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小児重症肺炎、地域の女性医療ワーカーによる診断と抗菌薬投与が有効

パキスタン農村部地域の女性医療ワーカー(LHW)は、小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、十分な役割を果たし得ることが、パキスタン・Aga Khan大学のSajid Soofi氏らの調査で示された。肺炎は世界的に5歳未満の小児の主要な罹病および死亡の原因である。パキスタンでは、肺炎による死亡率は都市部に比べ医療施設が少ない農村部で高く、自宅で死亡する患児が多いという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。女性医療ワーカーによる重症肺炎管理の有用性を評価研究グループは、重症肺炎の管理において、地域の医療従事者による経口抗菌薬投与が小児の自宅での死亡率の抑制に有効か否かを検証するために、パキスタン・シンド州の農村地域であるMatiari地区でクラスター無作為化試験を実施した。地域の女性医療ワーカー(LHW)が、肺炎(WHO定義)が疑われる介入群の小児のスクリーニングを行い、重症肺炎と診断した小児には自宅でアモキシシリンシロップ(90mg/kg、1日2回;商品名:クラバモックス)を5日間経口投与した。対照群の小児には、コトリモキサゾール(ST合剤)を1回経口投与したうえで、近隣の医療施設に入院させて抗菌薬を静注投与した。両群ともに、第2、3、6、14日目にLHWが小児の自宅を訪問してフォローアップを行った。主要評価項目は、登録後6日目までに発生した治療不成功とした。18の地区(クラスター)を介入群あるいは対照群に無作為に割り付けた。治療不成功率:介入群8%、対照群13%2008年2月13日~2010年3月15日までに、生後2~59ヵ月の小児が登録された。介入群は2,341例(年齢中央値13ヵ月、男児56%)が、対照群は2,069例(同:10ヵ月、55%)が解析の対象となった。治療不成功率は、介入群が8%(187/2,341例)、対照群は13%(273/2,069例)だった。調整済みリスク差は-5.2%(95%信頼区間:-13.7~3.3%)であった。第6日目までに2例が死亡し、第7~14日の間に1例が死亡した。重篤な有害事象は確認されなかった。著者は、「パキスタン農村部の小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、地域のLHWは十分な役割を果たすことができた」と結論づけ、「この戦略は、医療施設への紹介が困難な環境にある重症肺炎患児に対し有用であり、小児肺炎の発見や管理の鍵となると考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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大腸内視鏡的ポリープ切除、大腸がん死亡を長期に予防

大腸腺腫性ポリープの内視鏡的切除は、長期的に大腸がんによる死亡を予防し得ることが示された。米国・マウントサイナイ医療センターのAnn G. Zauber氏らが、全米ポリープ研究(National Polyp Study;NPS)の被験者を23年にわたり前向きに追跡し、内視鏡的ポリープ切除が大腸がん死亡に与える長期的な影響について解析した結果による。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。NPS参加者を23年間前向きに追跡研究グループは、1980~1990年の間に、NPS参加医療施設で初回大腸内視鏡検査を受け、ポリープ(腺腫性と非腺腫性)が認められたすべての患者を解析の対象とした。死亡の確認と死因の判定はNational Death Indexに基づいて行われ、フォローアップは23年間に及んだ。解析は、腺腫性ポリープを除去した患者の大腸がん死亡率について、一般集団における大腸がん発生率に基づく期待死亡率[SEER(Surveillance Epidemiology and End Results)プログラムで推定]、および非腺腫性ポリープ患者(内部対照群)の観察から推定された大腸がん死亡率と比較した。内視鏡的ポリープ切除で大腸がん死亡率は53%低下本研究への参加期間中に腺腫を除去したのは2,602例で、そのうち中央値15.8年後に、1,246例は何らかの原因によって死亡しており、大腸がんで死亡したのは12例だった。一方、一般集団の大腸がんによる死亡は推定25.4で、大腸内視鏡的ポリープ切除による発生率ベースの標準化死亡指数は0.47(95%信頼区間:0.26~0.80)であり、死亡率の53%低下が示唆された。ポリープ切除後の当初10年間の大腸がん死亡率は、腺腫性ポリープ患者と非腺腫性ポリープ患者とで同程度だった(相対リスク:1.2、95%信頼区間:0.1~10.6)。(朝田哲明:医療ライター)

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医学ジャーナルのプレスリリースは、新聞報道に影響するか?

医学ジャーナルが特定の論文について発表したプレスリリースの質が高い場合は、それを報じる新聞記事の質も高くなるが、プレスリリースの質が低ければ関連新聞記事の質も低下することが、米在郷軍人局医療センターのLisa M Schwartz氏らの調査で明らかとなった。医学ジャーナルが発行するプレスリリースには質のばらつきがみられ、重要な要素が除外されたり、試験の重大な限界を伝えていないことが多いという。これらのプレスリリースが、新聞報道の質に及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。プレスリリースが新聞記事の質に及ぼす影響を後ろ向きに評価研究グループは、医学ジャーナルによるプレスリリースの質が、新聞の関連記事の質に及ぼす影響を評価するために、レトロスペクティブなコホート試験を実施した。医学ジャーナル主要5誌(Annals of Internal Medicine、BMJ、Journal of the National Cancer Institute、JAMA、New England Journal of Medicine)を2009年1月号から順に古い号へとレビューし、アウトカムの定量化が可能で、新聞で報道(100語以上の独自記事)された最新の原著論文100編を抽出した。オンラインデータベース(Lexis Nexis、Factiva)を検索して759本の新聞記事を同定し、Eurekalertと当該ジャーナルのウェブサイトを検索して68本のプレスリリースを抽出した。2名の研究者が別個に、論文、プレスリリース、関連新聞記事のサンプル(343本)の質の評価を行った。プレスリリース発表論文の新聞掲載率は71%1編の論文に関する新聞記事数の中央値は3本(1~72)であった。解析の対象となった新聞記事343本のうち、71%は医学ジャーナルがプレスリリースを発表した論文に関するものだった。絶対リスクを明示した主要結果を掲載した記事は、プレスリリースにその情報がない場合は9%、それがある場合は53%で(相対リスク:6.0、95%信頼区間:2.3~15.4)、プレスリリースそのものがない場合は20%であった(同:2.2、0.83~6.1)。記事の39%(133本)は有益な介入に関する研究を報じるものだった。プレスリリースが有害性に触れていない場合でもそれを報じた記事は24%で、プレスリリースが触れている場合は68%が有害性を報じており(相対リスク:2.8、95%信頼区間:1.1~7.4)、プレスリリースがない場合は36%であった(同:1.5、0.49~4.4)。研究に重大な限界がある場合にそれを報じた記事は75%(256本)であった。プレスリリースがそれに触れていなくても限界について報じた記事は16%、プレスリリースが触れていれば48%が報じていて(相対リスク:3.0、95%信頼区間:1.5~6.2)、プレスリリースが発表されていなくても限界を記載したのは21%だった(同:1.3、0.50~3.6)。これらの結果から、著者は「医学ジャーナルが発表した質の高いプレスリリースは関連新聞記事の質を高め、プレスリリースの質が低ければ新聞記事の質も低下すると考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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小児・青年期の身体活動時間が長いと、心血管代謝リスク因子は良好に

小児・青年期の身体活動時間が長いほど、座位時間の総量にかかわらず、心血管代謝に関するリスク因子は良好であることが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学アデンブルックス病院代謝科学研究所のUlf Ekelund氏らが、2万人超の4~18歳に対して行ったメタ解析の結果、報告したもので、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。これまで、健康児における身体活動時間と座位時間との複合でみた心血管代謝リスクとの関連についてはあまり検討されていなかった。被験者の中等度~強度の身体活動時間の平均値は1日30分研究グループは、1998~2009年にかけて行われた14試験に参加した4~18歳のデータベース「Children’s Accelerometry Database」から、計2万871人のデータについてメタ解析を行った。中等度~強度の身体活動(moderate- to vigorous-intensity physical activity:MVPA)時間、座位時間と、ウエスト周囲、収縮期血圧、空腹時トリグリセリド値、HDLコレステロール値、インスリン値の関連を分析した。被験者の、MVPA時間の平均値は1日30分(SD:21)、座位時間は1日354分(同:96)だった。MVPA時間が長いと心血管代謝アウトカムは良好、座位時間が長い群で格差が顕著MVPA時間は、すべての心血管代謝アウトカムと有意に関連しており、性別や年齢、日中活動時間、座位時間、ウエスト周囲とは独立していた。一方で座位時間は、いずれの心血管代謝アウトカムとも関連しておらず、MVPA時間と関連していなかった。被験者データは、MVPA時間と座位時間をそれぞれ三分位範囲(短・中・長時間)に層別化して検討された。層別化に基づく複合解析の結果、MVPA時間は長いほど心血管代謝リスク因子は良好であることが認められた。その関連は、座位時間、三分位範囲いずれの群においても認められた。MVPA時間の長短によるアウトカムの格差は、座位時間がより短いほど大きかった。具体的には、MVPA時間の長時間群と短時間群とのウエスト周囲格差の平均値は、座位時間長時間群では5.6cmだったのに対し、短時間群では3.6cmだった。また、MVPA長時間の群と短時間群との収縮期血圧格差の平均値は、座位時間長時間群で0.7mmHg、短時間群では2.5 mmHgだった。HDLコレステロール値の同格差平均値も、それぞれ-2.6mg/dLと-4.5mg/dLだった。トリグリセリド値とインスリン値の格差も同様だった。これらのアウトカム格差をもたらしたMVPA長時間群の同時間は35分/日以上であり、一方短時間群の同時間は18分/日未満だった。被験者のうち6,413人を2.1年間前向きに追跡した解析結果では、MVPA時間と座位時間の複合はフォローアップ時において、ウエスト周囲とは関連していなかったが、基線でウエスト周囲が大きかった群は座位時間が長時間であることとの関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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成人とは異なる小児の肺高血圧症の臨床的特徴が明らかに

小児の肺高血圧症では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)が多く、その半数以上を特発性(IPAH)や家族性(FPAH)が占めるなど、成人とは異なる臨床的特徴を示すことが、オランダ・フローニンゲン大学のRolf M F Berger氏らの検討で明らかとなった。肺血管抵抗増加をともなう肺高血圧症は、高い合併症罹患率や死亡率を示す重大な疾患だが、その臨床的特徴は十分には知られていない。成人と小児では病理生物学的、臨床的特徴が類似する部分もあるが、たとえばIPAHやFPAHは小児のほうが予後不良であり、成人に比べ治療法の開発も遅れているため、分けて考える必要があるという。Lancet誌2012年2月11日号(オンライン版2012年1月11日号)掲載の報告。19ヵ国31施設が参加する国際的レジストリー研究Tracking Outcomes and Practice in Pediatric Pulmonary Hypertension(TOPP)は、小児肺高血圧症の人口学的背景、治療、アウトカムに関する情報の提供を目的とする国際的な前向きレジストリー研究。2008年1月31日の開始から2010年2月15日までに、19ヵ国31施設から肺高血圧症または肺血管抵抗増加と診断された18歳未満の患者が登録された。患者背景および疾患特性として、診断時と登録時の年齢、性別、人種、主症状、肺高血圧症分類、併存疾患、病歴、家族歴、血行力学的指標、WHO機能分類クラスなどが記録された。フォローアップの決定は、個々の患者の医療ケアの必要性に応じて主治医が行った。88%がPAH、その57%がIPAHまたはFPAH、特定疾患によるものは先天性心疾患が多数456例が登録され、362例(79%)が肺高血圧症と確定された。317例(88%)がPAHと診断され、そのうち182例(57%)が特発性(IPAH)または家族性(FPAH)で、他の特定の疾患に起因した135例(43%)のうち115例(85%)は先天性心疾患が原因であった。42例(12%)は呼吸器疾患あるいは低酸素症に起因する肺高血圧症で、その多くに気管支肺異形成がみられた。慢性血栓塞栓性肺高血圧症あるいは他の原因による肺高血圧症は3例のみであった。染色体異常(主に21トリソミー)は47例(13%)で報告された。診断時年齢中央値は7歳(IQR:3~12)、59%(268/456例)が女児であった。呼吸困難と疲労が最も頻度の高い症状だったが、IPAHまたはFPAHの31%(57/182例)と、手術を受けた先天性心疾患患者の18%(8/45例)に失神が認められた。手術を受けていない先天性短絡性心疾患患者では失神はみられなかった。362例中230例(64%)は、重篤な肺高血圧症にもかかわらずWHO機能分類クラスI/IIであり、右心機能は一貫して保持されていた。著者は、「TOPP研究によって、小児肺高血圧症に特有の重要な臨床的特徴が同定された。これは、成人の試験のデータを外挿するよりも、小児特有のデータの必要性に関心を促すものだ」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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甲状腺機能低下症の妊婦への出産前治療、出生児の認知機能を改善せず

妊娠期間の平均が12週3日の妊婦を対象に甲状腺機能スクリーニングを行い、機能低下が認められた妊婦に治療を行っても、生まれた子どもの認知機能に改善は認められなかったことが報告された。英国・カーディフ大学のJohn H. Lazarus氏らが、約2万2,000人を対象とした無作為化試験の結果、報告した。胎児が甲状腺ホルモンを分泌するようになるのは在胎約18~20週以降で、それまでは母胎の遊離サイロキシン(T4)に依存して、中枢神経系の成熟を含む成長を遂げていくとされている。遊離T4にはヨウ素が不可欠で、妊娠前のヨウ素サプリメントの服用は認知機能を増強することや、一方で妊娠中の甲状腺刺激ホルモン高値は出生児の認知機能障害をもたらすことが知られ、甲状腺機能障害を出産前に検知し治療することは有益である可能性が示唆されていた。NEJM誌2012年2月9日号掲載報告より。出産前スクリーニングで陽性の妊婦にレボチロキシン投与試験は、英国10ヵ所、イタリア1ヵ所の医療機関から集められた、妊娠期間が15週6日未満の妊婦2万1,846人を対象とし、被験者から血液サンプルの提供を受け、甲状腺刺激ホルモンと遊離サイロキシン(T4)を測定して行われた。被験者は、スクリーニング群(直ちに測定:1万924人)と対照群(血清を保存し、分娩直後に測定:1万922人)に割り付けられ測定、追跡がされた。測定において、甲状腺刺激ホルモン値97.5パーセンタイル超か、遊離T4値2.5パーセンタイル未満、またはその両方の場合を「スクリーニング結果陽性」とした。スクリーニング群で陽性だった妊婦には、レボチロキシン(商品名:チラージンほか)150μg/日が投与された。主要評価項目は、スクリーニング陽性だった妊婦から生まれた子どもの3歳時のIQとした。評価は割り付け情報を知らされていない心理学者が測定した。甲状腺刺激ホルモン投与の効果みられず血液サンプルを提供した女性2万1,846例の妊娠期間中央値は12週3日だった。スクリーニングの結果が陽性だったのは、スクリーニング群390例、対照群404例だった。スクリーニング群陽性者へのレボチロキシン治療開始は、妊娠期間中央値13週3日で、投与は甲状腺ホルモン値0.1~1.0mIU/L達成を目標に必要に応じて調整された。スクリーニングの結果が陽性だった女性の出生児の平均IQスコアは、スクリーニング群99.2、対照群100.0だった(格差:0.8、95%信頼区間:-1.1~2.6、intention-to-treat解析によるP=0.40)。IQ 85未満の出生児の比率は、スクリーニング群12.1%、対照群14.1%であった(格差:2.1ポイント、95%信頼区間:-2.6~6.7、P=0.39)。on-treatment解析でも同様の結果が示された。(朝田哲明:医療ライター)

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直接的レニン阻害薬と他のRAS阻害薬の併用で高カリウム血症増加

直接的レニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)は、ACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症のリスクを増大させることが、カナダ・トロント大学のZiv Harel氏らの検討で示された。アリスキレンなどのレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は、うっ血性心不全や高血圧、蛋白尿などのさまざまな病態の管理に用いられているが、他のRAS阻害薬との併用における重篤な合併症として高カリウム血症や急性腎障害が知られている。アリスキレンと他のRAS阻害薬の併用に関する試験の多くは代用アウトカム(surrogate outcome)を用いているため、真の有害事象の検出能は低いという。BMJ誌2012年2月4日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。アリスキレンの安全性をメタ解析で評価研究グループは、他のRAS阻害薬との併用におけるアリスキレンの安全性を検証するために、無作為化対照比較試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Embase、Cochrane Libraryおよび2つの臨床試験のレジストリーを用いて、2011年5月7日までに出版された文献を検索した。アリスキレンとアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の併用療法と、これらの薬剤の単剤療法を比較した無作為化対照比較試験(治療期間4週以上)のうち、有害事象として高カリウム血症と急性腎障害に関する数値データを提示した試験を抽出した。変量効果モデルを用いて総合リスク比と95%信頼区間(CI)を算出した。併用時は血清カリウム濃度のモニタリングを10試験、4,814例が解析の対象となった。アリスキレンとACE阻害薬またはARBの併用療法では、ACE阻害薬単剤やARB単剤(相対リスク:1.58、95%CI:1.24~2.02)あるいはアリスキレン単剤(同:1.67、1.01~2.79)に比べ、高カリウム血症が有意に増加した。急性腎障害のリスクについては、併用療法と単剤療法で有意な差は認めなかった(相対リスク:1.14、95%CI:0.68~1.89)。著者は、「アリスキレンは、ACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症のリスクを増大させる」と結論し、「これらの薬剤を併用する場合は、血清カリウム濃度の注意深いモニタリングを要する」と注意を喚起している。(菅野守:医学ライター)

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早期乳がんの術後化学療法、どのレジメンが最も有効か?:約10万例のメタ解析

早期乳がんの術後化学療法では、アントラサイクリン系薬剤+タキサン系薬剤ベースのレジメンおよび高用量アントラサイクリン系薬剤ベースレジメンによって乳がん死が約3分の1低下することが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。乳がんの術後化学療法の効果には差があり、治療法の選択に影響を及ぼす可能性があるという。EBCTCGは、すでに1995年までに開始された試験のメタ解析の結果を報告しているが、用量は考慮されず、タキサン系薬剤は含まれていなかった。Lancet誌2012年2月4日号(オンライン版2011年12月6日号)掲載の報告。1973~2003年に開始された123件、約10万例のメタ解析研究グループは、早期乳がんに対する個々の化学療法レジメンの有用性を比較するために、無作為化試験の患者データを用いたメタ解析を実施した。1973~2003年に開始された全無作為化試験123件の2005~2010年の個々の患者データ(約10万例)を収集した。試験の内訳は、1)タキサン系薬剤(TAX)ベースレジメンと非TAX系薬剤ベースレジメンを比較した33試験(1994~2003年に開始)、2)アントラサイクリン系薬剤(Anth)ベースレジメンとCMF(シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル)を比較した20試験(1978~1997年に開始)、3)高用量と低用量のAnthベースレジメンを比較した6試験(1985~1994年に開始)、4)多剤併用化学療法と非化学療法を比較した64試験(1973~1996年に開始、種々のAnthベースレジメンに関する22試験およびCMFに関する12試験を含む)。年齢や腫瘍の性状などの背景因子は影響しない用量を固定したAnthベースの対照群に比べ、これにTAXを4コース追加して治療期間を延長した群では、乳がん死が有意に低下した(率比[RR]:0.86、両側検定:2p=0.0005)。同様にTAX 4コースを追加し、対照群も他の薬剤をほぼ2倍の用量を追加してバランスを調整した試験では、有意な差は認めなかった(RR:0.94、2p=0.33)。CMFを対照とした試験では、標準4AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド、3週ごと、4コース)と標準CMF(4週ごと、6コース)の乳がん死抑制効果はほぼ同等(RR:0.98、2p=0.67)だったが、標準4ACよりも高用量である3剤併用Anthベースレジメン(CAF[シクロホスファミド+ドキソルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース]、CEF[シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース])は、標準CMFに比べ高い効果を示した(RR:0.78、2p=0.0004)。非化学療法群との比較試験では、CAF(RR:0.64、2p<0.0001)、標準4AC(RR:0.78、2p=0.01)、標準CMF(RR:0.76、2p<0.0001)のいずれのレジメンも、有意に乳がん死抑制効果を改善したが、標準4ACや標準CMFに比べCAFの有効性が優れることが示唆された。すべてのTAXベースまたはAnthベースレジメンに関するメタ解析では、年齢、リンパ節転移の有無、腫瘍径、腫瘍分化度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェンの使用歴による有効性の差はほとんどみられなかった。それゆえ、年齢や腫瘍の性状とは無関係に、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメン(CAF、CEF)は乳がん死を平均で約3分の1低下させることが確認された。著者は、「非化学療法群と比べても、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメンは10年間で乳がん死亡率を約3分の1低下させた。エストロゲン受容体陽性例に適切なホルモン療法を行ってもリスクは変わらなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

10789.

子宮筋腫に対する経口ulipristal acetateの有効性と安全性

子宮筋腫に対する術前治療としての、経口ulipristal acetateの有効性と安全性について、プラセボとの比較による第3相の二重盲検無作為化試験の結果、13週間の治療で子宮筋腫の症状の一つである出血過多を有効にコントロールし、筋腫サイズも縮小したことが報告された。ベルギーのルーヴェン・カトリック大学のJacques Donnez氏らによる検討で、NEJM誌2012年2月2日号で発表された。子宮筋腫は生殖年齢にある女性の20~40%に起こり得る良性腫瘍であるが、出血過多や貧血、痛みなどでQOLや妊娠への悪影響が問題となる。治療を望む女性の多くは子宮摘出回避を願うが、一方で子宮摘出の最も多い適応症ともなっている。13週間にわたる二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施研究グループは、2008年10月~2010年8月の間に6ヵ国38の大学病院を通じて、18~50歳までの生殖年齢にあり、症候性子宮筋腫で出血過多、貧血を呈する242例を対象に試験を行った。出血過多の状態は、出血量の客観的評価法PBAC法(1ヵ月の出血量範囲を0~>500とし、高いほど出血量が多いことを示す)によるスコアが>100とした。貧血は、ヘモグロビン値が≦10.2g/dLとした。被験者は、無作為に、経口ulipristal acetateを5mg/日投与される群(96例)、同10mg/日投与される群(98例)とプラセボを投与される群(48例)に割り付けられ、13週間治療を受けた。また全員、鉄剤のサプリメントを服用していた。共同主要有効性エンドポイントは、13週時点で、子宮出血がコントロールされたこと(PBACスコア<75)、および筋腫の縮小であった。被験者はその後、手術を受けることが可能だった。出血コントロールを改善、筋腫も縮小結果、13週時点で子宮出血のコントロールが、5mg群で91%、10mg群で92%に認められた。プラセボ群は19%で、ulipristal acetateの有意なコントロール達成が示された(いずれの投与群もプラセボ群と比較してP<0.001)。無月経の発生は、それぞれ73%、82%、6%だった。ulipristal acetateを受けていた被験者の大半は、10日以内で無月経を来した。総筋腫体積の変化の中央値は、それぞれ-21%、-12%、+3%だった(5mgのプラセボ群に対するP=0.002、10mg群のプラセボ群に対するP=0.006)。ulipristal acetate群では、組織的な子宮内膜変化が誘発されたが、治療期間終了後6ヵ月までに回復した。治療期間中の重篤な有害事象は、10mg群で子宮出血が1例、プラセボ群で子宮頸部からの筋腫突出が1例に認められた。ulipristal acetateと関連する最も頻度の高い有害事象は頭痛と乳房圧痛だったが、プラセボとに有意な頻度の差は認められなかった。(武藤まき:医療ライター)

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米国病院救急部門の患者滞在時間、地域セーフティネット病院か否かで格差なし

米国の病院救急部門における患者の滞在時間は、地域のセーフティネットを担う病院と、そうでない病院とで有意な差はないことが報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のChristopher Fee氏らが、全米約400の病院について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月1日号で発表した。Fee氏らは、セーフティネット病院がメディケイドや無保険患者を多く受け入れることで医療パフォーマンス、特にP4Pに重大な影響が及んでいる可能性を考慮し本研究を行った。被験者の4割がセーフティネット病院で治療研究グループは、全米の病院救急部門に関する調査「National Hospital Ambulatory Medical Care Survey 」(NHAMCS)の2008年のデータを元に、米国疾病予防管理センター(CDC)の基準で、セーフティネットを担う病院とそうでない病院に分類し、救急部門滞在時間を比較した。なおセーフティネットのための滞在時間の推奨基準は、入院(8時間か480分)、退院、転院、経過観察は4時間か240分と規定されていた。回答を寄せた病院は396ヵ所、3万4,134人分の患者のデータが入手できた。そのうち、18歳未満の患者や、滞在時間データなどが欠けている患者データは、除外した。分析対象とした2万4,719件の患者データのうち、セーフティネットを担う病院の救急部門で治療を受けた分は42.3%、非セーフティネット病院分は57.7%だった。入院、退院、経過観察、転院のいずれも、有意な差はみられずセーフティネット病院救急部門の、入院患者の滞在時間中央値は269分(四分位範囲:178~397)だった。これに対し、非セーフティネット病院では281分(同:178~401)で、両者に有意差はなかった。その他、退院患者、経過観察患者、転院患者のそれぞれの救急部門滞在時間の中央値のいずれも、セーフティネット病院と非セーフティネット病院では同等だった。セーフティネットであることは、規定された滞在時間の遵守に関する独立因子ではなかった。セーフティネット病院の非セーフティネット病院に対する遵守の各オッズ比は、入院0.83、退院1.03、経過観察1.05、転院1.30で、精神病患者の退院についてのみ1.67(同:1.02~2.74)と有意な差が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

10791.

慢性疾患を有する人への新型H1N1インフルエンザのワクチン効果

65歳未満の慢性疾患を有する人への新型H1N1インフルエンザのワクチン効果について、デンマーク国立血清研究所(Statens Serum Institu:SSI)のHanne-Dorthe Emborg氏らが、2009~2010シーズンに同ワクチン接種を受けたデンマーク住民を対象とした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。新型H1N1インフルエンザワクチンの疫学研究では、一般市民対象で70%以上の有効性があることが示されている。しかし、これまで基礎疾患を有する人の有効性については評価がされていなかった。BMJ誌2012年1月28日号(オンライン版2012年1月25日号)掲載報告より。デンマークの慢性疾患で罹患した約39万人のデータを調査Emborg氏らは、報告義務に基づき収集された、デンマークの新型H1N1インフルエンザの感染患者および入院患者のデータベースを基に、基礎疾患を有していた人のワクチン効果について評価を行った。具体的には2009年11月2日~2010年1月31日の間に、過去5年間に1つ以上の、インフルエンザ罹患後のリスクが増大すると予想される基礎疾患を有していた、65歳未満の38万8,069例(同国65歳未満人口の8.4%に相当)が対象となった。被験者のうち、基礎疾患が1つであった人が最も多く80.8%を占めた。主要評価項目は、新型H1N1インフルエンザの感染がラボ確認された、または入院が新型H1N1インフルエンザ感染であったとラボ確認された人で、年齢と基礎疾患について補正を行いワクチン効果を推定した。慢性疾患の数が多い人ほどワクチン接種率が高いが感染率も高いワクチン接種に関して、新型H1N1インフルエンザワクチンの接種は高年齢ほど高かった。また、どの年代も新型H1N1インフルエンザワクチンの接種率のほうが季節性ワクチンの接種率よりも高かったが、その差は若い年代(0~39歳)のほうが高かった。両ワクチンの接種率は、基礎疾患の数が多い人ほど高かった。一方で、基礎疾患の数が多い人のほうが、新型H1N1インフルエンザ感染が高いことも見受けられた。全体で、新型H1N1インフルエンザワクチン接種を1回以上受けた人は7万9,988例(20.6%)で、そのうちワクチン接種開始最初の週で接種を受けていたのは46%だった。2回目接種は大半が、2009年49週目以降とインフルエンザシーズン中盤以降に受けていた。感染は単回接種後1週間が最も増大し、感染に対するワクチン推定効果は-112%(95%信頼区間-187~-56%)だった。しかし14日以降では49%(同:10~71%)だった。なお、感染は若い年代ほど高かった。入院に対するワクチンの有効性も、接種後1週間が最も低く-258%(同:-464~-127%)だったが、14日以降では44%(同:-19~73%)だった。これら所見からEmborg氏は、「2009~2010シーズンは、ワクチン接種がシーズン後半になって行われていた。慢性疾患を有する人では、入院に対する有意なワクチン効果は認められなかったが、感染に対する予防効果は認められた」と述べ、「これら所見は、パンデミックワクチンの主要ターゲットは慢性疾患を有する人であること、およびワクチン効果は接種が遅くとも認められることを示すものである」と結論している。

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経口抗凝固療法の自己モニタリング、血栓塞栓イベントを低減

患者自身が検査や用量の調整を行う自己モニタリングによる経口抗凝固療法は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢であることが、英国・オックスフォード大学のCarl Heneghan氏らの検討で示された。ビタミンK拮抗薬による経口抗凝固療法を受ける患者は増加し続けているが、治療域が狭いため目標とする国際標準化比(INR)を維持するには頻回の検査や適切な用量の調整などを要するという問題がある。自己モニタリングは、その有効性を示す優れたエビデンスがあるものの、臨床導入には相反する見解がみられるという。Lancet誌2012年1月28日号(オンライン版2011年12月1日号)掲載の報告。自己モニタリングの意義を検証するメタ解析研究グループは、経口抗凝固薬の患者自身による自己モニタリング(自己検査[検査は患者が行い用量は医師が決める]または自己管理[検査、用量調整とも患者が行う])の意義を検証するために、自己モニタリングと医師によるモニタリングの有効性を比較した無作為化試験のメタ解析を行った。Ovid versions of Embase(1980~2009年)とMedline(1966~2009年)を検索し、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどで検索結果を調整した。UK National Research Register and Trials Centralなどで未出版の試験も検索した。抽出された全試験の著者と連絡を取り、死亡までの期間、初回大出血、初回血栓塞栓イベントに関する個々の患者データの提供を求めた。機械弁置換や心房細動の患者についても解析した。年齢別、対照群のケアのタイプ(抗凝固療法専門施設とプライマリ・ケア施設)、自己検査と自己管理、性別について、事前に規定されたサブグループ解析を行った。変量効果モデルで統合ハザード比(HR)を算出した。 血栓塞栓イベントが半減、特に55歳未満と機械弁置換患者で高い効果1992~2006年に患者登録がなされ、2000~2010年に発表された11試験(6,417例、1万2,800人・年)が解析の対象となった。全体の平均年齢は65.0歳(17~94歳)、女性が22%、心房細動患者は53%、機械弁置換患者は35.0%であった。血栓塞栓イベントは、医師によるモニタリング群に比べ自己モニタリング群で有意に減少した(HR:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.85)が、大出血(同:0.88、0.74~1.06)と死亡率(同:0.82、0.62~1.09)は両群間に差はみられなかった。特に、55歳未満の患者(HR:0.33、95%CI:0.17~0.66)と機械弁置換患者(同:0.52、0.35~0.77)で血栓塞栓イベントの抑制効果が高かった。85歳以上の患者(99例)では、自己モニタリングによる合併症の増加はみられず、死亡率は有意に低下した(同:0.44、0.20~0.98)。著者は、「経口抗凝固療法の自己検査および自己管理は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢である」と結論し、「自己管理の選択肢は、適切な医療支援による保護の元で患者に提供すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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前立腺生検、有害事象が再生検への消極性を招く

前立腺生検の忍容性は全般に良好だが、一部では疼痛や感染などの有害事象による重大な症状をもたらし、再生検に対する消極性や、プライマリ・ケアにおける医療資源の使用を促進することが、英国Sheffield大学のDerek J Rosario氏らが行ったProBE試験で明らかとなった。前立腺がんの診断では前立腺生検が重要だが、被験者の受容性(acceptability)や有害事象の影響、その結果としての医療資源の使用状況をプロスペクティブに検討した試験はほとんどないという。BMJ誌2012年1月21日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。無作為化試験に組み込まれた前向きコホート研究ProBE(Prostate Biopsy Effects)試験は、進行中の多施設共同無作為化対照比較試験であるProtecT(Prostate Testing for Cancer and Treatment)試験の登録患者を対象に行われたプロスペクティブなコホート研究。経直腸的超音波ガイド下生検(TRUS-Bx)から35日以内に発現した有害事象の影響の評価を目的とした。ProtecT試験では、50~69歳の地域住民男性22万7,000人が前立腺特異抗原(PSA)検査のカウンセリングを受けるよう招聘された。そのうち11万1,148人がPSA検査を受け、PSA値 3~20ng/mLの1万297人がTRUS-Bxを推奨された。このうち、2006年2月~2008年5月までに8施設で抗菌薬併用下にTRUS-Bxを受けた1,753人(平均年齢:62.1歳、平均PSA値:5.4ng/mL)がProBE試験の適格例とされ、試験参加に同意した1,147人(65%、平均年齢:62.1歳、平均PSA値:4.2ng/mL)が登録された。生検時、7日目、35日目に、質問票を用いて疼痛、感染、出血の頻度と関連症状の影響を評価した。生検直後と7日目に再生検に対する患者の受容性を調査し、35日までの医療資源の使用状況を評価した。有害事象関連症状が大きな問題になることは少ない生検後35日までに疼痛を訴えたのは43.6%、発熱の訴えは17.5%、血尿が65.8%、血便が36.8%、血性精液は92.6%であった。これらの症状が中等度~重度の問題となったと答えた患者は少なく、疼痛が7.3%、発熱は5.5%、血尿は6.2%、血便は2.5%、血性精液は26.6%であった。生検直後に、中等度~重度の問題が生じた場合は再生検を考慮すると答えた患者は10.9%で、7日後には19.6%に増加した。再生検に対する消極的な姿勢は、初回生検時の好ましくない経験、特に生検時疼痛(p<0.001)、感染関連症状(p<0.001)、出血(p<0.001)と有意な関連がみられ、明らかな施設間差が認められた(p<0.001)。10.4%が医療施設(通常は担当GP)を受診しており、最も頻度が高かったのは感染関連症状であった。有害事象の重症度は再生検に対する消極的な姿勢と有意な関連を示した(p<0.001)。著者は、「前立腺生検は全般に良好な忍容性を示したが、一部では有害事象による重大な症状をもたらし、再生検への受容性やプライマリ・ケアにおける医療資源の使用に影響を及ぼした」と結論し、「有害事象プロフィールの施設間差は、局所麻酔薬や抗菌薬をより効果的に使用すれば患者のアウトカムが改善され、医療資源の使用が抑制される可能性を示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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自己免疫疾患が、肺塞栓症のリスクを増強

自己免疫疾患によって肺塞栓症のリスクが有意に増大し、特に入院1年目のリスクが高いことが、スウェーデン・ルンド大学のBengt Zoller氏らの調査で示された。肺塞栓症は静脈血栓塞栓症の致死的な合併症で、自己免疫疾患は入院患者における静脈血栓塞栓症のリスク因子であることが示唆されている。これまでに静脈血栓塞栓症と自己免疫疾患の関連を検討した試験の多くは小規模で、ほとんどが特定の自己免疫疾患に限定した研究だという。Lancet誌2012年1月21日号(オンライン版2011年11月26日号)掲載の報告。スウェーデンにおける40年以上の全国規模の追跡調査研究グループは、スウェーデンにおける自己免疫疾患と肺塞栓症の関連を検証する全国規模の追跡調査を実施した。1964年1月1日~2008年12月31日の間に、自己免疫疾患と診断され、過去に静脈血栓塞栓症による入院歴のない患者を対象とし、肺塞栓症の発症状況について追跡調査した。スウェーデンの全居住者の情報が登録されたMigMed2データベースから個々の住民のデータを取得した。一般住民を参照集団(reference population)とし、年齢、性別などの変数で調整した肺塞栓症の標準化罹患比(SIR)を算出した。入院1年目のSIRは6.38、その後は経時的にリスクが低下1964~2008年に、53万5,538人(女性:33万5,686人、男性:19万9,852人)が33種の自己免疫疾患で入院した。自己免疫疾患による入院の1年目に肺塞栓症を発症する全体のリスクは、SIRで6.38(95%信頼区間[CI]:6.19~6.57)であった。33種の自己免疫疾患のすべてで、入院1年目の肺塞栓症の発症リスクが有意に増大しており、なかでも免疫性血小板減少性紫斑病(SIR:10.79、95%CI:7.98~14.28)、結節性多発動脈炎(同:13.26、9.33~18.29)、多発性筋炎/皮膚筋炎(同:16.44、11.57~22.69)、全身性エリテマトーデス(同:10.23、8.31~12.45)が高リスクであった。全体のリスクは経時的に低下し、SIRは1~5年後に1.53(95%CI:1.48~1.57)、5~10年後には1.15(同:1.11~1.20)、10年以降は1.04(同:1.00~1.07)となった。リスクの増大は性別や年齢層の区別なく認められた。著者は、「自己免疫疾患は入院1年目の肺塞栓症の発症リスクを増大させた」と結論し、「自己免疫疾患は凝固性亢進性(hypercoagulable)の病態ととらえるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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慢性C型肝炎標準療法無効例への直接作用型抗ウイルス薬のベネフィット

慢性C型肝炎の標準療法であるインターフェロン併用療法(ペグインターフェロン+リバビリン)が無効であった患者に対し、直接作用型抗ウイルス薬を追加投与することのベネフィットについて検討された予備的試験の結果、2つの抗ウイルス薬のみ投与でもウイルス持続陰性化(SVR)が得られることが示され、追加併用投与では高率のSVRが得られることが示された。米国・ミシガン大学医療センターのAnna S. Lok氏らによるオープンラベル第2a相無作為試験の予備的試験報告で、NEJM誌2012年1月19日号で発表された。慢性HCV遺伝子型1型感染患者21例を対象に予備的試験研究グループは、12週間以上のペグインターフェロン+リバビリン併用療法が無効[HCV RNAが2 log(10)以上にならなかった]であった慢性HCV遺伝子型1型感染患者21例の予備的コホートを対象とする試験を行った。被験者は無作為に、2つの直接作用型抗ウイルス薬であるNS5A複製複合阻害薬daclatasvir(60mgを1日1回)とNS3プロテアーゼ阻害薬asunaprevirのみを投与する群(グループA、11例)と、これら2つの抗ウイルス薬を前治療に追加して併用投与する群(グループB、10例)に割り付けられ、24週間投与された。主要エンドポイントは、治療期間終了後12週間のSVRを得られた患者の割合であった。抗ウイルス薬投与群のみでもSVR達成、併用投与群では高いSVR達成結果、抗ウイルス薬2剤のみ投与のA群において、12週時点でSVRを得ていたのは4例(36%)で、これらは24週時点でもSVRが認められた。4例を詳細な遺伝子型別にみると、HCV遺伝子型1a型9例中の2例と同1b型2例中の2例であった。SVRが得られなかった遺伝子型1a型の7例のうち、6例は24週の治療期間中にウイルス再燃(VBT)をきたし、2つの抗ウイルス薬に対する耐性変異の発生がみつかった。残る1例は治療期間終了時点ではSVRが得られていたが、その後再発に至った。一方、抗ウイルス薬2剤をインターフェロン併用療法に追加して投与したB群では、12週時点で全10例がSVRを得ており、9例は24週時点でもSVRを持続していた。有害事象については、最も頻度が高かったのは両群ともに下痢であった。また、6例(A:4例、B:2例)に、アラニンアミノトランスフェラーゼが正常上限値の3倍超となる一過性の上昇が認めれた。(武藤まき:医療ライター) ※ペグインターフェロン(商品名:ペガシス、ペグイントロン)+リバビリン(商品名:コベガス、レベトールほか)。本試験ではペガシス+コベガスで検討されている。

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超早産児無呼吸へのカフェイン療法、長期5年での無障害生存に有意な改善を示さず

超早産児無呼吸に対するカフェイン投与は、生後18ヵ月における脳性麻痺や認知機能遅延リスクを低下する効果があるが、生後5年時点では、死亡と機能障害を合わせた発生率はプラセボ群と同等で、同療法が長期的には障害のない生存率の改善にはつながらないことが報告された。運動障害や認知障害などの個別の発症率についても、カフェイン投与による低下は認められなかった。米国・ペンシルベニア大学のBarbara Schmidt氏らが、約1,600例を対象とした無作為化プラセボ対照試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年1月18日号で発表した。出生児体重500~1,250gの1,640人について5歳まで追跡Schmidt氏らは、1999~2004年に行われた超早産児無呼吸へのカフェイン療法に関する無作為化プラセボ対照試験「Caffeine for Apnea of Prematurity」の被験者のうち1,640例について、2005~2011年にかけ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ、イスラエルの31ヵ所の教育病院を通じ追跡調査を行った。Caffeine for Apnea of Prematurityの被験児は、出生児体重500~1250gで、担当医がカフェイン投与の必要性があると判断した新生児で、同試験では、被験児を無作為に二群に分け、一方にはクエン酸カフェイン(当初20mg/kg/日、その後5mg/kg/日、無呼吸が持続した場合には10mg/kg/日まで増加)を投与し、もう一方の群にはプラセボが投与された。投与期間の中央値は、カフェイン群が37日、プラセボ群が36日だった。死亡・機能障害の統合発生率、カフェイン群が21%、プラセボ群が25%で有意差は見られず主要評価項目は、生後5年での死亡または障害が1つ以上伴う生存の複合アウトカムとした。障害の定義は、粗大運動機能分類システム(GMFCS)レベル3~5の運動障害、全検査IQで70未満の認知障害、行動障害、健康状態不良、聴覚消失、失明だった。その結果、複合アウトカムの発生率は、カフェイン群が21.1%、プラセボ群24.8%で、両群で有意差はなかった(p=0.09)。また、死亡率、運動障害、行動障害、健康状態不良、聴覚消失、失明のいずれの発生率についても、両群で有意差はなかった。認知障害の発生率は、18ヵ月時点よりも5歳時点のほうが低かったが、プラセボ群と有意差は認められなかった(4.9%対5.1%、オッズ比:0.97、95%信頼区間:0.61~1.55、p=0.89)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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転移性乳がんに対する第一選択治療としてpertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル併用療法

HER2陽性転移性乳がんに対する第一選択治療として、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの併用療法は、トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、心毒性作用の増加を伴うことなく有意に無増悪生存期間を延長したことが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのJose Baselga氏らによる第3相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CLEOPATRA」の結果、報告された。pertuzumabは、トラスツズマブと相補的な作用機序を持つ抗HER2ヒト化モノクローナル抗体で、第2相試験で、両剤での併用療法が有望な活性作用と忍容可能な安全性プロファイルを示すことが報告されていた。NEJM誌2012年1月12日号(オンライン版2011年12月7日号)掲載報告より。pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル対プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルCLEOPATRA(Clinical Evaluation of Pertuzumab and Trastuzumab)試験は、2008年2月~2010年7月にかけて25ヵ国204施設から登録されたHER2陽性転移性乳がん患者808例を対象に行われた。pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル(pertuzumab群、402例)またはプラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル(対照群、406例)のいずれかを第一選択治療となるよう被験者を無作為に割り付け、疾患増悪または有効的に管理できない毒性作用が発現するまで投与を継続した。主要エンドポイントは、独立に評価された無増悪生存期間とした。副次エンドポイントは、全生存期間、研究者が評価した無増悪生存、客観的奏効率、安全性とした。無増悪生存期間、プラセボ群12.4ヵ月に対しpertuzumab群18.5ヵ月に延長結果、無増悪生存期間の中央値は、対照群12.4ヵ月に対して、pertuzumab群は18.5ヵ月だった(増悪または死亡のハザード比:0.62、95%信頼区間:0.51~0.75、P<0.001)。全生存期間の中間解析の結果、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの優越性が強い傾向が示された。安全性プロファイルは全般的に両群で同程度であり、左室収縮期の機能障害の増加は認められなかった。また、グレード3以上の発熱性好中球減少症と下痢の発現率は、対照群よりpertuzumab群で高かった。(朝田哲明:医療ライター)

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認知症高齢者、入院率は1.4倍に増大

高齢者において、認知症は入院を有意に増大するリスク因子であることが米国・ワシントン大学のElizabeth A. Phelan氏らによる調査の結果、報告された。認知症高齢者の入院率はそうでない高齢者の約1.4倍に上り、なかでも細菌性肺炎や尿路感染症のような外来治療可能な疾患での入院率が、約1.8倍多かったという。同氏らが3,000人超の高齢者について調べた結果で、JAMA誌2012年1月11日号で発表した。補正前入院率、非認知症は200件/1,000人・年、認知症は419件/1,000人・年研究グループは、65歳以上の3,019人の1994~2007年のデータについて、後ろ向き縦断コホート調査を行った。 主要評価項目は、認知症の有無による、全原因入院率や外来治療可能疾患(ambulatory care–sensitive conditions:ACSC)による入院率とした。結果、追跡期間中に認知症を発症したのは494人で、うち427人(86%)が1回以上入院した。認知症を発症しなかった2525人では、うち1478人(59%)が入院した。補正前入院率は、非認知症群が200件/1,000人・年だったのに対し、認知症群は419件/1,000人・年に上った。認知症群の全入院率比は1.41倍、ACSCによる入院率比は1.78倍年齢、性別やその他交絡因子を補正後、認知症群の非認知症群に対する入院率比は、1.41(95%信頼区間:1.23~1.61、p<0.001)だった。ACSCによる入院に関する同入院率比は、1.78(同:1.38~2.31、p<0.001)とさらに高かった。入院の原因器官系別に入院率をみたところ、大半で認知症群が非認知症群より有意に高率だった。また細菌性肺炎やうっ血性心不全、尿路感染症による入院は、ACSCでの入院の3分の2を占め、いずれの補正後入院率も、認知症群が非認知症群より有意に高率だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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治験報告、最も質が高いのは治験総括報告書

治験報告の質について、文書タイプ[治験レジストリ報告書(registry report)、治験総括報告書(clinical study report)、学術誌投稿論文]の違いを比較した結果、治験総括報告書が最も質が高いことが明らかにされた。ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所のBeate Wieseler氏らが後ろ向き解析の結果、報告した。レジストリ報告書と投稿論文については相互に弱い部分が異なり、レジストリ報告書は、アウトカムは十分報告されていたが方法論の報告は乏しく、学術誌はその反対であったという。BMJ誌2012年1月7日号(オンライン版2012年1月3日号)掲載報告より。治験報告内容の質を文書タイプの違いで比較Wieseler氏らは、治験報告の質について、実施された治験を評価するのに十分な情報が報告されているかを、文書タイプの違いで比較する検討を行った。ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所が行っている16の創薬医療技術評価から、2006年~2011年2月の間の主要研究と、関連している文書を収集した。それら各文書の研究報告と有効性報告の質について、方法論に関して6項目、アウトカムに関して6項目で評価を行い、「報告が完全である」と「報告が不十分」の2つに分けた。文書タイプごとに、方法論とアウトカムの報告が完全であった文書の割合を、項目ごとでおよび全体的に算出して、見いだされた所見を比較した。レジストリ報告書と投稿論文は、質の優劣項目が相互に逆転268の研究が検索され、解析に有効であったのは、投稿論文192(72%)、治験総括報告書101(38%)、レジストリ報告書78(29%)だった。結果、質が最も高かったのは治験総括報告書で、方法論およびアウトカムの全項目の約90%(1,086/1,212)について「情報が完全である」と評価された。レジストリ報告書は、アウトカム項目[全体の330/468(71%)]のほうが方法論項目[同147/468(31%)]より「情報が完全である」と評価された割合が高かった。投稿論文でも同様の傾向が認められた[594/1,152(52%)vs. 458/1,152(40%)]。マッチドペア分析の結果では、レジストリ報告書の質は、方法論およびアウトカムの項目全体で、治験総括報告書よりも劣っていた(各症例P<0.001)。一方でレジストリ報告書は、投稿論文と比べて、方法論項目全体では劣っていたが(P<0.001)、アウトカム項目全体では優れていた(P=0.005)。これら所見を踏まえてWieseler氏は最後に、「報告書を改善するには、結果登録の基準順守を世界的に義務化させる必要がある」とまとめている。

10800.

DVTに対するカテーテル血栓溶解療法、血栓後症候群を抑制

腸骨大腿静脈の急性深部静脈血栓症(DVT)の治療では、低分子量ヘパリンやワルファリンによる標準的な抗凝固療法に血栓溶解薬を用いたカテーテル血栓溶解療法(CDT)を併用すると、標準治療単独に比べ血栓後症候群(PTS)の発生率や開存率が有意に改善することが、ノルウェー・オスロ大学病院のTone Enden氏が行ったCaVenT試験で示された。DVTに対する従来の抗凝固療法は、血栓の拡大や再発の予防には有効だが、血栓そのものは溶解させず、多くの患者がPTSを発症するという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月13日号)掲載の報告。カテーテル血栓溶解療法の併用効果を評価する無作為化対照比較試験CaVenT(Catheter-directed Venous Thrombolysis)試験の研究グループは、血栓溶解薬t-PA(アルテプラーゼ)を用いたCDTのPTS抑制効果を評価する非盲検無作為化対照比較試験を実施した。ノルウェー南東部地域の20施設から、腸骨大腿静脈の初回DVTの症状発症後21日以内の18~75歳の患者が登録された。これらの患者が、標準治療のみを行う群あるいは標準治療+CDTを施行する群に無作為化に割り付けられた。両群とも、24ヵ月間の弾性ストッキング(クラスII)の着用が指導された。標準治療は、国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標に、低分子量ヘパリン(ダルテパリン、エノキサパリン)とワルファリンを投与後にワルファリンを単独投与した。CDT群は、低分子量ヘパリンを単独投与し、CDTの8時間前までには投与を中止してCDTを行い、CDT終了1時間後からINR 2.0~3.0を目標に低分子量ヘパリンとワルファリンを投与した。CDTは超音波ガイド下に膝窩静脈からカテーテルを挿入し、血栓部位にアルテプラーゼを最長で96時間投与した(最大用量:20mg/24時間)。24ヵ月後のVillaltaスコアによるPTSの発生率および6ヵ月後の腸骨大腿静脈の開存率の評価を行った。24ヵ月PTS発生率:55.6% vs. 41.1%、6ヵ月開存率:47.4% vs. 65.9%2006年1月~2009年12月までに209例が登録され、標準治療単独群に108例が、CDT群には101例が割り付けられた。24ヵ月のフォローアップ終了時に、189例[90%、標準治療単独群99例(平均年齢50.0歳、女性38%)、CDT群90例(同:53.3歳、36%)]から臨床データが得られた。24ヵ月の時点におけるPTSの発生率は、標準治療単独群の55.6%(55例)に対しCDT群は41.1%(37例)と有意に低下した(p=0.047)。PTS発生の絶対リスク減少率は14.4%、PTSの発生を1例抑制するのに要する治療数(NNT)は7であった。6ヵ月後の腸骨大腿静脈の開存率は、標準治療単独群の47.4%(45例)に比べCDT群は65.9%(58例)と有意に改善した(p=0.012)。CDT関連の出血が20例でみられ、そのうち3例が大出血で、5例は臨床的に意義のある出血だった。著者は、「重度の近位DVTのうち出血リスクが低い患者にはCDTの追加を考慮すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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