂肪面積(VFA)とウエスト周囲径(WC)の長期的(術後3年までの)変化とした。 解析対象のフォローアップ期間の中央値は5.2年(範囲5.0~5.9年)だった。最大腫瘍のサイズが2cm以上だった症例の割合と、病理学的ステージは肺葉切除術群で高かった。 術後6カ月時点のVFAとWCは、肺葉切除群でそれぞれ16.4%と1.0%減少した一方、区域切除群ではそれぞれ0.1%と0.2%増加していた(t検定 各P<0.001、P=0.029)。続いて、二元配置分散分析を実施し、両群におけるVFAとWCのベースラインからの変化量を比較したところ、術後3年まで肺葉切除群のVFAとWCは区域切除群より有意に減少していた(各P<0.001、P=0.038)。年齢、性別、腫瘍サイズ、ステージなどを調整した1対1の傾向スコアマッチングを行って比較した場合も、VFAとWCは有意に肺葉切除群で減少した(各P=0.009、P=0.020)。 術後3年時点のVFAおよびWCの変化量に対するカットオフ値は、Coxの比例ハザードモデルに基づき、それぞれ-13%と-5%と決定された。術後3年時点でのVFAの変化量が-13%以上の患者は、-13%未満の患者と比較して有意にOSが良好だった(5年OS率 97.7% vs 93.4%、ログランク検定 P=0.017)。WCの変化量についても、同様に変化量が-5%以上の患者で有意に良好なOSを示した(P=0.011)。 OSに関する多変量解析では、術後3年時点でのVFA変化量が-13%未満であることが有意な予後不良因子であった(P=0.013)。また、VFAの変化量が-13%未満、WCの変化量が-5%未満に関する多変量解析では、肺葉切除が独立したリスク因子となった(各P<0.001、P=0.004)。 本研究について著者らは、「本研究から、再発のない早期肺がん患者では、肺葉切除後に生じる長期的な内臓脂肪の減少が区域切除術後では起こらないことが示唆された。また、術後3年時点でのVFA変化が-13%未満であることが、早期肺がん患者の予後不良因子であることが示されたことからも、術後の内臓脂肪減少予防の重要性が明らかになったのではないか」と述べた。 本研究の限界点については、サンプルサイズの小さい単施設の後ろ向き研究であったこと、術後3年時点でCTデータが欠落していた患者が除外されていたことなどを挙げている。

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にんにくは糖尿病のリスクを減らす【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第281回

にんにくは糖尿病のリスクを減らすにんにく摂取と糖尿病発症リスクとの関連を検討した10年間の前向きコホート研究が発表されました!2008年時点で糖尿病を有していない高齢者を登録し、その後10年間にわたって追跡し、にんにく摂取頻度と糖尿病新規発症の関連を解析…構造になっており、曝露(にんにく摂取)を基準に将来のアウトカム(糖尿病発症)を観察した前向きデザインですが、そんな研究を立案しちゃうんだ…。すごい。Du J, et al. Garlic consumption and risk of diabetes mellitus in the Chinese elderly: A population-based cohort study. Asia Pac J Clin Nutr. 2025 Apr;34(2):165-173.動物実験や細胞レベルの研究において、にんにくが血糖降下作用を示すことが確認されていますが、ヒトを対象とした疫学的研究、とくに高齢者に焦点を当てた前向き研究は少なく、その因果関係の証明は不十分です。この研究では、中国高齢者健康長寿調査(CLHLS)を用いて、にんにくの摂取頻度と糖尿病発症との関連性を検証しています。研究対象は2008~18年にかけて追跡された1,927人の中国人高齢者です。ベースライン時に糖尿病の既往がない人を対象に、にんにく摂取頻度(毎日、時々、ほとんどまたは全く摂取しない)と自己申告による糖尿病診断の有無を記録し、多変量Cox比例ハザードモデルにより解析を行いました。対象者のうち、24.1%が毎日、55.1%が時々にんにくを摂取しており、糖尿病の発症率は全体で20.08%でした。4~5人に1人が毎日にんにくを摂取しているんですね、たしかに僕もそのくらいの頻度でにんにくを食べている気もします。にんにく大好きマンです。さて、毎日摂取していた群は、にんにくをほとんど摂らない群に比べて糖尿病のリスクが42%低下していました(ハザード比:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.80)。この関連は、年齢、性別、居住地、教育、BMI、食事の多様性、喫煙・飲酒習慣、運動、婚姻状況、収入源、職業、慢性疾患の既往などの共変量で調整した後も、有意に認められました。サブグループ解析において、65~79歳、農村在住者、非飲酒者、教育水準が高くない人、経済的援助が必要な人、農業従事者では、にんにく摂取による糖尿病リスクの有意な低下が示されました。一方で、80歳以上、都市部在住者、飲酒者、教育水準が高い人、経済的自立者ではその影響は有意ではありませんでした。にんにくの糖尿病に対する効果は、インスリン分泌の促進、インスリン感受性の改善、DPP-4阻害による血糖調節、脂質代謝の改善、抗酸化・抗炎症作用などが報告されています。とくに、アリシンなどの含硫化合物はインスリンの不活化を防ぎ、炎症を抑制することでインスリン抵抗性の改善に寄与すると考えられています。また、酸化ストレスの抑制、非酵素的糖化反応の抑制といった作用もあり、糖尿病の合併症予防にもつながる可能性があります。この研究、調理方法や妥当なにんにくの量がわからないという点がリミテーションです。ただ、過去のメタアナリシスでは、にんにく摂取量1.5g/日というのがおおよその目安となっています1)。よし、明日から毎日にんにくを食べよう!1)Shabani E, et al. The effect of garlic on lipid profile and glucose parameters in diabetic patients:A systematic review and meta-analysis. Prim Care Diabetes. 2019;13(1):28-42.

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無症候性細菌尿と尿路感染症の区別はどうする?【とことん極める!腎盂腎炎】第15回

無症候性細菌尿と尿路感染症の区別はどうする?Teaching point(1)無症候性細菌尿を有している患者は意外と多い(2)無症候性細菌尿は一部の例外を除けば治療不要である(3)無症候性細菌尿と真の尿路感染症の区別は難しいため総合内科医/総合診療医の腕の見せ所であるはじめに本連載をここまで読み進めた読者の方は、尿路感染症をマスターしつつあると思うが、そんな「尿路感染症マスター」でも無症候性細菌尿と真の尿路感染症の区別をすることは容易ではない。特殊なセッティングを除けば、そもそも無症状の患者の尿培養を採取することがないため、われわれは一般的に熱源精査の過程で無症候性細菌尿かどうかを判断しなければならないからである。尿路感染症は除外診断(第1回:問診参照)であるため、発熱患者が膿尿や細菌尿を呈していたとしても尿路感染症と安易に診断せず、ほかに熱源がないか病歴・身体所見をもとに検索し、場合によっては血液検査・画像検査を組み合わせて診断することが大切である。このように無症候性細菌尿と尿路感染症の区別は一筋縄ではいかないが、本項で無症候性細菌尿という概念について詳しく知り、その誤解をなくすことで、少しでも区別しやすくなっていただくことを目標とする。1.無症候性細菌尿とは無症候性細菌尿とはその名の通り、「尿路感染症の症状がないにもかかわらず細菌尿を呈している状態」である。米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America:IDSA)のガイドライン1)では105CFU/mLの細菌数が尿から検出されることが、細菌尿の条件として挙げられている(厳密にいえば、女性の場合は2回連続で検出されなければならない)。無症候性細菌尿を有している割合(表)は加齢とともに上昇し、女性の場合、閉経前は1〜5%と低値だが、閉経後は2.8〜8.6%、70歳以上に限定すると10.8〜16%、施設入所者に至っては25〜50%と非常に高値となる。男性の場合も同様で、若年の場合は極めてまれであるが、70歳以上に限定すると3.6〜19%、施設入所者では15〜50%となり、女性とほぼ同頻度となることが知られている1)。また糖尿病があると無症候性細菌尿を呈する頻度がさらに上昇するとされている。さらに膀胱留置カテーテルを使用中の場合、細菌尿を呈する割合は1日3〜5%ずつ上昇するため、1ヵ月間留置していると細菌尿はほぼ必発となることも知られている2)。表 無症候性細菌尿を有する頻度画像を拡大するつまり「何も症状はないがもともと細菌尿を有している患者」は意外と多いのである。熱源精査を行う際はこれを踏まえ、「もともと無症候性細菌尿を有していた人が何か別の感染症に罹患している」のか「膀胱刺激徴候やCVA叩打痛のない腎盂腎炎を発症している」のか毎回頭を悩ませなければならない。とくに入院中の高齢者に関しては、尿路感染症と診断されたうちの40%程度が不適切な診断だったという研究3)もあり、ここの区別は総合内科医/総合診療医の腕の見せ所といえる。2.無症候性細菌尿と尿検査結論からいうと、尿検査で無症候性細菌尿と尿路感染症を区別することはできない。「第5回:尿検体の迅速検査」に記載があるように、尿中白血球や尿中亜硝酸塩は尿中に白血球や腸内細菌が存在すれば陽性になるため、無症候性細菌尿であっても、尿路感染症であっても同じ結果になってしまうのである。亜硝酸塩が陽性とならない細菌(腸球菌など)の存在や亜硝酸塩の偽陽性(ビリルビン高値や試験紙の空気への曝露)にも注意が必要である。「膿尿もあれば無症候性細菌尿ではなく尿路感染症を疑う」という誤解も多いが、実際はそんなことはなく、たとえば糖尿病患者では無症候性細菌尿の80%で膿尿も認めていたという報告がある4)。つまり、尿路感染症ではなくとも膿尿や細菌尿を認めることがあり、それが尿路感染症の診断を難しくしているのである。高齢者の発熱で尿中白血球と尿中亜硝酸塩が陽性のため腎盂腎炎として治療開始されたが、総合内科/総合診療科入院後に偽痛風や蜂窩織炎と診断される…というパターンは比較的よく経験する。尿検査所見に飛びつき、思考停止になってしまわないように注意したい。3.無症候性細菌尿の治療の原則無症候性細菌尿の治療は原則として必要ない。抗菌薬適正使用の観点からも「かぜに抗菌薬を投与しない」の次に重要なのが「無症候性細菌尿は治療しない」であると考えられている5)。無症候性細菌尿を治療しても尿路感染症のリスクは減らすことができず、それどころか中長期的には尿路感染症のリスクが上昇するとされている6,7)。また下痢や皮疹などの副作用のリスクは当然上昇し、耐性菌の出現にも関与することが知られている1,7)。不必要どころか害になる可能性があるため、原則として無症候性細菌尿は治療しないということをぜひ覚えていただきたい。4.無症候性細菌尿の例外的な治療適応何事も原則を知ったうえで例外を知ることが大切である。この項では無症候性細菌尿でも治療すべき状況を概説する。<妊婦>妊婦が無症候性細菌尿を有する割合は2〜15%とされており8)、治療を行うことで腎盂腎炎への進展リスクや、低出生体重児のリスクが有意に低下することがわかっている9)。このため妊婦ではスクリーニングで無症候性細菌尿があった場合、例外的に治療をすべきとされている。抗菌薬は検出された菌の感受性をもとに決定すればよいが、ST合剤を避けてアモキシシリンやセファレキシンを選択するのが望ましいと考える。治療期間は4〜7日間が推奨されている1)。治療閾値は無症候性細菌尿の定義通り、尿培養から尿路感染症の起炎菌が105CFU/mL以上検出された場合となっているが、105CFU/mL未満でも治療している施設も往々にしてあると思われるためローカルルールを確認していただきたい。なお米国予防医学専門委員会(U.S. Preventive Services Task Force:USPSTF)は、妊婦の尿培養からGroup B Streptococcus(S. agalactiae)が検出された場合、S. agalactiaeの膣内定着が示唆され、胎児への感染を予防するため例外的に104CFU/mLでも治療適応としていることに注意が必要である10)。<泌尿器科処置前>厳密にいうと、「粘膜の損傷や出血を伴うような泌尿器科処置前」である。これは無症候性細菌尿の治療というより、術前の抗菌薬予防投与と考えたほうがイメージしやすいだろう。経尿道的前立腺切除術や経尿道的膀胱腫瘍切除術などの術前にスクリーニングを行い、無症候性細菌尿がある場合は術後感染症の予防のため治療が推奨されている。抗菌薬は検出された菌の感受性をもとに、できるだけ狭域なものを選択する。治療期間は術後創部感染の予防と同様に、手術の30〜60分前に初回投与し、当日で終了すればよい1)。なお膀胱鏡検査だけの場合や、膀胱がんに対するBCG注入療法のみの場合は粘膜の損傷や出血リスクが低く、感染予防効果が乏しいため無症候性細菌尿の治療は不要と考えられる1,11)。意外かもしれないが無症候性細菌尿の治療適応はこの2つだけである。厳密にいうと「腎移植直後の無症候性細菌尿の治療」などは意見が分かれるところであるが、少なくとも腎移植後2ヵ月以上経過した患者に対する無症候性細菌尿の治療効果はないとされる12)。さすがに腎移植後2ヵ月以内に患者を外来フォローすることはほぼないと思われるため、総合内科医/総合診療医が覚えておくべきなのは上述の2つだけであるといってよいだろう。5.無症候性細菌尿と尿路感染症の区別繰り返しになるが、熱源精査の過程で発見された無症候性細菌尿と真の尿路感染症の区別は一筋縄ではいかない。とくに後期高齢者ではもともと無症候性細菌尿を有している率が高くなり、認知症などがあれば真の尿路感染症のときでも発熱以外に症状が乏しいこともあるため、両者の区別がより一層難しくなる。区別に有用な単一の検査も存在しないため、病歴・身体所見・血液検査所見・画像所見などを組み合わせ総合的な評価を行う必要があるといえる。大切なことは尿路感染症と診断する前にほかの熱源をできるだけ否定するということである。無症候性細菌尿を治療してしまう動機としては以下13)のようなものがあげられている。(1)臨床像を考慮せず検査異常を治療するという誤った考え(2)過剰な不安や警戒心という心理的要因(3)適切な意思決定を妨げる組織文化(2)や(3)に関しては状態悪化時のバックアップ体制などにも左右されると考えられるため、個人でなく科全体や病院全体で取り組んでいかなければならないテーマだといえる。1)Nicolle LE, et al. Clin Infect Dis. 2019;68:1611-1615.2)Hooton TM, et al. Clin Infect Dis. 2010;50:625-663.3)Woodford HJ, George J. J Am Geriatr Soc. 2009;57:107-114.4)Zhanel GG, et al. Clin Infect Dis. 1995;21:316-322.5)Choosing Wisely. Infectious Diseases Society of America : Five Things Physicians and Patients Should Question. 2015.(Last reviewed 2021.)6)Zalmanovici Trestioreanu A, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;4:CD009534.7)Cai T, et al. Clin Infect Dis. 55:771-777.8)Smaill FM, Vazquez JC. Cochrane Database Syst Rev. 2019;CD000490.9)Henderson JT, et al. JAMA. 2019;322:1195-1205.10)US Preventive Services Task Force. JAMA. 2019;322:1188-1194.11)Herr HW. BJU Int. 2012;110:E658-660.12)Coussement J, et al. Clin Microbiol Infect. 2021;27:398-405.13)Eyer MM, et al. J Hosp Infect. 2016;93:297-303.

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NSAIDsの長期使用で認知症リスク12%低下

 新たな研究によると、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用は認知症リスクを12%低下させる関連性が認められたが、短期および中期使用では保護効果は認められなかったという。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのIlse Vom Hofe氏らによる本研究の結果はJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年3月4日号に掲載された。 研究者は、前向きの地域ベース研究であるロッテルダム研究から、ベースライン時に認知症のない1万1,745例を分析対象とした。NSAIDs使用データは薬局調剤記録から抽出され、参加者は非使用、短期使用(1ヵ月未満)、中期使用(1~24ヵ月)、長期使用(24ヵ月超)の4グループに分類され、定期的に認知症のスクリーニングを受けた。年齢、性別、生活習慣要因、合併症、併用薬などを調整因子として解析した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間14.5年の間に、1万1,745例(平均年齢66歳、女性60%)の参加者の18%が認知症と診断された。追跡期間終了時までに参加者の81%がNSAIDsを使用した。・NSAIDs使用は、長期使用者において認知症リスクの低下(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI] :0.84~0.91)と関連していたが、短期使用(HR:1.04、95%CI :1.02~1.07)と中期使用(HR:1.04、95%CI:1.02~1.06)では小さなリスク増加が観察された。・NSAIDsの累積用量は、認知症リスクの低下と関連しなかった。・非アミロイドβ(Aβ)低下作用型NSAIDsの長期使用における認知症リスク低下は、Aβ低下型NSAIDsよりも大きかった(HR:0.79対0.89)。・NSAIDsの長期使用による保護効果はAPOE4(対立遺伝子)を持たない参加者(HR:0.86)では観察されたが、有する参加者(HR:1.02)では観察されなかった。・NSAIDsの長期使用と発症リスクとの関連は、全原因認知症よりもアルツハイマー型認知症においてより顕著だった(HR:0.79)。 研究者らは「当研究は、抗炎症薬が認知症の進行に対する予防効果を有する可能性を示しており、その効果は累積用量ではなく、使用期間による可能性がある。しかし、副作用のリスクを考慮すると、認知症予防のために長期的なNSAIDs治療を推奨する根拠は不十分であり、さらなる研究が必要である」とした。

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エサキセレノンは、高齢のコントロール不良高血圧患者にも有効(EXCITE-HTサブ解析)/日本循環器学会

 高血圧治療において、高齢者は食塩感受性の高さや低レニン活性などの特性から、一般的な降圧薬では血圧コントロールが難しいケースもある。『高血圧治療ガイドライン2019』では、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬が第一選択薬として推奨されているが、個々の患者に適した薬剤選択が重要である。このような背景のもと、自治医科大学の苅尾 七臣氏らの研究グループは、ARBまたはCa拮抗薬を投与されているコントロール不良の本態性高血圧患者を対象に、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のエサキセレノンと、サイアザイド系利尿薬であるトリクロルメチアジドとの降圧効果および安全性を比較する「EXCITE-HT試験」を実施した1~3)。その結果、エサキセレノンの降圧非劣性が示された。さらに、「EXCITE-HT試験」の対象者を2つの年齢群(65歳未満と65歳以上)に分け、エサキセレノンの有効性と安全性を年齢別サブ解析として検証した4)。サブ解析の結果について、2025年3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会にて苅尾氏より発表された。 「EXCITE-HT試験」は、2022年12月~2023年9月に実施された多施設(54施設)無作為化非盲検並行群間比較試験である。対象者は、試験登録前に4週間以上、同一用量のARBあるいはCa拮抗薬の投与を受け、コントロール不良の20歳以上の本態性高血圧患者(早朝家庭血圧が収縮期血圧[SBP]125mmHg以上/拡張期血圧[DBP]75mmHg以上)。並存疾患として、脳血管疾患、タンパク尿陰性の慢性腎臓病(CKD)または75歳以上の患者は、SBP 135mmHg以上/DBP 85mmHg以上の患者を試験対象とした。 本サブグループ解析は、対象患者を2つの年齢群(65歳未満と65歳以上)に分類した。エサキセレノン群は、電子添文に従って2.5mg/日(並存疾患を有する場合は1.25mg/日)で開始し、12週間投与した。投与量は、治療4週後または8週後に5mg/日まで患者の状態に合わせて徐々に増量可能とした。トリクロルメチアジド群は、電子添文または高血圧治療ガイドライン(推奨用量は1mg/日以下)を参考に投与を開始し、治療4週後または8週後に患者の状態に合わせて増量した。ARBあるいはCa拮抗薬は全期間を通じて一定用量で投与され、他の降圧薬の使用は禁止された。主要評価項目は、ベースラインから試験終了時までの早朝家庭血圧の最小二乗平均変化量。副次的評価項目は、就寝前の家庭血圧、診察室血圧の変化量、ならびにベースラインから12週目までの尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)の変化率、およびNT-proBNP値の変化量。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインの患者特性【65歳未満の早朝家庭血圧の平均値(SBP/DBP)】 エサキセレノン群(137例):137.9/90.2mmHg トリクロルメチアジド群(133例):136.9/90.1mmHg【65歳以上の早朝家庭血圧の平均値(SBP/DBP)】 エサキセレノン群(158例):142.0/84.0mmHg トリクロルメチアジド群(157例):141.6/83.6mmHg・早朝家庭血圧は、すべてのサブグループにおいてベースラインから試験終了時までに有意に減少した。エサキセレノンはトリクロルメチアジドに対して、65歳未満では、SBPおよびDBP共に非劣性を示し、65歳以上では、SBPで優越性が認められ、DBPで非劣性を示した(非劣性マージン:SBP 3.9mmHg/DBP 2.1mmHg)。就寝前家庭血圧および診察室血圧でも同様の結果が示された。【65歳未満の早朝家庭血圧の最小二乗平均変化量(SBP/DBP)】 エサキセレノン群:-9.5/-5.7mmHg トリクロルメチアジド群:−8.2/−4.9mmHg 群間差:−1.3(95%信頼区間[CI]:−3.3~0.8)/−0.8(95%CI:−2.1~0.5)mmHg【65歳以上の早朝家庭血圧の最小二乗平均変化量(SBP/DBP)】 エサキセレノン群:−14.6/−7.2mmHg トリクロルメチアジド群:−11.5/−6.7mmHg 群間差:−3.0(95%CI:−4.9~−1.2)/−0.5(95%CI:−1.5~0.5)mmHg・両群でUACRおよびNT-proBNP値の有意な低下が認められた。【UACRの幾何平均による変化率】エサキセレノン群vs.トリクロルメチアジド群 65歳未満:-28.3%vs.−38.1% 65歳以上:-46.8%vs.-45.0%【NT-proBNP値の変化量】エサキセレノン群vs.トリクロルメチアジド群 65歳未満:-14.25±78.21 vs.-4.29±102.45pg/mL 65歳以上:-47.68±317.18 vs.-13.73±81.49pg/mL・有害事象の発現率および試験薬投与中止率は両群で同程度であった。 エサキセレノン群vs.トリクロルメチアジド群 有害事象:35.1%vs.37.6% 試験薬投与中止:1例(0.3%)vs.5例(1.7%)・血清カリウム値は、65歳未満および65歳以上共に、トリクロルメチアジド群と比較して、エサキセレノン群でやや高い傾向が示された。低カリウム血症の頻度は、エサキセレノン群のほうが低かった。【低カリウム血症(<3.5mEq/L)】エサキセレノン群vs.トリクロルメチアジド群 65歳未満:4.4%vs.14.0% 65歳以上:1.9%vs.9.5%【高カリウム血症(≧5.0mEq/L)】エサキセレノン群vs.トリクロルメチアジド群 65歳未満:2.2%vs.0.8% 65歳以上:1.9%vs.0.6% 苅尾氏は本結果について、「エサキセレノンはトリクロルメチアジドと比較して、患者の年齢に関わらず、血圧降下作用において非劣性を示し、血清カリウム値に与える影響も、年齢による違いは認められず、有効かつ安全な治療選択肢であることが示された。とくに高齢患者において、早朝家庭血圧を低下させる優れた効果が示された」と結論付けた。(ケアネット 古賀 公子)■参考文献はこちら1)Kario K, et al. J Clin Hypertens. 2023;25:861-867.2)Kario K, et al. Hypertens Res. 2024;47:2435-2446.3)Kario K, et al. Hypertens Res. 2024;48:506-518.4)Kario K, et al. Hypertens Res. 2025;48:1586-1598.そのほかのJCS2025記事はこちら

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撤回論文がメタ解析やガイドラインに及ぼす影響/BMJ

 撤回された臨床試験論文は、エビデンスの統合、臨床診療ガイドライン、エビデンスに基づく臨床診療を含むエビデンスエコシステムに大きな影響を与えることを、中国・Second Military Medical UniversityのChang Xu氏らが、前方引用検索に基づく後ろ向きコホート研究「VITALITY Study I」の結果で示した。エビデンスに基づく医療において、信頼できる意思決定は、信頼できるエビデンスエコシステムの確立に依存し、エビデンスの生成と統合はこのようなエコシステムの確立に重要な要素である。過去10年間で問題のある研究や撤回された研究の数が増加しており、科学研究のデータや結論の信頼性に対し深刻な懸念が高まっている。著者は、「エビデンスを生成、統合および利用する者はこの問題に注意する必要があり、このような潜在的な汚染(contamination)を容易に特定し是正できる実現可能なアプローチが必要である」とまとめている。BMJ誌2025年4月23日号掲載報告。Retraction Watchで撤回論文を特定、医療のエビデンスエコシステムに与える影響を検証 研究グループは、2024年11月5日にRetraction Watchデータベースを用いて何らかの理由で撤回されたヒトを対象とした無作為化比較試験を検索した。その後、Google ScholarおよびScopusを用いて前方引用検索を行い、撤回された臨床試験論文を定量的に組み込んだエビデンス統合研究(2024年11月21日時点)を特定した。 2つの研究者グループが独立してデータを抽出し、撤回された論文を除外した後にメタ解析の結果を更新した。 統合効果の方向性および/またはp値の有意性が変化したメタ解析の割合を推定するとともに、一般化線形混合モデルを用い組み入れられた研究数と影響との関連をオッズ比および95%信頼区間(CI)で示した。また、歪められたエビデンスが臨床診療ガイドラインに与える影響についても、引用文献検索に基づいて調査した。撤回論文で結論が歪められたエビデンスをガイドラインで利用 検索の結果、撤回された臨床試験論文1,330件と、それらを定量的に統合していたシステマティックレビュー847件が特定され、再現可能なメタ解析は合計3,902件であった。 クラスタリング効果を考慮した後、撤回された臨床試験論文を除外すると、統合効果の方向性の変化が8.4%(95%CI:6.8~10.1)、統計学的有意性の変化が16.0%(14.2~17.9)、方向性と有意性の両方の変化が3.9%(2.5~5.2)、効果量の50%以上の変化が15.7%(13.5~17.9)認められた。 組み入れられた研究数と結果への影響の間には明らかな非線形の相関が認められ、研究数が少ないほど影響が大きいことが示された(例:研究数が10件vs.20件以上で、方向性の変化のオッズ比は2.63[95%CI:1.29~5.38]、p<0.001)。 撤回された臨床試験論文によって結論が歪められていた68件のシステマティックレビューのエビデンスが、157のガイドラインで用いられていた。

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術後二次治癒創の治癒期間、局所陰圧閉鎖療法vs.通常治療/Lancet

 糖尿病などの合併症があり、下肢の術後二次治癒創(SWHSI)を有する患者において、局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)が標準的な被覆材(ドレッシング)と比較して創傷治癒までの期間を短縮するという明らかなエビデンスは確認されなかった。英国・ヨーク大学のCatherine Arundel氏らが、国民保健サービス(NHS)の29施設で実施したプラグマティックな無作為化非盲検並行群間比較試験「SWHSI-2試験」の結果を報告した。SWHSIは治療管理およびコスト面で大きな課題を抱えており、有効性の比較を基にしたエビデンスがないにもかかわらず、治療法としてNPWTが用いられることが増えている。著者は、「本研究の結果は、SWHSIの治癒促進のためにNPWTを使用することを支持しないものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年4月15日号掲載の報告。評価者盲検で創傷治癒までの期間を比較 研究グループは、16歳以上で急性SWHSI(術後6週未満に生じた創傷または創傷離開)を有し、NPWT適応と判断された患者(すなわち、デブリドマンを要しない生存組織または薄膜層が80%以上)を、中央ウェブベースシステムによりNPWT群または通常治療群に、創傷部位、創傷面積および施設で層別化して1対1の割合で無作為に割り付け12ヵ月間追跡した。 患者ならびに臨床および研究チームは非盲検であったが、盲検化された評価者が創傷部の写真を評価しアウトカムを確認した。 主要アウトカムは、創傷治癒までの期間(無作為化から完全上皮化までの日数)で、Kaplan-Meier法およびCox比例ハザードモデルを用いてITT解析を行った。NPWTは通常治療と比較し創傷治癒までの期間を短縮せず 2019年5月15日~2023年1月13日に、SWHSIを有する患者686例がNPWT群(349例)または通常治療群(337例)に無作為化され、全患者が主要解析に組み込まれた。 患者の多くは、糖尿病患者(549例、80.0%)、SWHSIが1ヵ所(622例、90.7%)、創傷部位が足または下肢(620例、90.4%)であり、血管手術後の発生であった(619例、90.2%)。 創傷治癒までの期間の中央値は、NPWT群187日(95%信頼区間[CI]:169~226)、通常治療群195日(95%CI:158~213)であり、NPWTが通常治療と比較し創傷治癒までの期間を短縮する明確なエビデンスは得られなかった(ハザード比:1.08、95%CI:0.88~1.32、p=0.47)。 有害事象は448件報告され、そのうち重篤な事象は14件(NPWT群9例、通常治療群5例)で、124件は治療に関連している可能性があると判断された。 試験内経済分析の結果、NPWTは通常治療と比較して費用対効果が高いとは認められなかった。

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黄斑部の厚さが術後せん妄リスクの評価に有効か

 「目は心の窓」と言われるが、目は術後せん妄リスクのある高齢患者を見つけるのにも役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。網膜の中心部にある黄斑部が厚い高齢者は、術後せん妄の発症リスクが約60%高いことが示されたという。同済大学(中国)医学部教授のYuan Shen氏らによるこの研究の詳細は、「General Psychiatry」に4月1日掲載された。Shen氏は、「本研究結果は、黄斑部の厚みを非侵襲的なマーカーとして、麻酔および手術後にせん妄を発症しやすい高齢者を特定できる可能性があることを示唆している」と話している。 米国医師会(AMA)によると、高齢患者の約26%が術後せん妄を発症する。米ミシガン州の内科医Amit Ghose氏は、2023年にAMAに発表された記事の中で、4時間に及ぶ心臓手術後に術後せん妄に襲われた自身の経験を振り返った。Ghose氏は、目を覚ましたときには頭が混乱しており、「私は、『なぜ私はランシングで患者の診察をしていないのだろう』と自問した」と回想する。同氏は、家族の質問に正しく答えることができず、オピオイド系鎮痛薬はせん妄状態を悪化させただけだった。症状が治まるまで数日かかったという。 研究グループは、術後せん妄を発症した患者は、入院期間が長くなり、退院後も自宅でのサポートが必要になる可能性が高いと説明する。また、認知機能低下や認知症のリスクも高まる。しかし残念ながら、術後せん妄のリスクがある人を特定するための簡便な検査は存在しない。ただ、過去の研究で、視力障害が術後せん妄の独立したリスク因子であることや、網膜の厚さが認知障害やアルツハイマー病のリスクと関連していることが示されている。網膜は目の奥にある細胞層で、角膜と水晶体を経由して入ってきた光を電気信号に変換し、視神経を通して脳に送る役割を果たしている。 今回、Shen氏らは、全身麻酔下で膝関節や股関節の置換手術、腎臓や前立腺の手術を受ける予定の65歳以上の患者169人(平均年齢71.15歳)を対象に、網膜の厚さと術後せん妄の発症リスクとの関係を検討した。手術の前に、光干渉断層撮影(OCT)により対象者の目の黄斑部の厚さと網膜神経線維層(RNFL)の厚さを測定した。また術後3日間は、せん妄のスクリーニングや診断に用いられるツールであるConfusion Assessment Method(CAM)とCAM-severity(CAM-S)を用いてせん妄の有無とその重症度の評価を行った。 手術後に40人(24%)がせん妄を発症した。術後せん妄を発症した患者では、発症しなかった患者に比べて黄斑部の厚さが有意に厚いことが明らかになった(厚さの平均値は283.35μm対273.84μm、P=0.013)。また、術前に右目黄斑部の厚さが厚いことは、術後せん妄の発症リスクの増加(調整オッズ比1.593、95%信頼区間〔CI〕1.093〜2.322、P=0.015)、およびせん妄の重症度の上昇(CAM-Sスコアの調整平均差0.256、95%CI 0.037〜0.476、P=0.022)と関連することも示された。 この研究では、黄斑部の厚みの増加と術後せん妄リスクとの間の直接的な因果関係を証明することはできない。それでも研究グループは、「本研究で得た知見は、より大規模な研究でさらに検討する価値があるほど強力であり、せん妄の術前検査につながる可能性がある」と述べている。 なお、米国老年医学会(AGS)によると、術後せん妄は予防可能だという。AGSは予防のための有効な手段として、毎日複数回歩かせること、時間と居場所を思い出させること、夜間に中断なく眠れるようにすること、水分補給を徹底させること、眼鏡や補聴器を持たせること、カテーテルの使用を避けることなどを挙げている。

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アラート付き血糖モニタリングにより糖尿病患者の交通事故が軽減か

 インスリン治療を受けている糖尿病患者では、治療に起因する低血糖症が起こることがある。低血糖症が車の運転時に起こった場合、意識障害などから交通事故につながりかねない。この度、インスリン治療を受けている糖尿病患者で、アラート付きの持続血糖モニタリングシステム(CGM)の装着により、運転中の低血糖の発生率が低下するという研究結果が報告された。名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学の前田龍太郎氏らが行った研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」に2月28日掲載された。 2014年の実態調査では、糖尿病治療中の患者の52%が日常生活で低血糖を経験し、そのうちの10%で運転中に低血糖エピソードを生じ、結果としてその2%が交通事故にあった、と報告されている。無自覚の低血糖を加味すれば、運転中の低血糖エピソードの頻度はさらに高い可能性があり、切迫した低血糖を予測してドライバーに警告できる信頼性の高いシステムが必要とされていた。このような背景から、研究グループは、インスリン治療を受けているドライバーを対象に、低血糖アラート機能付きのCGMの有用性を評価する単施設の非盲検ランダム化クロスオーバー試験を実施した。 対象には、2021年7月6日から2023年2月27日の間に名古屋大学医学部附属病院でインスリン治療を受け、週3回以上車を運転する成人の糖尿病患者30名が含まれた。30名の参加者は、アラート機能付きCGM群(アラート群)、アラート機能なしCGM群(非アラート群)に1対1で割り付けられた。参加者は、4週の試験期間の後、8週間おいて、群を入れ替えて再度4週間の試験期間に組み入れられた。CGMは皮膚に貼り付けるパッチ式を採用し、期間中の低血糖警告の閾値は80mg/dL(4.4mmol/L)と設定された。主要評価項目は血糖値が基準値(70mg/dL〔3.9mmol/L〕)を下回っていた時間(TBR)の割合とした。 最終的にCGMの解析に含まれた参加者は27名(平均年齢;61.9±12.6歳、女性;8名)だった。27名には、1型糖尿病8名(30%)、2型糖尿病13名(50%)、その他6名(20%)が含まれた。 2つの試験期間を統合して解析した結果、試験全体でのTBRはアラート群(中央値2.0%〔四分位範囲1.0~7.0〕)と非アラート群(同2.0%〔1.0~6.5〕)で有意な差はみられなかった(P=0.169)。しかし、事前に規定された1型糖尿病のサブグループ解析では、非アラート群と比較したアラート群のTBRは有意に減少していた(群間差-4.4%〔95%信頼区間-8.7~-0.1〕、P=0.047)。また、車を運転するときの低血糖エピソードの発生率は、非アラート群(33%)と比較し、アラート群(19%)で有意な減少が認められた(P=0.041)。 本研究の結果について、研究グループは、「今回のCGMはアラートの閾値が80mg/dL(4.4mmol/L)に設定されており、参加者は血糖が基準値以下(<70mg/dL〔<3.9mmol/L〕)になる前にブドウ糖摂取などの予防的措置をとることができた。今回示された結果は、低血糖アラート機能を備えたCGMが、インスリン治療を受けているドライバーの安全性をさらに高め、糖尿病患者の運転制限の緩和に役立つ可能性があることを示唆している」と述べた。 なお、本研究の限界については、CGMで測定した皮下組織中のグルコース濃度は、近似しているが血糖値と同一のものでないこと、CGMの使用により意識が変わり、血糖管理がより慎重になった可能性があったことなどを挙げている。

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認知症の予防はお口の健康から(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者最近、もの忘れが増えてきて…。それに、歯の調子も良くなくて…医師 それは心配ですね。実は、お口の健康も認知症と関連していますよ!患者 えっ、そうなんですか!?医師 はい。歯の本数が少ない人は、認知症になりやすいそうですよ。患者 えっ、どうしてですか?医師 歯の本数が減ると、ものをかむ筋肉(咀嚼筋)や歯(歯根膜)からの脳への刺激が減るそうです。画 いわみせいじそれに…(身振り手振りを加えながら)患者 それに?医師 生野菜などを摂らなくなり、ビタミンなどの栄養不足を招きます。ほかにも…。患者 まだ、あるんですか?医師 タバコを吸う人や糖尿病の人は歯周病で歯が抜けやすいですし、軽度認知障害(MCI)があると、歯磨きなどをきちんとしなくなり、歯周病や虫歯になるリスクが高くなります。患者 歯は大切にしないといけないんですね。一度、歯医者さんに診てもらいます(嬉しそうな顔)ポイントお口の健康と認知症との関連を説明した後に、対策を一緒に考えます。Copyright© 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ハプロHSCTのGVHD予防、間葉系幹細胞の逐次注入の有用性/JCO

 半合致(ハプロ)造血幹細胞移植(HSCT)後3ヵ月の臍帯由来間葉系幹細胞(MSC)逐次注入による移植片対宿主病(GVHD)予防効果および安全性を、中国・Xinqiao Hospital of Army Medical UniversityのHan Yao氏らが非盲検多施設無作為化比較試験で検討した。その結果、慢性GVHDと急性GVHDの発症率と重症度のどちらも有意に減少し、3年無GVHD・無再発生存率(GRFS)が改善することが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年4月15日号に掲載。 本試験では、臍帯由来MSCの注入(初日の開始4時間前に1×106/kg投与、移植後1ヵ月間は週1回、2ヵ月目は2週に1回、3ヵ月目に1回、計8回投与)を評価した。主要評価項目は重症慢性GVHDの2年累積発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・中国の3つの移植センターでハプロHSCTを受けた18~60歳の192例が登録され、MSC群と対照群に無作為に割り付けられた。・1次解析において、重症慢性GVHDおよび全Gradeの慢性GVHDの推定2年累積発症率は、MSC群が対照群より低かった(p=0.033およびp=0.022)。・MSC群におけるGrade1~4、2~4、3~4の急性GVHDの累積発症率は有意に減少した(すべてp<0.001)。・MSC群における3年GRFS率は62.4%で、対照群(32.0%)よりも有意に高かった(ハザード比:0.34、p<0.001)。・MSC注入は、累積再発率(p=0.34)および非再発死亡率(p=0.45)に影響しなかった。

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不眠症を伴ううつ病に対する抗うつ薬+睡眠薬併用療法の有効性と安全性〜メタ解析

 抗うつ薬と睡眠薬の併用は、不眠症を伴ううつ病に対し、有望な治療候補である。杏林大学の丸木 拓氏らは、不眠症を伴ううつ病治療における抗うつ薬と睡眠薬の併用療法の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2025年3月20日号の報告。 対象は、不眠症を伴ううつ病治療における抗うつ薬と睡眠薬の併用療法の有効性および安全性を評価した二重盲検ランダム化比較試験。2024年6月までに公表された研究を、PubMed、CENTRAL、Embaseより検索した。睡眠薬クラス(ベンゾジアゼピン、Z薬、メラトニン受容体作動薬)別に抗うつ薬単独療法と比較するため、メタ解析を実施した。 主な内容は以下のとおり。・8件の適格研究(参加者1,945例、エスゾピクロン4件、ゾルピデム2件、トリアゾラム1件、ラメルテオン1件)が抽出された。・Z薬の6件の試験に基づきメタ解析を実施した。・抗うつ薬とZ薬の併用療法は、抗うつ薬単独療法と比較し、12週間以内の短期間において、抑うつ症状の寛解率が高く、抑うつ症状および不眠症状の改善が大きかった。また、めまい以外の安全性アウトカムに差は認められなかった。【抑うつ症状の寛解率】リスク比:1.25、95%信頼区間(CI):1.08〜1.45、p=0.003【抑うつ症状の改善】標準化平均差(SMD):0.17、95%CI:0.01〜0.33、p=0.04【不眠症状の改善】SMD:0.43、95%CI:0.28〜0.59、p<0.001 著者らは「抗うつ薬とZ薬の併用療法は、抗うつ薬単独療法よりも、短期的に不眠症状に伴ううつ病治療に有効である可能性が示唆された。しかし、本研究では、長期的なZ薬補助療法のベネフィット/リスクは評価されていない。抗うつ薬とZ薬の併用療法の有効性および安全性について、明確な結論を導き出すためにも、長期的な研究が求められる。また、本結果が他の睡眠薬クラスにおいても適用できるかを評価するためにも、さらなる研究が必要である」としている。

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統合失調症に対するアリピプラゾール+CBTの有用性〜ランダム化比較試験

 統合失調症患者に対するアリピプラゾールと認知行動療法(CBT)併用療法の認知機能および心理状態に及ぼす影響を評価するため、中国・The Second People's Hospital of Guizhou ProvinceのJun Yan氏らは、ランダム化比較試験を実施した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2025年3月27日号の報告。 対象は、統合失調症患者78例。従来の看護治療を行い3ヵ月間のアリピプラゾール投与を行った対照群(39例)、CBT(1回/週、各セッション60分)と3ヵ月間のアリピプラゾール投与を行ったCBT併用群(39例)のいずれかに分類した。治療前後の症状重症度を両群間で比較した。精神症状の評価には、簡易精神症状評価尺度(BPRS)を用いた。認知機能は、神経心理検査アーバンズ(RBANS)を用いて評価した。QOLの評価には、General Quality of Life Inventory-74(GQOLI-74)を用いた。最終分析では、治療後の両群間における有効性および合併症を評価した。 主な結果は以下のとおり。・両群ともに、有意な改善が認められた。BPRSおよび陽性陰性症状評価尺度(PANSS)スコアの低下、RBANS、一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)、GQOLI-74スコアの上昇が認められた。・CBT併用群は、対照群よりも大きな改善を示した。・CBT併用群の総改善率は89.74%(35例)であり、対照群71.79%(28例)よりも高かった。・合併症の発生率は、CBT併用群で33.33%(13例)、対照群で38.46%(15例)であった。 著者らは「統合失調症に対するアリピプラゾールと組み合わせたCBTは、患者の認知機能および心理状態に有意なベネフィットをもたらすことが示唆された」と結論付けている。

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帯状疱疹ワクチンで認知症リスク20%低下/Nature

 帯状疱疹ワクチンは、痛みを伴う発疹の予防だけでなく、認知症の発症から高齢者を守る効果もあるようだ。新たな研究で、英国のウェールズで帯状疱疹ワクチンが利用可能になった際にワクチンを接種した高齢者は、接種しなかった高齢者に比べて認知症の発症リスクが20%低いことが示された。米スタンフォード大学医学部のPascal Geldsetzer氏らによるこの研究の詳細は、「Nature」に4月2日掲載された。 帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の原因ウイルスでもある水痘・帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる。このウイルスは、子どもの頃に水痘に罹患した人の神経細胞内に潜伏し、加齢や病気により免疫力が弱まると再び活性化する。帯状疱疹ワクチンは、高齢者の水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫反応を高め、潜伏中のウイルスが体表に現れて帯状疱疹を引き起こすのを防ぐ働きがある。しかし、最近の研究では、特定のウイルス感染が認知症リスクを高める可能性が示唆されていることから、Geldsetzer氏らは、帯状疱疹ワクチンにも脳を保護する効果があるのではないかと考えた。 このことを検討するためにGeldsetzer氏らは、2013年9月1日に高齢者に対する帯状疱疹ワクチンの接種が開始されたウェールズに目を向けた。当時はワクチン(Zostavax)の供給量が限られていたため、このときの接種対象者は1933年9月2日以降に生まれた79歳の人に限定され、接種可能な期間も1年間に限られていた。開始時点で80歳以上だった人は、生涯にわたって接種対象外とされた。しかし、この規制が、ワクチンの影響を検証するランダム化比較試験の条件を自ずと生み出したと研究グループは指摘する。Geldsetzer氏らは、帯状疱疹ワクチン接種開始の直後に80歳に達した接種対象者(接種群)とワクチン接種直前に80歳に達した接種対象外の高齢者(1933年9月2日より前に生まれた人、対照群)を7年間追跡し、認知症の発症について比較した。 その結果、接種群では対照群に比べて、追跡期間中に新たに認知症の診断を受ける確率が3.5パーセントポイント低いことが示された。これは、接種群では対照群と比較して、認知症の相対的なリスクが20%低下したことに相当する。この効果は、教育レベルや糖尿病、心臓病、がんなどの慢性疾患など、認知症リスクに影響を与え得る因子を考慮した解析でも変わらず認められた。ワクチン接種のこのような保護効果は、男性よりも女性で顕著だった。さらに、イングランドとウェールズの合算人口を対象にした別のデータを使った検討でも同様の結果が確認された。 Geldsetzer氏は、「本研究で確認された兆候は非常に強力かつ明確な上に、持続的でもあった」と話す。ただし、なぜ帯状疱疹ワクチンが認知症を予防するのかは明らかになっていない。研究グループは、ワクチンが免疫システム全体を強化するか、あるいは特に水痘・帯状疱疹ウイルスが脳の健康に及ぼす未知の影響を防ぐことで、脳を保護する可能性があると推測している。 さらに、研究グループは、現時点では米国でのみ入手可能な最新のワクチンであるShingrixが、今回の研究で検討されたZostavaxと同様の認知症予防効果をもたらすのかどうかも不明だと話す。Zostavaxは弱毒化された水痘・帯状疱疹ウイルスを用いた生ワクチンであるのに対し、Shingrixはウイルスの特定のタンパク質のみを利用した遺伝子組み換え不活化ワクチンである。研究グループによると、Shingrixは水痘・帯状疱疹ウイルスに対してZostavaxより効果的だが、認知症リスクへの影響はZostavaxと異なる可能性があるという。 Geldsetzer氏は、本研究で得られた知見がきっかけとなって、Shingrixの認知症予防効果を検討する研究が実施されるようになることに期待を示している。同氏は、「少なくとも、今持っている資源の一部を使って帯状疱疹ワクチンと認知症との関連に関して研究を進めることで、治療と予防の面で画期的な進歩につながる可能性がある」と話している。

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百日咳ってどんな病気?

百日咳ってどんな病気?• 「百日咳菌」への感染によって起こり、飛沫感染や接触感染が主な感染経路です• 名前のとおり激しい咳を伴う病気で、いずれの年齢でもかかりますが、1歳以下、とくに生後6ヵ月以下の乳児では重症化や、まれに死に至ることもあり注意が必要です主な症状予防するには?経過は3期に分けられ、全体で約2~3ヵ月で回復するとされていますワクチン接種により、罹患リスクを80~85%程度減らすことができると報告されています1.カタル期(約2週間持続):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなります5種混合ワクチン:0~1歳児の定期接種として導入されている5種混合ワクチンは、百日咳を含む5つの感染症を予防するワクチンですけいがい2.痙咳期(約2~3週間持続):特徴的な発作性けいれん性の咳(短い咳が連続的に起こり、息を吸う時にヒューという音が出る)になります(夜間に悪化することが多い)。乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ(顔や唇、爪の色が紫色に見えること)、けいれん、呼吸停止と進展することがあります3.回復期:激しい咳は次第に減衰します。成人では咳が長期にわたって持続する場合がありますが、やがて回復に向かいます初回接種:生後2~7ヵ月に至るまでの間を標準的な接種期間として20日以上(標準的には20~56日まで)の間隔をおいて3回接種します追加接種:初回接種終了後6ヵ月以上(標準的には6~18ヵ月まで)の間隔をおいて1回接種します※ワクチンによる予防効果は4~12年で減弱すると報告されており、接種から時間が経つことで感染することがあります。ワクチン未接種の新生児・乳児の感染源とならないよう注意が必要です出典:厚生労働省HP「百日咳」「5種混合ワクチン」JIHS感染症情報提供サイト「百日咳」Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第264回 線維筋痛症女性の痛みが健康な腸内細菌の投与で緩和、生活の質も向上

線維筋痛症女性の痛みが健康な腸内細菌の投与で緩和、生活の質も向上腸内細菌入れ替えの線維筋痛症治療の効果が、イスラエルでの少人数の臨床試験で示されました1)。どこかを傷めていたり害していたりするわけでもないのに、体のほうぼうが痛くなる掴みどころのない慢性痛疾患である線維筋痛症の少なくともいくらかは、健康なヒトからの腸内細菌のお裾分けで改善するようです。線維筋痛症は多ければ25人に1人の割合で認められ、主に女性が被ります。線維筋痛症の根本原因や仕組みは不明瞭で、的を絞った効果的な治療手段はありません。線維筋痛症で生じる神経症状は痛みに限らず、疲労、睡眠障害、認知障害をもたらします。それに過敏性腸症候群(IBS)などの胃腸障害を生じることも多いです。腸内微生物が慢性痛のいくつかに携わりうることが示されるようになっており、IBSなどの腸疾患と関連する内臓痛への関与を示す結果がいくつも報告されています。線維筋痛症の痛みやその他の不調にも腸内微生物の異常が寄与しているのかもしれません。実際、線維筋痛症の女性の腸内微生物叢が健康なヒトと違っていることが最近の試験で示されています。そこでイスラエル工科大学(通称テクニオン)の痛み研究者Amir Minerbi氏らは、健康なヒトの腸内細菌を投与することで線維筋痛症の痛みや疲労が緩和しうるのではないかと考えました。まずMinerbi氏らは、線維筋痛症の女性とそうではない健康な女性の腸内微生物を無菌マウスに移植して様子をみました。すると、線維筋痛症の女性の腸内微生物を受け取ったマウスは、健康な女性の腸内微生物を受け取ったマウスに比べて機械刺激、熱刺激、冷刺激に対してより痛がり、自発痛の増加も示しました。続く実験で腸内細菌の入れ替えの効果が裏付けられました。最初に線維筋痛症の女性の微生物をマウスに投与して痛み過敏を完全に発現させます。その後に抗菌薬を投与して腸内微生物を一掃した後に健康な女性の微生物を移植したところ、細菌の組成が変化して痛み症状が緩和しました。一方、抗菌薬投与なしで健康な女性の微生物を投与した場合の細菌組成の変化は乏しく、痛みの緩和は認められませんでした。線維筋痛と関連する細菌を健康なヒトからの細菌と入れ替えることは、痛み過敏を解消する働きがあることをそれら結果は裏付けています。その裏付けを頼りに、細菌の入れ替えがヒトでも同様の効果があるかどうかが線維筋痛症の女性を募った試験で調べられました。試験には通常の治療のかいがなく、とても痛く、ひどく疲れていて症状が重くのしかかる重度の線維筋痛症の女性14例が参加しました。それら14例はまず抗菌薬と腸管洗浄で先住の腸内微生物を除去し、続いて健康な女性3人から集めた糞中微生物入りカプセルを2週間ごとに5回経口服用しました。最後の投与から1週間後の評価で14例のうち12例の痛みが有意に緩和していました。不安、うつ、睡眠、身体的な生活の質(physical quality-of-life)の改善も認められ、症状の負担がおおむね減少しました。投与後の患者の便検体を調べたところ、健康な女性の細菌と一致する特徴が示唆されました。健康な女性の微生物投与の前と後では糞中や血中のアミノ酸、脂質、短鎖脂肪酸の濃度に違いがありました。また、コルチゾンやプロゲスチンなどのホルモンのいくつかの血漿濃度が有意に低下する一方で、アンドロステロンなどのホルモンのいくつかの糞中濃度の上昇が認められました。「14例ばかりの試験結果を鵜呑みにすることはできないが、さらなる検討に値する有望な結果ではある」とMinerbi氏は言っています2)。 参考 1) Cai W, et al. Neuron. 2025 Apr 24. [Epub ahead of print] 2) Baffling chronic pain eases after doses of gut microbes / Nature

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健康長寿を目指すなら、この食事がベスト

 高齢になっても健康を維持するためには、中年期にどのような食生活を送れば良いのだろうか。10万5,000人を超える男女を最長で30年間にわたって追跡し、8つのパターンの食事法について調べた研究からは、代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index;AHEI)が明確に優れていることが示された。コペンハーゲン大学(デンマーク)公衆衛生学准教授で、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の栄養学客員准教授でもあるMarta Guasch-Ferre氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に3月24日掲載された。 AHEIは2002年に、米国農務省(USDA)による米国の食事ガイドラインの遵守度の指標である健康食指数(Healthy Eating Index;HEI)の代替指標として、ハーバード大学の研究者らにより作成された。ハーバード大学によると、HEIとAHEIは似ているが、AHEIの方が慢性疾患のリスクを軽減することにより重点を置いた指標になっているという。AHEIの高い食事とは、果物や野菜、全粒穀物、ナッツ類、豆類、健康的な脂肪を豊富に摂取し、赤肉や加工肉、加糖飲料、塩分、精製穀物の摂取は控えた食事である。 今回の研究では、医療従事者を対象にした2つの長期研究(Nurses’ Health Study、Health Professionals Follow-Up Study)参加者(10万5,015人)が定期的に記入している、食事に関する質問票のデータを分析し、8種類の食事パターンへの遵守度が点数化された。8種類の食事パターンとは、1)AHEI、2)代替地中海食指数(Alternative Mediterranean Index;aMED)、3)DASH食(高血圧予防食)、4)MIND食(地中海食とDASH食を組み合わせた神経変性を遅らせるための食事)、5)健康的な植物性食品ベースの食事指数(Healthful Plant-Based Diet Index;hPDI)、6)プラネタリーヘルスダイエット指数(Planetary Health Diet Index;PHDI)、7)経験的炎症性食事パターン(Empirically Dietary Inflammatory Pattern;EDIP)、8)高インスリン血症のための経験的食事指標(Empirical Dietary Index for Hyperinsulinemia;EDIH)である。 論文の共著者であるハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のFrank Hu氏は、本研究について、「これまでの研究では、特定の疾患や寿命の観点から食事パターンの調査が行われてきた。これに対し、今回の研究では、『自立した生活や良好な生活の質(QOL)を保つ能力に食事がどのような影響を与えるのか』という疑問について、多面的な観点から検討した」と説明している。 30年間の追跡期間中、全参加者の9,771人(9.3%)が健康的に年を重ねていた。解析からは、全ての食事パターンにおいて、遵守度の高かった人は低かった人に比べて、70歳まで健康的に年を重ねているオッズが有意に高いことが明らかになった。その中でも、特に関連が強かったのはAHEIで、オッズ比は1.86(95%信頼区間1.71〜2.01)と算出された。年齢を75歳まで引き上げた場合でも、AHEI遵守度の高い人は低い人に比べて健康的に年を重ねているオッズが有意に高かった(オッズ比2.24、2.01〜2.50)。 Guasch-Ferre氏は、「この研究結果は、植物性食品が豊富で健康的な動物性食品も適度に取り入れた食事パターンが、全般的なヘルシーエイジング(健康的な加齢)を促す可能性があることを示している。また、今後の食事ガイドラインのあり方を検討する上でも、この研究結果が役立つ可能性がある」との見解をハーバード大学のニュースリリースで示している。 一方、論文の筆頭著者でモントリオール大学(カナダ)栄養学分野のAnne-Julie Tessier氏は、「今回の研究結果は、全ての人に適した食事療法は存在しないことを示している。健康的な食事は、個人のニーズや嗜好に合わせることができる」と同大学のニュースリリースの中で述べている。

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緩和ケアTipsを医師とナースが語り合う連載100回記念対談【視聴者に抽選でポイントプレゼント!】

緩和ケアTipsを医師とナースが語り合う連載100回記念対談本連載「非専門医のための緩和ケアTips」が、次回で100回を迎えます。連載100回を記念して執筆者である飯塚病院の柏木 秀行氏と、同院で一緒にケアに当たる緩和ケア認定看護師の宮崎 万友子氏の対談形式で、ライブを開催します。過去の記事から、反響の大きかったテーマをピックアップし、さらに深掘りします。取り上げるのは、以下の3テーマです。第15回 誰に?いつから?緩和ケアのニーズを見極める「この問い」第44回 痛みの評価が難しい患者さん第56回 希望を持ち続けることの意義緩和ケアの現場を熟知するエキスパート2人が、それぞれの視点から一般外来や病棟でも日々直面する悩みに切り込みます。緩和ケアに携わる医師・看護師の方はもちろん、臨床判断力や患者対応の質を高めたいすべての医療者必見の対談です。<ライブ基本情報>祝!CareNet.com連載100回記念対談 日常診療と看護に活かせる緩和ケアTIPS日時:2025年4月30日(水)20:00~21:00柏木 秀行氏(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科)宮崎 万友子氏(飯塚病院 看護部 緩和ケア認定看護師)再配信日時:2025年5月3日(土祝)20:00~21:00視聴いただいた方に、抽選で100名様・1000ポイントが当たるキャンペーン!視聴後、アンケートで感想をお寄せいただいた方から抽選で100名様に1,000ポイントが当たるキャンペーンを実施します。

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