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STEMIへの線溶療法、薬剤により死亡リスクに差/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する線溶療法では、薬剤などによって重要な相違点があり、アルテプラーゼ急速投与、テネクテプラーゼ(tenecteplase)およびレテプラーゼ(reteplase)は、ストレプトキナーゼ(streptokinase)やアルテプラーゼ非急速投与より優先して考慮されるべきで、線溶療法への糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の追加は避けるべきである。タイ・ウボンラーチャターニー大学のPeerawat Jinatongthai氏らが、無作為化試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。線溶療法は、医療資源が乏しい環境下のSTEMI患者に対する、機械的再灌流に代わる治療法であるが、各種線溶療法を比較した包括的なエビデンスは不足していた。Lancet誌2017年8月19日号掲載の報告。約13万例を含む計40試験をネットワークメタ解析 研究グループは、PubMed、Embase、the Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO-ICTRPを用い、2017年2月28日までに発表された、成人STEMI患者の再灌流療法としての線溶薬の無作為化比較試験(対照は他の線溶薬、プラセボまたは無治療。単独投与または補助的な抗血栓療法との併用投与は問わず)を検索。STEMIに対する再灌流療法の適応が承認されている線溶薬(ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ)を検証した試験のみを対象に、ネットワークメタ解析を行った。 主要評価項目は、30~35日以内の全死因死亡率、安全性評価項目は大出血(BARC基準の3a、3b、3c)。 選択基準を満たした試験は40件で、12種類の異なる線溶療法を受けた12万8,071例が解析に組み込まれた。死亡リスク増加、出血リスク増加の種類別特性が明らかに アルテプラーゼ急速投与(tPA_acc)+非経口抗凝固薬(PAC)と比較し、ストレプトキナーゼ+PACおよびアルテプラーゼ非急速投与(tPA)+PACは、全死因死亡のリスク増加と有意な関連が認められた。リスク比(RR)は、ストレプトキナーゼ+PACが1.14(95%信頼区間[CI]:1.05~1.24)、tPA+PACが1.26(同:1.10~1.45)であった。一方、tPA_acc+PACと、テネクテプラーゼ+PACおよびレテプラーゼ+PACは、死亡リスクに差はなかった。 大出血に関しては、テネクテプラーゼ+PACは、他のレジメンと比較して出血リスクの低下と関連している傾向があった(RR:0.79、95%CI:0.63~1.00)。一方、線溶薬+PACへの糖蛋白IIb/IIIa阻害薬(GP)の追加は、tPA_acc+PACと比較して、大出血リスクの増加がみられた。RRは、tPA+PAC+GPが1.27(95%CI:0.64~2.53)、テネクテプラーゼ+PAC+GPが1.47(同:1.10~1.98)、レテプラーゼ+PAC+GPが1.88(同:1.24~2.86)、ストレプトキナーゼ+GPが8.82(同:0.52~151.04)であった。 なお著者は、大出血の定義の異質性や、観察期間が短いこと、脳卒中の診断法に関する詳細が不明などを研究の限界として指摘し、「脳卒中の転帰に対する線溶薬の有効性については解釈に注意が必要である」と述べている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第39回

第39回:眠れない≠睡眠導入剤監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 眠れないという患者の訴えに対し、睡眠導入剤を処方する医師が多いと思いますが、本当にそれだけでよいのでしょうか?睡眠導入剤内服を開始して、どんどん薬が効かなくなっていって、どんどんお薬の強さや量が増えていって……というケースをよく見ます。 今回取り上げるarticleは、慢性の不眠症に対する薬物療法以外のマネジメントについてです。睡眠導入剤以外の治療について非常に勉強になったため、ご紹介いたします。また本邦でも厚生労働科学研究班 日本睡眠学会のワーキンググループによる「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」が閲覧できるので、ご一読をお勧めします。 以下、American family physician 2015年12月15日号1) より不眠症は、人口の10~30%に影響を与え、年間925~1,075億ドルの医療費が掛かっている。睡眠障害国際分類第3版では、不眠症の診断の基準として、(1)入眠障害、(2)睡眠の維持の障害、(3)早朝覚醒、(4)日中の機能障害―の4項目について、週に3回以上、1ヵ月以上続くこととしている。また、日中の機能障害としては、(1)疲労や倦怠感、(2)注意力や集中力の低下、(3)社会的または職業的・教育的障害、(4)気分障害や過敏症、(5)日中の眠気、(6)モチベーションやエネルギーの低下、(7)エラーや事故の増加、(8)多動性・衝動性または攻撃性などの行動上の問題、(9)睡眠に関する継続的な心配―があり、いずれか1つを満たせばよい。不眠症に寄与する要因として、精神疾患、医学的な問題、薬物の使用、薬物の乱用は除外されるべきである。また、不眠症の非薬理学的療法には、睡眠衛生、認知行動療法、リラクゼーションセラピーなどがある。アメリカ睡眠医療学会によると、慢性の不眠症に対しては、初期治療として睡眠導入剤の使用は避けることが推奨されており、認知行動療法等の非薬物療法の提供を推奨している。またアメリカ老年医学会は、不眠症、せん妄等に対しての初期治療として、ベンゾジアゼピンやその他の鎮静作用のある睡眠薬の使用をしないよう推奨している。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Am Fam Physician. 2015 Dec 15;92:1058-1064. 2) International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed. Darien, Ill.: American Academy of Sleep Medicine; 2014. 3) 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療療ガイドライン―出口を見据えた不眠医療マニュアル―

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米国の開業皮膚科医、グループ診療が増加

 米国皮膚科学会(AAD)では、皮膚科医の労働力需給の傾向を評価する目的で診療プロファイル調査を10年以上行っている。米国・ジョージ・ワシントン大学のAlison Ehrlich氏らは最新の解析結果として、新たな技術に基づいた医療記録の実現による部分的な間接費の増大に関連して診療環境の変化がみられ、電子カルテの普及とともに遠隔診療の実施が進んでいることを示した。著者は、「回答バイアスや報告の曖昧さがある可能性があり、調査で得られた回答がすべての地域を代表するわけではない」と調査の限界を述べたうえで、「皮膚科医療への需要は高いままである」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年8月4日号掲載の報告。 研究グループは、皮膚科診療の実態と傾向を調べる目的で、無作為に抽出したAAD会員の皮膚科医を対象に、電子メールおよび郵送でアンケート調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・プライマリケアでは、以前より個人開業の皮膚科医が少なくグループ診療を行う皮膚科医が多い、という変化がみられた。・皮膚科遠隔診療の実施は、2012~14年の間に7%から11%まで増加した。・電子カルテの導入は、2011年の51%から2014年には70%まで増加した。

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世界のリウマチ性心疾患死、25年で半減/NEJM

 1990~2015年の25年間で、世界のリウマチ性心疾患・年齢標準化死亡率は、約48%も減少したことが明らかになった。一方で、同死亡率には地域により大きな差が認められ、オセアニアや南アジア、サハラ以南の中央アフリカは高率だった。リウマチ性心疾患は、とくに低・中所得国では依然として心血管系の障害・死亡の、重要かつ予防可能な原因とされている。米国・ワシントン大学のDavid A.Watkins氏らは、2015年世界疾病負担(GBD)研究の一環として、世界、各地域、各国のリウマチ性心疾患有病率や死亡率を推定、分析し、NEJM誌2017年8月24日号で発表した。132ヵ国からのリウマチ性心疾患データを分析 研究グループは、132ヵ国から集めた1990~2015年の致死的・非致死的リウマチ性心疾患データについて、システマティック・レビューを行った。GBD試験の分析ツールである、CDE(Cause of Death Ensemble)モデルとDisMod-MR 2.1を用いて、死亡率と有病率を、不確実性の評価とともに推定した。リウマチ性心疾患により失われた障害調整生存年数は1,050万年 2015年のリウマチ性心疾患による推定死亡数は、31万9,400例(95%不確実性区間:29万7,300~33万7,300)だった。 1990~2015年の間に、世界のリウマチ性心疾患・年齢標準化死亡率は、9.2/10万(同:8.7~9.7)から4.8/10万(同:4.4~5.1)へと、47.8%(同:44.7~50.9)減少した。一方で、地域による大きな格差が認められ、2015年に、とくにオセアニア、南アジア、サハラ以南の中央アフリカで、リウマチ性心疾患の年齢標準化死亡率や有病率が高かった。 2015年の世界のリウマチ性心疾患の症例数は3,340万例(同:2,970万~4,310万)、またリウマチ性心疾患により失われた障害調整生存年数は1,050万(同:960万~1,150万)と推定された。

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前立腺全摘は意味のない治療?(解説:榎本 裕 氏)-724

 根治的前立腺全摘術(RP)は、無治療経過観察(watchful waiting:WW)あるいは監視療法(active surveillance:AS)と比較して生存ベネフィットがあるのか? この問いに対して、これまで3つのRCTが報告されている。SPCG-4(N Engl J Med, 2014)ではRPはWWに対してOS、CSSの改善を示した。ただし、PSA検診が本格導入される前の研究であり、非触知がんは12%に過ぎなかった。ProtecT(N Engl J Med, 2016)ではRPはASに対して生存ベネフィットを示すことができなかった。今回の研究(PIVOT)は、PSA検診導入後に開始されたRCTで、RPのWWに対する生存ベネフィットを調べたものである。今回の報告は、2012年の報告(N Engl J Med, 2012)の続報であるが、前回同様、RPはWWに対する優位性を示すことができなかった。 今回の結果を基に、直ちにRPの治療意義全般を否定することはできない。第一の問題は、全生存率という主要評価項目の設定である。本研究の参加者の平均年齢は67歳であるが、今回の研究期間中に両群とも50%以上が前立腺がん以外の原因で死亡している。早期前立腺がんという、もともと致死的になりにくい疾患の早期介入の効果を全生存率で検証しようという設定に無理がないだろうか。 そもそもPIVOTは2,000名の登録を目指していたが、患者登録が進まず740名に登録規模を縮小している。この研究規模では25%の死亡リスク低減が検出可能と予測されていたが、実際に観測された死亡リスク低下は12~16%で有意差なしという結果に終わった。より大きなコホートを構築できれば有意な差を導けたかもしれない。サロゲートエンドポイントとして、転移がんの発生(systemic failure)が挙げられるが、これは有意差をもってRPによる予防効果が示されている。 第二の問題はリスク分類の診断である。本研究では各施設の病理診断に基づくリスク分類によって割り付けがなされているが、中央病理判定とずれがある。そのため、施設判定による各リスク群の前立腺がん死亡の相対リスクは、より正確な中央病理判定による相対リスクと大きなずれを生じている。本研究では施設判定によるリスク分類を最終的な結果に採用しているが、妥当性には疑問がある。 現状では、早期前立腺がんに対する非侵襲的管理戦略はASが主流であり、今回の報告をもとにWWを組み込むのは実臨床の感覚にはなじまないのではないだろうか。

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視力低下が認知機能の低下に関連か

 視力障害と認知機能低下は高齢者によくみられるが、両者の関係はよくわかっていない。米国・スタンフォード大学のStephanie P. Chen氏らは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)および国民健康加齢傾向調査(NHATS)のデータを解析し、遠見視力障害と主観的視力障害は、認知機能低下と関連していることを示した。著者は今回の結果について、「自己申告の視力を用いている米国のメディケア受益者集団で確認されており、視力障害を有する患者を確認することの重要性を強調するものである。視力と認知機能との間の長期的な相互作用についてさらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年8月17日号掲載の報告。 研究グループは、米国の高齢者における自己申告の視力障害と認知機能との関連を評価する目的で、1999~2002年のNHANESならびに2011~15年のNHATSの2つのデータを解析した。NHANESは一般人の非入院集団、NHATSは米国本土におけるメディケア受益者が含まれる。 視力は、NHANESでは近見および遠見視力測定と、自己申告の視力が用いられ、NHATSでは自己申告に基づいた。 認知機能は、NHANESではDigit Symbol Substitution Test(DSST)が用いられ、DSSTスコア28以下(下位1/4)を認知機能障害とした。また。NHATSでは、NHATSプロトコールによる分類が用いられた(probableおよびpossible認知症)。 主な結果は以下のとおり。・回答が得られた調査参加者で解析対象となったのは、NHANES集団ではDSSTを完遂した60歳以上の2,975例、NHATS集団では認知症を評価し得た65歳以上の3万202例であった。・参加者背景は、NHANES集団が年齢(平均±SD)72±8歳、女性52%(1,527例)、非ヒスパニック系白人61%(1,818例)、NHATS集団は75~84歳が最も多く(40%、1万2,212例)、58%は女性(1万7,659例)、69%は非ヒスパニック系白人(2万842例)であった。・NHANES集団において、DSSTスコア低値は遠見視力障害(β=-5.1[95%信頼区間[CI]:-8.6~-1.6]、オッズ比[OR]:2.8[95%CI:1.1~6.7])と主観的視力障害(β=-5.3[95%CI:-8.0~-2.6]、OR:2.7[95%CI:1.6~4.8])のいずれとも関連しており、共変量を完全に調整後も認知機能障害のオッズ比が高かった。・一方、近見視力障害は、認知機能障害のオッズ比上昇はなかったが、DSSTスコア低値と関連していた。・NHATS集団では、すべての視力の指標は、共変量を完全に調整後も認知症と関連しており(遠見視力障害のOR:1.9[95%CI:1.6~2.2]、近見視力障害のOR:2.6[95%CI:2.2~3.1]、遠見または近見視力障害のいずれかのOR:2.1[95%CI:1.8~2.4])、NHANES集団での結果が裏付けられた。

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現代でも通用する、「医食同源」のライフスタイル・健康長寿の秘訣は、食にあり(解説:石上友章氏)-723

 高血圧は、減塩だけではない。DASH食は、降圧だけでなく痛風・高尿酸血症にも効果的な、健康長寿食であった(DASHダイエットは、痛風・高尿酸血症にも有効な「長生きダイエット」!)。医食同源・薬食同源といわれ、経口摂取する食材のなかには、薬効があるものもあるとされている。東洋医学をひもとけば、草根木皮といわれる植物資源だけではなく、場合によっては、動物資源(庶虫、水蛭など)ですら特定の薬効があるといわれている。不老不死・健康長寿は、東洋医学の究極の課題であり、4大古典のひとつである薬学書の『神農本草経』では、薬物を上品・中品・下品の3種類に分けている。上品薬に分類される薬物は、無毒であり長期間服用可能で、生命を養う作用があるとされており、身を軽くし、体力を増し、不老長生を可能にする、とされている。医食同源・薬食同源の考え方は、食養生といわれて重要視されている。本邦でも、『養生訓』を残した貝原益軒は、記録によると1600年代に活躍し、84歳で天寿を全うしている。 今回、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のMercedes Sotos-Prieto氏らは、DASH食だけではなく、AHEI(Alternative Healthy Eating Index:代替健康食指数)、AMED(Alternative Mediterranean Diet:代替地中海食)で推奨されている食パターンをスコア化して評価し、その変化が、健康長寿に与える影響を検討した結果を公表した。Sotos-Prieto M, et al. N Engl J Med. 2017;377:143-153. その結果、図に示すように、心血管死亡率について、すべての健康食スコアの改善が、統計学的に有意に抑制することが明らかになった。 この結果は、網羅的な感受性分析によってrobustnessを証明していることから、十分支持される。全死亡についても同様の結果が得られているが、疾患別にするとがんについては必ずしも有意ではない。またDASH食については、AHE食・AMED食に比較すると、若干効果が劣る傾向にある。魚食と、ω3系脂肪酸および、ごく軽度のアルコール摂取に差があるとされている。 21世紀になって、どの先進国も増大する医療費に悩まされている。健康長寿は、人類共通の課題になっている。あらゆる世代が、恐怖と欠乏から自由でいられるために、食生活を見直すことが重要なのは間違いない。

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成人スティル病〔ASD: Adult Still's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義「難病の患者に対する医療等に関する法律」(いわゆる難病法)の制定によってわが国の難病制度は大きく変化し、指定難病数は法制化前の56疾患から平成29年4月1日には330疾患へと大幅に増加した。多くの疾患とともに成人スティル病(ASD)も新たに難病として指定された。診療レベルの向上を目指して、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業における自己免疫疾患に関する調査研究班(代表;住田孝之 筑波大学教授)で、住田氏と筆者が責任者としてエビデンスに基づいた本症の診療ガイドラインを作成した。関連学会にも承認され、現在書籍化を急ピッチで進めている。主症状として「繰り返す高熱(1日中に39℃まで達するが、その後平熱に戻る;弛張熱)」、「関節炎」、「皮疹」を示す原因不明の疾患で、小児慢性炎症性疾患のスティル病(Still's disease;現在の全身型若年性特発性関節炎〔sJIA〕)に、その臨床所見が類似している成人症例を成人発症スティル病(Adult Onset Still's Disease;AOSD)と称する1)。リウマトイド因子陰性で、通常は副腎皮質ステロイドに反応するが、再発・再燃を来すことが多い。広義の自己炎症性疾患に属する。不明熱の代表的疾患で鑑別診断が重要である。上記のとおりに成人発症例をAOSDと呼び、sJIA(16歳以上)になったものも合わせて、「成人スティル病」(Adult Still's Disease;ASD)と定義する。■ 疫学2011年の厚生労働省研究班(研究代表者;住田 孝之)による全国疫学調査では、罹病者は4,760人と推定され、人口10万人当たり3.9人である2)。発症は若年に多いが、高齢発症者もあり、発症平均年齢は 46歳±19、男女比ではやや女性に多い。家族内発症はない。■ 病因病因・原因は不明であるが、ウイルス感染などを契機とした単球・マクロファージの活性化により炎症性サイトカイン(インターロイキン[IL]-1、IL-2、IL-6、IL-18、腫瘍壊死因子[TNF]-α、インターフェロン-γなど)が、持続的かつ過剰に産生・放出されることが本態であると考えられている。自己抗体や自己反応性T細胞は認めず、自己免疫疾患というより、自然免疫系の制御異常による自己炎症性疾患に属すると理解される。■ 症状1)自覚症状発熱は94%にみられ、午前中は平熱で夕方から夜にかけて上昇し、39℃以上まで達する弛張熱となることが多い。関節痛は80%以上の頻度で主に手指、手、膝関節の多発関節炎で骨びらんや骨性強直を認める場合もある。皮疹は60%以上に典型的皮疹(サーモンピンク疹;四肢や体幹の淡いピンク色の平坦な皮疹で、掻痒感はほとんどなく平熱時には消褪する)を認める。ほかに咽頭痛(60%程度)などがある2)。2)他覚症状リンパ節腫脹、肝脾腫などが認められる。20%程度に薬剤アレルギーがあることに注意する。■ 分類臨床経過から病型は、(1)単周期性全身型(30~40%)(2)多周期性全身型(30~40%)(3)慢性関節型(20~30%)の3つに分類される。全身型は高熱など全身症状が強いのが特徴で、そのうち単周期型は自然軽快する場合もある。一方、慢性関節型は末梢関節炎が持続し、関節リウマチのように関節破壊(主に骨性強直)を来す場合がある。■ 予後一般的に重篤な合併症がなければ、予後は比較的良好と考えられるが、合併症によっては予後不良の可能性がある。重篤な合併症には、マクロファージ活性化症候群/反応性血球貪食症候群があり、その頻度は12~14%で通常の膠原病に比して多い。その他、播種性血管内凝固(DIC)や肺障害(急性肺障害、間質性肺炎)、漿膜炎(胸膜炎、心膜炎)、心筋炎などがある。長期間の炎症反応高値持続症例では、アミロイドーシスも合併し得る。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、国際的にも頻用されている山口らの成人スティル病分類基準3)による(表1)。表1 ASD診断基準●大項目1.39℃以上の発熱が1週間以上持続2.関節痛が2週間以上持続3.定型的皮疹4.80%以上の好中球増加を伴う白血球増加(10,000/mL以上)●小項目1.咽頭痛2.リンパ節腫脹または脾腫3.肝機能異常4.リウマトイド因子陰性および抗核抗体陰性●除外項目I.  感染(とくに敗血症、伝染性単核球症)II. 悪性腫瘍(とくに悪性リンパ腫)III.膠原病(とくに結節性多発動脈炎、悪性関節リウマチ)除外診断に当たらないことを確認したうえで、大項目2つを含む5項目以上でAOSDと診断する。近年は、これに血清フェリチン高値(正常値の5倍以上)を参考値として加える場合がある。検査所見では、白血球増多、血小板増多、CRP高値、赤沈亢進、肝酵素上昇、フェリチン著増が認められる。保険適用外であるが血清IL-18も著増となる。鑑別診断では、除外診断にも挙げられている、感染症、悪性腫瘍および他の膠原病が重要である4)。1)感染症細菌感染症(とくに敗血症や感染性心内膜炎)やウイルス感染(Epstein-Barr[EB]ウイルス、パルボB19ウイルス、サイトメガロウイルスなど)の鑑別が必要。鑑別のポイントは、ウイルスの血清学的検査、ASDにおけるフェリチン異常高値である。2)悪性腫瘍悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫)、白血病が鑑別疾患として挙げられる。悪性疾患の可能性を否定できなければ、ガリウムシンチグラフィー、リンパ節生検、骨髄穿刺などのより高度・専門的な検査も必要となる。3)膠原病全身性エリテマトーデス(CRP陰性、抗核抗体陽性、低補体血症)、関節リウマチ(リウマトイド因子/抗CCP抗体陽性)、血管炎症候群、サルコイドーシス、キャッスルマン病やリウマチ性多発筋痛症などとの鑑別を要する。弛張熱、血清フェリチン著増、白血球高値、皮疹などが鑑別のポイントとなる。その他、自己炎症性疾患では家族歴が参考になる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)発症早期に寛解導入を目的として、主に副腎皮質ステロイド(CS)中等量(プレドニン換算で0.5mg/kg)以上を用いる。初期治療にて、解熱、炎症反応(CRP)陰性化、血清フェリチン値正常化がなければ、CSの増量(プレドニン換算で1mg/kgまで)、CSパルス療法、免疫抑制薬(メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムスなど)または生物学的抗リウマチ薬(トシリズマブ、TNF阻害薬など)の併用が一般的である。なお、海外も含めたエビデンスを基に作成した前記診療ガイドラインでは、表2のようにASD治療薬の推奨度を示している。CSは初期量にて反応があれば、通常の膠原病治療に準じて減量する。CSの減量困難時にも免疫抑制薬の併用が選択される。ただし、免疫抑制薬はASDには保険適用外である。CS不応、免疫抑制薬効果不十分例に関しては、生物学的抗リウマチ薬の使用を考慮する。IL-6刺激阻害薬(トシリズマブ;抗IL-6受容体抗体)の有効性が近年多数報告されている。とくに、sJIA(当初のスティル病)に対して保険適用もあり、セカンドライン治療薬として有効であるトシリズマブは、類似の病態があると想像されるAOSDに対しても有効な可能性がある。しかし、バイアスを排除したエビデンスレベルに基づく診療ガイドラインではIL-6刺激阻害薬はTNF阻害薬とともに弱い推奨度である。トシリズマブをはじめとした生物学的抗リウマチ薬は、ASDには保険適用外であることを理解し、安易な使用は避け、使用に際しては十分な対策が必要である。慢性関節型に対しては、経口抗リウマチ薬が有効である。画像を拡大する4 今後の展望生物学的抗リウマチ薬として、IL-6受容体抗体(TCZ)、およびIL-1受容体阻害薬(アナキンラ、カナキヌマブ)が有望視されていることから、今後保険適用を取得する可能性がある。また、海外では新規IL-1阻害薬やIL-18阻害薬が臨床研究段階にある。その他、自己炎症性疾患という見方をすれば、インフラマソームの制御異常が病態の中心に位置する可能性もあり、将来的にはインフラマソーム制御薬の応用も予想される。5 主たる診療科鑑別診断の複雑さや合併症発症時の重症度および治療難度から考えて、大学病院や総合病院の内科系リウマチ膠原病科に紹介されるべきである。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 成人スチル病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Bywaters EGL. Ann Rheu Dis.1971;30:121-133.2)Asanuma YF, et al. Mod Rheumatol. 2015;25:393-400.3)Yamaguchi M, et al. J Rheumatol.1992;19:424-430.4)Mahroum N, et al. J Autoimmunity.2014;2-3:48-49/34-37.公開履歴初回2015年6月23日更新2017年8月29日

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睡眠不足だと認知症になりやすいのか

 米国・ミネソタ大学のPamela L. Lutsey氏らは、中年後期の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)や短時間、長時間睡眠が認知症リスクと関連しているかを、15年以上のフォローアップ期間で検討した。Alzheimer's & dementia誌オンライン版2017年7月21日号の報告。 Atherosclerosis Risk in Communities研究に参加した1,667例を対象に、在宅終夜睡眠ポリグラフィー検査(1996~98年)を実施し、認知症発症のフォローアップを行った。認知症は、入院診断コード(1996~2012年)および包括的な神経認知検査(2011~13年)により定義した。 主な結果は以下のとおり。・OSAおよび睡眠時間は、認知症発症のリスクとの関連が認められなかった。・判定済みのアウトカムを用いた場合、重度のOSA(無呼吸低呼吸指数:30回以上/時間 vs. 5回未満/時間)は、すべての認知症リスク(RR:2.35、95%CI:1.06~5.18)およびアルツハイマー型認知症リスク(RR:1.66、95%CI:1.03~2.68)の高さと関連が認められたが、心血管のリスク因子の調整によりその関連性は弱まった。・判定済みのアウトカムを用いた場合、7時間未満の睡眠は、8~9時間の睡眠と比較し、すべての認知症リスクの高さと関連していた(RR:2.00、95%CI:1.03~3.86)。■関連記事「最近、睡眠時間が増えた」は認知症のサインかも不眠症になりやすい食事の傾向就寝時、部屋は暗くしたほうがよいのか:奈良医大

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第36回日本臨床運動療法学会学術集会 開催のご案内

 日本臨床運動療法学会(会長 木村 穣氏 関西医科大学 健康科学センター 教授)は、2017年9月2日(土)・3日(日)に、第36回の学術集会を大阪市にて開催する。テーマは「臨床医学と運動のさらなる融合」で、臨床における運動、スポーツ、身体活動に関する講演のほか、実技実習も予定されている。また、今回は学会初となる、参加者の不活動を予防する仕組みとして、セッションの合間に「レッツBSL(Break Sedentary Lifestyle)」と称したストレッチビデオの上映を行う。開催概要【開催日】2017年9月2日(土)・3日(日)【会場】メルパルク大阪(新大阪) 会場案内はこちら【主要プログラム】・会長講演  「臨床医学と運動のさらなる融合」  演者:木村 穣氏(関西医科大学 健康科学センター 教授)・特別講演  「エピジェネティクス入門 -その分子基盤から臨床応用まで-」  「ACSM EIM National Center 韓国および各国の現状と課題 The challenge of EIM Korea」・シンポジウム  「疾患別(乳がん、COPD、糖尿病、メタボなど)運動療法」  「運動指導士の臨床への架け橋をどう築くか」ほか・パネルディスカッション  「指定運動療法施設ガイドライン設立に向けての実態調査」(EIM Japan共同開催)  「糖尿病エネルギー必要量と身体活動」・教育講演  「運動療法の心理的恩恵-感情に注目した運動の効果-」  「サルコペニアと運動療法」ほか・実技実習  「CPX実習 & CPX症例検討会」  「木剣体操」ほか・ランチョンセミナー  「植え込みデバイス患者の包括的な心臓リハビリテーションを考える」  「CGM(持続血糖測定)の最新情報」※一般演題など詳細は、学会ホームページのプログラムをご覧ください。■参考第36回日本臨床運動療法学会学術集会ホームページフェイスブック

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170)中性脂肪の代謝を阻害する“喫煙”【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者今日は朝食を食べて採血をしました。医師なるほど。中性脂肪が300mg/dLと驚くほど上昇していますね。空腹時は150mg/dL前後なのですが…。患者中性脂肪って食事で動くんですね。医師そうですね。食事で大きく変動します。食後の中性脂肪が高いと心筋梗塞になりやすいと言われています。患者どうやったら、中性脂肪を下げることができますか?医師食事をすると中性脂肪が上がりますが、血管の内側で中性脂肪は代謝されます。でも、その機能を落としてしまうのが「タバコ」です。患者やっぱり、タバコですか。肺がん以外にもいろいろと悪さをするんですね。明日から禁煙、いえ今日から禁煙準備を始めます。●ポイントすぐに禁煙に取り組む自信がない人には禁煙準備(例:灰皿の整理、カートン 買いを止めるなど)から始めてもらいます1)Staniak HL, et al. Atherosclerosis. 2014;233:381-386.2)Kabagambe EK, et al. Atherosclerosis. 2009;203:633-639.

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早産児の神経発達遅延リスクは改善したか/BMJ

 在胎期間22~34週の早産児の2歳時の神経発達アウトカムは過去20年で、重度または中等度の運動/感覚器障害のない生存が有意に増大していたが、発達遅延のリスクは高いままであることが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のVeronique Pierrat氏らによる、同国の早産児に関する住民コホート研究「EPIPAGE(1997年)」「EPIPAGE-2(2011年)」の結果、報告された。世界的に早産児の生存は増加しており、重度の新生児罹患率は低下している。しかし、最近の2000年代に生まれた早産児のアウトカムに関する研究は、超早産児に焦点が集まっており、在胎期間がある程度ある早産児についての報告はまれだという。BMJ誌2017年8月16日号掲載の報告。在胎期間22~34週の早産児の2歳時のアウトカムを検討 研究グループは、2011年に生まれた在胎期間22~26週、27~31週、32~34週の各早産児について、2歳時の神経発達アウトカムを検討し、さらに1997年のデータと比較した。 2011年に在胎期間22~34週で生まれた新生児は5,567例。そのうち2歳時に生存していた4,199例がフォローアップに包含された。アウトカムの比較は、両研究に参加する国内9地域における、1997年3,334例、2011年2,418例の新生児について報告された。 生存児について以下の評価を行った。1)脳性麻痺(2000 European consensusで定義)、2)神経発達の程度:保護者によるASQ(Ages and Stages Questionnaire)の評価で神経発達に関するスコアが閾値以下(5領域のうち少なくとも1つ以上)。データは、修正月齢22~26ヵ月、脳性麻痺・失明・聴覚障害のない児に行われたものを解析に含んだ。3)重度または中等度の運動/感覚器障害(脳性麻痺のレベルはGross Motor Function Classification Systemで2~5、片側性または両側性の失明もしくは聴覚障害)のない生存。 結果は、95%信頼区間(CI)とともに、アウトカム評価の割合で示した。1997年と2011年で重度障害児の割合は減少したが発達遅延のリスクは高いまま 5,170例の早産生存児において、2歳時の生存率は、在胎期間22~26週群が51.7%(95%CI:48.6~54.7)、27~31週群が93.1%(同:92.1~94.0)、32~34週群が98.6%(同:97.8~99.2)であった。22~23週群では、生存例は1例のみであった。 脳性麻痺に関するデータは、3,599例で得られた(適格集団の81.0%)。脳性麻痺児の割合は、22~26週群6.9%(95%CI:4.7~9.6)、27~31週群4.3%(同:3.5~5.2)、32~34週群1.0%(同:0.5~1.9)であった。 ASQデータは、2,506例について得られた(適格集団の56.4%)。スコア閾値以下の児の割合は、22~26週群50.2%(95%CI:44.5~55.8)、27~31週群40.7%(同:38.3~43.2)、32~34週群36.2%(同:32.4~40.1)であった。 重度または中等度の運動/感覚器障害のない生存児の割合は、1997年と比べて2011年は増加していた。しかし、在胎期間が25~26週群では45.5%(95%CI:39.2~51.8)から62.3%(同:57.1~67.5)へ増加していたが、22~24週群では変化が観察されなかった。また、32~34週群では、統計的に有意な増加はみられなかったが(p=0.61)、脳性麻痺の生存児の割合は有意に減少していた(p=0.01)。

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日本人妊婦のうつ病診断、適切なカットオフ値はいくつか

 妊娠中のうつ病は、母親と子供の両方に悪影響を及ぼす。出産前のうつ病は、出産後のうつ病の予測因子であるため、早期発見は出産後うつ病の予防につながる可能性がある。エジンバラ産後うつ病尺度(EPDS)は、周産期によく用いられるが、妊娠中のカットオフ値については、日本人で確認されていない。国立精神・神経医療研究センターの臼田 謙太郎氏らは、日本における妊娠中期のEPDSカットオフ値を最適化するため検討を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2017年8月2日号の報告。 妊娠12~24週目の20歳以上の妊婦を募集し、そのうちEPDS 9点以上の妊婦に研究への参加を依頼した。EPDSと同時に、うつ病エピソードの診断のために精神疾患簡易構造化面接法(日本語版)を行った。ROC曲線、感度および特異度、EPDSの陽性、陰性反応の予測値を算出した。 主な結果は以下のとおり。・参加者210例は、妊娠12週の1例を除き、すべて第2三半期であった。・20例がうつ病エピソードと診断された。・カットオフスコアを13点に設定した場合、ROC曲線下面積0.956、感度90.0%、特異度79.0%、EPDS陽性反応予測値54.5%、EPDS陰性反応予測値98.9%であった。 著者らは、「われわれの知る限り、本研究は日本において、妊娠第2三半期での最適なEPDSカットオフ値を明らかにするための、最初の研究である。本知見は、日本における出産前うつ病の適切なスクリーニングに役立つであろう」としている。■関連記事妊娠中のSSRI使用、妊婦や胎児への影響は母親の体格がADHD、自閉症リスクと関連か妊娠中、血中濃度変化に注意が必要な抗精神病薬は

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進行メラノーマ、ペムブロリズマブかイピリムマブか/Lancet

 進行性黒色腫患者に対する、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の有効性および安全性をイピリムマブ(同:ヤーボイ)と比較し検証したKEYNOTE-006試験の全生存期間(OS)の最終解析結果を、イスラエル・Sheba Medical CenterのJacob Schachter氏らが報告した。中間解析で示されていたOSに関するペムブロリズマブのイピリムマブに対する優越性は、最終解析でも維持されており、ペムブロリズマブの投与スケジュールによる違いは確認されなかった。著者は、「この結果は進行悪性黒色腫の標準治療として、ペムブロリズマブの使用をさらに支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年8月16日号掲載の報告。16ヵ国87施設で約800例を登録し無作為化試験、約2年追跡 KEYNOTE-006試験は、16ヵ国の大学・病院・がんセンター87施設で行われた多施設共同非盲検無作為化第III相試験である。2013年9月18日~2014年3月3日に、18歳以上、ECOG PS 0〜1、RECIST v1.1による測定可能病変1つ以上、全身治療歴(抗CTLA-4、PD-1、PD-L1薬は除く)1回以下、イピリムマブ未治療の、切除不能または転移性(III期/IV期)悪性黒色腫患者(ぶどう膜または眼内悪性黒色腫は除く)834例を、ペムブロリズマブ10mg/kgの2週間間隔投与(Q2W)群、10mg/kgの3週間間隔投与(Q3W)群またはイピリムマブ3mg/kgの3週間間隔投与群(最高4回投与)に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。全身ステロイド療法を必要とする活動性の脳転移または自己免疫疾患がある患者は除外された。 主要評価項目は、intention-to-treat集団(無作為化された全患者)におけるOS(無作為化から死亡までの期間)である。奏効は、12週時、その後48週までは6週ごと、以降は12週ごとに、独立した中央判定によりRECIST v1.1に基づいて評価された。生存は12週ごとに評価され、全患者を最低21ヵ月間追跡した後に最終解析が実施された。安全性解析対象集団は、治験薬を少なくとも1回投与されたすべての無作為割り付けされた患者とした。データカットオフ日は2015年12月3日であった。イピリムマブと比較して、ペムブロリズマブ群でOSが有意に改善 無作為化された834例(Q2W群279例、Q3W群277例、イピリムマブ群278例)のうち、Q2W群1例およびイピリムマブ群22例が同意を取り下げて治療を受けなかったため、安全性解析対象集団は811例となった。 追跡期間中央値22.9ヵ月において383例が死亡した。OS中央値は、ペムブロリズマブ両群で未到達、イピリムマブ群で16.0ヵ月であった。イピリムマブ群に対するハザード比(HR)は、Q2W群0.68(95%信頼区間[CI]:0.53~0.87、p=0.0009)、Q3W群0.68(0.53~0.86、p=0.0008)であった。24ヵ月OS率は、Q2W群55%、Q3W群55%、イピリムマブ群は43%であった。

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第11回 GLP-1受容体作動薬による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第11回】GLP-1受容体作動薬による治療のキホン―どのような患者さんが良い適応になりますか?また導入の判断となる指標があれば教えてください。 食事から吸収された糖質などの刺激により、消化管から消化管ホルモンであるGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)が血中に分泌されると、血行性に膵β細胞上のGIP受容体とGLP-1受容体にそれぞれ結合し、インスリン分泌が促進されます。その作用を応用したのがインクレチン関連薬と呼ばれるDPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬で、GLP-1受容体作動薬は、膵β細胞上にあるGLP-1受容体に結合して、インスリン分泌を促進させます。 インクレチン関連薬は、膵β細胞内で代謝されたグルコースによるインスリン分泌の惹起経路を増幅させることで、インスリン分泌を促進させます。つまり、グルコースによるインスリン分泌惹起経路が働いて初めて、インクレチンによる増幅作用が働くことになります。そのため、GLP-1受容体作動薬のインスリン分泌作用は、グルコース濃度依存性であり、単独では低血糖を起こさないという特徴があります。 GLP-1受容体作動薬のもう1つ大きな特徴は「体重減少」です。GLP-1受容体は食欲をつかさどる視床下部にもあり、GLP-1受容体作動薬により、食欲が抑制されることで、体重減少効果が得られます。また、胃内容物の排泄抑制作用もあり、それによる体重減少効果、さらには、食後血糖の上昇抑制も期待できます。GLP-1受容体作動薬は、非肥満、肥満のいずれでも血糖低下効果は得られますが、とくに「体重減少」については、他の薬剤を上回る効果が得られるため、肥満の患者さんが良い適応であると考えています。ただ、GLP-1受容体作動薬は注射薬であるため、抵抗を示す患者さんも少なくありません。高用量のSU薬を含むいくつかの経口薬を使用しているにもかかわらず、良好な血糖コントロールが得られない患者さんで、体重減少も期待したいような場合に検討するとよいのではないでしょうか。―DPP-4阻害薬との作用機序や適応の違いについて教えてください。 GLP-1受容体作動薬が、膵β細胞上にあるGLP-1受容体に結合してインスリン分泌を促進させる、直接的に作用する薬剤であるのに対し、DPP-4阻害薬は、GIPおよびGLP-1が分泌された後に、それらを急速に分解する酵素であるDPP-4の活性を阻害して、GIPとGLP-1の不活化を抑制する、すなわち、間接的に作用する薬剤です。いずれも、前述のように、グルコース濃度依存性であり、単独では低血糖を起こさない薬剤ですが、DPP-4阻害薬は“生理的レベル”で効果を発揮するのに対し、GLP-1受容体作動薬は“非生理的レベル”で効果を発揮するため、DPP-4阻害薬は「体重増加を来さない」という効果が得られ、GLP-1受容体作動薬は「体重を減少させる」という効果が期待できます。“体重増加を来さない”で血糖を低下させる、“体重を減少させて”血糖を低下させる、という目的で使い分けるのがよいと思います。 ただ、DPP-4阻害薬は経口薬で、GLP-1受容体作動薬は注射薬です。導入のしやすさという点でも違いはありますが、今は、週1回投与のGLP-1受容体作動薬もあります。「週に1回なら」「自分で打つのはいやだけど、医療従事者に打ってもらうのであれば」という患者さんもいらっしゃいます。週1回製剤の中には、針の取り付けが不要なものもあり、取り扱いが非常に簡便なものもありますし、「“週に1回だけ”ならどうですか?」「ご自分で打つのが難しければ、週に1回、病院に来て打つのはどうですか?」というやり方で導入するのも良い方法です。―投与量の調整方法について教えてください。 GLP-1受容体作動薬はインスリン製剤と同じ注射薬ですが、インスリン製剤のような細やかな投与量の調整をする必要はありません。ただし、副作用としてみられる下痢や便秘、嘔気などの消化器症状が投与初期に認められるため1)、1回の投与量が決められている週1回の製剤ではなく、1日1回もしくは2回注射の製剤の場合は、最小用量から始め、様子をみながら、各製剤の添付文書に従って、増量していくのがよいでしょう。―適切な併用薬について教えてください。 前述のように、GLP-1受容体作動薬では、血糖低下以外に、体重減少効果が期待できます。さらなる体重減少という点で、体重減少効果のあるSGLT2阻害薬との併用※も効果的です。 (※2017年8月現在、日本でSGLT2阻害薬との併用が認められているのは、「リラグルチド(商品名:ビクトーザ)」、「リキセナチド(商品名:リスキミア)」と「デュラグルチド(商品名:トルリシティ)」のみ。) また、SGLT2阻害薬を使っていて、体重が増加してしまう場合に、体重減少を期待して、GLP-1受容体作動薬を上乗せするのもよいでしょう。実際に、海外で行われた、GLP-1受容体作動薬「エキセナチド(商品名:ビデュリオン)」と、SGLT2阻害薬「ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)」の併用の効果をみた「DURATION-8試験」で、それぞれの単独療法よりも、血糖低下および体重減少において効果が認められたことが示されました2)。 また、GLP-1受容体作動薬には、半減期の長い長時間作用型と、半減期の短い短時間作用型があり、短時間作用型では、高濃度のGLP-1が維持されないため、胃排泄の遅延作用に対するタキフィラキシー(効果減弱)が起こりにくいという特徴があります。胃排泄の遅延作用が継続するため、体重減少に加え、「食後高血糖の抑制作用」が期待できますが、空腹時高血糖の改善は得意ではないため、空腹時血糖値を低下させるSU薬やチアゾリジン薬、ビグアナイド(BG)薬、SGLT2阻害薬との併用が効果的です。一方、長時間作用型では、高濃度のGLP-1が維持されるため、空腹時の血糖低下作用が期待できます。食後高血糖を改善する速効型インスリン分泌促進薬やα-グルコシダーゼ阻害(GI)薬との併用がよいでしょう。ただし、SU薬や速効型インスリン分泌促進薬のように、インスリン分泌を直接惹起する経路に働く薬剤とそれを増幅させるGLP-1受容体作動薬を併用することはより効果的ではありますが、SU薬や速効型インスリン分泌促進薬の効果を増幅させることで、低血糖リスクが増加する恐れがあるため、慎重に投与する必要があります。―長期使用における安全性について教えてください。 インクレチン関連薬は、SU薬など古くから使われる糖尿病治療薬に比べると比較的新しい薬剤ですので、長期の安全性を懸念される方も多いと思います。GLP-1受容体作動薬では、DPP-4阻害薬と同様、膵炎や膵がんといった膵疾患との関連がいわれていますが、現時点で、GLP-1受容体作動薬においても、これら膵疾患への関連について、前向きに検討した報告はありません。ただ、GLP-1の薬理効果について、まだ十分解明されていない部分も多いため、長期安全性を含め、今後、未知な生理作用や副作用について、みていく必要はあります。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2016-2017. 文光堂;2016.2)Frias JP, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4:1004-1016.

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魔法ってないのかな?(解説:岡村毅氏)-718

 私たちの「こころ」や「意識」と呼ばれるものが形而上のものなのか、形而下のものなのかという問題はさておき、脳という電気活動の集合が関与していることは明らかであり、外部からの電気刺激が影響を与えるであろう。  本論文は、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct-current stimulation以下tDCS)のうつ病に対する効果を抗うつ薬(SSRI)およびプラセボと比較した報告である。プラセボに比べると有意に効果はあるものの、SSRIに比べると弱いようだ。  はじめに述べておくと、tDCSはわが国の精神医学においては保険診療で認められていない。世界的にもまだ非常にマイナーな手法である。ただし、脳梗塞後の麻痺などでの臨床実績、体表に電極を置いて微弱な電流を流すだけという安全性を考えると、今後精神科領域で使われる可能性はないとは言えず、アンテナを張っている読者諸兄におかれては頭の隅に入れておいてもよいかもしれない。  少し突き放して書いたのは、「きっと誰も知らない、自分の主治医も知らない治療法があるのだ」とか「週刊誌に素晴らしい治療法が書いてあったのに自分の主治医は自分に隠しているのだ」とか、さまざまなことをおっしゃる患者さんがいるからで、この治療法は標準から離れた異端に飛びつく人に好かれそうだなあと感じたからである。  うつ病の治療法は、(1)精神療法、(2)環境調整、(3)薬物療法等に大きく分けられる。  ひどいうつ状態で、考えることも休むこともできない状態のときは、(3)薬物治療等は効果的である(こういうときに精神療法だけでいくというのは、患者さんにとっては大変つらいだろう)。ここには、SSRIをはじめとする新規抗うつ薬、経験値がないと使いにくいが効果も大きな古典的抗うつ薬、非定型抗精神病薬、気分安定薬、抗不安薬、漢方薬などが含まれる。(3)の中の極めて狭い領域に、電気的脳神経刺激としてmECT(modified electroconvulsive therapy)やrTMS(repetitive transcranial magnetic stimulation)が含まれる。前者は全身麻酔が必要だが効果は絶大、後者は外来でできるが高い機材が必要でまだ臨床実績が不十分という長短がある。ここに安価なtDCSが加わる可能性があるかもしれないということである。  会社でうつになった人のうつ状態を良くして会社に送り返しても、そこがブラック過ぎたらすぐに再発するだろう。さまざまな社会資源につなげるなど(2)環境調整は実は薬物治療よりも重要かもしれない。  そもそもうつ病になる過程には本人のものの見方・考え方が関わっている可能性も高いので、そこに働きかける(1)精神療法こそが、本人の幸せにつなげる精神医学の本質ともいえよう。  そういうわけで、本論文は偽tDCSを施行するなど妥当な方法論に基づいたきちんとした論文ではあるものの、臨床への影響は限定的だ。東京都西之島では噴火により新たな島が生成し、日本の面積がいくらか増大したというが、日本全体の面積と比べれば微々たるものであろう。臨床医としては、本論文はその程度(西之島分)のエビデンスの付与であるように個人的には思う。でもそれは価値があることなのだ。

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循環器内科 米国臨床留学記 第23回

第23回 アメリカのモニター心電図事情 (Ziopatchなど)循環器の診断において、心電図、心エコーと並んで頻用されるモニター心電図ですが、その目的や用途に応じて使用するデバイスも変わってきます。今回は、アメリカで使用されているモニター心電図を紹介したいと思います。古くからあるHolter心電図はいまだ健在ですが、24~48時間とモニターできる期間が短く、患者はモニターの付け外しのために、その都度病院に来なければなりません。最近は、付け外しを自分で行うことが可能で、1週間以上の期間、心臓をモニターできるデバイスを用いる機会が増えています。その中でもZiopatchとMCOT(Mobile Cardiac Outpatient TelemetryTM)がよく使われています。Ziopatch は5cm×12.5cmの小さなデバイス(図1)で前胸部に張り付けるだけで2週間まで心電図がモニターできる優れたデバイスです。Ziopatchはサイズが小さく、患者自身で取り付けられるため、患者の自宅に郵送できます。モニター期間が終了すれば、患者自身でZiopatchの解析センターへ郵送してもらい、解析されたデータが医師の元に届くシステムです。(図1)心房細動や期外収縮の検知など、リアルタイムのモニターが必要でない場合、Ziopatchは非常に使いやすく感じます。逆に言えば、Ziopatchは“リアルタイム”のモニターができないので、モニター期間中に危険な徐脈や頻脈があっても、すぐには医師の元に報告が届きません。2週間のモニター期間が終了後、解析を受けて初めて知ることになるわけです。したがって、ハイリスクな徐脈または頻脈性不整脈を疑う時は、MCOTが必要となります。MCOTの代表的なものとしては、Cardionetが挙げられます。利点は、不整脈の検知がオンタイムでできることです。患者が基準を満たす頻脈、徐脈を生じると、すぐにセンターに情報が送られ、その情報は当直医などに届きます。当直の際には、夜間でもセンターから電話があり、「新たな心房細動が起きました」とか「3秒以上の心停止が検知されました」などといった情報がオンタイムで伝えられます。フェローの頃、当直中や夜間も含め、頻回に連絡が来るのは大変なこともありましたが、ハイリスクな不整脈が見つかった場合、すぐに患者に連絡して入院などの措置を取ることができるのはCardionetの利点です。またZiopatchやMCOTは、いずれも患者が症状のあるときに患者自身がボタンを押すことでイベントとして記録が可能です。日本でもおなじみのイベントモニターも、症候性のイベントを記録する目的として使用されます。患者が自ら購入できる比較的安価で便利なイベントモニターとしてAlivecorが挙げられます。Alivecorは医師が処方するのではなく、患者自身が購入し、心電図を好きな時に記録できます。100ドル以下で手に入り、iphoneに簡単に取り付けられます。これらのモニター心電図の中で最も長期間モニターが可能なのは、植込み型のループレコーダーです。米国では、Medtronic社のReveal Linqが頻用されています。Reveal Linqは日本でも承認されましたが、非常に小さく、手技も簡単なため、脳梗塞患者における心房細動の検知に対して積極的に植込まれています。これらのデバイスの長所、短所、費用などはMedscapeがまとめています。モニターをオーダーする際、患者の持つ保険で費用が変わってくるため、確認が必要です。例えば、Ziopatchをオーダーしたくても保険会社の許可が下りないといったことが起こりえます。この辺りも、アメリカならではというところです。

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PM2.5が高いと高濃度乳房になりやすい?

 マンモグラフィ乳腺密度は乳がんの強力な危険因子であるが、都市部と農村部の乳腺密度の違いにおける環境の影響についてはほとんどわかっていない。米国・フロリダ大学のLusine Yaghjyan氏らが集団ベースの大規模レジストリで調査したところ、きわめて高濃度乳房の女性は脂肪性乳房の女性に比べてPM2.5の曝露が多く、オゾンの曝露は少なかった。本研究から、PM2.5やオゾンへの曝露の違いでマンモグラフィ乳腺密度の地域差を部分的に説明できることが示唆された。Breast cancer research誌2017年4月6日号に掲載。 本研究の参加者は、Breast Cancer Surveillance Consortium(2001~09)においてイメージング施設でマンモグラフィ検診を受けた女性で、インデックスマンモグラムの前に自宅のzipコードがわかった40歳以上の女性27万9,967人。乳腺密度は、American College of RadiologyのBreast Imaging-Reporting and Data System(BI-RADS)の4カテゴリーによる乳腺密度分類を用いて評価した。米国環境保護庁の階層ベイズモデル(HBM)から米国の各グリッドのPM2.5およびオゾンの推定値(2001~08年)を入手した。大多数の女性(94%)で、マンモグラフィ検診日の前年の推定値が入手可能であった。 主な結果は以下のとおり。・きわめて高濃度乳房の女性は脂肪性乳房の女性に比べ、PM2.5(平均値)の曝露が多くオゾンは少なかった(それぞれ、8.97 vs.8.66μg/m3、33.70 vs.35.82ppb)。・回帰分析より、不均一高濃度乳房の女性は乳腺散在乳房の女性に比べ、PM 2.5への曝露が多い傾向がみられた(第1四分位に対する第4四分位のオッズ比[OR]:1.19、95%信頼区間[CI]:1.16~1.23)。・きわめて高濃度乳房の女性は乳腺散在乳房の女性に比べて、オゾンへの曝露が少ない傾向がみられた(第1四分位に対する第4四分位のOR:0.80、95%CI:0.73~0.87)。

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双極性障害患者の自殺念慮、予測パターンは

 自殺念慮は、双極性障害患者で頻繁に認められるが、その経過や経年変化はよくわかっていない。デンマーク・コペンハーゲン大学のOle Kohler-Forsberg氏らは、双極性障害患者の自殺念慮について、6ヵ月間の追跡調査を行った。Journal of affective disorders誌オンライン版2017年7月20日号の報告。 Bipolar CHOICE研究では、双極性障害外来患者482例を、他の向精神薬を含む6ヵ月間のリチウムまたはクエチアピンベースの治療群に無作為に割り付けた。対象者は、Concise Health Risk Tracking scaleを用いて自殺念慮を9回調査した。自殺念慮の軌跡を経験的に特定するため、潜在成長混合モデル分析を行った。軌跡と潜在的な予測因子との関連を推定するため、多項ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・4つの異なる軌跡が同定された。・中程度の安定群(Moderate-Stable)は11.1%で、一定の自殺念慮により特徴づけられた。・中程度の非安定群(Moderate-Unstable)では、より変動的な自殺に関する持続的な思考を伴う割合が2.9%であった。・持続的に低い群(Persistent-low:20.8%)と持続的に非常に低い群(Persistent-very-low:65.1%)では、自殺念慮が低かった。・うつ病スコアの上昇と自殺企図歴は、中程度の安定群の予測因子であったが(有意ではない傾向)、無作為化治療ではその限りではなかった。・本研究の限界として、自殺念慮に対する特別な治療は含まれておらず、また自殺念慮は数年間続く可能性がある。 著者らは「双極性障害を有する成人外来患者10人に1人以上において、6ヵ月間の薬物治療中に自殺念慮の増加がある程度認められた。同定された予測因子は、臨床医が自殺念慮に対する治療が必要である患者を特定するのに役立つであろう。今後の研究において、薬理学的および非薬理学的な標的治療が、持続的な自殺念慮の経過を改善するかを調査する必要がある」としている。■関連記事双極性障害患者の自殺、治療パターンを分析双極性障害、リチウムは最良の選択か双極性障害に対する抗うつ薬治療、その是非は

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悪性脳腫瘍に対するテモゾロミド療法の役割は?/Lancet

 新たに診断された1p/19q非欠失の退形成星細胞腫患者において、テモゾロミドアジュバント療法により、顕著な生存ベネフィットを得られることが、第III相無作為化非盲検試験「CATNON(EORTC study 26053-22054)」の中間解析として報告された。オランダ・エラスムスMCがん研究所のMartin J van den Bent氏らが、Lancet誌オンライン版2017年8月8日号で発表した。同患者に対するテモゾロミドによる化学療法は、1p/19q欠失の退形成星細胞腫よりも有効性は低く予後は不良とされているが、その役割は明確にはなっていなかった。放射線療法と併用またはアジュバント療法について評価 研究グループは、1p/19q非欠失の退形成星細胞腫成人患者における放射線療法と併用またはアジュバント療法として行うテモゾロミド化学療法を評価するため、2×2要因デザインを用いた検討を行った。適格患者は、18歳以上、1p/19q非欠失退形成星細胞腫を新規診断され、WHO全身状態スコアが0~2とした。 患者を、電子的EORTCウェブベースORTAシステムで、次の4群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。放射線治療(59.4Gy:1.8Gyずつの33分割)単独治療群、放射線治療+テモゾロミドアジュバント療法(1日目~5日目に150~200mg/m2投与を4週間サイクルで12回)群、放射線治療+テモゾロミド併用療法(75mg/m2/日)群、放射線治療+テモゾロミド併用+テモゾロミドアジュバント療法群。 主要エンドポイントは全生存率(OS)で、全身状態スコア(>0 vs.0)、年齢(50歳未満 vs.50歳以上)、1pヘテロ接合欠失(あり vs.なし)、オリゴデンドログリアの存在(あり vs.なし)、MGMT遺伝子プロモーター領域メチル化状態(メチル化 vs.メチル化していないが不明瞭または不明 vs.非メチル化)で補正を行いintention to treat解析を行った。 当初計画では、219例(41%)の死亡が発生した時点で中間解析を行い、有効性の帰無仮説を検証する予定であった(リジェクション閾値はp<0.0084)。アジュバント療法を行った群のOSに関するハザード比は0.65 2007年12月4日~2015年9月19日の間に、1,407例がスクリーニングを受け、748例が治療群に無作為に割り付けられていた。中間解析の条件に達したのは2015年5月。データをロックした同年8月31日時点で、登録完了していたのは745例(99%)であった。 追跡期間中央値は27ヵ月(95%信頼区間[CI]:25~30)。2015年5月31日までに、病勢進行は344例(46%)、死亡は221例(30%)であった。死亡の内訳は、テモゾロミドアジュバント療法を受けなかった群が129/372(35%)、受けた群は92/373(25%)であった。OSに関するハザード比(HR)は、テモゾロミドアジュバント療法を用いた群で0.65(99.145%CI:0.45~0.93、p=0.0014)であった。5年時点のOSは、テモゾロミドアジュバント療法を使用した群で55.9%(95%CI:47.2~63.8)、非使用群は44.1%(同:36.3~51.6)であった。 Grade3-4有害事象の発生は、テモゾロミド投与群に割り付けられた患者549例中8~12%で報告されたが、血液学的なものまたは可逆的な事象が主なものであった。 結果を踏まえて著者は、「さらなる分析で、テモゾロミド併用の役割と分子レベルの役割解明が必要である」と述べている。

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