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治療抵抗性うつ病の予測因子に関するコホート研究

 うつ病の治療では、しばしばその後の介入が必要となる。抗うつ薬治療により寛解が得られない患者は、治療抵抗性うつ病(TRD:treatment-resistant depression)といわれる。どのような患者がTRDを発症するか予測することは、医療従事者がより効果的な治療を決定するうえで重要である。米国・ヤンセン・リサーチ&ディベロップメントのM. Soledad Cepeda氏らは、医療保険データベースを用いて、実臨床におけるTRDの予測因子の特定を試みた。Depression and anxiety誌オンライン版2018年5月22日号の報告。 本レトロスペクティブコホート研究は、躁病、認知症、精神病の診断のない新たにうつ病と診断された成人患者を対象に、米国医療保険データベースを用いて実施した。抗うつ薬投与日をインデックス日とした。アウトカムはTRDとし、その定義は、インデック日から1年以内に3種類以上の抗うつ薬治療または抗うつ薬治療後の抗精神病薬治療を行った場合とした。予測因子は、年齢、性別、医学的症状、医薬品、インデック日から1年前の対処とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者23万801例のうち、1年以内にTRDが認められた患者の割合は10.4%であった。・ベースライン時のTRD患者は非TRD患者より若い傾向にあり、18~19歳の割合は10.87% vs.7.64%であった(リスク比=1.42、95%CI:1.37~1.48)。・TRD患者は、非TRD患者よりもベースライン時に不安障害を有する可能性がより高かった(リスク比:1.38、95%CI:1.35~1.41)。・疲労感が、最も高いリスク比を示した(リスク比:3.68、95%CI:3.18~4.25)。・TRD患者は、非TRD患者よりもベースライン時に物質使用障害、精神医学的状態、不眠症、疼痛がより頻繁に認められた。 著者らは「新規にうつ病と診断され治療を受けた患者の10%において、1年以内にTRDが認められた。TRD患者は、非TRD患者よりも若く、疲労感、物質使用障害、精神医学的状態、不眠症、疼痛をより頻繁に有していた」としている。■関連記事リアルワールドデータにおける治療抵抗性うつ病SSRI治療抵抗性うつ病、治療前に識別可能か:大分大SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

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ダビガトランが非心臓手術後心筋障害の合併症リスク抑制/Lancet

 非心臓手術後心筋障害(MINS:myocardial injury after non-cardiac surgery)を呈した患者に対し、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)110mgの1日2回投与が、重大出血の有意な増大を認めることなく主要血管合併症(血管死、非致死的心筋梗塞など)のリスクを抑制することが、カナダ・マックマスター大学のP J Devereaux氏らによる国際無作為化プラセボ対照試験「MANAGE試験」の結果、明らかにされた。ダビガトランは周術期静脈血栓塞栓症を予防するが、MINS患者の血管合併症に有用であるかはこれまで検討されていなかった。MINS患者は世界で年間800万人に上ると推計され、術後2年間に心血管合併症や死亡リスクの増大が認められている。著者は今回の結果を受けて、「ダビガトラン110mgの1日2回投与により、それら患者の多くを助ける可能性が示された」とまとめている。Lancet誌2018年6月9日号掲載の報告。19ヵ国84病院で、ダビガトラン110mgの1日2回経口投与 vs.プラセボ ダビガトランの主要血管合併症の抑制効果を検討するMANAGE試験は、19ヵ国84病院から、45歳以上で非心臓手術後35日以内にMINSを呈した患者を登録して行われた。 被験者を無作為に1対1の割合で、ダビガトラン110mgを1日2回経口投与する群、または適合プラセボ投与を受ける群に割り付け、投与は最長2年間または試験終了までとした。また、MANAGE試験では部分的2×2ファクトリアルデザイン法が用いられ、プロトンポンプ阻害薬の非服用患者を、オメプラゾール20mgを1日1回投与する群、または適合プラセボ投与を受ける群に1対1の割合で割り付け、主要上部消化管合併症への効果の評価も行われた。無作為化は、試験担当者によって中央施設の24時間コンピュータ無作為化システムを利用したブロック無作為化、層別化が行われ、患者、医療従事者、データ収集者、アウトカム判定者は、治療割付をマスキングされた。 主要有効性アウトカムは、主要血管合併症(血管死、非致死的心筋梗塞、非出血性脳卒中、末梢動脈血栓症、下肢切断、症候性静脈血栓塞栓症)の発生で、主要安全性アウトカムは、致命的・重大・重要臓器出血の複合で、intention-to-treat法に基づき解析が行われた。主要血管合併症の発生ハザード比は0.72、ダビガトラン群で有意に減少 2013年1月10日~2017年7月17日に、1,754例がダビガトラン(877例)またはプラセボ(877例)の投与を受けた。平均年齢はともに70歳、男性はそれぞれ52%、51%。MINSの診断基準は、両群とも80%がトロポニン値評価によるものだった。MINSの診断は術後1日、無作為化は診断後5日に行われた。MINS発症前の手術タイプは整形外科が両群とも最も多かった(38%、39%)。 試験薬の投与は、ダビガトラン群401/877例(46%)で、プラセボ群380/877例(43%)で中断となった。投与期間中央値は、ダビガトラン群80日(IQR:10~212)、プラセボ群41日(6~208)。中断とならなかった患者の投与期間中央値は、それぞれ474日(237~690)、466日(261~688)であった。 主要有効性アウトカムの発生は、ダビガトラン群(97/877例[11%])がプラセボ群(133/877例[15%])よりも有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.55~0.93、p=0.0115)。 主要安全性複合アウトカムは、ダビガトラン群29例(3%)、プラセボ群31例(4%)で発生した(HR:0.92、95%CI:0.55~1.53、p=0.76)。 なお、オメプラゾールに関する割り付けが行われた患者は556例。結果は別途報告される予定という。

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オゼノキサシン1%クリーム、膿痂疹に有効

 オゼノキサシンは、グラム陽性菌への強い殺菌的な抗菌作用を示す新規局所抗菌薬で、接触感染で広まる皮膚の細菌感染症である膿痂疹に対する治療薬として、1%クリーム剤が開発された。米国・ベイラー医科大学のTheodore Rosen氏らは、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、オゼノキサシン1%クリームが生後2ヵ月以上の膿痂疹患者に有効で、安全性と忍容性も良好であることを報告した。著者は、「オゼノキサシンクリームによる治療は、膿痂疹の新しい治療の選択肢となる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。 研究グループは、膿痂疹におけるオゼノキサシン1%クリームの有効性、安全性および忍容性を評価する目的で、2014年6月2日~2015年5月30日に6ヵ国で登録された患者に対し無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。この結果は、2015年7月9日~22日に解析された。 対象は、膿痂疹に感染した生後2ヵ月以上の乳幼児を含む小児および成人患者411例(男性210例[51.1%]、平均年齢18.6[SD 18.3]歳)で、オゼノキサシン群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、1日2回5日間塗布した。有効性、安全性および忍容性は、Skin Infection Rating Scaleと微生物培養を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。・5日後の臨床的な治療成功率は、オゼノキサシン群がプラセボ群より有意に高かった(206例中112例[54.4%]vs.206例中78例[37.9%]、p=0.001)。・2日後の微生物学的な治療成功率もまた、オゼノキサシン群がプラセボ群より有意に高かった(125例中109例[87.2%]vs.119例中76例[63.9%]、p=0.002)。・オゼノキサシン群は忍容性が高く、206例中8例で有害事象が報告されたが、オゼノキサシンによる治療と関連があったのは1例のみで、重篤な有害事象はみられなかった。

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CABG後もSAPTよりDAPTが優れている?(解説:上田恭敬氏)-879

 SVGを用いた待機的CABG症例を対象とし、術後の抗血小板療法をチカグレロル+アスピリン併用(DAPT)、チカグレロル単独、アスピリン単独の3群に無作為に割り付け、1年後のSVG開存を主要評価項目としたRCTの結果が報告された。SVGの開存はCTあるいはCAGによって評価された。 本試験では、中国の6施設において500症例が、チカグレロル+アスピリン併用(168症例)、チカグレロル単独(166症例)、アスピリン単独(166症例)の3群に割り付けられた。主要評価項目である1年時点でのSVG開存率は、チカグレロル+アスピリン併用群で88.7%とアスピリン単独群の76.5%より有意に高値であったが、チカグレロル単独群の82.8%はアスピリン単独群と統計的に差を認めなかった。 出血性イベントについては、軽度のものまで含めるとチカグレロル+アスピリン併用群で頻度が多いように思われたが、出血性イベントおよびMACE(composite of cardiovascular death, nonfatal myocardial infarction, or nonfatal stroke)を統計的に比較するには症例数が少な過ぎたと結論している。 以上より、本研究で示されたことは、「CABG後1年でのSVG開存率がアスピリン単独群よりもチカグレロル+アスピリン併用群で有意に高かった」ということで、MACEや出血性イベントの違いについては十分評価できなかったということになる。しかし、試験がオープンラベルで行われたこともlimitationとして指摘されており、エビデンスとして確立するためには、今回の結果をより大規模のRCTで検証する必要がある。PCI後の抗血栓療法において、DAPT vs.SAPTが活発に議論されているが、CABG後においても、今後同様の議論が展開されるべきであろう。そのためには、CABG症例を対象としたさまざまなRCTが実施される必要がある。

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遺伝性ジストニア〔Dystonia〕

1 疾患概要■ 概念・定義ジストニアは、捻転性・反復性のパターンを持った異常な筋収縮により姿勢や動作が障害される病態と定義されているが、その本態は姿勢や自動運動など意識せずに遂行できる運動のプログラム単位の異常ということができる。(1)動作(または姿勢)特異性、(2)一定のパターンを持った動作である、(3)感覚トリックを有する(たとえば軽く健側の手で患側の手を触れることで症状が軽減するなど)という3点がそろう不随意運動である。過去には心因性疾患の1つとして捉えられることも多かったが、現在では基底核疾患の1つとされている。ジストニアを主徴として遺伝性を示す疾患には(1次性)遺伝性ジストニアと遺伝性神経変性疾患、遺伝性代謝疾患がある。遺伝性ジストニアは浸透率の低いものが多く、孤発性とみなされているものも多い。また、同じ遺伝子による病態であっても発症年齢などによる修飾が大きく同じ疾患と診断できない場合も多いとされている。■ 疫学難治性疾患研究の「ジストニアの病態と疫学に関する研究」研究班での調査によると、ジストニアの頻度は人口10万人あたり15~20例とされ、その中で遺伝性ジストニアの頻度は人口10万人あたり0.3例とされている。わが国における遺伝性ジストニアではDYT5ジストニア(瀬川病)の頻度が最も高く、次いでDYT1ジストニアが多いとされている。確定診断は遺伝子診断で行うが、「神経疾患の遺伝子診断ガイドライン2009」(日本神経学会)に示された手順に準じて行う必要がある。■ 病因ジストニアの発症メカニズムとしては、特定の姿勢や自動運動に際して不必要な筋の活動が見られ、基底核運動ループの筋を収縮させる直接路とその周辺の筋を抑制する間接路のバランスの破綻が想定されている。同じ基底核疾患であるパーキンソン病が、ドパミンの相対的な欠乏によって運動が遅く、小さくなるのと逆であるといえる。ジストニアにおいて、遺伝性ジストニアと孤発性ジストニアの原因がどう異なっているかは、まだ解明されていない。よって、両者の区分も実際は非常に難しく、遺伝性の判別が比較的容易であった発症年齢の若いタイプのジストニアから順に抽出され、定義され、遺伝性ジストニアというカテゴリーが確立されてきたといえる。よって、いまだ見出されていないタイプの遺伝性ジストニアが存在する可能性が示唆され、孤発性として分類されているものがあると予想される。■ 症状遺伝性ジストニアにおいて、DYTシリーズでは現在1~20まで分類があり、本稿では比較的頻度が高く、治療法の報告がある群を中心に症状を述べる。DYT1ジストニアは、全身性捻転性ジストニアで10歳前後の発症の場合に考慮すべきジストニアである。ジストニアが下肢か腕から始まり、全身に広がる。下肢発症の症例のほうが、より若年発症で全身に広がる頻度が高いといえる。進行により罹患部位の変形を来す。瀬川病(DYT5)は、わが国で発見されたドーパ反応性の遺伝性ジストニアで、常染色体優性遺伝形式をとるが不完全浸透で女性優位(4:1またはそれ以上)に発症する。家系により遺伝子変異部位は異なる。発症年齢は10歳以下が多く、下肢ジストニアで発症し、歩行障害を示す。体幹捻転の要素はない。尖足、内反尖足などの足の変形が多い。著明な日内変動を示し、昼から夕方にかけて症状が悪化し、睡眠によって改善する。固縮、姿勢時振戦があり低用量のL-dopaにより著明に改善する。DYT8ジストニア(発作性非運動誘発性ジスキネジア1)は、不完全浸透の常染色体優性遺伝であり、小児期に発症する。非運動誘発性の発作性のジストニア、舞踏アテトーゼが症状で、一側の上下肢に生じることが多いが、両側のことも体幹や顔面を含むこともある。アルコール・カフェイン摂取、緊張感、疲労などが誘因になるとされる。DYT10ジストニアは、反復発作性運動誘発性ジスキネジアであり、常染色体優性で小児期から成人期に発症する。急激な随意運動に伴って発作性のジストニアを一側の上下肢に生じ転倒する。両側のこともある。10~30秒で5分を超えない発作を1日に数十回~数日に1回の頻度で繰り返すとされる。DYT11ジストニアは、不完全浸透の常染色体優性遺伝で、小児期~青年期にミオクローヌスとジストニアを来す。ミオクローヌスは頸部、上肢に見られ、ジストニアは捻転ジストニア、頸部ジストニア、書痙などである。アルコールで著明に改善するとされており、精神科的異常を伴うことが多いとされる。DYT12ジストニアは、不完全浸透の常染色体優性遺伝であり、14~45歳に急性に発症し、数分~1ヵ月で症状は完成し、症状が固定するとされる。顔面口部に強いジストニアを呈する。肉体的あるいは心理的なストレスの後に発症する傾向がある。DYT18ジストニアは、小児期に発症する。運動練習、持続的な運動、とくに歩行の後でジストニア、舞踏アテトーゼ、バリスムなどの不随意運動を生じる。てんかん発作を伴うものが多い。頭部MRI検査で多系統萎縮症様の被殻尾側の異常所見やFDG-PET検査で異常側視床の取り込み低下を認める。■ 分類遺伝性ジストニアは、遺伝様式、ジストニアの発症年齢、全身性か局所性か、持続性か発作性かで分類される(表)。表 遺伝性ジストニアの分類I 1次性捻転ジストニア1)全身性ジストニアDYT1ジストニア、DYT2ジストニア、 DYT17ジストニア2)局所性・分節性ジストニアDYT4ジストニア、DYT6ジストニア、 DYT7ジストニア、DYT13ジストニアII ジストニア-パーキンソニズム1)ドパ反応性ジストニアDYT5ジストニア・DYT12ジストニア・DYT16ジストニア2)ミオクローヌスジストニアDYT11ジストニア・DYT15ジストニアIII 発作性ジストニアDYT8ジストニア・DYT9ジストニア・DYT10ジストニア・DYT18ジストニア・DYT19ジストニア・DYT20ジストニアIV 2次性ジストニア1)神経変性疾患(遺伝性神経変性疾患、遺伝性代謝性疾患に伴うジストニア)で頻度の高い疾患DYT3ジストニア・SCA1、2、3、17、PARK2、6、15、家族性痙性対麻痺、PANK(pantothenate kinase associated neurodegeneration)、有棘赤血球舞踏病、ハンチントン病、レーバー病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイ・サックス病)、ニーマン・ピック病C型、レット症候群2)代謝性疾患ウィルソン病■ 予後ジストニア自体で生命が脅かされることはない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)先述のように、「神経疾患の遺伝子診断ガイドライン2009」(日本神経学会)に示された手順に準じて、確定診断は遺伝子診断で行う必要がある。DYT1は、常染色体優性遺伝で原因遺伝子は9q34の150kbの領域に位置しており、TorsinA遺伝子のアミノ酸コード領域中のCAG欠失が見出された。この変異がDYT1の原因である。DYT5は、日本の瀬川 昌也氏らによってはじめて報告された。常染色体優性遺伝をとるが不完全浸透で女性に多い。GCH1遺伝子上の機能喪失型変異によって引き起こされることがわかっている。GCH1遺伝子は、ドパミン合成速度を制御する機能を持つ。GCH1遺伝子の機能喪失型変異による酵素活性の不足は、黒質線条体のドパミン作用性ニューロンにおけるドパミン減少を導き、このようなドパミン減少によってジストニア症状が引き起こされていると推測されている。これまでGCH1遺伝子には60以上の異なった変異が報告されている。このような高い変異率が実現されるメカニズムはいまだ不明である。DYT8は、不完全浸透型の常染色体優性遺伝形式を示し、原因遺伝子はMR-1(MIM609023)である。DYT10の原因遺伝子はPRRT2(proline-rich transmembrane protein 2)である。DYT11は、不完全浸透型の常染色体優性遺伝形式を示し、病因遺伝子産物はSGCE(ε-sarcoglycan)で平滑筋、神経系に分布する。DYT12は不完全浸透型の常染色体優性遺伝形式を示し、原因遺伝子はATP1A3である。DYT18は常染色体優性遺伝形式を示し、原因遺伝子はSLC2A1である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)局所性ジストニアの場合は、ボツリヌス治療が第1選択となる。とくに眼瞼痙攣と痙性斜頸に対するボツリヌス治療は高いエビデンスがある。ボツリヌス治療以外の薬物治療としては、眼瞼痙攣などの顔面ジストニアに対しては塩酸トリヘキシフェニジル(商品名:アーテン、トレミン)などの抗コリン薬、クロナゼパム(同:リボトリール、ランドセン)、ジアゼパム(同:ダイアップ)などのベンゾジアゼピンの効果が報告されている。痙性斜頸に対しては抗コリン薬、クロナゼパムやジアゼパムなどのベンゾジアゼピン、バクロフェン(同:ギャバロン、リオレサール)などが使われる。重症例では脳深部刺激療法(DBS)も考慮される。書頸などの上肢ジストニアにおいても、他の局所ジストニアと同様の内服治療を行う以外に、神経ブロックなどが効果的な場合もあるが、有効性は低いといわれている。全身性ジストニアにおいても、特定部位の筋弛緩が生活の質の改善または合併症の進行予防にボツリヌス治療は有効である。また、DYT1は淡蒼球のDBSが著効を呈する。DYT5などのドパ反応性ジストニアは少量のL-dopa(同:ドパストン、ドパゾール)が劇的に奏効する。ボツリヌス毒素の筋肉注射治療は、大量反復投与では毒素に対する抗体産生が作用を無効化するため問題になる。なお、使用に当たっては講習会出席により得られる資格が必要である。4 今後の展望ジストニアに対するボツリヌス治療単独では、治療困難な例も多く、そのような治療抵抗性のジストニアに対しては薬物治療の併用がすすめられる。ゾルピデム(商品名:マイスリーほか)は不眠症などの治療に用いられるが、50~70mg/日という高濃度のゾルピデム治療が視床や視床下核のGABAA受容体に結合し、また淡蒼球にもなんらかの影響を及ぼす結果、大脳基底核-視床-大脳皮質運動野の経路を直接的に、あるいは間接的に改善することでジストニアの治療につながっている可能性があり、治療抵抗性のジストニアに対し、ゾルピデムによる治療も新たな治療方法として期待できる。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 遺伝性ジストニア(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)梶龍兒ほか. 臨床神経. 2008;48:844-847.2)田宮元. Brain Nerve. 2005;57:935-944.3)長谷川一子. ジストニア. 中外医学社;2012.p.20-52.4)梶龍兒 編集. ジストニアのすべて―最新の治療指針. 診断と治療社;2013.p.93-94.公開履歴初回2018年06月26日

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新たな点眼薬、アデノウイルス結膜炎に効果

 急性アデノウイルス結膜炎に対する、ポビドンヨード(PVP-I)0.6%/デキサメタゾン0.1%懸濁性点眼液の有効性および安全性を評価する多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(第II相臨床試験)が行われ、米国・セントルイス・ワシントン大学のJay S. Pepose氏らが結果を報告した。PVP-I/デキサメタゾンは安全性および忍容性が良好で、プラセボと比較し臨床的寛解率およびアデノウイルス除去率を有意に改善することが認められたという。American Journal of Ophthalmology誌2018年オンライン版5月19日号掲載の報告。 研究グループは、Rapid Pathogen Screening Adeno-Detector Plus testで急性アデノウイルス結膜炎に陽性の成人患者を、PVP-I 0.6%/デキサメタゾン0.1%群、PVP-I 0.6%群または溶媒(プラセボ)群に、1対1対1の割合で無作為に割り付け、両眼に1日4回、5日間投与し、3日目、6日目および12日目に評価した(+1-day window)。 有効性の評価項目は、臨床的寛解(試験眼の結膜炎による水溶性眼脂と眼球結膜充血がそれぞれ消失)およびアデノウイルス除去の複合エンドポイントであった。 主な結果は以下のとおり。・有効性解析の対象症例は144例であった(PVP-I/デキサメタゾン群48例、PVP-I群50例、プラセボ群46例)。・LOCF解析に基づく6日目の臨床的寛解率は、PVP-I/デキサメタゾン群31.3%、PVP-I群18.0%(有意差なし)、プラセボ群10.9%(p=0.0158)で、PVP-I/デキサメタゾン群がプラセボ群より有意に高かった。・アデノウイルス除去率(LOCF法にて、試験眼の培養細胞が免疫蛍光法で陰性となる患者の割合を解析)は、PVP-I/デキサメタゾン群がプラセボ群より、3日目(35.4% vs.8.7%、p=0.0019)および6日目(79.2% vs.56.5%、p=0.0186)ともに有意に高かった。・PVP-I群のアデノウイルス除去率は、3日目32.0%、6日目62.0%で、いずれもPVP-I/デキサメタゾン群と有意差はなかった。・治療下で発現した有害事象(AE)は、PVP-I/デキサメタゾン群で53.4%、PVP-I群で62.7%、プラセボ群で69.0%にみられた。・AEによる中止は37例(PVP-I/デキサメタゾン群9例、PVP-I群12例、プラセボ群16例)であった。

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医薬教育倫理協会(AMEE)が提案する新時代の医師継続教育

 医薬教育倫理協会(AMEE: Association of Medical Education and Ethics)が「AMEE医学継続教育プログラム」と銘打ったネット番組の配信を開始した。AMEEは2016年7月に設立された一般社団法人で、設立の目的は、医療倫理に基づき、高度な医学・薬学の継続教育を医師・薬剤師に提供することを通じて、医療の向上と国民の健康増進に寄与すること。AMEEの代表理事を務める、帝京大学臨床研究センター センター長 寺本 民生氏に、AMEEが推進する新しい医師継続教育について話を聞いた。―新しい医師継続教育の仕組みを立ち上げた経緯は? 私たち医師は生涯学びを続けなければならない存在です。しかしながら、多忙な日々を送る私たちが「学びの時間」を確保することはきわめて大変なことです。自分の専門領域に関連する学術集会に参加することでも、金銭的・時間的な負担はかなりのものです。日常診療で遭遇するご自分の専門外の疾患を学習する機会を得ることは、大変な困難だと思います。 「多忙な医師に限られた時間の中で、より効果的な医師継続教育を提供」することができないかと思案し、設立したのがAMEEなのです。―AMEEの医師継続教育が目指すものは? AMEEの医師継続教育サービスの構想の参考になったのが米国のCME(continuing medical education)制度です。 米国では医師免許更新制度があり、免許更新に必要な単位を取得できる生涯学習はCME制度の下で広く行われております。国土の広い米国では、インターネットを活用したe-learningの形式で多くのCME活動が行われています。その仕組みを日本版にアレンジしたのが、AMEEの医師継続教育サービスです。 e-learningの仕組みを活用し、受講した医師のコンピテンシーを向上させることで日本の医療に貢献する。それがAMEEの目指していることです。―なぜ名称に「倫理」という言葉が入っているのでしょうか? 広く医師継続教育サービスを展開していくうえで、やはり資金が必要となります。米国のCME制度では、医療に関連する企業などから教育資金の拠出を受け、それを原資に継続教育を行うことが認められています。その際に、資金を拠出する企業と医師との利益相反が課題となります。 そこで、米国ではACCME(Accreditation Council for Continuing Medical Education)という団体が「企業による資金提供の基準」を明確に定めており、CME制度参加者はこの基準に従って、制作過程の独立性を担保しながら資金を得て活動を続けています。AMEEも、このACCMEの基準に準拠した独立性基準を策定し、企業や団体などから資金の拠出を受け、事業を運営しています。 AMEEに倫理という言葉を盛り込んだのは、倫理感を持って適切に医師継続教育を行っていく決意でもあるわけです。―具体的な活動を教えてください 現時点で、AMEEの医師継続教育サービスでは、3本のプログラムが受講可能です。多くの医師に受講いただくために、ケアネットと提携して、医師へのプログラム案内をお願いしています。受講は無料です。ケアネット医師会員であれば、ケアネットのID/パスワードにて受講可能です。https://cme.amee.or.jp/rpv/openid/auth_request.aspx 現在配信されているのは、「心房細動による脳卒中予防」、「免疫チェックポイント阻害剤によるがん治療」、「家族性高コレステロール血症」の3本です。いずれのプログラムも日本のおけるそれぞれの第一人者が、「わかりやすく」、「臨床医目線」で熱のこもった講義をしています。ご興味をお持ちの先生方はぜひ一度受講してみてください。 中でも私の専門でもある家族性高コレステロール血症は日本における診断率が1%と、ほとんどが見逃されている疾患です。このプログラムを通じ、一人でも多くの先生方がこの疾患に向き合っていただければと思います。―今後の展望をお聞かせください 企業との独立性を保ちながら教育プログラムを提供するという考え方が普及するには、もう少し時間が必要かもしれません。しかし、医師本位の教育的な内容であれば、たとえ企業の資金提供があったとしても、多くの先生方に受け入れていただけるものと考えています。AMEEは、各種学術団体や企業などへの理解を広げ、この新しい教育提供の方法を提案していきます。また、各種学術団体とのコラボレーションも企画していきます。 たとえば、インターネットで共催プログラムを視聴することで、学会の単位が獲得できれば、多忙な医師にとっては福音ではないしょうか? 今回の「家族性高コレステロール血症」のプログラムは、日本動脈硬化学会とAMEEの共催となっており、AMEEのプログラムを見ていただくことで動脈硬化専門医の単位が付与されます。AMEEの共催事業の第一歩です。今後のAMEEの活動にご期待ください。

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禁煙開始4週前からのニコチンパッチ、長期的効果は?/BMJ

 英国では、喫煙を中止した日以降は禁煙を補助する薬物療法が推奨されるが、喫煙中止日前の薬物療法(preloading)の長期的なベネフィットのエビデンスは明確ではないという。英国・オックスフォード大学のPaul Aveyard氏らは、ルーチンの診療における禁煙開始前のニコチン投与について検討した。その結果、明らかな長期的有効性は認めなかったものの、ニコチン前投与により禁煙開始後のバレニクリンの使用が減少し、これによってニコチンの効果がマスクされた可能性があると報告した。研究の成果は、BMJ誌2018年6月13日号に掲載された。禁煙前4週投与の長期的有効性を評価 研究グループ(Preloading Investigators)は、長期的な禁煙の達成における禁煙開始前4週間のニコチンパッチ使用の有効性を評価する非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、ニコチン依存がみられる毎日喫煙者(daily smoker)であった。被験者は、前投与群または対照群にランダムに割り付けられた。前投与群は喫煙を中止する前に21mgニコチンパッチ(1日1回)を4週間使用し、対照群は通常治療と行動支援を受けた。 主要アウトカムは、6ヵ月時の生化学的に確定された禁煙とし、副次アウトカムは、4週および12ヵ月時の禁煙であった。 2012年8月~2015年3月の期間に、イングランドのプライマリケア施設および禁煙クリニックに1,792例が登録され、前投与群に899例、対照群には893例が割り付けられた。バレニクリン使用で補正すると有意な効果 ベースラインの全体の平均年齢は48.9(SD 13.4)歳、男性が52.6%であった。既製タバコの使用者が68.2%、手巻きタバコの使用者が31.0%であり、平均1日喫煙本数は18.9(SD 9.3)本、過去6ヵ月以内に禁煙支援を受けた者は32.5%であった。 6ヵ月時の生化学的に確定された禁煙の達成率は、前投与群が17.5%(157/899例)、対照群は14.4%(129/893例)であった(群間差:3.0%、95%信頼区間[CI]:-0.4~6.4%、オッズ比[OR]:1.25、95%CI:0.97~1.62、p=0.08)。 両群間で、禁煙開始後の治療における禁煙補助薬バレニクリンの使用のバランスがとれておらず、対照群で多く用いられていた(22.1 vs.29.5%)。事前に計画された補正を行うと、ニコチン前投与の効果のORは1.34(95%CI:1.03~1.73、p=0.03、群間差:3.8%、95%CI:0.4~7.2)となり、有意な差が認められた。 4週時におけるバレニクリン使用で未補正の禁煙効果のORは1.21(95%CI:1.00~1.48)、群間差は4.3%(0.0~8.7%、p=0.05)であり、補正後のORは1.32(1.08~1.62、p=0.007)であった。また、12ヵ月時の未補正のORは1.28(0.97~1.69)、群間差は2.7%(-0.4~5.8、p=0.09)であり、補正後のORは1.36(1.02~1.80、p=0.04)であった。 前投与群の5.9%が不耐のためニコチンパッチを中止した。消化器症状(主に悪心)は、前投与群のほうに高い頻度(4.0%)で認められた。重篤な有害事象は前投与群が8例、対照群も8例にみられた(OR:0.99、95%CI:0.36~2.75)。 著者は、「21mgニコチンパッチによるニコチンの禁煙開始前4週投与は、長期の禁煙において期待された効果を発揮し、安全で耐用可能と考えられるが、最も効果の高い禁煙補助薬であるバレニクリンの使用を抑制する可能性がある」とし、「この非意図的な結果を克服できれば、前投与は長期的な禁煙達成の増加に、価値のある効果をもたらす可能性がある」と指摘している。

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JAK1阻害薬upadacitinibが関節リウマチ再発例の症状改善/Lancet

 疾患活動性が中等度~重度の関節リウマチ再発例の治療において、選択的JAK1阻害薬upadacitinibの12週、1日1回経口投与により、症状が著明に改善することが、米国・スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らが行った「SELECT-BEYOND試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年6月13日号に掲載された。upadacitinibは、他のJAKファミリーのメンバーに比べJAK1に高い選択性を持つように遺伝子改変されたJAK阻害薬であり、第II相試験でメトトレキサートやTNF阻害薬の効果が不十分な患者の関節リウマチ徴候や症状を改善することが報告されている。26ヵ国153施設に499例を登録 SELECT-BEYONDは、26ヵ国153施設が参加した国際的な二重盲検無作為化対照比較試験である(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、活動性の関節リウマチを発症し、生物学的製剤(bDMARD)の効果が不十分または不耐となり、同時に従来型抗リウマチ薬(csDMARD)の投与も受けている患者であった。 被験者は、upadacitinib徐放薬15mgまたは30mgまたはそれぞれのプラセボを12週間、1日1回経口投与した後、同薬15mgまたは30mgをさらに12週間投与する群に2対2対1対1の割合でランダムに割り付けられた。 主要エンドポイントは、以下の2つとした。1)12週時に、米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善を達成した患者の割合(ACR20)、2)12週時に、C反応性蛋白(CRP)で評価した28関節の疾患活動性スコア(DAS28[CRP])≦3.2点を達成した患者の割合。有効性と安全性の解析は、修正intention-to-treat集団(試験薬の投与を1回以上受けた患者)で行った。 2016年3月15日~2017年1月10日の期間に、499例(upadacitinib 15mg群:165例、同30mg群:165例、プラセボ→同15mg群:85例、プラセボ→同30mg群:84例)が登録され、15mg群の1例が治療開始前に脱落した。12週時ACR20達成率は約2倍、DAS28(CRP)≦3.2点達成率は約3倍に 全体の平均罹患期間は13.2(SD 9.5)年で、bDMARDの投与歴は1剤が47%(235/498例)、2剤が28%(137例)、3剤以上が25%(125例)であり、12週の治療を完遂したのが91%(451例)、24週の治療の完遂例は84%(419例)であった。平均年齢はupadacitinib 15mg群(164例)が56.3(SD 11.3)歳、同30mg群(165例)が57.3(SD 11.6)歳、プラセボ群(169例)は57.6(SD 11.4)歳であり、女性がそれぞれ84%、84%、85%だった。 12週時のACR20達成率は、15mg群が65%(106/164例)、30mg群は56%(93/165例)であり、プラセボ群の28%(48/169例)に比し、いずれの用量群も有意に高かった(いずれもp<0.0001)。DAS28(CRP)≦3.2点の達成率は、15mg群が43%(71/164例)、30mg群は42%(70/165例)と、プラセボ群の14%(24/169例)に比べ、いずれの用量群も有意に優れた(いずれもp<0.0001)。 12週時の有害事象の発生率は、15mg群が55%(91/164例)、プラセボ群は56%(95/169例)と類似したが、これに比べ30mg群は67%(111/165例)と頻度が高かった。最も高頻度の有害事象は、上気道感染症(15mg群:8%[13例]、30mg群:6%[10例]、プラセボ群:8%[13例])、鼻咽頭炎(4%[7例]、5%[9例]、7%[11例])、尿路感染症(9%[15例]、5%[9例]、6%[10例])、関節リウマチの増悪(2%[4例]、4%[6例]、6%[10例])であった。 重篤な有害事象は、15mg群の5%(8例)に比べ30mgは7%(12例)と、多い傾向がみられ、プラセボ群では発現を認めなかった。重篤な感染症、帯状疱疹、治療中止の原因となった有害事象も、15mg群やプラセボ群よりも30mg群で多かった。プラセボ対照期間中に、upadacitinib投与例で肺塞栓症が1例、悪性腫瘍が3例、主要有害心血管イベントが1例、死亡が1例にみられた。 著者は、「これらのデータは、再発例におけるJAK阻害薬治療のエビデンスを拡張し、upadacitinibによる治療は臨床的、機能的なアウトカムや患者報告アウトカムを大幅に、かつ迅速に改善する可能性を示すもの」としている。

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ProACT試験-プロカルシトニン値を指標とした抗菌薬使用(解説:小金丸博氏)-877

 抗菌薬の過剰な使用は、医療費の増加や薬剤耐性菌の出現に関連する公衆衛生上の問題である。プロカルシトニンは、ウイルス感染よりも細菌感染で上昇しやすいペプチドであり、上昇の程度は感染の重症度と相関し、感染の改善とともに経時的に低下する。いくつかの欧州の試験において、抗菌薬を投与するかどうかをプロカルシトニンの結果に基づいて決定することで抗菌薬の使用を抑制できることが示されており、2017年、米国食品医薬品局(FDA)は下気道感染症が疑われる場合に抗菌薬の開始または中止の指標としてプロカルシトニンを測定することを承認した。しかしながら、プロカルシトニン値を日常臨床へ適用できるかは明らかでなかった。 本研究は、プロカルシトニン値に基づく抗菌薬処方ガイドラインを用いて抗菌薬の投与を決定することで、抗菌薬の使用を減らすことができるかどうかを検討したランダム化比較試験である。下気道感染症疑いで受診し、抗菌薬を投与すべきかどうかはっきりしない患者を対象とし、プロカルシトニン使用群と通常治療群に無作為に割り付けた。プロカルシトニン使用群の診療医には、プロカルシトニンの測定値に応じた推奨治療が記載された抗菌薬使用ガイドラインが提供された。その結果、intention-to-treat(ITT)解析では、30日までの平均抗菌薬投与日数はプロカルシトニン使用群が4.2日、通常治療群が4.3日であり、両群間に有意差を認めなかった(差:-0.05日、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.5、p=0.87)。また、ITT解析による有害なアウトカムを発症した患者の割合は11.7%と13.1%であり、両群間に有意差を認めなかった(差:-1.5ポイント、95%CI:-4.6~1.7、非劣性:p<0.001)。 本試験の結果は過去の研究と異なり、下気道感染症疑いの患者に対してプロカルシトニン値を指標として抗菌薬投与の適応を決定しても、指標としない群と比較して抗菌薬の使用を抑制できなかった。その理由として、通常治療群の臨床医はプロカルシトニン値の結果を知らないにもかかわらず、プロカルシトニン高値例に比べ、低値例での抗菌薬処方が少なかった点が挙げられている。プロカルシトニン値が低い患者では感染症の臨床症状を呈することが少なく、通常の臨床判断で十分抗菌薬の適応を決定できたと考えられる。 プロカルシトニンは抗菌薬を投与すべきかどうか判断するのに有用な指標となりうるが、プロカルシトニンの値だけで治療方針を決定できるわけではない。まずは注意深い問診と診察から正しく臨床情報を整理することが重要であり、そのうえでプロカルシトニン値を用いることが適切な抗菌薬使用につながると考える。

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うつ病や身体活動と精液の質との関連

 行動および心理社会的要因は、精液の質の低下と関連している。しかし、うつ病や身体活動と精液の質との関連については、よくわかっていない。中国・第3軍医大学のPeng Zou氏らは、中国人大学生におけるうつ病および身体活動と精液の質との関連について検討を行った。Psychosomatic medicine誌オンライン版2018年5月24日号の報告。 2013年6月に中国人男子大学生587例よりデータを収集した。参加者に対し、ライフスタイル因子、Zung自己評価式抑うつ尺度(SDS)、身体活動に関する3項目を評価するため、アンケートを実施した。参加者は、身体検査を受け、生殖ホルモン(テストステロン、エストロゲン、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、プロラクチン)を確認するための精液サンプルおよび血液サンプルを提供した。 主な結果は以下のとおり。・高いうつ病スコアを有する男性(63例、10.7%)は、非うつ病男性よりも精子濃度が低く(66.9±74.5 vs.72.6±56.9[10/mL]、p=0.043)、精子総数が少なかった(241.6±299.7 vs.257.0±204.0[10/mL]、p=0.024)。・身体活動レベルの低い男性(99例、16.9%)は、活動レベルの高い男性よりも精子総数が少なかった(204.4±153.7 vs.265.8±225.8[10/mL]、p=0.017)。・潜在的な交絡因子で調整した後、うつ病男性は、非うつ病男性よりも精子濃度が18.90%(95%CI:1.14~33.47%)低く、精子総数が21.84%(95%CI:3.39~36.90%)少なかった。・身体活動レベルの低い男性は、活動レベルの高い男性よりも精子総数が23.03%(95%CI:2.80~46.89%)少なかった。・うつ病と身体活動との間に、精子濃度の相互作用効果が検出された(p=0.033)。・うつ病や身体活動と生殖ホルモンとの間に、有意な関連は認められなかった(p>0.05)。 著者らは「うつ病や低レベルの身体活動は、精液の質の低下と関連しており、リプロダクティブヘルス(生殖に関する健康)に影響を及ぼす可能性がある」としている。■関連記事米国の生殖可能年齢の女性におけるうつ病有病率少し歩くだけでもうつ病は予防できる女子学生の摂食障害への有効な対処法

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軽症COPD患者への電話コーチングの効果は?/BMJ

 かかりつけ医を受診した軽症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、行動変容を促すための電話でのコーチングによる介入は、自己管理行動の変化にはつながったものの健康関連QOLの改善には至らなかった。英国・バーミンガム大学のKate Jolly氏らが、軽症COPD患者の自己管理の支援を目的とした社会的認知理論(Social Cognitive Theory)に基づく電話によるコーチングの有効性を評価した多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。システマティックレビューでは、COPD患者の自己管理支援が健康関連QOLを改善し入院の減少に有用であることが示されていたが、このエビデンスは主に2次医療における中等症または重症患者を対象としたものであった。BMJ誌2018年6月13日号掲載の報告。約600例を対象に、電話によるコーチング群と通常ケア群を比較 研究グループは、英国4地域のプライマリケア71施設において、スパイロメトリー(呼吸機能検査)で確定診断されたCOPD患者のうち、MRC(Medical Research Council)息切れスケールが1~2の577例を、電話によるコーチングを行う介入群(289例)と通常ケア群(288例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群では、禁煙、身体活動の増加、正しい吸入器の使用法および薬物療法のアドヒアランスに関する自己管理の支援を目的に、2日間訓練を受けた看護師が文書、歩数計および日誌を用いる電話指導を行った(1週時に35~60分、3、7、11週時に各15~20分の計4セッション、16、24週時には標準的な文書を郵送)。通常ケア群には、COPDに関するリーフレットを渡した。 主要評価項目は、COPD疾患特異的QOL評価尺度であるSGRQ-Cを用いて評価した12ヵ月時の健康関連QOLとし、intention-to-treat集団で線形回帰モデルを用いて解析した。12ヵ月時の健康関連QOLに有意差なし 介入群において、電話によるコーチングは予定の86%が実施され、75%の患者は4回の全セッションを受けた。追跡調査を完遂したのは、6ヵ月時92%、12ヵ月時89%であった。 12ヵ月時のSGRQ-Cスコアは、介入群と通常ケア群で有意差は確認されなかった(平均群間差:-1.3、95%信頼区間[CI]:-3.6~0.9、p=0.23)。6ヵ月時では、介入群において通常ケア群と比較し、身体活動の増加が報告され、ケアプラン(44 vs.30%)、抗菌薬のレスキュー使用(37 vs.29%)、吸入法のチェック(68 vs.55%)をより多く受けていたことが示された。

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JAK1阻害薬upadacitinibが難治性リウマチに有効/Lancet

 従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)で効果不十分の中等度~重度活動性関節リウマチ患者において、JAK1阻害薬upadacitinibの15mgまたは30mgの併用投与により、12週時の臨床的改善が認められた。ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のGerd R. Burmester氏らが、35ヵ国150施設で実施された無作為化二重盲検第III相臨床試験「SELECT-NEXT試験」の結果を報告した。upadacitinibは、中等度~重度関節リウマチ患者を対象とした第II相臨床試験において、即放性製剤1日2回投与の有効性が確認され、第III相試験のために1日1回投与の徐放性製剤が開発された。Lancet誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。upadacitinib 15mgおよび30mgの有効性および安全性をプラセボと比較 SELECT-NEXT試験の対象は、csDMARDを3ヵ月以上投与され(試験登録前4週間以上は継続投与)、1種類以上のcsDMARD(メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド)で十分な効果が得られなかった18歳以上の活動性関節リウマチ患者。双方向自動応答技術(interactive response technology:IRT)を用い、upadacitinib 15mg群、30mg群または各プラセボ群に2対2対1対1の割合で無作為に割り付けし、csDMARDと併用して1日1回12週間投与した。患者、研究者、資金提供者は割り付けに関して盲検化された。プラセボ群には、12週以降は事前に定義された割り付けに従いupadacitinib 15mgまたは30mgを投与した。 主要評価項目は、12週時における米国リウマチ学会基準の20%改善(ACR20)を達成した患者の割合、ならびに、C反応性蛋白値に基づく28関節疾患活動性スコア(DAS28-CRP)が3.2以下の患者の割合である。有効性解析対象は、無作為化され少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた全患者(full analysis set)とし、主要評価項目についてはnon-responder imputation法(評価が得られなかった症例はノンレスポンダーとして補完)を用いた。upadacitinibは両用量群で主要評価項目を達成 2015年12月17日~2016年12月22日に、1,083例が適格性を評価され、そのうち661例が、upadacitinib 15mg群(221例)、upadacitinib 30mg群(219例)、プラセボ群(221例)に無作為に割り付けられた。全例が1回以上治験薬の投与を受け、618例(93%)が12週間の治療を完遂した。 12週時にACR20を達成した患者は、upadacitinib 15mg群(141例、64%、95%信頼区間[CI]:58~70%)および30mg群(145例、66%、95%CI:60~73%)が、プラセボ群(79例、36%、95%CI:29~42%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。DAS28-CRP 3.2以下の患者も同様に、upadacitinib 15mg群(107例、48%、95%CI:42~55%)および30mg群(105例、48%、95%CI:41~55%)が、プラセボ群(38例、17%、95%CI:12~22%)より有意に多かった(各用量群とプラセボ群との比較、p<0.0001)。 有害事象の発現率は、15mg群57%、30mg群54%、プラセボ群49%で、主な有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は、悪心(15mg群7%、30mg群1%、プラセボ群3%)、鼻咽頭炎(それぞれ5%、6%、4%)、上気道感染(5%、5%、4%)、頭痛(4%、3%、5%)であった。 感染症の発現率は、upadacitinib群がプラセボ群より高かった(15mg群29%、30mg群32%、プラセボ群21%)。帯状疱疹が3例(各群1例)、水痘帯状疱疹ウイルス初感染による肺炎1例(30mg群)、悪性腫瘍2例(ともに30mg群)、主要心血管イベント1例(30mg群)、重症感染症5例(15mg群1例、30mg群3例、プラセボ群1例)が報告された。試験期間中に死亡例の報告はなかった。

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日本人思春期統合失調症に対するアリピプラゾールの有効性、安全性

 東海大学の松本 英夫氏らは、日本における思春期統合失調症に対するアリピプラゾールの有効性および安全性を評価するため、検討を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2018年5月18日号の報告。 6週間のランダム化二重盲検用量比較試験において、思春期統合失調症患者(13~17歳)をアリピプラゾール2mg/日群、6~12mg/日群、24~30mg/日群にランダムに割り付けた。6週間の試験終了後、対象患者は52週間のフレキシブルドーズオープンラベル拡大試験(初回用量:2mg/日、維持用量:6~24mg/日、最大用量:30mg/日)に移行した。 主な結果は以下のとおり。【6週間のランダム化二重盲検用量比較試験】・治療を完了した患者の割合は、2mg/日群で77.1%(35例中27例)、6~12mg/日群で80.0%(30例中24例)、24~30mg/日群で85.4%(41例中35例)であった。・ベースラインからエンドポイントまでのPANSS総スコアの最小二乗平均変化量は、2mg/日群で-19.6、6~12mg/日群で-16.5、24~30mg/日群で-21.6であった。・いずれの群においても20%以上で認められた治療下で発現した有害事象(TEAE)は、悪心、アカシジア、不眠、傾眠であった。・ほとんどのTEAEの重症度は、軽度または中等度であった。また、死亡例はなかった。【52週間のフレキシブルドーズオープンラベル拡大試験】・治療を完了した患者の割合は、60.3%(68例中41例)であった。オープンラベル試験開始時から52週までのPANSS総スコアは、7.9減少した。・20%以上で認められたTEAEは、鼻咽頭炎と傾眠であった。・ほとんどのTEAEの重症度は、軽度または中等度であった。また、死亡例はなかった。 著者らは「日本における思春期統合失調症に対するアリピプラゾールの短期および長期治療は、安全かつ十分な忍容性を有することが示唆された」としている。■関連記事日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果は統合失調症に対する短期治療、アリピプラゾール vs.リスペリドン日本人統合失調症患者におけるブレクスピプラゾールの長期安全性・有効性に関する52週オープンラベル試験

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湿疹の重症度とメンタルヘルスの悪化の間には相関がある

 湿疹の重症度とメンタルヘルスとの間には有意な関連性があることが、東北大学災害科学国際研究所の國吉 保孝氏らによる研究で明らかになった。Allergology International誌2018年4月13日号に掲載。 子供の湿疹とメンタルヘルスとの関連性は過小評価されている。そのため、著者らは、宮城県内で行われたToMMo Child Health Studyに参加した小学2年生から中学2年生9,954人のデータを用い、「子どもの強さと困難さアンケート」(SDQ)※のスコアと湿疹の重症度との相関について調査を行った。 湿疹の重症度はInternational Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)調査票の持続性屈曲性湿疹および睡眠障害の存在に基づいて、「正常」、「軽度/中等度」、「重度」と定義された。SDQは、合計スコアおよび4つのSDQサブスケール(情緒、行為、多動・不注意、仲間関係)のスコア(それぞれ16以上、5以上、5以上、7以上、5以上の場合)により、「支援の必要がおおいにある」と定義された。 主な結果は以下のとおり。・湿疹の重症度が上がるほど、SDQの合計スコアが有意に高かった(all p≦0.004 for trend)。・「SDQ合計スコア16以上」のオッズ比は、「軽度/中等度」の湿疹で1.51(95%CI:1.31~1.74)、「重度」の湿疹で2.63(95%CI:1.91~3.63)であった(p<0.001 for trend)。・SDQの4つのサブスケール(情緒、行為、多動・不注意、仲間関係)と湿疹の重症度との関連性も、同様の傾向を示した(all p≦ 0.017 for trend)。※「子どもの強さと困難さアンケート」(SDQ): 3歳から16歳くらいまでの子供についての、多側面における行動上の問題に関するスクリーニング尺度。子育てSDQともいう。自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害、行為障害などの測定について信頼性が高く評価されている。

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地中海食は心血管イベントを抑制する/NEJM

 心血管リスクが高い集団を対象とした試験で、低脂肪食事療法に割り付けた群よりも、エキストラヴァージンオリーブオイル(EVOO)またはナッツを一緒に補充する地中海式食事療法に割り付けた群のほうが、主要心血管イベントの発生率は低いことが、スペイン・バルセロナ大学のRamon Estruch氏らによる多施設共同無作為化試験「PREDIMED試験」の結果、示された。これまで行われた観察コホート研究や2次予防試験では、地中海式食事療法の順守状況と心血管リスクについて負の相関が示されている。PREDIMED(Prevencion con Dieta Mediterranea)試験の結果は2013年にジャーナル発表されたが、無作為化割り付けに関する分析方法の不備から著者らが同論文を取り下げ、今回あらためて修正解析の結果を発表した。NEJM誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。被験者の適格要件を厳格化し地中海食における心血管イベント発生を再解析 スペインで行われたPREDIMED試験は、地中海式食事療法による心血管イベントの1次予防効果を検証する多施設共同無作為化試験。心血管リスクが高いが登録時に心血管疾患を有していなかった7,447例の被験者(55~80歳、女性57%)を、地中海式食事療法+EVOO群(2,543例)、地中海式食事療法+ミックスナッツ群(2,454例)、対照食事療法群(食事性の脂肪を減らすようアドバイス、2,450例)の3つの食事療法群に割り付けて行われた。被験者は全員、年4回の教育セッションを受けるとともに、食事療法の経済的負担が生じないよう、地中海食+EVOO群には、1世帯1週当たり1LのEVOOを供与し、1人当たり大さじ4杯/日を消費することを勧告。地中海食+ミックスナッツ群には、1人当たり30g/日のミックスナッツ(くるみ15g、ヘーゼルナッツ7.5g、アーモンド7.5g)を供与した。対照群には、食品ではない小さな贈り物を与えた。 主要エンドポイントは、主要心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中または心血管系が原因の死亡)。フォローアップ中央値4.8年後に、事前規定の中間解析の結果に基づき試験は中止され、主要エンドポイントの結果は2013年にジャーナル報告されたが、その後、著者らが、非無作為化家族の登録、11試験地のうち1試験地(サイトD)の複数被験者が非無作為化試験群に割り付けられていたこと、その他試験地(サイトB)での乱数テーブルの明らかに一貫性のない使用といったプロトコール逸脱を認め、同報告を取り下げていた。今回、被験者が全員無作為に割り付けられたという前提に依らず解析を行い、修正した推定効果を発表した。地中海式食事療法群の主要心血管イベント発生のハザード比は0.70 主要エンドポイントは、288例に発生した。地中海食+EVOO群は96例(3.8%)、地中海食+ナッツ群83例(3.4%)、対照群109例(4.4)であった。 intention-to-treat解析(全被験者を包含およびベースライン特性、傾向スコアで補正後)の結果、対照群と比較した地中海食+EVOO群のハザード比(HR)は0.69(95%信頼区間[CI]:0.53~0.91)、地中海食+ナッツ群のHRは0.72(同:0.54~0.95)であった。地中海食+EVOO群と地中海食+ナッツ群を複合した地中海式食事療法群の対照群に対するHRは0.70(同:0.55~0.89)であった。 この結果は、参加試験地が判明しているか世帯家族であって被験者とは認められない1,588例を除外後の解析でも類似していた。サイトD被験者と世帯家族を除外した解析では、対照群と比較した地中海食+EVOO群のHRは0.66(95%CI:0.49~0.89)、地中海食+ナッツ群のHRは0.64(同:0.47~0.88)で、複合地中海式食事療法群の対照群に対するHRは0.65(同:0.50~0.85)であった。 著者は、「われわれが行った試験の結果は、地中海式食事療法が心血管疾患の1次予防効果があることを支持するものであった」とまとめている。

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臨床試験も「中国の時代!」(解説:後藤信哉氏)-874

 1990年代は日本の時代であった。経済は躍進し、医学研究も積極的であった。日本は長期の経済停滞の時代に入り医学者も内向きとなって論文数も減少した。筆者は国際雑誌CirculationのEditorをしているので、中国の臨床医学研究の量と質の改善に日々圧倒されている。かつて、日本が「世界の奇跡」とされ注目されたが、今は中国が「世界の中心」として注目されつつある。 本研究では静脈グラフトによる冠動脈バイパス術後の症例を対象としている。出発点となる1,256例の静脈グラフト後の症例を集めるだけでも日本では不可能に近い。本研究では急性期症例、抗凝固薬服用中などの除外基準をくぐり抜けた症例をアスピリン、チカグレロル、アスピリン・チカグレロル併用の3群にランダムに割り付けている。各群500例を集めた立派なランダム化比較試験である。Off pumpの手術も多い。中国のバイパス手術の技術も先進諸国に劣らない。 同時に出版されたEditorial Commentにも書かれているように、本研究のエンドポイントは心筋梗塞などではない。静脈グラフトの開存率が、アスピリン・チカグレロル併用群で高かった本研究の結果はチカグレロルの役割に関する仮説を提供した。ランダム化比較試験という方法論は確立されている。1千例の仮説産生試験に成功できる国であれば、今度は1万例に拡大した仮説検証試験も可能であろう。国民皆保険により医療の均質性が担保された日本には「ランダム化比較試験による仮説検証」はなじまなかった。遅れて経済大国となった中国にむしろ欧米にて確立された「ランダム化比較試験による仮説検証」がなじむかも知れない。医学の世界における中国の爆発的な発展に日本も置いていかれないようにしないといけないが、どうしたらいいのだろうか?

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小児のアトピー性皮膚炎、重症例で白内障のリスク増加

 小児のアトピー性皮膚炎(AD)患者における白内障の発症リスクに関するデータは不足している。韓国・ソウル大学のHyun Sun Jeon氏らは10年間にわたり集団ベースの後ろ向きコホート研究(縦断研究)を行った。その結果、白内障の絶対リスクはADの有無にかかわらず非常に低かったが、ADを有する小児は手術を要する白内障のリスクが高く、とくに重症の場合は白内障の発症と白内障手術の両方のリスクが高まる可能性が示唆された。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年6月7日号掲載の報告。 研究グループは、韓国の小児集団において、ADと続発性白内障の発症および白内障手術との関連を調査する目的で、2002~13年のKorean National Health Insurance Service databaseからnationally representative dataを用いて解析した。対象は20歳未満のAD患者または重症AD患者で、年齢、性別、居住地域および世帯収入から傾向スコアを算出して、調整した。 主要評価項目は、白内障発症率と白内障手術の発生率で、カプランマイヤー法とログランク検定を用いAD群と対照群を比較した。また、対照群における白内障および白内障手術のリスク因子について、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、AD群3万4,375例(女児1万6,159例[47%]、平均年齢[±SD]3.47±4.96歳、重症AD群3,734例[10.9%])、対照群13万7,500例であった。・白内障の発症は、AD群と対照群で差はなかった(0.216% vs.0.227%、95%信頼区間[CI]:-0.041~0.063%、p=0.32)。重症AD群とその対照群も同様に差はなかった(0.520% vs.0.276%、95%CI:-0.073~0.561%、p=0.06)。・白内障手術の施行は、AD群で対照群より高頻度であった(0.075% vs.0.041%、95%CI:0.017~0.050%、p=0.02)。重症AD群とその対照群でも同様であった(0.221% vs.0.070%、95%CI:0.021~0.279%、p=0.03)。・重症AD群は、白内障の発症(補正後ハザード比:1.94、95%CI:1.06~3.58、p=0.03)および白内障手術の実施条件(補正後ハザード比:5.48、95%CI:1.90~15.79、p=0.002)の両方に関連していた。

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若者の約4割がネット依存…精神症状との関連は?:日本の大学生

 日本の大学生の約4割は、インターネットによって生活に問題がもたらされているという研究結果が、慶應義塾大学の北沢 桃子氏らによって報告された。筆者らは、その予測要因として、女性であること、年齢が高いこと、睡眠不足、ADHD傾向、うつ病、不安傾向が挙げられるとした。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌2018年4月13日号に掲載。 最近、インターネットの利用が人にどのような悪影響を及ぼすかという研究が重要視されているが、日本の青少年への影響については十分なデータが得られていなかった。そこで、本研究では、日本の5つの大学に在籍する学生に対してインターネット依存度テスト(IAT:Internet Addiction Test)を実施し、有効回答人数1,258人のインターネット依存度を評価した。また、睡眠の質、ADHDの傾向、抑うつ、不安症状についても聞き取りを行った。 主な結果は以下のとおり。・回答者全体の38.2%が「インターネットによる問題あり」に分類された。・女性は、男性よりも「インターネットによる問題あり」に分類される傾向が有意に高かった(男性35.2%、女性40.6%、p=0.05)。・「インターネットによる問題あり」に分類された群は、分類されなかった群と比較して、以下の項目で有意な差が認められた。 インターネット利用時間が長い(p<0.001) 睡眠の質が低い(p<0.001) ADHD傾向が強い(p<0.001) うつ病スコアが高い(p<0.001) Trait-Anxietyスコアが高い(p<0.001)・「インターネットによる問題あり」のリスク上昇に寄与した要因は、女性(OR=1.52)、年齢が高い(OR=1.17)、睡眠不足(OR=1.52)、ADHD傾向(OR=2.70)、うつ病(OR=2.24)、不安傾向(OR=1.43)であった。

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肝臓移植ができない患者にも希望の光

 2018年6月6日、ファイザー株式会社は、「世界ATTR啓発デー(6月10日)」を前に都内においてATTRアミロイドーシスに関するプレスカンファレンスを開催した。カンファレンスでは、ATTRアミロイドーシスの診療の概要、とくに抗体治療の知見や患者からの切実な疾患への思いが語られた。1,000例以上の患者が推定されるATTR-FAP はじめに安東 由喜雄氏(熊本大学大学院 生命科学研究部 神経内科学分野 教授/国際アミロイドーシス学会 理事長)を講師に迎え、「進歩目覚ましい神経難病、ATTRアミロイドーシス診療最前線」をテーマに、ATTRアミロイドーシスの概要が説明された。 アミロイドーシスは、たんぱく質が遺伝子変異や加齢などにより線維化し、臓器などに沈着することで、さまざまな障害を起こすとされ、全身性と限局性に大きく分類される。全身性は、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)や老人性全身性アミロイドーシス(SSA)が知られており、限局性ではアルツハイマー病やパーキンソン病が知られている。今回は、全身性アミロイドーシスのFAPについて主に説明がなされた。 全身性アミロイドーシスのFAPやSSAは、トランスサイレチン型アミロイドーシスと呼ばれ、FAPは遺伝型ATTRで変異型TTRがアミロイドを形成し、20代から発症、末梢神経障害、浮腫・失神、消化管症候、腎障害、眼症状などを引き起こす。SSAは、主に70代から発症し、非遺伝型ATTRと呼ばれ、野生型TTRがアミロイドを形成し、心症候、手根管症状などを引き起こす。 そして、FAPでは、最近の研究より国内で40種以上の変異型が、全世界では140種以上の変異型の報告がされ、国内患者数は1,000例以上と推定されているという。また、従来は熊本県、長野県だけでみられた変異型が全国に広がっていることも確認されていると報告した。疑ったら熊本大学へ紹介を! FAPの診断では、患者病歴(とくに家族歴)、身体所見(FAPのRed-flag[四肢の疼痛、体重減少、排尿障害、下痢・便秘、浮腫、心室壁の肥厚など])、組織病理学的検査、遺伝学的検査(TTR遺伝子変異の同定)などにより確定診断がなされる。なかでも遺伝学的検査について安東氏は「熊本大学ではアミロイドーシス診療体制構築事業を行っており、全国から診断の受付をしている。専門医師不在の病院、開業の先生も本症を疑ったら当学に紹介をしていただきたい」と早期診断、早期発見の重要性を強調した。FAP治療の新次元を開いたタファミジス FAPの治療については、以前から肝移植が推奨されているが、肝移植をしてもなお眼症候の進行や心肥大など予後不良の例もあるという。また、肝移植では、発症後5年以内という期間制限の問題、移植ドナーの待機問題もあり、条件は厳しいと指摘する。 そんな中、わが国で2013年に承認・販売されたタファミジス(商品名:ビンダケル)は、こうした問題の解決の一助になると同氏は期待を寄せる。タファミジスは、肝臓産生のTTRを安定化させることで、アミロイドの線維化を防ぐ働きを持ち、安全に末梢神経障害の進行を抑制する効果を持つ。実際、タファミジスの発売後、肝移植手術数は減少しており、ある症例では、車いすの患者が肝移植と同薬を併用することで、症状が改善し、独歩になるまで回復したと紹介した。 最近では、肝臓に着目しTTRの発現を抑えるアンチセンス核酸(ASO)などの遺伝子抑制、沈着したアミロイドを除去する抗体治療も世界的に盛んに研究されている。 おわりに同氏は、「FAPをはじめとするアミロイドーシスでは、早期に症候から本症を疑い、組織からアミロイド沈着を検出することが重要である。早期治療介入のためには、早期診断が大切であり、今後も医療者をはじめ、社会への疾患の浸透を図るために、患者とともに疾患と戦っていく」とレクチャーを終えた。 次に患者・家族の会「道しるべの会」からFAP患者が登壇し、会の活動を説明。その後、「FAPは家系での発症が多く、患者家族は発症におびえていること」「肝移植後も予後が悪く、今後の疾患の進行に不安を覚えていること」「患者の経済的格差や受診格差もあること」など疾患への苦労や悩みを語るとともに、「移植に頼らない新薬や眼病変への新薬の開発」「肝移植でも使える免疫抑制剤の保険適用の拡大」「FAPへの医療者も含めた社会の理解」など期待を述べた。■参考TTRFAP.jp(ファイザー提供)熊本大学 医学部附属病院 アミロイドーシス診療センター■関連記事希少疾病ライブラリ 家族性アミロイドポリニューロパチー

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