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皮膚そう痒症、関連がん種の違いに人種が影響

 皮膚そう痒症とがんの関連は知られているが、皮膚そう痒症と関連があるがん種についてのデータは限られている。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のValerie A. Larson氏らの研究の結果によると、皮膚そう痒症は肝臓、皮膚、造血器系の悪性腫瘍と最も強く関連していることが示された。ただし今回の研究は横断研究のため、皮膚そう痒症と悪性腫瘍における時間的制約があり、また単一施設で行われた研究であることに留意が必要だとしている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年9月11日号掲載の報告。 研究グループは、皮膚そう痒症とさまざまな種類のがんとの関連、ならびに人種による関連の違いについて調べ検討を行った。 2013~17年にジョンズ・ホプキンス・ヘルス・システムで診察を受けた18歳以上の患者を対象に横断研究を実施し、皮膚そう痒症患者と非皮膚そう痒症患者を比較するとともに人種別の層別解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は第3次医療センターの皮膚そう痒症患者1万6,925例だった。・皮膚そう痒症の患者は非皮膚そう痒症患者と比較し、悪性腫瘍を合併していることが多かった(オッズ比[OR]:5.76、95%信頼区間[CI]:5.53~6.00)。・皮膚そう痒症との関連が最も強かったのは、肝がん、胆嚢および胆管がん、造血器腫瘍および皮膚がんであった。・人種別では、白人と比較して黒人の皮膚そう痒症患者は、軟部組織、皮膚および血液の悪性腫瘍を有している頻度が高かった。・一方、白人の皮膚そう痒症患者は、肝臓、呼吸器、消化管および婦人科の悪性腫瘍が多かった。

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薬剤耐性てんかん患者に対するEPA、DHAの無作為化二重盲検比較試験

 オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)は、神経機能の維持および調整に重要な役割を果たしていると知られており、抗けいれん効果を有するとのエビデンスがある。スーダン・ハルツーム大学のFatma A. S. Ibrahim氏らは、薬物治療抵抗性てんかん患者の発作率に対するEPA、DHAの効果について検討を行った。Epilepsy & Behavior誌オンライン版2018年8月28日号の報告。 薬物治療抵抗性てんかん患者99例(5~16歳:85例、17~45歳:14例)を対象に、二重盲検ランダム化プラセボ対照臨床研究を実施した。対象患者は、DHA群33例(DHA 417.8mg+EPA 50.8mgカプセル)、EPA群33例(EPA 385.6mg+DHA 81.2mgカプセル)、プラセボ群33例(高オレイン酸ヒマワリ油)にランダムに割り付けられ、それぞれ1年間治療を継続した。主要評価項目は、発作率に対する治療効果とした。患者の1ヵ月当たりの発作回数をモデル化するため、ランダム効果負の二項分布回帰モデルを用いた。共変量(性別、年齢、研究参加時の1週間当たりの発作率、発作のタイプ、研究参加時に併用していた抗てんかん薬の数)で調整した後、発作発生率比に対する治療効果を検討した。 主な結果は以下のとおり。・試験を完了した患者は、59例(59.6%)であった。・1ヵ月当たりの平均発作回数は、EPA群で9.7±1.2回、DHA群で11.7±1.5回、プラセボ群で16.6±1.5回であった。・年齢、性別、発作のタイプで調整後の発作発生率比は、プラセボ群と比較し、EPA群で0.61(95%CI:0.42~0.88、p=0.008、42%減少)、DHA群で0.67(95%CI:0.46~1.0、p=0.04、39%減少)であった。・EPA群とDHA群の間で、発作発生率比に差は認められなかった(p=0.56)。・EPA群、DHA群ともに、プラセボ群と比較し、発作のない日数が有意に多かった(p<0.05)。 著者らは「EPAおよびDHAは、薬物治療抵抗性てんかん患者の発作頻度の減少に有効であることが示唆された」としている。■関連記事低用量EPA+DHA、てんかん発作を抑制治療抵抗性焦点性てんかんに対する第3世代抗てんかん薬補助療法の間接比較難治性てんかん重積状態への有用な対処法

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brigatinib、ALK陽性肺がん1次治療の新たなオプションに?(ALTA-1L)/WCLC2018

 ALK阻害薬未治療の局所進行または転移のあるALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、brigatinibの有効性をクリゾチニブと比較した第III相ALTA-1L試験の最初の中間解析結果が、カナダ・トロントで開催された第19回世界肺癌会議(WCLC2018)で、コロラド大学がんセンターのRoss Camidge氏により発表された。 ALTA-1L試験は、上記患者を対象としたbrigatinibのオープンラベル多施設共同無作為化第III相試験。患者は、brigatinib 180mg/日(7日間の導入期間においては90mg/日)投与群、もしくはクリゾチニブ250mg×2/日投与群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は独立評価委員会が評価した無増悪生存期間(PFS)で、副次評価項目には、客観的奏効率(ORR)、頭蓋内病変におけるORR、頭蓋内病変におけるPFS、全生存期間、安全性および忍容性が含まれている。PFSイベントの約50%および約75%が発生した時点の2回にわたり、主要評価項目に対する中間解析を行うことが事前に設定されていた。brigatinibが少なくとも6ヵ月クリゾチニブを上回るPFSの改善を示すために、合計約198件のPFSイベントが発生した時点で、主要評価項目の最終解析が行われる予定。 主な結果は以下のとおり。・brigatinib群に137例、クリゾチニブ群に138例の患者が組み入れられた。・年齢中央値はbrigatinib群58歳/クリゾチニブ群60歳。26%/27%に化学療法歴があり、29%/30%がベースライン時に脳転移を有していた。・データカットオフ(2018年2月19日)の追跡期間中央値は11.0ヵ月/9.25ヵ月。・99件のPFSイベント発生時点で独立評価委員会が盲検下で評価したPFS中央値は、brigatinib群NR(95%信頼区間[CI]:NR~NR)、クリゾチニブ群9.8ヵ月(95%CI:9.0~12.9)、ハザード比0.49(95%CI:0.33~0.74、log-rank検定:p=0.0007)で、brigatinib群で統計学的に有意に延長した。・confirmed ORRはそれぞれ71%(95%CI:62~78)、60%(95%CI:51~68)で、ベースライン時に測定可能な頭蓋内病変のあった患者のconfirmed ORRはそれぞれ78% (95%CI:52~94)、29%(95%CI:11~52)であった。・Grade3以上の治療下で発現した有害事象(TEAE)は、多くみられたものからbrigatinib群でCPK上昇(16.2%)、リパーゼ上昇(13.2%)、高血圧(9.6%)。 クリゾチニブ群でALT(9.5%)、AST(5.8%)、リパーゼ(5.1%)の上昇であった・間質性肺疾患(ILD)/肺炎の発現率は、3.7%/2.2%。AEによる治療中止は11.8%/ 8.8%で、brigatinib群の安全性プロファイルは、従来報告されているものと同様であった。 Camidge氏は、「9~11ヵ月という短期間のフォローアップの時点で、クリゾチニブと比較したbrigatinibの明らかな有効性が示されている。この差異は、脳転移に対する影響が大きいと考えられる。脳外の疾患制御に対する両剤の差異が今後現れなければ、PFSがさらに改善される可能性もある」と述べている。 この結果は、同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。■参考NCT 02737501(Clinical Trials.gov)Camidge DR., et al.N Engl J Med. 2018 Sep 25.[Epub ahead of print]■関連記事brigatinib、ALK肺がん1次治療でPFSを有意に改善(ALTA-1L)/武田薬品工業クリゾチニブ抵抗性ALK肺がんにおけるbrigatinibの成績:ALTA/WCLC2017新ALK阻害薬brigatinib、ALK陽性肺がんに承認:FDA

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ノーベル賞受賞、がん治療を劇変させたPD-1とCTLA-4

 2018年のノーベル医学・生理学賞を、京都大学高等研究院特別教授の本庶 佑氏とMDアンダーソンがんセンター教授のJames P. Allison氏が共同受賞することが決まった。両氏はともにがんに対する免疫応答の制御に関連するタンパク質を発見し、がん免疫療法の近年の急速な進歩に寄与したことが受賞理由となっている。本稿では、ノーベル財団のプレスリリースから、2人の研究の足跡を紹介する。ほぼ同時期に、2つの発見 1992年、本庶氏ら京都大学の研究者が、T細胞の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子としてPD-1(Programmed cell death 1)を発見。その機能が明らかになるまでには時間を要したが、1998年、マウスによる実験でPD-1がT細胞のブレーキとして機能し、その働きを制御していることが明らかとなった。その後に続く同氏らおよび他の研究グループによる動物実験の結果、PD-1に結合してT細胞の活性化を抑制する PD-L1やPD-L2との結合をブロックする抗PD-1抗体が、がんとの戦いにおいて有望な戦略であることが示された。 2012年には、非小細胞肺がん(NSCLC)、悪性黒色腫、腎細胞がん(RCC)といった複数のがん腫における抗 PD-1抗体ニボルマブの臨床試験結果が発表され、その結果は全生存期間および奏効率の双方で臨床的に大きく改善するものであった。 一方、カリフォルニア大学バークレー校の研究所では、Allison氏が同じくT細胞のブレーキとして機能する細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)を研究していた。彼は、CTLA-4の阻害がT細胞ブレーキを解除し、免疫細胞の抑制を解くことで、がん細胞を攻撃できる可能性があるのではないかと考えていた。 そして1994年の年末、マウスを使った最初の実験を行い、抗CTLA-4抗体による治療で、腫瘍を持つマウスが治癒することが確認された。当初、製薬業界の関心が向けられることはほとんどなかったが、間もなくして、いくつかの研究グループから有望な結果がもたらされるようになった。2010年には重要な臨床試験結果が発表され、悪性黒色腫の患者に対し、抗CTLA-4抗体イピリムマブが顕著な効果を示した。 PD-1とCTLA-4は同様にT細胞のブレーキとして機能するが、その作用機構は異なる。 がん治療を根本的に変えた 現在、多くのがん腫において多数の臨床試験が進行中であり、ニボルマブとイピリムマブ以外の新たな免疫チェックポイント阻害薬による治療法の開発も進んでいる。また、抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体の併用療法がさらに効果的である可能性も、悪性黒色腫に対する臨床試験によって示されている。 100年以上もの間、多くの研究者ががんとの闘いに免疫システムを結び付けようとしてきたものの、その臨床的進歩はほとんどみられなかった。しかし、2人の受賞者による発見の後、治療法の開発とその成果は劇的なものだった。免疫チェックポイント阻害薬による治療はがん治療に革命をもたらし、がんの管理方法を根本的に変えるものであった。■参考ノーベル財団プレスリリース■2つの発見に関する主要な論文Ishida Y. et al. EMBO J. 1992 Nov;11:3887~3895.Leach DR et al. Science. 1996 Mar 22;271:1734~1736.Kwon ED et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Jul 22;94:8099~8103.Nishimura H et al. Immunity. 1999 Aug;11:141~151.Freeman GJ et al. J Exp Med. 2000 Oct 2;192:1027~1034.Hodi FS et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Apr 15;100:4712~4717.Iwai Y et al. Int Immunol. 2005 Feb;17:133~144.

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治療抵抗性うつ病に対する精神療法の有効性に関するメタ解析

 大うつ病に対する治療および管理は、大幅な進歩を遂げた。しかし、第1選択の抗うつ薬治療または心理社会療法で治療反応が得られる患者は、50%未満である。治療抵抗性うつ病(TRD)に対する精神療法に関する対照研究数が増加し、うつ病患者に対する精神療法が、治療選択肢として好まれている現状を考慮し、オランダ・マーストリヒト大学のSuzanne van Bronswijk氏らは、TRDに対する精神療法の有効性を調査するため、メタ解析およびメタ回帰分析を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2018年8月24日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・合計25の比較を含む21件の研究において、7種類の精神療法に関する検討が行われていた。・精神療法と通常治療を比べた3つの比較では、通常治療(TAU)と精神療法との間に有意なベネフィットは認められなかった。・併用治療(TAU+精神療法)とTAUとを比べた22の比較では、併用治療において、エフェクトサイズ0.42(95%CI:0.29~0.54)の中程度の効果が認められた。・メタ回帰分析では、集団療法vs.個人療法と同様に、ベースライン時の重症度と治療効果に正の関連が認められた。・出版バイアスは、認められなかった。・最も調査が行われていた治療は、認知行動療法、対人関係療法、マインドフルネスに基づく認知療法、精神療法の認知行動分析システムであった。 著者らは「TRDの治療ガイドラインにおいて、通常治療に対して、薬理学的および神経刺激的治療に加えて精神療法を追加することは正当であり、治療困難なうつ病患者により良い影響を及ぼすと考えられる」としている。■関連記事SSRI治療抵抗性うつ病に対する増強療法の比較うつ病への薬物療法 vs.精神療法 vs.併用療法日本人治療抵抗性うつ病患者へのCBT併用試験とは:FLATT Project治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

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新たな薬剤、デバイスが続々登場する心不全治療(後編)【東大心不全】

急増する心不全。そのような中、新たな薬剤やデバイスが数多く開発されている。これら新しい手段が治療の局面をどう変えていくのか、東京大学循環器内科 金子 英弘氏に聞いた。前編はこちらからデバイス治療についてはどのような進歩があるのでしょうか。デバイスによる治療でも薬剤と同様に病因に応じて治療を使い分けなければならないのは同様です。その観点から最近着目されているのは、日本人の心不全患者さんの病因として弁膜症が多いと指摘されていることです。これまでに日本人の心不全の約2割、報告によって3割は弁膜症が原因と報告されています。また、弁膜症が本来の原因でなくても、虚血性心筋症や拡張型心筋症では、左室のリモデリングが進行することで僧帽弁の弁輪が拡大した結果、機能性僧帽閉鎖不全症をきたし、さらに予後を悪化させることが知られています。このように考えると日本人の心不全患者では、かなり多くの割合で、心不全の原因として、あるいは心不全の合併症として、弁膜症が関わってくると言えます。心不全の原因として頻度の高い弁膜症は、大動脈弁狭窄症と僧帽弁閉鎖不全症です。これらに対して、弁形成や弁置換手術ができれば最良ですが、実際には心機能の著しい悪化や高齢などの事情で手術ができない患者さんも少なくありません。この場合、大動脈弁狭窄症では経カテーテル的大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation:TAVI)の適応となり、カテーテルで新しい人工大動脈弁(生体弁)を植え込むことになります。日本では2013年10月に始まり、すでに1万件以上の実績があります。MitraClip治療を行う金子英弘氏。新規デバイス治療は心不全の有力な治療選択肢として期待が集まる。僧帽弁閉鎖不全症では、2018年4月から日本でMitraClip NTシステムが使用できるようになりました。これは僧帽弁の前尖と後尖をつなぎ合わせて僧帽弁の逆流を少なくするカテーテル治療です。僧帽弁閉鎖不全を減らす効果は外科手術には劣るものの、開胸や人工心肺を必要としない低侵襲治療で、心不全の症状改善は外科手術と同等であることが示されています。すでに全世界では7万件の実績がある治療です。また、HFpEFでは、新たな心房間シャントデバイスによる治療が注目を集めています。これは心房中隔に穴を開け、左心房から右心房に圧を逃がすデバイスです。2017年の米国心臓協会(American Heart Association:AHA)学術集会ではこのデバイス留置により、労作時の肺動脈喫入圧が対照群と比べて有意に低下すると報告され、現在大規模な試験が行われています。心不全では治療のみならずモニタリングでもさまざまなデバイスが使用されていますが、この点では注目すべきものはありますか。その点で興味深いのは米国FDAにより初めて承認された心不全モニタリングシステムのCardioMEMS HFシステムです。これは肺動脈の先にセンサーを留置し、患者さんがシステムのボタンを押すだけで、肺動脈圧のトレンドが医療機関に転送されるシステムです。スワンガンツカテーテルを常時留置しているような状態と考えれば良いかもしれません。CardioMEMSに関しては、これを使用した群と使用しなかった群を比較した「CHAMPION」試験が行われ、6ヵ月間の比較期間で使用群では心不全関連の入院リスクが28%、有意に低下したと報告されています。まだ、生命予後を改善するとの確固たるエビデンスまではありませんが、日本国内で心不全の患者さんが増加し、患者さんも通院にすら苦労するケースもある中では非常に有用ではないかと考えています。非専門の先生方に伝えたいメッセージがあればお話しください。心不全の患者さんは現在増加の一途をたどっています。今回のガイドラインで示された心不全の進展ステージAやBの患者さんまで含めると、国内の心不全患者さんあるいは心不全のハイリスクと考えられる患者さんは200万人超になるとの推測もあるほどです。しかし、日本循環器学会が認定する循環器専門医は現在全国で1万5,000人弱です。したがって、すべての心不全患者さんの治療を循環器専門医のみで完結するというのはきわめて困難です。近年では内科医、外科医、コメディカルなどの多職種が連携して心不全の治療に取り組むハートチームの重要性が強調されています。しかしながら、多くの場合、ハートチームは個々の医療機関内での連携です。今回、お話ししたような現状を考えれば、今後重要になるのはそれぞれの地域でハートチームを形成することです。つまり各地域で、心不全の診断や先進的治療を行う専門施設、多くの心不全患者さんの入院や心臓リハビリを行う中規模病院、開業医の先生方やコメディカルによる連携です。その中で開業医の先生方には、心不全の進展ステージでA、Bに分類される患者さんの早期発見やリスク管理、たとえ心不全を発症してステージCに移行しても適切な治療により症状が安定化した患者さんの受け入れ先としての役割を担っていただければと考えています。心不全においてはリハビリテーションも重要な治療になりますし、ステージDとなった患者さんに対する緩和医療も地域の先生方に是非とも取り組んでいただきたい分野だと考えております。そのためにも、今回述べたように、心不全の各ステージにおいて数々の有効な治療法があることをご理解いただければと考えています。前編はこちらから講師紹介

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コーヒーとワインの摂取量、アルコール性肝疾患死亡と逆相関

 ノルウェーの男女約22万人の調査で、コーヒーとワインの摂取量がアルコール性肝疾患死亡と逆相関することが示された。また、総アルコール摂取量はアルコール性肝疾患死亡と正の相関を示したが、その関連の強さはコーヒー摂取量で変化することをノルウェー公衆衛生研究所のAage Tverdal氏らが報告した。Annals of Epidemiology誌オンライン版2018年8月28日号に掲載。 著者らは、1994~2003年に心臓血管スクリーニングに参加したノルウェーの30~67歳の男女21万9,279人について、コーヒーおよびアルコール飲料の摂取量とアルコール性肝疾患死亡の関係を調査した。参加者をCause of Death Registryとリンクさせ、アルコール性肝疾患による93人の死亡を同定した。コーヒー摂取量は1日0杯、1~4杯、5~8杯、9杯以上の4カテゴリーに、アルコール摂取量はビール、ワイン、蒸留酒、総アルコールについて1日0ユニット、0~1.0ユニット、1.0~2.0ユニット、2.0ユニット以上の4カテゴリーに分けて検討した。注)ノルウェーにおけるアルコール1ユニットは純アルコール12g、ビール(5%)500mLは約1.7ユニット 主な結果は以下のとおり。・各アルコール飲料の摂取量の1カテゴリー当たりのハザード比は、ビール2.06(95%信頼区間:1.62~2.61)、ワイン0.68(同:0.46~1.00)、蒸留酒2.54(同:1.92~3.36)であった。・コーヒー5杯/日(平均)で層別した場合、5杯以上に対し5杯未満でアルコール摂取量とアルコール性肝疾患とに強い関連が示された。・総アルコール0ユニット/日に対する2ユニット/日以上のハザード比は、コーヒー5杯/日未満では25.5(95%信頼区間:9.2~70.5)、コーヒー5杯/日以上では5.8(同1.9~17.9)であった。・交互作用の検定は有意であった(p=0.01)。

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シルデナフィル併用で特発性肺線維症のQOLは改善するか/NEJM

 特発性肺線維症(IPF)の治療において、ニンテダニブにシルデナフィルを併用しても、ニンテダニブ単剤に比べて健康関連QOLは改善されないことが、カナダ・マックマスター大学のMartin Kolb氏らが行ったINSTAGE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年9月15日号に掲載された。チロシンキナーゼ阻害薬ニンテダニブは、IPFの治療薬として承認されている。また、既報の試験のサブグループ解析により、ホスホジエステラーゼ5阻害薬シルデナフィルは、IPF患者の酸素化能、ガス交換機能(一酸化炭素の肺拡散能[DLCO]で評価)、症状、QOLに便益をもたらし、重度に障害されたDLCOを改善する可能性が示唆されている。SGRQの変化を無作為化試験で評価 本研究は、13ヵ国が参加した二重盲検無作為化試験である(Boehringer Ingelheimの助成による)。対象は、年齢40歳以上、2011年版の国際ガイドラインでIPFと診断され、DLCOが予測値の35%以下の患者であった。 被験者は、ニンテダニブ(150mg、1日2回)+シルデナフィル(20mg、1日3回)またはニンテダニブ(150mg、1日2回)+プラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、24週の治療が行われた。 主要エンドポイントは、ベースラインから12週時までの、St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)の総スコア(50項目、0~100点、点数が高いほど健康関連QOLが不良)の変化とした。副次エンドポイントには呼吸困難(University of California, San Diego, Shortness of Breath Questionnaire[UCSD-SOBQ]、24項目、0~120点、点数が高いほど息切れが重度)および安全性などが含まれた。 2016年7月~2017年9月の期間に273例が登録された。このうち、137例が1回以上のニンテダニブ+シルデナフィルの投与を受け、136例が1回以上のニンテダニブ+プラセボの投与を受けた。12、24週時のSGRQ、UCSD-SOBQ、EQ-5D VASに差はない ベースラインの平均年齢は、ニンテダニブ+シルデナフィル群が70.3±8.6歳、ニンテダニブ群は70.0±7.9歳であり、男性がそれぞれ80.3%、77.9%を占めた。平均DLCOは、25.8±6.8%、25.6±7.0%、SGRQの平均総スコアは56.7±18.5点、54.0±17.9点だった。 SGRQ総スコアのベースラインから12週時までの変化は、ニンテダニブ+シルデナフィル群が-1.28点、ニンテダニブ群は-0.77点であり、両群間に有意差は認めなかった(群間差:-0.52点、95%信頼区間[CI]:-3.33~2.30、p=0.72)。また、24週時までの変化は、それぞれ0.23点、2.42点と、有意な差はなかった(-2.19点、-5.40~1.02)。 UCSD-SOBQの変化は、12週時(ニンテダニブ+シルデナフィル群:1.46点vs.ニンテダニブ群:4.40点、群間差:-2.94点、95%CI:-7.27~1.39)および24週時(4.44 vs.6.85点、-2.41点、-7.39~2.58)のいずれにも、意味のある差はみられなかった。また、全般的な健康状態の指標であるEQ-5Dの視覚アナログスケール(0~100点、点数が高いほど健康状態が良好)にも、12週時(1.31 vs.-2.22点、3.54点、-0.02~7.09)、24週時(-1.48 vs.-2.98点、1.50点、-2.86~5.86)ともに有意な差はなかった。 酸素飽和度およびDLCOの12、24週時の変化にも両群間に差はなかった。また、急性増悪(7.3 vs.7.4%)、全死因死亡(10.2 vs.11.0%)の割合もほぼ同等であった。 安全性に関しては、既報の試験と比べて、新たな兆候は認めなかった。最も頻度の高い有害事象は下痢であり、ニンテダニブ+シルデナフィル群の57.7%、ニンテダニブ群の48.5%にみられた。重篤な有害事象の頻度は、それぞれ27.0%、32.4%であった。 著者は、「努力肺活量(FVC)の予測値の5%以上の低下または死亡の複合エンドポイントの発生率は、ニンテダニブ+シルデナフィル群のほうが有意に低かったが、この知見が偶然によるものか、真の治療効果かは不明である」としている。

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MitraClipはfunctional MRのイベント抑制しない? する?→する!(解説:絹川弘一郎氏)-921

 最近、カテーテルによる心不全治療デバイスがImpella、MitraClipと立て続けに認可された。Impellaは少なくともわが国の適応である心原性ショックにおいてIABPに対する優越性をランダム化比較試験で立証できていないのであるが、わが国における治験なしで承認された。MitraClipも開心術にハイリスクのdegenerative MRについては明らかな有効性があり、米国でもすでに承認済みであるが、わが国の適応は米国で未承認であるfunctional MRを含んでいる。デバイスラグを糾弾されまいとするPMDAのご意向でもないとは思うが、どちらのデバイスの審査にも携わった1人としてわが国のデバイス承認の流れが以前とは若干変化してきていることは事実である。ことの良しあしは今後の市販後調査の結果に委ねられている。 その中で、MitraClipのfunctional MRに対するRCT、MITRA-FR試験がはじめて発表された。先日のミュンヘンでのESC late breakingで発表されようとしているさなか、私の携帯にNEJM.orgからこの論文が送られてきて、発表より10分ほど早く結果を知ることとなり、残念ではあった。残念だったのはタイミングだけではなく、その結論であり、まったく心不全の再入院を抑制しないというのは大変な驚きである。functional MRを単なる心不全のサロゲートマーカーと考え、介入の対象でないとするこの論文のdiscussionにはいささか疑念を提示ざるをえない。 と、ここまで書いたところが9月22日であったが、9月23日のTCT late breakingでCOAPT試験の結果が発表されることが決まっており、その結果を見ずに軽々しいことは言えないと思って一旦筆を置いた。さてCOAPT試験の結果である。これまた再度の驚きで、全死亡、心不全再入院などほぼすべてのエンドポイントでMitraClip群が優れていた。圧勝である。どこをどうすればこんなに違う結果が生まれるのか、また1ヵ月のうちにNEJMにまったく異なる結果が掲載されることも滅多にない(私の経験では見たことがない)。 少し、詳細に見ても両者の背景はほぼ同等である(どちらもAbbott社の第III相試験なので当然と言えば当然である)。COAPT試験でややEROが大きめ、BNPが高めであるが、コントロール群のイベント発生率は両試験でほとんど同じである。COAPT試験においてMitraClip群のNYHA分類がやや軽め、RAS阻害薬の使用がやや多め、ではあるが、ここまでコントロール群に差をつける原因とは考えにくい。絶対的に違うのはMITRA-FR試験でコントロール群のNYHAクラスがMitraClip群のそれと12ヵ月後も同じ程度に改善していることである。COAPT試験ではコントロール群のNYHAクラスの改善はMitraClip群より明らかに劣る。ここから推察されることは、MITRA-FR試験にエントリーされた患者のその後の薬物治療が良く奏効したということであり、裏を返せば、薬物治療の余地がまだ十分あった患者をエントリーしてしまったことになる。フォローアップ期間中の薬剤の変化はCOAPT試験ではデータがあり、ごくわずかしか変動せずまた2群間で差はないが、MITRA-FR試験のデータは見当たらないので、そのあたりも検討が必要であろう。可能ならばエントリー時の標準的薬物治療の用量なども示してもらうと良いかもしれない。 エビデンス、というものは作るものである、というのは正しく、その道程にそった標準的治療の中にデバイス治療が存在すべきであるという教訓になるのかもしれない。いずれにせよ、今後functional MRに対する経皮的僧帽弁形成術デバイスは続々と上梓されてくるであろうし、標準的薬物治療抵抗性の心不全のunmet needsに答えるものとして私自身は大いに期待している。MITRA-FR試験はおそらく今後引用されることなく、忘れ去られることになると思っている。

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第6回 意識障害 その5 敗血症ってなんだ?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)バイタルサインを総合的に判断し、敗血症を見逃すな!2)“No Culture,No Therapy!”、治療の根拠を必ず残そう!3)敗血症の初療は1時間以内に確実に! やるべきことを整理し遂行しよう!【症例】82歳女性の意識障害:これまたよく出会う原因82歳女性。来院前日から活気がなく、就寝前に熱っぽさを自覚し、普段と比較し早めに寝た。来院当日起床時から38℃台の発熱を認め、体動困難となり、同居している娘さんが救急要請。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:10/JCS、E3V4M6/GCS血圧:102/48mmHg 脈拍:118回/分(整) 呼吸:24回/分 SpO2:97%(RA)体温:37.9℃ 瞳孔:3/3mm +/+前回までの症例が一段落ついたため、今回は新たな症例です。高齢女性の意識障害です。誰もが経験したことのあるような症例ではないでしょうか。救急外来で多くの患者さんを診ている先生ならば、原因はわかりますよね?!前回までの復習をしながらアプローチしていきましょう。Dr.Sakamotoの10’s Ruleの1~6)を確認(表1)病歴やバイタルサインに重きを置き、患者背景から「○○らしい」ということを意識しながら救急車到着を待ちます。来院時も大きく変わらぬバイタルサインであれば、意識消失ではなく意識障害であり、まず鑑別すべきは低血糖です。低血糖が否定されれば、頭部CTを考慮しますが…。画像を拡大する原因は感染症か否か?病歴やバイタルサインから、なんらかの感染症が原因の意識障害を疑うことは難しくありません。それでは、今回の症例において体温が36.0℃であったらどうでしょうか? 発熱を認めた場合には細菌やウイルスの感染を考えやすいですが、ない場合に疑えるか否か、ここが初療におけるポイントです。この症例は、疫学的にも、そしてバイタルサイン的にも敗血症による意識障害が最も考えやすいですが、その理由は説明できるでしょうか。●Rule7 菌血症・敗血症が疑われたらfever work up!高齢者の感染症は意識障害を伴うことが多い救急外来や一般の外来で出会う感染症のフォーカスの多くは、肺炎や尿路感染症、その他、皮膚軟部組織感染症や腹腔内感染症です。とくに肺炎、尿路感染症の頻度が高く、さらに高齢女性となれば尿路感染症は非常に多く、常に考慮する必要があります。また、肺炎や腎盂腎炎は、意識障害を認めることが珍しくないことを忘れてはいけません。「発熱のため」、「認知症の影響で普段から」などと、目の前の患者の意識状態を勝手に根拠なく評価してはいけません。意識障害のアプローチの最初で述べたように、まずは「意識障害であることを認識!」しなければ、正しい評価はできません。感染症らしいバイタルサイン:qSOFAとSIRS*感染症らしいバイタルサインとは、どのようなものでしょうか。急性に発熱を認める場合にはもちろん、なんらかの感染症の関与を考えますが、臨床の現場で悩むのは、その感染症がウイルス感染症なのか細菌感染症なのか、さらには細菌感染症の中でも抗菌薬を使用すべき病態なのか否かです。救急外来など初療時にはフォーカスがわからないことも少なくなく、病歴や臓器特異的所見(肺炎であれば、酸素化や聴診所見、腎盂腎炎であれば叩打痛や頻尿、残尿感など)をきちんと評価してもわからないこともあります。そのような場合にはバイタルサインに注目して対応しましょう。そのためにまず、現在の敗血症の定義について歴史的な流れを知っておきましょう。現在の敗血症の定義は、「感染による制御不能な宿主反応によって引き起こされる生命を脅かす臓器障害1)」です(図1、2)。一昔前までは「感染症によるSIRS」でしたが、2016年に敗血症性ショックの定義とともに変わりました。そして、敗血症と診断するために、ベッドサイドで用いる術として、SIRS(表2)に代わりqSOFA (quickSOFA)(表3)が導入されました。その理由として、以下の2点が挙げられます。1)なんでもかんでも敗血症になってしまうSIRSの4項目を見ればわかるとおり、2項目以上は簡単に満たしてしまいます。皆さんが階段を駆け上がっただけでも満たしますよね(笑)。実際に感染症以外に、膵炎、外傷、熱傷などSIRSを満たす症候や疾患は多々存在し、さらに、インフルエンザなどウイルスに伴う発熱であっても、それに見合う体温の上昇を認めればSIRSは簡単に満たすため、SIRS+感染症を敗血症と定義した場合には、多くの発熱患者が敗血症と判断される実情がありました。2)SIRSを満たさない重篤な感染症を見逃してしまうSIRSを満たさないからといって敗血症でないといえるのでしょうか。実際にSIRSは満たさないものの、臓器障害を呈した状態が以前の定義(SIRS+感染症=敗血症)では12%程度認められました。つまり、SIRSでは拾いあげられない重篤な病態が存在したということです。これは問題であり、敗血症患者の初療が遅れ予後の悪化に直結します。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するそこで登場したのがqSOFAです。qSOFAは、(1)呼吸数≧22/分、(2)意識障害、(3)収縮期血圧≦100mmHgの3項目で構成され、2項目以上満たす場合に陽性と判断します。項目数がSIRSと比較し少なくなり、どれもバイタルサインで構成されていることが特徴ですが、その中でも呼吸数と意識障害の2項目が取り上げられているのが超・超・重要です。敗血症に限らず重症患者を見逃さないために評価すべきバイタルサインとして、この2項目は非常に重要であり、逆にこれら2項目に問題なければ、たとえ血圧が低めであっても焦る必要は通常ありません。心停止のアルゴリズムでもまず評価すべきは意識、そして、その次に評価するのは呼吸ですよね。また、これら2項目は医療者自身で測定しなければ正確な判断はできません。普段と比較した意識の変化、代謝性アシドーシスの代償を示唆する頻呼吸を見逃さないように、患者さんに接触後速やかに評価しましょう。*qSOFA:quick Sequential[Sepsis- Related] Organ Failure Assessment ScoreSIRS:Systemic Inflammatory Response Syndrome“No Culture,No Therapy!”:適切な治療のために根拠を残そう!“Fever work up”という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 感染症かなと思ったら、必ずフォーカス検索を行う必要があります。熱があるから抗菌薬、酸素化が悪いから肺炎、尿が濁っているから尿路感染症というのは、上手くいくこともありますが、しばしば裏切られて後々痛い目に遭います。高齢者や好中球減少などの免疫不全患者では、とくに症状が乏しいことがあり悩まされます。フォーカスがわからないならば、抗菌薬を投与せずに経過を診るというのも1つの選択肢ですが、重症度が高い場合にはそうも言っていられません。また、前医から抗菌薬がすでに投与されている場合には、さらにその判断を難しくさせます。そのため、われわれが行うべきことは「(1)グラム染色を行いその場で関与している菌の有無を判断する、(2)培養を採取し根拠を残す」の2つです。(1)は施設によっては困難かもしれませんが、施行可能な施設では行わない理由がありません。喀痰、尿、髄液、胸水、腹水など、フォーカスと考えられる場所はきちんと評価し、その目でちゃんと評価しましょう。自信がない人はまずは細菌検査室の技師さんと仲良くなりましょう。いろいろ教えてくださいます。(2)は誰でもできますね。しかし、意外とやってしまうのが、痰が出ないから喀痰のグラム染色、培養を提出しない、髄膜炎を考慮しながらも腰椎穿刺を施行しないなんてことはないでしょうか。肺炎の起因菌を同定する機会があるのならば、痰を出さなければできません。血液培養は10%程度しか陽性になりません、肺炎球菌尿中抗原は混合感染の評価は困難、一度陽性となると数ヵ月陽性になるなど、目の前の患者の肺炎の起因菌を同定できるとは限りません。とにかく痰を頑張って採取するのです。喀出困難であれば、誘発喀痰、吸引なども考慮しましょう。肺炎患者の多くは数日前から食事摂取量が低下しており、脱水を伴うことが多く、外液投与後に喀痰がでやすくなることもしばしば経験します。とにかく採取し検査室へ走り、起因菌を同定しましょう。髄液も同様です。フォーカスがわからず、本症例のように意識障害を認め、その原因に悩むようであれば、腰椎穿刺を行う判断をした方がよいでしょう。不用意に行う必要はありませんが、限られた時間で対応する必要がある場合には、踏ん切りをつけるのも重要です。敗血症の1時間バンドルを遂行しよう!敗血症かなと思ったら表4にある5項目を遂行しましょう。ここではポイントのみ追記しておきます。敗血症性ショックの診断基準にも入りましたが、乳酸値は敗血症を疑ったら測定し、上昇している場合には、治療効果判定目的に低下を入れ、確認するようにしましょう。血圧は収縮期血圧だけでなく、平均動脈圧を評価し管理しましょう。十分な輸液でも目標血圧に至らない場合には、昇圧剤を使用しますが、まず使用するのはノルアドレナリンです。施設毎にシリンジの組成は異なるかもしれませんが、きちんと処方できるようになりましょう。ノルアドレナリンを使用することは頭に入っていても、実際にオーダーできなければ救命できません。バンドルに含まれていませんが重要な治療が1つ存在します。それがドレナージや手術などの抗菌薬以外の外科的介入(5D:drug、drainage、debridement、device removal、definitive controlの選択を適切に行う)です。急性閉塞性腎盂腎炎に対する尿管ステントや腎瘻、総胆管結石に伴う胆管炎に対するERCPなどが代表的です。バンドルの5項目に優先されるものではありませんが、同時並行でマネジメントしなければ一気に敗血症性ショックへと陥ります。どのタイミングでコンサルトするか、明確な基準はありませんが、院内で事前に話し合って決めておくとよいでしょう。画像を拡大する今回の症例を振り返る今回の症例は、高齢女性がqSOFAならびにSIRSを満たしている状態です。疫学的に腎盂腎炎に伴う敗血症の可能性を考えながら、バンドルにのっとり対応しました。もちろん低血糖の否定や頭部CTなども行いますが、以前の症例のように積極的に頭蓋内疾患を疑って撮影しているわけではありません。この場合には、脳卒中以上に明らかな外傷歴はなくても、慢性硬膜下血腫など外傷性変化も考慮する必要があるため施行するものです。尿のグラム染色では大腸菌様のグラム陰性桿菌を認め、腎叩打痛ははっきりしませんでしたが、エコーで左水腎症を認めました。抗菌薬を投与しつつ、バイタルサインが安定したところで腹部CTを施行すると左尿管結石を認め、意識状態は外液投与とともに普段と同様の状態へ改善したため、急性閉塞性腎盂腎炎による敗血症が原因と考え、泌尿器科医と連携をとりつつ対応することになりました。翌日、血液培養からグラム陰性桿菌が2セット4本から検出され、尿培養所見とも合致していたため確定診断に至りました。いかがだったでしょうか。よくある疾患ですが、系統だったアプローチを行わなければ忙しい、そして時間の限られた状況での対応は意外と難しいものです。多くの患者さんの対応をしていれば、原因疾患の検査前確率を正しく見積もることができるようになり、ショートカットで原因の同定に至ることもできると思いますが、それまではコツコツと一つひとつ考えながら対応していきましょう。次回はアルコールや薬剤による意識障害の対応に関して考えていきましょう。1)Singer M, et al. JAMA. 2016;315:801-810.2)Levy MM, et al. Crit Care Med. 2018;46:997-1000

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喫煙が日本人労働者の死亡率に及ぼす影響

 わが国の職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study:J-ECOHスタディ)で、労働人口における喫煙・禁煙の死亡率への影響を調べたところ、喫煙が全死亡・心血管疾患(CVD)死亡・タバコ関連がん死亡のリスク増加と関連していた。また、この死亡リスクは禁煙後5年で減少していた。Circulation Journal誌オンライン版2018年9月12日号に掲載。 本調査の対象は、J-ECOHスタディに参加した20~85歳の日本人労働者7万9,114人で、死亡診断書や病気休暇書類などから、死亡および死亡原因を同定した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰により推定した。 主な結果は以下のとおり。・最大6年間の追跡期間中、252人が死亡した。・現在喫煙者の非喫煙者に対する全死亡・CVD死亡・タバコ関連がん死亡の多変量補正HR(95%CI)は順に、1.49(1.10~2.01)、1.79(0.99~3.24)、1.80(1.02~3.19)であった。・現在喫煙者では、全死亡・CVD死亡・タバコ関連がん死亡のリスクは、タバコ消費量の増加に伴って増加した(傾向のp<0.05)。・過去喫煙者の非喫煙者に対する全死亡のHR(95%CI)は、ベースラインまでの禁煙期間が5年未満で1.80(1.00~3.25)、5年以上で1.02(0.57~1.82)であった。

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統合失調症の重症度や認知機能に対する抗精神病薬のドパミン受容体占有率の影響

 病識の障害(impaired illness awareness:IIA)とドパミンD2受容体(D2R)占有率との関係は、よくわかっていない。IIAは、疾患重症度や認知機能障害と関連が認められる。統合失調症の主な治療に用いられる抗精神病薬は、IIAを間接的に改善するが、同時に治療用量において、認知機能障害を引き起こす可能性がある。カナダ・トロント大学のMiracle Ozzoude氏らは、抗精神病薬による推定D2R占有率が、IIAと疾患重症度および認知機能との関係に及ぼす影響について調査を行った。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2018年8月30日号の報告。 CATIEデータを用いて、18~62歳の統合失調症患者373例を対象に、IIAの評価を行った。IIAは、PANSSのG12項目(判断力と病識の欠如)を用いて測定した。D2R占有レベルは、リスペリドン、オランザピン、ziprasidoneの血中濃度から推定した。IIAと疾患重症度、認知機能、推定D2R占有率との関係についての分析には、相関分析、回帰分析、経路分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・疾患重症度は、IIAの予測因子であった。・しかし、病前IQ、認知機能、推定D2R占有率は、IIAを予測しなかった。・推定D2R占有率は、回帰分析、経路分析のいずれにおいても、中間変数および調整変数ではなかった。 著者らは「これまでの研究結果と同様に、成人統合失調症患者の疾患重症度は、IIAと関連していることが示唆された。今後の研究において、認知機能、IIA、抗精神病薬の感受性に対する加齢の影響を考慮すると、60歳以上の高齢統合失調症患者におけるD2R占有率が、IIAと疾患重症度および認知機能障害に影響を及ぼすかを検討すべきである」としている。■関連記事ドパミンD2受容体占有率が服薬に影響?:慶應義塾大学遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か

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中心命題はまた持ち越し(解説:今中和人氏)-922

 開心術における輸血に関する観察研究はさまざまあるが、多くの論文の結論は「輸血をした症例の予後は短期・長期ともに悪い」というものである。恐るべき輸血合併症(具体的確率はきわめて低いが)もあるので、心臓外科医は無輸血にこだわってきた。 しかしこの結論は「さもありなん」であって、多くの観察研究で輸血群は年齢、貧血、心不全、併存疾患、再手術などにハンディがあり、これら術前要因を調整したらしたで、臨床研究の限界として、要するに術中・術後経過が思わしくない症例に輸血することが多くなるため、輸血と予後不良との相関関係はわかるが、因果関係は不明である。これら論文のlimitationの欄には、必ずと言って良いほど、「多数症例でのランダム化試験が待望される」と記されてきた。 本論文は、昨年publishされた、その待望されてきた国際多施設共同ランダム化試験の続報で、前回が1ヵ月時点、今回は6ヵ月追跡のアウトカム報告である。 この試験は74施設(今回、なぜか1つ増えているが御愛嬌)が参加し、対象患者5,243人を2群にランダム化しているのだが、 (1)輸血の有無ではなく、輸血に踏み切るHb値の設定(制限群7.5g/dL、自由群9.5g/dL)でランダム化しただけなので、制限輸血群でも52%が輸血をしており、自由輸血群でも27%は無輸血だった。 (2)「輸血」は赤血球限定で、両群ともFFPは25%前後、血小板は30%弱に投与された。 (3)エンドポイントに輸血合併症が含まれていない。 前報の結論は、どちらのHb設定でもとくに差はなかったのだが、これまた「さもありなん」。納得はできるが、輸血の是非を知りたい心臓外科医にとっては肩すかしの感が強かった。 今回の追跡(追跡率96%)では、当初の評価項目である死亡、心筋梗塞、脳卒中に、6ヵ月以内の再入院、救急受診、冠動脈再血行再建を追加して検討したが、やはりほぼ同等だった。つまり、待望されたランダム化試験ではあったが、Hb=7.5ぐらいまでは無輸血で粘れという考え方も、Hb=9.5ぐらいに低下したらさっさと輸血してしまえという考え方も、施設や医師団次第で成り立つわけなので、今日の心臓外科の診療指針にはあまり影響しない気がする。小田原評定と評するのは容易だが、この分野の臨床研究の難しさを痛感せずにはおれない。制限輸血群は無輸血「目標」群と読み替えることができようが、Hb=7.5を基準にすると何と半数がintention から外れてしまったわけである。もしカットオフを、たとえばHb=6.0にすれば、これほど脱落はないかわり、こんなに多くの施設や患者さんをenrollすることは不可能だっただろうし、輸血に強いこだわりのある外科医、というbiasがかかる。ともあれ、中心命題である輸血の是非や危険水準に関する結論は持ち越しである。

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第8回 アセトアミノフェンもワルファリン併用で用量依存的にINR上昇【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 ワルファリンはさまざまな食品や薬剤と相互作用があり、併用注意に当たる飲み合わせが多いことはよく知られています。私も以前、脳梗塞の既往があり、ワルファリンを服用している患者さんに、市販の解熱鎮痛薬を一緒に服用してよいか質問され、薬剤の種類や使用目的について少し回答に悩んだことがあります。ワルファリンの添付文書にも記載があるように、NSAIDsには血小板凝集抑制作用があり、互いに出血傾向を助長するおそれがあるため、アセトアミノフェンが優先して使用されることも多くあります。しかし、アセトアミノフェンも機序は不明ですが、ワルファリンの併用注意欄に作用増強の記載があり、疑義照会の判断に迷うところです。そこで、今回はワルファリンとアセトアミノフェンを併用したいくつかの研究を紹介します。まずは、1998年にJAMA誌に掲載された症例対照研究です(Hylek EM, et al. JAMA. 1998;279:657-662.)。症例対照研究はまれな疾患や症状を検証するのに適した研究デザインで、すでにある事象が発生している「症例群」と、その事象が発生しておらず条件をマッチさせた「対照群」を選び、過去にさかのぼって事象が生じた要因を特定しようとする研究です。研究開始時点ですでに事象が発生しているものを調べる後ろ向き研究であるという点で、コホート研究と趣が異なります。この研究では1995年4月~1996年3月に、ワルファリンを1ヵ月以上服用しており、目標INR 2.0~3.0の外来患者を対象としました。INRが6.0以上の症例群(93例)と1.7~3.3の対照群(196例)の比較から得られた結果の多変量解析により、INR 6.0以上になる要因としてアセトアミノフェンが独立して関連している可能性が示唆されました。とくにアセトアミノフェン服用量が9.1g/週(1.3g/日)以上のときのオッズ比は10倍以上(95%信頼区間:2.6~37.9)でした。次に、2006年に発表された二重盲検クロスオーバー試験です(Mahe I, et al. Haematologica. 2006;91:1621-1627.)。こちらもワルファリンを1ヵ月以上服用している患者(20例)が参加しています。アセトアミノフェン1gまたはプラセボを1日4回に分けて14日間服用し、2週間のウォッシュアウト期間を設けた後に試験薬と対照薬を入れ替えて経過を調査しました。4日目で脱落しINR値を測定できなかった患者1例とプロトコール違反1例が最終解析から除かれています。平均INRはアセトアミノフェンを服用開始後急速に上昇し、1週間以内にプラセボよりも有意に増加しました。INRの平均最大値はアセトアミノフェンで3.45±0.78、プラセボで2.66±0.73で、ベースラインからの上昇幅はアセトアミノフェンで1.20±0.62、プラセボで0.37±0.48でした。なお、プロトコールから逸脱する数値の上昇がある場合は中止され、出血イベントはいずれの群においてもみられませんでした。さらに、プラセボ対照のランダム化比較試験の報告もあります(Zhang Q, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2011;67:309-314.)。ワルファリン継続中の患者(45例)をアセトアミノフェン2g/日群、アセトアミノフェン3g/日群、またはプラセボ群に2:2:1の比率で割り付けて比較した研究です。2g群、3g群、プラセボ群のINRの平均最大増加率はそれぞれ0.70±0.49、0.67±0.62、0.14±0.42で、INRの上昇はアセトアミノフェン開始3日目で有意となりました。なお、INRが3.5を超えた場合には治療は中止されています。同様に、メタ解析の論文(Caldeira D, et al. Thromb Res. 2015;135:58-61.)や観察研究の系統的文献レビュー(Roberts E, et al. Ann Rheum Dis. 2016;75:552-559.)でも、その相互作用の可能性について警鐘が鳴らされています。アセトアミノフェン1.3g/日以上を3日以上連用なら注意が必要実践に落とし込むとすると、INRのモニタリングについて、アセトアミノフェン1.3g~2g/日を超える用量を連続3日以上服用している場合は、一定の注意を払ってもよいと思います。時にはその服用状況をワルファリンの処方医に報告することも必要でしょう。一方で、急性疾患による数日間の短期治療でアセトアミノフェンが1g/日を超えない程度であれば影響は少なそうです。この相互作用の機序については不明とされていますが、いくつかの説はありますので、最後にそのうちの1つであるNAPQI(N-acetyl-p-benzoquinone-imine)の影響だとする仮説を紹介しましょう。アセトアミノフェンは代謝を受けると毒性代謝産物であるNAPQIを生成します。通常は肝臓中のグルタチオン抱合を受けて速やかに無毒化されて除去されますが、アセトアミノフェンの服用量過多や糖尿病の合併などでNAPQIが蓄積しやすくなることがあります。これは、アセトアミノフェンによる肝障害の原因としても知られています。このNAPQIがビタミンK依存性カルボキシラーゼおよびビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を阻害するため、複数のポイントでビタミンKサイクルを阻害し、ワルファリンの効果に影響を及ぼしているのではないかというものです(Thijssen HH, et al. Thromb Haemost. 2004;92:797-802.)。あくまでも仮説ですが、説得力はありますね。ワルファリンとアセトアミノフェンの併用はよくある飲み合わせですが、つい見落としがちな相互作用ですので意識してみてはいかがでしょうか。 1.Hylek EM, et al. JAMA. 1998;279:657-662. 2.Mahe I, et al. Haematologica. 2006;91:1621-1627.(先行研究はMahe I, et al. Br J Clin Pharmacol. 2005;59:371-374.) 3.Zhang Q, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2011;67:309-314. 4.Caldeira D, et al. Thromb Res. 2015;135:58-61. 5.Roberts E, et al. Ann Rheum Dis. 2016;75:552-559. 6.Thijssen HH, et al. Thromb Haemost. 2004;92:797-802. 7.ワーファリン錠 添付文書 2018年4月改訂(第26版)

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第3世代ALK-TKIロルラチニブ国内承認、世界初/ファイザー

 ファイザー株式会社は、2018年9月21日、「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能・効果で、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ローブレナ錠25mg、同100mg」(一般名:ロルラチニブ)の製造販売承認を取得した。この承認は日本が世界に先駆けての取得となる。 ロルラチニブは、既存のALK阻害剤で効果が得られなくなった患者の耐性メカニズムに注目し創製された第3世代のALK阻害剤で、耐性変異がみられる変異型ALKにも効果が期待される。日本も参加した国際共同第I/II相試験において、既存のALK阻害剤に抵抗性または不耐容のALK陽性非小細胞肺がんに対する臨床的に意義のある抗腫瘍効果と忍容性が示されたことから、これらの結果を取りまとめ、2018年1月に国内における製造販売承認申請を行った。 ロルラチニブは、昨年(2017年)10月に導入された「医薬品の条件付き早期承認制度」が適用され、優先審査の対象として、約8ヵ月間の審査期間を経て承認となった。承認条件は、医薬品リスク管理計画を策定し実施すること、全症例を対象に使用成績調査を実施し適正使用のためのデータ収集をすること、肺がん治療に精通した医師によって処方されるとともに本剤のリスク等について十分に管理・説明できる医療機関および薬局においてのみ取り扱われるよう必要な措置を講じること、の3点。 ローブレナの概要・製品名:ローブレナ錠25mg/100mg(LORBRENA Tablets 25mg/100mg)・一般名:ロルラチニブ(Lorlatinib)・効能・効果:ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌・用法・用量:通常、成人にはロルラチニブとして1日1回100mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。・製造販売承認取得日:2018年9月21日・製造販売元:ファイザー株式会社■参考NCT 01970865(Clinical Trials.gov)■関連記事第3世代ALK阻害薬lorlatnib、ALK陽性肺がんに国内申請ALK/ROS1肺がんにおけるlorlatinibの国際第I相試験の結果/Lancet Oncol

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血流感染、ピペラシリン・タゾバクタムvs.メロペネム/JAMA

 大腸菌(E.coli)または肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に感染し、抗菌薬セフトリアキソンが無効な患者において、definitive治療としてのピペラシリン・タゾバクタムはメロペネムと比較して、30日死亡率に関する非劣性を示さなかった。オーストラリア・クイーンズランド大学のPatrick N. A. Harris氏らによる無作為化試験の結果で、JAMA誌2018年9月11日号で発表された。大腸菌や肺炎桿菌では拡張型β-ラクタマーゼが、第3世代のセファロスポリン系薬(セフトリアキソンなど)に対する耐性を媒介する。これらの菌株に起因する重大な感染症では、通常、カルバペネムによる治療が行われるが、カルバペネム耐性を選択する可能性があることから、研究グループは、ピペラシリン・タゾバクタムが、拡張型β-ラクタマーゼの産生を抑制する、有効な“カルバペネム温存”オプションとなりうる可能性があるとして検討を行った。ピペラシリン・タゾバクタムのメロペネムに対する非劣性を無作為化後30日時点の全死因死亡で評価 セフトリアキソン非感受性で大腸菌または肺炎桿菌に起因する血流感染症の患者において、definitive治療としてピペラシリン・タゾバクタムのメロペネム(カルバペネム)に対する非劣性を調べる検討は、2014年2月~2017年7月に、9ヵ国26施設で入院患者を登録して行われた(非劣性並行群間比較無作為化試験)。 被験者は、大腸菌または肺炎桿菌の血液培養検査で最低限いずれかの陽性が認められ、セフトリアキソンに非感受性だが、ピペラシリン・タゾバクタムに感受性が認められる成人患者を適格とした。 スクリーニングを受けたのは1,646例。試験には391例が包含され、1対1の割合で2群に無作為化された。1群(188例)はピペラシリン・タゾバクタム4.5gを6時間ごとに、もう1群(191例)はメロペネム1gを8時間ごとに投与された。治療期間は最短4日間、最長14日間として、治療担当医が総治療期間を決定した。 主要評価項目は、無作為化後30日時点の全死因死亡であった。非劣性マージンは5%とした。ピペラシリン・タゾバクタムのメロペネムに対する非劣性は示されず 主要解析集団には、無作為化が適切で、試験薬を少なくとも1回投与された被験者379例(平均年齢66.5歳、女性47.8%)が包含された。このうち378例(99.7%)が試験を完了し、主要評価項目について評価を受けた。 30日時点の全死因死亡率は、ピペラシリン・タゾバクタム群12.3%(23/187例)であったのに対し、メロペネム群3.7%(7/191例)であった。両群間のリスク差は8.6%(片側97.5%信頼区間[CI]:-∞~14.5)で、ピペラシリン・タゾバクタムのメロペネムに対する非劣性は示されなかった(p=0.90)。有効性は、per-protocol集団で一貫して認められた。 非致死的な重大有害事象の発生の報告は、ピペラシリン・タゾバクタム群2.7%(5/188例)、メロペネム群1.6%(3/191例)であった。 結果を踏まえて著者は「所見は、今回の設定集団においてはピペラシリン・タゾバクタムの使用を支持しないものであった」とまとめている。

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『減塩パラドックス』Revisit! Populationか、Communityか、Individualか?(解説:石上友章氏)-920

 カナダ・マックマスター大学のAndrew Mente氏らの論文、“Urinary sodium excretion, blood pressure, cardiovascular disease, and mortality: a community-level prospective epidemiological cohort study.”は、PURE試験(Prospective Urban Rural Epidemiology study)の臨床アウトカムと、推定食塩摂取量・推定カリウム摂取量との関連を解析した研究である1)。食塩の過剰摂取は、高血圧のリスクになり、ひいては心血管イベントのリスクになると信じられているが、本試験の結果は必ずしも定説を支持するものではなかった。顧みれば、本連載(90)の否定された『減塩パラドックス』―降圧の基本は、やはり減塩。での議論が、再び蒸し返されるような事態になるかもしれない。 2011年にJAMA誌に相次いで、減塩の限界を証明し、『減塩パラドックス』ともいえる議論をもたらすような論文が掲載されたが2,3)、2013年のBMJ誌に掲載されたメタ解析論文は、こうした議論を否定した4)。メタ解析による複数のエビデンスによる、結果の一貫性だけではなく、推定食塩摂取量の根拠となった「single urine sampleによる簡便な評価法」の不確実性が限界として指摘されている。 本論文では、あらためてpopulation baseの減塩が、community baseには有効ではない可能性を指摘している。公衆衛生的な介入と個人衛生的な介入の中間的な介入は、こうした介入の個別化という点で興味深い。疫学統計は事実であるが、因果関係を証明することはできない。公衆衛生的な介入の正当性を証明すると、さらに多くの時間的、人的、経済的コストが必要になるのは、言うまでもない。

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日本人高齢者のライフスタイル活動と認知症リスク

 高齢化や慢性疾患状態の増加に伴い、認知症の有病率は上昇している。国立長寿医療研究センターの島田 裕之氏らは、日本の地域在住の高齢者における、日常生活や社会的役割を含むライフスタイル活動と認知症発症との関連について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2018年8月21日号の報告。 65歳以上の高齢者4,564例を対象に、年齢、性別で層別化し、縦断的研究を行った。ライフスタイル活動、認知症のリスク因子、認知症の新規発症を調査した。 主な結果は以下のとおり。・平均42.6ヵ月後、認知症の新規発症は219例(4.8%)であった。・Cox比例ハザード回帰モデルを用いた生存分析において、認知症発症率が有意に低かった因子は以下のとおりであった。 ●日常的な会話(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.35~0.89、p=0.015) ●自動車運転(HR:0.63、95%CI:0.45~0.88、p=0.007) ●ショッピング(HR:0.57、95%CI:0.34~0.96、p=0.033) ●フィールドワークまたはガーデニング(HR:0.71、95%CI:0.54~0.94、p=0.016) 著者らは「高齢者における特定のライフスタイル活動は、認知症を予防するうえで、重要な役割を果たすと考えられる。また、認知症の予防のための活動は、年齢や性別により異なる可能性がある」としている。■関連記事認知症予防にベンゾジアゼピン使用制限は必要か魚を食べると認知症は予防できるのか脳トレーニングで認知症予防、認知機能低下リスクが20~30%減

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米国の皮膚科医は都市部に集中、地方との格差が拡大

 人口の増加と高齢化が進展している米国には、皮膚科医療に対するアンメットニーズが存在している。したがって、皮膚科医の労働人口の特徴やパターンを特定し理解することは重要である。米国・ニューヨーク大学医学部のHao Feng氏らは、皮膚科医の経時的分布および都市部と地方部の釣り合いについて、標準化された分類表を用いて分析した。その結果、皮膚科医の地理的分布はかなり不均衡であり、経時的な拡大が示唆されることが明らかとなった。著者は、「皮膚科医の労働人口の分布を是正することが、患者のケアにとって重要である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年9月5日号掲載の報告。 研究グループは、Area Health Resources Fileを用いて1995~2013年における州レベルのデータを分析し、皮膚科医の地理的分布の経時的傾向、人口統計学的因子および環境因子を評価した。 主要評価項目は、米国における現役皮膚科医人口の比率であった。 主な結果は以下のとおり。・全国的な皮膚科医人口の比率は、1995年(3.02人/10万人)から2013年(3.65人/10万人)にかけて、21%増加した。・都市部の皮膚科医人口の比率との差は、非大都市圏では2.63から3.06に、地方では3.41から4.03に拡大していた。・55歳未満の皮膚科医に対する55歳以上の皮膚科医の割合は、非大都市圏および地方では75%の増加(0.32から0.56)、大都市圏では170%の増加(0.34から0.93)だった。・皮膚科医は、物資が豊富な都市部のコミュニティに存在する傾向がみられた。

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禁煙は「徐々に」でなく「一気に」の裏付け/JAMA

 喫煙者において、タバコのニコチン含有量を即時に減らすほうが、緩徐に減らすよりも、喫煙毒性曝露バイオマーカー値の低下は一貫して有意に大きいことが明らかにされた。また、緩徐に減量した場合とニコチン含有量を減量しなかった場合の同マーカー値には、有意差がなかった。米国・ミネソタ大学のDorothy K. Hatsukami氏らによる二重盲検無作為化並行群間比較試験の結果で、JAMA誌2018年9月4日号で発表された。米国内で販売されているすべてのタバコについて、ニコチン含有量を最小限または中毒性のないレベルにまで減量するための最適な時間的アプローチは、これまで検証されていなかったという。3つの毒性曝露バイオマーカー値で、減量効果を評価 研究グループは、毒性曝露バイオマーカーを用いて、ニコチン含有量を極度低値に低下することの即時vs.緩徐の有効性を検討し、また通常量維持の場合と比較した。試験は全米10地点で、2週間のベースライン喫煙期間に続いて、20週間の介入を行った。 2014年7月~2016年9月に、30日以内に禁煙する意思がなく毎日喫煙しているボランティア被験者を集めて、次の3群に割り付けて追跡した。(1)タバコのニコチン含有量を0.4mg/gへと即時に減量(即時低下群)、(2)5ヵ月かけて15.5mg/gから0.4mg/gへと徐々に減量(緩徐低下群)、(3)15.5mg/g量を維持(対照群)。最終フォローアップは2017年3月であった。 主要評価項目は3つで、呼気一酸化炭素(CO)、尿中3-HPMA(アクロレイン代謝物)、尿中PheT(多環芳香族炭化水素)の喫煙毒性曝露バイオマーカー値。介入20週の間の、濃度-時間曲線下面積(AUC)を算出して評価した。緩徐群と維持群には有意差みられず 1,250例(平均年齢45歳、女性549例[44%])が無作為化を受け、958例(77%)が試験を完了した。 即時低下群は緩徐低下群と比べて、CO値は有意に低値であった(平均値:16.17 vs.20.06ppm、補正後平均群間差[MD]:-4.06[95%信頼区間[CI]:-4.89~-3.23]、p<0.0055)。3-HPMA(クレアチニン幾何平均[GM]値:6.05 vs.7.26nmol/mg、補正後GM比[RGM]:0.83[95%CI:0.77~0.88]、p<0.0055)、PheT(同:2.06 vs.2.16pmol/mg、0.88[0.83~0.93]、p<0.0055)についても同様であった。 また、即時低下群は対照群との比較においても、3つのマーカー値が有意に低値であった。平均CO値は16.17 vs.19.68ppm(補正後MD:-3.38[95%CI:-4.40~-2.36]、p<0.0055)、3-HPMA(クレアチニンGM値)は6.05 vs.7.67nmol/mg(補正後RGM:0.81[95%CI:0.75~0.88]、p<0.0055)、PheT(同)は2.06 vs.2.41pmol/mg(0.86[0.81~0.92]、p<0.0055)であった。 緩徐低下群vs.対照群では、3つのマーカー値とも有意な差はみられなかった。平均CO値は20.06 vs.19.68ppm(補正後MD:0.68[95%CI:-0.31~1.67)、p=0.18)、3-HPMA(クレアチニンGM値)は7.26 vs.7.67nmol/mg(補正後RGM:0.98[95%CI:0.91~1.06]、p=0.64)、PheT(同)は2.16 vs.2.41pmol/mg(0.98[0.92~1.04]、p=0.52)であった。

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