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インスタグラムを使っている学会はあるか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第57回

インスタグラムを使っている学会はあるか? FREEIMAGESより使用 インスタグラム(instagram)という言葉をご存じでしょうか。私はスマホデビューしたのが最近ということもあって、LINEやインスタグラムという言葉は最近知ったくらいです。 Wikipediaによれば、「Instagram(インスタグラム)は、無料の画像共有アプリケーションソフトウェアである。デジタル画像を撮影し、画像編集(フィルター)をし、同サービスあるいは、Facebook、Twitter、foursquare、Tumblr、Flickr、ポスタラスといった他のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で共有する」と書かれています。要は、写真をSNSで共有するアプリということですね。ふむふむ。 紹介するのはインスタグラムにまつわる、ある報告。 Karimkhani C, et al. Dermatology on instagram. Dermatol Online J. 2014;20. この論文では、皮膚科に関連する学会や団体でインスタグラムを使用しているところがあるかどうか調べたものです。別にチャチャを入れるワケではありませんが、わざわざそれを論文にしたのはなぜだろう…。この報告によれば、インスタグラム上で皮膚科に関連するキーワードや団体名を検索しましたが、ほとんど引っかからなかったそうです。唯一 Melanoma Research Foundationという悪性黒色腫の団体だけがインスタグラムを使用していたという結果でした。皮膚科や病理のように写真がきわめて重要な情報源となる学会や団体では、TwitterやFacebookよりもインスタグラムの普及のほうが望ましいのかもしれませんね。欧米では学会のホームページにSNSのリンクが貼ってあったりしますが、日本ではなかなかそうしたリンクはみられませんよね。たとえばJAMAなんかではFacebook、Twitter、Linked in、Google+、Pinterestなどのリンクが貼られています。しかし日本の学会でここまでSNSに積極的なウェブサイトを私はみたことがありません。願わくは、日本の学会も時代の波に乗ってもらいたいと切に願っております。インデックスページへ戻る

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中枢神経刺激薬の睡眠に対する影響を検証

 注意欠如・多動症(ADHD)の治療で用いられる中枢神経刺激薬が、若者の睡眠の変化にどのような影響を及ぼすかを、米国・ネブラスカ大学リンカーン校のKatherine M Kidwell氏らが検討した。Pediatrics誌2015年12月号の報告。 2015年3月までに公表された研究を、CINAHL、PsycINFO、PubMedより収集し、検討を行った。適格基準は、ADHDを有する小児および青年の研究、中枢神経刺激薬への無作為化割り付け、および客観的な睡眠指標を用いた試験とした。重要な変数に関連する情報が含まれない研究は除外した。研究レベル、小児レベル、睡眠データは独立した2人の担当者により抽出した。エフェクトサイズは、ランダム効果モデルを用い算出した。潜在的モデレータは、混合効果モデルを用い算出した。 主な結果は以下のとおり。・9本、246症例が抽出された。・睡眠潜時の調整後エフェクトサイズ(0.54)は有意であり、中枢神経刺激薬による睡眠潜時の延長が示された。1日当たりの投与量が、有意なモデレータであった。・睡眠効率については、調整後のエフェクトサイズ(-0.32)は有意であった。有意なモデレータは薬物治療期間の長さ、睡眠評価(夜間)の日数、睡眠ポリグラム/アクチグラフィー、性別が含まれていた。具体的には、薬物治療期間が長くなると、薬物治療効果は表れにくくなっていた。・総睡眠時間のエフェクトサイズ(-0.59)は有意であり、中枢神経刺激薬の服用が睡眠時間の減少につながっていた。 結果を踏まえ、著者らは「本知見は、対象試験が少なく、方法論的なばらつきや未発表試験の不足などの限界がある」としたうえで「中枢神経刺激薬は、睡眠潜時の延長、睡眠効率の悪化、睡眠時間の減少を引き起こしており、全体的に若者における睡眠の悪化が認められた。このことから、小児科医は、睡眠に関わる問題を慎重に監視し、最適な睡眠を促進する治療を検討することが求められる」とまとめている。関連医療ニュース 2つのADHD治療薬、安全性の違いは 不眠症併存患者に対する非薬物療法の有効性 2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは  担当者へのご意見箱はこちら

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若年性皮膚筋炎、プレドニゾン+MTXが有益/Lancet

 新規発症の若年性皮膚筋炎に対し、プレドニゾン+シクロスポリン併用またはプレドニゾン+メトトレキサート(MTX)併用は、いずれもプレドニゾン単剤と比較して有効であるが、安全性プロファイル、ステロイド節約効果においてプレドニゾン+MTX併用が支持されることが明らかにされた。イタリア・Istituto Giannina GasliniのNicolino Ruperto氏らが、22ヵ国54施設が参加した無作為化試験の結果、報告した。これまで皮膚筋炎および若年性皮膚筋炎の治療に関するデータは、大半が散発的で非無作為化によるケースシリーズ報告しかなかった。Lancet誌オンライン版2015年11月27日号掲載の報告より。プレドニゾンの単独と併用を比較 試験には、18歳以下で新規に若年性皮膚筋炎を発症し、未治療であり、皮膚または消化器系潰瘍のない患者を登録して行われた。 2006年5月31日~10年11月12日に、139例をプレドニゾン単独(47例)、プレドニゾン+シクロスポリン併用(46例)、プレドニゾン+MTX併用(46例)に無作為に割り付けて追跡評価した。患者、研究者は治療割り付けをマスキングされなかった。 主要アウトカムは、PRINTO20改善(6ヵ月時点で6つのコア指標のうち3指標で20%改善)に達した患者の割合、臨床的寛解までまたは治療不成功までの期間とした。 3治療群をKruskal-Wallis検定、Friedman's検定で比較し、生存分析はKaplan-Meier曲線とlog-rank検定にて行った。分析はintention to treat法による。 試験は、導入期(2ヵ月間)、維持期(22ヵ月間)、拡張期(3年以上)の3期にわたって行われ、本論では導入期と維持期2年以上を経過した結果を報告。追跡期間中央値は35.5ヵ月であった。臨床的寛解が観察されたのはMTX併用群のみ 6ヵ月時点でPRINTO20改善に達したのは、単独群24例(51%)、シクロスポリン併用群32例(70%)、MTX併用群33例(72%)であった(p=0.0228)。 臨床的寛解までの期間中央値は、MTX併用群41.9ヵ月であったが、他の2群では観察できなかった(MTX併用群の増大比2.45倍、95%信頼区間[CI]:1.2~5.0、p=0.012)。 治療不成功までの期間中央値は、単独群16.7ヵ月、シクロスポリン併用群53.3ヵ月、MTX併用群は観察できなかった(単独群の増大比1.95倍、95%CI:1.20~3.15、p=0.009)。 プレドニゾン中断までの期間は、単独群35.8ヵ月に対し、併用群は29.4~29.7ヵ月であった(p=0.002)。 有害事象の発現頻度は、シクロスポリン併用群で有意に多く、皮膚や皮下組織障害、消化器系システム障害、一般・全身障害がみられた。 感染症、寄生虫感染症はシクロスポリン併用およびMTX併用群で多くみられた。なお試験期間中の死亡例は報告されていない。

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プライマリケア医に糖尿病診療マニュアルは有用か

  国立国際医療研究センター病院では、一般診療所・クリニック向けに診療の最適化と病診連携の観点から「糖尿病標準診療マニュアル」を作成・配布し、糖尿病診療の均てん化などを図っている。 本診療マニュアルは、インターネットで一般無料公開されており、内容は半年ごとに改訂され、検査の頻度や選択薬剤の優先度を明記するとともに、エビデンスの系統的な批評・査定による推奨を記載し、専門医・拠点病院への紹介の適応とタイミングも述べられている。 今回、本診療マニュアルの有用性がランダム化試験で研究され、その結果、糖尿病合併症に関して、診療の質を改善することが能登 洋氏(聖路加国際病院内分泌代謝科)によって示唆された。また、血糖コントロール・合併症罹患率・病診連携などに関する長期試験での更なる検証も重要としている。Journal of Diabetes Investigation誌に掲載(Accepted manuscript online:2015年12月12日)。 エビデンスに基づいた多数の診療ガイドラインや診療マニュアルの有効性が、わが国では検証されていないことに鑑み、本研究では、「糖尿病標準診療マニュアル」が、地域のかかりつけ医に通院する2型糖尿病患者の診療の質(Quality Indicator:QI)を改善するかどうかを検証した。 本研究は、かかりつけ医を対象に、「糖尿病治療ガイド」に加えて「糖尿病標準診療マニュアル」を配布する群(介入群)と前者のみを配布する群(対照群)の2群に割り付け、QIを比較するクラスター・ランダム化比較試験とした。参加かかりつけ医には評価項目をマスクし、主要評価QIとして診療達成目標遵守割合(糖尿病網膜症評価[1回/年]遵守率・尿中微量アルブミン測定[1回/6ヵ月]遵守率・血中クレアチニン[1回/6ヵ月]遵守率)を指標とした。また、副次評価QIとしてHbA1c測定[1回/3ヵ月]遵守率・血圧測定[1回/3ヵ月]遵守率・総コレステロール(またはLDLコレステロール)測定[1回/3ヵ月]遵守率の診療達成目標遵守割合とHbA1c値を指標とした。 主な結果は以下のとおり。・8地区42人の一般医が参加し、計416人の糖尿病患者が登録された。・介入群(n=234)・対照群(n=182)のベースライン平均HbA1c値はそれぞれ7.1%、 7.0%(p=0.76)であり、各QIにも有意差はなかった。・介入後1年間で、尿中微量アルブミン測定の実施率は、「糖尿病標準診療マニュアル」により有意に向上した(17.9% vs.5.3%、p=0.016)が、他のQIには両群間で有意な変化はなかった。・介入後の平均HbA1c値にも両群間で有意差はなかった(7.1% vs.7.1%、p=0.90)。  詳しい論文内容については、こちら『糖尿病標準診療マニュアル』の入手は、こちら関連コンテンツ診療よろず相談TV 「糖尿病」はこちら

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第1子と第2子妊娠間の体重増、死産・新生児死亡リスク増大/Lancet

 第1子妊娠から第2子妊娠の間に母親の体重が増加すると、死産や新生児死亡リスクが増大することが確認された。とくに死産リスクについては、体重増と線形増加の関連性が認められた。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のSven Cnattingius氏らが、約46万人の女性を対象に行った住民ベースのコホート試験の結果、明らかにした。著者は、「今回示された結果は、健康で過体重の女性について妊娠前の体重増を防止する必要があること、過体重女性では減量の促進が必要であることを強調するものである」と指摘している。Lancet誌オンライン版2015年12月2日号掲載の報告。第1子・第2子妊娠初期BMIと出生児死亡リスクについて分析 研究グループは、1992年1月1日~2012年12月31日に第1子と第2子を出産し、いずれも単産だった女性を対象にコホート試験を行った。 母親の第1子・第2子妊娠それぞれ初期のBMIと、死産(在胎28週後に限定)や乳児(在胎22週以上で出生後28日未満)・後期乳児(同28日以上)・新生児(同1歳未満)死亡の発生を調べた。二項回帰分析を行い、妊娠間のBMI変化と各死亡率について相対リスク(RR)を算出し評価した。第1子と第2子妊娠間にBMI値4以上増加で死産リスク1.55倍 試験期間中に第1子、第2子を出産した女性58万7,710人のうち、完全な情報が得られた45万6,711人(77.7%)について分析を行った。 その結果、第1子妊娠期BMI値と第2子妊娠期BMI値との変化が-1~1と安定していた母親と比べ、4以上増加した母親では、死産RRは1.55(95%信頼区間:1.23~1.96)、新生児死亡RRは1.29(同:1.00~1.67)といずれも増大がみられた。 死産リスクについては、BMI増加に対して線形増加の有意な関連が認められた(傾向のp<0.0001)。 第2子新生児死亡リスクは、第1子妊娠期BMIが25未満と標準だった母親のみで、BMI増加に伴いリスクの増大がみられた。BMIが2~4増加したときの補正後新生児死亡RRは1.27(同:1.01~1.59)、4以上増加では1.60(同:1.16~2.22)だった。 第1子妊娠初期BMIが25以上の過体重の母親については、BMI減により乳児死亡リスクの低下がみられた(RR:0.49、95%CI:0.27~0.88)。

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高度アルツハイマー病へのドネペジル投与は続けたほうがよいのか

 地域で暮らす中等度~高度のアルツハイマー病患者に対するドネペジル投与の中止は、当初1年間は介護施設入居リスクを増大するが、その後の3年間はドネペジル継続群と差はないことが示された。英国・ロンドン大学のRobert Howard氏らが、ドネペジルとメマンチンの投与について検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「DOMINO-AD」の結果から報告した。複数の先行観察研究で、認知症の薬物治療に伴い介護施設入居時期が遅くなることが示唆されているが、軽度~中等度のアルツハイマー病患者を対象とした先行無作為化試験では、影響がないとする結果が示されていた。今回の結果を踏まえて著者らは、「継続の有益性が明白ではないとしても、ドネペジル治療の中止か継続かの決定は、中止による潜在的リスクを知らせたうえで行うべきである」と述べている。Lancet Neurology誌2015年12月号の掲載報告。 DOMINO-AD試験は、イングランドとスコットランドにある15の2次医療施設から被験者を募って行われた。対象は、地域で暮らす中等度~高度のアルツハイマー病患者で、ドネペジル10mgを3ヵ月以上継続処方され、直近6週間以上継続しており、標準化されたMini-Mental State Examination(MMSE)スコア5~13点であった。研究グループは被験者を、(1)ドネペジル(10mg/日)継続/メマンチンなし(継続群)、(2)ドネペジル中止/メマンチンなし(中止群)、(3)ドネペジル中止/メマンチン20mg/日開始(切り替え中止群)、(4)ドネペジル(10mg/日)継続/メマンチン(20mg/日)開始(併用継続群)のいずれかに無作為に割り付け、52週間治療を行った。52週以降の治療法の選択は、被験者および担当医師に任された。試験開始後52週間、居住地の記録を取り、その後3年間は26週間ごとに記録した。本検討では、本試験で副次アウトカムであった介護施設(nursing home)への入居(独居生活から住居型ケア施設への不可逆的な移動)について評価した。また、二重盲検期完了後1年間のフォローアップ期間における入居リスクについて、事後解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・2008年2月11日~10年3月5日に、継続群73例(25%)、中止群73例(25%)、切り替え群76例(26%)、併用群73例(25%)に無作為に割り付けられた。・無作為後4年間に162例(55%)が介護施設へ入居した。・各群における入居者数は同程度であった。継続群36例(49%)、中止群42例(58%)、切り替え群41例(54%)、併用群43例(59%)。・試験開始当初1年間、統合ドネペジル中止群の介護施設入居が、統合ドネペジル継続群と比べて有意に多かった(ハザード比:2.09、95%信頼区間[CI]:1.29~3.39)。しかし、その後の3年間で差はなくなり(同:0.89、0.58~1.35)、治療効果の経時的な不均一性が有意であることが判明した(p=0.010)。・メマンチン開始群と非開始群との比較では、1年目(同:0.92、0.58~1.45)あるいはその後3年間(同1.23、0.81~1.87)ともに、患者への影響は認められなかった。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度? 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か?  担当者へのご意見箱はこちら

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嚢胞性線維症〔CF : cystic fibrosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)は、欧米白人の出生2,000~3,000人に1人と、比較的高い頻度で認められる常染色体劣性遺伝性疾患であるが、日本人にはきわめてまれとされている。1938年にAndersonにより、膵外分泌腺機能異常を伴う疾患として初めて報告されて以来、現在では全身の外分泌腺上皮のCl-移送機能障害による多臓器疾患として理解されている。近年のCFに関する遺伝子研究の進歩により、第7染色体長腕にあるDNAフラグメントの異常(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR遺伝子変異)がCFの病因であることがわかってきた。このCFTR遺伝子変異は、世界中で400種類以上報告されており、△F508変異(エクソン10上の3塩基欠失によるCFTR第508番アミノ酸であるフェニルアラニンの欠失)が、欧米白人におけるCF症例の約70%に認められている。■ 疫学かつては東洋人と黒人にはCFはみられないと考えられていたが、現在では約10万人に1人と推測されている。わが国では厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班によってCFの実態調査が行われ、1952年にわが国での第1例の報告以来、1980年の集計で46例が報告された。その後、当教室における1993年までの集計によって、104例(男57例、女47例)のCF患者の報告を認めている。単純に計算すると、わが国におけるCF患者の頻度は出生68万人に1人の割合となるが、CFに対する関心が高まったことなどから、1980年以降の頻度は出生35万人に1人の割合となり、確定診断に至らなかった例や未報告例などを考慮すると、真の頻度はさらに高いものと思われる。また、2009年の全国調査では、過去10年間の患者数は44例程度と報告されている。日本人CF症例の遺伝子解析の検討は少なく、王らは3例のCF患児に、花城らはCF患児1例にそれぞれ△F508変異の有無を検索したが、この変異は認められなかった。また、古味らは、△F508変異に加えてCFTR遺伝子のエクソン11に存在するG542X、G551D、およびR553X変異の有無も検索したが、いずれの変異も認められなかった。筆者らは、NIH(米国国立衛生研究所)のgenctic research groupとの共同研究により5例のCF患者およびその家族の遺伝子解析を行い、興味ある知見を得ている。すなわち全例において、△F508変異をはじめとする16種類の既知のCFTR遺伝子変異は認められなかったが、single stand conformational polymorphism analysisにより4例においてDNAシークエンスの変異を認めた(表1)。この変異が未知のCFTR遺伝子変異であるのか、あるいはCFTR遺伝子とは関係しないpolymorphismであるのかの検討が必要である。画像を拡大する■ 病因1985年にWainwrightらによって、第7染色体上に存在することが確認されたCF遺伝子が、1989年にMichigan-Toronto groupの共同研究により初めて単離され、CFTRと命名された。RiordanらによりクローニングされたCFTR遺伝子は、長さ250kbの巨大な遺伝子で、1,480個のアミノ酸からなる膜貫通蛋白をコードしている(図1)。翻訳されたCFTR蛋白の構造は、2つの膜貫通部(membrane spanning domain)、2つのATP結合構造(nucleotide binding fold:NBF 1、NBF 2)、および調節ドメイン(regulatory domain)の5つの機能ドメインからなっている。1991年にはRichらの研究により、CFTR蛋白自身がCl-チャンネルであることが証明され、最近では、NBF1とNBF2がCl-チャンネルの活性化制御に異なる機能を持つことが報告されている。このCFTR遺伝子の変異がイオンチャンネルの機能異常を生じ、細胞における水・電解質輸送異常という基本病態を形成していると考えられている。CFTR遺伝子のmRNA転写は、肝臓、汗腺、肺、消化器などの分泌および非分泌上皮から検出されている。CFTR遺伝子変異のなかで過半数を占める主要な変異が、CF患者汗腺のCFTR遺伝子のクローニングにより同定された△F508変異である。この△F508変異は欧米白人におけるCF症例の約80%に認められているが、そのほかにも、400種類以上の変異が報告されており、これらの変異の発生頻度および分布は人種や地域によって異なっている(表2)。△F508変異の頻度は、北欧米諸国では70~80%と高く、南欧諸国では30~50%と低いが、東洋人ではまだ報告されていない。画像を拡大する画像を拡大する■ 症状最も早期に認められ、かつ非常に重要な症状として、胎便性イレウスによる腸閉塞症状が挙げられる。粘稠度の高い胎便が小腸を閉塞してイレウスを惹起する。生後48時間以内に腹部膨満、胆汁性嘔吐を呈し、下腹部に胎便による腫瘤を触れることがある。腸管の狭窄や閉塞がみられることもある。わが国におけるCF症例の集計では、27.9%が胎便性イレウスで発症している(表3)。膵外分泌不全症状は約80%の症例で認められ、年齢とともに症状の変化をみることもある。食欲は旺盛であるが、膵リパーゼの分泌不全による脂肪吸収不全のため多量の腐敗臭を有する脂肪便を排泄し、栄養不良による発育障害を来してくる。低蛋白血症による浮腫、ビタミンK欠乏による出血傾向、低カルシウム血症によるテタニーなどの合併症を認める場合もある。粘稠な分泌物の気管および気管支内貯留と、それに伴うブドウ球菌や緑膿菌などの感染により、多くは乳児期から気管支炎、肺炎症状を反復して認めるようになる。咳嗽、喘鳴、発熱、呼吸困難などの症状が進行性にみられ、気管支拡張症、無気肺、肺気腫などの閉塞機転に伴う病変が進展し慢性呼吸不全に陥り、これが主な死亡原因となる。胸郭の変形、バチ状指、チアノーゼなども認められる。CF患者では汗の電解質、とくにCl濃度が異常に高く、多量の発汗によって電解質の喪失を来し、発熱や虚脱などの“heat prostration”と呼ばれる症状を呈することが知られている。その他の症状として、閉塞性黄疸、胆汁性肝硬変、耐糖能異常、副鼻腔炎症状などをはじめとする種々の合併症状が報告されている。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ CFの一般的な診断法表4にわが国のCF患者104例における確定診断時の年齢分布を示した。全症例の半数以上である64例(61.5%)が1歳までにCFと診断されており、新生児期にCFと診断された30例(28.8%)のうち29例が胎便性イレウスにて発症した症例であった。したがって、胎便性イレウス症候群では、常にCFの存在を念頭におき、メコニウム病(meconium ileus without CF)との鑑別を行っていく必要がある。CFの診断には、汗の電解質濃度の測定が必須であり、Cl濃度が60mEq/L以上であればCFが疑われる。Pilocarpine iontophoresis刺激による汗の採取法が推奨されているが、測定誤差が生じやすく、複数回測定する必要がある。当教室では米国Wescor社製の発汗刺激装置および汗採取コイルを使用し、ほとんど誤差なく簡便に汗の電解質濃度を測定している。CFを診断するうえで、膵外分泌機能不全の存在も重要であり、その診断は、脂肪便の有無、便中キモトリプシン活性の測定、PFD試験やセクレチン試験などによって行っていく。X線検査により、気管支拡張症、無気肺、肺気腫などの肺病変の診断を行う。画像を拡大する■ CFのマス・スクリーニング欧米において、1973年ごろよりCFの新生児マス・スクリーニングが試みられるようになり、1981年にCrossleyらが乾燥濾紙血のトリプシン濃度をradioimmunoassayにて測定して以来、CFの新生児マス・スクリーニング法として、乾燥濾紙血のトリプシン濃度を測定する方法が広く用いられるようになった。さらに1987年にはBowlingらが、より簡便で安価なトリプシノーゲン濃度を測定し、感度および特異性の点からもCFの新生児マス・スクリーニング法として非常に有用であると報告している。筆者らも、わが国におけるCFの発生率を調査する目的で東京都予防医学協会の協力を得て、CFの新生児マス・スクリーニングを行った。方法は、先天性代謝異常症の新生児マス・スクリーニング用の血液乾燥濾紙を使用し、Trypsinogen Neoscreen Enzyme Immunoassay Kitにて血中トリプシノーゲン値を測定した。結果は、3万2,000例のトリプシノーゲン値は、31.8±8.9ng/mLであり、Bowlingらが示した本測定法におけるカットオフポイントである140ng/mLを超えた症例はなかった(図2)。画像を拡大する■ CFの遺伝子診断CFの原因遺伝子が特定されたことにより、遺伝子診断への期待が高まったが、CF遺伝子の変異は人種や地域によってまちまちであり、本症の遺伝子診断は足踏み状態であると言わざるを得ない。欧米白人では、△F508変異をはじめとするいくつかの頻度の高い変異が知られており、これらの検索はCFの診断に大いに役立っている。しかしながら、わが国のCF症例における共通のCF遺伝子の変異は、まだ特定されておらず、PCR-SSCP解析と直接塩基配列解析を用いて遺伝子変異を明らかにすることが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法新生児期にみられる胎便性イレウスに対しては、ガストログラフィンによる浣腸療法などが試みられるが、多くは外科手術が必要となる。膵外分泌不全による消化吸収障害に対しては、膵酵素剤の大量投与を行う。しかし近年、膵酵素剤の大量投与による結腸の炎症性狭窄の報告も散見され、注意が必要である。胃酸により失活しない腸溶剤がより効果的である。栄養障害に対しては高蛋白、高カロリー食を与え、症例の脂肪に対する耐性に応じた脂肪摂取量を決めていく。中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、膵酵素を必要とせずに吸収されるため、カロリー補給には有用である。必須脂肪酸欠乏症に対しては、定期的な脂肪乳剤の経静脈投与が必要である。脂溶性ビタミン類の吸収障害もみられるため、十分量のビタミンを投与する。呼吸器感染に対しては、気道内分泌物の排除を目的としてpostural drainageと理学訓練(physiotherapy)を行い、吸入療法および粘液溶解薬や気管支拡張薬などの投与も併せて行っていく。感染の原因菌としてはブドウ球菌と緑膿菌が一般的であるが、検出菌の感受性テストの結果に基づいて投与する抗菌薬の種類を決定していく。1~2ヵ月ごとに定期的に入院させ、2~3剤の抗菌薬の積極的な予防投与も行われている。抗菌作用、抗炎症作用、線毛運動改善作用などを期待してマクロライド系抗菌薬の長期投与も行われている。肺機能を改善する組み換えヒトDNaseの吸入療法や気道上皮細胞のNa+の再吸収を抑制するためのアミロイド、さらに気道上皮細胞からのCl-分泌促進のためのヌクレオチド吸入療法などが、近年試みられている。4 今後の展望まずは早期に診断して、適切な治療や管理を行うことが大切であり、その意味から早期診断のための汗のCl-濃度を測定する方法の普及が望まれる。さらに遺伝子検索を行うにあたっての労力と費用の負担が軽減されることが必要と思われる。適切な治療を行うためには、今後も肺や膵臓および肝臓の機能を改善させたり、呼吸器感染症を予防する新薬の開発が望まれる。さらに遺伝子治療や肺・肝臓移植が可能となり、生存年数が欧米並みに30歳を超えるようになることを期待したい。5 主たる診療科小児科、小児外科、呼吸器内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査 一次調査の集計(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業)難病情報センター:膵嚢胞線維症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病患者支援の会(内閣府認定NPO法人、腎移植や肝移植などの情報提供)Japan Cystic Fibrosis Network:JCFN(嚢胞性線維症患者と家族の会)1)成瀬達ほか.第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査.厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「難治性膵疾患に関する調査研究」平成21年度 総括・分担研究報告書. 2010; 297-304.2)Flume PA, et al. Am J Respir Care Med. 2007; 176: 957-969.3)清水俊明ほか.小児科診療.1997; 60: 1176-1182.4)清水俊明ほか.小児科. 1987; 28: 1625-1626.5)Wainwright BJ, et al. Nature. 1985; 318: 384-385.公開履歴初回2013年08月15日更新2015年12月15日

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第1回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院腫瘍化学療法外科、同大学院がんプロフェッショナル養成基盤推進プランは、2016年1月24日(日)に、「がんを考える」市民公開講座を開催する。本講座は、地域がん診療連携拠点病院となった同院の活動の一環として行う、がんに関するさまざまなテーマの公開講座の初の試み。第1回は、がん種を問わず、がんと診断された患者・家族の生活に、明日から役立つ情報の提供を目指した内容になっている。見て、触って、理解が深まるブース展示も多数予定している。 開催概要は以下のとおり。【日時】 2016年1月24日(日) 《セミナー》13:00~16:40 《ブース展示》12:00~17:00【場所】 東京医科歯科大学 M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂 〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45【参加費】 無料(※参加申し込みは不要です。)【テーマ】 患者・家族のための「がんとの付き合い方」【予定内容】 《セミナー》 13:00~16:40 鈴木章夫記念講堂 13:00~13:10  開会挨拶  三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長) 13:10~13:50  講演1  がんと診断されたら ~受け止め方、周りの人との関わり方~  松島 英介氏 (東京医科歯科大学医学部附属病院 心身医療科 科長[教授]) 13:50~14:30  講演2  がんとともに働く ~知っておきたい仕事とお金に関する制度~  近藤 明美氏(近藤社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士) 14:30~14:40  休憩 14:40~15:00  医科歯科大のがん治療update①  頭頸部がんってなに? 頭頸部がんにならないための生活習慣  朝蔭 孝宏氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 頭頸部外科 科長[教授]) 15:00~15:20  医科歯科大のがん治療update②  医科歯科大の放射線治療:小線源治療をご存知ですか?  吉村 亮一氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 放射線治療科 科長[教授]) 15:20~15:40  医科歯科大のがん治療update③  「認定看護師」ってなに? ~私たちにご相談ください~  東京医科歯科大学医学部付属病院 認定看護師 15:40~15:50  休憩 15:50~16:30  講演3  自分らしい「逝き方」を考える  三宅 智氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター センター長) 16:30~16:40 閉会挨拶  植竹 宏之氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科 科長[教授]) 《ブース展示》 12:00~17:00 講堂前ホワイエ ■がんと栄養・食事(東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部) ■がんと口腔のケア(お口の楽しみ支え隊[東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科]) ■メイク・ウィッグを楽しもう!(アプラン東京義髪整形 with 山崎 多賀子氏) ■在宅治療の味方 CV ポート(株式会社メディコン) ■がんと家計(がんと暮らしを考える会) ■がん患者・家族へのピアサポート紹介(特定非営利活動法人がん患者団体支援機構) ■がん相談支援センター活用のすすめ(東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター) ■NPO法人キャンサーネットジャパン ■あご・顔・口の中のがん患者の会 えがおの会 ■若年性がん患者団体 STAND UP !!【共催】 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科 東京医科歯科大学大学院 がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン【協力】 NPO法人 キャンサーネットジャパン【後援】 東京医科歯科大学医師会/東京都医師会/文京区/東京都(予定)第1回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座 詳細はこちら。(PDF)画像を拡大する

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統合失調症では認知症リスクが増加

 統合失調症患者では認知症の相対リスクが著明に増加することが、デンマーク・オーフス大学のAnette Riisgaard Ribe氏らによる、デンマークの全国登録を用いた大規模コホート研究の結果、示された。そのリスク増加は、既知の認知症危険因子とは独立しており、とくに65歳未満の統合失調症患者で認知症リスクが高かったという。統合失調症は、加齢に伴う疾患や認知障害と関連しているが、統合失調症がない場合と比べて認知症になるリスクが高いかどうかは不明であった。JAMA Psychiatry誌2015年11月1日号の掲載報告。 研究グループは、年齢と既知の認知症危険因子を考慮したうえで、統合失調症患者の認知症リスクを、統合失調症のない人(非統合失調症者)と比較する検討を行った。デンマークの6つの全国登録から50歳以上280万人のデータを用い、1995年1月1日~2013年1月1日まで18年間追跡した。2万683人が統合失調症患者であった。解析は2015年1月1日~4月30日に行われ、非統合失調症者と比較した統合失調症患者の認知症罹患率比(IRR)と認知症累積発症割合(CIP)を主要評価項目とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中13万6,012例が認知症を発症した。このうち、統合失調症患者は944例であった。・統合失調症患者では、あらゆる原因による認知症のリスクが年齢、性別、発症時期で調整後も2倍以上に上った(IRR:2.13、95%信頼区間[CI]:2.00~2.27)。・そのリスクは、心血管疾患や糖尿病などの内科的併存疾患で調整した場合でも、ほとんど変わらなかった(IRR:2.01、95%CI:1.89~2.15)。しかし、薬物乱用で調整した場合はわずかに減少した(IRR:1.71、95%CI:1.60~1.82)。・統合失調症と認知症リスクとの関連は、患者背景や併存疾患の有無によるサブグループ解析でも同様に認められ、特に65歳未満(IRR:3.77、95%CI:3.29~4.33)、男性(IRR:2.38、95%CI:2.13~2.66)、パートナーと同居(IRR:3.16、95%CI:2.71~3.69)、脳血管疾患なし(IRR:2.23、95%CI:2.08~2.39)、および薬物等乱用なし(IRR:1.96、95%CI:1.82~2.11)でIRRが高かった。・65歳までに認知症を発症するCIP(95%CI)は、統合失調症患者で1.8%(1.5~2.2%)、非統合失調症者で0.6%(0.6~0.7%)、80歳までに認知症を発症するCIPはそれぞれ7.4%(6.8~8.1%)および5.8%(5.8~5.9%)であった。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能低下への関連因子は 統合失調症では前頭葉の血流低下による認知障害が起きている:東京大学 アルツハイマー病へ進行しやすい人の特徴は  担当者へのご意見箱はこちら

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睡眠時無呼吸症候群へのCPAP/MADの降圧効果/JAMA

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者に対して、持続的気道陽圧(CPAP)または下顎前方誘導装置(mandibular advancement devices:MAD)のいずれの治療法によっても同等の降圧効果を得られることが、スイス・チューリッヒ大学病院のDaniel J. Bratton氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、示された。ネットワークメタ解析の結果、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)ともに、治療間における降圧の統計的な有意差はみられなかったという。JAMA誌2015年12月1日号掲載の報告。CPAP、MADの降圧効果についてシステマティックレビュー、メタ解析 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は血圧高値と関連しており、心血管リスクの増大に結び付く可能性が指摘されている。研究グループは、CPAP、MADおよび対照(プラセボまたは無治療)について、SBP、DBPの変化との関連性を比較した。 2015年8月末時点でMEDLINE、EMBASE、Cochrane Libraryを検索し、CPAPもしくはMADの影響を比較(両者を比較またはそれぞれ対照と比較)した無作為化試験を特定してレビューを行った。 レビュワー1人がデータを抽出し、別の1人がそれをチェック。多変量ランダム効果メタ回帰法を用いて治療間の差を算出プールし、ネットワークメタ解析を行った。またメタ回帰分析法を用いて、試験特性間およびCPAP vs.対照の効果を評価した。 主要評価項目は、ベースラインからフォローアップまでのSBP、DBP変化の絶対値とした。対対照でCPAP、MADとも有意に降圧、CPAP対MADに有意差なし 検索により872本の試験が特定され、そのうち51本(被験者4,888例)を解析に組み込んだ。44本がCPAP vs.対照、3本がMAD vs.対照、1本がCPAP vs.MAD、3本がCPAP、MADと対照を比較した試験であった。 対照との比較において、CPAPによる有意な降圧が認められ、その差はSBPでは2.5mmHg(95%信頼区間[CI]:1.5~3.5mmHg、p<0.001)、DBPは2.0mmHg(同:1.3~2.7mmHg、p<0.001)であった。またCPAP施行を1夜当たり1時間延長することで、さらにSBPは1.5mmHg(95%CI:0.8~2.3mmHg、p<0.001)、DBPは0.9mmHg(同:0.3~1.4mmHg、p=0.001)の降圧が認められた。 MADも、対照との比較において有意な降圧が認められた。その差はSBPで2.1mmHg(95%CI:0.8~3.4mmHg、p=0.002)、DBPは1.9mmHg(同:0.5~3.2mmHg、p=0.008)であった。 CPAPとMADの降圧に有意な差はみられず、その差はSBPで-0.5mmHg(95%CI:-2.0~1.0mmHg、p=0.55)、DBPで-0.2mmHg(同:-1.6~1.3mmHg、p=0.82)であった。

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重度うつ病、抗うつ効果の即効性を上げる方法

 経口抗うつ薬は数週間後に効果が現れるのに対し、ケタミン単回静脈内投与(静注)は効果の持続期間は限られているものの迅速な抗うつ効果を発揮する。中国・首都医科大学のY.D.Hu氏らは、4週間の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行い、エスシタロプラム+ケタミン単回静注増強療法が重度の大うつ病性障害(MDD)に対して有効かつ安全であることを明らかにした。著者は、「エスシタロプラム+ケタミン単回静注増強療法は、経口抗うつ薬治療の効果発現を早める可能性がある」とまとめている。Psychological Medicine誌オンライン版2015年10月19日号の掲載報告。 研究グループは、ハミルトンうつ病評価尺度(HRSD-17)スコア24点以上の重度MDD外来患者30例を、エスシタロプラム(10mg/日)+ケタミン単回静注(0.5mg/kg、40分で静注)群(ケタミン増強療法群)、またはエスシタロプラム(10mg/日)+プラセボ(0.9%生理食塩水静注)群(プラセボ群)に無作為に割り付け、4週間投与した。 投与前、投与1、2、4、24および72時間後、1週、2週、3週および4週後に、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)および自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SR)を用いうつ症状を、QIDS-SRの項目12で自殺企図を評価した。また、簡易精神症状評価尺度(BPRS)の陽性症状、ヤング躁病評価尺度(YMRS)およびClinician Administered Dissociative States Scale(CADSS)を用い有害な精神病症状を評価した。主要評価項目は、効果発現までの期間(MADRSスコアの50%以上減少)である。 主な結果は以下のとおり。・ケタミン増強療法群ではプラセボ群に比べ、効果発現までの期間(ハザード比[HR]:0.04、95%信頼区間[CI]:0.01~0.22、p<0.001)および寛解までの期間(HR:0.11、95%CI:0.02~0.63、p=0.01)が有意に短く、4週後の反応率(92.3% vs.57.1%、p=0.04)および寛解率(76.9% vs.14.3%、p=0.001)も有意に高かった。・ケタミン増強療法群ではプラセボ群と比較して、MADRSスコア(投与2時間後~2週後)、QIDS-SRスコア(投与2時間後~2週後)、QIDS-SR自殺企図スコア(投与2時間後~72時間後)もそれぞれ有意に低下した。・ケタミン増強療法群において、投与1時間後および2時間後のYMRS得点のみ有意に増加したが、BPRSおよびCADSSの有意な増加はみられなかった。関連医療ニュース 難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か ケタミンは難治性うつ病に使えるのか 治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬の比較  担当者へのご意見箱はこちら

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抗Xaの囮療法の評価をどうする?(解説:後藤 信哉 氏)-459

 血液凝固検査は、細胞の存在しない液相で施行される。しかし、生体内の血液凝固反応は活性化細胞膜上、白血球上などのリン脂質膜上にて主に起こる。ワルファリンは、血液凝固因子第II、VII、IX、X因子と生体膜のphosphatidylserineの結合を阻害する効果を有した。ワルファリン服用下では、液相での血液凝固検査における凝固系の機能異常以上に、生体内における細胞膜を介した凝固系も効率的に予防した。いわゆる新規の経口抗トロンビン薬、抗Xa薬は、凝固因子のトロンビン産生、フィブリン産生の酵素作用を可逆的に阻害する。ワルファリンとは作用メカニズムが異なるので、中和作用も異なる。抗トロンビン薬ダビガトランは、液相、細胞膜上の両者にてフィブリノーゲンからフィブリンを産生するトロンビンの作用を阻害している。トロンビンに結合するダビガトランを単純に失活させれば、中和薬としての効果を期待できた。 抗Xa薬も、液相ではXaの酵素活性部位から抗Xa薬を除いて失活させることを目標とすればよい。その方法は、ダビガトランの中和薬と同様でよい。しかし、トロンビンを産生するプロトロンビナーゼ複合体を形成するXaが、液相のXaと同じ動態をとるか否かは未知である。Xaに類似した構造を持ちつつ、Xaとして酵素作用がなく、かつ活性化血小板膜に集積できないXaデコイ(囮)が中和薬として開発された。液相のXa活性を指標とすれば、Xaデコイ(囮)により抗Xa薬の薬効は中和できることが本論文にて示された。 しかし、血小板細胞上などでのプロトロンビナーゼ活性阻害を中和したか否かは明確ではない。本研究は出血、血栓リスクの高い症例に対する研究ではなく、健常人を対象とした研究である。本研究の結論は、液相中の抗Xa活性を中和したことのみを支持すると考えるべきである。 抗血栓薬を中和すると、逆に血栓リスクが増すと想定される。実際、トロンビン産生のマーカーであるF1+2、線溶の指標であるD-dimerは中和薬投与後に上昇している。本研究は、バイオマーカーの計測を精緻に行った研究である。抗Xa薬に対する「Decoy(囮)」療法は科学的には新規のチャレンジである。臨床的インパクトの有無の評価は、今後の課題である。

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転移性膵臓がん、イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸で生存延長/Lancet

 ゲムシタビン治療歴のある転移性膵臓がんの患者に対して、ナノリポソーム型イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸(NAPOLI-1)の投与が、ナノリポソーム型イリノテカン単独投与やフルオロウラシル/葉酸のみの投与に比べ、生存期間は有意に延長することが示された。米国・ワシントン大学のAndrea Wang-Gillam氏らによる第III相の非盲検無作為化比較試験の結果、報告された。第II相試験で、同患者へのナノリポソーム型イリノテカン単独投与の有効性が示され、研究グループは第III相試験では、単独投与とフルオロウラシル/葉酸を併用した場合を比較した。Lancet誌オンライン版2015年11月20日号掲載の報告。14ヵ国76ヵ所で417例を対象に試験 試験は2012年1月11日~13年9月11日にかけて、14ヵ国76ヵ所の医療機関を通じ、ゲムシタビン治療歴のある転移性膵臓がんの患者417例を対象に行われた。 研究グループは被験者を無作為に3群に分け、1群には、ナノリポソーム型イリノテカン単独投与(151例、3週間ごとに120mg/m2)を、別の群にはフルオロウラシル+葉酸を投与し(149例)、もう1つの群には、ナノリポソーム型イリノテカン(80mg/m2)+フルオロウラシル/葉酸を併用投与した(117例)。いずれも、病勢進行または耐えがたい毒性作用が生じるまで投与を継続した。 主要評価項目は、ITT(intention-to-treat)解析による生存期間だった。イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸群の生存期間6.1ヵ月 313例が死亡した時点で、イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸群の生存期間中央値は、6.1ヵ月(95%信頼区間:4.8~8.9)だった。 それに対し、フルオロウラシル+葉酸群の同中央値は、4.2ヵ月(同:3.3~5.3)と有意に短かった(ハザード比:0.67、同:0.49~0.92、p=0.012)。また、イリノテカン単独投与群の生存期間は、4.9ヵ月(同:4.2~5.6)で、フルオロウラシル+葉酸群と同等だった(p=0.94)。 イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸群で、発現頻度が高かったGrade3/4の有害事象は、好中球減少症が32例(27%)で、下痢15例(13%)、嘔吐13例(11%)、疲労感16例(14%)だった。

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重症うつ病の寛解率、治療法により違いがあるか

 ベースラインのうつ病重症度は、認知行動療法(CBT)と抗うつ薬による薬物療法(ADM)間の重症度や治療反応率、寛解率の差に影響しないことが示された。オランダ・アムステルダム自由大学のErica S. Weitz氏らが、システマティックレビューの結果、報告した。現行ガイドラインにおいて、重度のうつ病には薬物療法が推奨されているが、著者らは、「今回の結果は、外来患者にADMを推奨するにあたってベースラインの重症度のみでは、データが不十分であることを示している。他の薬物療法あるいは個々の抗うつ薬や入院患者にそのまま当てはめることはできないが、新しくかつ重大なエビデンスである」とまとめている。JAMA Psychiatry誌2015年11月1日号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、PsycINFO、EMBASE、Cochrane Registry of Controlled Trialsを介して1966~2014年1月1日までの論文を検索し、DSMで定義された抑うつ障害患者を対象にCBTとADMを比較した無作為化臨床試験(RCT)を特定した。著者に1次データの提供を依頼し、欠損データは多重代入法を用いて補完し、研究レベルの差を調整した混合モデルを使用して治療効果の調整因子(ベースラインのうつ病重症度)を評価した。主要評価項目は、17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)とベックうつ病評価尺度(BDI)であった。 主な結果は以下のとおり。・該当したRCT 24試験のうち1次データが得られた16試験(67%)、外来患者計1,700例(CBT群794例、ADM群906例)を解析に組み込んだ。・有効性は、HAM-DではADM群がCBT群より優れていたが(p=0.03)、BDIでは有意な傾向は認められず(p=0.08、傾向検定)、治療反応率(オッズ比[OR] 1.24、p=0.12)および寛解率(OR 1.18、p=0.22)も両群間で有意差はなかった。・混合効果モデルによる解析の結果、HAM-Dで評価した治療後のうつ症状改善効果に、CBT群とADM群との間でベースラインのうつ病重症度による差はないことが認められた(ベースラインのうつ病重症度と治療群との相互作用のp=0.96)。・BDIを用いた場合でも同様の結果であった。・ベースラインのうつ病重症度は、治療反応率(OR 0.99、p=0.77)および寛解率(OR 1.00、p=0.93)についても治療群間の違いに影響しなかった。関連医療ニュース これからのうつ病治療、どんな介入を行うべきか うつ病への呼吸リラクゼーション併用療法 なぜ高齢期うつ病は寛解率が低いのか  担当者へのご意見箱はこちら

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NASHへのリラグルチド、第II相試験で有望/Lancet

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対するリラグルチドの有効性と安全性が、第II相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果、報告された。組織所見の改善が認められ、安全性および良好な忍容性が確認されたという。英国・バーミンガム大学のMatthew James Armstrong氏らが報告した。結果を踏まえて著者は「長期試験を行う根拠が得られた」と述べている。GLP-1アナログ製剤については、マウスモデルで肝脂肪、肝酵素濃度、インスリン抵抗性の改善が確認されている。製剤は2型糖尿病治療薬としては承認されているが、非アルコール性脂肪性肝炎に対する有効性は明らかになっていない。Lancet誌オンライン版2015年11月19日号掲載の報告。プラセボ対照でベースラインから48週の治療終了時の肝組織所見改善を評価 試験は、2010年8月1日~13年5月31日に、英国の4医療施設で行われた。被験者は無作為に2群に分けられ、一方にはリラグルチド1.8mg/日静注投与、もう一方にはプラセボが投与された。被験者は、過体重で臨床的に非アルコール性脂肪性肝炎と認められた52例で、割り付けは1対1の割合でコンピュータを使用し中央管理下で行われた。なお、試験施設別および糖尿病有無別の層別化も行われた。 本試験のデザインには、A'Hern's single-group法が用いられ、リラグルチドの有効性については、同群38%(8/21例)の臨床的に意義のある効果が認められた場合とした。 患者、研究者、臨床試験施設スタッフ、病理医は試験期間中、治療割り付けを知らされなかった。 主要評価項目は、ベースラインから治療終了時(48週)の線維化無増悪で非アルコール性脂肪性肝炎の組織所見消失とし、中央施設で2人の病理医がそれぞれ評価した。39%で改善を確認、線維化進行は9%に留まる 試験薬投与を受け試験終了時に肝生検を受けた被験者で、組織所見の改善は、リラグルチド群では23例のうち9例(39%)で認められたのに対し、プラセボ群は22例のうち2例(9%)であった(相対リスク:4.3、95%信頼区間[CI]:1.0~17.7、p=0.019)。 また、線維化進行は、リラグルチド群が23例のうち2例(9%)であったのに対し、プラセボ群は22例中8例(36%)であった(同:0.2、0.1~1.0、p=0.04)。 有害事象はGrade1(軽症)~2(中等度)の頻度が最も高く、いずれも一過性で、両群の発現頻度は類似していた。ただし、消化器障害については、リラグルチド群21/23例(81%)でみられた。プラセボ群は17/22例(65%)。症状としては、下痢(リラグルチド群38%、プラセボ群19%)、便秘(27%、なし)、食欲不振(31%、8%)などが報告された。

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TUXEDO-India試験:糖尿病患者でも第1世代DESは不要(解説:上田 恭敬 氏)-457

 Taxus Element versus Xience Prime in a Diabetic Population(TUXEDO)-India Trialにおいては、1,830例の糖尿病を持つPCI予定冠動脈疾患患者を、第1世代DESであるTaxus Element(paclitaxel-eluting stent)群と、第2世代のDESで最も優れた臨床成績を示しているDESの1つであるXience Prime(everolimus-eluting stent)群に無作為に割り付け、「心臓死」・「標的血管を責任血管とする心筋梗塞発症」・「虚血を理由とする標的血管再血行再建術施行」の複合エンドポイントの発生頻度を比較している。Taxus Elementの非劣性を示そうとした試験であったが、複合エンドポイントの頻度が5.6% vs.2.9%とTaxus Elementで有意に高い結果となり、Xience Primeが有意に優れていることが示された。 次々と新しいDESが開発され、さまざまな比較が行われてきたが、今回の問題は第1世代のDESであるCypherとTaxusの比較において、層別解析の結果から糖尿病患者での有効性に差があるかもしれないとの議論に始まる。その本質が薬剤の違いからくるとの仮説から、リムス系薬剤(sirolimus analogue)であるeverolimusと抗がん剤でもあるpaclitaxelの比較という試験デザインになっている。しかし、DESは薬剤の種類だけでなく、その量や経時的溶出パターン、プラットホーム、ポリマーなどさまざまな要素によって千差万別のものが考えられ、それぞれ臨床成績も異なる可能性がある。 実際、同じzotarolimus-eluting stentであっても、EndeavorとResoluteはまったく別物であることは有名である。Endeavorは、最もBMSに近いDESともいわれており、新生内膜は比較的厚くなることで早期の再狭窄率は高いものの、非動脈硬化性・線維性の膜であるために病変が安定な状態となり、急性冠症候群症例に使われても安全性が高いとされてきた。これに対して、Resoluteは新生内膜が非常に薄いために再狭窄率が非常に低く、Xienceとほぼ同等の臨床成績が示されている。すなわち、薬の違いによる臨床成績の差を調べようとすれば、ほかの条件を同じにする必要があるうえに、同じ薬でも量や溶出パターンが違えば、それぞれ違う結果になる可能性がある。そのため、今回の結果はあくまでTaxus ElementとXience Primeの比較試験であって、薬の比較とはいえない。 また、Taxusについては、EndeavorのようにLate lossでみた内腔の再狭小化は大きいが、Endeavorのような臨床的な安定性は認められなかったことから、厚い新生内膜ができることが必ずしも良いことではないとの議論があった。しかし、血管内視鏡やOCTといった血管内画像診断による検討結果からは、Taxusの新生内膜は非常に不均一で、黄色プラークや血栓も高頻度に認めるのに対して、Endeavorの新生内膜はBMSに近く白色均一で、黄色プラークも血栓もほとんど認めないことが明らかとなっており、臨床成績の違いはこの結果からまったく合理的なものであることがわかる。すなわち、大規模臨床試験によって示されるイベント頻度や冠動脈造影所見のみを重視して、病理や血管内画像診断から得られる情報を参考程度にしか考えない現状の認識には問題があると思う。 第1世代のDESであるCypherやTaxusは、それまでPCIのアキレス腱とまでいわれてきた再狭窄を、1年の時点で劇的に減少させたことから、非常に期待を持ったことは間違っていないが、同時に示された上記のような血管内画像診断所見を真摯に捉え、もっと注意深く症例を限定して使用し、長期の臨床成績が出るのを待つべきであったのではないだろうか。1年の短期臨床成績に反して、血管内画像診断所見がCypherやTaxusよりEndeavorのほうが優れていることを示唆していたが、実際5年の長期臨床成績でEndeavorが逆転勝ちしたことは、教訓とすべき事実であろう。

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ゴーシェ病〔GD: Gaucher's disease〕

ゴーシェ病のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義ゴーシェ病は、リソソーム(ライソゾーム)酵素であるグルコセレブロシダーゼ活性低下に基づく肝脾腫・血小板減少を主症状とする常染色体劣性遺伝形式をとる先天性代謝異常症である。■ 疫学ユダヤ人に多く認められ、その頻度は2,500人出生に1人と報告されている。日本人では、その頻度は30万人出生に1人と少なく、現在までに約150人の患者が診断されている。■ 病因リソソーム(ライソゾーム)酵素であるグルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子に変異が起こり、グルコセレブロシダーゼの酵素活性が低下する。結果、その基質であるグルコセレブロシドが肝臓、脾臓、骨髄などの細網内皮系に蓄積することにより発症する。中枢神経症状は、グルコセレブロシダーゼのリゾ体であるグルコシルスフィンゴシンの脳内蓄積によって生じる。■ 症状肝脾腫が主な症状である。骨症状(病的骨折・骨痛)や神経症状を呈する患者も存在する。症状の詳細は分類の項に記載する。■ 分類神経症状の有無と重症度により1型・2型・3型に分類される。1)1型神経症状を伴わない病型で肝脾腫、貧血、易出血傾向、骨症状を主症状とする。発症年齢、骨合併症の有無、肝脾腫の程度などの点において臨床的異質性が顕著な病型である。日本人ゴーシェ病1型は、海外症例に比較して発症年齢が低く、骨合併症の頻度が高く、肝脾腫の程度が重篤であることが特徴である。2)2型乳児期に発症し、肝脾腫に加えて痙攣、後弓反張、喉頭痙攣、異常眼球運動などの神経症状を呈し、これら神経症状が急速に進行する病型である。その最重症型として新生児型が報告されており、胎児水腫として発症する。3)3型肝脾腫に加えて神経症状を伴うが、その発症は2型に比較して遅く、また、その程度や進行も緩徐な病型である。さらに3型は3a、3b、3cの亜型に分類されている。(1)3a型古典的な3型で肝脾腫に加えて痙攣、ミオクローヌス、小脳失調、眼球運動失行などの神経症状を呈する。(2)3b型核上性水平注視麻痺を唯一の神経症状とし、それに加えて重篤な臓器症状(巨大脾腫、骨折・骨痛、呼吸器症状など)を呈する病型である。(3)3c型水頭症、角膜混濁、心弁膜石灰化などユニークな臨床症状を呈する病型である。日本人ゴーシェ病においては、当初1型と診断され、経過中に神経症状を呈し最終的に3型に分類される症例が存在する。日本人ゴーシェ病は、1型が42%、2型が24%、3型が34%と海外に比較して神経型の頻度が高いことが特徴である(海外では約90%が1型である)。■ 予後1型に対しては、酵素補充療法が有効であり、その予後は良好である。2型に対しては、酵素補充療法・骨髄移植とも効果が乏しく、予後はきわめて不良である。3型は、診断時から神経症状を呈する場合、予後は不良だが、診断時に1型と診断され、経過中に神経症状が出現して3型に変化した場合、生命的予後は良好である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)肝脾腫に加えて貧血、血小板減少が認められた場合、ゴーシェ病も念頭に入れて鑑別診断を行う。血清酸性ホスファターゼ高値、アンジオテンシン変換酵素高値が認められた場合、ゴーシェ病の疑いが濃厚である。骨髄穿刺を行い、ゴーシェ細胞の存在が確認されれば、ゴーシェ病の可能性がきわめて高い。確定診断は、培養皮膚線維芽細胞のグルコセレブロシダーゼ活性低下を証明することによってなされる。通常、酵素活性は正常の10%以下である。遺伝子診断は、遺伝子変異の集積性が高いユダヤ人では有用であるが(N370S変異が約70%、84GG変異が約10%を占める)、日本人においてはL444P変異が約35%、F213I変異が約15%を占めるのみで、common mutationのスクリーニングで同定できない変異が約40%存在するため、その有用性は低い。鑑別診断としてニーマンピック病があるが、骨髄中のニーマンピック細胞の存在とスフィンゴミエリナーゼ活性測定により鑑別が可能である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現在、わが国では酵素補充療法、骨髄移植、基質合成抑制療法が保険適応とされており、実地臨床の場で用いられている。グルコセレブロシダーゼcDNAをCHO(Chinese hamster ovary)細胞に導入して作成した、酵素製剤イミグルセラーゼ(商品名: セレザイム)あるいはヒト培養細胞のグルコセレブロシダーゼ遺伝子のプロモーターを活性化させて作製した酵素製剤ベラグルセラーゼ(同: ビプリブ)を、点滴静注する治療法が酵素補充療法である。日本ではすべての病型に適応が認められており、初期投与量として病型、年齢にかかわらず1回60単位/kgを2週間毎に点滴静注する。症状の改善により減量も可能である。血液学的異常や肝脾腫の改善は、治療後6ヵ月から3年程度で認められるが、骨症状の改善には長期間の投与が必要である。骨所見の評価は、単純X線のみではなくMRIでも行う。とくに重症例では、酵素量の減量により骨合併症を発症する例が報告されているので、大腿骨MRIで骨評価を十分に行ってから減量する事が重要である。骨髄移植は1型にも適応はあるが、酵素補充療法が有効かつ安全なので、1型に対しては第1選択ではない。欧米において3型に対する骨髄移植例の報告が散見される。それによると肝脾腫、血液学的異常、低身長の改善のみならず神経症状の進行停止が認められている。したがって、その危険性や侵襲性を考えると、骨髄移植の適応は、酵素補充療法を行っても神経症状が進行する、全身状態の良好な症例であると考えられる。基質合成抑制療法薬であるエリグルスタット(商品名: サテルガ)が、2015年にわが国で認可された。本薬剤は経口薬であり、患者さんにとって利便性が高い。原理としては、グルコシルセラミド合成酵素を介して、グルコシルセラミドの合成を抑制することにより症状を改善させる。効能・効果としては、貧血、血小板減少、肝脾腫の改善であり、神経症状への効果は期待できない。なお、エリグルスタットは、CYP2D6により代謝されるので、使用前に患者のCYP2D6の表現型を確定することが必須である。4 今後の展望酵素補充療法や基質合成抑制療法の大きな問題点は、中枢神経症状に効果が乏しいことである。この欠点を克服するため、シャペロン療法が開発されている。シャペロン療法の利点は経口薬である点、そして薬物が中枢神経に移行するため、中枢神経症状に効果がある点である。ただし、シャペロン療法は遺伝子変異の結果、酵素タンパクの構造が変化し、酵素活性が低下する患者のみにしか効果がない。N-octyl-β-valienamine (NOV)がN188S、G202R、F213I、N370S変異に有効であることがin vitroで明らかにされている。最近、去痰剤であるアンブロキソールが、グルコセレブロシダーゼ活性を上昇させる事が明らかとなり、医師主導の治験が日本で行われている。5 主たる診療科小児科、血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・治療に関する情報日本先天代謝異常学会(医療従事者向けの診療、研究情報 )公的助成情報特定疾患治療研究事業 全国の支援センター一覧(患者向けの支援情報)小児慢性特定疾患治療事業(患者向けの医療費助成情報)患者会情報NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク(難病患児と患児家族の会)公開履歴初回2013年05月23日更新2015年12月08日

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統合失調症へのヨガ補助療法、その有用性は

 インドを発祥とするヨガは古くからある精神修行であるが、現在では西洋でもリラクゼーションおよびエクササイズの1つの形態として受け入れられている。そうした中で、統合失調症患者に対する標準治療の補助療法としての有効性の評価が注目されている。アイルランドのセント・ジェームス病院Julie Broderick氏らは、統合失調症患者に対するヨガの補助療法としての有効性について検討した。検索により統合失調症患者を対象とし、ヨガと標準治療の比較を行っている8件の無作為化対照試験(RCT)をレビューした結果、限定的なサンプルサイズと6ヵ月以下の短期アウトカムではあったが、ヨガ群で良好な結果が示されたことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2015年10月21日号の掲載報告。 Cochrane Schizophrenia Group Trials Register(2012年11月~15年1月29日)を検索し、参考文献についても検索も行った。言語、日付、記事形式、発行状況に関する制限は設けず、統合失調症患者を対象としヨガと標準治療の比較を行っている全RCTを検索対象とした。レビューチームが独立して試験を選択し、質のランク付けとデータ抽出を行った。バイナリアウトカムについて、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)をintention-to-treat を基本に算出。連続データについては、群間の平均差(MD)と95%CI値を算出。混合効果モデル、固定効果モデルを使用し分析した。不均質性(I2法)のデータ検証および対象試験のバイアスリスクを評価し、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)を用いて結果のサマリー表を作成した。  主な結果は以下のとおり。・8件の試験についてレビューを行った。すべてが短期(6ヵ月以下)のアウトカムであった。・多くのアウトカムで明確な差が認められ、ヨガ群に良好な結果が示された。ただし、各アウトカムはそれぞれ1件の試験に基づくものであり、それら試験において早期脱落例は除外されていた。・精神状態(Positive and Negative Syndrome Scaleの改善、RCT 1件、83例、RR:0.70、95%CI:0.55~0.88、エビデンスの質は中等度)、社会的機能(Social Occupational Functioning Scaleの改善、1件、83例、RR:0.88、95%CI:0.77~1、中等度)、QOL(36-Item Short Form Survey[SF-36]のQOLサブスケールの平均変化、1件、60例、MD:15.50、95%CI:4.27~26.73、低い)、早期脱落(8件、457例、RR:0.91、95%CI:0.6~1.37、中等度)であった。・身体的健康のアウトカムについては、明確な群間差は認められなかった(SF-36の身体的健康サブスケールの平均変化、1件、60例、MD:6.60、95%CI:-2.44~15.64、低い)。・有害反応は1件の試験のみで報告されていたが、両群ともに有害事象の発生は認められなかった。・本レビューでは、全身状態、認知機能変化、ケアのコスト、標準治療への影響、サービスの介入、身体障害、ADLなど、非常に多くのアウトカムが欠落していた。・標準治療に対するヨガの優位性を示す複数のエビデンスが認められたが、アウトカムの大半が1件の試験に基づくものであり、サンプルサイズが限定的であること、フォローアップ期間が短期であるという点を慎重に考慮して再評価する必要がある。・全体として、多くのアウトカムが未報告であり、本レビューで示されたエビデンスの質は低~中等度であり、これは、ヨガが統合失調症の管理において標準ケアと比較して有効であるとするには弱いものである。関連医療ニュース 統合失調症患者にはもっと有酸素運動をさせるべき 統合失調症患者の運動増進、どうしたら上手くいくか ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか  担当者へのご意見箱はこちら

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チェリージュースで認知機能が改善

 アントシアニンを含む食物フラボノイドは、認知機能に良い影響をもたらし、認知症の予防や治療に有益な可能性があるといわれている。オーストラリア・ウーロンゴン大学のKatherine Kent氏らは、認知症高齢者を対象に、アントシアニンが豊富なチェリージュースを毎日摂取することが、認知機能の変化に影響を及ぼすかを検討した。また、血圧および抗炎症効果を、副次的アウトカムとして評価した。European journal of nutrition誌オンライン版2015年10月19日号の報告。 対象は、軽度から中等度の認知症高齢者49例(70歳以上)。対象患者は、チェリージュース200mL/日(介入群)またはアントシアニンを含まないコントロールジュース(対照群)のいずれかに無作為に割り付け、12週間摂取した。血圧および炎症マーカー(CRP、IL-6)は6、12週目に測定した。認知機能および血圧の変化は、ベースラインで調整したANCOVAとRMANOVAを用い評価した。 主な結果は以下のとおり。・介入群において、言語の流暢性(p=0.014)、短期記憶(p=0.014)、長期記憶(p≦0.001)の改善が認められた。・介入群において、収縮期血圧の有意な減少(p=0.038)、拡張期血圧の低下傾向(p=0.160)が認められた。・炎症マーカー(CRP、IL-6)の変化は認められなかった。 本研究より、アントシアニンを豊富に含む飲料は、軽度から中等度の認知症高齢者の総アントシアニン摂取量を増加させ、特定の認知機能アウトカムを改善しうる実用的な手段であることが示唆された。関連医療ニュース 認知症によいサプリメント、その効果は 1日1杯のワインがうつ病を予防 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与  担当者へのご意見箱はこちら

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