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心血管リスクを有する耐糖能異常患者への速効型インスリン分泌促進薬:NAVIGATOR研究

経口糖尿病薬の1つ、速効型インスリン分泌促進薬ナテグリニド(商品名:スターシス、ファスティック)について、心血管疾患あるいは心血管リスクを有する耐糖能異常患者の糖尿病発症や心血管イベントを抑制しないとの報告が、NAVIGATOR研究グループによって発表された。同種の研究はこれまで行われておらず、本報告は追跡期間約5年、9,300名余を対象とした2×2二重盲検無作為化臨床試験により明らかにされた。NEJM誌2010年4月22日号(オンライン版2010年3月14日号)掲載より。9,306例をプラセボとの比較で中央値5.0年追跡NAVIGATOR(Nateglinide and Valsartan in Impaired Glucose Tolerance Outcomes Research)研究グループは、耐糖能異常と心血管疾患または心血管リスク因子を有する9,306例を対象に、2×2二重盲検無作為化臨床試験を行った。被験者は全員、生活習慣改善プログラムを受ける一方、ナテグリニド(最大60mgを1日3回)かプラセボ投与を受け、さらにそれぞれバルサルタン(商品名:ディオバン)またはプラセボの併用投与を受け、糖尿病の発症について、中央値5.0年追跡された。生存については中央値6.5年追跡された。解析ではナテグリニドの効果について、糖尿病の発症、中核の心血管転帰(心血管死,非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の複合)、広範な心血管転帰(中核の複合心血管転帰の各要素、不安定狭心症による入院、動脈血行再建の複合)の3つの共通主要転帰の発生を評価した。糖尿病発症、心血管転帰発生に有意な低下認められず多重検定補正後、ナテグリニド群(4,645例)はプラセボ群(4,661例)と比べて、3つの共通主要転帰の発生を、いずれも有意に低下しなかった。糖尿病の累積発症率は、ナテグリニド群36%、プラセボ群34%(ハザード比:1.07、95%信頼区間:1.00~1.15、P=0.05)、中核の複合心血管転帰の発生率は7.9%、8.3%(同:0.94、:0.82~1.09、P=0.43)、広範な複合心血管転帰の発生率は14.2%、15.2%(同:0.93、0.83~1.03、P=0.16)だった。一方で、ナテグリニド群では低血糖リスクの増加がみられた。(医療ライター:武藤まき)

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砂糖など添加甘味料の摂取が多いと脂質代謝異常リスク増加

砂糖など、カロリーのある甘味料の摂取量が多いと、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値が低くなったり、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値が高くなるなど、脂質代謝異常リスクが増加する傾向があるようだ。米国Emory大学のJean A. Welsh氏らが、6000人超の米国の成人を対象に行った調査で明らかにしたもので、JAMA誌2010年4月21日号で発表した。添加甘味料と脂質値についての研究は、これが初めてという。総カロリー摂取量に占める添加甘味料の割合で5群に分類同氏らは、1999~2006年の全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)の結果から、18歳以上の6,113人を対象に、添加甘味料の摂取量と脂質プロファイルについて、断面調査を行った。研究グループは被験者を、1日の総カロリー摂取量に占める添加甘味料の割合に応じて、5%未満(対照群)、5~10%未満、10~17.5%未満、17.5~25%未満、25%以上の、5群に分類した。被験者の総摂取カロリーに占める添加甘味料の割合の平均値は、15.8%だった。添加甘味料の割合増加に伴いHDL減少、トリグリセリドやLDLは増加、5群各群の、補正後平均HDL-C値はそれぞれ、58.7、57.5、53.7、51.0、47.7mg/dLと、添加甘味料の割合増加につれて減少傾向がみられた(線形傾向のp

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酒類価格の下限設定や安売り制限が、アルコール飲料による健康被害を低減する

アルコール飲料の最低価格を設定する施策および割引制限は、アルコール飲料の消費を抑制し、健康被害や医療費の低減をもたらすことが、イギリスSheffield大学のRobin C Purshouse氏らによる調査で明らかとなった。近年、多くの国ではアルコール飲料による健康被害が社会に及ぼす影響への関心が高まっており、公衆衛生学的な介入の効果に注目が集まっている。アルコール飲料の価格を設定する施策がアルコールによる健康被害の抑制に有効なことは知られているが、医療費や健康関連QOLに対する効果を飲用の程度別に検討した試験はほとんどないという。Lancet誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月24日号)掲載の報告。アルコール飲料価格が健康や医療経済に及ぼす影響を評価研究グループは、人口の種々のサブグループにおいて、アルコール飲料の価格設定や販売促進に関する施策が、健康や医療経済に及ぼす影響を評価した。アルコール飲料の消費に関するイギリスの家計調査(Expenditure and Food Survey:EFSおよびGeneral Household Survey:GHS)のデータを用い、18の価格施策を評価する疫学的数学モデルを構築した。計量経済分析(256の自己価格および交差価格の弾力性推定値)のデータを用い、アルコール飲料の消費に関する施策の効果を評価した。系統的レビューとメタ解析に基づいて、寄与割合(attributable fraction)から算出されたリスク関数(risk function)を適用し、死亡率および47の疾患の発症率に及ぼす消費変動の影響をモデル化した。パブやバーの酒類値上げは若者に有効人口のすべてのサブグループにおいて、アルコール飲料の一般価格の上昇によって消費量が低下し、医療費が抑制され、健康関連QOLが改善された。アルコール飲料価格の下限を設定する施策により、有害な量のアルコール飲料の飲用者ではこれらの良好な効果が維持されたが、適度な量の飲用者では効果が低下した。スーパーマーケットや酒類安売り店での販売の全面禁止は、消費量、医療費、健康関連QOLの改善に有効であったが、大型安売り店に限定して販売を禁止しても効果はなかった。パブやバーのアルコール飲料を値上げする施策は、特に18~24歳の若年成人の飲酒に対する改善効果が顕著であった。著者は、「最低価格を設定する施策および割引制限は、酒類への支出が多くアルコールによる健康被害が最も大きい人々において、アルコール飲料の消費を抑制し、健康被害や医療費を低減する」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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心房細動患者の心拍数コントロールは緩やかでも有効

持続性心房細動患者の心拍数コントロールは緩やかでも、厳格に行った場合と効果は同程度であることが確認された。コントロール達成も容易だった。オランダ・フローニンゲン大学循環器科のIsabelle C. Van Gelder氏らRACE II試験グループが、600名超を対象に行った多施設共同前向き無作為化試験で明らかにしたもので、NEJM誌2010年4月15日号(オンライン版2010年3月15日号)で発表している。心拍数コントロールは、心房細動治療の選択肢で、ガイドラインでは厳格に行うことを推奨しているが、臨床エビデンスはなかった。心拍数コントロール目標、110拍/分未満群と80拍/分未満群に無作為化し転帰追跡Gelder氏らは、持続性心房細動患者の心血管系疾患の罹患・死亡予防について、心拍数コントロールを緩やかに行った場合でも、厳格に行った場合と比べて劣らないと仮定し試験に臨んだ。RACE II(Rate Control Efficacy in Permanent Atrial Fibrillation: a Comparison between Lenient versus Strict Rate Control II)は、2005年1月~2007年6月にオランダ国内33施設から被験者登録を行い、被験者(80歳以下の持続性心房細動患者614例)を、心拍数コントロールを緩やかに行う群(安静時心拍数110拍/分未満)と、厳格に行う群(同80拍/分未満、中等度運動時は同110拍/分未満)に無作為化し追跡した。主要転帰は、心血管系が原因の死亡と、心不全・脳卒中・全身性塞栓症・出血・致命的な不整脈イベントによる入院の複合。追跡期間は2年以上3年以内とされた。コントロール達成割合、97.7%対67.0%3年時点の主要転帰の推定累積発生率は、緩やかコントロール群12.9%、厳格コントロール群14.9%、絶対差は2.0ポイント(90%信頼区間:-7.6~3.5、事前特定の非劣性限界に対するP

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PCI後の抗血小板併用療法の長期投与のリスクと有効性

現行の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)ガイドラインでは、患者の出血リスクが高くない場合は薬剤溶出ステント挿入後、クロピドグレル(商品名:プラビックス)75mg/日投与を用いた抗血小板併用療法を12ヵ月以上行うべきことを推奨している。しかしその勧告に関するエビデンス(リスクおよび有効性)は明らかでない。韓国・ウルサン大学校循環器科のSeung-Jung Park氏ら研究グループは韓国で行った2つの多施設共同無作為化試験からの結果、併用療法がアスピリン単独療法と比べてイベント抑制効果があるとは言えない結果が得られたと報告した。本論点に関する無作為化試験報告はこれが初めてという。NEJM誌2010年4月15日号(オンライン版2010年3月15日号)より。出血リスクの低い2,701例を、併用療法か単独療法に無作為化研究グループは、REAL-LATE試験とZEST-LATE試験の2つの無作為化試験を行い、その結果データを統合し分析した。両試験には、2007年7月~2008年9月に韓国の22の循環器センターで、重大有害な心臓・脳血管イベントおよび大出血のリスクがない合計2,701例(REAL-LATE試験:1,625例、ZEST-LATE試験:1,076例)が登録された。被験者は、クロピドグレル75mg/日+低用量アスピリン(100~200mg/日)の併用療法群(1,357例)と、低用量アスピリン単独療法群(1,344例)に無作為化され、12ヵ月以上投与を受け追跡された。主要エンドポイントは、心筋梗塞・心臓関連死の複合とされた。イベント単独・複合リスクとも、両群間に有意差認められず追跡期間中央値は、19.2ヵ月。2年時点の主要評価項目の累積リスクは、アスピリン単独療法群1.2%に対し、併用療法群は1.8%だった(ハザード比:1.65、95%信頼区間:0.80~3.36、P=0.17)。心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症、再度の血管再生術、大出血、全死因死亡の各リスクについて、両群間で有意差はなかった。またイベント複合リスクについても有意差は認められなかった。アスピリン単独療法群に比べて併用療法群の、心筋梗塞・脳卒中・全死因死亡の複合リスクは、ハザード比1.73(95%信頼区間:0.99~3.00、P=0.051)、心筋梗塞・脳卒中・心臓関連死の複合リスクは、同1.84(0.99~3.45、P=0.06)。研究グループは、「薬剤溶出ステント挿入患者の心筋梗塞・心臓関連死低減に、12ヵ月以上の抗血小板併用療法の効果が、アスピリン単独療法より有意であることは認められなかった」と結論し、「より大規模な長期無作為化試験での検証が必要」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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職場介入と運動療法の統合的治療、慢性腰痛患者の職場復帰に有効

上司を交えた職場への介入と段階的な運動療法から成る統合的治療プログラムは、慢性腰痛患者の機能障害を軽減し職場復帰に有効なことが、オランダVU大学医療センターのLudeke C Lambeek氏らの検討で示された。慢性腰痛は、臨床的な問題であるとともに心理社会的かつ仕事関連の問題でもある。慢性腰痛の臨床ガイドラインは労働不能(work disability)に焦点を当てているが、通常の腰痛治療はその予防を目的としたものではない。職場の要素をも考慮した介入が、亜急性の腰痛が原因と診断された患者の職場復帰に有効なことが示されているが、慢性腰痛に対する効果を検討した試験はなかったという。BMJ誌2010年4月3日号(オンライン版2010年3月16日号)掲載の報告。通常治療と統合的治療を比較する地域住民ベースの無作為化対照比較試験研究グループは、慢性腰痛患者に対する直接的介入と職場への介入を併用した統合的治療プログラムの効果を評価する地域住民ベースの無作為化対照比較試験を行った。12のプライマリ・ケア施設および5つの2次医療施設から、腰痛のため12週以上患者リストに載っている18~65歳の患者134例が登録され、通常治療群(68例)あるいは統合的治療群(66例)に無作為に割り付けられた。統合的治療とは、上司を交えた参加型人間工学(participatory ergonomics)に基づく職場介入および認知行動学に基づく段階的運動プログラムから成るもの。主要評価項目は、十分に継続可能な職場復帰までの、腰痛による休業期間であり、副次評価項目は疼痛および身体機能の程度とした。職場復帰までの期間が、1年間のフォローアップ期間中に120日も短縮継続可能な職場復帰までの期間(中央値)は、統合治療群が88日と、通常治療群の208日に比べ有意に短縮された(p<0.003)。Kaplan-Meier法による解析では、職場復帰までの期間は統合的治療が有意に優れた(ハザード比:1.9、p=0.004)。12ヵ月後のRoland機能障害質問票による評価では、統合的治療群で身体機能が有意に改善された(p=0.01)。視覚アナログスケールによる疼痛の評価では、両群間に差を認めなかった。著者は、「患者と職場環境に直接介入する統合的治療プログラムは、腰痛による機能障害を私生活および労働生活の双方において実質的に低減した。労働活動への早期復帰は、疼痛には有効でも有害でもなかった」と結論し、「本試験の知見は、疼痛と労働不能とは、別個の治療目標であることを示している」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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DPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」今月にも薬価収載へ(2)

エクアは24時間にわたって90%以上のDPP-4阻害作用を発揮する 2010年1月2日、エクア(一般名:ビルダグリプチン)が承認された。エクアは、食事・運動療法、あるいは食事・運動療法に加え、SU薬を処方しても血糖コントロール不良な2型糖尿病患者に対して、50mgを1日2回、朝夕に処方する。 すでに使用されている他のDPP-4阻害薬は1日1回投与であるが、門脇氏は、エクアは1日2回投与により、24時間以上にわたってDPP-4の活性を阻害していることを示し、それにより、安定してGLP-1の増加を維持していることを報告した。そして、エクア単独投与により、HbA1c値を1.2%改善し(プラセボとの比較)、食後血糖値も有意に改善したと報告した上で、エクアは1日2回投与により、90%以上のDPP-4阻害率を維持した結果、優れた血糖コントロールが得られていると述べた。また、1日1回のDPP-4 阻害薬と比較した臨床試験の成績から、エクアにおいて、食後2時間血糖値およびHbA1c値が低下していたことを報告した。 そして実際には、食事・運動療法を行っても目標値が達成できない場合の第一選択薬になるが、HbA1cが7.5~8.0%を超える患者では、単独投与では難しいため、他剤との併用が必要になると述べた。 また、門脇氏はラットを使った動物実験において、エクアが膵β細胞量を増加させたことを報告し、まだ臨床での成績はないが、エクアを投与することにより、膵β細胞の機能を改善させ、糖尿病の進行を阻止する可能性があると述べた。そして、将来的には、膵β細胞の機能を改善する可能性があるインクレチン関連薬は、発症前の前段階の人に対して、糖尿病発症予防の手段となり得るかを検討する余地があると述べた。SU薬との併用には十分注意を エクアはSU薬との併用が可能となるが、門脇氏は、すでにわが国で使用されているDPP-4阻害薬とSU薬の併用で重症低血糖が10例以上起こっていることを報告し、SU薬と併用する際には、低血糖の発現に十分注意する必要があると述べた。国内で報告されている重症低血糖例については、高用量のSU薬が処方されており、そのほとんどが65歳以上の高齢者であった。併用開始後2~4日後の早い時期に起こり、中には昏睡に至った例も報告されているが、すでに全例回復している。門脇氏は、「SU薬と併用する場合は、低血糖に注意する。生理的機能が低下しており、低血糖症状に気付きにくい高齢者の場合は特に注意する。使用しているSU薬を減量してから併用する(例えばアマリールであれば、2mg/日以下)」と強調した。なお、SU薬とDPP-4阻害薬併用における低血糖については、すでに門脇氏を含む数人の糖尿病専門医により検討が行われており、糖尿病協会および日本医師会を通じてrecommendation/勧告を出しているという。 昨年末から今年初めにかけて、待ち望まれていた全く新しい作用機序の経口血糖降下薬DPP-4阻害薬、そしてGLP-1受容体作動薬がわが国で発売された。エクアが16日付で薬価収載されれば、これで国内2成分目のDPP-4阻害薬となる。 これまでの糖尿病治療薬では、血糖低下作用が強いほど低血糖が発現しやすく、また体重も増加するという課題があった。そのため、DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬は、「(単独投与で)低血糖を起こさず、体重に影響を与えずに、血糖値を下げる」薬剤であることから、発売前から、非常に多くの期待が寄せられていた。また、本記者説明会でも門脇氏が述べているように、インスリン分泌が不良である日本人2型糖尿病ではより効果が得られることから、今後多くの患者に使用されるようになれば、これまでの海外での使用経験の報告では得られなかったより高い有効性の報告も期待できるだろう。 しかし一方で、わが国で多くの患者に使用されているSU薬との併用において、低血糖の発現が報告されている。長期にわたる安全性についても、現在のところ、まだ報告されているものはないが、海外での使用もまだ数年であるため、今後注意していく必要がある。 本説明会の最後に、門脇氏は、「1例1例大事に、安全性に対処しながら育てていきたい」と述べて、説明会を終えた。糖尿病では、個々の患者ごとに病態が異なり、治療法が異なるといっても過言でない。今後、その1例1例が臨床経験として蓄積されていくことで、その薬剤の有意義な使い方が確立されていくと考えられる。

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ACE阻害薬+Ca拮抗薬、高リスク高血圧におけるCKD抑制効果が明らかに:ACCOMPLISH試験2次解析

 ACE阻害薬ベナゼプリル(商品名:チバセンなど)とCa拮抗薬アムロジピン(同:ノルバスク、アムロジンなど)の併用は、心血管疾患のリスクが高い高血圧患者において慢性腎臓病(CKD)の進行の抑制効果が高いことが、アメリカChicago 大学Pritzker医学校のGeorge L Bakris氏らが実施したACCOMPLISH試験の2次解析で明らかとなった。本試験は、主解析でベナゼプリルとアムロジピンの併用が、ベナゼプリルと利尿薬ヒドロクロロチアジド(同:ニュートライドなど)の併用よりも心血管疾患罹患率および死亡率の改善効果が優れることが示されたため、平均フォローアップ期間2.9年の時点で早期中止となっている。進行期腎症ではRA系抑制薬と利尿薬の併用で降圧効果が得られることが多くの試験で示されているが、CKDの進行に対する固定用量による降圧薬併用の効果を検討した試験はないという。Lancet誌2010年4月3日号(オンライン版2010年2月18日号)掲載の報告。CKDの進行を評価する事前に規定された2次解析 ACCOMPLISH試験は高リスク高血圧患者を対象としたプロスペクティブな二重盲検無作為化試験。今回、研究グループは、本試験の事前に規定された2次解析として固定用量のベナゼプリル+アムロジピンとベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドのCKD抑制効果について評価した。 2003年10月~2005年5月までに、5ヵ国(アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド)から心血管イベントのリスクが高い55歳以上の高血圧患者11,506例が登録された。これらの患者が、ベナゼプリル(20mg/日)+アムロジピン群(5mg/日)群(5,744例)あるいはベナゼプリル(20mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日)群(5,762例)に無作為に割り付けられた。 用量は、推奨目標血圧を達成するように、無作為割り付け後1ヵ月が経過して以降は個々の患者の病態に応じて漸増した。事前に規定されたエンドポイントであるCKDの進行は、血清クレアチニン値の2倍化あるいは末期腎不全の発症(推定糸球体濾過率<15mL/分/1.73m2あるいは要透析の診断)と定義した。ACE阻害薬+Ca拮抗薬でCKDの進行が48%抑制 試験終了時点で、143例(1%)のフォローアップが完遂できなかった(ベナゼプリル+アムロジピン群70例、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群73例)。無作為割り付けされたすべての症例がintention-to-treat解析の対象となった。 CKDの進行がみられたのは、ベナゼプリル+アムロジピン群が113例(2.0%)と、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群の215例(3.7%)に比べ有意に低下した(ハザード比:0.52、p<0.0001)。 CKD患者で最も高頻度にみられた有害事象は、末梢浮腫[ベナゼプリル+アムロジピン群33.7%(189/561例)、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群16.0%(85/532例)、p<0.0001]であった。CKD患者における血管浮腫の頻度は、ベナゼプリル+アムロジピン群の方が高かった(1.6% vs. 0.4%、p=0.04)。 非CKD患者では、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群でめまい(20.3% vs. 25.5%、p<0.0001)、低カリウム血症(0.1% vs. 0.3%、p=0.003)、低血圧(2.3% vs. 3.4%、p=0.0005)の頻度が高かった。 著者は、「ベナゼプリル+アムロジピン併用療法は、腎症の進行をより遅らせるため、ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド併用療法よりも優先的に考慮すべきである」と結論し、「これらの併用降圧治療のCKD抑制効果の優劣を確立するには、さらに進行した腎症を対象としたプロスペクティブ試験を行う必要がある」としている。

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前立腺がんへの放射線治療、高用量照射でも長期副作用は標準用量群と同等

限局性前立腺がんへの陽子線・光子線治療は、高用量照射でも、尿や腸、性的機能といった患者報告による長期副作用は、従来照射量の場合と同等のようだ。前立腺がんへの放射線治療では、高用量照射によりがん治療効果は高まるものの、副作用の増加が懸念されていた。米国マサチューセッツ総合病院がんセンターのJames A. Talcott氏らの研究で明らかになったもので、JAMA誌2010年3月17日号で発表した。限局性前立腺がんの患者393人を中央値9.4年追跡同研究グループは、以前に、393人の限局性前立腺がんの患者について、陽子線・光子線治療の照射量70.2Gyと79.2Gyに関する無作為化試験、「Proton Radiation Oncology Group(PROG)9509」を行い、その結果を発表している。PROGの被験者は、病期分類でT1b-T2b、前立腺特異抗原が15ng/mL未満、X線撮影では転移が認められなかった患者だった。その結果は、10年生化学的進行率の予測値は、標準用量群が32%に対し、高用量群は17%と、有意に低率というものだった。今回は、そのPROG被験者のうち280人(83%)に対し、事後横断調査を行い、副作用について比較したもの。追跡期間中央値は、9.4(7.4~12.1)年だった。尿管閉塞や尿失禁、性的機能不全など、両群で有意差なしその結果、患者申告による標準用量群と高用量群の副作用に関するスケールは、それぞれ、尿管閉塞や過敏症が23.3(標準偏差13.7)と24.6(同14.0、p=0.36)、尿失禁が10.6(同17.7)と9.7(同15.8、p=0.99)、腸の障害が7.7(同7.8)と7.9(同9.1、p=0.70)、性的機能不全が68.2(同34.6)と65.9(同34.7、p=0.65)と、いずれも有意差はなかった。一方で、治療後、前立腺がんが制御されていると感じるスコアについては、標準用量群が76.0に対し高用量群が86.2と、有意に高かった(p

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HPVワクチン接種と流産リスクの関連

米国立がん研究所疫学/遺伝学部門のSholom Wacholder氏らは、HPVワクチン接種と流産リスクの関連について検討した無作為化試験の結果、関連について確たるエビデンスは得られなかったことを報告した。BMJ誌2010年3月27日号(オンライン版2010年3月2日号)掲載より。約2万6千例参加の国際的多施設共同無作為化試験データを解析本試験は、2つの多施設共同第III相試験盲検無作為化試験(PATRICIAとCVT)を解析して検討された。PATRICIA試験は複数国から被験者が参加(15~25歳)、CVTはコスタリカで行われた試験(18~25歳)で、両試験合わせて被験者は総計26,130例(15~25歳)だった。被験者は、HPV 16/18 VLPワクチン(AS04アジュバンド)かA型肝炎ワクチン(対照群)を接種される2群に無作為化された。接種は開始時と、1ヵ月目、6ヵ月目に行われ、HPVワクチン群は13,075例、対照群は13,055例だった。参加者のうち、解析対象となった妊娠例は3,599例(HPVワクチン群1,786例、対照群1,813例)。流産とその他の妊娠アウトカムを主要評価項目に解析された。ワクチン接種後3ヵ月以内の妊娠に関する懸念を払拭できず推定流産率は、HPVワクチン群11.5%、対照群10.2%(順列検定P=0.16)。全体として、HPVワクチン群に割り付けられる女性に、流産の有意な増加は認められなかった。しかし、いずれかのワクチン接種後3ヵ月以内に妊娠した人を対象とした副次解析では、流産率は、HPVワクチン群14.7%、対照群9.1%だった。以上から、Wacholder氏は「全体としては流産の有意な増加は認められなかったが、妊娠前3ヵ月以内のワクチン接種のリスク増大の可能性について完全に払拭することができない」として、HPVワクチン接種と流産リスクの関連にエビデンスは認められなかったと結論している。

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無作為化試験の報告論文の質は改善されたか?

英国オックスフォード大学医学統計センターのSally Hopewell氏らは、2001年に出された試験論文の執筆勧告「Consolidated Standards of Reporting Trials(CONSORT)Statement」以後、PubMedで検索される論文の質(無作為化試験の特性および手法)が改善されたかを、2000年と2006年とで比較を行った。結果、重要な方法論の面で改善がみられはしたが、論文の質自体は容認できるレベル以下だったという。BMJ誌2010年3月27日号(オンライン版2010年3月23日号)掲載より。2000年と2006年の発表論文を比較Hopewell氏らは、2000年12月と2006年12月にPubMed検索された主要無作為化試験論文(試験デザインが平行群、交差、クラスタ、要因解析、分割解析など)を対象とした。対象論文を、発表年および試験デザインで階層化し、総合項目(試験デザイン、発表学術誌のタイプ、専門領域、介入タイプ、データ収集サイト数、無作為化群の数、サンプルサイズ)、および方法論的項目(試験タイトルに無作為化が使用されているか、主要評価項目が明確か、サンプルサイズ算出、無作為化の手法、割付法の隠蔽度合い、盲検かどうか、盲検の手法)を主要評価項目とし比較検討された。結果、大部分は、専門誌発表[2000年群:482/519件(93%)vs. 2006年群:555/616件(90%)]の、2群比較[同:379/519(73%) vs. 468/616(76%)]、平行群比較[同:383/519 (74%)vs. 477/616(78%)]の研究論文だった。しかし、2000年、2006年ともに、平行群比較の試験被験者中央値は、80例だった。また、医薬品試験の論文の占める割合は、2000年393/519件(76%)から2006年は356/616(58%)に減っていた。一方で、手術試験論文の割合は増えていた(10% vs. 21%)。なお残る不透明性方法論的側面で改善が認められたのは、主要評価項目の詳細記述(リスク比:1.18、95%信頼区間:1.04~1.33)、サンプルサイズ算出(同:1.66、1.40~1.95)、無作為化の手法(同:1.62、1.32~1.97)、割付法の隠蔽度合い(同:1.40、1.11~1.76)だった。しかし、盲検化については改善したことが認められなかった(同:0.91、0.75~1.10)。以上からHopewell氏は、方法論的な面で改善がみられた部分もあったが、質に関しては改善されているとは言えないと結論。「試験が、どのように設計され、実行されたかの透明性が確保されていなければ、その試験の実効性および有効性を評価することは難しい」とまとめている。

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世界の都市力と比較した東京の医療状況とは?

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は6日、米国 Partnership for New York Cityと共同で、年次レポート「Cities of Opportunity - 世界の都市力比較」を発表した。同レポートでは、世界の産業・金融・文化の中心となる主要21都市について、都市を活性化する主要素(都市力)を、2009年に収集したデータをもとに10の領域・58の指数を用いて分析し、それぞれランキングを公表している。分析の結果、東京は、10の分析領域のうちTransportation and infrastructure (交通・インフラ)が21都市中トップとなり、またHealth, safety and security (健康・安全・治安)、Intellectual capital(知的資本)およびTechnology IQ and innovation (テクノロジー知能指数・技術革新)の3領域において、いずれもトップ3に入る高位置を占めている。Health, safety and security(健康・安全・治安)においては、東京はストックホルムに次いで2位。構成指数のうち、新生児の生存率は21都市中トップ、病院の数や犯罪発生率、政治的・社会的環境面においても上位3位以内に入っている。詳細はプレスリリースへhttp://www.pwcjp.com/news/20100406.html

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XELOX療法が早期結腸がんの術後補助化学療法として欧州で承認

スイス・ロシュ社は3月30日、Xeloda(capecitabine/国内販売名:ゼローダ)とoxaliplatin(国内販売名:エルプラット)の併用(XELOX)療法が早期結腸がん患者の術後補助化学療法として、欧州医薬品庁より承認されたことを発表した。グループ会社である中外製薬が5日に報告した。承認は、手術直後からXELOX療法を受けた患者の無病生存期間が5-fluorouracil/leucovorin(5-FU/LV)療法による治療を受けた患者よりも長いことを示した、ステージIII(早期)の結腸がん患者を対象とした主要な臨床試験の一つであるNO16968(XELOXA)試験の結果に基づいている。XELOX療法を受けた患者の3年無病生存率(DFS)は、5-FU/LV投与群よりも優れていたとのこと(XELOX群の71.0%に対し5-FU/LV群は67.0%、ハザード比0.80、p=0.0045)。欧州での承認に続き、XELOXは世界の他の地域での適応拡大が期待されている。Xelodaの単独療法は既に欧州、米国、日本ならびに世界各国で、結腸がん患者に対する術後補助化学療法として承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.chugai-pharm.co.jp/hc/ss/news/detail/20100405110000.html

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中国で子どもの死亡率が大幅低減、MDG4の達成が明らかに

中国では近年、子どもの死亡率が大幅に低減し、主な死因は肺炎や早産合併症などであり、長期的には先天性異常や偶発事故、乳幼児突然死症候群(SIDS)の重要性が増大すると予測されることが、イギリスEdinburgh大学医学部公衆衛生学センターのIgor Rudan氏らWHO/UNICEFのChild Health Epidemiology Reference Group (CHERG)が実施した調査で明らかとなった。中国政府および国連の公式データによれば、中国では子どもの死亡数の低下が進み、ミレニアム開発目標4(MDG4、乳幼児死亡率の削減)を達成したとされる。しかし、以前に行われた子どもの世界疾病負担に関する調査では中国の情報が十分ではなかったためデータに大きな乖離があるという。Lancet誌2010年3月27日号掲載の報告。中国の一般公開情報を基にした系統的調査CHERGと北京大学の研究グループは、一般に公開された情報を用いて中国における新生児(生後1ヵ月未満)、乳児(1~11ヵ月)、小児(5歳未満)の主要な死亡原因について系統的な調査を行った。中国保健省統計局のウェブサイト、中国学術情報(Chinese National Knowledge Infrastructure; CNKI)データベース、中国保健統計年鑑(1990~2008年)のほか、5歳未満の子どもの死因について中国語で書かれた質の高い地域住民ベースの縦断的研究206論文からも情報を得た。地域、年齢、集団、主要な死因ごとに総死亡数を推算する統計モデルを開発した。子どもの死亡率が大幅に減少、主な死因は肺炎、出生時仮死、早産合併症1990~2008年の間に、生児出生1,000人当たりの死亡数は、新生児が34.0人から10.2人へと70%減少し、乳児は53.5人から14.9人へ72%低下、小児は64.6人から18.5人へ71%低下した。これは、MDG4のターゲット(2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)を満たすものである。2008年の主要な死因は肺炎、出生時仮死、早産合併症であり、それぞれ全死亡の15~17%を占めた。この期間中に死因として先天性異常(11%)および偶発事故(10%)の重要度が増大した。乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生率は5%であった。著者は、「中国の一般に公開されたデータベースは疾病負担を予測する情報として重要である」とし、「傾向としては、早産合併症が中国の子どもの主な死因になると予測されるが、長期的には先天性異常や事故、SIDSによる死亡の重要性が高まると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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関節リウマチにおける抗TNF製剤3剤の直接比較サーベイ

関節リウマチにおける抗TNF製剤、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ3剤の治療反応性、寛解率、およびアドヒアランスのhead to head比較サーベイが報告された。「Arthritis & Rheumatism」誌(2010年1月号)掲載より。本研究は、デンマーク全域における生物学的製剤使用患者のレジストリー、DANBIO(患者登録期間:2000年10月~2007年12月)から、生物学的製剤新規使用患者2,326名を対象とした。投与された生物学的製剤の割合は、アダリムマブ29%、エタネルセプト22%、インフリキシマブ49%であった。患者背景において、性別、年齢、IgM-RF Positive、罹病期間に差はみられなかった。一方、MTXの併用率と用量、プレドニゾロンの併用率と用量は特に差が認められた。MTXの併用率は、アダリムマブ70%、エタネルセプト61%、インフリキシマブ87%であった。MTXの併用量は、アダリムマブ20(12.5-25)mg/週、エタネルセプト15 (12.5-20)mg/週、インフリキシマブ15 (10-20) mg/週であった。プレドニゾロンの併用率は、アダリムマブ40%、エタネルセプト43%、インフリキシマブ50%であった。プレドニゾロンの併用量は、アダリムマブ7.5(5-10)mg/日、エタネルセプト7.5(5-10)mg/日、インフリキシマブ7.5(5-10)mg/日であった。主な結果は以下の通り。 26週後の治療効果達成確率 Odds ratios(95%信頼区間)・アダリムマブvs.インフリキシマブ:ACR70%反応率2.05(1.52-2.76)、ACR50%反応率1.92(1.51-2.44)、Good EULAR反応率2.10(1.66-2.66)、Good/moderate EULAR反応率2.76(2.04-3.74)、DAS寛解1.78(1.37-2.31)、CDAI(Clinical Disease Activity Index)寛解1.83(1.32-2.55)・エタネルセプトvs.インフリキシマブ:ACR70%反応率1.78(1.28-2.50)、ACR50%反応率1.50(1.14-1.96)、Good EULAR反応率1.41(1.09-1.84)、Good/moderate EULAR反応率1.99(1.45-2.72)、DAS寛解1.31(0.97-1.77)、CDAI寛解1.16(0.78-1.72)・アダリムマブvs. エタネルセプト:ACR70%反応率1.15(0.82-1.60)、ACR50%反応率1.28(0.97-1.69)、Good EULAR反応率1.49(1.13-1.96)、Good/moderate EULAR反応率1.39(0.97-2.00)、DAS寛解1.36(1.00-1.84)、CDAI寛解1.58(1.07-2.34) 全投与中止例 Hazard ratios(95%信頼区間)インフリキシマブvs. アダリムマブ: 1.35(1.15-1.58)、インフリキシマブvs. エタネルセプト: 1.98(1.63-2.40)、アダリムマブvs.エタネルセプト:1.47(1.20-1.80)結論としてHetland氏は、「インフリキシマブは最も低い治療反応率、寛解率、アドヒアランスを示し、アダリムマブは最も高い治療反応率と寛解率を示した。また、エタネルセプトは最も長い投与継続率を示した」とまとめている。(ケアネット 呉 晨)

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抗菌薬rifaximin、肝性脳症の治療効果だけでなく予防効果も

肝硬変の合併症である肝性脳症は重篤な意識障害により、患者・家族およびヘルスケアシステムに多大な負担を課すが、吸収率が最小の抗菌薬rifaximinには、肝性脳症の予防効果もあるようだ。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNathan M. Bass氏らが行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果による。同薬についてはこれまで、急性肝性脳症に対する治療効果は、十分実証されていた。NEJM誌2010年3月25日号掲載より。反復性肝性脳症寛解期の患者299例を、rifaximin投与群とプラセボに無作為化試験は、慢性肝疾患による反復性肝性脳症が寛解期の患者299例を対象に行われた。被験者は6ヵ月間にわたり、rifaximin(550mgを1日2回)投与群(140例)と、プラセボ投与群(159例)に無作為に割り付けられ追跡された。有効性の主要エンドポイントは、肝性脳症と診断された初回発症までの期間とし、主要な副次エンドポイントは、肝性脳症に関連する初回入院までの期間とされた。rifaximin投与群の方が、エピソード、入院リスクとも半減6ヵ月超期間中、rifaximin投与群はプラセボと比較して、肝性脳症エピソードのリスクが有意に低かった。rifaximin投与群のハザード比は0.42(95%信頼区間:0.28~0.64、P

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肥満と飲酒は相乗的に肝疾患リスクを増大する

アルコール消費量とBMIは、相乗的に肝疾患リスクを増大するようだ。英国グラスゴー大学地域医療部門公衆衛生・ヘルス政策のCarole L Hart氏らが1万人近いスコットランド人男性が参加した2つの前向きコホート試験データを解析し、報告した。BMJ誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月11日号)掲載より。平均47歳スコットランド人男性1万弱を29年追跡解析が行われたのは、男性9,559例(平均年齢47.3±9.55歳)が参加した「Midspan」と呼ばれる2つの前向きコホート試験。1つ目の「Main」試験は、1965~1968年にスコットランド中心地帯の職場、タイリー島および本島の住民が参加し行われた(参加者年齢:14~92歳)。2つ目は「Collaborative」試験で、1970~1973年にグラスゴー、クライドバンク、グランジマウスにある27の職場から参加者が集められ行われた(同:21~75歳)。両試験参加者は2007年12月31日まで、平均29年(範囲:0.13~42年)追跡された。参加者は、BMI値(25未満:やせ/標準体重、25~<30:過体重、≧30:肥満)と、アルコール消費量(非飲酒、1~14、≧15単位/週;1単位はビール1/2本)で、9グループに振り分けられ、肝疾患罹患率、死亡率について検討された。BMIとアルコール消費量とも数値が高い人ほどリスク増主因が肝疾患だった死亡は80例(0.8%)、原因を問わない肝疾患死亡は146例(1.5%)だった。「Collaborative」試験では、196例(3.3%)が、肝疾患による死亡、入院またはがんだった。BMI(P=0.001)とアルコール消費量(P

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准教授 平山陽示先生の答え

紹介の仕方について診断がつかない患者を紹介する時に、受け入れる側としてはどの様な紹介のされ方が好ましいでしょうか?診断がつかないので、当然、検査結果に異常見られないケースが多いです。その様な場合に、どんな情報を付与すれば良いのか悩んでおります。診断がつかない患者の場合、病歴・身体所見・検査所見から、再度、鑑別疾患を挙げることから考えることになると思います。その際には稀な疾患も考慮しなければなりません。我々の診療科では、悩む症例を夕方のミーティングでプレゼンテーションして、皆で鑑別疾患を考え、追加検査について話し合ったりします。ですから、紹介して下さった先生が、たとえ陰性所見であっても、その検査が陰性であったのでこの疾患は考えにくいとか、あるいはどのような身体所見がなかったからこの疾患が否定的であったとかが判ると役に立ちます。大学病院を怖がる患者とのコミュニケーションについて田舎でクリニックをしております。高齢者ばかりの土地なので大学病院を紹介するというだけで大騒ぎ。ましてや、ここでは診断がつかないので総合診療科を紹介するとなると、あたかも死の宣告を受けたかのように萎縮してしまいます。先生の記事を拝見すると、患者さんとのコミュニケーションについても研究されているとのことなので、何か良いアドバイスがありましたら教えて頂きたく思います。この場合、大学病院に紹介して精査をしたほうが良いと考えるのが医師の解釈モデルであり、その際は何かしらの鑑別疾患が念頭にあるのでしょう。一方、精査の必要はないと考えるのが患者さんの解釈モデルです。患者さんは大した病気だと考えていないのかもしれないし、あるいは悪い病気と考えていて、大学病院の検査で苦しい思いをするよりも静かに家で最期を迎えたいと考えているのかもしれません。いろいろな解釈モデルがあり得ます。医療面接が患者の解釈モデルと医師の解釈モデルを付け合せる場であることからすれば、患者は何を心配しているのか、その症状の原因を何だと考えているのか、そのためにどんな検査を希望しているのかという情報を患者さんから得ることが大切と考えています。そして患者さんの解釈モデルと医師の解釈モデルが異なるときには、患者さんが心配している病気だとすると、どこがどう合わないのかを説明してあげることが重要です。忙しい外来でそのように対処する時間はないかもしれませんが、医師が患者さんとの医療面接において、少なくともこの解釈モデルを意識して接していることは重要なことのひとつです。大学病院と聞くだけで"怖い"と思ってしまう理由が判れば、それについての話し合いも出来ると思います。大学病院に行かせる行かせないの議論をしていると不毛に終わることも多く、患者さんからすると「あの医者は私の話を聴いてくれない」などとなってしまいます。医師の思ったとおりに患者が行動してくれないときこそ、患者さんの解釈モデルは何であるのかを確認することが大切です。糖尿病初期患者の扱いについて東医大さんの総合診療科では、糖尿病初期患者の扱いをどうされているのか教えて下さい。実は当院にも総合診療を担当する科と糖尿を扱う科があるのですが、専門医に初期患者まで担当させるとバンクしてしまうのが実情です。現在は食事療法が中心の初期患者は総合診療担当医と栄養士レベルで対応しています。しかし患者さんの中には通院する科が糖尿でないことに不安を持つ方も少なくありません。キャパを超えたら東医大のような大きい病院を紹介するべきなのでしょうか。お知恵を頂ければ幸いです。現在、当科では糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の初期患者については出来るだけ近医を紹介するように努めていますが、どうしても本院に通院希望の患者さんだけ専門医に回しています。当科で抱えることは原則しておりません。大学病院の場合は軽症患者であっても、ある研究や治験が進行していることがあるので、必ずしも専門医が嫌がるわけではないようです。それよりも当科において、慢性疾患を抱えないために、後期研修医たちが慢性疾患患者と長期間にわたって関係していく経験を積ませることができないのが悩みとなっています。その意味では、将来的に当科のスペースと人的資源が大きくなれば、貴院のように初期患者や軽症患者を抱えるほうが教育的には良いと考えています。一方、通院患者さんの中に糖尿病専門医でないと不安だという場合は、やはり専門医に紹介するしかないと思います。ただ、そういう軽症患者さんの場合は、専門医に紹介する基準をあらかじめ示しておくと安心される方がおられます。例えば、HbA1cが6.5を超えたら臓器障害の進行がより進むので、そのときは専門医に回ってもらいますとか、何かしらの糖尿病合併症が認められたら専門外来に行ってもらいますというような基準です。MUSの患者さんの対応 どうすれば安心するのか?記事の中にMUSの患者さんが多いことに触れていましたが、当院でも同じことが言えます。明らかに疾患ではない方もいらっしゃいますが、このような場合、どうやって安心させてあげれば良いのか暗中模索状態です。何か対応のポイントがあれば御教授下さい。非常に難しい内容の事柄です。Up To Dateには一応MUSのアプローチについての記載がありますが、日本と欧米で異なるかもしれません。私は、日本におけるMUSの一番の問題は、患者さんが「病気がないと症状はない」と固く信じていることにあると考えています。ですから、身体疾患が否定されたときに患者さんは、「このような症状があるのに病気がないわけはない」と考えてしまうわけです。そして医師もそのように考えてしまうと、患者への説明が不誠実になってしまい、医師患者関係がぎくしゃくしてしまいまいます。現実には明確な疾患が認められなくても症状が出現することは良くあるわけで、昔から症状を利用した表現もあるくらいです。大きな悩みを抱えたときに「頭が痛い」「胃が痛い」「目が回る」とか、借金をして「首が回らない」とか、悲しい話で「胸が痛む」などです。呑めない話(承諾できない話)を提示されて「物を飲み込むときにつかえる」ことも良くあります。もちろん疾患が100%ないと断言できることも難しいので、私が注意していることは、(1)決して症状を否定しない(共感を示す)、(2)疾患がなくても症状がでることは良くあることを説明する(データがあれば示す;何割は原因不明など)、(3)現時点では疾患が見つかっていないが、疾患は時間が経過してから発見されることがあるので、症状があまりにも改善しないか、悪化するときには再診するよう促すなどです。心身相関についてはまだまだわからないことが多く、もっともっと研究が進めばよいと思っています。他大学病院との違いは?大学病院の総合診療科が縮小・廃止傾向と聞きました。東京医科大学病院さんでは、上手く運営されているようですが、縮小・廃止になる大学病院とどのような違いがあるのでしょうか。また、順調に運営するために注力している取組等があれば教えて頂きたいと思います。宜しくお願いします。大学病院大学病院は全国的に見るとまだまだ敷居が高いようですが、東京医科大学病院は近隣に他の大学病院や大病院が散在しているのと、地下鉄の駅とほぼ直結しているなどの利便性も影響してか、大学病院としては非常に多くの患者さんが気軽に受診されるようです。紹介状がなく、受診科が明らかでない患者さんと、臓器別専門科の依頼患者さんを診察しているのですが、1日60名ほどの患者さんが総合診療科を受診しています。このように患者数に恵まれているのに加えて、臨床研修医が毎年40名以上採用できていること、病院執行部が支えてくれており、私が卒後臨床研修センターの副センター長を兼任したり、研修プログラム責任者を務めていたりして、卒後臨床研修センターとの極めて密度の濃い連携が保たれていることなども理由として挙げられると思います。卒後臨床研修センターが主催して指導医のための教育ワークショップや後期研修医のための教育ワークショップを開催したり、研修医を対象としたセミナーや手技研修をしたりして、総合診療科が指導医育成や研修医教育をしっかりと行うことで、他科から総合診療科の存在価値が認められつつあることもあるかと思います。また、ほとんどの大学病院の総合診療科は病院の1診療部門にしか過ぎず、大学の講座との関係は薄いことが多く立場が弱いのではないでしょうか。その点、当科の大滝教授が医学教育講座の主任教授に就任したことも大きな要素であると思います。標榜科目せっかくの専門医も患者さんに向けて案内が出来ないと理解が進まない部分があると思います。そのためには標榜科目に総合診療科が入るなども必要かと思いますが、その点はいかがでしょうか。医学の進歩に伴い、診療科が細分化された今、おっしゃるように総合診療科が正式な標榜科目に入る必要があると私も考えます。厚労省とプライマリ・ケア関連学会と医師会との協議が進めば、将来的にはその方向で進むのではないでしょうか。ただし、現時点では総合診療科と言っても、内科系の総合診療のみで、外傷を扱っていない当院のような場合から、外傷はもちろん、簡単な手術まで行う総合診療科もあります。また、救急と一緒になって三次救急まで扱う総合診療科まであるなど、プライマリ・ケアの守備範囲が定まっていないため、もう少し時間が掛かるかもしれません。紹介患者の疾患他院から紹介されてくる患者さんですが、結果的にどんな疾患が多いのでしょうか?我々開業医が、どの様な疾患を見落としがちなのかが気になっています。大学病院の総合診療科という性質上、他院からの紹介患者さんに限れば、やはり不明熱などの発熱精査の患者が最も多いですが、それ以外は多岐にわたります。開業医が見落としがちな疾患が特にあるとは思えませんが、一般的に、発熱の患者に関して言えば、安易に抗生物質を使用されるために、感染性心内膜炎をはじめとした菌血症患者の菌の同定が遅れることがあります。過去の医学部の授業は症候学や診断学に乏しく、我々は診断方法を実践の中で習得してきました。最近では学生や研修医たちには症状と身体所見の段階で出来る限り多くの鑑別疾患を挙げさせ、それらを鑑別するためにはどのような身体所見を取ればいいのか、どの検査を出すべきなのかを考えさせるようにしています。近年、このような診断推論の本も増えてきましたので、一読してみてください。外科系から総合医への道について現在医学部に通っている者です。親が病院を経営しておりますので将来的には継ぐ予定です。病院は200床弱の病院です。自分としては外科系に興味を持っていますが、病院の実情を見ると総合診療医になる必要を感じております。先生は元々循環器内科医を20年経験して総合診療医の道に進まれたとのことですが、外科系を専門とする医師が総合医になるケースもあるでしょうか?進路相談になって申し訳ありませんが、お教え下さい。もちろん外科系の専門医が総合診療医に進むこともめずらしくはありません。当科にも外科系に進まれたあとの医師がいます。また、当院では外傷を扱ってはいませんが、本来、プライマリ・ケアの守備範囲には小外科も含まれるはずですし、虫垂炎やヘルニアなどの手術を行っている総合診療科もあります。現在、東京医科大学病院では、生涯教育センター部門を設置し、大学を辞める前に総合診療科などで研修できる体制作りに着手しています。たとえ呼吸器外科医であったとしても、開業するとなれば、ほぼ内科中心でしょうから、総合診療科でしばらく研修すれば役立ちます。現在の初期研修は2年間でプライマリ・ケアの習得をするわけですから、君たちの時代は外科に進んだ後に総合診療医になるのは今までよりも楽になると思います。ですから安心して2年間の初期研修後に外科系に進んでください。総合診療科を希望する理由本文中に「後期研修で総合診療科を希望する人が増えてきており」とありましたが、その方々は開業医を目指すドクターでしょうか?私も総合診療医をもっと増やさないと、地域医療が持たないと考えている方です。しかし、今総合診療医を目指す研修医は、果たして「総合診療医」として大学病院や地方の総合病院で活躍することを目指しているのか?または単に「開業や継承」するために総合診療医のスキルが必要と考えているだけなのか?疑問に思っております。私の立場では、総合診療科で後期研修を行うドクターの本音を伺う術がないので是非お聞きしたいと考えております。現在、当科に入ってくる後期研修医の目指している医師像は多彩です。家庭医を目指す者、病院勤務医(ホスピタリスト)を目指す者、大学で医学教育・研究を目指す者、海外での医療協力を目指す者などです。皆、ジェネラリストであることには変わりありませんが、目標が異なるため、彼らの研修プログラムはそれぞれ異なります。特に家庭医を目指す者は家庭医療学会専門医のプログラムに則っているため、地域での研修が長くなっており、大学病院内で働く期間が短い傾向があります。海外協力を目指していた者は我々の後期を終えた後に長崎大学の熱帯医学研究所に進み、年内には海外に派遣されるそうです。また、ある後期研修医は女性外来を担当する医師になるため、当科で内科認定医を取得し、次に産婦人科専門医を取得すべく他施設ですが、産婦人科の後期研修医になっています。また、親の開業を継ぐことを目標としている後期研修医も、臓器専門医になることをきらって当科に来たのですが、内視鏡やエコーを習い、小児科もしっかりと学びたいと言っています。実際、米国では内科―小児科コースがあるそうです。最近、当院の小児科から後期研修医の中で、小児科専門医を取得後に総合診療科で研修したい者がいるとの相談も受けており、今後は総合診療科と小児科の連携が強まりそうです。いずれにしろ、今までの大学病院の医局・講座制では彼らの要求は満たされず、総合診療科の存在意義があると思っています。専門医とのコミュニケーションについて専門医とのコミュニケーションについて工夫されているようですが、取組方についてもう少し具体的にご教授願えないでしょうか。実は、私もその点について大変苦労しており、特に目上のドクターには何も言えない状況です。同僚の中にも専門医とのコミュニケーションの難しさから総合診療科を離れていくドクターが出てきております。何かしらアドバイス頂けたら幸いです。これが一番難しいですね。この問題を抱えていない総合診療科は皆無ではないでしょうか?当科でも、医局員から他科とのコミュニケーションに関する文句はよく聞きます。正直言って妙案があるわけではありません。とにかく当科からの基本的姿勢は「押し付け」ではなく専門医に「お願い」しているということです。我々は専門医が診るべき疾患だと考えていても、専門医側がcommon diseaseだと考えて「これぐらいは総合診療科で診ろ」という態度を取ると当科で診ざるを得なくなります。しかし、総合診療科がすべての専門医を抱えているわけではありませんので、患者さんが重症化したときに困るわけです。従って、私たちは疾患が明らかとなったにも関わらず、臓器別診療科が引き取らないときは、必ずミット(併科または兼科のこと)になって一緒に診てもらいます。そうすると治療がうまく行かないときには取ってくれることが多いです。彼らが併診すらしないときは、不本意ですが、併診しない診療科のトップと話し合わなければなりません。私も数回そのような話し合いをしたことがありますが、そのときは必ず臓器別診療科に転科となります。だいたい患者さんは「何科」に入院したのではなく、「何病院」に入院するのですから、専門医が診てくれなくて困るのは患者さんであり、それは医療安全の観点からも問題だということを理解してもらうようにしています。病院執行部と安全管理室は総合診療科に好意的であることが多いので、そのあたりをうまく利用してもいいと思います(ちなみに私は安全管理室の副室長でもあります)。しかし、我々が何でも押し付けるのではなく、出来る限り診るという姿勢がないと彼らの反感を買うばかりとなってしまうので注意が必要です。准教授 平山陽示先生「全人的医療への入り口」

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准教授 小早川信一郎先生の答え

アトピー性白内障手術時の注意点まだまだ駆け出しの眼科医なので、初歩的な質問で失礼します。アドピー性白内障手術の場合、網膜剥離を併発している可能性も念頭に入れて手術を行うことを指導されました。このような場合、小早川先生が特に意識していることや注意していること等がありましたら教えて頂きたく存じます。(1)術前に眼底が全く観察できない程度に白内障が進行していた場合、術前の超音波検査はもちろんですが、術中に網膜剥離の有無を直接観察することになると思います。私は術中に発見したことはありませんが、術後すぐに(1週間以内)剥離を起こされたことが出張中にありました。(2)手術においては、極力大きめのCCC(5.5-6ミリ程度)を狙います。レンズ選択は以前、PMMAでしたが、今はアクリルを入れています。1P、3Pは問いません。(3)若い方が当然多いので縫合します。私はすべての症例で基本的に上方強角膜切開、輪部後方からトンネルを1.5ミリ程度作成していますので、縫合は容易です。結膜は縫合したりしなかったりですが、終了時にうまく元に戻らなければ縫合します。(4)術前ムンテラはRDの話もします。(5)硝子体脱出は極力避けてください。脱出したらたぶん剥がれます。(6)予想外に炎症が強い時があります。そういう時はステロイドを点滴します(リンデロン4ミリ相当を2-3日間)。基本、入院して頂いています。眼内炎を疑うほどの炎症は経験ありません。加齢黄斑変性の研究動向加齢黄斑変性の治療方法についての最近の動向など、御存知でしたら教えて下さい。滲出型の場合は、第一選択ルセンティス、第二選択マクジェンを月一で3回投与し、経過を見て追加、維持療法が基本ではないでしょうか。蛍光眼底造影(必要ならICG造影)は必須と思います。OCTは治療効果判定に有用ですが、なくても視力やアムスラーチャートなどで大体把握できます。ドライタイプにアバスチンを試しましたが、効果はありませんでした。ドライタイプの方には、希望があればルセンティスをやっていますが、効果がない場合がほとんどなので、その時点でムンテラして止めています。レーザーは最近やっていません。レーザーはアーケード内ですと、暗点が出たり自覚的な見え方の質の低下を経験しています。硝子体手術は出血がなければしません。高齢者に手術を勧めるべきか在宅をやっている開業医です。白内障と思われる高齢者の方を見かけますが、90歳や100歳になる高齢者の方の場合、ご家族の心配もあり、白内障の手術を勧めるべきかどうか、よく悩みます。その辺の考え方を教えていただければと思います。3年ほど前までは、85歳以上の方の時は手術については積極的に勧めませんでした。もちろん過熟白内障の時はします。緑内障になるからです。最近は85歳以上の元気な方が増えてきて、本人の希望があり、家族も希望していればします。ただし、ムンテラとして、破嚢や核落下のリスクが上がること、感染リスクも高いこと、は必ず言います。それほど黄ばみの強くない核白内障であれば、たぶん勧めませんし、家族がやってくれと言っても最初は乗り気でない姿勢をみせます。90歳代は経験ありますが、100歳の方は手術の経験がありません。チン小体脆弱、前部硝子体膜剥離がある、は予測して手術に入ります。中には60-70代と変わらない方もいますが、弱い方がやはり多いと思います。また、きちんと手術が終了しても、0.7程度にとどまる方が多く、1.0はあまりいない印象です。レンズを選ぶ眼内レンズの種類が増えるにつれ治療後にピントが合わずに再手術をすることになる例が出ております。大森病院さんでは、レンズを選ぶ際の注意点、できれば個人の感覚に頼るのものではなく、科としてのガイドラインの様なものがあれば教えて頂きたいと思います。(1)-3.0D以上の近視がある方を除いて、基本的には-0.5から0Dを狙っています。乱視が強い場合、最近はトーリックです。以前は乱視の分を考慮して、少しプラス気味に球面を狙ったりして、等価球面ができるだけ-0.5から0程度になるようにしています。(2)中等度から高度近視の方の場合、コンタクトをしていて老眼鏡を使用という方は(1)と同じく狙います。(3)中等度から高度近視の方で術前眼鏡使用の場合、患者さんとお話をして、-2.5から3程度に等価球面がいくように選択します。必ずピントが合う距離が今よりも遠くなることをお話します。(4)(2)や(3)のような近視の方はメガネの必要性をお話しています。(5)一般の患者さんに多焦点の話はしていますが、自費で36万円ということを話すとその時点であきらめる方が多いです。ただ、考えてくると言った方の場合、一度手術の予約のみ取って、日を変えて多焦点IOLのお話を再度しています。乱視適応は原則1D以内です。80歳以上の方には積極的に勧めていません。(6)トーリックは、乱視が強いのでそれも少し治るようなIOLを入れますとだけ言い、過剰な期待は抱かせないようにしています。適応は積極的にしており、1D以上角膜乱視があればトーリックです。術後感染症差し支えなければ、眼科手術の術後感染症を防ぐために行っている貴院ならではの取組、工夫をご教授下さい。(1)術前に結膜嚢培養(2)(1)で腸球菌、MRSAが出たら告知して術前に抗菌薬点眼処方(3)全例、極力、術3日前からの抗菌薬点眼(クラビッド)(4)皮膚消毒したあと1分間放置(5)穴あきドレープをかけて洗眼したあともう一度露出した皮膚を消毒。(6)30秒間放置して、テガタームなどを皮膚に貼り付け、開瞼器をかける術後は極力(主治医が診察できない場合もあるので)、当日より眼帯を外して抗菌薬点眼を開始する。こんな感じです。糖尿病専門医との連携について眼科をやっている者です。糖尿病専門医との連携で気をつけているポイントがあれば教えて下さい。どこも同じ状況だとは思いますが、糖尿病白内障や糖尿病網膜症の患者さんが増えてきたため血糖コントロールなど、糖尿病専門医と連携をとる機会が増えてきました。宜しくお願いします。白内障は急ぎませんが、網膜症の場合、特に硝子体手術が必要な程度まで進行している場合は連携が必要と思います。急ぎでオペの時は、コントロールしながら、というスタイルとなります。どのぐらい急ぎなのか、をはっきり伝え、手術までの時間にレーザーは1週間に2回程度、同じ眼でもかけています。血糖コントロールを高めに、とか低めにとかそのような指示はしません。こちらの状況をはっきり伝えるのみです。コントロールは程ほどで手術に入るか、コントロール後手術なのかは一度話し合いを持たれた方がよいとおもいます。白内障手術前に行うリスク説明時に、何か工夫をされていることあればお教え下さい。実は最近、テレビや雑誌の影響なのか、「白内障手術は気軽で簡単!」「術後は、メガネなしで若い頃の視力が手に入る(レーシックと勘違いしているのでしょうか?)」とのイメージを持つ患者さんが増えてきたと感じます。このような場合、手術前にいくらリスクを説明しても、この先入観が邪魔しリスク内容を安易に捉えられてしまっているように感じます。実際、昔と比べて、術後に「こんなはずでは!」とのクレームが多くなったと感じます。小早川先生が術前のリスク説明時に何か工夫されていることがあれば是非教えて下さい。過度な期待は抱かせない、ということに留意はしています。ただし、眼内炎や核落下について必要以上にムンテラすることは避けています。手術ですからやってみるまでは分からない、という話もします。術者の技量、土地柄も影響していると思います。また特別な症例、水晶体揺れている、90歳以上、mature、ぶどう膜炎、などは自分でムンテラしています。通常の症例は主治医にお願いしています(白内障は入院ですので主治医が付きますので)。CCCのコツを伝授下さい先生も書いておられるように、手術時は局所麻酔で行うことが多く、こちらの動きが患者さんに伝わってしまいます。特に、CCCが上手く行かなかった時には大変焦ってしまい、「絶対患者さんが不安に思っているな。」と感じることがあります。上級医から、学会時に小早川先生からCCCでトラぶった時の対処方法を教えて頂いたと聞きました。もし宜しければそれを伝授願えないでしょうか。宜しくお願いします。(1)道具にこだわる セッシの積極的使用、いろいろなセッシを試してみる、針にこだわらない、(2)顕微鏡にこだわる ツァイスの一番新しいモデル、ルメラは見えます。視野の中心で見ることも忘れない(3)ビスコにこだわる ヒーロンVをすすめています。(4)染色 僕自身はめったにしませんが、見えなければ積極的に染めてもらっています。第一に前嚢が見えているかの確認です。次にヒーロンVを使用して確実に前房深度を保ちます。道具を厳選し、確実に前嚢を把持することに努めます。後は豚眼の練習通り、進めていきます。もし流れたらですが、下方で流れたら観音開きになるように逆回しでつなげるか、針を細かく動かしてカンオープナーにするか、を考えます。手前で流れたら、余分な前嚢を切除した後、前房虚脱に注意してオペを進めます。切開創の構築についてもセッシ使用の場合など考慮すべきでしょう。基本的には流さないように万全の準備をしてオペに臨み、流れたら、成書のごとく対処していくという指導をしています。糖尿病患者を診て頂く場合の注意点内科医です。糖尿病患者を眼科の先生に受診させる場合、どのような点に注意すべきでしょうか。また、東邦大学で内科・眼科の連携の際には、網膜症の分類をどのように使い分けていらっしゃいますか。白内障に関する質問でなくて恐縮ですが、よろしくお願いいたします。(1)血糖値、A1Cあたりがあれば十分と思います。通院歴がまじめ、ふまじめといった情報はさらにありがたいと思います。(2)網膜症は福田分類を使っています。AとBで大別し、レーザー治療は済でもう枯れてきた網膜症である、といった情報は内科に提供しています。逆に手術を急ぐべき、といったときはその旨明記します。コントロールについては原則お任せしています。海外留学について先生の記事、興味深く読ませて頂きました。現在初期研修中ですが、私も是非先生の様に研究発表もできる眼科医を目指したいと思っております。先生のプロフィールにも海外留学されたとありますが、やはり、基礎を習得するためには海外留学が必要なのでしょうか?症例の質問ではなくて恐縮ですが、実際に眼科の第一線で活躍されていて論文や発表も数多く出されている先生に伺う機会がないので教えて頂ければと願っています。また、大森病院のホームページには「積極的に海外留学も行えるようにしています。」とありましたが、具体的にどの様な支援をされていて、どの程度の方々が支援を受けているのでしょうか?色々と質問して申し訳ありませんがよろしくお願いします。海外留学で一番学んだことは問題解決能力でした。自分で解決する、その選択肢を多く持ったことです。基礎を習得するのは国内でも十分と思います。私は、知り合いの先生がいる微生物の教室で、実験をさせて頂いておりました。その後、眼内炎がやりたくなって、留学いたしました。日本でも実験はできますが、教室の垣根や動物センターの規約など、面倒くさいことが多いです。その点、システムがすでに出来上がったラボではそういった根回しにあまり力を入れなくて済みますので楽と思います。自分のやりたい研究ができる環境がアメリカだったとそのように考えてます。研究には臨床のような研修プログラムがなく、やりたい人間ができるようになればよい、というスタンスが多いと思います。もし、本気で考えていらっしゃるなら大学院という選択がよいと思います。眼内レンズの解析、微量検体の測定など、実験系を組むと費用がかかるものは企業のものも積極的に使用しています。SRL等、結構やってくれますし、仲良くなると研究員の方とお話しできることもあります。眼内レンズの解析は、旧メニコンにお願いすることも多いです。最近では電顕写真を外にお願いしたりもしています。わたくしたちの医局では、例えば大阪大学のように常に誰かがどこかに留学している状況ではないですから、留学希望者が順番待ちしているといったことはありません。研究が好きな人間や大学院生を中心に海外学会に連れて行って、雰囲気を味合わせ、少しやる気がある人に対しては、僕がもといたラボに連れて行って、ボスと話をさせたりします。で、行きたいとの希望が出れば、医局長に話をして人事面で考慮をしていくという状況です。僕は微生物でしたので、感染症のテーマでよいという人間を連れて出ています。東邦大学には給費留学制度(留学中助教の給料が保証)がありますので、教授とも話をしながら進めます。僕がもといたラボに行った人間はうちの医局からはまだいませんが、来年あたりに一人出せるかもしれない状況に来ています。海外留学は医局の責任者と十分に話し合い、穏便に行ける環境を作り、経済的な問題を解決してからが一番と思います。教室によっては定期的に人を出すシステムが作られているところもあるでしょうが、我々はまだまだです。なかなか、帝大クラスのようなシステムには到達できません。准教授 小早川信一郎先生「白内障手術の光と影」

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症候性頸動脈狭窄、ステント留置術は時期尚早?:ICSS試験

手術適応の症候性の頸動脈狭窄に対する第一選択治療は、現時点では頸動脈内膜切除術(CEA)とすべきことが、英国University College London神経学研究所のMartin M Brown氏らが進めている無作為化試験(ICSS試験、http://www.cavatas.com/)の中間解析で示された。CAVATAS試験では血管内治療(ステント使用/非使用の血管形成術)が有用な可能性が示唆されたが、CEAの主要な合併症(脳神経傷害、重度血腫)は回避しうるものの術後30日以内の脳卒中/死亡の発生率はいずれの治療でも高かった。また、SPACE試験ではCEAに対する頸動脈ステント留置術(CAS)の非劣性が示せず、EVA-3S試験では周術期の脳卒中/死亡の発生率がCASよりもCEAで有意に低かったため、いずれの試験も早期中止となっている。Lancet誌2010年3月20日号(オンライン版2010年2月26日号)掲載の報告。安全性に関する中間解析ICSS(International Carotid Stenting Study)試験の研究グループは、CASとCEAの有用性を比較する国際的な多施設共同無作為化対照比較試験を進めており、今回の中間解析では安全性に関する結果を報告した。症候性の頸動脈狭窄の患者が、CASあるいはCEAを施行する群に無作為に割り付けられた。治療割り付け情報は患者、研究者ともにマスクされず、患者のフォローアップは治療に直接には関与しなかった医師が独立に行った。主要評価項目は術後3年間における致死的あるいは廃疾性の脳卒中(disabling stroke)の発生率であり、現時点では解析結果は出ていない。安全性に関する中間解析の主要評価項目は、術後120日間における脳卒中、死亡、治療関連心筋梗塞の発生率であった。安全性の主要評価項目、CAS群8.5%、CEA群5.2%で有意差あり2001年5月~2008年10月までに、ヨーロッパ、オセアニア、カナダの50施設から1,713例が登録され、CAS群に855例が、CEA群には858例が割り付けられた。割り付け直後に試験を中止した3例(CAS群:2例、CEA群:1例)はintention-to-treat解析には含めなかった。無作為割り付け後120日までの死亡および廃疾性脳卒中の発生率は、CAS群が4.0%(34例)、CEA群は27例(3.2%)であり、両群間に有意な差はなかった(ハザード比:1.28、95%信頼区間:0.77~2.11)。120日までの脳卒中、死亡、治療関連心筋梗塞の発生率は、CAS群が8.5%(72例)、CEA群は5.2%(44例)であり、CAS群で有意に高かった(ハザード比:1.69、95%信頼区間:1.16~2.45、p=0.006)。脳卒中はCAS群65例、CEA群35例(ハザード比:1.92、95%信頼区間:1.27~2.89)、全死亡はそれぞれ19例、7例(ハザード比:2.76、95%信頼区間:1.16~6.56)にみられ、いずれもCAS群で有意に多かった。治療関連心筋梗塞は、CAS群で3例にみられすべて死亡したのに対し、CEA群で認めた4例はいずれも非致死的であった。脳神経麻痺は、CAS群では1例のみであったが、CEA群では45例に認めた。血腫の頻度も、それぞれ31例、50例と、CAS群で有意に少なかった(p=0.0197)。これらの結果により、著者は「頸動脈内膜切除術との比較における頸動脈ステント留置術の有用性を確立するには、長期のフォローアップを完遂する必要がある」とし、「それまでは、手術適応の症候性頸動脈狭窄患者に対する治療としては頸動脈内膜切除術を選択すべきである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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